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第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
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第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
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第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
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海洋万里
第25巻(子の巻)
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第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
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第61巻(子の巻)
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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第81巻(申の巻)
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第32巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 森林の都
01 万物同言
〔892〕
02 猛獣会議
〔893〕
03 兎の言霊
〔894〕
04 鰐の言霊
〔895〕
05 琉球の光
〔896〕
06 獅子粉塵
〔897〕
第2篇 北の森林
07 試金玉
〔898〕
08 三人娘
〔899〕
09 岩窟女
〔900〕
10 暗黒殿
〔901〕
11 人の裘
〔902〕
12 鰐の橋
〔903〕
13 平等愛
〔904〕
14 山上の祝
〔905〕
第3篇 瑞雲靉靆
15 万歳楽
〔906〕
16 回顧の歌
〔907〕
17 悔悟の歌
〔908〕
18 竜国別
〔909〕
19 軽石車
〔910〕
20 瑞の言霊
〔911〕
21 奉答歌
〔912〕
第4篇 天祥地瑞
22 橋架
〔913〕
23 老婆心切
〔914〕
24 冷氷
〔915〕
余白歌
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第八章
三人娘
(
さんにんむすめ
)
〔八九九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻
篇:
第2篇 北の森林
よみ(新仮名遣い):
きたのしんりん
章:
第8章 三人娘
よみ(新仮名遣い):
さんにんむすめ
通し章番号:
899
口述日:
1922(大正11)年08月22日(旧06月30日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年10月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高姫は、自分に玉を献上しようという美女が侍女を伴ってやってくるのを見て、心待ちにしている。春彦は高姫の物欲しそうな様子に笑いをこらえながら、魔性の女に気を付けるよう高姫に忠告をする。高姫は怪しむ春彦を叱りつけた。
やってきた女は高子姫と名乗った。高姫は高子姫にお世辞を述べるが、春彦がまたしても茶々を入れる。高姫はまた叱りつけるが、春彦は大昔の常世会議を例に引いて、滑稽な調子で高姫に忠告する。
高姫は、実地に玉を見てみればわかると言い張り、女たちに付いていくことになった。途中に大きな川があり、女たちは石を軽々と伝って向こう岸に着いたが、高姫はすべって川に落ちてしまった。
春彦はあわてて川に飛び込んで高姫を救い上げた。高姫は助けに来なかった常彦とヨブを責め、春彦には手柄を立てるというお蔭をいただいたのだ、と強弁する。春彦、常彦、ヨブの三人はあきれて顔を見合わせてしまった。
高姫は、高子姫らの招きに応じて川を慎重に渡って行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-05-03 17:27:22
OBC :
rm3208
愛善世界社版:
91頁
八幡書店版:
第6輯 181頁
修補版:
校定版:
96頁
普及版:
36頁
初版:
ページ備考:
001
高姫
(
たかひめ
)
は、
002
以前
(
いぜん
)
の
美人
(
びじん
)
が
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
じじよ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
悠々
(
いういう
)
として
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
るを、
003
百間
(
ひやくけん
)
許
(
ばか
)
りこちらから
嬉
(
うれ
)
しげに
打眺
(
うちなが
)
め、
004
夢
(
ゆめ
)
に
牡丹餅
(
ぼたもち
)
でも
食
(
く
)
つた
様
(
やう
)
な
嬉
(
うれ
)
しさうな
顔
(
かほ
)
をつき
出
(
いだ
)
してゐる。
005
其
(
その
)
スタイルのどことなく
間
(
ま
)
の
抜
(
ぬ
)
けた
可笑
(
をか
)
しさに、
006
吹出
(
ふきだ
)
す
許
(
ばか
)
り
思
(
おも
)
はるるを、
007
ジツと
怺
(
こら
)
へて
春彦
(
はるひこ
)
は
女
(
をんな
)
を
指
(
さ
)
し、
008
春彦
『アレ
御覧
(
ごらん
)
なさい……
一人
(
ひとり
)
かと
思
(
おも
)
へば
三
(
さん
)
人
(
にん
)
も
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
が
耳
(
みみ
)
をピラピラさせ
乍
(
なが
)
らやつて
来
(
く
)
るぢやありませぬか……
高姫
(
たかひめ
)
さま、
009
あれでも
御
(
ご
)
信用
(
しんよう
)
になりますかなア』
010
高姫
(
たかひめ
)
は
最早
(
もはや
)
玉
(
たま
)
と
聞
(
き
)
いて、
011
再
(
ふたた
)
び
心
(
こころ
)
を
曇
(
くも
)
らしてゐる。
012
高姫
『コレ
春
(
はる
)
さま、
013
失礼
(
しつれい
)
なことを
云
(
い
)
ふものぢやありませぬよ。
014
あれ
程
(
ほど
)
能
(
よ
)
う
目
(
め
)
につく
耳
(
みみ
)
が
動
(
うご
)
いてるか
動
(
うご
)
いとらぬか、
015
能
(
よ
)
く
御覧
(
ごらん
)
なさい。
016
動
(
うご
)
く
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
えるのはお
前
(
まへ
)
の
目
(
め
)
の
玉
(
たま
)
が
動
(
うご
)
くから、
017
向方
(
むかふ
)
の
耳
(
みみ
)
が
動
(
うご
)
くやうに
見
(
み
)
えるのだよ』
018
春彦
『
私
(
わたし
)
の
目
(
め
)
が
動
(
うご
)
くのならば、
019
誰
(
たれ
)
の
耳
(
みみ
)
も
体
(
からだ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
動
(
うご
)
きさうなものぢやありませぬか。
020
よくお
前
(
まへ
)
さま、
021
気
(
き
)
をつけて
目
(
め
)
をあけてミヽヽ
見
(
み
)
なさい。
022
アフンと
致
(
いた
)
してあいた
口
(
くち
)
がすぼまらぬ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
があつたら、
023
後
(
あと
)
で
何程
(
なにほど
)
後悔
(
こうくわい
)
したと
云
(
い
)
つても
悔
(
くや
)
んでも
後
(
あと
)
の
祭
(
まつ
)
り、
024
折角
(
せつかく
)
高
(
たか
)
い
鼻
(
はな
)
がめしやげて
了
(
しま
)
ひますぞや。
025
私
(
わたし
)
が
今
(
いま
)
何程
(
なにほど
)
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
しても
歯
(
は
)
節
(
ぶし
)
は
立
(
た
)
ちますまい。
026
私
(
わたし
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
一々
(
いちいち
)
足
(
あし
)
と
思
(
おも
)
うて
御座
(
ござ
)
るから、
027
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
028
手
(
て
)
ごたへはせぬのも
道理
(
だうり
)
ぢや。
029
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
人
(
ひと
)
にあの
拇指
(
おやゆび
)
は
小指
(
こゆび
)
の
意見
(
いけん
)
も
聞
(
き
)
かず、
030
時雨
(
しぐれ
)
の
森
(
もり
)
でバカを
見
(
み
)
たと、
031
後
(
うしろ
)
指
(
ゆび
)
をさされぬやうになされませ。
032
背
(
せ
)
中
(
なか
)
に
腹
(
はら
)
は
替
(
か
)
へられませぬぞえ。
033
後
(
あと
)
で
臍
(
へそ
)
をかむやうな
事
(
こと
)
のないやうに、
034
胸
(
むね
)
をさはやかにし、
035
腹
(
はら
)
を
据
(
す
)
ゑて
乳
(
ちち
)
と
考
(
かんが
)
へなされ。
036
股
(
また
)
後
(
あと
)
で
叱言
(
こごと
)
をおつしやつても、
037
尻
(
しり
)
まへんワ、
038
けつ
喰
(
くら
)
へ
観音
(
くわんのん
)
ですよ』
039
高姫
『
黙
(
だま
)
つて
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
れば、
040
蚤
(
のみ
)
か
蝨
(
しらみ
)
の
様
(
やう
)
に
体中
(
からだぢう
)
を
這
(
は
)
ひまはし、
041
何
(
なに
)
屁
(
へ
)
理窟
(
りくつ
)
を
垂
(
た
)
れなさるのぢや。
042
糞
(
ばば
)
が
呆
(
あき
)
れますぞえ』
043
春彦
『アーア、
044
腹
(
はら
)
が
春彦
(
はるひこ
)
だ。
045
小便
(
せうべん
)
ぢやないが、
046
シヽシリ
もせぬ
癖
(
くせ
)
に、
047
エラさうに
仰有
(
おつしや
)
つて
今
(
いま
)
にアフンとなさる
御
(
お
)
方
(
かた
)
が、
048
どこやらに
一人
(
ひとり
)
ありさうだ。
049
アーア
又
(
また
)
もや
例
(
れい
)
の
病
(
やまひ
)
がおこつたのかなア』
050
高姫
『
喧
(
やかま
)
しい!』
051
と
制
(
せい
)
し
止
(
とど
)
むる
時
(
とき
)
しもあれ、
052
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
は
早
(
はや
)
くも
此処
(
ここ
)
に
近寄
(
ちかよ
)
り
来
(
きた
)
り、
053
叮嚀
(
ていねい
)
に
会釈
(
ゑしやく
)
しながら、
054
女(高子姫)
『
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
、
055
永
(
なが
)
らく
御
(
お
)
待
(
ま
)
たせ
致
(
いた
)
しました。
056
私
(
わたし
)
はあなたの
御
(
お
)
名
(
な
)
に
能
(
よ
)
く
似
(
に
)
た
高子姫
(
たかこひめ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
057
此
(
この
)
侍女
(
じじよ
)
は
一人
(
ひとり
)
はお
月
(
つき
)
、
058
一人
(
ひとり
)
はお
朝
(
あさ
)
と
申
(
まを
)
します。
059
どうぞ
御
(
お
)
見知
(
みし
)
りおかれまして
末永
(
すえなが
)
く
御
(
ご
)
交際
(
かうさい
)
をお
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
060
春彦
(
はるひこ
)
小声
(
こごゑ
)
で、
061
春彦
『それやつて
来
(
き
)
たぞ! だまされな!』
062
と
拍子
(
ひやうし
)
をつけて、
063
小声
(
こごゑ
)
で
囁
(
ささや
)
いてゐる。
064
高姫
(
たかひめ
)
は
春彦
(
はるひこ
)
をグツと
睨
(
ね
)
めつけながら、
065
俄
(
にはか
)
に
顔色
(
かほいろ
)
を
和
(
やはら
)
げ、
066
高子姫
(
たかこひめ
)
に
向
(
むか
)
つて、
067
高姫
『これはこれは、
068
始
(
はじ
)
めて
御
(
お
)
名
(
な
)
を
承
(
うけたま
)
はりました。
069
マアマア
実
(
じつ
)
に
御
(
お
)
優
(
やさ
)
しい
御
(
ご
)
立派
(
りつぱ
)
な
御
(
お
)
姿
(
すがた
)
ですこと!』
070
高子姫
『イエイエどうしてどうして、
071
さう
御
(
お
)
誉
(
ほ
)
め
下
(
くだ
)
さつては、
072
お
恥
(
は
)
づかしう
御座
(
ござ
)
います。
073
山家育
(
やまがそだ
)
ちの
山時鳥
(
やまほととぎす
)
、
074
ホーホケキヨの
片言
(
かたこと
)
まじり、
075
何
(
なに
)
も
知
(
し
)
らない
未通娘
(
おぼこむすめ
)
で
御座
(
ござ
)
りますれば、
076
どうぞ
宜
(
よろ
)
しく
御
(
ご
)
指導
(
しだう
)
を
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
077
春彦
(
はるひこ
)
はそばより、
078
春彦
『
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても、
079
海千
(
うみせん
)
山千
(
やません
)
河千
(
かはせん
)
の
経験
(
けいけん
)
を
経
(
へ
)
た
高姫
(
たかひめ
)
さまですから、
080
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ですよ、
081
アハヽヽヽ。
082
其
(
その
)
三千
(
さんぜん
)
年
(
ねん
)
の
劫
(
がふ
)
を
経
(
へ
)
た
高姫
(
たかひめ
)
さまをチヨロまかす
娘
(
むすめ
)
さまは、
083
ドテライ
偉
(
えら
)
い
変
(
かは
)
つた
変
(
へん
)
な
見当
(
けんたう
)
の
取
(
と
)
れぬ
仕方
(
しかた
)
のない
御
(
お
)
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
084
オツトドツコイ
眉毛
(
まゆげ
)
に
唾
(
つばき
)
をつけ、
085
おけつの
毛
(
け
)
に
気
(
き
)
をつけて、
086
高姫
(
たかひめ
)
さまの
後
(
あと
)
から
従
(
つ
)
いて
参
(
まゐ
)
りませうかい』
087
高姫
(
たかひめ
)
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らし、
088
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らし、
089
歯
(
は
)
のぬけた
口
(
くち
)
から
唾
(
つばき
)
を
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
しながら、
090
高姫
『コレ
春彦
(
はるひこ
)
さま、
091
さうズケズケと
淑女
(
しゆくぢよ
)
に
向
(
むか
)
つて、
092
失礼
(
しつれい
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふことがありますかい。
093
モウシ
高子姫
(
たかこひめ
)
さま、
094
斯様
(
かやう
)
な
動物
(
どうぶつ
)
がついて
居
(
を
)
りますので、
095
寔
(
まこと
)
に
妾
(
わたし
)
も
頭
(
あたま
)
を
悩
(
なや
)
めます。
096
どうぞお
気
(
き
)
を
悪
(
わる
)
くせぬやうにして
下
(
くだ
)
さいませ』
097
春彦
(
はるひこ
)
『ハイハイ、
098
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て
失礼
(
しつれい
)
千万
(
せんばん
)
、
099
どうぞ
寒狐
(
かんぎつね
)
に
見直
(
みなほ
)
し、
100
大狐
(
おほぎつね
)
に
宣直
(
のりなほ
)
し、
101
大空
(
おほぞら
)
は
高倉
(
たかくら
)
でも、
102
月日
(
つきひ
)
をかくす、
103
雲
(
くも
)
さへ
払
(
はら
)
へば
吾々
(
われわれ
)
の
魂
(
たま
)
は
朝日
(
あさひ
)
の
豊栄昇
(
とよさかのぼ
)
る
様
(
やう
)
な
勢
(
いきほひ
)
になつて
来
(
き
)
ます……コレ
高
(
たか
)
さま、
104
オツトドツコイ
高姫
(
たかひめ
)
さま、
105
だまされなさるな。
106
常世
(
とこよ
)
の
城
(
しろ
)
で
八百
(
はつぴやく
)
八十八
(
はちじふや
)
柱
(
はしら
)
の
八王
(
やつわう
)
の
神
(
かみ
)
や
八頭
(
やつがしら
)
、
107
立派
(
りつぱ
)
な
御
(
お
)
方
(
かた
)
が
寄
(
よ
)
り
合
(
あ
)
うて、
108
泥田圃
(
どろたんぼ
)
の
大失敗
(
だいしつぱい
)
も
鑑
(
かがみ
)
が
出
(
で
)
て
居
(
を
)
りますぞや。
109
コレコレ
高倉
(
たかくら
)
稲荷
(
いなり
)
さま、
110
月日
(
つきひ
)
、
111
旭
(
あさひ
)
明神
(
みやうじん
)
さま、
112
化
(
ば
)
けた
所
(
ところ
)
で
此
(
この
)
春
(
はる
)
さまが
承知
(
しようち
)
をしませぬぞえ。
113
何
(
なん
)
と
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
りましたかなア……
隠
(
かく
)
されぬ
証拠
(
しようこ
)
と
云
(
い
)
ふのは、
114
お
前
(
まへ
)
の
二
(
ふた
)
つの
耳
(
みみ
)
だ。
115
お
尻
(
けつ
)
に
白
(
しろ
)
い
尻尾
(
しつぽ
)
が
下
(
さが
)
つて
居
(
を
)
りますぞえ。
116
こんな
深
(
ふか
)
い
森林
(
しんりん
)
までだましに
来
(
く
)
るとは……(
浄瑠璃
(
じやうるり
)
文句
(
もんく
)
)そりや
聞
(
きこ
)
えませぬ
胴欲
(
どうよく
)
ぢや、
117
欲
(
よく
)
に
呆
(
はう
)
けた
高姫
(
たかひめ
)
さまを、
118
高子
(
たかこ
)
の
姫
(
ひめ
)
と
現
(
あら
)
はれて、
119
心
(
こころ
)
曳
(
ひ
)
かうとなさるのか、
120
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
、
121
玉
(
たま
)
と
云
(
い
)
うたら
目
(
め
)
の
玉
(
たま
)
を、
122
グルグルまはす
癖
(
くせ
)
のある、
123
高姫
(
たかひめ
)
さまにありもせぬ、
124
如意
(
によい
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
をやらうとは、
125
馬鹿
(
ばか
)
になさるも
程
(
ほど
)
がある。
126
此
(
この
)
春彦
(
はるひこ
)
が
天眼通
(
てんがんつう
)
、
127
一目
(
ひとめ
)
睨
(
にら
)
んで
査
(
しら
)
べたら、
128
メツタに
間違
(
まちが
)
ひありませぬ、
129
高倉
(
たかくら
)
稲荷
(
いなり
)
の
白狐
(
びやくこ
)
さま、
130
月日
(
つきひ
)
旭
(
あさひ
)
の
明神
(
みやうじん
)
さま、
131
早
(
はや
)
く
尻尾
(
しつぽ
)
を
出
(
だ
)
しなされ』
132
高姫
(
たかひめ
)
『コレコレ
又
(
また
)
しても
失礼
(
しつれい
)
なことを
仰有
(
おつしや
)
るのかいなア。
133
高倉
(
たかくら
)
稲荷
(
いなり
)
さまや
月日
(
つきひ
)
旭
(
あさひ
)
の
明神
(
みやうじん
)
さまは、
134
此
(
この
)
高砂島
(
たかさごじま
)
へは
御座
(
ござ
)
らつしやる
筈
(
はず
)
はありませぬぞや。
135
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
の
大江山
(
たいかうざん
)
に
御
(
お
)
住
(
すま
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばされ、
136
間
(
はざま
)
の
国
(
くに
)
を
境
(
さかひ
)
として、
137
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
へ
御
(
お
)
渡
(
わた
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
方
(
かた
)
ぢや
程
(
ほど
)
に、
138
見違
(
みちがひ
)
をするも
程
(
ほど
)
がある。
139
黙
(
だま
)
つてゐなさい!』
140
春彦
(
はるひこ
)
『そんなら、
141
黙
(
だま
)
つて
御
(
お
)
手前
(
てまへ
)
拝見
(
はいけん
)
と、
142
出
(
で
)
かけませうかなア……ヨブさま、
143
常
(
つね
)
さま、
144
お
前
(
まへ
)
は
如何
(
どう
)
考
(
かんが
)
へるか、
145
一寸
(
ちよつと
)
否定
(
ひてい
)
肯定
(
こうてい
)
如何
(
いかん
)
を
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さいな』
146
常彦
(
つねひこ
)
『
否定
(
ひてい
)
も
肯定
(
こうてい
)
もありませぬワイ。
147
ゴテゴテ
言
(
い
)
ひなさるな』
148
ヨブ『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
合点
(
がてん
)
の
往
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
ですワイ』
149
高子
(
たかこ
)
『
何
(
なん
)
なと
御
(
お
)
疑
(
うたが
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばしませ。
150
何
(
なに
)
よりも
事実
(
じじつ
)
が
証明
(
しようめい
)
致
(
いた
)
しますよ』
151
高姫
(
たかひめ
)
『
左様
(
さやう
)
ならば
御
(
お
)
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
します……コレコレ
春彦
(
はるひこ
)
、
152
常彦
(
つねひこ
)
、
153
ヨブさま、
154
おとなしうして
従
(
つ
)
いて
来
(
く
)
るのだよ。
155
何
(
なに
)
も
言
(
い
)
つちやなりませぬぜ。
156
人民
(
じんみん
)
がゴテゴテ
言
(
い
)
つたつて、
157
神
(
かみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
が
分
(
わか
)
るものぢやありませぬ。
158
黙
(
だま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
方
(
はう
)
が、
159
どれ
程
(
ほど
)
賢
(
かしこ
)
う
見
(
み
)
えるか
分
(
わか
)
らぬぞえ』
160
とイラツクやうな
声
(
こゑ
)
でたしなめながら、
161
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
162
水
(
みづ
)
のたまつたシクシク
原
(
ばら
)
を
足
(
あし
)
の
裏
(
うら
)
をひやし、
163
高姫
『アヽ
気分
(
きぶん
)
がよい、
164
久
(
ひさ
)
しぶりでお
水
(
みづ
)
にありついた。
165
これと
云
(
い
)
ふのも
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
水
(
みづ
)
も
漏
(
も
)
らさぬ
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
、
166
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
だよ。
167
足
(
あし
)
で
踏
(
ふ
)
むのも
勿体
(
もつたい
)
ないけれど、
168
ここを
通
(
とほ
)
らねば
行
(
ゆ
)
くことが
出来
(
でき
)
ませぬから、
169
どうぞ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さいませや』
170
と
肩
(
かた
)
を
四角
(
しかく
)
に
欹
(
そばだ
)
て、
171
尻
(
しり
)
をプリンプリンとふりながら、
172
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
173
勇
(
いさ
)
み
進
(
すす
)
んでついて
行
(
ゆ
)
く。
174
此処
(
ここ
)
には
大変
(
たいへん
)
に
広
(
ひろ
)
い
河
(
かは
)
が
飛沫
(
ひまつ
)
を
飛
(
と
)
ばしてゴーゴーと
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てて
流
(
なが
)
れてゐる。
175
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
は、
176
尻
(
しり
)
をまくり、
177
兎
(
うさぎ
)
が
飛
(
と
)
ぶ
様
(
やう
)
に
高
(
たか
)
い
石
(
いし
)
の
頭
(
あたま
)
を
狙
(
ねら
)
つて、
178
向方
(
むかふ
)
へ
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に
渡
(
わた
)
つて
了
(
しま
)
つた。
179
高姫
(
たかひめ
)
もわれ
遅
(
おく
)
れじと
尻
(
しり
)
ひきめくり、
180
高姫
『コレコレ
皆
(
みな
)
さま、
181
気
(
き
)
をつけなされ。
182
此
(
この
)
石
(
いし
)
はよく
辷
(
すべ
)
りますよ』
183
と
後向
(
うしろむ
)
く
途端
(
とたん
)
に
背中
(
せなか
)
に
負
(
おぶ
)
つた
石地蔵
(
いしぢざう
)
の
重
(
おも
)
みで
自分
(
じぶん
)
から
辷
(
すべ
)
つて
激流
(
げきりう
)
におち
込
(
こ
)
み、
184
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ、
185
足
(
あし
)
を
上
(
うへ
)
にして
苦
(
くるし
)
み
悶
(
もだ
)
え、
186
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
る
如
(
ごと
)
くに
流
(
なが
)
れ
行
(
ゆ
)
く。
187
春彦
『コリヤ
大変
(
たいへん
)
』
188
と
春彦
(
はるひこ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
赤裸
(
まつぱだか
)
となり、
189
春彦
『オイ
常彦
(
つねひこ
)
、
190
ヨブ、
191
俺
(
おれ
)
の
着物
(
きもの
)
を
預
(
あづか
)
つてくれ!』
192
と
云
(
い
)
ひながら、
193
渦
(
うづ
)
まく
波
(
なみ
)
にザンブと
飛込
(
とびこ
)
み、
194
急流
(
きふりう
)
を
泳
(
およ
)
いで、
195
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ
高姫
(
たかひめ
)
に
追
(
お
)
つつき、
196
漸
(
やうや
)
くにして
岩上
(
がんじやう
)
に
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げた。
197
高姫
(
たかひめ
)
は
幸
(
さいは
)
ひに
余
(
あま
)
り
水
(
みづ
)
も
呑
(
の
)
まず、
198
気
(
き
)
も
取
(
と
)
り
失
(
うしな
)
つては
居
(
ゐ
)
ない。
199
春彦
(
はるひこ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
200
危
(
あぶ
)
ない
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いましたなア。
201
それだから
私
(
わたし
)
が
怪
(
あや
)
しいと
云
(
い
)
つて
止
(
と
)
めたぢやありませぬか。
202
是
(
これ
)
からチツト
吾々
(
われわれ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
いて
貰
(
もら
)
はなくちやなりませぬぞや』
203
高姫
『お
前
(
まへ
)
がありや、
204
こりや、
205
なけりや、
206
こりや、
207
善
(
よ
)
い
事
(
こと
)
もあれば
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
もある。
208
サア
早
(
はや
)
く
行
(
ゆ
)
きませう』
209
春彦
『どこへ
急
(
いそ
)
いで
行
(
ゆ
)
くのですか』
210
高姫
『きまつた
事
(
こと
)
だ。
211
早
(
はや
)
く
高子姫
(
たかこひめ
)
さまの
御
(
お
)
宅
(
たく
)
へ
行
(
い
)
かねば、
212
さぞ
御
(
お
)
待兼
(
まちか
)
ねだらうから…』
213
春彦
『ハテさて
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だなア。
214
こんな
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
つてもまだ
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めないのですか』
215
高姫
『
神界
(
しんかい
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
が
分
(
わか
)
りますかい』
216
と
云
(
い
)
ひながら、
217
川
(
かは
)
ぶちの
森林
(
しんりん
)
を、
218
上
(
かみ
)
へ
上
(
かみ
)
へと
伝
(
つた
)
ひのぼり、
219
最前
(
さいぜん
)
はまつた
飛石
(
とびいし
)
の
前
(
まへ
)
迄
(
まで
)
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
220
高姫
(
たかひめ
)
『ヤア
常彦
(
つねひこ
)
、
221
ヨブさま、
222
待
(
ま
)
たせました。
223
サア
行
(
ゆ
)
きませう』
224
常彦
(
つねひこ
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
225
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
で
御
(
お
)
目出度
(
めでた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
226
ヨブ『マア
是
(
これ
)
で
私
(
わたし
)
も
安心
(
あんしん
)
しました』
227
高姫
(
たかひめ
)
『コレ
常
(
つね
)
さま、
228
ヨブさま、
229
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
は、
230
水臭
(
みづくさ
)
い、
231
なぜ
私
(
わたし
)
の
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
はなかつたのだ。
232
斯
(
か
)
うなると
始終
(
しじう
)
口答
(
くちごた
)
へする
春彦
(
はるひこ
)
の
方
(
はう
)
が
余程
(
よほど
)
為
(
ため
)
になる。
233
まさかの
時
(
とき
)
に
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
ふ
者
(
もの
)
はメツタにないと、
234
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
仰有
(
おつしや
)
るが、
235
いかにも
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りだよ』
236
常彦
(
つねひこ
)
『あなたは
神
(
かみ
)
さまだから、
237
メツタに
水
(
みづ
)
に
溺
(
おぼ
)
れて
死
(
し
)
になさると
云
(
い
)
ふやうなことはないと
思
(
おも
)
つて
安心
(
あんしん
)
してゐたのですよ。
238
人民
(
じんみん
)
が
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
助
(
たす
)
けようなんテ、
239
そんなことが
如何
(
どう
)
して
出来
(
でき
)
ますか』
240
ヨブ『
余
(
あま
)
り
勿体
(
もつたい
)
なうて、
241
寄
(
よ
)
りつく
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きませず、
242
吾々
(
われわれ
)
の
為
(
ため
)
に
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
うて
下
(
くだ
)
さるのだと
思
(
おも
)
ひましたから、
243
ヂツト
暗祈
(
あんき
)
黙祷
(
もくたう
)
してゐました』
244
高姫
(
たかひめ
)
『
生神
(
いきがみ
)
がこんな
谷川
(
たにがは
)
位
(
くらゐ
)
にはまつて
弱
(
よわ
)
るやうな
事
(
こと
)
はないが、
245
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
246
人民
(
じんみん
)
として
案
(
あん
)
じて
私
(
わたし
)
を
助
(
たす
)
けに
来
(
き
)
た
春彦
(
はるひこ
)
の
心
(
こころ
)
は、
247
実
(
じつ
)
に
美
(
うる
)
はしいものだ。
248
神
(
かみ
)
は
人間
(
にんげん
)
の
真心
(
まごころ
)
を
喜
(
よろこ
)
ぶのだからなア』
249
春彦
(
はるひこ
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
250
春彦
(
はるひこ
)
でも
又
(
また
)
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
ふ
事
(
こと
)
がありませうがな』
251
高姫
(
たかひめ
)
『
棒千切
(
ぼうちぎ
)
れも、
252
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
田
(
た
)
の
中
(
なか
)
にすてておけば
肥
(
こや
)
しになる。
253
腐
(
くさ
)
れ
縄
(
なは
)
にも
取
(
と
)
りえといふ
比喩
(
たとへ
)
の
通
(
とほ
)
り、
254
あんな
者
(
もの
)
が
斯
(
こ
)
んな
手柄
(
てがら
)
をすると
云
(
い
)
ふ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
筆先
(
ふでさき
)
の
実地
(
じつち
)
正真
(
しやうまつ
)
のおかげをお
前
(
まへ
)
は
頂
(
いただ
)
いたのだ。
255
サア
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
へ
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
しなさい。
256
こんな
結構
(
けつこう
)
な
御用
(
ごよう
)
をさして
頂
(
いただ
)
いてお
前
(
まへ
)
は
余程
(
よほど
)
果報者
(
くわはうもの
)
だよ。
257
これから
高姫
(
たかひめ
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
一
(
ひと
)
つも
背
(
そむ
)
かず
聞
(
き
)
きなされや。
258
さうでないと
高姫
(
たかひめ
)
が
又
(
また
)
お
前
(
まへ
)
の
代
(
かは
)
りに
犠牲
(
ぎせい
)
にならねばならぬから、
259
チツト
心得
(
こころえ
)
て
下
(
くだ
)
されよ。
260
あんな
若
(
わか
)
い
女
(
をんな
)
の
方
(
かた
)
が、
261
何
(
なん
)
ともなしに
渉
(
わた
)
れる
石
(
いし
)
の
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
えを、
262
辷
(
すべ
)
ると
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
道理
(
だうり
)
がない。
263
これも
全
(
まつた
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
前
(
まへ
)
の
罪
(
つみ
)
の
贖
(
あがな
)
ひに、
264
私
(
わたし
)
を
辷
(
すべ
)
りおとし、
265
お
前
(
まへ
)
を
飛込
(
とびこ
)
ませ、
266
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
にお
前
(
まへ
)
の
禊
(
みそぎ
)
を
遊
(
あそ
)
ばしたのだから、
267
決
(
けつ
)
して、
268
高姫
(
たかひめ
)
を
助
(
たす
)
けてやつたなどと
思
(
おも
)
つちやなりませぬぞや』
269
三
(
さん
)
人
(
にん
)
一度
(
いちど
)
に
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあは
)
せ、
270
目
(
め
)
を
丸
(
まる
)
くし、
271
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らせ、
272
高姫
(
たかひめ
)
の
言
(
げん
)
に
呆
(
あき
)
れてゐる。
273
高子姫
(
たかこひめ
)
、
274
お
月
(
つき
)
、
275
お
朝
(
あさ
)
の
三女
(
さんぢよ
)
は、
276
岸
(
きし
)
の
向方
(
むかふ
)
に
停立
(
ていりつ
)
し、
277
白
(
しろ
)
き
細
(
ほそ
)
き
手
(
て
)
を
差出
(
さしだ
)
し『
早
(
はや
)
く
来
(
きた
)
れ』と
差招
(
さしまね
)
いてゐる。
278
高姫
(
たかひめ
)
は
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
指
(
ゆび
)
の
先
(
さき
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れながら
糞垂
(
ばばた
)
れ
腰
(
ごし
)
になつて、
279
怖相
(
こはさう
)
に
向
(
むか
)
ふ
岸
(
ぎし
)
へと
渡
(
わた
)
りつき、
280
太
(
ふと
)
き
息
(
いき
)
をつきながら……
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
……と
二三回
(
にさんくわい
)
繰返
(
くりかへ
)
し、
281
渡
(
わた
)
り
来
(
きた
)
れる
一行
(
いつかう
)
と
共
(
とも
)
に、
282
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女
(
をんな
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
283
得意
(
とくい
)
の
鼻
(
はな
)
を
蠢
(
うごめ
)
かしつつ
心
(
こころ
)
欣々
(
いそいそ
)
従
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
284
(
大正一一・八・二二
旧六・三〇
松村真澄
録)
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