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第四章 (むら)入口(いりぐち)〔九六八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻 篇:第1篇 向日山嵐 よみ(新仮名遣い):むこうやまあらし
章:第4章 村の入口 よみ(新仮名遣い):むらのいりぐち 通し章番号:968
口述日:1922(大正11)年09月15日(旧07月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
孫公は一行に同道しながら宣伝歌を歌った。孫公は筑紫の島へやってきた経緯を歌い、黒姫一行と別行動をしていたところ、大蛇の三公がお愛とお梅を悩ませているところに出くわし、義侠心から助けに入ったが逆に捕われて生き埋めにされ、黒姫に助け出された出来事を歌った。そして、黒姫に一同を助けたことに慢心するなと気をつけた。
次に兼公が宣伝歌を歌いだした。大蛇の三公の右腕となり悪事を働いてきたが、虎公の留守を狙ってお愛を捕えて強談判をしていたところ、お愛の味方をして三公の怒りを買い自分が生き埋めの憂き目にあったことを歌った。そして大蛇の三公を恨みつつも、神様の大御心にならって赦してやろうと歌った。また、自らの罪滅ぼしをも願った。
一同は早くも、屋形の村の入り口にやってきた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-09-23 16:40:30 OBC :rm3504
愛善世界社版:36頁 八幡書店版:第6輯 486頁 修補版: 校定版:39頁 普及版:13頁 初版: ページ備考:
001 向日峠(むかふたうげ)山麓(さんろく)()しかかつたる孫公(まごこう)(さわ)がしき人声(ひとごゑ)()きつけ、002宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)らツカツカと立寄(たちよ)り、003(ゆふ)まぐれに三公(さんこう)手下(てした)(ども)(はか)られて手足(てあし)(しば)られ、004土中(どちう)埋没(まいぼつ)され九死(きうし)一生(いつしやう)(ところ)黒姫(くろひめ)(すく)はれて、005(いま)虎公(とらこう)一行(いつかう)(とも)()国都(くにみやこ)(いた)途中(とちう)繰合(くりあは)せ、006屋方村(やかたむら)三公(さんこう)言向和(ことむけやは)さむと(すす)()途々(みちみち)007足拍子(あしびやうし)()(なが)(うた)をうたつて(けは)しき坂道(さかみち)(くだ)()く。
008孫公黒姫司(くろひめつかさ)(ともな)はれ
009自転倒(おのころ)(じま)(あと)にして
010筑紫(つくし)(しま)()()れば
011(おも)ひもよらぬ(ひろ)(くに)
012山河(やまかは)(きよ)()(あを)
013バナナ無花果(いちじゆく)(その)(ほか)
014(あぢ)よき()()遠近(をちこち)
015木々(きぎ)(こずゑ)(みの)りゐる
016あゝ天国(てんごく)極楽(ごくらく)
017(ただし)(かみ)公園(こうゑん)
018()にも(たの)しき御国(みくに)なり
019筑紫(つくし)(だけ)中腹(ちうふく)
020(こし)をぬかした(その)(とき)
021黒姫司(くろひめつかさ)冷笑(れいせう)
022房公(ふさこう)芳公(よしこう)(うなが)して
023(わたし)()すてて(のぼ)()
024ホンに(おも)へば(はら)()
025(なさけ)()らぬ鬼婆(おにばば)
026(いま)(いま)(まで)(むね)()
027黒姫司(くろひめつかさ)を「ドツコイシヨ」
028(こころ)(なか)で「ウントコシヨ」
029(みな)さま()をつけなさいませ
030蜈蚣(むかで)(おほ)きな(やつ)()
031(あし)()されちや(たま)らない
032(こころ)(うら)んで()りました
033黒姫司(くろひめつかさ)一行(いつかう)
034(いづ)れへ()げて()つたやら
035行方(ゆくへ)()らぬ一人旅(ひとりたび)
036(とり)(けもの)のなき(ごゑ)
037(こころ)(とも)(たの)みつつ
038(いは)根木(ねき)()ふみさくみ
039(おも)たい(あし)(ひき)ずつて
040()国都(くにみやこ)目当(めあて)とし
041(すす)んで(きた)(をり)もあれ
042(みち)ふみ(まよ)ひし向日山(むかふやま)
043(たうげ)(ふもと)森林(しんりん)
044いと(さわ)がしき(ひと)(こゑ)
045こは何事(なにごと)(おこ)りしと
046「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
047(くさむら)()けて細道(ほそみち)
048(さぐ)(さぐ)りて()()れば
049数多(あまた)(をとこ)()()うて
050三人(みたり)男女(なんによ)(しば)()
051(なん)ぢやかんぢやと(いど)()
052此奴(こいつ)あテツキリ悪者(わるもの)
053(ふか)(たく)みに()せられて
054どこかのシヤンが(とら)へられ
055手籠(てご)めに()はむとする(ところ)
056これが()すてておかれうか
057三五教(あななひけう)(かみ)(みち)
058(ひと)難儀(なんぎ)()のあたり
059(なが)めて(あと)へは()かれない
060()つて(うま)れた義侠心(ぎけふしん)
061黒姫司(くろひめつかさ)のした(やう)
062薄情(はくじやう)なことは出来(でき)ないと
063(ひと)(きも)をば()()して
064木蔭(こかげ)()をば(しの)ばせつ
065()国都(くにみやこ)()(たか)
066高山彦(たかやまひこ)()ばはれば
067大蛇(をろち)三公(さんこう)(はじ)めとし
068乾児(こぶん)(やつ)()はあざ(わら)
069(おもて)()げよとぬかす(ゆゑ)
070彼奴(あいつ)()(ふか)(たく)みをば
071(かみ)ならぬ()()(よし)
072なければ(たちま)(そら)(あふ)
073この()(うへ)何者(なにもの)
074ひそんで()るかと()(うち)
075(たちま)()()砂礫(すなつぶて)
076「ウントコドツコイ」目潰(めつぶ)しの
077(その)計略(けいりやく)()せられて
078(まなこ)(くら)(たちま)ちに
079大地(だいち)(しやが)(をり)もあれ
080悪者(わるもの)(ども)(うしろ)より
081(くび)(つな)をば()つかけて
082(うしろ)(たふ)()(あし)
083(ところ)(かま)はず(しば)()
084(たちま)大地(だいち)(あな)()
085無残(むざん)(われ)()(さん)(にん)
086(ふか)土中(どちう)に「ウントコシヨ」
087(いのち)カラガラ()められた
088これ(ほど)(ふか)山奥(やまおく)
089(うづ)められてはモウ駄目(だめ)
090無念(むねん)(なが)らも(いま)此処(ここ)
091「ウントコドツコイ」(たま)()
092(いのち)()ゆることなるか
093あゝ是非(ぜひ)もなし是非(ぜひ)もなし
094前生(ぜんしやう)(つみ)(むく)()
095海洋(かいやう)万里(ばんり)(この)(くに)
096この(やう)破目(はめ)()ちるのか
097(くに)(のこ)せし女房(にようばう)
098(やす)(さぞ)(くや)むだろ
099なぞと(こころ)(いた)めつつ
100一夜(ひとよ)()かす(その)(うち)
101(からだ)(かる)くなつて()
102あゝ(いぶ)かしや(いぶ)かしや
103如何(いか)なる(かみ)(あら)はれて
104(われ)()(すく)はせ(たま)ふかと
105(おも)()もなく「ウントコシヨ」
106(つめ)たくなつた(くち)(なか)
107(つめ)たい(あめ)(かほ)()
108(おどろ)(こころ)取直(とりなほ)
109あたりキヨロキヨロ()まはせば
110(おも)(がけ)なき黒姫(くろひめ)
111(かほ)(のぞ)いて(あき)(ごゑ)
112ヤアヤアお(まへ)孫公(まごこう)
113マアマアよかつた よかつたと
114七六(しちむ)つかしき(かほ)(いろ)
115牡丹(ぼたん)(やう)(さか)えつつ
116やさしき(ことば)を「ドツコイシヨ」
117「ウントコドツコイ」黒姫(くろひめ)
118かけて()れたが「ドツコイシヨ」
119こりや(また)如何(どう)した「ウントコシヨ」
120(すず)しい(かぜ)()(まは)
121あれ(ほど)えぐい()アさまが
122(おれ)(たす)けてくれるとは
123前代(ぜんだい)未聞(みもん)大珍事(だいちんじ)
124合点(がてん)のゆかぬ次第(しだい)だと
125ここまで(おも)うてやつて()
126「ウントコドツコイ」(あぶな)いぞ
127そこには(まむし)が「ウントコシヨ」
128()びつきさうにしてゐるぞ
129足下(あしもと)用心(ようじん)するがよい
130黒姫(くろひめ)さまのハズバンド
131高山彦(たかやまひこ)悪者(わるもの)
132土中(どちう)(ふか)(うづ)められ
133(いま)(いのち)瀬戸際(せとぎは)
134()いて(むね)をば(とどろ)かし
135(うめ)さまをば(せな)()
136はるばる(たす)けに「ドツコイシヨ」
137()でなすつたと()(こと)
138これを(おも)へば黒姫(くろひめ)
139(もと)より(おれ)を「ウントコシヨ」
140(たす)けてやらうと(おも)うての
141(こころ)つくしの(わざ)でない
142サツパリ様子(やうす)不知火(しらぬひ)
143(なみ)のまにまに(なが)()
144(おれ)(たす)けて「ウントコシヨ」
145くれたに(ちがひ)はない(ほど)
146これを(おも)へば黒姫(くろひめ)さま
147(まへ)(まこと)心根(こころね)
148「ウントコドツコイ」おれの()
149(たす)ける(つも)りぢやなかつたが
150三五教(あななひけう)(かみ)さまに
151()らず()らずに使(つか)はれて
152「ウントコドツコイ」孫公(まごこう)
153(たす)けさして(いただ)いた
154(かみ)仕組(しぐみ)(ちが)ひない
155(まへ)もこれから(よろこ)んで
156結構(けつこう)()神徳(かげ)沢山(たくさん)
157(いただ)きましたと(かみ)(まへ)
158()(れい)(まを)さにやなるまいぞ
159(まへ)(つみ)孫公(まごこう)
160(たす)けた()神徳(かげ)(かる)うなり
161高山彦(たかやまひこ)()亭主(ていしゆ)
162いつかは()はれる(こと)だらう
163かう()具合(ぐあひ)に「ウントコシヨ」
164(ゆふ)べの事件(じけん)解剖(かいばう)して
165一々(いちいち)解釈(かいしやく)(くだ)(とき)
166(まへ)(ため)には(まご)さまは
167ホンに(たふと)救主(すくひぬし)
168一度(いちど)()(れい)()うたとて
169メツタに(そん)はいくまいぞ
170こんな()神徳(かげ)(いただ)いて
171孫公(まごこう)さまに反対(あべこべ)
172(れい)()はしちやすまないぞ
173こんな(こと)をば()うたなら
174高姫(たかひめ)もどきと()ふだろが
175(けつ)してさうではない(ほど)
176孫公(まごこう)(まも)(かみ)さまが
177(まへ)身魂(みたま)一寸(ちよつと)()
178御用(ごよう)()てて「ウントコシヨ」
179(おれ)(たす)けて(くだ)さつた
180(けつ)して竜宮(りうぐう)乙姫(をとひめ)
181うつつた(にく)生宮(いきみや)
182(あい)(かた)孫公(まごこう)
183兼公(かねこう)さまを(たす)けたと
184慢心(まんしん)しては()かないぞ
185「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
186益々(ますます)(さか)がキツなつた
187何程(なにほど)(さか)(くだ)るとも
188「ウントコドツコイ」(くだ)らない
189サカ理屈(りくつ)をば()(やつ)
190(かなら)(おも)うて(くだ)さるな
191これもやつぱり黒姫(くろひめ)
192常平常(つねへいぜい)のお仕込(しこ)みで
193こんな屁理屈(へりくつ)()ふやうに
194「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
195なつて(しま)うたか()らないが
196(かなら)気悪(きわる)う「ドツコイシヨ」
197(おも)はぬ(やう)にしてお()
198あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
199御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
200(うた)ひつつ、201一行(いつかう)(へそ)をよらせ(なが)ら、202滑稽(こつけい)(まじ)りに黒姫(くろひめ)にからかひ、203坂路(さかみち)(のぼ)りつ(くだ)りつ(すす)()く。
204 兼公(かねこう)覚束(おぼつか)なき口調(くてう)にて(また)もや(うた)()す。
205兼公『あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
206(かみ)使(つかひ)黒姫(くろひめ)
207向日峠(むかふたうげ)山麓(さんろく)
208さまよひ(きた)つて吾々(われわれ)
209危難(きなん)(すく)うて(くだ)さつた
210おれは(もと)から(わる)(やつ)
211大蛇(をろち)乾児(こぶん)取入(とりい)つて
212いろいろ雑多(ざつた)画策(くわくさく)
213参謀(さんぼう)次長(じちやう)地位(ちゐ)(まで)
214(のぼ)つて()つた代物(しろもの)
215人情(にんじやう)()らぬ三公(さんこう)
216虎公(とらこう)さまの不在(るす)()
217数多(あまた)乾児(こぶん)をさし()けて
218(あい)(かた)(しば)()
219かついで(きた)(くすのき)
220(ひと)(かよ)はぬ木下(こした)かげ
221(いはほ)(うへ)()()めて
222おいらを使(つか)つて「ドツコイシヨ」
223そこには木株(きかぶ)がころげてる
224(みな)さま()をつけなされませ
225無理(むり)難題(なんだい)()きかけて
226うまくやらうとした(ところ)
227天道(てんだう)さまは「ドツコイシヨ」
228(あく)には(けつ)して(たす)けない
229さすが三公(さんこう)(よわ)りはて
230(あい)(かた)逆様(さかさま)
231()()められて(がふ)()やし
232男女(だんぢよ)三人(みたり)無残(むざん)にも
233土中(どちう)(ふか)()めよつた
234何程(なにほど)度胸(どきよう)の「ウントコシヨ」
235(ひと)にすぐれた兼公(かねこう)
236手足(てあし)(しば)られ(あな)()
237(うづ)められては(たま)らない
238寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)(おも)ひきや
239天地(てんち)(かみ)御恵(みめぐみ)
240(ふたた)(この)()の「ドツコイシヨ」
241あかりを()せて(くだ)さつた
242これもヤツパリ黒姫(くろひめ)
243()しになつた(その)()神徳(かげ)
244(わたくし)感謝(かんしや)(いた)します
245「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
246虎公(とらこう)さまやお(あい)さま
247さぞやお(まへ)は「ドツコイシヨ」
248随分(ずゐぶん)得意(とくい)御座(ござ)いませう
249()んだと(おも)うたハズバンド
250行方(ゆくへ)()れぬ女房(にようばう)
251(おも)はず()らず(めぐ)()
252無事(ぶじ)であつたか(うれ)しいと
253(くち)には()はねど(かほ)(いろ)
254チラリとおれは()ておいた
255ホンに目出度(めでた)いことだなア
256サアサア(これ)から「ドツコイシヨ」
257屋方(やかた)(むら)乗込(のりこ)んで
258大蛇(をろち)三公(さんこう)素首(そつくび)
259()()きやらむと(おも)へども
260「ウントコドツコイ」まて(しば)
261(かみ)(をしへ)()くからは
262そんな無理(むり)をばやつたなら
263根底(ねそこ)(くに)(おと)されて
264無限(むげん)()をばなめなけりや
265「ウントコドツコイ」ならうまい
266さはさり(なが)(あんま)りの
267三公(さんこう)仕打(しうち)(がふ)()
268何程(なにほど)(おも)(なほ)しても
269小癪(こしやく)にさはつてしようがない
270あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
271御霊(みたま)(さち)はひましまして
272(わたし)(いま)まで(つく)したる
273悪虐(あくぎやく)無道(ぶだう)罪科(つみとが)
274何卒(なにとぞ)(ゆる)して(くだ)さんせ
275(わたし)大蛇(をろち)三公(さんこう)
276(にく)(やつ)ぢやと(おも)へども
277仁慈(じんじ)無限(むげん)(かみ)さまの
278大御心(おほみこころ)神習(かむなら)
279今度(こんど)(ゆる)してやりませう
280国魂神(くにたまがみ)純世姫(すみよひめ)
281(その)(ほか)(もも)(かみ)(たち)
282(わたし)三公(さんこう)(ゆる)すよに
283如何(いか)なる(ふか)罪科(つみとが)
284どうぞ(ゆる)して(くだ)さんせ
285(こころ)(きよ)()(きよ)
286(すめ)大神(おほかみ)(おん)(まへ)
287真心(まごころ)こめて兼公(かねこう)
288(つつし)(ゐやま)()ぎまつる
289(つつし)(ゐやま)()ぎまつる』
290(うた)(なが)(すす)()く。291(すす)んで()るのは(はや)いもの、292(はや)くも屋方(やかた)(むら)入口(いりぐち)(さし)かかる。293大蛇(をろち)三公(さんこう)(やかた)は、294コンモリとした(かし)(もり)(なか)に、295(わづか)(その)(むね)(あら)はしてゐる。
296大正一一・九・一五 旧七・二四 松村真澄録)
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