新公、徳公、久公は酒の機嫌でなんとなく寝られなく、三公の館の庭を歩きながら、よもやま話にふけっている。新公は、お梅は実は虎公の妹ではなく拾い子で、昔黄泉比良坂の戦いで活躍した松・竹・梅の三姉妹の宣伝使の生まれ変わりだとしゃべってしまう。
三公と虎公に一喝された三人は、田圃へ酔い覚ましに行ってしまった。黒姫は、三人の話が本当かどうか、虎公とお梅に確かめる。お梅の身の上話によれば、両親はバラモン教の鬼雲彦に亡き者とされ、自分も悪者にかどわかされていたところを、虎公に助けられたのだという。
孫公は、今度は三公の身の上話に話題を変えた。三公は実はエヂプトの三五教宣伝使・春公とお常の子であったという。父母がスッポンの湖に棲むという大蛇を言向け和しに出かけたが、力及ばず湖にのまれて亡くなってしまったという。
エヂプトの酋長である夏山彦の託宣によれば、三公の両親は自分自身の執着心が凝って大蛇となり、言霊戦に敗れて亡くなったのだから、三公は両親の冥福を祈る生活を送るべきだと諭されたという。
しかし三公は両親の仇を取ろうと、夏山彦の親切な申し出も断ってスッポンの湖に出かけたが、その広大さに力不足を感じ、熊襲の国にやってきて屋方村で侠客をはじめ、密かにスッポンの湖の大蛇退治のために子分を集めていたのだという。
お愛についても素性をしっており、恋慕もあったが、大蛇退治に効験ある霊系であろうという目算もあったのだ、と明かした。そして、悪を退治するために自ら悪人となり悪人の子分を集めていたことが、三五教の教理に背いていたことを告白して懺悔した。
三公の身の上話を聞いて、虎公の発案で早速、虎公、お愛、三公、孫公の四人は、スッポンの湖の大蛇を言向け和すべく出立することになった。
黒姫は火の国へ先を行くことになり、三公と虎公の命で、道案内として徳公と久公が同道することになった。