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第35巻(戌の巻)
序文
総説歌
第1篇 向日山嵐
01 言の架橋
〔965〕
02 出陣
〔966〕
03 進隊詩
〔967〕
04 村の入口
〔968〕
05 案外
〔969〕
06 歌の徳
〔970〕
07 乱舞
〔971〕
08 心の綱
〔972〕
09 分担
〔973〕
第2篇 ナイルの水源
10 夢の誡
〔974〕
11 野宿
〔975〕
12 自称神司
〔976〕
13 山颪
〔977〕
14 空気焔
〔978〕
15 救の玉
〔979〕
16 浮島の花
〔980〕
第3篇 火の国都
17 霧の海
〔981〕
18 山下り
〔982〕
19 狐の出産
〔983〕
20 疑心暗狐
〔984〕
21 暗闘
〔985〕
22 当違
〔986〕
23 清交
〔987〕
24 歓喜の涙
〔988〕
余白歌
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第二〇章
疑心
(
ぎしん
)
暗狐
(
あんこ
)
〔九八四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
篇:
第3篇 火の国都
よみ(新仮名遣い):
ひのくにみやこ
章:
第20章 疑心暗狐
よみ(新仮名遣い):
ぎしんあんこ
通し章番号:
984
口述日:
1922(大正11)年09月17日(旧07月26日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
久公は旅路を行きながら、荒井ケ岳の道中を振り返り、黒姫が白狐の赤子を取り上げたことにまだ疑いの念を持ち、歌に歌いながら歩いている。
黒姫は道中、宣伝歌を歌って久公に返した。そしてたとえ畜生であろうとも神様の仁慈に預かる存在であり、お互いに助け合うのが神の道であると説いた。そして久公の迷いを指摘し、自分への疑いを晴らすようにと歌いながら進んで行く。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-01 12:00:28
OBC :
rm3520
愛善世界社版:
237頁
八幡書店版:
第6輯 556頁
修補版:
校定版:
251頁
普及版:
92頁
初版:
ページ備考:
001
徳公
『
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
002
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
従
(
したが
)
ひて
003
荒井
(
あらゐ
)
ケ
岳
(
だけ
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く
004
「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
005
転
(
こ
)
けつ
輾
(
まろ
)
びつ
両人
(
りやうにん
)
が
006
辺
(
あた
)
りに
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
りつつ
007
五合目
(
ごがふめ
)
あたりに
来
(
き
)
て
見
(
み
)
れば
008
天
(
てん
)
の
与
(
あた
)
へか
岩清水
(
いはしみづ
)
009
人待顔
(
ひとまちがほ
)
に
湧
(
わ
)
いてゐる
010
コリヤ
堪
(
たま
)
らぬと
飛付
(
とびつ
)
いて
011
一口
(
ひとくち
)
喉
(
のど
)
をうるほせば
012
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ひたる
013
汗
(
あせ
)
の
曲津
(
まがつ
)
はどこへやら
014
縮
(
ちぢ
)
み
上
(
あが
)
つて「ドツコイシヨ」
015
寂滅
(
じやくめつ
)
為楽
(
ゐらく
)
となりよつた
016
黒姫
(
くろひめ
)
さまが
句
(
く
)
を
作
(
つく
)
る
017
俺
(
おれ
)
も
久公
(
きうこう
)
も「ドツコイシヨ」
018
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
驥尾
(
きび
)
に
付
(
ふ
)
し
019
天下
(
てんか
)
の
名句
(
めいく
)
をひねりだす
020
諄々
(
じゆんじゆん
)
として「ウントコシヨ」
021
尽
(
つ
)
きざる
姿
(
すがた
)
は「ドツコイシヨ」
022
泉
(
いづみ
)
の
涌
(
わ
)
く
如
(
ごと
)
面白
(
おもしろ
)
く
023
甦
(
よみがへ
)
りたる
心地
(
ここち
)
して
024
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
むる
折柄
(
をりから
)
に
025
常助
(
つねすけ
)
さまと
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
026
慌
(
あわただ
)
しくもやつて
来
(
き
)
て
027
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
手
(
て
)
をつかへ
028
途中
(
とちう
)
に
女房
(
にようばう
)
が「ドツコイシヨ」
029
又々
(
またまた
)
坂
(
さか
)
がキツウなつた
030
背中
(
せなか
)
を
用心
(
ようじん
)
するがよい
031
お
常
(
つね
)
の
産気
(
さんけ
)
がつきました
032
此
(
この
)
山中
(
やまなか
)
の「ウントコシヨ」
033
人
(
ひと
)
も
通
(
とほ
)
らぬ
路傍
(
みちばた
)
で
034
どうにも
斯
(
か
)
うにも
仕様
(
しやう
)
がない
035
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
乍
(
なが
)
ら「ドツコイシヨ」
036
取上
(
とりあ
)
げ
婆
(
ば
)
さまになつてくれと
037
誠
(
まこと
)
しやかに
頼
(
たの
)
む
故
(
ゆゑ
)
038
ウンと
呑
(
の
)
み
込
(
こ
)
み
黒姫
(
くろひめ
)
様
(
さま
)
が
039
いと
親切
(
しんせつ
)
に
承諾
(
しようだく
)
し
040
夏草
(
なつくさ
)
茂
(
しげ
)
る
木下
(
こした
)
かげ
041
ガサガサ
進
(
すす
)
んで
行
(
ゆ
)
く
間
(
うち
)
に
042
大木
(
おほき
)
の
蔭
(
かげ
)
に「ウントコシヨ」
043
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
が
坐
(
すわ
)
つてる
044
黒姫
(
くろひめ
)
さまは
親切
(
しんせつ
)
に
045
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
に「ドツコイシヨ」
046
知
(
し
)
るや
知
(
し
)
らずや
忽
(
たちま
)
ちに
047
襷
(
たすき
)
十字
(
じふじ
)
にあやなして
048
「ウントコドツコイ ウントコセイ」
049
力
(
ちから
)
をきはめて
腰
(
こし
)
抱
(
いだ
)
き
050
介抱
(
かいほう
)
すれば
忽
(
たちま
)
ちに
051
キヤツと
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
す
狐
(
きつね
)
の
子
(
こ
)
052
又
(
また
)
もや
女
(
をんな
)
の
子狐
(
こぎつね
)
が
053
出
(
で
)
るかと
思
(
おも
)
へば
又
(
また
)
一
(
ひと
)
つ
054
男狐
(
をとこぎつね
)
が
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
た
055
又
(
また
)
もや
一
(
ひと
)
つの
狐
(
きつね
)
の
子
(
こ
)
056
よくよく
見
(
み
)
れば
牝
(
めす
)
だつた
057
狐
(
きつね
)
が
生
(
う
)
んだ
二夫婦
(
ふたふうふ
)
058
親
(
おや
)
を
合
(
あは
)
して
三夫婦
(
みふうふ
)
が
059
太
(
ふと
)
い
尻尾
(
しつぽ
)
をプリプリと
060
右
(
みぎ
)
や
左
(
ひだり
)
にふりながら
061
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
礼
(
れい
)
言
(
い
)
うて
062
後
(
あと
)
振返
(
ふりかへ
)
り
振返
(
ふりかへ
)
り
063
叢
(
くさむら
)
分
(
わ
)
けてガサガサと
064
姿
(
すがた
)
かくした
面白
(
おもしろ
)
さ
065
尻尾
(
しつぽ
)
計
(
ばか
)
りか「ウントコシヨ」
066
頭
(
あたま
)
の
毛
(
け
)
まで
皆
(
みな
)
白
(
しろ
)
い
067
雪
(
ゆき
)
を
欺
(
あざむ
)
く
白狐
(
びやくこ
)
さま
068
必
(
かなら
)
ず
御恩
(
ごおん
)
忘
(
わす
)
れぬと
069
黒姫
(
くろひめ
)
さまに
云
(
い
)
ひよつた
070
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば「ドツコイシヨ」
071
狐
(
きつね
)
の
取上
(
とりあ
)
げする
産婆
(
さんば
)
072
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
や
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
や
073
大蛇
(
をろち
)
の
端
(
はし
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
074
助
(
たす
)
けてやるのが
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
075
取
(
と
)
り
上
(
あ
)
げますといひなすつた
076
「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
077
ホンに
感心
(
かんしん
)
々々
(
かんしん
)
と
078
股
(
また
)
を
拡
(
ひろ
)
げて
坂路
(
さかみち
)
を
079
下
(
くだ
)
りながらも
何
(
なん
)
となく
080
黒姫
(
くろひめ
)
さまのスタイルが
081
厭
(
いや
)
らしうなつて「ドツコイシヨ」
082
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
くなりました
083
「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
084
どうせ
碌
(
ろく
)
な「ドツコイシヨ」
085
婆
(
ば
)
さまぢやないと
思
(
おも
)
てゐた
086
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
年古
(
としふる
)
く
087
住居
(
ぢうきよ
)
を
致
(
いた
)
して
世
(
よ
)
を
紊
(
みだ
)
す
088
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
ぢやあるまいか
089
「ウントコドツコイ」
竜宮
(
りうぐう
)
の
090
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
と
091
話
(
はなし
)
の
端
(
はし
)
に
聞
(
き
)
いた
故
(
ゆゑ
)
092
此奴
(
こいつ
)
あウツカリ
出来
(
でき
)
ないぞ
093
グヅグヅしてゐちや
頭
(
あたま
)
から
094
「ヤツトコシヨー ヤツトコシヨー」
095
「それそれそこに
石
(
いし
)
がある」
096
呑
(
の
)
まれて
了
(
しま
)
ふと
思
(
おも
)
うた
故
(
ゆゑ
)
097
猫
(
ねこ
)
を
被
(
かぶ
)
つてハイハイと
098
「ウントコドツコイ」
痩馬
(
やせうま
)
を
099
牽
(
ひ
)
いて
坂路
(
さかみち
)
登
(
のぼ
)
るよに
100
いとおとなしう
従
(
したが
)
うて
101
此処
(
ここ
)
まで
従
(
つ
)
いて「ドツコイシヨ」
102
やつて
来
(
き
)
たのは
徳公
(
とくこう
)
だ
103
狐
(
きつね
)
の
嫁入
(
よめいり
)
「ドツコイシヨ」
104
すると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
聞
(
き
)
いたれど
105
其
(
その
)
時
(
とき
)
や
日和
(
ひより
)
で
雨
(
あめ
)
が
降
(
ふ
)
る
106
天道
(
てんだう
)
さまがガンガンと
107
お
照
(
て
)
らし
遊
(
あそ
)
ばす
真昼中
(
まひるなか
)
108
魔性
(
ましやう
)
の
狐
(
きつね
)
が
現
(
あら
)
はれて
109
あつかましくも
人
(
ひと
)
の
前
(
まへ
)
110
尻尾
(
しつぽ
)
をかくしてやつて
来
(
き
)
て
111
取上
(
とりあ
)
げてくれとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
112
「ウントコドツコイ」
此
(
この
)
方
(
かた
)
が
113
人間
(
にんげん
)
様
(
さま
)
であつたなら
114
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
体
(
からだ
)
の
畜生
(
ちくしやう
)
が
115
如何
(
どう
)
して
恐
(
おそ
)
れて
近
(
ちか
)
よらう
116
黒姫
(
くろひめ
)
さまは「ドツコイシヨ」
117
てつきり
狐
(
きつね
)
の
親玉
(
おやだま
)
か
118
銀毛
(
ぎんまう
)
八尾
(
はつぴ
)
の「ドツコイシヨ」
119
古
(
ふる
)
い
狐
(
きつね
)
の
御
(
ご
)
化身
(
けしん
)
か
120
眉毛
(
まゆげ
)
に
唾
(
つば
)
つけ
眺
(
なが
)
むれど
121
根
(
ね
)
つから
尻尾
(
しつぽ
)
が
見
(
み
)
えよらぬ
122
余程
(
よつぽど
)
劫
(
がふ
)
経
(
へ
)
た
奴
(
やつ
)
だらうか
123
「ウントコドツコイ ヤツトコシヨ」
124
コレコレモウシ
黒
(
くろ
)
さまえ
125
私
(
わたし
)
はお
前
(
まへ
)
を「ウントコシヨ」
126
此処迄
(
ここまで
)
送
(
おく
)
つた
返礼
(
へんれい
)
に
127
「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
128
足許
(
あしもと
)
危
(
あぶ
)
なうなつて
来
(
き
)
た
129
私
(
わたし
)
は
決
(
けつ
)
してだまさぬと
130
一言
(
いちごん
)
誓
(
ちか
)
うて
下
(
くだ
)
さんせ
131
狐
(
きつね
)
を
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
せたよな
132
怪
(
あや
)
しい
気分
(
きぶん
)
になりました
133
オイオイ
久公
(
きうこう
)
如何
(
どう
)
思
(
おも
)
ふ
134
ホンに
怪体
(
けたい
)
な「ウントコシヨ」
135
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
ぢやなア
136
荒井峠
(
あらゐたうげ
)
と
思
(
おも
)
てたら
137
人跡
(
じんせき
)
絶
(
た
)
えし
山奥
(
やまおく
)
の
138
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
の
吼
(
ほ
)
えたける
139
深山
(
みやま
)
の
奥
(
おく
)
かも
知
(
し
)
れないぞ
140
どしてもこしても
腑
(
ふ
)
におちぬ
141
コンコンさまの
御
(
ご
)
出産
(
しゆつさん
)
142
取上
(
とりあ
)
げ
婆々
(
ばば
)
アの
黒
(
くろ
)
さまに
143
常助
(
つねすけ
)
お
常
(
つね
)
と
化
(
ば
)
けた
奴
(
やつ
)
144
親分
(
おやぶん
)
子分
(
こぶん
)
の
関係
(
くわんけい
)
で
145
あんな
事
(
こと
)
をば「ドツコイシヨ」
146
平気
(
へいき
)
な
顔
(
かほ
)
で
白昼
(
はくちう
)
に
147
やつたであらうか
恐
(
おそ
)
ろしい
148
荒井
(
あらゐ
)
の
峠
(
たうげ
)
はいつとても
149
不思議
(
ふしぎ
)
な
所
(
とこ
)
とは
聞
(
き
)
きつれど
150
前代
(
ぜんだい
)
未聞
(
みもん
)
の
此
(
この
)
怪事
(
くわいじ
)
151
此
(
この
)
謎
(
なぞ
)
とくのは
六
(
む
)
つかしい
152
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
153
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
154
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
純世姫
(
すみよひめ
)
155
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれましまして
156
黒姫
(
くろひめ
)
さまは
善神
(
ぜんしん
)
か
157
但
(
ただし
)
は
悪魔
(
あくま
)
かハツキリと
158
どうぞ
立別
(
たてわ
)
け
下
(
くだ
)
さんせ
159
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
160
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
161
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
162
任
(
まか
)
して
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します
163
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
か
曲神
(
まがかみ
)
か
164
但
(
ただし
)
は
狐
(
きつね
)
の
親分
(
おやぶん
)
か
165
合点
(
がてん
)
のいかない
黒姫
(
くろひめ
)
を
166
正体
(
しやうたい
)
現
(
あら
)
はし
両人
(
りやうにん
)
が
167
心
(
こころ
)
を
安
(
やす
)
めて
下
(
くだ
)
さんせ
168
縦
(
たて
)
からみても「ドツコイシヨ」
169
横
(
よこ
)
から
見
(
み
)
ても
黒姫
(
くろひめ
)
は
170
矢張
(
やつぱり
)
人
(
ひと
)
のスタイルだ
171
之
(
これ
)
が
狐
(
きつね
)
であつたなら
172
余程
(
よつぽど
)
上手
(
じやうづ
)
に
化
(
ば
)
けたもの
173
ホンに
分
(
わか
)
らぬ
今日
(
けふ
)
の
旅
(
たび
)
174
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
175
久公
(
きうこう
)
シツカリして
居
(
を
)
れよ
176
それそれ そこに
石
(
いし
)
がある
177
黒姫
(
くろひめ
)
さまを
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
て
178
お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
と
両人
(
りやうにん
)
は
179
あとから
従
(
つ
)
いて「ドツコイシヨ」
180
尻
(
しり
)
のあたりを
査
(
しら
)
べつつ
181
審神
(
さには
)
し
乍
(
なが
)
ら
下
(
くだ
)
らうか
182
モウシモウシ
黒姫
(
くろひめ
)
さま
183
どうぞお
先
(
さき
)
へ「ドツコイシヨ」
184
あなたはお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さんせ
185
後
(
うしろ
)
に
目玉
(
めだま
)
のない
私
(
わたし
)
186
どんな
悪戯
(
いたづら
)
されよかと
187
心
(
こころ
)
にかかつてなりませぬ
188
疑心
(
ぎしん
)
暗鬼
(
あんき
)
か
知
(
し
)
らねども
189
お
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
化者
(
ばけもの
)
と
190
一緒
(
いつしよ
)
に
行
(
ゆ
)
くのは
真平
(
まつぴら
)
だ
191
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
192
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
193
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
194
黒姫
(
くろひめ
)
一行
(
いつかう
)
は
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れて
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
195
黒姫
(
くろひめ
)
は
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
196
黒姫
『
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
や
197
豊国姫
(
とよくにひめの
)
大御神
(
おほみかみ
)
198
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
が
199
開
(
ひら
)
き
玉
(
たま
)
ひし
三五
(
あななひ
)
の
200
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
ふる
宣伝使
(
せんでんし
)
201
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
と
202
神
(
かみ
)
の
任
(
よ
)
さしの
黒姫
(
くろひめ
)
を
203
何
(
なん
)
ぢや かんぢやと
罵
(
ののし
)
つて
204
誠
(
まこと
)
を
知
(
し
)
らぬ
困
(
こま
)
り
者
(
もの
)
205
仮令
(
たとへ
)
狐
(
きつね
)
や
狸
(
たぬき
)
でも
206
残
(
のこ
)
らず
神
(
かみ
)
の
造
(
つく
)
らしし
207
尊
(
たふと
)
き
身魂
(
みたま
)
である
程
(
ほど
)
に
208
曇
(
くも
)
り
切
(
き
)
つたる
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
209
人間
(
にんげん
)
よりも
畜生
(
ちくしやう
)
の
210
狐
(
きつね
)
や
狸
(
たぬき
)
の
魂
(
たましひ
)
が
211
神
(
かみ
)
の
御目
(
みめ
)
より
眺
(
なが
)
むれば
212
遥
(
はるか
)
に
優
(
まさ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
程
(
ほど
)
に
213
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
も
白雲
(
しらくも
)
の
214
包
(
つつ
)
む
山路
(
やまぢ
)
をふみこえて
215
迷
(
まよ
)
ひに
迷
(
まよ
)
ふ
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れ
216
少
(
すこ
)
しく
心
(
こころ
)
をおちつけて
217
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
が
言霊
(
ことたま
)
を
218
味
(
あぢ
)
はひ
聞
(
き
)
くがよからうぞ
219
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
220
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
五六七
(
みろく
)
の
世
(
よ
)
221
松
(
まつ
)
の
神代
(
かみよ
)
も
近
(
ちか
)
づいて
222
四方
(
よも
)
の
山々
(
やまやま
)
花
(
はな
)
開
(
ひら
)
き
223
小鳥
(
ことり
)
は
謡
(
うた
)
ひ
海河
(
うみかは
)
は
224
清
(
きよ
)
くさやけくすみ
渡
(
わた
)
る
225
尊
(
たふと
)
き
御世
(
みよ
)
の
開
(
ひら
)
け
口
(
ぐち
)
226
さうなる
上
(
うへ
)
は
人間
(
にんげん
)
は
227
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり
鳥
(
とり
)
獣
(
けもの
)
228
這
(
は
)
ふ
虫
(
むし
)
迄
(
まで
)
も
悉
(
ことごと
)
く
229
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
御
(
おん
)
露
(
つゆ
)
を
230
与
(
あた
)
へて
尊
(
たふと
)
き
天国
(
てんごく
)
の
231
姿
(
すがた
)
をうつす
宣伝使
(
せんでんし
)
232
海
(
うみ
)
の
内外
(
うちと
)
に
使
(
つか
)
はして
233
神
(
かみ
)
の
御旨
(
みむね
)
を
隈
(
くま
)
もなく
234
開
(
ひら
)
かせ
玉
(
たま
)
ふ
三五
(
あななひ
)
の
235
深
(
ふか
)
き
仕組
(
しぐみ
)
を
知
(
し
)
らないか
236
狐狸
(
きつねたぬき
)
と
言
(
い
)
はれても
237
此
(
この
)
黒姫
(
くろひめ
)
は
構
(
かま
)
はない
238
さはさり
乍
(
なが
)
ら
徳公
(
とくこう
)
よ
239
チツトは
慎
(
つつし
)
みなされませ
240
此
(
この
)
神国
(
かみくに
)
は
言霊
(
ことたま
)
の
241
幸
(
さち
)
はひ
助
(
たす
)
け
生
(
い
)
くる
国
(
くに
)
242
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くも
三五
(
あななひ
)
の
243
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
を
見違
(
みちが
)
へて
244
銀毛
(
ぎんまう
)
八尾
(
はちび
)
の
狐
(
きつね
)
とは
245
誤解
(
ごかい
)
するにも
程
(
ほど
)
がある
246
お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
にかかりたる
247
其
(
その
)
黒幕
(
くろまく
)
を
逸早
(
いちはや
)
く
248
外
(
はづ
)
して
私
(
わたし
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
よ
249
何
(
なに
)
ほど
黒
(
くろ
)
い
黒姫
(
くろひめ
)
も
250
普通
(
ふつう
)
の
人
(
ひと
)
ではない
程
(
ほど
)
に
251
竜宮海
(
りうぐうかい
)
の
底
(
そこ
)
深
(
ふか
)
く
252
鎮
(
しづ
)
まりいます
乙姫
(
おとひめ
)
の
253
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
生宮
(
いきみや
)
ぞ
254
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
255
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
256
徳
(
とく
)
、
久
(
きう
)
二人
(
ふたり
)
の
魂
(
たましひ
)
に
257
光
(
ひかり
)
を
与
(
あた
)
へ
村肝
(
むらきも
)
の
258
心
(
こころ
)
の
暗
(
やみ
)
を
晴
(
は
)
らしませ
259
三五教
(
あななひけう
)
の
黒姫
(
くろひめ
)
が
260
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
261
慎
(
つつし
)
み
敬
(
ゐやま
)
ひ
願
(
ね
)
ぎまつる
262
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
263
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
264
と
歌
(
うた
)
ひつつ、
265
坂路
(
さかみち
)
を
急
(
いそ
)
ぎ
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
266
(
大正一一・九・一七
旧七・二六
松村真澄
録)
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