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第35巻(戌の巻)
序文
総説歌
第1篇 向日山嵐
01 言の架橋
〔965〕
02 出陣
〔966〕
03 進隊詩
〔967〕
04 村の入口
〔968〕
05 案外
〔969〕
06 歌の徳
〔970〕
07 乱舞
〔971〕
08 心の綱
〔972〕
09 分担
〔973〕
第2篇 ナイルの水源
10 夢の誡
〔974〕
11 野宿
〔975〕
12 自称神司
〔976〕
13 山颪
〔977〕
14 空気焔
〔978〕
15 救の玉
〔979〕
16 浮島の花
〔980〕
第3篇 火の国都
17 霧の海
〔981〕
18 山下り
〔982〕
19 狐の出産
〔983〕
20 疑心暗狐
〔984〕
21 暗闘
〔985〕
22 当違
〔986〕
23 清交
〔987〕
24 歓喜の涙
〔988〕
余白歌
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第一三章
山颪
(
やまおろし
)
〔九七七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻
篇:
第2篇 ナイルの水源
よみ(新仮名遣い):
ないるのすいげん
章:
第13章 山颪
よみ(新仮名遣い):
やまおろし
通し章番号:
977
口述日:
1922(大正11)年09月16日(旧07月25日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
白山峠の頂上で選挙で虎公一行は選挙で孫公を宣伝使・孫公別に任じたが、そのことを玉治別宣伝使の歌で叱責された。孫公別は坂を下りながら歌を歌い、叱責は大蛇の仕業なのか、神の戒めなのか測り兼ねる胸中を明かした。
お愛は孫公別を諭す歌を歌った。三公は、孫公別が頼りないので黒姫を頼んだらよかったと未練を歌った。虎公は、孫公を励ましつつ、大蛇に対する言霊戦に皆を奮い立たせる歌を歌った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-27 11:23:50
OBC :
rm3513
愛善世界社版:
144頁
八幡書店版:
第6輯 524頁
修補版:
校定版:
152頁
普及版:
57頁
初版:
ページ備考:
001
白山峠
(
しらやまたうげ
)
の
絶頂
(
ぜつちやう
)
で
002
普通
(
ふつう
)
選挙
(
せんきよ
)
の
其
(
その
)
結果
(
けつくわ
)
003
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
004
孫公別
(
まごこうわけ
)
と
名
(
な
)
のりつつ
005
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
と
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
006
肩肱
(
かたひぢ
)
怒
(
いか
)
らし
宣伝歌
(
せんでんか
)
007
歌
(
うた
)
うて
勇
(
いさ
)
む
折柄
(
をりから
)
に
008
いづこともなく
神
(
かみ
)
の
声
(
こゑ
)
009
われは
玉治別
(
たまはるわけ
)
司
(
つかさ
)
010
一寸先
(
いつすんさき
)
の
見
(
み
)
えもせぬ
011
凡夫
(
ぼんぶ
)
の
身
(
み
)
にて
宣伝使
(
せんでんし
)
012
選挙
(
せんきよ
)
するとは
何事
(
なにごと
)
ぞ
013
早
(
はや
)
く
心
(
こころ
)
を
直
(
なほ
)
せよと
014
云
(
い
)
はれて
孫公
(
まごこう
)
は
悄気
(
せうげ
)
かへり
015
肩
(
かた
)
をすぼめてすたすたと
016
白山峠
(
しらやまたうげ
)
の
峻坂
(
しゆんばん
)
を
017
東北
(
とうほく
)
さして
下
(
くだ
)
りつつ
018
足
(
あし
)
の
拍子
(
ひやうし
)
を
取
(
と
)
りながら
019
「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
020
倒
(
こ
)
けなよ
倒
(
こ
)
けなよ
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けよ
021
言
(
こと
)
あげしながら
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
022
孫公別
(
まごこうわけ
)
は
足許
(
あしもと
)
覚束
(
おぼつか
)
なく
爪先
(
つまさき
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れながら、
023
坂道
(
さかみち
)
を
下
(
くだ
)
りつつ
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
したり。
024
孫公別
『
白山峠
(
しらやまたうげ
)
の
絶頂
(
ぜつちやう
)
で
025
「ウントコドツコイ
危
(
あぶ
)
ないぞ」
026
言霊戦
(
ことたません
)
に
出陣
(
しゆつぢん
)
の
027
其
(
その
)
統帥
(
とうすい
)
を
得
(
え
)
むものと
028
虎
(
とら
)
、
三
(
さん
)
、お
愛
(
あい
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
029
鳩首
(
きうしゆ
)
謀議
(
ぼうぎ
)
の
其
(
その
)
結果
(
けつくわ
)
030
「ウントコドツコイ」
又
(
また
)
辷
(
すべ
)
る
031
俺
(
おれ
)
をば
尊
(
たふと
)
い
宣伝使
(
せんでんし
)
032
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
にして
呉
(
く
)
れた
033
世
(
よ
)
の
諺
(
ことわざ
)
にも
云
(
い
)
ふぢやないか
034
「ウントコドツコイ」
名
(
な
)
は
実
(
じつ
)
の
035
賓
(
ひん
)
ではなうて
実
(
じつ
)
の
主
(
しゆ
)
と
036
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
を
037
一同
(
いちどう
)
遵奉
(
じゆんぽう
)
仕
(
つかまつ
)
り
038
互
(
たがひ
)
に
心
(
こころ
)
を
合
(
あは
)
せあひ
039
選
(
えら
)
むだ
処
(
ところ
)
を「ウントコシヨ」
040
「ドツコイ」
頭
(
あたま
)
の
天辺
(
てんぺ
)
から
041
玉治別
(
たまはるわけ
)
だと
云
(
い
)
ひながら
042
雷
(
らい
)
のやうなる
声
(
こゑ
)
をして
043
「ドツコイ」
叱
(
しか
)
りつけられた
044
こりや
又
(
また
)
如何
(
どう
)
した
事
(
こと
)
だらう
045
大蛇
(
をろち
)
の
奴
(
やつ
)
めが
化
(
ば
)
けて
来
(
き
)
て
046
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
が
肝
(
きも
)
を
挫
(
くじ
)
かうと
047
あんな
狂言
(
きやうげん
)
したのだらう
048
虎
(
とら
)
、
三
(
さん
)
、お
愛
(
あい
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
よ
049
必
(
かなら
)
ず
心配
(
しんぱい
)
するでない
050
曲津
(
まがつ
)
の
神
(
かみ
)
にだまされて
051
如何
(
どう
)
して
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
まろか
052
悪
(
あく
)
の
御霊
(
みたま
)
と
云
(
い
)
ふものは
053
隅
(
すみ
)
から
隅
(
すみ
)
まで
気
(
き
)
を
配
(
くば
)
り
054
水
(
みづ
)
も
漏
(
も
)
らさぬ
仕組
(
しぐみ
)
して
055
手具脛
(
てぐすね
)
引
(
ひ
)
いて
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
056
其処
(
そこ
)
の
処
(
ところ
)
を
考
(
かんが
)
へて
057
「ウントコドツコイ」
軽々
(
かるがる
)
に
058
進
(
すす
)
んで
行
(
い
)
つちやならないぞ
059
互
(
たがひ
)
に
足許
(
あしもと
)
気
(
き
)
をつけて
060
大蛇
(
をろち
)
の
吐
(
ほざ
)
いた
口車
(
くちぐるま
)
061
石
(
いし
)
の
車
(
くるま
)
に
乗
(
の
)
らぬよに
062
注意
(
ちゆうい
)
をせなくちやなるまいぞ
063
さはさり
乍
(
なが
)
ら
俺
(
おれ
)
も
亦
(
また
)
064
何
(
なん
)
だか
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
なつて
065
「ウントコドツコイ」
張合
(
はりあひ
)
が
066
サツパリコンとなくなつた
067
「ドツコイドツコイ」
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
068
これも
矢張
(
やつぱり
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
069
俺
(
おれ
)
等
(
ら
)
の
心
(
こころ
)
をためす
為
(
た
)
め
070
あゝ
云
(
い
)
ふ
手段
(
しゆだん
)
を
取
(
と
)
られたか
071
凡夫
(
ぼんぶ
)
の
身
(
み
)
では
何
(
なん
)
ぢややら
072
薩張
(
さつぱ
)
り
様子
(
やうす
)
が
分
(
わか
)
らない
073
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
074
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
に
任
(
まか
)
すのだ
075
任
(
まか
)
せきつたる
暁
(
あかつき
)
は
076
如何
(
いか
)
なる
事
(
こと
)
かならざらむ
077
大蛇
(
をろち
)
は
如何
(
いか
)
に
猛
(
たけ
)
くとも
078
三五教
(
あななひけう
)
を
守
(
まも
)
ります
079
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
皇神
(
すめかみ
)
の
080
威力
(
ゐりよく
)
に
敵
(
てき
)
する
者
(
もの
)
はない
081
私
(
わたし
)
は
確信
(
かくしん
)
ある
程
(
ほど
)
に
082
皆
(
みな
)
さま
心
(
こころ
)
をシヤンと
持
(
も
)
て
083
「ドツコイシヨー ドツコイシヨー」
084
思
(
おも
)
うたよりもきつい
坂
(
さか
)
085
「ガラガラガラガラ アイタツタ」
086
あんまり
喋
(
しやべ
)
つた
天罰
(
てんばつ
)
で
087
「ドツコイドツコイ ドツコイシヨ」
088
すつてんころりと
転倒
(
てんたふ
)
し
089
強
(
したた
)
か
背骨
(
せぼね
)
を
打
(
う
)
つたぞよ
090
こいつは
耐
(
たま
)
らぬ「ドツコイシヨ」
091
さはさり
乍
(
なが
)
ら「ウントコセ」
092
今
(
いま
)
から
俺
(
おれ
)
が
屁古
(
へこ
)
たれて
093
どうして
成就
(
じやうじゆ
)
するものか
094
常住
(
じやうぢう
)
不断
(
ふだん
)
に
信仰
(
しんかう
)
した
095
其
(
その
)
神力
(
しんりき
)
の「ウントコシヨ」
096
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
づる
今
(
いま
)
や
時
(
とき
)
097
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
098
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
を
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
ける
099
其
(
その
)
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
が
実
(
じつ
)
ならば
100
決
(
けつ
)
して
心配
(
しんぱい
)
「ドツコイシヨ」
101
皆
(
みな
)
さま
喜
(
よろこ
)
べ
要
(
い
)
らないぞ
102
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
103
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
純世姫
(
すみよひめ
)
104
月照彦
(
つきてるひこ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
105
三五教
(
あななひけう
)
の
孫公
(
まごこう
)
が
106
孫公別
(
まごこうわけ
)
と
現
(
あら
)
はれて
107
「ウントコドツコイ」
選
(
えら
)
まれて
108
今
(
いま
)
は
尊
(
たふと
)
き
宣伝使
(
せんでんし
)
109
心
(
こころ
)
を
平
(
たひら
)
に
安
(
やす
)
らかに
110
諾
(
うべな
)
ひたまひて
鼈
(
すつぽん
)
の
111
湖水
(
こすゐ
)
の
大蛇
(
をろち
)
を
悉
(
ことごと
)
く
112
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
す
神力
(
しんりき
)
を
113
授
(
さづ
)
けたまへよ
惟神
(
かむながら
)
114
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
誠心
(
まごころ
)
を
115
捧
(
ささ
)
げて
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る
116
「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
117
レコード
破
(
やぶ
)
りの
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
く
118
「ウントコドツコイ」
散
(
ち
)
らされな
119
ウカウカしとると
笠
(
かさ
)
が
飛
(
と
)
ぶ
120
笠
(
かさ
)
ばつかりか
体
(
からだ
)
まで
121
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
のやうに
散
(
ち
)
りさうだ
122
「ウントコドツコイ」
力瘤
(
ちからこぶ
)
123
体
(
からだ
)
に
一面
(
いちめん
)
「ウントコシヨ」
124
神徳
(
しんとく
)
ばかりを
充実
(
じうじつ
)
し
125
この
難関
(
なんくわん
)
をやすやすと
126
貫通
(
くわんつう
)
さして
下
(
くだ
)
さんせ
127
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
128
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる』
129
と
歌
(
うた
)
ひながら、
130
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれつつ
急坂
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
131
お
愛
(
あい
)
の
方
(
かた
)
は
声
(
こゑ
)
も
静
(
しづ
)
かに
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
す。
132
お愛
『
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
133
白山峠
(
しらやまたうげ
)
の
峰
(
みね
)
よりも
134
誉
(
ほまれ
)
の
高
(
たか
)
き
三五
(
あななひ
)
の
135
道
(
みち
)
に
仕
(
つか
)
ふる
宣伝使
(
せんでんし
)
136
黒姫
(
くろひめ
)
さまの
供
(
とも
)
となり
137
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
ます
孫公
(
まごこう
)
が
138
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御心
(
みこころ
)
も
139
悟
(
さと
)
らせたまはず
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
140
上
(
のぼ
)
りつめたる
慢心
(
まんしん
)
の
141
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれ
自分
(
じぶん
)
より
142
名
(
な
)
さへめでたき
宣伝使
(
せんでんし
)
143
孫公別
(
まごこうわけ
)
と
名乗
(
なの
)
りつつ
144
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
と
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
145
喜
(
よろこ
)
び
給
(
たま
)
ふ
折柄
(
をりから
)
に
146
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
に
神
(
かみ
)
の
声
(
こゑ
)
147
忽
(
たちま
)
ち
聞
(
きこ
)
ゆる
恐
(
おそ
)
ろしさ
148
名利
(
めいり
)
の
欲
(
よく
)
にかられたる
149
孫公
(
まごこう
)
さまは
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
かず
150
宣伝使
(
せんでんし
)
をば
笠
(
かさ
)
にきて
151
白山峠
(
しらやまたうげ
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く
152
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
153
三五教
(
あななひけう
)
の
孫公
(
まごこう
)
よ
154
どうぞ
心
(
こころ
)
を
取
(
と
)
り
直
(
なほ
)
し
155
執着心
(
しふちやくしん
)
を
払拭
(
ふつしき
)
し
156
矢張
(
やつぱり
)
元
(
もと
)
の
孫公
(
まごこう
)
で
157
大蛇
(
をろち
)
退治
(
たいぢ
)
に
行
(
ゆ
)
くがよい
158
恋路
(
こひぢ
)
の
欲
(
よく
)
に
離
(
はな
)
れたる
159
お
前
(
まへ
)
は
又
(
また
)
もや
宣伝
(
せんでん
)
の
160
司
(
つかさ
)
の
名誉
(
めいよ
)
に
憧
(
あこが
)
れて
161
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
許
(
ゆる
)
さない
162
雅号
(
ががう
)
をたてに
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
163
其
(
その
)
心根
(
こころね
)
ぞいぢらしき
164
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
165
お
前
(
まへ
)
の
心
(
こころ
)
が
一時
(
いつとき
)
も
166
早
(
はや
)
く
誠
(
まこと
)
にかへるよに
167
お
愛
(
あい
)
が
祈
(
いの
)
る
胸
(
むね
)
の
中
(
うち
)
168
些
(
ち
)
つとは
推量
(
すゐりやう
)
してお
呉
(
く
)
れ
169
もうしもうし
皆
(
みな
)
さまよ
170
お
足
(
あし
)
に
気
(
き
)
をつけなされませ
171
此処
(
ここ
)
には
蜈蚣
(
むかで
)
が
沢山
(
たんと
)
居
(
を
)
る
172
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
173
神
(
かみ
)
の
許
(
ゆる
)
さぬ
宣伝使
(
せんでんし
)
174
大蛇
(
をろち
)
の
退治
(
たいぢ
)
が
何
(
なん
)
として
175
旨
(
うま
)
く
出来
(
でき
)
るで
御座
(
ござ
)
いませう
176
私
(
わたし
)
は
案
(
あん
)
じて
耐
(
たま
)
らない
177
左様
(
さやう
)
な
野心
(
やしん
)
を
起
(
おこ
)
すより
178
今
(
いま
)
の
間
(
あひだ
)
に
改
(
あらた
)
めて
179
元
(
もと
)
の
心
(
こころ
)
に
立
(
た
)
ち
帰
(
かへ
)
り
180
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
に
跼
(
せぐく
)
まり
181
大地
(
だいち
)
に
蹐
(
ぬきあし
)
なしながら
182
謙遜
(
へりくだ
)
りつつ
三五
(
あななひ
)
の
183
道
(
みち
)
を
歩
(
あゆ
)
むで
下
(
くだ
)
さんせ
184
これぞお
愛
(
あい
)
が
孫公
(
まごこう
)
に
185
対
(
たい
)
する
誠
(
まこと
)
の
親切
(
しんせつ
)
よ
186
悪
(
わる
)
うは
思
(
おも
)
うて
下
(
くだ
)
さるな
187
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
188
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
189
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
一行
(
いつかう
)
が
190
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
功績
(
いさをし
)
を
191
太
(
ふと
)
しく
立
(
た
)
てて
故郷
(
ふるさと
)
に
192
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
るべく
193
守
(
まも
)
らせたまへよ
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
194
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
達
(
たち
)
百
(
もも
)
の
神
(
かみ
)
195
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
196
誠心
(
まごころ
)
籠
(
こ
)
めて
願
(
ね
)
ぎまつる』
197
と
歌
(
うた
)
ひつつ
静
(
しづか
)
に
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
198
三公
(
さんこう
)
は
坂
(
さか
)
を
下
(
くだ
)
りつつ
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
す。
199
三公
『「ヤツトコドツコイウントコシヨ」
200
向
(
むか
)
ふに
見
(
み
)
える
湖水
(
みづうみ
)
は
201
父
(
ちち
)
と
母
(
はは
)
とが
其
(
その
)
昔
(
むかし
)
202
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
片割
(
かたわれ
)
と
203
人
(
ひと
)
の
怖
(
おそ
)
るる
曲神
(
まがかみ
)
に
204
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
られた「ドツコイシヨ」
205
思
(
おも
)
ひ
出
(
で
)
深
(
ふか
)
き
仇
(
あだ
)
の
湖水
(
うみ
)
206
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
207
聞
(
き
)
いて
心
(
こころ
)
を
取
(
と
)
り
直
(
なほ
)
し
208
心
(
こころ
)
平
(
たひら
)
に
安
(
やす
)
らかに
209
敵
(
てき
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
さむと
210
一
(
いつ
)
たん
心
(
こころ
)
に
決
(
き
)
めたれど
211
どうしてこれが「ウントコシヨ」
212
恨
(
うらみ
)
を
晴
(
は
)
らさで
置
(
お
)
かれうか
213
熊襲
(
くまそ
)
の
国
(
くに
)
に
名
(
な
)
を
売
(
う
)
つた
214
屋方
(
やかた
)
の
村
(
むら
)
の
三公
(
さんこう
)
が
215
顔
(
かほ
)
にも
係
(
かか
)
はる
一大事
(
いちだいじ
)
216
親
(
おや
)
の
敵
(
かたき
)
を
前
(
まへ
)
に
見
(
み
)
て
217
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
の
御教
(
みをしへ
)
が
218
どうして
実行
(
じつかう
)
出来
(
でき
)
ようか
219
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つ
220
年
(
ねん
)
が
年中
(
ねんぢう
)
大蛇
(
をろち
)
奴
(
め
)
を
221
亡
(
ほろ
)
ぼしくれむと
思
(
おも
)
ひ
詰
(
つ
)
め
222
大蛇
(
をろち
)
々々
(
をろち
)
と
口癖
(
くちぐせ
)
に
223
「ウントコドツコイ」
云
(
い
)
ひ
通
(
とほ
)
し
224
世界
(
せかい
)
の
奴
(
やつ
)
らが「ドツコイシヨ」
225
大蛇
(
をろち
)
の
三公
(
さんこう
)
と
呼
(
よ
)
び
出
(
だ
)
した
226
皆
(
みな
)
さま
足許
(
あしもと
)
用心
(
ようじん
)
だ
227
蜈蚣
(
むかで
)
や
蠑螈
(
ゐもり
)
がのそのそと
228
其辺
(
そこら
)
あたりを
這
(
は
)
うて
来
(
く
)
る
229
孫公
(
まごこう
)
さまの
宣伝使
(
せんでんし
)
230
何程
(
なにほど
)
神力
(
しんりき
)
あるとても
231
何
(
なん
)
だか
影
(
かげ
)
が
薄
(
うす
)
いよだ
232
こんな
事
(
こと
)
なら
黒姫
(
くろひめ
)
を
233
無理
(
むり
)
に
頼
(
たの
)
んで「ドツコイシヨ」
234
来
(
き
)
て
貰
(
もら
)
つたらよかつたに
235
後
(
あと
)
で
気
(
き
)
の
付
(
つ
)
く「ドツコイシヨ」
236
癲癇病者
(
てんかんやみ
)
の
馬鹿
(
ばか
)
思案
(
しあん
)
237
後
(
あと
)
の
祭
(
まつり
)
ぢや
仕方
(
しかた
)
ない
238
もうこれからは
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
239
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
を
一心
(
いつしん
)
に
240
祈
(
いの
)
りて
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
守
(
まも
)
り
241
「ウントコドツコイ」
守
(
まも
)
られて
242
亡
(
ほろ
)
ぼすよりも
道
(
みち
)
はない
243
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
244
純世姫
(
すみよのひめ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
245
心
(
こころ
)
を
籠
(
こ
)
めて
願
(
ね
)
ぎまつる
246
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
247
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
248
湖水
(
こすゐ
)
の
大蛇
(
をろち
)
は
猛
(
たけ
)
ぶとも
249
地震
(
ぢしん
)
雷
(
かみなり
)
火
(
ひ
)
の
雨
(
あめ
)
が
250
一度
(
いちど
)
に
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
きた
)
るとも
251
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
言霊
(
ことたま
)
の
252
御息
(
みいき
)
に
大蛇
(
をろち
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
253
凱旋
(
がいせん
)
せなくちや「ドツコイシヨ」
254
数多
(
あまた
)
の
乾児
(
こぶん
)
に
三公
(
さんこう
)
の
255
男
(
をとこ
)
が
立
(
た
)
たない「ドツコイシヨ」
256
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
作
(
つく
)
つた
罪悪
(
ざいあく
)
の
257
報
(
むく
)
いは
忽
(
たちま
)
ち
顕
(
あら
)
はれて
258
黒姫
(
くろひめ
)
さまには
見離
(
みはな
)
され
259
力
(
ちから
)
の
足
(
た
)
らぬ
孫公
(
まごこう
)
の
260
「ウントコドツコイ」
手
(
て
)
に
余
(
あま
)
る
261
勁敵
(
けいてき
)
前
(
まへ
)
に
控
(
ひか
)
へつつ
262
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
身
(
み
)
ぞ
悲
(
かな
)
しけれ
263
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
264
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
265
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
尽
(
つ
)
くせし
身
(
み
)
の
咎
(
とが
)
を
266
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し
267
「ウントコドツコイ」
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
し
268
許
(
ゆる
)
させたまへや
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
269
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
達
(
たち
)
国魂
(
くにたま
)
の
270
御前
(
みまへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
271
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
272
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
273
と
歌
(
うた
)
ひながら
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
274
虎公
(
とらこう
)
は
又
(
また
)
もや
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
す。
275
虎公
『「ウントコドツコイ ドツコイシヨ」
276
此
(
この
)
山道
(
やまみち
)
は
些
(
ち
)
と
酷
(
ひど
)
い
277
うつかりしとると
谷底
(
たにそこ
)
へ
278
転
(
ころ
)
むで
頭
(
あたま
)
を
割
(
わ
)
る
程
(
ほど
)
に
279
「ウントコドツコイ」
気
(
き
)
をつけよ
280
「アイタタタツタ」
躓
(
つまづ
)
いた
281
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
に「ドツコイシヨ」
282
高
(
たか
)
い
石
(
いし
)
奴
(
め
)
がゴロゴロと
283
遠慮
(
ゑんりよ
)
もなしに
転
(
ころ
)
げてる
284
こんな
手合
(
てあひ
)
に
出遇
(
であ
)
つたら
285
武野
(
たけの
)
の
村
(
むら
)
の
侠客
(
けふかく
)
も
286
到底
(
たうてい
)
頭
(
あたま
)
が
上
(
あが
)
らない
287
獅子
(
しし
)
狼
(
おほかみ
)
や
虎
(
とら
)
熊
(
くま
)
や
288
鬼
(
おに
)
や
大蛇
(
をろち
)
も
恐
(
おそ
)
れない
289
此
(
この
)
虎公
(
とらこう
)
も「ドツコイシヨ」
290
此
(
この
)
坂道
(
さかみち
)
にや
耐
(
たま
)
らない
291
何時
(
なんどき
)
辷
(
すべ
)
つて「ウントコシヨ」
292
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
顛倒
(
てんとふ
)
し
293
頭
(
あたま
)
を
割
(
わ
)
るか
分
(
わか
)
らない
294
孫公
(
まごこう
)
さまに
神徳
(
しんとく
)
が
295
十分
(
じふぶん
)
に
具
(
そな
)
はり
居
(
ゐ
)
るならば
296
こんな
心配
(
しんぱい
)
ないけれど
297
俄作
(
にはかづく
)
りの
宣伝使
(
せんでんし
)
298
「ウントコドツコイ」
鼻糞
(
はなくそ
)
で
299
的張
(
まとは
)
つたやうな
心持
(
こころもち
)
300
ま
一
(
ひと
)
つ
安心
(
あんしん
)
出来
(
でき
)
難
(
にく
)
い
301
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
302
師匠
(
ししやう
)
を
杖
(
つゑ
)
につくでない
303
人
(
ひと
)
をば
力
(
ちから
)
に
致
(
いた
)
さずに
304
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
を
力
(
ちから
)
とし
305
「ウントコドツコイ」
行
(
ゆ
)
くならば
306
どんな
守護
(
まもり
)
もしてやると
307
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
神勅
(
みことのり
)
308
俺
(
おれ
)
はこれから「ドツコイシヨ」
309
孫公
(
まごこう
)
さまの
宣伝使
(
せんでんし
)
310
力
(
ちから
)
になさず
村肝
(
むらきも
)
の
311
心
(
こころ
)
の
誠
(
まこと
)
を
発揮
(
はつき
)
して
312
威猛
(
ゐたけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ
曲神
(
まがかみ
)
の
313
陣屋
(
ぢんや
)
に
忽
(
たちま
)
ち
突進
(
とつしん
)
し
314
勝鬨
(
かちどき
)
あげて
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
の
315
「ウントコドツコイ」
禍
(
わざはひ
)
を
316
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
除却
(
ぢよきやく
)
して
317
武野
(
たけの
)
の
村
(
むら
)
の
侠客
(
けふかく
)
と
318
云
(
い
)
はれた
誉
(
ほまれ
)
を
弥高
(
いやたか
)
に
319
筑紫
(
つくし
)
の
島
(
しま
)
に
輝
(
かがや
)
かし
320
三五教
(
あななひけう
)
の
道
(
みち
)
のため
321
尽
(
つく
)
さにやおかぬわが
願
(
ねが
)
ひ
322
完美
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
し
323
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
324
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
達
(
たち
)
八百万
(
やほよろづ
)
325
産土神
(
うぶすながみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
326
畏
(
かしこ
)
み
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる
327
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
328
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
329
と
歌
(
うた
)
ひながら、
330
漸
(
やうや
)
くにして
下
(
くだ
)
り
三
(
さん
)
里
(
り
)
の
山坂
(
やまさか
)
も、
331
其
(
その
)
日
(
ひ
)
の
真昼
(
まひる
)
頃
(
ごろ
)
麓
(
ふもと
)
に
下
(
くだ
)
りつきにけり。
332
(
大正一一・九・一六
旧七・二五
加藤明子
録)
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