霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第八章 (こころ)(つな)〔九七二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第35巻 海洋万里 戌の巻 篇:第1篇 向日山嵐 よみ(新仮名遣い):むこうやまあらし
章:第8章 心の綱 よみ(新仮名遣い):こころのつな 通し章番号:972
口述日:1922(大正11)年09月15日(旧07月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ひとしきり酒宴が済み、三公は虎公、お愛、お梅、孫公、黒姫、兼公を自分の居間に誘い、四方山話をしながらくつろいで二次会を始めていた。子分たちもあちこちで思い思いにくつろいでいた。
三公の子分である六公、徳公、高公と、虎公の子分である新公、久公、八公の六人は打ち解けて話をしていた。徳公は、お愛に酒を注いでもらったことを自慢し始めた。
新公は負けずとのろけだすが、久公に実態はぜんぜん違うことを明かされて、言い合いを始めた。そのうちに殴り合いの喧嘩になってしまう。三公の子分たちは、今日はめでたい日だからと止めに入る。
新公は、虎公の古い従者であることから、お愛の方の素性を皆に話し始めた。お愛は実は、天教山から天使として火の国に降った八島別神(建日向別神)の娘・愛子姫であるという。
愛子姫は貴族生活がきらいで、両親の縁談を嫌って家を飛び出してしまった。そして夜道で悪漢に襲われかけていたところへ、新公を共に連れた虎公が出くわし、助けたのだという。
そのとき愛子姫は身分を明かし、身に着けていた宝石・宝玉をお礼にと差し出したが、虎公は頑として断り、どうしてもと愛子姫が差し出した宝を谷川に投げ捨ててしまったという。それで、愛子姫は虎公の気風に惚れこんでしまった。
愛子姫は、身分を隠しお愛と名乗って武野村で奉公して働いていた。そのときに大蛇の三公が口説きにやってきていたのだが、数年後、愛子姫は虎公に申し込んで結婚することになったのだという。
六公と高公は、新公の話から愛子姫を襲った悪漢は自分たちであったことに思い至り、悪いことはできないと悔悟し、改心の情を表した。
新公はさらに、虎公も実は火の国出身の虎転別、のちに豊の国で豊日別命となった神様の総領息子という身分で、虎若という名であることを明かした。
虎若は下女と駆け落ちする途上、病気で女を亡くしてしまった過去を持つという。新公も実は豊日別命の家来であったのが、虎若についてきて今に至っているということを自慢げに話した。
遠くに鳴り響く子の刻の鐘に、徳公はお開きして休もうと一同を促した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-09-25 12:50:38 OBC :rm3508
愛善世界社版:79頁 八幡書店版:第6輯 500頁 修補版: 校定版:85頁 普及版:28頁 初版: ページ備考:
001 (ひと)しきり酒宴(しゆえん)はすんだ。002大蛇(をろち)三公(さんこう)虎公(とらこう)003(あい)004(うめ)005孫公(まごこう)006黒姫(くろひめ)007兼公(かねこう)(うる)はしき(わが)居間(ゐま)(いざな)ひ、008四方山(よもやま)(はなし)をし(なが)ら、009()ちくつろいで二次会(にじくわい)()つてゐる。010数多(あまた)乾児(こぶん)もそれぞれ(おも)(おも)ひに田圃(たんぼ)()で、011相撲(すまう)をとつたり、012()ころんだり、013(くだ)らぬ(はなし)をして上機嫌(じやうきげん)である。014あちら此方(こちら)大勢(おほぜい)乾児(こぶん)のこととて、015小競合(こぜりあひ)(はじ)まつたが、016何分(なにぶん)にも今日(けふ)目出度(めでた)いと()ふので、017(たがひ)(つつし)()ひ、018(たい)した喧嘩(けんくわ)もなく、019(きは)めて無事(ぶじ)である。
020 六公(ろくこう)021徳公(とくこう)022高公(たかこう)(およ)虎公(とらこう)乾児(こぶん)なる(しん)023(きう)024(はち)(ろく)(にん)(さけ)()ひつぶれ、025(その)()にドツカと(すわ)つた(まま)026打解(うちと)けていろいろの(はなし)(ふけ)つてゐる。
027徳公『オイ新公(しんこう)028貴様(きさま)んとこの姐貴(あねき)随分(ずゐぶん)素敵(すてき)代物(しろもの)ぢやねえか。029どこともなしに一寸(ちよつと)あの(やさ)しい()(にら)まれると、030(からだ)()ひつけられる(やう)()がするぢやねえか。031それで(おれ)(さけ)()うたのを(さいは)ひ……お(あい)さま、032一寸(ちよつと)一杯(いつぱい)ついで(くだ)せえ……とやつた(ところ)流石(さすが)(えら)いワイ……ハイ……と()つて、033あの(やさ)しい目元(めもと)で、034徳公(とくこう)(かほ)(こひ)しさうに(なが)めながら、035()よく()いで(くだ)さつた。036オイどうだ。037貴様(きさま)たちア、038()()かねえから、039千載(せんざい)一遇(いちぐう)好機(かうき)(いつ)したぢやねえか、040(さき)んずれば(ひと)(せい)すと()つてナ、041(うま)くやつただらう』
042新公『たつた一遍(いつぺん)(ぐらゐ)(さけ)義理(ぎり)()いで(もら)つたつて、043さう法螺(ほら)()くものぢやねえワ。044(おれ)たちア、045何時(いつ)親分(おやぶん)留守(るす)になると、046(あい)さまが、047スーツと色目(いろめ)使(つか)つて…コレコレ新公(しんこう)や、048今日(けふ)親分(おやぶん)不在(るす)だから、049マアゆつくり(さけ)でも()んで、050……お(あい)()いで()げます……とか(なん)とか()つて、051あの(しろ)(ほそ)()燗徳利(かんどつくり)(にぎ)り……サア新公(しんこう)さま、052(さかづき)をお()しよ……と仰有(おつしや)るのだ。053そこでこの新公(しんこう)が、054(おに)()()洗濯(せんたく)だと一寸(ちよつと)肝玉(きもつたま)をオツ()()し、055(さかづき)をスーツと(まへ)()す、056(あい)さまがあの(やはら)かい()燗徳利(かんどくり)()り、057(ひだり)のお手々(てて)徳利(とくり)(そこ)()てスーツと(こし)()ばして、058立膝(たてひざ)のまま、059ドブドブドブオツトヽヽヽこぼれますこぼれます……と()調子(てうし)だ……と、060いいのだけれど、061それは何時(いつ)やらの(おれ)()(ゆめ)だつた。062乍併(しかしながら)063毎日(まいにち)日日(ひにち)あの綺麗(きれい)(かほ)()()ると、064何時(いつ)とはなしに(ゆめ)()(やう)になるのだからなア。065つまり(えう)するに、066(すなは)ち、067(ゆめ)(なか)新公(しんこう)女房(にようばう)だからなア、068(たい)したものだらう、069オツホン』
070久公『オイ徳公(とくこう)071こんな(やつ)()(こと)072本当(ほんたう)にしちやならねえぞ。073親分(おやぶん)()られる(とき)には(ちひ)さくなつて、074(なん)でもかんでもお(あい)さまのいふ(こと)()きよるものだから、075(あい)さまも(あま)小言(こごと)仰有(おつしや)らぬが、076虎公(とらこう)親分(おやぶん)さまが不在(るす)になると、077ソロソロサボリ()しよるものだから、078(あい)さまが柳眉(りうび)逆立(さかだ)て、079(なが)煙管(きせる)をヒヨイと()ち……コレコレ新公(しんこう)や、080(まへ)といふ(ひと)(なん)とした(わけ)(わか)らぬ(をとこ)だえ。081(とら)さまの(まへ)では(ひら)蜘蛛(ぐも)(やう)になつてるくせに、082不在(るす)になると戸棚(とだな)(ねずみ)があばれるやうに、083一寸(ちよつと)(わたし)()(こと)()かぬぢやないか。084腰抜(こしぬけ)(をとこ)といふのはお(まへ)のことだよ。085一寸(ちよつと)ここへお()で、086さうしてお()()し……と()はれ()つて、087新公(しんこう)(やつ)088(うま)れついての天保銭(てんぽうせん)だからなア……ヘエ(なん)頂戴(ちやうだい)(いた)しますのか……ナンて(ぬか)しよつてな、089コハゴハ()をニユーツと、090(あい)さまの(まへ)()しよると、091(あい)さまが……お(まへ)一寸(ちよつと)()をつぶつて御覧(ごらん)……とやられくさるのだ。092阿呆(あはう)()らいで、093新公(しんこう)(やつ)()(ふさ)ぎよると、094(あい)さまは(ひだり)()(はひ)をつまみ、095(みぎ)()()(おき)火箸(ひばし)につまんで、096(てのひら)()をのせ、097それと同時(どうじ)に、098(した)(はひ)をのせられよつて……アツヽヽ、099プープープーと()ひながら(うら)小川(をがは)(はし)つて()く……と()馬鹿者(ばかもの)だからなア。100到底(たうてい)(はなし)にならない代物(しろもの)だよ』
101新公『コリヤ久公(きうこう)102ソラ(なに)()ふのだ、103貴様(きさま)のことぢやないか。104何時(いつ)もお(あい)さまに(きう)をすゑられよつて、105キユーキユー()うてゐよるから、106何時(いつ)()にか久公(きうこう)といふあだ()がついた(くらゐ)だのに、107()らぬかと(おも)つて、108そんなウソツ(ぱち)をこきよると、109承知(しようち)しねえぞ』
110久公『ヘン、111(ひと)がズツと(ちが)ふのだから、112(なん)()つても天道(てんだう)さまが()御座(ござ)るのだ。113グヅグヅ(ぬか)すと久々(きうきう)()ふよな()にあはしたろか。114コラ新公(しんこう)115シン()(くさ)新公(しんこう)だと、116いつもお(あい)さまにボヤかれてるくせに……』
117()(なが)ら、118新公(しんこう)横面(よこづら)をピシヤツと(なぐ)る。
119新公『コリヤ喧嘩(けんくわ)か、120喧嘩(けんくわ)なら(めし)より()きだ。121イヤ(さけ)(つぎ)にや喧嘩(けんくわ)()きな新公(しんこう)だぞ。122サア()い』
123拳骨(げんこつ)(かた)める。124六公(ろくこう)(あわ)てて、
125六公『コラコラ内裏(うちうら)から、126内乱(ないらん)(おこ)しちや(つま)らぬぢやないか、127マア()()て』
128新公内乱(ないらん)(おこ)つたつて仕方(しかた)がねえワ。129どうぞ()つといてくれ、130新公(しんこう)には新公(しんこう)としての新案(しんあん)がある。131新久(しんきう)思想(しさう)衝突(しようとつ)だから、132(ろくこう)何程(なにほど)仲裁(ちうさい)しても、133(ろく)解決(かいけつ)アつきやしめえ、134(ろく)内容(ないよう)(しら)べずして仲裁(ちうさい)したつて駄目(だめ)だぞ』
135徳公今日(けふ)目出度(めでた)()だから、136親分(おやぶん)(めん)じて喧嘩(けんくわ)(だけ)()めてくれ。137()けえ(やつ)()かれても外聞(ぐわいぶん)がわりいからなア。138(とき)新公(しんこう)139(あい)さまはありや普通(ふつう)(をんな)ではないやうだが、140一体(いつたい)どこからお()でになつたのだ。141あの(かた)(おや)(わか)らぬと()ふぢやないか』
142新公『それの(わか)つて()(もの)は、143(この)(ひろ)熊襲(くまそ)(くに)に、144()ふと()まぬが、145親分(おやぶん)(この)新公(しんこう)(ばか)りだよ』
146徳公(ひと)つこの徳公(とくこう)にソツとお(あい)さまの素性(すじやう)()かしては()れめえかなア』
147新公『それを()いて(なに)にするのだ。148もしも本当(ほんたう)のことを()かうものなら、149アフンと(いた)して()いた(くち)がすぼまらぬやうになつて(しま)ふぞ。150(こし)をぬかすかも(わか)らぬから、151(にしん)でも用意(ようい)しておくがよいワ』
152徳公馬鹿(ばか)にするない、153(ねこ)ぢやあるめえし、154(にしん)用意(ようい)せえとは、155(なに)(ぬか)すのだ』
156新公(にしん)日進(につしん)月歩(げつぽ)()(なか)だ、157新久(しんきう)思想(しさう)衝突(しようとつ)する現代(げんだい)だから、158()(なか)何時(いつ)もガヤガヤ(さわ)がしいのは当然(たうぜん)だ。159(この)新公(しんこう)徳公(とくこう)()つて、160新徳(しんとく)発揮(はつき)し、161乱麻(らんま)(ごと)(みだ)()てたる()(なか)を、162(ひと)改造(かいざう)して()たら如何(どう)だらうなア』
163徳公其奴(そいつ)面白(おもしろ)い。164乍併(しかしながら)(その)問題(もんだい)委員(ゐゐん)付託(ふたく)としておいて、165(あい)さまの素性(すじやう)(はや)くきかしてくれねえか。166(けつ)してビツクリやしねえから……』
167新公『そんなら(ひと)つ、168今日(けふ)大張込(おほはりこ)みに張込(はりこ)んで、169神秘(しんぴ)(とびら)(ひら)いてやるから、170最敬礼(さいけいれい)(うへ)171新公(しんこう)()ふことを謹聴(きんちやう)せい……(そもそ)虎公(とらこう)親分(おやぶん)最愛(さいあい)(つま)172(あい)(かた)素性(すじやう)()つぱ、173(おそれおほ)くも天教山(てんけうざん)より天使(てんし)として、174()神国(かみくに)(くだ)らせ(たま)ひし八島別(やしまわけ)(かみ)175(のち)には建日向別(たけひむかわけ)(かみ)申上(まをしあ)げた神司(かむつかさ)()秘蔵(ひざう)()娘子(むすめご)(さま)だぞ』
176徳公『ヤア、177ソラ(また)本当(ほんたう)かい。178どうしてそんな(たふと)身分(みぶん)()(なが)ら、179侠客(けふかく)風情(ふぜい)虎公(とらこう)女房(にようばう)になつたのだらうか、180チツと合点(がてん)がいかぬぢやねえか。181なア、182高公(たかこう)183六公(ろくこう)184まるで天地(てんち)(かへ)るやうな(はなし)だなア、185さうすると、186(おれ)だつてあまり馬鹿(ばか)にやならぬワイ。187どんな(たふと)(かた)(むすめ)結婚(けつこん)するかも()れやしねえからなア』
188新公『モウそれ(だけ)でよいのか』
189徳公『ヤアよい(どころ)か、190モツトモツト()かしてもれへてえのだ。191それから如何(どう)したのだ。192サア(その)(つぎ)をきかしてくれ。193(なん)だか()がせいてならねえからなア』
194新公八島別(やしまわけ)(かみ)(さま)敷妙姫(しきたへひめ)(さま)といふ(おく)さまがあつて、195(その)(なか)にお(うま)(あそ)ばしたのが愛子姫(あいこひめ)さま、196(その)(いもうと)依子姫(よりこひめ)(さま)といふ綺麗(きれい)なお(ぢやう)さまがあつたのだ。197さうした(ところ)198()両親(りやうしん)(さま)(とよ)(くに)豊日別(とよひわけ)(さま)()子息(しそく)豊照彦(とよてるひこ)(さま)養子(やうし)(もら)つて、199(あと)をつがさうと(あそ)ばした(ところ)200愛子姫(あいこひめ)さまは、201貴族(きぞく)生活(せいくわつ)(うま)れつきの(だい)のお(きら)ひで、202平民(へいみん)主義(しゆぎ)()(かた)だから、203立派(りつぱ)豊照彦(とよてるひこ)(さま)()養子(やうし)をお(きら)(あそ)ばし、204ソツと夜陰(やいん)(まぎ)れて(やかた)()()し、205黄金(わうごん)腕輪(うでわ)や、206ダイヤモンドの首飾(くびかざり)をかけたまんま、207夜道(よみち)辿(たど)らつしやる(その)(とき)しも、208(たちま)(もり)()かげより(あら)はれ()でたる二三(にさん)(にん)(をとこ)209矢庭(やには)(ひめ)(まへ)立塞(たちふさ)がり、210()()(あし)()り、211草原(くさはら)路傍(みちばた)打倒(うちたふ)し、212乱暴(らんばう)狼籍(らうぜき)(およ)ばうとしてゐた(ところ)213(おれ)(とこ)親分(おやぶん)虎公(とらこう)さまが、214(この)新公(しんこう)()れて、215一杯(いつぱい)機嫌(きげん)でヒヨロリヒヨロリと千鳥足(ちどりあし)216木遣(きや)りを(うた)つて向方(むかふ)(かた)よりやつて()た。217(さん)(にん)(わる)(やつ)アよつて(たか)つて(ひめ)(おさ)へ、218キヤアキヤア()はしてゐやがる。219そこへ親分(おやぶん)(おれ)とが()んで()て、220大喝(だいかつ)一声(いつせい)……悪者(わるもの)(ども)(しばら)()てえ……と(らい)(ごと)大音声(だいおんじやう)()ばはれば(さん)(にん)(やつ)は、221(その)(こゑ)打驚(うちおどろ)(くも)(かすみ)()()つたり……卑怯(ひけふ)未練(みれん)(やつこ)(ども)222()げる(やつ)には()()けず……と(ひめ)(はう)月影(つきかげ)にすかし(なが)むれば(ゆき)(あざむ)天下(てんか)無双(むさう)のナイス、223ダイヤモンドは(つき)()らされ、224(あたま)一面(いちめん)(ほし)(ごと)くにきらめいて()る。225(ゆび)にもダイヤモンド、226(あし)にも(うで)にも黄金(わうごん)()(はま)つてゐる。227コリヤ普通(ふつう)(うち)(ぢやう)さまであるめえと、228親分(おやぶん)さまが合点(がてん)し……もしもしどこのお女中(ぢよちう)()りませぬが、229大胆(だいたん)にも物騒(ぶつそう)(よる)一人旅(ひとりたび)230(あぶ)ねえ(こと)御座(ござ)えましたネー……と()ひながら(ひめ)()()(しづか)()(おこ)し、231塵打払(ちりうちはら)つて(いたは)つた(ところ)232(ひめ)さまは(やうや)くに(かほ)をあげ……どこの何方(どなた)(ぞん)じませぬが、233九死(きうし)一生(いつしやう)場合(ばあひ)234よく(たす)けて(くだ)さいました、235途中(とちう)のこととて()(れい)仕様(しやう)御座(ござ)いませぬから、236どうぞこれを受取(うけと)つて(くだ)さい……と、237(あたま)(ひか)るダイヤモンドを(ひと)つも(のこ)らず取外(とりはづ)し、238(あし)()から腕輪(うでわ)まで(ひと)つに(あつ)めて親分(おやぶん)(わた)さうとする。239親分(おやぶん)虎公(とらこう)(よろこ)んで飛付(とびつ)くかと(おも)つてゐたら、240(ねこ)小判(こばん)()せたよな調子(てうし)で……コレコレお女中(ぢよちう)241そんな(もの)(もら)ひてえ(ため)(たす)けたのだごぜえやせぬ、242どうぞ(をさ)めて(くだ)せい……と仰有(おつしや)つた(ところ)243そのお(ひめ)さまは……どうぞ受取(うけと)つて(くだ)さいませ、244あなたは(いのち)(おや)御座(ござ)います、245(わたし)建日向別(たけひむかわけの)(みこと)総領(そうりやう)(むすめ)246貴族(きぞく)生活(せいくわつ)(いや)になり、247(ひな)(くだ)つてどこかに水仕(みづし)奉公(ぼうこう)でもしたいから()けて()ましたのだ、248こんな(もの)最早(もはや)必要(ひつえう)御座(ござ)いませぬ、249さうして一旦(いつたん)前様(まへさま)にあげようと(おも)つた(わらは)(こころ)250如何(どう)しても(ひるがへ)すことは出来(でき)ませぬから、251何卒(どうぞ)慈悲(じひ)受取(うけと)つて(くだ)さい……と()(あは)して(たの)まれる。252親分(おやぶん)は……わしも武野村(たけのむら)侠客(けふかく)だ、253一旦(いつたん)()らぬと()つたら、254如何(どう)しても受取(うけと)らねえ……と頑張(ぐわんば)()す。255如何(どう)しても(らち)()かねえので、256(この)新公(しんこう)(なか)にわつて()り、257とうとう親分(おやぶん)得心(とくしん)させた。258さうすると親分(おやぶん)が……そんならお(ひめ)さま、259折角(せつかく)のお(こころざし)260有難(ありがた)頂戴(ちやうだい)(いた)します……と受取(うけと)り……もし(ひめ)さま、261(わたし)頂戴(ちやうだい)した以上(いじやう)は、262如何(どう)しても(かま)ひませぬかと親分(おやぶん)()つたのだ。263さうすると(ひめ)さまが……あなたに(わた)した以上(いじやう)はあなたの品物(しなもの)264如何(どう)なつと()勝手(かつて)(あそ)ばしませ……とお()でなすつた。265親分(おやぶん)は……それなら(わたし)勝手(かつて)(いた)します……と()ふより(はや)(かたはら)(なが)れる(ふか)谷川(たにがは)へ、266惜気(をしげ)もなく投込(なげこ)んで(しま)つた。267そこで(その)(ひめ)さまが親分(おやぶん)気前(きまへ)惚込(ほれこ)み、268懸想(けさう)をしてゐらつしやつたのだ。269乍併(しかしながら)女心(をんなごころ)(はづ)かしいと()えてそんなことはケブライにも()さず、270武野(たけの)(むら)七兵衛(しちべゑ)(うち)水仕(みづし)奉公(ぼうこう)に、271素性(すじやう)(かく)して住込(すみこ)()(ねん)(ばか)りゐられたのだ。272サアさうすると(たれ)()ふとなく別嬪(べつぴん)別嬪(べつぴん)だといふ評判(ひやうばん)()ち、273大蛇(をろち)三公(さんこう)がやつて()て……お(あい)名乗(なの)るお(ひめ)さまを執念深(しふねんぶか)口説(くど)()てに()ると()(さわ)ぎだ。274それが到頭(たうとう)三年前(さんねんまへ)(ひめ)(さま)(はう)から(うち)親分(おやぶん)申込(まをしこ)んで結婚(けつこん)(しき)()げられたと()始末(しまつ)だ。275随分(ずゐぶん)(うち)親分(おやぶん)もえれえものだらう。276(その)親分(おやぶん)(いち)乾児(こぶん)だから、277(この)新公(しんこう)だつて、278(けつ)して馬鹿(ばか)にはならないぞ。279(あい)さまと(はじめ)から、280さう()関係(くわんけい)があるのだから、281不在中(るすちう)(さけ)一杯(いつぱい)(ぐらゐ)ついで(もら)つたつて、282(べつ)不思議(ふしぎ)はあるめえがなア』
283ともつれた(した)物語(ものがた)つてゐる。284六公(ろくこう)285高公(たかこう)両人(りやうにん)(この)(はなし)()いて、286(うで)()み、287(くび)(かたむ)吐息(といき)をもらして()る。
288徳公『ホンに(えら)(もの)だなア。289度胸(どきよう)()わつて()ると(おも)へば、290ヤツパリ蚯蚓切(みみづき)りや(かはづ)とばしの(はら)から()たのぢやねえからなア、291人間(にんげん)()(もの)(あらそ)はれぬものだ……(むかし)からの(たね)吟味(ぎんみ)(いた)すは今度(こんど)のことぞよ。292(たね)さへよければどんな立派(りつぱ)(はな)でも()くぞよ……と()三五教(あななひけう)には(をしへ)があるといふことだが、293本当(ほんたう)(たね)といふものは(あらそ)はれぬものだなア……オイ六公(ろくこう)294高公(たかこう)295貴様(きさま)何時(いつ)やら、296(おれ)(はな)して()つた失敗話(しつぱいばなし)によく()てるぢやねえか、297あの(とき)馬鹿者(ばかもの)貴様(きさま)連中(れんちう)だらう。298(この)(はなし)()くや(いな)や、299サツパリふさぎ()んで(しま)ひよつたぢやねえか。300そのしよげ(かた)(なん)だい、301(たちま)様子(やうす)(あら)はれて()るぞよ、302本当(ほんたう)(こま)つた代物(しろもの)だなア』
303高公夜分(やぶん)のことでチツとも(わか)らなかつたが、304(その)(とき)のナイスがヤツパリお(あい)さまらしいワイ。305(おほ)きな(こゑ)()しよつた(やつ)は、306虎公(とらこう)だつたのだなア。307世間(せけん)(ひろ)いやうなものの(せま)いものだなア。308(これ)(おも)ふと(わる)(こと)はチツとも出来(でき)やしねえワ』
309新公『アハヽヽヽ、310とうとう(かはづ)(くち)から、311白状(はくじやう)しよつた。312おれも此処(ここ)()(とき)に、313どうも貴様(きさま)のスタイルが(おぼろ)げながら、314あの(とき)馬鹿者(ばかもの)によく()てると(おも)つてゐたのだ。315天罰(てんばつ)()ふものは(おそ)ろしいものだなア』
316六公本当(ほんたう)にさうだ。317おれもいよいよ改心(かいしん)するワ。318こんな(はなし)()くと、319折角(せつかく)()うた(さけ)(まで)さめて(しま)ひさうだ。320アヽアヽ新公(しんこう)親分(おやぶん)本当(ほんたう)仕合(しあは)せな(をとこ)だ。321そして(うち)親分(おやぶん)不仕合(ふしあは)せな(をとこ)だ。322(おれ)までヤツパリ不仕合(ふしあは)せだ。323アンアンアン(かな)しわいやい』
324八公(やつこう)『ウツフヽヽヽ』
325新公『アツハヽヽヽ、326オイ(おれ)(とこ)親分(おやぶん)一通(ひととほ)りの人間(にんげん)だと(おも)つてゐるかい』
327徳公(とく)とは(わか)らぬが此奴(こいつ)(ただ)(たぬき)ぢやあるめえ。328どこぞの落胤(おとしだね)ぢやなからうかなア』
329新公落胤(おとしだね)(どころ)かい、330(むかし)()(くに)御座(ござ)つた虎転別(とらてんわけ)さま、331(のち)(とよ)(くに)()つて豊日別(とよひわけの)(みこと)とお()(あそ)ばした結構(けつこう)(かみ)(さま)総領(そうりやう)息子(むすこ)だ。332それで虎公(とらこう)()ふのだ。333()虎公(とらこう)さまが一寸(ちよつと)渋皮(しぶかは)()けた下女(げぢよ)()をかけ、334()()()つて、335道行(みちゆき)ときめこみ、336熊襲(くまそ)(くに)へさまようて御座(ござ)つた(その)(とき)337(その)(をんな)(はら)がふくれてをつた。338それが(おほ)きな山坂(やまさか)()えて()たものだから、339とうとう病気(びやうき)になり、340難産(なんざん)をして親子(おやこ)(とも)になくなつて(しま)つたのだ。341(この)新公(しんこう)だとて、342ヤツパリ(もと)豊日別(とよひわけ)(さま)()家来(けらい)だ。343若旦那(わかだんな)(さま)虎若(とらわか)(さま)駆落(かけおち)(あそ)ばす(とき)に、344(とも)をして()いて()たのだから、345(なん)()つても(この)新公(しんこう)親分(おやぶん)さまの(いち)眷族(けんぞく)だ。346(なに)ほど久公(きうこう)八公(やつこう)しやちになつたつておれにや(かな)はねえからな、347アツハヽヽヽ』
348(かた)をゆすつて(わら)ふ。349徳公(とくこう)は「フーン」と()つた()り、350(かん)()たれてゐる。351(をり)しも遠音(とほね)(ひび)(かね)()352ゴーンゴーンと(しづ)かに(きこ)(きた)る。
353徳公(とくこう)『ヤアもう()(こく)だ。354(みな)さまこれから(やす)みませう』
355大正一一・九・一五 旧七・二四 松村真澄録)
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki