上谷の修行場で二十有余人の修行者の審神者と奉仕していたところ、郷里から老母危篤の報が届いた。見舞いには行きたいが、自分が離れると邪神が修行場をかき乱すに違いない途方にれていた。
神界に伺ってみたところ、四五日の間に帰ってくればたいした邪魔はないであろう、とのことであった。また出口教祖からも、祖母の病気は生命には別状ないから、一心に鎮魂すれば八九分は平癒する、とのお示しがあった。
そこで四方藤太郎に修行場を頼んで、穴太に行くことになった。四方氏には、喜楽が不在中に綾部から教祖様が迎えに来られても、一人も修行者をやってはならない、特に四方春蔵、塩見せい子、黒田きよ子は気をつけよ、と念を押した。
しかし二三日後に教祖様から神の御命令だからと右三名を綾部に迎えに来た。四方氏は教祖の命だからと抗しきれず、三人を連れて帰られてしまった。三人は教祖のお迎えだからと慢心し、邪神が急激に襲来して金明会の広間は大騒ぎになってしまった。
喜楽が実家に戻ると、祖母は病床で寝ていた。母は祖母に気遣って、喜楽が帰ってきたことを知らせずに祖母を寝かしておいた。すると祖母がうなされ始めたので、母と介抱した。
祖母は目を覚ますと母と喜楽に向かって、夢の中でご先祖さまから、喜三郎は神様のお使いとして世に尽くす使命を持っているのだから、家に結び付けてはいけない、ときつい戒めを受けたことを語った。
喜楽は祖母の言葉に涙し、すぐに家を出立しようとした。しかし母は、親戚の次郎松やお政さんを引き連れて来て、二三日逗留するようにと引き留めをした。喜楽は次郎松とお政さんに家業を継ぐように責め立てられて閉口した。