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霊界物語
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第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
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第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
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如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
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第58巻(酉の巻)
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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
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第66巻(巳の巻)
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第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
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第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第38巻(丑の巻)
序歌
総説
第1篇 千万無量
01 道すがら
〔1038〕
02 吉崎仙人
〔1039〕
03 帰郷
〔1040〕
04 誤親切
〔1041〕
05 三人組
〔1042〕
06 曲の猛
〔1043〕
07 火事蚊
〔1044〕
第2篇 光風霽月
08 三ツ巴
〔1045〕
09 稍安定
〔1046〕
10 思ひ出(一)
〔1047〕
11 思ひ出(二)
〔1048〕
12 思ひ出(三)
〔1049〕
第3篇 冒険神験
13 冠島
〔1050〕
14 沓島
〔1051〕
15 怒濤
〔1052〕
16 禁猟区
〔1053〕
17 旅装
〔1054〕
第4篇 霊火山妖
18 鞍馬山(一)
〔1055〕
19 鞍馬山(二)
〔1056〕
20 元伊勢
〔1057〕
第5篇 正信妄信
21 凄い権幕
〔1058〕
22 難症
〔1059〕
23 狐狸狐狸
〔1060〕
24 呪の釘
〔1061〕
25 雑草
〔1062〕
26 日の出
〔1063〕
27 仇箒
〔1064〕
28 金明水
〔1065〕
余白歌
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霊界物語
>
第38巻
> 第1篇 千万無量 > 第4章 誤親切
<<< 帰郷
(B)
(N)
三人組 >>>
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第四章
誤
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
〔一〇四一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻
篇:
第1篇 千万無量
よみ(新仮名遣い):
せんまんむりょう
章:
第4章 誤親切
よみ(新仮名遣い):
ごしんせつ
通し章番号:
1041
口述日:
1922(大正11)年10月14日(旧08月24日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
喜楽は、神様の御用でどうしても家を空けなければならないと説明したが、二人が聞く耳を持たずに厳しく責め立てる。母もそれに力を得て、実家に居るようにと頼み込む。
しかしどうしたわけか、耳の遠い祖母にもその談判が聞こえたと見えて、老人の頼みだからと、喜楽を綾部に出してくれるよう、母たちに口を出してくれた。
また、そこへ野良仕事から帰ってきた弟の幸吉も、喜楽のために弁護してくれたので、その場は収めることができた。
翌朝も綾部行きを引き留められ、三日間穴太に逗留することになってしまった。ようやく、弟の幸吉を目付に連れて行くことで、綾部行きを許可してもらうことになった。幸吉も元から神様の道には熱心で、幽斎修行もしていたから、喜んで綾部についてくることになった。
出立するときに次郎松とお政さんがやってきて、またもや難癖をつけてきたが、幸吉が二人前働くと請け負ってくれて、ようやくその場を逃れて弟と二人、綾部に出立することができた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-30 13:26:12
OBC :
rm3804
愛善世界社版:
37頁
八幡書店版:
第7輯 170頁
修補版:
校定版:
37頁
普及版:
18頁
初版:
ページ備考:
001
次郎松
(
じろまつ
)
サンやお
政
(
まさ
)
後家
(
ごけ
)
サンに
忠告
(
ちうこく
)
の
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
かけられ、
002
暫
(
しばら
)
く
閉口
(
へいこう
)
してゐたが……エヽこんな
気
(
き
)
のよわい
事
(
こと
)
で、
003
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
まるものか……と、
004
忽
(
たちま
)
ち
勇猛心
(
ゆうまうしん
)
を
発揮
(
はつき
)
し、
005
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて、
006
喜楽
(
きらく
)
『
皆
(
みな
)
さまの
上田家
(
うへだけ
)
を
思
(
おも
)
うて
下
(
くだ
)
さる
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
は
私
(
わたくし
)
も
骨身
(
ほねみ
)
にこたへて
有難
(
ありがた
)
う
厶
(
ござ
)
ります。
007
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今
(
いま
)
私
(
わたくし
)
は
神
(
かみ
)
さまの
御
(
お
)
使
(
つかひ
)
となつて、
008
お
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
さねばならぬ
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
でありますから、
009
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つて
意見
(
いけん
)
をして
下
(
くだ
)
さつても、
010
ここ
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
ばかりは
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
ることは
出来
(
でき
)
ませぬ。
011
又
(
また
)
内
(
うち
)
へ
金
(
かね
)
を
送
(
おく
)
るといふ
様
(
やう
)
なことは、
012
到底
(
たうてい
)
私
(
わたくし
)
には
出来
(
でき
)
ませぬ。
013
それも
私
(
わたくし
)
一人
(
ひとり
)
より
上田家
(
うへだけ
)
に
子
(
こ
)
がないのならば、
014
何
(
なん
)
とかしてでも
内
(
うち
)
に
居
(
を
)
つて
家
(
いへ
)
の
為
(
ため
)
に
働
(
はたら
)
かねばなりますまいが、
015
五
(
ご
)
人
(
にん
)
も
弟妹
(
けうだい
)
のあることですから、
016
家
(
いへ
)
のことは
私
(
わたくし
)
が
居
(
を
)
らなくても、
017
如何
(
どう
)
なりと
都合
(
つがふ
)
をつけて、
018
神
(
かみ
)
さまが
守
(
まも
)
つて
下
(
くだ
)
さるでせうから……』
019
といふや
否
(
いな
)
や、
020
別家
(
べつけ
)
の
次郎松
(
じろまつ
)
サンは、
021
忽
(
たちま
)
ち
目
(
め
)
をむき
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らし、
022
次
(
じ
)
『ナニお
前
(
まへ
)
はそんなバカな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふのだ。
023
二言目
(
ふたことめ
)
には
口癖
(
くちぐせ
)
のやうに、
024
お
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
ぢやの、
025
お
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
ぢやのと、
026
小癪
(
こしやく
)
にさわることを
云
(
い
)
ふが、
027
お
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
に
内
(
うち
)
を
出
(
で
)
るのなら、
028
なぜにお
上
(
かみ
)
サンから
日給
(
につきふ
)
を
貰
(
もら
)
はぬのぢや。
029
又
(
また
)
お
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
になるやうな、
030
ヘン、
031
いふとすまぬが、
032
エライ
人間
(
にんげん
)
なら、
033
仇恥
(
あたはづか
)
しい
乞食
(
こじき
)
の
真似
(
まね
)
をして
親
(
おや
)
の
家
(
いへ
)
を
飛出
(
とびだ
)
し、
034
そこらあたりをウロウロと
歩
(
ある
)
かいでもよいぢやないか。
035
口
(
くち
)
に
番所
(
ばんしよ
)
がないかと
思
(
おも
)
うて、
036
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
くにも
程
(
ほど
)
がある。
037
極道
(
ごくだう
)
息子
(
むすこ
)
といふ
者
(
もの
)
は、
038
丁度
(
ちやうど
)
三文
(
さんもん
)
の
獅子舞
(
ししまひ
)
のやうに
口
(
くち
)
ばかり
大
(
おほ
)
きなもんだ。
039
アハヽヽヽ』
040
とあく
迄
(
まで
)
嘲笑
(
てうせう
)
する。
041
そこで
喜楽
(
きらく
)
は、
042
喜
(
き
)
『
二人
(
ふたり
)
が
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さつても、
043
私
(
わたくし
)
は
神
(
かみ
)
さまのお
道
(
みち
)
をすてるやうなことは
到底
(
たうてい
)
出来
(
でき
)
ませぬ。
044
真理
(
しんり
)
の
為
(
ため
)
には
一歩
(
いつぽ
)
もあとへは
引
(
ひ
)
きませぬ。
045
凡
(
すべ
)
て
神
(
かみ
)
さまのお
道
(
みち
)
へ
入
(
はい
)
ると、
046
いろいろさまざまの
妨害
(
ばうがい
)
や
圧迫
(
あつぱく
)
が
来
(
く
)
るといふことは
覚悟
(
かくご
)
してゐますから、
047
どうぞ
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
がいかねば、
048
せめて
二三
(
にさん
)
年
(
ねん
)
の
間
(
あひだ
)
暇
(
ひま
)
を
下
(
くだ
)
さい。
049
私
(
わたくし
)
は
今
(
いま
)
綾部
(
あやべ
)
で
幽斎
(
いうさい
)
の
修行場
(
しうぎやうば
)
を
開
(
ひら
)
いてる
為
(
ため
)
に、
050
一
(
いち
)
日
(
にち
)
でも
手
(
て
)
ぬきが
出来
(
でき
)
ませぬ。
051
けれ
共
(
ども
)
大切
(
たいせつ
)
な
祖母
(
そぼ
)
の
病気
(
びやうき
)
と
聞
(
き
)
いて、
052
帰
(
かへ
)
らぬ
訳
(
わけ
)
には
行
(
い
)
かぬので、
053
忙
(
いそが
)
しい
中
(
なか
)
を
繰合
(
くりあは
)
せて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たのですから、
054
どうぞそんなことを
言
(
い
)
はずに、
055
今度
(
こんど
)
は
見
(
み
)
のがして
下
(
くだ
)
さい。
056
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
う
綾部
(
あやべ
)
へ
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
かねばなりませぬから……』
057
とおとなしう
頼
(
たの
)
んでみた。
058
さうすると
又
(
また
)
次郎松
(
じろまつ
)
サンが
妙
(
めう
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
059
蒼天
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぎ、
060
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
で『フフン』と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
061
次
(
じ
)
『
何
(
なん
)
とマア
甘
(
うま
)
いことを
仰有
(
おつしや
)
るワイ。
062
かう
申
(
まを
)
すと
済
(
す
)
みませぬが、
063
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
に
修行
(
しうぎやう
)
をさして
貰
(
もら
)
ふの、
064
教
(
をし
)
へて
貰
(
もら
)
ふのといふ
者
(
もの
)
が、
065
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
世界
(
せかい
)
にあるものか。
066
遠
(
とほ
)
い
所
(
ところ
)
のこつちやから
分
(
わか
)
らぬと
思
(
おも
)
うて、
067
そんなウソツパチを
垂
(
た
)
れても、
068
此
(
この
)
黒
(
くろ
)
い
光
(
ひか
)
る
目
(
め
)
でチヤンと
睨
(
にら
)
んだら
間違
(
まちがひ
)
はないぞ。
069
深極道
(
しんごくだう
)
めが、
070
おのれの
食
(
く
)
ふ
丈
(
だけ
)
なら
猫
(
ねこ
)
でも
犬
(
いぬ
)
でもするぢやないか。
071
又
(
また
)
犬
(
いぬ
)
や
猫
(
ねこ
)
は
飼
(
か
)
うて
貰
(
もら
)
うた
家
(
いへ
)
は
能
(
よ
)
う
覚
(
おぼ
)
えてゐる。
072
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なん
)
ぢや、
073
廿八
(
にじふはち
)
年
(
ねん
)
も
飼
(
か
)
うて
貰
(
もら
)
うた
大切
(
たいせつ
)
な
親
(
おや
)
の
家
(
いへ
)
を
忘
(
わす
)
れてるぢやないか。
074
畜生
(
ちくしやう
)
にも
劣
(
おと
)
つた
奴
(
やつ
)
ぢや。
075
よう
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
い、
076
とぼけ
野郎
(
やろう
)
奴
(
め
)
。
077
此
(
この
)
穴太
(
あなを
)
の
在所
(
ざいしよ
)
には、
078
戸数
(
こすう
)
が
百三十
(
ひやくさんじふ
)
もあるが、
079
皆
(
みな
)
先祖
(
せんぞ
)
から
仏法
(
ぶつぽふ
)
を
信心
(
しんじん
)
して
居
(
ゐ
)
るではないか。
080
それにお
前
(
まへ
)
は
悪魔
(
あくま
)
に
魅入
(
みい
)
れられて、
081
たつた
一人
(
ひとり
)
偉相
(
えらさう
)
に、
082
神
(
かみ
)
さまぢやの
神道
(
しんだう
)
ぢやのと、
083
何
(
なん
)
といふ
不心得
(
ふこころえ
)
なことをさらすのだ。
084
先祖
(
せんぞ
)
さまに
対
(
たい
)
して
何
(
なん
)
と
言訳
(
いひわけ
)
をするのか。
085
よう
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
い。
086
貴様
(
きさま
)
がせうもないことをさらすものだから、
087
村
(
むら
)
の
交際
(
かうさい
)
もロクにして
貰
(
もら
)
へぬやうになつたぢやないか。
088
妙
(
めう
)
な
神
(
かみ
)
にトボけて、
089
家
(
いへ
)
の
名
(
な
)
迄
(
まで
)
悪
(
わる
)
うして、
090
それで
先祖
(
せんぞ
)
さまに
孝行
(
かうかう
)
と
思
(
おも
)
ふか。
091
それでもお
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
になるのか。
092
勿体
(
もつたい
)
なくも
花山
(
くわざん
)
天皇
(
てんのう
)
さまが
御
(
ご
)
信心
(
しんじん
)
遊
(
あそ
)
ばした、
093
西国
(
さいこく
)
廿一番
(
にじふいちばん
)
の
札所
(
ふだしよ
)
、
094
穴太寺
(
あなをじ
)
の
聖
(
せい
)
観世音
(
くわんぜおん
)
菩薩
(
ぼさつ
)
の
膝元
(
ひざもと
)
に
生
(
うま
)
れて、
095
有難
(
ありがた
)
い
結構
(
けつこう
)
な
観音
(
くわんのん
)
さまも
拝
(
をが
)
まずに、
096
流行神
(
はやりがみ
)
にトチ
呆
(
はう
)
けてそれが
何
(
なん
)
になる。
097
お
前
(
まへ
)
が
神
(
かみ
)
を
信心
(
しんじん
)
するので、
098
村中
(
むらぢう
)
からは
上田
(
うへだ
)
の
家
(
いへ
)
をのけ
者
(
もの
)
にして
居
(
ゐ
)
ることを
知
(
し
)
らぬか。
099
別家
(
べつけ
)
の
私
(
わたし
)
までが
村
(
むら
)
で
肩身
(
かたみ
)
が
狭
(
せま
)
いぢやないか。
100
チツとしつかりして
目
(
め
)
をさましたら
如何
(
どう
)
だ。
101
親
(
おや
)
の
雪隠
(
せんち
)
でクソをせぬやうな
奴
(
やつ
)
に
碌
(
ろく
)
な
者
(
もの
)
があるか』
102
と
旧思想
(
きうしさう
)
をふりまはし、
103
口角泡
(
こうかくあわ
)
をとばしてきびしく
責
(
せ
)
め
立
(
た
)
てる。
104
又
(
また
)
新別家
(
しんべつけ
)
のお
政
(
まさ
)
後家
(
ごけ
)
サンがいふには、
105
お
政
(
まさ
)
『コレ
喜三
(
きさ
)
ヤン、
106
それ
丈
(
だけ
)
内
(
うち
)
に
居
(
ゐ
)
るのがいやならば
仕方
(
しかた
)
がない。
107
たつて
綾部
(
あやべ
)
へ
行
(
ゆ
)
くなとは
言
(
い
)
はぬから、
108
お
前
(
まへ
)
は
惣領
(
そうりやう
)
で、
109
此
(
この
)
家
(
いへ
)
を
守
(
まも
)
らねばならぬ
義務
(
ぎむ
)
があるよつて、
110
お
米
(
よね
)
サンにお
金
(
かね
)
を
渡
(
わた
)
して
行
(
ゆ
)
きなされ。
111
なんぼ
神
(
かみ
)
さまの
道
(
みち
)
で、
112
金儲
(
かねまう
)
けにいて
居
(
ゐ
)
るのぢやないと
云
(
い
)
うても、
113
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
や
二十
(
にじふ
)
円
(
ゑん
)
位
(
ぐらゐ
)
は
懐
(
ふところ
)
に
持
(
も
)
つておいでるだろ。
114
それを
悉皆
(
すつくり
)
渡
(
わた
)
して
行
(
ゆ
)
きなさい。
115
おばアサンも
何時
(
いつ
)
死
(
し
)
なはるやら
分
(
わか
)
らぬから、
116
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
もしておかねばならぬ』
117
と
二人
(
ふたり
)
が
右
(
みぎ
)
と
左
(
ひだり
)
からつめかける。
118
又
(
また
)
母
(
はは
)
は
母
(
はは
)
で、
119
母
(
はは
)
『
頼
(
たの
)
むから、
120
どうぞ
内
(
うち
)
に
居
(
を
)
つておくれ。
121
大勢
(
おほぜい
)
の
子
(
こ
)
にも
代
(
か
)
へられぬ
兄
(
あに
)
のお
前
(
まへ
)
が、
122
内
(
うち
)
に
居
(
を
)
らぬのは、
123
何
(
なん
)
ともなしに
心淋
(
こころさび
)
しい。
124
去年
(
きよねん
)
神
(
かみ
)
さまのことで
家
(
いへ
)
を
出
(
で
)
てからと
云
(
い
)
ふものは、
125
毎日
(
まいにち
)
毎日
(
まいにち
)
お
前
(
まへ
)
のことが
心配
(
しんぱい
)
になつて、
126
夜
(
よる
)
もロクに
寝
(
ね
)
たこともない。
127
知
(
し
)
らぬとこへ
行
(
い
)
つて、
128
いろいろと
苦労
(
くらう
)
や
難儀
(
なんぎ
)
をするよりも、
129
一
(
いち
)
日
(
にち
)
でも
親子
(
おやこ
)
が
側
(
そば
)
に
居
(
を
)
つて、
130
苦労
(
くらう
)
をしておくれ。
131
お
前
(
まへ
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
苦労
(
くらう
)
をするなら、
132
どんな
辛
(
つら
)
いことがあつても
辛
(
つら
)
いと
思
(
おも
)
はぬから……』
133
と
泣
(
な
)
いて
頼
(
たの
)
まれる。
134
喜楽
(
きらく
)
は
進退
(
しんたい
)
谷
(
きは
)
まつて、
135
如何
(
どう
)
ともすることが
出来
(
でき
)
なくなつた。
136
別家
(
べつけ
)
の
二人
(
ふたり
)
は
頭
(
あたま
)
から
火
(
ひ
)
のつくやうに
喧
(
やかま
)
しくいふ。
137
ゴテゴテと
病人
(
びやうにん
)
の
枕許
(
まくらもと
)
で
談判
(
だんぱん
)
して
居
(
ゐ
)
るのを、
138
少
(
すこ
)
し
耳
(
みみ
)
の
遠
(
とほ
)
い
祖母
(
そぼ
)
に
聞
(
きこ
)
えたとみえて、
139
少
(
すこ
)
しく
頭
(
あたま
)
をあげて、
140
祖母
(
そぼ
)
『アヽ
妾
(
わたし
)
の
病気
(
びやうき
)
も
神仏
(
しんぶつ
)
のおかげで、
141
八九分
(
はちくぶ
)
通
(
どほ
)
り
快
(
よ
)
うなりました。
142
松
(
まつ
)
サンやお
政
(
まさ
)
ハンや、
143
お
米
(
よね
)
のいふのも
無理
(
むり
)
はないが
内
(
うち
)
には
弟
(
おとうと
)
の
幸吉
(
かうきち
)
も
居
(
ゐ
)
るなり、
144
元吉
(
もときち
)
も
近
(
ちか
)
い
内
(
うち
)
にお
雪
(
ゆき
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
手伝
(
てつだ
)
ひに
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
であるから
別
(
べつ
)
に
百姓
(
ひやくしやう
)
に
差支
(
さしつか
)
へもあるまい。
145
喜三郎
(
きさぶろう
)
は
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
う
内
(
うち
)
を
出
(
で
)
て、
146
綾部
(
あやべ
)
で
神
(
かみ
)
さまの
為
(
ため
)
に
尽
(
つく
)
しておくれ。
147
老人
(
らうじん
)
の
差出口
(
さしでぐち
)
と、
148
皆
(
みな
)
サンに
怒
(
おこ
)
られるか
知
(
し
)
らぬが
今度
(
こんど
)
丈
(
だけ
)
は
老人
(
らうじん
)
の
頼
(
たの
)
みぢや、
149
喜三郎
(
きさぶろう
)
のいふことを
聞
(
き
)
いてやつておくれ』
150
と
雄々
(
をを
)
しくも
云
(
い
)
つてくれられた。
151
老人
(
らうじん
)
の
言葉
(
ことば
)
には
三
(
さん
)
人
(
にん
)
も
反
(
そむ
)
くことは
出来
(
でき
)
ぬと、
152
少
(
すこ
)
し
鉾先
(
ほこさき
)
がにぶり
出
(
だ
)
した。
153
喜楽
(
きらく
)
は
其
(
その
)
時
(
とき
)
にまるで
百万
(
ひやくまん
)
の
援軍
(
ゑんぐん
)
が
来
(
き
)
たやうな
気
(
き
)
がして、
154
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず、
155
手
(
て
)
を
合
(
あ
)
はして
祖母
(
おば
)
アさまを
拝
(
をが
)
んだ。
156
さうかうして
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
へ、
157
弟
(
おとうと
)
の
幸吉
(
かうきち
)
が
田圃
(
たんぼ
)
から
鍬
(
くわ
)
を
肩
(
かた
)
にして
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
て
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
き、
158
いろいろと
喜楽
(
きらく
)
の
為
(
ため
)
に
弁護
(
べんご
)
の
労
(
らう
)
を
取
(
と
)
つてくれ、
159
其
(
その
)
夜
(
よ
)
は
皆
(
みな
)
の
人
(
ひと
)
と
袂
(
たもと
)
を
別
(
わか
)
つた。
160
喜楽
(
きらく
)
は
真夜
(
しんや
)
の
十二
(
じふに
)
時
(
じ
)
頃
(
ごろ
)
、
161
幸吉
(
かうきち
)
と
共
(
とも
)
に
産土
(
うぶすな
)
の
小幡
(
をばた
)
神社
(
じんしや
)
へ
参詣
(
さんけい
)
し、
162
喜楽
(
きらく
)
『どうぞ
此
(
この
)
度
(
たび
)
は
無事
(
ぶじ
)
に
納
(
をさ
)
まつて
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
れますやうに……』
163
と
祈願
(
きぐわん
)
をこらし、
164
帰
(
かへ
)
つて
寝
(
しん
)
についた。
165
翌朝
(
よくてう
)
になると、
166
早々
(
さうさう
)
から
又
(
また
)
株内
(
かぶうち
)
の
人々
(
ひとびと
)
が
出
(
で
)
て
来
(
きた
)
り、
167
千言
(
せんげん
)
万語
(
ばんご
)
を
費
(
つひ
)
やして
喜楽
(
きらく
)
の
綾部行
(
あやべゆき
)
を
引止
(
ひきと
)
めようとする。
168
彼
(
かれ
)
此
(
こ
)
れしてとうとう
三日間
(
みつかかん
)
穴太
(
あなを
)
に
引
(
ひき
)
とめられて
了
(
しま
)
つたが、
169
漸
(
やうや
)
くにして、
170
弟
(
おとうと
)
の
幸吉
(
かうきち
)
を
伴
(
つ
)
れて、
171
一応
(
いちおう
)
綾部
(
あやべ
)
まで
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
くことになり、
172
ホツと
一息
(
ひといき
)
つくことが
出来
(
でき
)
た。
173
併
(
しか
)
し
次郎松
(
じろまつ
)
サンやお
政
(
まさ
)
ハンや
相談
(
さうだん
)
の
上
(
うへ
)
で、
174
弟
(
おとうと
)
を
伴
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
くことにしたのである。
175
それは……
喜楽
(
きらく
)
がウソをついてをるのに
相違
(
さうゐ
)
ない、
176
大方
(
おほかた
)
綾部
(
あやべ
)
の
方
(
はう
)
で
乞食
(
こじき
)
でもして
居
(
ゐ
)
るのだらう、
177
去年
(
きよねん
)
着
(
き
)
て
出
(
で
)
たなりの
着物
(
きもの
)
を
着
(
き
)
て
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た
以上
(
いじやう
)
は、
178
仮令
(
たとへ
)
乞食
(
こじき
)
をせず
共
(
とも
)
、
179
ヒドイ
難儀
(
なんぎ
)
をして
居
(
を
)
るのであらうから、
180
お
前
(
まへ
)
は
兄
(
あに
)
に
従
(
つ
)
いて
十分
(
じふぶん
)
に
査
(
しら
)
べて
来
(
こ
)
い……と
云
(
い
)
ひふくめて
同道
(
どうだう
)
させることになつたのである。
181
幸吉
(
かうきち
)
も
神
(
かみ
)
さまのお
道
(
みち
)
には
元
(
もと
)
から
熱心
(
ねつしん
)
で、
182
幽斎
(
いうさい
)
の
修行
(
しうぎやう
)
迄
(
まで
)
した
位
(
くらゐ
)
だから、
183
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
喜楽
(
きらく
)
について
来
(
く
)
ることになつた。
184
喜楽
(
きらく
)
はヤツと
安心
(
あんしん
)
して
母
(
はは
)
に
別
(
わか
)
れをつげ、
185
急
(
いそ
)
ぎ
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
らうとする
折
(
をり
)
しも、
186
例
(
れい
)
の
次郎松
(
じろまつ
)
サンが
又
(
また
)
もややつて
来
(
き
)
て、
187
次
(
じ
)
『
一寸
(
ちよつと
)
喜三
(
きさ
)
ヤンに
尋
(
たづ
)
ねたいことがあるから、
188
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つておくれ。
189
お
前
(
まへ
)
は
神
(
かみ
)
さまの
道
(
みち
)
とかで、
190
人
(
ひと
)
の
病気
(
びやうき
)
を
治
(
なほ
)
すとか、
191
よう
治
(
なほ
)
さぬとか
云
(
い
)
ふことだが、
192
現在
(
げんざい
)
親身
(
しんみ
)
のお
祖母
(
ばあ
)
サンの
病気
(
びやうき
)
はよう
治
(
なほ
)
さぬのかい、
193
伺
(
うかが
)
ひは
出来
(
でき
)
ぬかい。
194
お
前
(
まへ
)
のお
自慢
(
じまん
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
がきくなら、
195
凡
(
およ
)
そ
何時
(
いつ
)
頃
(
ごろ
)
に
死
(
し
)
なはると
云
(
い
)
ふこと
位
(
くらゐ
)
は
分
(
わか
)
るだらう。
196
葬式
(
さうしき
)
の
用意
(
ようい
)
もしておかんならぬし、
197
もし
神
(
かみ
)
さまに
頼
(
たの
)
んで
治
(
なを
)
るものなら、
198
今
(
いま
)
私
(
わたし
)
の
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
で
治
(
なを
)
して
見
(
み
)
せなさい。
199
中々
(
なかなか
)
流行神
(
はやりがみ
)
サン
位
(
くらゐ
)
ではこんな
大病
(
たいびやう
)
は
治
(
なを
)
るまい。
200
治
(
なほ
)
らな
治
(
なを
)
らぬでよいから、
201
せめて
何時
(
いつ
)
頃
(
ごろ
)
に
命
(
いのち
)
がなくなると
云
(
い
)
ふことを
知
(
し
)
らしてくれ。
202
これ
位
(
くらゐ
)
なことが
分
(
わか
)
らいで、
203
人
(
ひと
)
を
助
(
たす
)
けるの、
204
教
(
をし
)
へるの、
205
お
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
だのと
大法螺
(
おほぼら
)
を
吹
(
ふ
)
いたとて、
206
世間
(
せけん
)
の
人
(
ひと
)
が
承知
(
しようち
)
いたさぬぞや。
207
サア
如何
(
どう
)
ぢや
如何
(
どう
)
ぢや。
208
見
(
み
)
ん
事
(
ごと
)
返答
(
へんたふ
)
が
出来
(
でき
)
ますのかな』
209
と
矢
(
や
)
つぎ
早
(
ばや
)
にせめかけて
来
(
く
)
る。
210
そこで
喜楽
(
きらく
)
は
其
(
その
)
場
(
ば
)
のがれの
出放題
(
ではうだい
)
に、
211
喜
(
き
)
『お
祖母
(
ばあ
)
サンの
病気
(
びやうき
)
は
三日先
(
みつかさき
)
になつたら
全快
(
ぜんくわい
)
する。
212
そして
命
(
いのち
)
は
八十八
(
はちじふはち
)
まで
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ』
213
と
云
(
い
)
つてみた。
214
これを
聞
(
き
)
いた
次郎松
(
じろまつ
)
サンは
舌
(
した
)
をニユーツと
出
(
だ
)
し、
215
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
でこけて
笑
(
わら
)
ひ、
216
次
(
じ
)
『ヘー、
217
お
前
(
まへ
)
サンの
神
(
かみ
)
さまは、
218
何
(
なん
)
とマア、
219
ドエライ
御
(
お
)
方
(
かた
)
ぢやな。
220
こんな
大病
(
たいびやう
)
のしかも
死病
(
しにやまひ
)
が
三日
(
みつか
)
のあとに
治
(
なほ
)
りますかい。
221
そらチツと
違
(
ちが
)
ひませう。
222
大方
(
おほかた
)
仏壇
(
ぶつだん
)
へでも
位牌
(
ゐはい
)
になつてお
直
(
なほ
)
りなさるのと、
223
間違
(
まちが
)
つてゐやしませぬかな。
224
おまけに
八十八
(
はちじふはち
)
まで
命
(
いのち
)
が
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だと、
225
フフーン
丹波
(
たんば
)
の
筍医者
(
たけのこいしや
)
が
聞
(
き
)
いて
呆
(
あき
)
れますワイ』
226
と
飽迄
(
あくまで
)
、
227
俄
(
にはか
)
に
丁寧
(
ていねい
)
な
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
うて
嘲
(
あざけ
)
り
笑
(
わら
)
ふ。
228
併
(
しか
)
し
不思議
(
ふしぎ
)
にも
喜楽
(
きらく
)
の
言
(
い
)
つた
通
(
とほ
)
り、
229
三日
(
みつか
)
の
後
(
のち
)
に
祖母
(
そぼ
)
は
床払
(
とこばらひ
)
をすることになり、
230
八十八
(
はちじふはつ
)
歳
(
さい
)
まで
生
(
い
)
きて
居
(
を
)
られたのである。
231
弟
(
おとうと
)
の
幸吉
(
かうきち
)
が
見
(
み
)
るに
見
(
み
)
かねて、
232
次郎松
(
じろまつ
)
サンやお
政
(
まさ
)
後家
(
ごけ
)
サンに
向
(
むか
)
ひ、
233
幸
(
かう
)
『ウチの
兄
(
に
)
イサンは
神
(
かみ
)
さまのお
道
(
みち
)
に
働
(
はたら
)
かれる
代
(
かは
)
りに、
234
私
(
わたし
)
が
二人前
(
ふたりまえ
)
働
(
はたら
)
いて
百姓
(
ひやくしやう
)
を
勉強
(
べんきやう
)
しますから、
235
兄
(
に
)
いサンには
内
(
うち
)
のことを
心配
(
しんぱい
)
かけぬやうにしたいものです』
236
と
云
(
い
)
ふや
否
(
いな
)
や、
237
次郎松
(
じろまつ
)
サンは
大
(
おほ
)
きな
目
(
め
)
をむき、
238
次
(
じ
)
『コレ
幸
(
かう
)
ヤン、
239
何
(
なん
)
としたバカなことを
言
(
い
)
うのだ。
240
お
前
(
まへ
)
までお
紋狐
(
もんぎつね
)
につままれたのだなア。
241
飯綱狐
(
いづなぎつね
)
を
沢山
(
たくさん
)
に
懐
(
ふところ
)
に
隠
(
かく
)
して
居
(
ゐ
)
るから、
242
グヅグヅしてると
険呑
(
けんのん
)
だ』
243
と
眉毛
(
まゆげ
)
に
唾
(
つばき
)
をつける
真似
(
まね
)
して、
244
長
(
なが
)
い
舌
(
した
)
をニユーと
出
(
だ
)
し、
245
腮
(
あご
)
をクイクイと
揺
(
ゆす
)
つて
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしてゐる。
246
結局
(
けつきよく
)
幸吉
(
かうきち
)
が
二人前
(
ににんまえ
)
の
仕事
(
しごと
)
をするといふ
条件付
(
でうけんつき
)
で、
247
漸
(
やうや
)
く
其
(
その
)
場
(
ば
)
をのがれ、
248
綾部
(
あやべ
)
へ
一
(
いち
)
時
(
じ
)
弟
(
おとうと
)
と
共
(
とも
)
に
同行
(
どうかう
)
することとなつた。
249
這
(
は
)
うて
出
(
で
)
てはねる
蚯蚓
(
みみづ
)
や
雲
(
くも
)
の
峰
(
みね
)
250
(
大正一一・一〇・一四
旧八・二四
松村真澄
録)
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