霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二七章 仇箒(あだぼうき)〔一〇六四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻 篇:第5篇 正信妄信 よみ(新仮名遣い):せいしんぼうしん
章:第27章 仇箒 よみ(新仮名遣い):あだぼうき 通し章番号:1064
口述日:1922(大正11)年10月19日(旧08月29日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
明治三十八年二月、四方平蔵と中村竹蔵その他十人の幹部は、本年中に世の中の立替立直しが完成し、五六七の世が出現するとほらを吹きまわってのぼせ上っていた。
中村の女房は、中村が商売もせずに毎日脱線だらけのことを言い歩くので、中村を幾度となく意見していたが、中村は怒って女房を離縁してしまった。そして福島久子を自分の女房にしようと企んでいたが、喜楽に妨害され、中村と福島は非常に喜楽を恨んだ。
明治三十八年は、それから四五年経っていた。教祖から中村に、妻帯せよと命令がくだったので、候補が挙げられた。その中に、教祖の娘で澄子の姉の竜子の名前もあった。
中村たちは、喜楽を追い落とすために竜子を中村の妻に迎えたいと運動していた。一方竜子は、中村の女房になって改心させようという考えもあった。
しかし喜楽は、中村が教祖の娘を妻に迎えてますます威張りだし、これ以上圧迫を受けてはたまらないと教祖様に直訴した。教祖は四方平蔵を呼んで、竜子の縁談は会長の意見に任せるようにと言い渡した。
そこで、木下慶太郎と竜子をめあわせることに決まった。中村には、福島久子の股肱となって働いていた女を女房にした。
中村は非常に落胆し、明治三十九年に狂い死にをしてしまった。福島久子はずっと、現在まで二十四年間不断に反対運動を継続している。
あるとき、布教宣伝の旅の帰りに八木に立ち寄ってみると、福島夫婦はやせ衰え、涙ぐんで控えている。聞いてみると、艮の金神の命令で百日もの断食の修業をしているのだという。
今日がちょうど行の上りで、福島寅之助はこれから天に昇ってみだれた世の中を水晶にいたす役に付くからと、女房と別れの盃を交わしたところだという。
そして喜楽を早く返そうとするので、心配で八木の茶店に休んで遠くから福島の家の様子を考えていた。しかしその後も福島の守護神はでたらめな託宣を繰り返したので、福島は自分でだまされたと気が付いた。
福島寅之助は四五年かけて書いた自分の筆先をすべて焼いてしまい、ご神前をひっくり返してしまったということがあった。
また、自分が浦上を連れて京都方面に宣伝に行くと、どこもかしこも反対者が自分を入れるなと先回りして触れ回り、浦上と二人で途方に暮れてしまったこともあった。
自分たちが憤慨していると、綾部の役員の手先となって信者宅を触れ回っていた畑中という男にばったり出くわした。畑中は自分たちの姿を見ると逃げてしまった。
綾部へ戻ってから浦上は懲りて、餅屋を始めた。喜楽が神様を祀ってやりたいへんに繁盛したが、浦上は慢心して財産を失ってしまった。綾部に居れなくなり、位田に帰って細々と豆腐屋をしているという。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-13 20:11:45 OBC :rm3827
愛善世界社版:275頁 八幡書店版:第7輯 263頁 修補版: 校定版:282頁 普及版:147頁 初版: ページ備考:
001 明治(めいぢ)卅八(さんじふはち)(ねん)()(ぐわつ)(こと)であつた。002大本(おほもと)四方(しかた)平蔵(へいざう)003中村(なかむら)竹造(たけざう)(その)(ほか)(じふ)(にん)幹部(かんぶ)本年中(ほんねんちう)()立替(たてかへ)立直(たてなほ)しが完成(くわんせい)し、004五六七(みろく)()出現(しゆつげん)すると、005脱線(だつせん)だらけの法螺(ほら)()(まは)り、006日露(にちろ)戦争(せんそう)最中(さいちう)なので、007筆先(ふでさき)神示(しんじ)実現(じつげん)すると、008大変(たいへん)なメートルをあげて逆上(のぼ)せあがり、009中村(なかむら)竹造(たけざう)(ごと)きは筆先(ふでさき)文句(もんく)(なか)に、010(みち)正中(まんなか)をまつすぐに(ある)けといふ語句(ごく)のあるのを(たて)にとり、011(くら)やみの()(なか)といふ文句(もんく)()(おぼ)えて、012(ひる)真最中(まつさいちう)十曜(とえう)(もん)のついた提灯(ちやうちん)蝋燭(らふそく)をとぼし、013大道(だいだう)正中(せいちう)をすました(かほ)して、014牛車(うしぐるま)()()うが、015(なに)()うが、016(すこ)しもよけず、017(ひだり)()提灯(ちやうちん)()ち、018(みぎ)()扇子(せんす)をすぼめて(にぎ)り、019(ひぢ)()つて(ある)くので、020牛車(うしぐるま)(はう)からよけると、021(かみ)さまの()威勢(ゐせい)といふものはエライものだ、022(まこと)(みち)正中(まんなか)さへ(ある)いて()れば、023どんな(もの)でも(この)(とほり)よける……とますます()()つて、024往来(わうらい)迷惑(めいわく)(かま)はず、025筆先(ふでさき)文句(もんく)(たか)らかに()()(なが)ら、026大道(だいだう)濶歩(くわつぽ)するといふ逆上方(のぼせかた)であつた。027(ある)(とき)農具(のうぐ)(くるま)満載(まんさい)して()りに(ある)(なが)ら、028元伊勢(もといせ)方面(はうめん)まで宣伝(せんでん)()つて()つたが、029陰暦(いんれき)二日(ふつか)(つき)()えたといふので、030サア大変(たいへん)だ、031三日月(みかづき)さまは(むかし)から(をが)んだ(こと)があるが、032二日(ふつか)のお(つき)さまが(をが)めたのは(まつた)()(かは)るのが(ちか)よつた(しるし)だ、033グヅグヅしては()れぬと、034(かね)財布(さいふ)荷物(にもつ)(くるま)も、035由良川(ゆらがは)()()み、036一生(いつしやう)懸命(けんめい)綾部(あやべ)()(かへ)り、037大変(たいへん)大変(たいへん)連呼(れんこ)(なが)ら、038二階(にかい)(まつ)つた神壇(しんだん)(まへ)()つて、039一生(いつしやう)懸命(けんめい)祈願(きぐわん)()め、040フツと(かほ)をあげると、041そこに(おほ)きな水鉢(みづばち)清水(しみづ)()んで(そな)へてあつた。042二階(にかい)(まど)があけてあつたので、043(すずめ)飛込(とびこ)み、044水鉢(みづばち)(うへ)(ふん)一片(ひときれ)たれたのが面白(おもしろ)(みづ)()いてるのを、045フト(なが)めて、046……ヤア(いよいよ)立替(たてかへ)(はじ)まつた。047(みづ)(なか)優曇華(うどんげ)(はな)()いてゐる……とさわぎまはるので、048四方(しかた)平蔵(へいざう)(はじ)幹部(かんぶ)連中(れんちう)が、049神前(しんぜん)(すす)んで(これ)(なが)め、050ますます有難(ありがた)がつて、051涙声(なみだごゑ)になり、052祝詞(のりと)幾回(いくくわい)となく奏上(そうじやう)し、053六畳(ろくでふ)(はなれ)()つた喜楽(きらく)(まへ)()()て、054中村(なかむら)竹造(たけざう)(ひぢ)()り、055さも鷹揚(おうよう)に、
056中村(なかむら)『コレ会長(くわいちやう)サン、057よい加減(かげん)改心(かいしん)をして、058小松林(こまつばやし)サンに()んで(もら)ひ、059(はや)(ひつじさる)金神(こんじん)さまになつて、060女房役(にようばうやく)をつとめて(もら)はぬと、061時機(じき)切迫(せつぱく)(いた)しましたぞ、062昨日(きのふ)昨日(きのふ)とて、063元伊勢(もといせ)から(かへ)つて()(さい)二日月(ふつかづき)(をが)めるなり、064今日(けふ)(また)(そな)への(みづ)(なか)優曇華(うどんげ)(はな)()きました、065グヅグヅしては()られますまい、066(はや)改心(かいしん)なされ』
067声高(こわだか)(しか)()けるやうに()ふ。068そこで喜楽(きらく)は、
069喜楽(きらく)二日月(ふつかづき)さまを(をが)めたのは(べつ)(めづら)(こと)はない、070自分(じぶん)(たち)穴太(あなを)()つて、071チヨコチヨコ(をが)んだ(こと)がある、072(まへ)(たち)はこんな(やま)(つつ)まれた(せま)(ところ)()らしてるから、073二日月(ふつかづき)さまが(をが)めたというて(さわ)ぐのだらうが、074そんな馬鹿(ばか)(こと)(ひと)()うと気違(きちがひ)にしられるから、075どうぞそれ(だけ)()はぬやうにしてくれ』
076といはせも()てず、077中村(なかむら)(くち)(とが)らし、
078中村(なかむら)『コラ小松林(こまつばやし)079(むかし)から三日月(みかづき)といふ(こと)はあるが、080二日月(ふつかづき)といふ(こと)があるかい、081穴太(あなを)二日月(ふつかづき)をみたなんて、082そんな出放題(ではうだい)(こと)をいうて、083水晶(すゐしやう)(みたま)(くも)らさうとかかつてもだめだ。084()立替(たてかへ)(ちか)よつたといふ(こと)を、085(うしとらの)金神(こんじん)変性(へんじやう)男子(なんし)御霊(みたま)大出口(おほでぐちの)(かみ)とあらはれて、086日出(ひのでの)(かみ)竜宮(りうぐう)さまの()手伝(てつだい)立替(たてかへ)立直(たてなほし)をなさる時節(じせつ)()たのだ。087(はや)小松林(こまつばやし)改心(かいしん)(いた)して、088会長(くわいちやう)肉体(にくたい)()り、089園部(そのべ)内藤(ないとう)(しづ)まりて、090(ひつじさる)金神(こんじん)さまの(にく)のお(みや)とならぬ(こと)には、091世界(せかい)(かみ)仏事(ぶつじ)人民(じんみん)(なに)ほど(くるし)むかしれぬぞよ、092コラ小松林(こまつばやし)093それが嘘言(うそ)(おも)ふなら、094一寸(ちよつと)二階(にかい)()神前(しんぜん)()てみい、095水晶(すゐしやう)のお(みづ)優曇華(うどんげ)(はな)()いてる、096それを()たら如何(いか)小松林(こまつばやし)でも往生(わうじやう)せずには()られまい』
097得意(とくい)になつて(しやべ)()てるので、098不思議(ふしぎ)(こと)をいふワイ、099(また)ロクな(こと)ではあらうまいと、100早速(さつそく)二階(にかい)(あが)つて()ると、101(すずめ)(ふん)がパツと(みづ)にういて、102(しろ)()(さが)り、103丁度(ちやうど)優曇華(うどんげ)(はな)のやうに()えて()る。104喜楽(きらく)一寸(ちよつと)()(はし)(さき)()れをすくうて、105中村(なかむら)(はな)のそばへつきつけて、
106喜楽(きらく)『オイ(これ)優曇華(うどんげ)ぢやない、107(すずめ)(ふん)だ』
108といつた(ところ)109中村(なかむら)(めう)(かほ)をしてだまり()んで(しま)うた。110さうすると(ほか)役員(やくゐん)(つま)らぬ(かほ)をして、
111『どうぞ会長(くわいちやう)サン、112こんな(こと)(ひと)にいはぬやうにして(くだ)され、113(わら)はれますから』
114(たの)()可笑(おか)しさ。
115 これより(さき)中村(なかむら)女房(にようばう)であつた菊子(きくこ)といふのは、116中村(なかむら)毎日(まいにち)日日(ひにち)商売(しやうばい)もせず、117脱線(だつせん)だらけの(こと)をいひ(ある)くので、118幾度(いくど)となく意見(いけん)をしたが、119とうとう中村(なかむら)(おこ)つて、120『お(きく)小松林(こまつばやし)悪霊(あくれい)がついた』……といひ()し、121()()して(しま)つた。122そして教祖(けうそ)身内(みうち)から女房(にようばう)(もら)はうと(かんが)へてゐたが、123福島(ふくしま)久子(ひさこ)八木(やぎ)から引戻(ひきもど)して自分(じぶん)女房(にようばう)にしやうと(たく)んでゐたのを、124喜楽(きらく)(さまた)げられて目的(もくてき)(たつ)せず、125それより中村(なかむら)久子(ひさこ)とは大変(たいへん)喜楽(きらく)のする(こと)()(こと)一々(いちいち)妨害(ばうがい)一層(いつそう)猛烈(まうれつ)(くは)へるやうになつて()た。
126 四五(しご)(ねん)たつた明治(めいぢ)卅八(さんじふはち)(ねん)(ころ)には(いよいよ)中村(なかむら)教祖(けうそ)から妻帯(さいたい)をせよと、127命令(めいれい)されたので、128役員(やくゐん)がよつてかかつて、129いろいろ信者(しんじや)(むすめ)中村(なかむら)紹介(せうかい)したが、130如何(どう)しても(くび)をふつて(おう)ぜなかつた。131中村(なかむら)澄子(すみこ)(あね)竜子(りようこ)女房(にようばう)(もら)はうと、132暗中(あんちう)飛躍(ひやく)()えずやつてゐたからである。133竜子(りようこ)(こころ)(うち)にて中村(なかむら)女房(にようばう)になり、134改心(かいしん)をさして、135会長(くわいちやう)()(こと)()かすやうにせうかと(まで)(かんが)へてゐた。136(しか)中村(なかむら)竜子(りようこ)自分(じぶん)(つま)となし、137喜楽(きらく)澄子(すみこ)退隠(たいいん)さして威張(ゐば)つてみやうという野心(やしん)があつたのである。138教祖(けうそ)から竜子(りようこ)(をつと)中村(なかむら)竹造(たけざう)139竹原(たけはら)房太郎(ふさたらう)140木下(きのした)慶太郎(けいたらう)(さん)(にん)(うち)から(えら)めとの命令(めいれい)(さが)つたので四方(しかた)平蔵(へいざう)(その)()幹部(かんぶ)(れん)が、141とうとう中村(なかむら)(つま)にすることにきめて(しま)つた。142(いま)でさへ喜楽(きらく)澄子(すみこ)はこれ(だけ)圧迫(あつぱく)妨害(ばうがい)をうけてゐるのに、143中村(なかむら)(あね)婿(むこ)となつて、144(はし)やぎ()しては(たま)らぬと(おも)ひ、145教祖(けうそ)(むか)つて、
146喜楽(きらく)『どうぞ今日(けふ)(かぎ)澄子(すみこ)離縁(りえん)して(くだ)さい、147(かへ)ります』
148といつた(ところ)149教祖(けうそ)大変(たいへん)当惑(たうわく)し、150四方(しかた)平蔵(へいざう)()んで、
151教祖(けうそ)『どうぞ会長(くわいちやう)サンの、152(この)(こと)は、153意見(いけん)(まか)してくれ』
154といはれたので、155幹部(かんぶ)(うち)でも(すこ)しく喜楽(きらく)()(こと)(みみ)()れる木下(きのした)慶太郎(けいたらう)養子(やうし)にしたがよいと()つたので、156竜子(りようこ)別家(べつけ)させ木下(きのした)養子(やうし)()れる(こと)とした。157そして八木(やぎ)福島(ふくしま)久子(ひさこ)股肱(ここう)となつて喜楽(きらく)布教先(ふけうさき)古物屋(ふるてや)()()んで、158軒別(けんべつ)邪魔(じやま)しに(ある)かしてゐた中村(なかむら)小松(こまつ)といふ(をんな)中村(なかむら)女房(にようばう)にした。159それから中村(なかむら)はスツカリ失望(しつばう)落胆(らくたん)結果(けつくわ)160発狂(はつきやう)気味(ぎみ)になり、161(つひ)には自分(じぶん)(むかし)からの陰謀(いんぼう)を、162あたりかまはず自白(じはく)する(やう)になつて()た。
163 (あま)中村(なかむら)(かみ)さまに反対(はんたい)するので、164神罰(しんばつ)()けて糞壺(くそつぼ)へはまつて()んで(しま)ふといふ(こと)明治(めいぢ)卅七(さんじふしち)(ねん)()(ぐわつ)三日(みつか)()165(かみ)さまから(ゆめ)()せられ、166(みち)(しをり)()きとめておいたが、167とうとう明治(めいぢ)卅九(さんじふく)(ねん)(その)(ゆめ)(ごと)くになつて(くる)()にをして(しま)つたのである。
168 中村(なかむら)八木(やぎ)久子(ひさこ)とは始終(しじう)往復(わうふく)し、169内外(ないぐわい)相応(あひおう)じて、170会長(くわいちやう)排斥(はいせき)運動(うんどう)続行(ぞくかう)してゐた。171久子(ひさこ)最近(さいきん)(いた)るまで、172ヤハリ喜楽(きらく)敵視(てきし)して廿四(にじふよ)年間(ねんかん)不断(ふだん)反対(はんたい)運動(うんどう)継続(けいぞく)してゐたのである。
173 かういふ具合(ぐあひ)で、174如何(どう)しても迷信家(めいしんか)(れん)会長(くわいちやう)()(ところ)(ひと)つも(もち)ひず、175そんな書物(しよもつ)(がく)にあるやうな(をしへ)(あく)(をしへ)だからと()つて、176一人(ひとり)()いてくれぬので、177澄子(すみこ)相談(さうだん)結果(けつくわ)178(ふたたび)宣伝(せんでん)飛出(とびだ)し、179村上(むらかみ)房之助(ふさのすけ)(やうや)()()めかけたので、180村上(むらかみ)(したが)へ、181八木(やぎ)まで()つて()ると、182角文字(かくもじ)一切(いつさい)使(つか)(こと)はならぬ、183外国(ぐわいこく)()(かた)ぢやと、184(さか)んに攻撃(こうげき)185喜楽(きらく)()いた神号(しんがう)(まで)()きすてさしたくせに、186八木(やぎ)神前(しんぜん)には角文字(かくもじ)で、187(うしとらの)金神(こんじん)国常立(くにとこたちの)(みこと)(ふと)(しる)した提灯(ちやうちん)一対(いつつい)ブラ(さが)り、188(その)(ほか)神具(しんぐ)にも(のこ)らず、189角文字(かくもじ)(しる)してあつた。190そこで喜楽(きらく)は、
191喜楽(きらく)福島(ふくしま)サン、192(この)()外国(ぐわいこく)文字(もじ)で、193(かみ)さまにお気障(きざわ)りにはなりませぬか』
194(たづ)ねてみると、195福島(ふくしま)はビリビリと眉毛(まゆげ)()()げし、
196福島(ふくしま)(この)角文字(かくもじ)はお(まへ)(かか)つた小松林(こまつばやし)()いたのとは(ちが)うから差支(さしつかへ)はない。197信者(しんじや)真心(まごころ)であげたのだから、198(やかま)しくいふな、199仮令(たとへ)外国(ぐわいこく)()でも日本人(にほんじん)()()いたのだ』
200勝手(かつて)理屈(りくつ)をまくし()てる。201そこで喜楽(きらく)村上(むらかみ)二人(ふたり)202八木(やぎ)立出(たちい)で、203北桑田(きたくはだ)方面(はうめん)布教(ふけう)()つた。204それから二三(にさん)(げつ)()つて八木(やぎ)(たち)よつて()ると、205福島(ふくしま)痩衰(やせおとろ)へ、206(ほね)(かは)とになり、207夫婦(ふうふ)(なみだ)ぐんで(ひか)えて()る。208様子(やうす)()いてみると、209(うしとらの)金神(こんじん)さまの命令(めいれい)で、210三十(さんじふ)(にち)(あひだ)(いち)(にち)一食(いつしよく)修行(しうぎやう)をなし、211あと三十(さんじふ)(にち)(なま)(いも)をかぢり、212あと三十(さんじふ)(にち)(みづ)(ばか)りを()み、213あと十日(とをか)(みづ)一滴(いつてき)()まずに修行(しうぎやう)をした。214今日(けふ)丁度(ちやうど)(ひやく)(にち)(あが)りで、215福島(ふくしま)寅之助(とらのすけ)は、216これから(てん)(のぼ)つて、217(みだ)れた()(なか)水晶(すゐしやう)(いた)すお(やく)になつたから、218(いま)女房(にようばう)(わか)れの水盃(みづさかづき)をした(ところ)だ、219(なん)だか(からだ)がフイフイとして、220(ひと)りで(そら)へあがりそになつて()たといつてゐる。221喜楽(きらく)はそれとはなしに丸山(まるやま)教会(けうくわい)(ある)教師(けうし)名古屋(なごや)屋上(をくじやう)三丈(さんぢやう)三尺(さんじやく)高台(たかだい)(つく)り、222これから天上(てんじやう)するというて、223二百(にひやく)(にん)(ばか)りの信者(しんじや)三丈(さんぢやう)三尺(さんじやく)高台(たかだい)(した)から、224天明(てんめい)海天(かいてん)天明(てんめい)海天(かいてん)(いの)つてゐた。225教師(けうし)はいつ(まで)たつても黒雲(くろくも)(むか)ひに()ぬので、226()をいらつて(ちう)(むか)つて飛上(とびあが)つた途端(とたん)に、227高台(たかだい)から転落(てんらく)し、228大腿骨(だいたいこつ)をうつて負傷(ふしやう)をしたといふ(こと)(その)(ころ)新聞(しんぶん)()てゐたので、229それを(はな)して()かし注意(ちうい)をすると、230(めう)(かほ)して(つぎ)()()つて(しま)ひ、231(ちから)のない(こゑ)で、
232福島(ふくしま)今日(けふ)十二(じふに)()天上(てんじやう)をさす(ところ)であつたけれど、233小松林(こまつばやし)悪神(あくがみ)()たによつて、234(いち)時間(じかん)仕組(しぐみ)をのばしたぞよ。235(はや)家内(かない)(ひさ)どの小松林(こまつばやし)()なせよ』
236呶鳴(どな)つてゐる。237喜楽(きらく)福島(ふくしま)久子(ひさこ)(あま)()(どく)でたまらぬので、238曲津(まがつ)がだましてるのだといふ(こと)出来(でき)ず、239大方(おほかた)(れい)(てん)(あが)るのだらうから、240肉体(にくたい)()をつけて、241(まつ)()へでも(のぼ)りそうだつたら()めなされ……と忠告(ちうこく)をして(かへ)つたものの心配(しんぱい)でたまらぬので、242八木(やぎ)(ある)茶店(ちやみせ)(やす)んで、243福島(ふくしま)様子(やうす)(とほ)くから(かんが)へて()た。244もし(まつ)()へでも(のぼ)りそうになつたら()めに()かうと(おも)うたからである。
245 そしたら福島(ふくしま)守護神(しゆごじん)は……都合(つがふ)()つて仕組(しぐみ)()ばした、246明日(あす)(あさ)まで()ばした、247明後日(あさつて)まで()ばした、248(いつ)週間(しうかん)(ほど)()ばした。249出鱈目(でたらめ)託宣(たくせん)をしたので、250福島(ふくしま)()がつき、251久子(ひさこ)八木(やぎ)(まち)買物(かひもの)にやつた不在(るす)()に、252四五(しご)(ねん)もかかつて昼夜(ちうや)せつせと()いた自分(じぶん)のお筆先(ふでさき)一所(ひとところ)によせ、253石油(せきゆ)をかけて一冊(いつさつ)(のこ)らず()いて(しま)ひ、
254福島(ふくしま)『コラおれを(だま)しやがつた悪神(あくがみ)()が』
255といきなり()神前(しんぜん)をひつくりかへし、256(かみ)さまの(ほこら)(のこ)らず(そと)(たた)()して(しま)うたといふ面白(おもしろ)物語(ものがたり)もあつた。
257 それから(また)綾部(あやべ)より役員(やくゐん)出張(しゆつちやう)して、258(かみ)さまを(まつ)(なほ)し、259(さか)んに会長(くわいちやう)攻撃(こうげき)続行(ぞくかう)してゐた。260会長(くわいちやう)澄子(すみこ)相談(さうだん)(うへ)261嵯峨(さが)京都(きやうと)伏見(ふしみ)支部(しぶ)などへ()をつけてやらうと浦上(うらかみ)()れて、262綾部(あやべ)立出(たちい)で、263園部(そのべ)一泊(いつぱく)してそれから八木(やぎ)立寄(たちよ)ると、264福島(ふくしま)寅之助(とらのすけ)矢庭(やには)(おく)から()んで()て、
265福島(ふくしま)『ヤア四足(よつあし)()よつたシーツシーツ』
266()ひまくり、267ピユーピユーと(たん)()きかけ、
268福島(ふくしま)『サア(はや)()()ね、269(けが)らはしい』
270(はうき)ではき()てる。271モウ()うなつては、272何程(なにほど)(こと)()けて(さと)してもダメだと(おも)ひ、273匆々(さうさう)にここを出立(しゆつたつ)して、274嵯峨(さが)信者(しんじや)友川(ともかは)弥一郎(やいちらう)といふ(うち)出張(しゆつちやう)した。275ここには支部(しぶ)(こしら)へてあつて、276喜楽(きらく)(をしへ)遵奉(じゆんぽう)してゐた熱心(ねつしん)信者(しんじや)である。277(しか)るに友川(ともかは)態度(たいど)がいつとはなしに、278(きは)めて冷淡(れいたん)になつて()るので妻君(さいくん)()いて()ると……、279今朝(けさ)大本(おほもと)から畑中(はたなか)伝吉(でんきち)サンが()()て、280(いま)上田(うへだ)貧乏神(びんばふがみ)がお(まへ)(ところ)()るだらうから、281敷居(しきゐ)(ひと)つまたげさしても(けが)れる、282キツと貧乏(びんばふ)するか、283大病(たいびやう)になるによつて、284(うしとらの)金神(こんじん)(さま)教祖(けうそ)()命令(めいれい)()をつけに()たのだといつて、285(かへ)らはりました、286そしてこれから京都(きやうと)伏見(ふしみ)(はう)()らしに()くといつて()られました……と(つつ)まず(かく)さず()()てた。287そこで海潮(かいてう)浦上(うらかみ)(とも)京都(きやうと)三ケ所(さんかしよ)支部(しぶ)(たづ)ねて()たが、288どこもかしこも(はうき)()()したり、289敷居(しきゐ)(また)げさしてくれぬ、290仕方(しかた)がないので、291明治座(めいぢざ)(すこ)(ひがし)横町(よこちやう)畑中(はたなか)親類(しんるゐ)で、292高町(たかまち)といふ信者(しんじや)があるので、293そこを訪問(はうもん)して()ると家内中(かないぢう)二階(にかい)(あが)つて(しま)ひ、294(くび)のゆがんだ、295(すこ)()のぬけたやうな(をんな)一人(ひとり)296(すわ)つて()る。297それは畑中(はたなか)(いもうと)でお(たひ)といふ(をんな)であつた。298喜楽(きらく)は、
299喜楽(きらく)『お(たひ)サン、300高町(たかまち)サンは何処(どこ)()つたかな』
301(たづ)ねると、
302(たひ)何処(どこ)()つたか()りませぬ、303ここ三日(みつか)十日(とをか)(かへ)らぬというて、304他所(よそ)()かはりました』
305()ふ。
306喜楽(きらく)『そんならお(ふぢ)サンは何処(どこ)()つたか』
307()いて()ると、
308(たひ)一寸(ちよつと)よそへ()かはりました』
309といふ。
310喜楽(きらく)(ばん)には(かへ)つて()るだらうな』
311()いて()ると、
312(たひ)『イエ(ばん)になつても(かへ)らはりしまへん、313高町(たかまち)サンもお(ふぢ)サンも(ばん)にも(かへ)らはりしまへん』
314(かき)をする。315(ばん)(かへ)ると()へば(また)夕方(ゆふがた)()られては(こま)ると、316予防線(よばうせん)をはつて()たのである。317それから(ほか)(ひと)宿所(しゆくしよ)(たづ)ねて()たけれど、318(なに)()うても、319()らぬ()らぬの一点張(いつてんばり)仕方(しかた)がないので『(をんな)()さり(うち)()らぬ(やう)(こと)では、320どうで(ろく)(こと)をして()るのではなからう……』と腹立紛(はらたちまぎ)れに二階(にかい)へワザと(きこ)える(やう)()(はな)つてそこを()ち、321七条通(しちでうどほり)まで(くだ)つて()ると、322浦上(うらかみ)三牧(みまき)次三郎(じさぶらう)西村(にしむら)栄次郎(ゑいじらう)といふ信者(しんじや)(うち)訪問(はうもん)すると()うて(わか)れ、323西田(にしだ)伏見(ふしみ)方面(はうめん)からやつて()たのに出会(しゆつくわい)し、324一所(いつしよ)伏見(ふしみ)宇治(うぢ)方面(はうめん)宣伝(せんでん)()(こと)とした。
325 高瀬川(たかせがは)()うて勧進橋(くわんじんばし)(そば)まで(くだ)(なが)ら、
326西田(にしだ)畑中(はたなか)(やつ)327どこからどこ(まで)自分(じぶん)()邪魔(じやま)をしやがる、328大方(おほかた)伏見(ふしみ)(はう)へも()つてるに(ちがひ)ない。329彼奴(あいつ)がもしもここへやつて()やがつた(くらゐ)なら、330(この)高瀬川(たかせがは)(はう)()んでやるのだけれど』
331などと西田(にしだ)憤慨(ふんがい)(なが)らフト(かほ)をあげて()ると、332畑中(はたなか)伝吉(でんきち)風呂敷(ふろしき)(づつみ)()うて真赤(まつか)(かほ)をして()()るのにベツタリ出会(でくわ)した。333京都(きやうと)伏見(ふしみ)(かん)電鉄(でんてつ)がそこへ()停車(ていしや)した。334呶鳴(どな)(わけ)()かず、
335喜楽(きらく)『オイ畑中(はたなか)(また)邪魔(じやま)しにまはつたな』
336といふと畑中(はたなか)は『ホイホイホイ』といつて(はし)()二三丁(にさんちやう)(ばか)()つて()(かへ)り、337ヤレまあ安心(あんしん)だといふ(やう)(ふう)をして()る。338会長(くわいちやう)大声(おほごゑ)で……『馬鹿(ばか)ツ』と二口(ふたくち)三口(みくち)呶鳴(どな)ると西田(にしだ)が、
339西田(にしだ)『こんな(とこ)大声(おほごゑ)呶鳴(どな)(もの)馬鹿(ばか)です』
340()をつけたので、
341喜楽(きらく)『ホンに呶鳴(どな)(はう)馬鹿(ばか)だなア』
342()(なが)ら、343伏見(ふしみ)信者(しんじや)二三(にさん)(たづ)ねて()ると、344(また)(はうき)()()し、345(しきゐ)(また)がさぬ。
346貧乏神(びんばふがみ)サン、347小松林(こまつばやし)サン()んで(くだ)され』
348連呼(れんこ)冷遇(れいぐう)するので這入(はい)(わけ)にも()かずはるばる宇治(うぢ)まで()つて、349御室(みむろ)支部(しぶ)訪問(はうもん)すると、350ここも(また)畑中(はたなか)注進(ちうしん)によつて冷淡(れいたん)至極(しごく)態度(たいど)(しめ)して()る。
351 そこで西田(にしだ)(わか)れ、352喜楽(きらく)(ただ)一人(ひとり)京都(きやうと)まで(かへ)り、353三牧(みまき)(うち)浦上(うらかみ)(くわい)し、354たつた一銭(いつせん)五厘(ごりん)より二人(ふたり)(なか)金子(きんす)がないので、355徒歩(とほ)愛宕山(あたごやま)()え、356保津(ほづ)()で、357八木(やぎ)立寄(たちよ)り、358(また)もや(はう)()され、359(あめ)のビシヨビシヨ()(なか)(ふる)(ふる)園部(そのべ)浅井(あさゐ)まで(かへ)つて、360麦飯(ばくはん)でも()はして(もら)はうと(おも)ひ、361立寄(たちよ)つて()ると、362ここも(また)冷淡(れいたん)態度(たいど)(ちや)()まさず()んでくれと()ふ。363仕方(しかた)なしに(また)もや檜山(ひのきやま)まで(かへ)り、364坂原(さかはら)立寄(たちよ)ると坂原(さかはら)(をり)ふし不在(ふざい)で、365妻君(さいくん)一人(ひとり)(のこ)つて()り、
366(いま)綾部(あやべ)から畑中(はたなか)サンが()()て、367(ちや)一杯(いつぱい)()ましてはならぬ、368(うしとらの)金神(こんじん)さまのお気障(きざわ)りになると()ははりましたから、369どうぞこれぎり、370あんたにはすみませぬけれど、371小松林(こまつばやし)サンが改心(かいしん)しやはるまでよつて(くだ)さるな』
372といふ。373二人(ふたり)破草鞋(やぶれわらぢ)(ひろ)つて(あし)につけ、374坂路(さかみち)(のぼ)(くだ)り、375(やうや)須知山(すちやま)(たうげ)まで()()た。376そこに蒟蒻(こんにやく)()つてるので、377蒟蒻(こんにやく)一銭(いつせん)五厘(ごりん)(さん)(まい)()ひ、378宇治(うぢ)から二十四(にじふよ)()(みち)空腹(くうふく)(かか)えて(かへ)つて()たこととて(なん)とも()れぬ(うま)さであつた。379それから綾部(あやべ)(かへ)り、380浦上(うらかみ)はこりごりして餅屋(もちや)(はじ)()し、381喜楽(きらく)(かみ)(さま)(まつ)つてやつて非常(ひじやう)繁昌(はんぜう)をし()した。382さうするとソロソロ浦上(うらかみ)慢心(まんしん)()し、383(かみ)(さま)悪口(あくこう)喜楽(きらく)行方(やりかた)までも非難(ひなん)し、384(しき)りに反対(はんたい)(はじ)めて()たが、385とうとう養鶏場(やうけいぢやう)開設(かいせつ)して大損失(だいそんしつ)(まね)き、386折角(せつかく)(まう)けた(かね)一文(いちもん)(のこ)らずなくした(うへ)387沢山(たくさん)借金(しやくきん)(こしら)へ、388親族(しんぞく)(その)(ほか)人々(ひとびと)損害(そんがい)をかけて綾部(あやべ)にも()られず位田(ゐでん)()(かへ)り、389細々(ほそぼそ)豆腐屋(とうふや)(いとな)んで()る。
390大正一一・一〇・一九 旧八・二九 松村真澄録)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
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