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第39巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 伊祖の神風
01 大黒主
〔1066〕
02 評定
〔1067〕
03 出師
〔1068〕
第2篇 黄金清照
04 河鹿越
〔1069〕
05 人の心
〔1070〕
06 妖霧
〔1071〕
07 都率天
〔1072〕
08 母と娘
〔1073〕
第3篇 宿世の山道
09 九死一生
〔1074〕
10 八の字
〔1075〕
11 鼻摘
〔1076〕
12 種明志
〔1077〕
第4篇 浮木の岩窟
13 浮木の森
〔1078〕
14 清春山
〔1079〕
15 焼糞
〔1080〕
16 親子対面
〔1081〕
第5篇 馬蹄の反影
17 テームス峠
〔1082〕
18 関所守
〔1083〕
19 玉山嵐
〔1084〕
附録 大祓祝詞解
余白歌
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> 第1篇 伊祖の神風 > 第2章 評定
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第二章
評定
(
ひようぢやう
)
〔一〇六七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻
篇:
第1篇 伊祖の神風
よみ(新仮名遣い):
いそのかみかぜ
章:
第2章 評定
よみ(新仮名遣い):
ひょうじょう
通し章番号:
1067
口述日:
1922(大正11)年10月21日(旧09月2日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
神素盞嗚大神の命によって、斎苑の館の八尋殿では厳格な相談会が開かれた。大神は高座に現れ、一同に歌をもって相談会の意図を宣旨された。ハルナの都に進み、大黒主を言向け和す神司を選定せよ、との思し召しであった。
大神は神軍の成功を祈り、奥殿に姿を隠された。日の出神が議長となって詮議は開始された。時置師神は、元バラモン教との蜈蚣姫と黄竜姫親子を遣わしたらどうかと推薦した。
黄竜姫、蜈蚣姫はそれぞれ立って自ら敵城に向かう決意を述べ、ハルナの都行きを承認された。一方、照国別は立って自らを自薦した。日の出神は承諾し、照国別は一人で月の国へ出張することとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-15 09:17:30
OBC :
rm3902
愛善世界社版:
16頁
八幡書店版:
第7輯 285頁
修補版:
校定版:
16頁
普及版:
7頁
初版:
ページ備考:
001
バラモン
教
(
けう
)
の
教主
(
けうしゆ
)
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
暴状
(
ばうじやう
)
を
懲
(
こ
)
らし、
002
言向和
(
ことむけやは
)
して
天下
(
てんか
)
の
害
(
がい
)
を
除
(
のぞ
)
き、
003
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜神
(
しこがみ
)
の
身魂
(
みたま
)
を
清
(
きよ
)
むべく、
004
ここにウブスナ
山脈
(
さんみやく
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
八尋殿
(
やひろどの
)
にて
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
命
(
めい
)
により
厳格
(
げんかく
)
なる
相談会
(
さうだんくわい
)
が
開
(
ひら
)
かれた。
005
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
は
高座
(
かうざ
)
に
現
(
あら
)
はれ
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
つて
歌
(
うた
)
を
以
(
もつ
)
て
宣示
(
せんじ
)
された。
006
其
(
その
)
御
(
おん
)
歌
(
うた
)
、
007
神素盞嗚大神
『
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
との
神々
(
かみがみ
)
の
008
水火
(
いき
)
を
合
(
あは
)
してなりませる
009
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
は
010
島
(
しま
)
の
八十島
(
やそしま
)
八十
(
やそ
)
の
国
(
くに
)
011
隈
(
くま
)
なく
光
(
ひか
)
り
渡
(
わた
)
れども
012
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
醜神
(
しこがみ
)
は
013
未
(
いま
)
だ
全
(
まつた
)
く
服
(
まつろ
)
はで
014
山
(
やま
)
の
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
や
河
(
かは
)
の
瀬
(
せ
)
に
015
潜
(
ひそ
)
みて
枉
(
まが
)
を
朝夕
(
あさゆふ
)
に
016
拓
(
ひら
)
き
行
(
ゆ
)
くこそうたてけれ
017
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむつかさ
)
018
清
(
きよ
)
けき
明
(
あか
)
き
真心
(
まごころ
)
を
019
力限
(
ちからかぎ
)
りに
振
(
ふ
)
り
起
(
おこ
)
し
020
天地
(
あめつち
)
四方
(
よも
)
の
神人
(
しんじん
)
を
021
救
(
すく
)
はむ
為
(
た
)
めに
現身
(
うつそみ
)
の
022
身
(
み
)
を
粉
(
こ
)
になして
遠近
(
をちこち
)
と
023
荒野
(
あれの
)
を
渡
(
わた
)
り
海
(
うみ
)
を
越
(
こ
)
え
024
雪
(
ゆき
)
を
踏
(
ふ
)
みしめ
暑
(
あつ
)
さを
耐
(
こら
)
へ
025
雨
(
あめ
)
にはそぼち
荒風
(
あらかぜ
)
に
026
煽
(
あふ
)
られ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
027
其
(
その
)
神業
(
かむわざ
)
ぞ
雄々
(
をを
)
しけれ。
028
時
(
とき
)
しもあれや
顕恩
(
けんおん
)
の
029
郷
(
さと
)
に
現
(
あら
)
はれ
蟠
(
わだ
)
かまる
030
バラモン
教
(
けう
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
031
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
三五
(
あななひ
)
の
032
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
怯
(
を
)
ぢ
恐
(
おそ
)
れ
033
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
に
立籠
(
たてこも
)
り
034
悪
(
あ
)
しき
教
(
をしへ
)
を
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
035
伝
(
つた
)
へむとする
其
(
その
)
時
(
とき
)
に
036
わが
遣
(
つか
)
はせし
神司
(
かむつかさ
)
037
正
(
ただ
)
しき
人
(
ひと
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
038
恐
(
おそ
)
れをなして
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
り
039
再
(
ふたた
)
びフサの
国
(
くに
)
に
入
(
い
)
り
040
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
と
徜徉
(
さまよ
)
ひて
041
今
(
いま
)
しも
印度
(
ツキ
)
の
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
042
ハルナに
現
(
あら
)
はれ
岩窟
(
がんくつ
)
を
043
穿
(
うが
)
ちて
魔神
(
まがみ
)
を
呼
(
よ
)
び
集
(
つど
)
へ
044
其
(
その
)
勢
(
いきほひ
)
は
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
045
侮
(
あなど
)
り
難
(
がた
)
くなりにけり
046
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
は
悉
(
ことごと
)
く
047
これの
都
(
みやこ
)
に
集
(
あつま
)
りて
048
我
(
わが
)
三五
(
あななひ
)
の
大道
(
おほみち
)
を
049
覆
(
くつ
)
がへさむと
図
(
はか
)
りつつ
050
早
(
はや
)
くも
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
まで
051
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
らむず
勢
(
いきほ
)
ひに
052
四方
(
よも
)
の
曲神
(
まがかみ
)
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち
053
振
(
ふる
)
ひ
居
(
を
)
るこそ
健気
(
けなげ
)
なれ
054
野立
(
のだち
)
の
彦
(
ひこ
)
や
野立姫
(
のだちひめ
)
055
埴安彦
(
はにやすひこ
)
や
埴安姫
(
はにやすひめ
)
の
056
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
とあれまして
057
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
ひし
此
(
この
)
道
(
みち
)
は
058
天
(
あめ
)
と
地
(
つち
)
との
神々
(
かみがみ
)
の
059
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
に
動
(
うご
)
きなき
060
珍
(
うづ
)
の
御楯
(
みたて
)
となりつれば
061
如何
(
いか
)
に
魔神
(
まがみ
)
の
騒
(
さや
)
るとも
062
いかで
倒
(
たふ
)
るる
事
(
こと
)
やあらむ
063
さはさりながら
曲神
(
まがかみ
)
の
064
伊猛
(
いたけ
)
り
狂
(
くる
)
ふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
065
心
(
こころ
)
を
許
(
ゆる
)
すこと
勿
(
なか
)
れ
066
いざこれよりは
神司
(
かむつかさ
)
067
神
(
かみ
)
の
光
(
ひか
)
りを
身
(
み
)
に
浴
(
あ
)
びて
068
大黒主
(
おほくろぬし
)
が
潜
(
ひそ
)
みたる
069
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ
070
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
071
清
(
きよ
)
き
正
(
ただ
)
しき
大道
(
おほみち
)
に
072
言向和
(
ことむけやは
)
し
来
(
きた
)
るべし
073
これに
就
(
つ
)
いては
諸々
(
もろもろ
)
の
074
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
は
真心
(
まごころ
)
の
075
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
して
相図
(
あひはか
)
り
076
大黒主
(
おほくろぬし
)
を
懲戒
(
こらしめ
)
の
077
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
を
選
(
えら
)
めかし
078
われはこれより
奥殿
(
おくでん
)
に
079
進
(
すす
)
みて
天地
(
てんち
)
の
大神
(
おほかみ
)
に
080
厳
(
いづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
宣
(
の
)
り
上
(
あ
)
げて
081
我
(
わが
)
神軍
(
しんぐん
)
の
成功
(
せいこう
)
を
082
祈
(
いの
)
り
奉
(
まつ
)
らむいざさらば
083
百
(
もも
)
の
司
(
つかさ
)
よ
神人
(
かみびと
)
よ
084
謹
(
つつし
)
み
畏
(
かしこ
)
み
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
085
言向戦
(
ことむけいくさ
)
を
各自
(
めいめい
)
に
086
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
打
(
う
)
ち
明
(
あ
)
かし
087
選
(
えら
)
みて
神
(
かみ
)
の
御心
(
みこころ
)
に
088
仕
(
つか
)
へまつれよ
惟神
(
かむながら
)
089
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
瑞霊
(
みづみたま
)
090
心
(
こころ
)
を
清
(
きよ
)
めて
宣
(
の
)
りまつる』
091
と
宣示
(
せんじ
)
し
終
(
をは
)
つて
奥殿
(
おくでん
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
し
給
(
たま
)
ふた。
092
思兼
(
おもひかねの
)
神
(
かみ
)
(
議長
(
ぎちやう
)
)の
格
(
かく
)
に
控
(
ひか
)
へたる
日出別
(
ひのでわけの
)
神
(
かみ
)
は
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
093
日出別
『
惟神
(
かむながら
)
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
集
(
あつ
)
まりて
094
魔神
(
まがみ
)
討伐
(
きため
)
の
神議
(
かむはか
)
りせむ。
095
大神
(
おほかみ
)
の
珍
(
うづ
)
の
御言
(
みこと
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
096
並
(
な
)
み
居
(
ゐ
)
る
司
(
つかさ
)
言議
(
ことはか
)
りせよ。
097
バラモンの
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神司
(
かむづかさ
)
098
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
事謀
(
ことはか
)
ゆらし。
099
はかゆとも
何
(
なに
)
かあらむや
曲神
(
まがかみ
)
の
100
醜
(
しこ
)
の
企
(
たく
)
みは
神
(
かみ
)
許
(
ゆる
)
すまじ。
101
素盞嗚
(
すさのを
)
の
神
(
かみ
)
の
尊
(
みこと
)
の
御教
(
みをしへ
)
は
102
月日
(
つきひ
)
の
如
(
ごと
)
く
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
るなり。
103
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
る
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
の
御教
(
みをしへ
)
に
104
言向和
(
ことむけやは
)
せ
大黒主
(
おほくろぬし
)
を』
105
東野別
(
あづまのわけの
)
命
(
みこと
)
は
立
(
た
)
つて
之
(
これ
)
に
答
(
こた
)
へた。
106
東野別
『
言霊
(
ことたま
)
の
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
の
神司
(
かむづかさ
)
107
東
(
あづま
)
の
別
(
わけ
)
は
言問
(
ことと
)
ひまつる。
108
大黒主
(
おほくろぬし
)
曲
(
まが
)
の
司
(
つかさ
)
を
言向
(
ことむ
)
くる
109
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
は
何人
(
なにびと
)
とせむ。
110
聞
(
き
)
かまほし
日出
(
ひので
)
の
別
(
わけ
)
の
御心
(
みこころ
)
を
111
重
(
おも
)
き
使
(
つかひ
)
を
定
(
さだ
)
めかねつつ。
112
この
使
(
つかひ
)
あまり
多
(
おほ
)
くは
要
(
い
)
るまじと
113
東野別
(
あづまのわけ
)
は
思
(
おも
)
ひ
居
(
ゐ
)
るなり』
114
日出別
(
ひのでわけの
)
命
(
みこと
)
はこれに
答
(
こた
)
へて、
115
日出別
『
日出別
(
ひのでわけ
)
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
を
分
(
わ
)
け
昇
(
のぼ
)
る
116
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
の
照
(
て
)
らすまにまに。
117
何人
(
なにびと
)
もわれと
思
(
おも
)
はむ
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
は
118
心
(
こころ
)
のたけを
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
へませ』
119
東野別
(
あづまのわけ
)
はこれに
答
(
こた
)
へて、
120
東野別
『
日出別
(
ひのでわけ
)
神
(
かみ
)
の
仰
(
あふ
)
せぞ
尊
(
たふと
)
けれ
121
神言
(
みこと
)
のままに
選
(
えら
)
み
合
(
あ
)
ひせむ』
122
時置師
(
ときおかしの
)
神
(
かみ
)
は
起
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
123
時置師
『この
使
(
つかひ
)
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
や
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
124
先
(
ま
)
づ
遣
(
つか
)
はして
瀬踏
(
せぶ
)
みせしめよ。
125
二柱
(
ふたはしら
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
はバラモンの
126
教
(
をしへ
)
にゆかり
居
(
ゐ
)
ます
身
(
み
)
なれば。
127
顕恩
(
けんおん
)
の
郷
(
さと
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
ひてゆ
128
久
(
ひさ
)
しく
会
(
あ
)
はせ
給
(
たま
)
はぬ
身
(
み
)
故
(
ゆゑ
)
に。
129
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
行
(
ゆ
)
くよりも
130
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
には
心許
(
こころゆる
)
さむ。
131
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
は
雄々
(
をを
)
しくも
132
大黒主
(
おほくろぬし
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
さむ』
133
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
は、
134
立
(
た
)
つて
歌
(
うた
)
ふ。
135
黄竜姫
『
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
は
三五
(
あななひ
)
の
136
道
(
みち
)
に
入
(
い
)
りしと
彼
(
かれ
)
は
知
(
し
)
るらむ。
137
足乳根
(
たらちね
)
の
母
(
はは
)
の
命
(
みこと
)
は
今
(
いま
)
暫
(
しば
)
し
138
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
仕
(
つか
)
へますべし。
139
年
(
とし
)
老
(
お
)
いし
身
(
み
)
をもちながら
敵城
(
てきじやう
)
に
140
進
(
すす
)
まむ
事
(
こと
)
の
危
(
あやふ
)
く
思
(
おも
)
へば』
141
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
はこれに
答
(
こた
)
へて、
142
蜈蚣姫
『
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
に
捧
(
ささ
)
げし
此
(
この
)
命
(
いのち
)
143
いかで
恐
(
おそ
)
れむ
水火
(
すゐくわ
)
の
中
(
なか
)
も。
144
大黒主
(
おほくろぬし
)
たとへ
如何
(
いか
)
なる
力
(
ちから
)
あるも
145
わが
言霊
(
ことたま
)
に
言向
(
ことむ
)
けて
見
(
み
)
む。
146
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
弱
(
よわ
)
き
言霊
(
ことたま
)
吹
(
ふ
)
き
放
(
はな
)
ち
147
母
(
はは
)
の
名
(
な
)
までも
汚
(
けが
)
すまじきぞ。
148
吾
(
われ
)
こそはハルナの
都
(
みやこ
)
に
立
(
た
)
ち
向
(
むか
)
ひ
149
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
夫
(
つま
)
を
諭
(
さと
)
さむ。
150
大黒主
(
おほくろぬし
)
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
151
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
を
救
(
すく
)
はむとぞ
思
(
おも
)
ふ。
152
勇
(
いさ
)
ましき
此
(
この
)
御使
(
みつかひ
)
に
仕
(
つか
)
へなば
153
吾
(
われ
)
は
死
(
し
)
すとも
悔
(
くい
)
ざらましを』
154
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
はこれに
答
(
こた
)
へて、
155
黄竜姫
『
健気
(
けなげ
)
なる
母
(
はは
)
の
命
(
みこと
)
の
御言葉
(
みことば
)
よ
156
神
(
かみ
)
の
尊
(
たふと
)
さ
今更
(
いまさら
)
ぞ
知
(
し
)
らるる。
157
吾
(
わが
)
母
(
はは
)
は
如何
(
いか
)
に
雄々
(
をを
)
しき
神
(
かみ
)
ならむ
158
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
りたる
今
(
いま
)
の
言霊
(
ことたま
)
。
159
いざさらば
母
(
はは
)
の
命
(
みこと
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
160
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
向
(
むか
)
はむとぞ
思
(
おも
)
ふ』
161
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
はこれに
答
(
こた
)
へて
162
蜈蚣姫
『
健気
(
けなげ
)
なる
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
かな
163
吾
(
われ
)
は
勇
(
いさ
)
みて
敵城
(
てきじやう
)
に
行
(
ゆ
)
かむ』
164
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
第二
(
だいに
)
の
娘
(
むすめ
)
幾代姫
(
いくよひめ
)
の
夫
(
をつと
)
となりし
照国別
(
てるくにわけ
)
(
元
(
もと
)
の
名
(
な
)
は
梅彦
(
うめひこ
)
)は
起
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
165
歌
(
うた
)
を
以
(
もつ
)
て
所感
(
しよかん
)
を
述
(
の
)
べた。
166
照国別
『
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
167
いと
厳
(
おごそ
)
かな
御宣言
(
みことのり
)
168
其
(
その
)
御心
(
みこころ
)
を
細
(
まつぶ
)
さに
169
受
(
う
)
け
入
(
い
)
れ
給
(
たま
)
ひし
神司
(
かむづかさ
)
170
日出別
(
ひのでのわけ
)
や
八島主
(
やしまぬし
)
171
東野別
(
あづまのわけ
)
や
時置師
(
ときおかし
)
172
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
が
在
(
ま
)
しながら
173
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
を
身
(
み
)
に
魂
(
たま
)
に
174
満
(
み
)
ち
足
(
た
)
らはせし
梅彦
(
うめひこ
)
を
175
他所
(
よそ
)
に
皆
(
みな
)
して
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
176
蜈蚣
(
むかで
)
の
姫
(
ひめ
)
を
推薦
(
すゐせん
)
し
177
給
(
たま
)
ひし
事
(
こと
)
の
恨
(
うら
)
めしさ
178
吾
(
われ
)
は
照国別
(
てるくにわけ
)
の
神
(
かみ
)
179
尊
(
たふと
)
き
神名
(
みな
)
を
賜
(
たま
)
はりて
180
勇気
(
ゆうき
)
は
日頃
(
ひごろ
)
に
百倍
(
ひやくばい
)
し
181
心
(
こころ
)
は
勇
(
いさ
)
み
腕
(
うで
)
はなり
182
はや
堪
(
た
)
へ
難
(
がた
)
くなりにけり
183
並
(
なら
)
び
給
(
たま
)
へる
神司
(
かむづかさ
)
184
吾
(
われ
)
を
選
(
えら
)
ませ
給
(
たま
)
ひなば
185
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
立
(
た
)
て
籠
(
こも
)
る
186
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ
187
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
言霊
(
ことたま
)
を
188
縦横
(
じうわう
)
無尽
(
むじん
)
に
発射
(
はつしや
)
して
189
魔神
(
まがみ
)
を
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
さずに
190
言向和
(
ことむけやは
)
し
神徳
(
しんとく
)
を
191
月日
(
つきひ
)
の
如
(
ごと
)
く
天地
(
あめつち
)
に
192
輝
(
かがや
)
かさむは
目
(
ま
)
のあたり
193
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
梅
(
うめ
)
の
花
(
はな
)
194
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
梅彦
(
うめひこ
)
を
195
これの
使
(
つかひ
)
に
選
(
えら
)
まずば
196
如何
(
いか
)
に
尊
(
たふと
)
き
黄竜姫
(
わうりようひめ
)
197
蜈蚣
(
むかで
)
の
姫
(
ひめ
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
198
何程
(
なにほど
)
秘術
(
ひじゆつ
)
を
尽
(
つく
)
すとも
199
いかで
思
(
おも
)
ひを
達
(
たつ
)
せむや
200
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し
201
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しつつ
梅彦
(
うめひこ
)
を
202
加
(
くは
)
へて
三人
(
みたり
)
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
203
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
大神
(
おほかみ
)
の
204
使
(
つかひ
)
とよさし
給
(
たま
)
へかし
205
吾
(
わが
)
胸中
(
きようちう
)
は
早
(
はや
)
已
(
すで
)
に
206
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
神司
(
かむづかさ
)
207
服
(
まつろ
)
へ
和
(
やは
)
す
心算
(
しんさん
)
の
208
数
(
かず
)
限
(
かぎ
)
りなく
確立
(
かくりつ
)
し
209
命令
(
めいれい
)
一下
(
いつか
)
忽
(
たちま
)
ちに
210
此
(
この
)
神業
(
しんげふ
)
を
完成
(
くわんせい
)
し
211
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜神
(
しこがみ
)
を
212
言向和
(
ことむけやは
)
すかさもなくば
213
根底
(
ねそこ
)
の
国
(
くに
)
へ
追
(
お
)
ひ
落
(
おと
)
す
214
神算
(
しんさん
)
鬼謀
(
きぼう
)
は
胸
(
むね
)
にあり
215
只
(
ただ
)
願
(
ねが
)
はくは
梅彦
(
うめひこ
)
の
216
照国別
(
てるくにわけ
)
を
正使
(
せいし
)
とし
217
二人
(
ふたり
)
の
女神
(
めがみ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
218
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
219
神
(
かみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひて
乞
(
こ
)
ひまつる』
220
幾代姫
(
いくよひめ
)
は
起
(
た
)
ち
上
(
あ
)
がり、
221
幾代姫
『
雄々
(
をを
)
しくも
吾
(
わ
)
が
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
の
宣
(
の
)
らすこと
222
許
(
ゆる
)
させ
給
(
たま
)
へ
百
(
もも
)
の
司
(
つかさ
)
等
(
ら
)
。
223
願
(
ねが
)
はくは
幾代
(
いくよ
)
の
姫
(
ひめ
)
も
諸共
(
もろとも
)
に
224
ハルナの
都
(
みやこ
)
へ
行
(
ゆ
)
かまほしさよ。
225
照国別
(
てるくにわけ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
と
名
(
な
)
を
負
(
お
)
ひし
226
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
の
勇
(
いさ
)
ましきかも。
227
日出別
(
ひのでわけ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
に
物申
(
ものまを
)
す
228
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
夫婦
(
めをと
)
を
印度
(
ツキ
)
に
遣
(
つか
)
はせ。
229
東野別
(
あづまのわけ
)
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
司
(
つかさ
)
たち
230
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
夫婦
(
めをと
)
の
乞
(
こ
)
ひを
許
(
ゆる
)
せよ。
231
時置師
(
ときおかし
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
も
梅彦
(
うめひこ
)
や
232
吾
(
わが
)
願言
(
ねぎごと
)
を
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
しませ』
233
時置師
(
ときおかしの
)
神
(
かみ
)
は
又
(
また
)
歌
(
うた
)
もて、
234
時置師
『
汝
(
な
)
が
君
(
きみ
)
のその
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
は
清
(
きよ
)
けれど
235
見合
(
みあは
)
せ
給
(
たま
)
へ
夫婦
(
めをと
)
の
出立
(
いでたち
)
。
236
三五
(
あななひ
)
の
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
の
夫婦
(
めをと
)
連
(
づ
)
れ
237
神世
(
かみよ
)
も
聞
(
き
)
かぬ
例
(
ためし
)
なりせば』
238
幾代姫
(
いくよひめ
)
『
神国
(
かみくに
)
を
思
(
おも
)
ふ
誠
(
まこと
)
のあふれてぞ
239
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
のいとも
恥
(
はづ
)
かし。
240
いざさらば
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
を
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
241
使
(
つか
)
はせ
給
(
たま
)
へ
印度
(
ツキ
)
の
御国
(
みくに
)
へ』
242
日出別
(
ひのでわけ
)
は
答
(
こた
)
へて、
243
日出別
『
照国別
(
てるくにわけ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
は
印度
(
ツキ
)
の
国
(
くに
)
244
いと
雄々
(
をを
)
しくも
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
きませ』
245
日出別
(
ひのでわけの
)
命
(
みこと
)
の
宣示
(
せんじ
)
によつて
茲
(
ここ
)
に
照国別
(
てるくにわけ
)
は
愈
(
いよいよ
)
印度
(
ツキ
)
の
国
(
くに
)
へ
出張
(
しゆつちやう
)
することとなつた。
246
(
大正一一・一〇・二一
旧九・二
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録)
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