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特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第39巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 伊祖の神風
01 大黒主
〔1066〕
02 評定
〔1067〕
03 出師
〔1068〕
第2篇 黄金清照
04 河鹿越
〔1069〕
05 人の心
〔1070〕
06 妖霧
〔1071〕
07 都率天
〔1072〕
08 母と娘
〔1073〕
第3篇 宿世の山道
09 九死一生
〔1074〕
10 八の字
〔1075〕
11 鼻摘
〔1076〕
12 種明志
〔1077〕
第4篇 浮木の岩窟
13 浮木の森
〔1078〕
14 清春山
〔1079〕
15 焼糞
〔1080〕
16 親子対面
〔1081〕
第5篇 馬蹄の反影
17 テームス峠
〔1082〕
18 関所守
〔1083〕
19 玉山嵐
〔1084〕
附録 大祓祝詞解
余白歌
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第五章
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
〔一〇七〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻
篇:
第2篇 黄金清照
よみ(新仮名遣い):
おうごんせいしょう
章:
第5章 人の心
よみ(新仮名遣い):
ひとのこころ
通し章番号:
1070
口述日:
1922(大正11)年10月22日(旧09月3日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月5日
概要:
舞台:
河鹿峠
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
レーブとタールは急な谷川になかなか降りられず、十町ばかり下手の浅瀬に下りて、そこからようやく五六丁ばかり上って三人(ハム、イール、ヨセフ)を探した。
二人は女の身ながら恐ろしい巡礼だと警戒を新たにしながら、三人を捜索した。見れば、三人とも川岸の真砂の上に体をうずめて横たわっていた。そしてヨセフとイールを介抱し始めた。
大将格のハムは普段からよほど部下に嫌われていると見えて、レーブとタールは悪口をたらたら言いながら、一向に助けようとしない。ハムは自分でウンウンウンと唸りだした。
ハムは起き上がり、レーブとタールが自分の悪口を言って助けようとしないのを一部始終聞いていたのだと二人を叱りつけた。レーブとタールは驚いて、介抱していたイールとヨセフをその場に置いて逃げてしまった。
ハムは残されたイールとヨセフを蘇生させようと介抱したが、両人は目を覚まさない。そこへ宣伝歌が聞こえてきた。ハムは三五教の宣伝使が歌う、バラモン教調伏の宣伝歌を聞いて肝をつぶし、イールとヨセフを置いてこれまた逃げてしまった。
ハムが血を流しながら逃げる姿を谷道から眺めた照公は、照国別に谷川で何やら事件が起きたらしいことを告げた。照国別は谷底を眺めて様子を探るすべを考えている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-12-18 19:33:21
OBC :
rm3905
愛善世界社版:
67頁
八幡書店版:
第7輯 303頁
修補版:
校定版:
69頁
普及版:
26頁
初版:
ページ備考:
001
レーブ、
002
タールの
両人
(
りやうにん
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
同役
(
どうやく
)
が
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
に
脆
(
もろ
)
くも
谷底
(
たにぞこ
)
に、
003
とつて
放
(
ほ
)
られたるに
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し、
004
十町
(
じつちやう
)
ばかり
逃
(
に
)
げのび、
005
そこより
漸
(
やうや
)
くにして
谷川
(
たにがは
)
に
下
(
くだ
)
り
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
救
(
すく
)
ふべく
岩
(
いは
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
え
浅瀬
(
あさせ
)
を
渡
(
わた
)
り、
006
漸
(
やうや
)
くにして
五六丁
(
ごろくちやう
)
ばかり
上
(
のぼ
)
りつめた。
007
レーブ『オイ、
008
タール、
009
ひどい
奴
(
やつ
)
が
現
(
あら
)
はれたものぢやないか。
010
ハムの
大将
(
たいしやう
)
、
011
女
(
をんな
)
子供
(
こども
)
と
侮
(
あなど
)
つて、
012
思
(
おも
)
はぬ
不覚
(
ふかく
)
をとりよつて……あの
態
(
ざま
)
……
俺
(
おれ
)
や
女
(
をんな
)
の
天狗
(
てんぐ
)
かと
思
(
おも
)
つたよ』
013
タール『
随分
(
ずゐぶん
)
肝玉
(
きもだま
)
の
太
(
ふと
)
い
巡礼
(
じゆんれい
)
ぢやないか。
014
あの
口
(
くち
)
のきき
様
(
やう
)
と
云
(
い
)
ひ、
015
武術
(
ぶじゆつ
)
の
鍛錬
(
たんれん
)
してる
事
(
こと
)
と
云
(
い
)
ひ、
016
こりや
一通
(
ひととほ
)
りの
女
(
をんな
)
ぢやあるまいぞ。
017
天狗
(
てんぐ
)
ぢやあるまいけど
聞
(
き
)
けば
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
と
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたから、
018
是
(
これ
)
から
女
(
をんな
)
に
出会
(
であ
)
つても
軽々
(
かるがる
)
しく
相手
(
あひて
)
にはなれないぞ。
019
然
(
しか
)
し
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
はうまく
助
(
たす
)
かつて
居
(
ゐ
)
るだらうかな。
020
俺
(
おれ
)
はそれ
計
(
ばか
)
りが
案
(
あん
)
じられて
仕方
(
しかた
)
がないわ』
021
レーブ『
落
(
お
)
ちた
処
(
ところ
)
で
直様
(
すぐさま
)
、
022
谷川
(
たにがは
)
へ
顛落
(
てんらく
)
して
頭
(
あたま
)
を
打
(
う
)
つと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
もあるまい。
023
これだけ
谷
(
たに
)
を
塞
(
ふさ
)
ぐ
位
(
くらゐ
)
木
(
き
)
が
茂
(
しげ
)
つてるのだから、
024
何
(
いづ
)
れ
途中
(
とちう
)
で
木
(
き
)
にかかつて
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
もあらうし、
025
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
迄
(
まで
)
谷川
(
たにがは
)
に
落
(
お
)
ちて
死
(
し
)
んでゐるやうな
事
(
こと
)
もあるまい。
026
然
(
しか
)
しハムの
大将
(
たいしやう
)
、
027
ありや
屹度
(
きつと
)
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
つたに
違
(
ちが
)
ひないぞ。
028
不断
(
ふだん
)
からの
心掛
(
こころがけ
)
が
悪
(
わる
)
いからな。
029
もしまだ
虫
(
むし
)
の
息
(
いき
)
でもあつたら
助
(
たす
)
けちやならないぞ。
030
イール、
031
ヨセフの
二人
(
ふたり
)
を
前
(
さき
)
に
助
(
たす
)
けて
彼奴
(
あいつ
)
ア、
032
後
(
あと
)
まはしにして
放
(
ほ
)
つといてやらうかい』
033
タール『さうだなあ、
034
それでも
宜
(
い
)
いわ。
035
然
(
しか
)
しあの
女
(
をんな
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
素敵
(
すてき
)
な
者
(
もの
)
だつたな。
036
あんなナイスを
女房
(
にようばう
)
にもつたら
男子
(
だんし
)
としては
中々
(
なかなか
)
の
光栄
(
くわうえい
)
だぜ』
037
レーブ『そんな
陽気
(
やうき
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うてる
場合
(
ばあひ
)
ぢやあるまい。
038
サア
早
(
はや
)
く
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さが
)
して
何
(
なん
)
とかせなくてはなるまい。
039
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して、
040
こんな
谷底
(
たにぞこ
)
で
日
(
ひ
)
を
暮
(
くら
)
したら、
041
それこそ
大変
(
たいへん
)
だ。
042
獅子
(
しし
)
、
043
狼
(
おほかみ
)
や
大蛇
(
をろち
)
の
餌食
(
ゑじき
)
にしられて
了
(
しま
)
ふぞ。
044
サア
行
(
い
)
かう』
045
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて、
046
いろいろと
工夫
(
くふう
)
し
乍
(
なが
)
ら
谷川
(
たにがは
)
を
伝
(
つた
)
ひ
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
047
二人
(
ふたり
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれた
谷底
(
たにぞこ
)
へ
辿
(
たど
)
りつき、
048
四辺
(
あたり
)
を
見渡
(
みわた
)
せば
不思議
(
ふしぎ
)
にも
岩
(
いは
)
と
岩
(
いは
)
との
間
(
あひだ
)
の
真砂
(
まさご
)
の
上
(
うへ
)
に
半分
(
はんぶん
)
ばかりグサと
体
(
からだ
)
を
埋
(
うづ
)
めて
横
(
よこ
)
たはつて
居
(
ゐ
)
る。
049
レーブ『
何
(
なん
)
と
不思議
(
ふしぎ
)
な
投
(
な
)
げられやうぢやないか。
050
これだけ
沢山
(
たくさん
)
な
岩石
(
がんせき
)
があるのに
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
三
(
さん
)
人
(
にん
)
とも
都合
(
つがふ
)
よく
真錦
(
まわた
)
の
様
(
やう
)
な
真砂
(
すな
)
の
中
(
なか
)
にグツと
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれ、
051
安閑
(
あんかん
)
と
眠
(
ねむ
)
つて
居
(
ゐ
)
やがる、
052
投
(
な
)
げられるものも
中々
(
なかなか
)
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いて
居
(
を
)
るが
投
(
な
)
げたものも
中々
(
なかなか
)
気
(
き
)
が
利
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
るなあ』
053
タール『オイ、
054
そんな
事
(
こと
)
ア、
055
後
(
あと
)
でゆつくり
話
(
はな
)
す
事
(
こと
)
にして
早
(
はや
)
く
水
(
みづ
)
でも
与
(
あた
)
へて
呼
(
よ
)
び
生
(
い
)
かさぬ
事
(
こと
)
にやサツパリ
駄目
(
だめ
)
だぞ。
056
然
(
しか
)
し
約束
(
やくそく
)
の
通
(
とほ
)
りハムだけは
助
(
たす
)
けぬ
事
(
こと
)
にしようかな。
057
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
058
今
(
いま
)
の
内
(
うち
)
に
川
(
かは
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
んで
此
(
この
)
儘
(
まま
)
水葬
(
すゐさう
)
してやつたら
面倒
(
めんだう
)
が
残
(
のこ
)
らなくて
宜
(
い
)
いぞ』
059
レーブ『まづ
俺
(
おれ
)
はヨセフを
介抱
(
かいほう
)
するからお
前
(
まへ
)
はイールの
方
(
はう
)
を
介抱
(
かいほう
)
してやれ。
060
魂返
(
たまがへ
)
しで
遠
(
とほ
)
く
肉体
(
にくたい
)
を
離
(
はな
)
れた
霊魂
(
れいこん
)
を
元
(
もと
)
の
肉体
(
にくたい
)
へ
ヨセフ
と
云
(
い
)
ふ
段取
(
だんどり
)
だ。
061
タールお
前
(
まへ
)
は
一旦
(
いつたん
)
出
(
で
)
た
魂
(
たましひ
)
を
元
(
もと
)
の
体
(
からだ
)
へ
易々
(
やすやす
)
と
イール
様
(
やう
)
にするのだぞ。
062
ハムは
谷川
(
たにがは
)
へ
流
(
なが
)
して
置
(
お
)
けば、
063
うまく、
064
くたばり
大
(
おほ
)
きな
魚
(
うを
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
頭
(
あたま
)
から
ハム
だらう。
065
アハヽヽヽヽ』
066
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
067
二人
(
ふたり
)
はヨセフ、
068
イールを
捉
(
とら
)
へて
人工
(
じんこう
)
呼吸
(
こきふ
)
を
施
(
ほどこ
)
してゐる。
069
一時
(
いつとき
)
ばかり
経
(
た
)
つて
漸
(
やうや
)
くフウフウと
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
しウーンと
云
(
い
)
ひかけた。
070
レーブ『サア、
071
しめた。
072
もう
二人
(
ふたり
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
073
ハムの
奴
(
やつ
)
、
074
態
(
ざま
)
ア
見
(
み
)
やがれ。
075
此奴
(
こいつ
)
ア
後
(
あと
)
まはし
処
(
どころ
)
か、
076
日頃
(
ひごろ
)
の
行
(
おこな
)
ひが
悪
(
わる
)
く
憎
(
にく
)
まれてゐるものだから、
077
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
時
(
とき
)
には
誰
(
たれ
)
も
助
(
たす
)
け
手
(
て
)
がない。
078
神
(
かみ
)
さまだつて
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
して
厶
(
ござ
)
るからな。
079
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふものは
憎
(
にく
)
まれぬ
様
(
やう
)
にせなくてはいかぬぞ。
080
人
(
ひと
)
は
一人
(
ひとり
)
で
立
(
た
)
つ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬものだ。
081
持
(
も
)
ちつ
持
(
も
)
たれつ、
082
お
互
(
たがひ
)
に
助
(
たす
)
け
合
(
あ
)
うて
渡
(
わた
)
る
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
083
渡
(
わた
)
る
浮世
(
うきよ
)
に
鬼
(
おに
)
はないと
云
(
い
)
ふが、
084
此
(
この
)
ハムは
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
同僚
(
どうれう
)
にでも
憎
(
にく
)
まれて
居
(
ゐ
)
やがるから、
085
此奴
(
こいつ
)
ア
本当
(
ほんたう
)
の
人鬼
(
ひとおに
)
だ。
086
鬼
(
おに
)
が
冥土
(
めいど
)
に
行
(
い
)
つて
鬼
(
おに
)
に
苛責
(
さいな
)
まれるのも
面白
(
おもしろ
)
からう。
087
ウフヽヽヽ』
088
ハムはウンウンウンと
呻
(
うな
)
り
出
(
だ
)
した。
089
レーブ『ヤア、
090
此奴
(
こいつ
)
は
放
(
ほ
)
ツといても
勝手
(
かつて
)
に
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
るぞ。
091
憎
(
にく
)
まれ
子
(
ご
)
は
世
(
よ
)
に
覇張
(
はば
)
る……と
云
(
い
)
つて
悪運
(
あくうん
)
の
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
ぢやな。
092
今
(
いま
)
の
中
(
うち
)
に
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
め
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
め。
093
さうせにや
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
あが
)
る
時節
(
じせつ
)
がないワ』
094
タール『そんな
者
(
もの
)
にかかつて
居
(
を
)
つたら、
095
此処迄
(
ここまで
)
折角
(
せつかく
)
人工
(
じんこう
)
呼吸
(
こきふ
)
したものが
中途
(
ちうと
)
に
駄目
(
だめ
)
になつて
了
(
しま
)
ふワイ』
096
レーブ『それもさうだ。
097
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
二人
(
ふたり
)
は
今
(
いま
)
此
(
この
)
手
(
て
)
を
止
(
や
)
める
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
098
さうだと
云
(
い
)
つて
放
(
ほ
)
つて
置
(
お
)
けばハムの
奴
(
やつ
)
、
099
だんだん
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
るなり、
100
も
一人
(
ひとり
)
、
101
連
(
つ
)
れが
欲
(
ほ
)
しうなつた。
102
これだから
人間
(
にんげん
)
は
共同
(
きようどう
)
生活
(
せいくわつ
)
の
動物
(
どうぶつ
)
と
云
(
い
)
ふのだ』
103
ハムはウン ウン ウンと
大
(
おほ
)
きく
呻
(
うな
)
り、
104
ハム
『レヽヽヽレーブ、
105
タヽヽヽタール、
106
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
無礼
(
ぶれい
)
な
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
すと
罰
(
ばつ
)
があタールぞよ。
107
ウフヽヽヽヽ』
108
レーブ『ヤア、
109
此奴
(
こいつ
)
ア
大変
(
たいへん
)
だ。
110
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
りやがつたな。
111
オイ、
112
タール、
113
早
(
はや
)
く
埒
(
らち
)
をつけぬと
取返
(
とりかへ
)
しのつかぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
るぞ』
114
タール『ウン』
115
ハム『コラコラ、
116
其
(
その
)
手
(
て
)
をゆるめたが
最後
(
さいご
)
二人
(
ふたり
)
の
生命
(
いのち
)
は
助
(
たす
)
からないぞ。
117
貴様
(
きさま
)
の
最前
(
さいぜん
)
からの
話
(
はなし
)
は
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
残
(
のこ
)
らず
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
たのだ。
118
憎
(
にく
)
まれ
子
(
ご
)
のハムが、
119
も
一
(
ひと
)
つ
覇張
(
はば
)
つてやらうか、
120
レーブ、
121
タールの
小童子
(
こわつぱ
)
共
(
ども
)
、
122
ハムさまが
一
(
ひと
)
つ
水葬
(
すゐさう
)
をしてやるから、
123
さう
思
(
おも
)
へ。
124
イヒヽヽヽ』
125
レーブ、
126
タールは
吃驚
(
びつくり
)
して、
127
レーブ、タール
『ヤア、
128
此奴
(
こいつ
)
ア
大変
(
たいへん
)
だ』
129
と
一目散
(
いちもくさん
)
に
二人
(
ふたり
)
を
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
捨
(
す
)
てて
谷川
(
たにがは
)
を
伝
(
つた
)
ひ
伝
(
つた
)
ひ
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
す。
130
ハムはムツクと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
131
ハム
『アツハヽヽヽ
人間
(
にんげん
)
の
心
(
こころ
)
と
云
(
い
)
ふものは
分
(
わか
)
らぬものだ。
132
レーブ、
133
タールの
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
、
134
俺
(
おれ
)
が
死
(
し
)
んだと
思
(
おも
)
ひやがつて、
135
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
嘲弄
(
てうろう
)
し、
136
助
(
たす
)
けよまいとして
相談
(
さうだん
)
してゐやがつたが、
137
天罰
(
てんばつ
)
と
云
(
い
)
ふものは
恐
(
おそ
)
ろしいものだ。
138
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
139
イール、
140
ヨセフの
両人
(
りやうにん
)
を
助
(
たす
)
けてやらねばなるまい』
141
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
谷水
(
たにみづ
)
を
掬
(
すく
)
ひ
口
(
くち
)
に
含
(
ふく
)
ませ、
142
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
介抱
(
かいほう
)
して
居
(
ゐ
)
る。
143
けれども
両人
(
りやうにん
)
は
容易
(
ようい
)
に
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
き
返
(
かへ
)
しさうにもない。
144
斯
(
か
)
かる
処
(
ところ
)
へ
谷
(
たに
)
の
木谺
(
こだま
)
を
響
(
ひび
)
かして
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
145
(照国別)
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
146
善神
(
ぜんしん
)
邪神
(
じやしん
)
を
立
(
た
)
て
別
(
わ
)
ける
147
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
148
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
149
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し
150
天ケ下
(
あめがした
)
には
鬼
(
おに
)
もなく
151
醜女
(
しこめ
)
探女
(
さぐめ
)
もなき
迄
(
まで
)
に
152
言向和
(
ことむけやは
)
し
治
(
をさ
)
め
行
(
ゆ
)
く
153
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
154
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
ふ
三五
(
あななひ
)
の
155
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
156
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
憑
(
かか
)
りたる
157
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
を
言向
(
ことむ
)
けて
158
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
救
(
すく
)
ひ
上
(
あ
)
げ
159
世界
(
せかい
)
に
名高
(
なだか
)
き
印度
(
ツキ
)
の
国
(
くに
)
160
光
(
ひか
)
り
輝
(
かがや
)
く
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
161
高天原
(
たかあまはら
)
の
楽園
(
らくゑん
)
と
162
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
すべく
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く
163
われは
照国別
(
てるくにわけ
)
宣使
(
せんし
)
164
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
や
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
165
猛
(
たけ
)
き
魔神
(
まがみ
)
も
言霊
(
ことたま
)
の
166
伊吹
(
いぶき
)
に
払
(
はら
)
ひ
清
(
きよ
)
めなば
167
如何
(
いか
)
に
強者
(
つはもの
)
多
(
おほ
)
くとも
168
朝日
(
あさひ
)
に
露
(
つゆ
)
の
消
(
き
)
ゆる
如
(
ごと
)
169
悪魔
(
あくま
)
は
忽
(
たちま
)
ち
退散
(
たいさん
)
し
170
心
(
こころ
)
の
空
(
そら
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎたる
171
村雲
(
むらくも
)
ここに
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
りて
172
名詮
(
めいせん
)
自称
(
じしやう
)
の
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
173
月照彦
(
つきてるひこ
)
の
御守
(
みまも
)
りと
174
治
(
をさ
)
まり
行
(
ゆ
)
くは
目
(
ま
)
のあたり
175
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
176
神
(
かみ
)
の
御霊
(
みたま
)
を
輝
(
かがや
)
かし
177
三五教
(
あななひけう
)
の
神力
(
しんりき
)
を
178
天地
(
あめつち
)
四方
(
よも
)
に
拡充
(
くわくじゆう
)
し
179
天津
(
あまつ
)
御国
(
みくに
)
へ
復
(
かへ
)
り
言
(
ごと
)
180
白
(
まを
)
さむ
事
(
こと
)
の
楽
(
たの
)
しさよ
181
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
182
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
183
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
184
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
強
(
つよ
)
くとも
185
七千
(
しちせん
)
余国
(
よこく
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
186
魔神
(
まがみ
)
の
数
(
かず
)
は
多
(
おほ
)
くとも
187
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
三五
(
あななひ
)
の
188
教
(
をしへ
)
に
苦
(
く
)
もなく
言向
(
ことむ
)
けて
189
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
くる
天
(
てん
)
の
道
(
みち
)
190
進
(
すす
)
めよ
進
(
すす
)
めいざ
進
(
すす
)
め
191
照公
(
てるこう
)
梅公
(
うめこう
)
国公
(
くにこう
)
よ
192
神
(
かみ
)
はわれ
等
(
ら
)
と
倶
(
とも
)
にあり
193
仮令
(
たとへ
)
悪魔
(
あくま
)
の
現
(
あら
)
はれて
194
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ひ
八千尋
(
やちひろ
)
の
195
深
(
ふか
)
き
谷間
(
たにま
)
に
落
(
おと
)
すとも
196
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
りのある
限
(
かぎ
)
り
197
如何
(
いか
)
でか
魔神
(
まがみ
)
を
恐
(
おそ
)
れむや
198
死
(
し
)
すべき
時
(
とき
)
の
来
(
きた
)
りなば
199
畳
(
たたみ
)
の
上
(
うへ
)
に
居
(
を
)
るとても
200
必
(
かなら
)
ず
死
(
まか
)
るものぞかし
201
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御心
(
みこころ
)
に
202
叶
(
かな
)
ひまつりし
其
(
その
)
上
(
うへ
)
は
203
一日
(
ひとひ
)
も
長
(
なが
)
く
世
(
よ
)
の
為
(
た
)
めに
204
召
(
め
)
し
使
(
つか
)
はむと
思召
(
おぼしめ
)
し
205
水火
(
すゐくわ
)
の
中
(
なか
)
を
潜
(
くぐ
)
るとも
206
必
(
かなら
)
ず
救
(
すく
)
はせ
給
(
たま
)
ふべし
207
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
208
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ。
209
○
210
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
此
(
この
)
景色
(
けしき
)
211
蒔絵
(
まきゑ
)
の
如
(
ごと
)
く
美
(
うる
)
はしく
212
錦
(
にしき
)
織
(
お
)
りなす
佐保姫
(
さほひめ
)
の
213
袖
(
そで
)
ふりはへて
吾
(
わが
)
顔
(
かほ
)
を
214
撫
(
な
)
でさせ
給
(
たま
)
ふ
風
(
かぜ
)
の
袖
(
そで
)
215
今
(
いま
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
は
神
(
かみ
)
の
風
(
かぜ
)
216
悪魔
(
あくま
)
を
払
(
はら
)
ふ
神
(
かみ
)
の
水火
(
いき
)
217
勢
(
いきほ
)
ひ
強
(
つよ
)
き
曲神
(
まがかみ
)
を
218
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ひ
行
(
ゆ
)
く
嵐風
(
あらしかぜ
)
219
あゝ
面白
(
おもしろ
)
し
面白
(
おもしろ
)
し
220
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
に
鞭韃
(
むちう
)
ちて
221
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
くフサの
国
(
くに
)
222
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
をば
横断
(
わうだん
)
し
223
枉
(
まが
)
の
砦
(
とりで
)
を
悉
(
ことごと
)
く
224
言向和
(
ことむけやは
)
して
月
(
つき
)
の
国
(
くに
)
225
一大
(
いちだい
)
都会
(
とくわい
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
226
ハルナの
都
(
みやこ
)
に
立
(
た
)
ち
向
(
むか
)
ひ
227
大黒主
(
おほくろぬし
)
を
初
(
はじ
)
めとし
228
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
醜司
(
しこづかさ
)
229
言向和
(
ことむけやは
)
さむ
楽
(
たの
)
しさよ
230
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
231
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ』
232
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
、
233
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
ると
共
(
とも
)
に
谷底
(
たにぞこ
)
に
二人
(
ふたり
)
の
介抱
(
かいほう
)
して
居
(
ゐ
)
たハムは、
234
忽
(
たちま
)
ち
顔色
(
がんしよく
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
235
ハム
『ヤア、
236
これや
大変
(
たいへん
)
だ。
237
最前
(
さいぜん
)
の
女
(
をんな
)
の
身内
(
みうち
)
の
奴
(
やつ
)
が
応援
(
おうゑん
)
に
来
(
き
)
よつたのだ。
238
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
しては
居
(
を
)
られない。
239
二人
(
ふたり
)
の
生命
(
いのち
)
も
大変
(
たいへん
)
だが
俺
(
おれ
)
の
生命
(
いのち
)
が
肝腎
(
かんじん
)
だ』
240
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
241
又
(
また
)
もや
谷川
(
たにがは
)
を
岩
(
いは
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
え
浅瀬
(
あさせ
)
を
渡
(
わた
)
り
猿
(
ましら
)
の
如
(
ごと
)
く
渡
(
わた
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
242
山腹
(
さんぷく
)
の
谷道
(
たにみち
)
から
照公
(
てるこう
)
はフツと
此
(
この
)
姿
(
すがた
)
を
眺
(
なが
)
め、
243
照公
『モシ、
244
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
245
此
(
この
)
谷底
(
たにぞこ
)
に
妙
(
めう
)
な
奴
(
やつ
)
が
今
(
いま
)
走
(
はし
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
246
あれ
御覧
(
ごらん
)
なさい』
247
と
指
(
ゆびさ
)
す。
248
照国別
(
てるくにわけ
)
は、
249
照国別
『
何
(
なに
)
、
250
人
(
ひと
)
が
此
(
この
)
谷底
(
たにぞこ
)
に』
251
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
252
よくよく
見下
(
みおろ
)
せば
顔
(
かほ
)
から
血
(
ち
)
を
垂
(
た
)
らし
乍
(
なが
)
ら
猿
(
ましら
)
の
如
(
ごと
)
く
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
が
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
すのが、
253
ありありと
見
(
み
)
える。
254
照公
(
てるこう
)
『モシ、
255
此
(
この
)
谷底
(
たにぞこ
)
に
何
(
なに
)
か
大惨劇
(
だいさんげき
)
が
演
(
えん
)
ぜられて
居
(
ゐ
)
るのぢやありますまいか。
256
合点
(
がつてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬあの
男
(
をとこ
)
の
様子
(
やうす
)
、
257
一
(
ひと
)
つ
谷底
(
たにぞこ
)
へ
下
(
お
)
りて
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ようぢやありませぬか』
258
照国別
(
てるくにわけ
)
『ウン、
259
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ようかな』
260
国公
(
くにこう
)
『オイ、
261
照公
(
てるこう
)
、
262
此
(
この
)
断岩
(
だんがん
)
絶壁
(
ぜつぺき
)
を
如何
(
どう
)
して
下
(
お
)
りる
積
(
つも
)
りだ。
263
三間
(
さんげん
)
や
五間
(
ごけん
)
の
処
(
ところ
)
なら
空中
(
くうちう
)
滑走
(
くわつそう
)
してでも
着陸
(
ちやくりく
)
を
無事
(
ぶじ
)
にする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ようが、
264
斯
(
か
)
う
深
(
ふか
)
い
谷底
(
たにぞこ
)
では
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬぢやないか』
265
照公
(
てるこう
)
『ウン、
266
さうだなあ。
267
然
(
しか
)
し
彼処
(
あこ
)
まであの
男
(
をとこ
)
も
行
(
い
)
つたのだから、
268
何処
(
どこ
)
かに
道
(
みち
)
があるだらう。
269
先
(
ま
)
づ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せして、
270
調
(
しら
)
べよと
仰有
(
おつしや
)
るなら
調
(
しら
)
べるなり、
271
もう
止
(
よ
)
せと
云
(
い
)
はるれば
止
(
よ
)
しにするのだ。
272
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
通
(
どほ
)
りにして
居
(
を
)
れば
落度
(
おちど
)
はないからな』
273
梅公
(
うめこう
)
『モシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
274
あまり
深
(
ふか
)
い
谷底
(
たにぞこ
)
でハツキリは
分
(
わか
)
りませぬが、
275
如何
(
どう
)
やら
二人
(
ふたり
)
の
人
(
ひと
)
が
殺
(
ころ
)
されてる
様
(
やう
)
です。
276
大方
(
おほかた
)
今
(
いま
)
逃
(
に
)
げた
奴
(
やつ
)
が
殺
(
ころ
)
して
逃
(
に
)
げたのでせう』
277
と
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
まして
谷底
(
たにそこ
)
を
指
(
さ
)
す。
278
照国別
(
てるくにわけ
)
は
谷底
(
たにそこ
)
を
眺
(
なが
)
めて、
279
照国別
『
如何
(
いか
)
にも
怪
(
あや
)
しい。
280
何
(
なん
)
とかして
様子
(
やうす
)
を
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
ようかな』
281
(
大正一一・一〇・二二
旧九・三
北村隆光
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