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特別編 入蒙記
天祥地瑞
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第39巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 伊祖の神風
01 大黒主
〔1066〕
02 評定
〔1067〕
03 出師
〔1068〕
第2篇 黄金清照
04 河鹿越
〔1069〕
05 人の心
〔1070〕
06 妖霧
〔1071〕
07 都率天
〔1072〕
08 母と娘
〔1073〕
第3篇 宿世の山道
09 九死一生
〔1074〕
10 八の字
〔1075〕
11 鼻摘
〔1076〕
12 種明志
〔1077〕
第4篇 浮木の岩窟
13 浮木の森
〔1078〕
14 清春山
〔1079〕
15 焼糞
〔1080〕
16 親子対面
〔1081〕
第5篇 馬蹄の反影
17 テームス峠
〔1082〕
18 関所守
〔1083〕
19 玉山嵐
〔1084〕
附録 大祓祝詞解
余白歌
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第六章
妖霧
(
えうむ
)
〔一〇七一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻
篇:
第2篇 黄金清照
よみ(新仮名遣い):
おうごんせいしょう
章:
第6章 妖霧
よみ(新仮名遣い):
ようむ
通し章番号:
1071
口述日:
1922(大正11)年10月22日(旧09月3日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
谷道の傍らの森に、古ぼけた祠があった。レーブとタールはその後ろに隠れて、先ほどの災難についてひそひそ話にふけっている。そこへ、息をはずませてハムが祠の前にやってきた。
ハムは、二人の女に投げられた災難を吐露し、レーブとタールが自分を助けるどころか悪態をついて放置していたことに怒りを表した。
ハムは、そのあと聞こえてきた宣伝歌から三五教徒がの応援が来たと思い、その恐ろしさを祠の前に訴えた。そしてもう体が動かくなったと嘆き、バラモン教の神に助けを乞うた。
河鹿川の谷底から立ち上った霧にあたりは包まれ、一足先も見えなくなってしまった。レーブとタールはハムが弱音を吐いて参っているのをからかってやろうと、霧を幸い祠の下から這い出した。
タールとレーブは、黄金姫と清照姫の声色を使って、鬼の母子を演じ、ハムを震え上がらせた。ハムは恐ろしさに思わず、霧の中の声に向かって命乞いを始める。
二人が鬼の母子の真似をしてハムをなぶっていると、山おろしに霧は払われて、三人の姿ははっきりをわかってきた。ハムは、レーブとタールが自分をからかっていたことがわかり、怒りに足腰の痛みも忘れて立ち上がった。
レーブとタールをそれをみて、細谷道を命からがら逃げて行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-17 11:59:09
OBC :
rm3906
愛善世界社版:
78頁
八幡書店版:
第7輯 308頁
修補版:
校定版:
81頁
普及版:
31頁
初版:
ページ備考:
001
谷路
(
たにみち
)
の
傍
(
かたはら
)
のコンモリとした
森
(
もり
)
に
古
(
ふる
)
ぼけた
一
(
ひと
)
つの
祠
(
ほこら
)
がある。
002
其
(
その
)
後
(
うしろ
)
にヒソビソ
話
(
ばなし
)
をしてゐる
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
があつた。
003
タール
『オイ、
004
レーブ、
005
今日
(
けふ
)
位
(
ぐらゐ
)
怖
(
こは
)
い
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
うた
事
(
こと
)
はないぢやないか、
006
イヤ
怪体
(
けたい
)
な
日
(
ひ
)
はあるまい。
007
バラかパンヂーか
芍薬
(
しやくやく
)
かと
云
(
い
)
ふやうな
美
(
うつく
)
しいクヰン
様
(
さま
)
が
婆
(
ば
)
アと
二人
(
ふたり
)
連
(
づ
)
れで
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
を
天降
(
あまくだ
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたので、
008
俺
(
おれ
)
は
一目
(
ひとめ
)
其
(
その
)
お
姿
(
すがた
)
を
拝
(
をが
)
むなり、
009
魂
(
たましひ
)
が
宙
(
ちう
)
に
飛
(
と
)
び、
010
仮令
(
たとへ
)
敵
(
てき
)
でも
構
(
かま
)
はぬ、
011
一
(
いつ
)
ぺんあの
綺麗
(
きれい
)
な
手
(
て
)
で、
012
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
のやうにさわつて
貰
(
もら
)
ひたかつたが、
013
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らあんな
目
(
め
)
に
会
(
あ
)
うても
約
(
つま
)
らないし、
014
一体
(
いつたい
)
あれは
何神
(
なにがみ
)
さまだらう。
015
俺
(
おれ
)
はそれからこつちといふものは、
016
あの
女神
(
めがみ
)
の
姿
(
すがた
)
が
目
(
め
)
にちらついて、
017
何
(
ど
)
うにも
斯
(
か
)
うにも
仕方
(
しかた
)
がないワ。
018
怖
(
こは
)
いやうな
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
へぬ
気分
(
きぶん
)
になつて
来
(
き
)
たよ』
019
レーブ『
貴様
(
きさま
)
も
余程
(
よほど
)
良
(
よ
)
いデレ
助
(
すけ
)
だな。
020
そんなこつて
大切
(
たいせつ
)
な
使命
(
しめい
)
が
勤
(
つと
)
まるか。
021
もし
貴様
(
きさま
)
、
022
あれが
例
(
れい
)
のレコであつたら、
023
如何
(
どう
)
する
積
(
つもり
)
だ』
024
タール『そんな
事
(
こと
)
は
先
(
さき
)
にならな
分
(
わか
)
らぬワイ。
025
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
粋
(
すゐ
)
の
利
(
き
)
かぬ
奴
(
やつ
)
計
(
ばか
)
りがゴロついてるものだから、
026
施
(
ほどこ
)
すべき
手段
(
しゆだん
)
がない。
027
併
(
しか
)
し
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
奴
(
やつ
)
は
仮令
(
たとへ
)
命
(
いのち
)
はなくなつても
光栄
(
くわうえい
)
だと
思
(
おも
)
うて、
028
成仏
(
じやうぶつ
)
するだらう。
029
あんな
高
(
たか
)
い
所
(
ところ
)
からウンと
一思
(
ひとおも
)
ひに
天国
(
てんごく
)
へ
行
(
ゆ
)
けるのならば、
030
おれもあの
女神
(
めがみ
)
に
放
(
ほ
)
つて
貰
(
もら
)
うて、
031
天国
(
てんごく
)
へ
行
(
い
)
つた
方
(
はう
)
が
何程
(
なにほど
)
結構
(
けつこう
)
だか
知
(
し
)
れない。
032
実際
(
じつさい
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
居
(
を
)
つたつて
面白
(
おもしろ
)
くも
何
(
なん
)
ともないからなア』
033
レーブ『それ
程
(
ほど
)
死
(
し
)
にたいのなら、
034
なぜハムが
追
(
お
)
ひかけた
時
(
とき
)
に
殺
(
ころ
)
して
貰
(
もら
)
はなんだのだ。
035
ヤツパリ
貴様
(
きさま
)
は
命
(
いのち
)
が
惜
(
をし
)
いのだらう』
036
タール『
馬鹿
(
ばか
)
言
(
い
)
ふな。
037
貴様
(
きさま
)
が
逃
(
に
)
げるものだから
朋友
(
ほういう
)
の
義務
(
ぎむ
)
を
重
(
おも
)
んじて、
038
附合
(
つきあひ
)
に
逃
(
に
)
げてやつたのだ。
039
何程
(
なにほど
)
天国
(
てんごく
)
がよいと
云
(
い
)
つても、
040
ハムのやうな
奴
(
やつ
)
に
殺
(
ころ
)
されてはたまらぬからな。
041
たつた
一
(
いつ
)
ぺんより
死
(
し
)
ぬ
事
(
こと
)
の
出来
(
でき
)
ぬ
命
(
いのち
)
を、
042
アテーナの
女神
(
めがみ
)
の
様
(
やう
)
なクヰン
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
手
(
て
)
に
掛
(
かか
)
つて
死
(
し
)
ぬのならば
死
(
し
)
んでも
冥
(
めい
)
するが、
043
ゲヂゲヂのやうに
世間
(
せけん
)
から
厭
(
いや
)
がられてる
鬼面
(
おにづら
)
のハムの
手
(
て
)
にかかるこたア、
044
何程
(
なにほど
)
死
(
し
)
に
好
(
ずき
)
の
俺
(
おれ
)
だつて
真平
(
まつぴら
)
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りたいワイ。
045
アーアま
一度
(
いちど
)
女神
(
めがみ
)
の
御
(
お
)
顔
(
かほ
)
が
拝
(
をが
)
みたくなつて
来
(
き
)
たワイ』
046
レーブ『
婆
(
ば
)
アサンの
御
(
お
)
顔
(
かほ
)
は
如何
(
どう
)
だ。
047
万々一
(
まんまんいち
)
あのクヰンさまがお
前
(
まへ
)
の
女房
(
にようばう
)
になつてやると
仰有
(
おつしや
)
つたら、
048
婆
(
ば
)
アサンもキツとお
添物
(
そへもの
)
に
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るに
違
(
ちがひ
)
ないが、
049
其
(
その
)
時
(
とき
)
にや
貴様
(
きさま
)
如何
(
どう
)
する
積
(
つもり
)
だ』
050
タール『
婆
(
ば
)
アサンだつて
女
(
をんな
)
だよ、
051
あんな
娘
(
むすめ
)
を
生
(
う
)
んだ
位
(
くらゐ
)
だから、
052
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
は
非常
(
ひじやう
)
なナイスに
違
(
ちがひ
)
ない、
053
昔
(
むかし
)
のナイスだと
思
(
おも
)
へば
余
(
あま
)
り
気分
(
きぶん
)
も
悪
(
わる
)
いこたアない
事
(
こと
)
はないワイ。
054
ウツフヽヽヽ』
055
レーブ『コリヤ
静
(
しづか
)
にせい。
056
ハムの
奴
(
やつ
)
、
057
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
きつけてやつて
来
(
き
)
やがつたら、
058
それこそ
大変
(
たいへん
)
だぞ。
059
俺
(
おれ
)
の
命
(
いのち
)
を
今度
(
こんど
)
は
取
(
と
)
るに
違
(
ちがひ
)
ない、
060
余
(
あま
)
り
両人
(
りやうにん
)
が
云
(
い
)
ひすぎたからなア、
061
大変
(
たいへん
)
に
怒
(
おこ
)
つてけつかるに
違
(
ちがひ
)
ないから、
062
マア
暫
(
しばら
)
く
沈黙
(
ちんもく
)
の
幕
(
まく
)
をおろして、
063
潜航艇
(
せんかうてい
)
のやうに
祠
(
ほこら
)
の
床下
(
ゆかした
)
にでも
伏艇
(
ふくてい
)
して
居
(
を
)
らうぢやないか』
064
かかる
所
(
ところ
)
へ
足音
(
あしおと
)
高
(
たか
)
くスースーと
息
(
いき
)
をはずませやつて
来
(
き
)
たのはハムである。
065
ハムは
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
の
置石
(
おきいし
)
に
腰
(
こし
)
を
打
(
うち
)
かけて
独言
(
ひとりごと
)
をいつてゐる。
066
ハム『アーア、
067
何
(
なん
)
といふ
今日
(
けふ
)
は
怪体
(
けつたい
)
な
日
(
ひ
)
だらう。
068
天女
(
てんによ
)
のやうなナイスがやつて
来
(
き
)
やがつて、
069
無限
(
むげん
)
の
力
(
ちから
)
をあらはし、
070
おれたち
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
猫
(
ねこ
)
が
蛙
(
かへる
)
を
銜
(
くは
)
へたやうに、
071
ポイと
谷底
(
たにそこ
)
へ
投
(
な
)
げこみ、
072
サツサと
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
ひやがつた。
073
空中
(
くうちう
)
を
七八回
(
しちはちくわい
)
も
廻転
(
くわいてん
)
したと
思
(
おも
)
へば、
074
真綿
(
まわた
)
のやうな
砂
(
すな
)
の
上
(
うへ
)
へドスンと
落
(
おと
)
され、
075
暫
(
しばら
)
くは
気
(
き
)
が
遠
(
とほ
)
くなつてゐたが、
076
漸
(
やうや
)
くにして
気
(
き
)
がつき
起上
(
おきあが
)
らうとすれ
共
(
ども
)
、
077
腰
(
こし
)
の
骨
(
ほね
)
が
如何
(
どう
)
なりよつたか、
078
チーツとも
動
(
うご
)
けないので
自然
(
しぜん
)
療治
(
れうぢ
)
を
待
(
ま
)
つてゐると、
079
そこへレーブ、
080
タールの
無情漢
(
むじやうかん
)
奴
(
め
)
がやつて
来
(
き
)
て、
081
俺
(
おれ
)
を
水葬
(
すゐさう
)
するの、
082
二人
(
ふたり
)
を
助
(
たす
)
けてやるのと、
083
吐
(
ほざ
)
いてゐやがる。
084
怪
(
け
)
しからぬ
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
す
奴
(
やつ
)
と
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つて
堪
(
たま
)
らず、
085
腰
(
こし
)
の
痛
(
いた
)
みも
打忘
(
うちわす
)
れて
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
るや
否
(
いな
)
や、
086
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
ア、
087
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げて
了
(
しま
)
ひよつた。
088
モウ
大分
(
だいぶ
)
に
行
(
ゆ
)
きよつただらう。
089
イール、
090
ヨセフの
両人
(
りやうにん
)
をまだ
温
(
ぬく
)
みがあるので
生
(
い
)
き
返
(
かへ
)
らしてやらうと
思
(
おも
)
ひ、
091
いろいろ
介抱
(
かいほう
)
してると、
092
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
腹
(
はら
)
を
抉
(
えぐ
)
るやうな
声
(
こゑ
)
で、
093
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
うて
来
(
く
)
る
奴
(
やつ
)
がある。
094
此奴
(
こいつ
)
ア、
095
キツと
最前
(
さいぜん
)
の
母娘
(
おやこ
)
の
者
(
もの
)
の
身内
(
みうち
)
に
違
(
ちがひ
)
ない、
096
グヅグヅしてると
大変
(
たいへん
)
と
漸
(
やうや
)
う
此処
(
ここ
)
までやつて
来
(
き
)
たが
又
(
また
)
もや
腰
(
こし
)
が
痛
(
いた
)
み
一歩
(
いつぽ
)
も
歩
(
ある
)
けぬやうになつて
了
(
しま
)
つた。
097
ヤレ
嬉
(
うれ
)
しやと
気
(
き
)
がゆるんだが
口
(
くち
)
計
(
ばか
)
り
達者
(
たつしや
)
で
身体
(
からだ
)
がサツパリ
動
(
うご
)
かぬ。
098
アヽ
如何
(
どう
)
したら
良
(
よ
)
からうかな。
099
もしや
最前
(
さいぜん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がやつて
来
(
き
)
よつたら、
100
又候
(
またぞろ
)
谷底
(
たにそこ
)
へ
放
(
ほ
)
られて
今度
(
こんど
)
こそ
命
(
いのち
)
の
終末
(
しうまつ
)
だ、
101
アーア、
102
バラモン
教
(
けう
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
、
103
私
(
わたし
)
はお
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
にやつた
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
104
仮令
(
たとへ
)
少々
(
せうせう
)
不調法
(
ぶてうはふ
)
が
厶
(
ござ
)
いましても
広
(
ひろ
)
き
心
(
こころ
)
に
見直
(
みなほ
)
して
此
(
この
)
足腰
(
あしこし
)
を
早
(
はや
)
く
立
(
た
)
てて
下
(
くだ
)
さいませ、
105
お
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します』
106
と
涙声
(
なみだごゑ
)
になつて
祈
(
いの
)
り
出
(
だ
)
した。
107
レーブ、
108
タールの
二人
(
ふたり
)
は
祠
(
ほこら
)
の
床下
(
ゆかした
)
から
此
(
この
)
独言
(
ひとりごと
)
をスツカリ
聞
(
き
)
いて
了
(
しま
)
ひ、
109
互
(
たがひ
)
に
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
してニタツと
笑
(
わら
)
ひ、
110
何
(
なに
)
か
肯
(
うなづ
)
き
合
(
あ
)
うてゐる。
111
俄
(
にはか
)
に
河鹿川
(
かじかがは
)
の
谷底
(
たにそこ
)
から
濛々
(
もうもう
)
として
灰色
(
はひいろ
)
の
霧
(
きり
)
が
立昇
(
たちのぼ
)
り、
112
あたりを
包
(
つつ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
113
最早
(
もはや
)
一足先
(
ひとあしさき
)
も
見
(
み
)
えなくなつた。
114
二人
(
ふたり
)
はこれ
幸
(
さいは
)
ひと
祠
(
ほこら
)
の
床下
(
ゆかした
)
から
這
(
は
)
ひ
出
(
だ
)
した。
115
ハムは
苦痛
(
くつう
)
益々
(
ますます
)
烈
(
はげ
)
しくなつたと
見
(
み
)
え、
116
ウンウンと
唸
(
うな
)
り
出
(
だ
)
し、
117
終
(
つひ
)
には、
118
ハム
『アヽ
苦
(
くる
)
しい
苦
(
くる
)
しい』
119
と
身
(
み
)
をもがく
様子
(
やうす
)
が、
120
霧
(
きり
)
を
通
(
とほ
)
してボンヤリと
見
(
み
)
えて
来
(
き
)
た。
121
ハムは
二人
(
ふたり
)
のここに
居
(
ゐ
)
ることは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らなかつた。
122
只
(
ただ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
一行
(
いつかう
)
が
追
(
お
)
ひかけて
来
(
き
)
はせまいかと、
123
それのみが
恐
(
おそ
)
ろしくて
震
(
ふる
)
ふてゐたのである。
124
レーブは
婆
(
ばば
)
アの
作
(
つく
)
り
声
(
ごゑ
)
になつて、
125
レーブ
『
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
にも、
126
八尺
(
やさか
)
の
男
(
をとこ
)
が
吠
(
ほ
)
え
面
(
づら
)
をかわき、
127
何
(
なに
)
をグヅグヅといつてゐるのだ。
128
わしは
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
でお
前
(
まへ
)
を
谷底
(
たにそこ
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んだ
黄金姫
(
わうごんひめ
)
だよ。
129
モウ
今頃
(
いまごろ
)
は
十万
(
じふまん
)
億土
(
おくど
)
の
旅
(
たび
)
をしてゐるかと
思
(
おも
)
うたに、
130
またこんな
所
(
ところ
)
へ
迷
(
まよ
)
うて
来
(
き
)
たのか、
131
ヨモヤ
幽霊
(
いうれい
)
ではあるまい。
132
蛇
(
くちなは
)
の
生殺
(
なまごろ
)
しにしておいても、
133
ハムも
可哀想
(
かあいさう
)
だから、
134
スツパリと
殺
(
ころ
)
してやらねばなるまい。
135
ここに
尖
(
とが
)
つた
岩
(
いは
)
がある。
136
コレ
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
137
お
前
(
まへ
)
と
二人
(
ふたり
)
で
彼奴
(
あいつ
)
の
徳利
(
とくり
)
を
叩
(
たた
)
きわつてやりませうか。
138
酒
(
さけ
)
の
代
(
かは
)
りに
赤
(
あか
)
い
血
(
ち
)
が
出
(
で
)
るだらうから、
139
それを
酒
(
さけ
)
の
代
(
かは
)
りに
呑
(
の
)
んでみたら
随分
(
ずゐぶん
)
甘
(
うま
)
からう、
140
大分
(
だいぶ
)
永
(
なが
)
らく
人間
(
にんげん
)
の
血
(
ち
)
を
吸
(
す
)
はなかつたが、
141
大変
(
たいへん
)
良
(
よ
)
い
獲物
(
えもの
)
ぢや、
142
かうして
黄金姫
(
わうごんひめ
)
と
化
(
ば
)
けてゐるのも
随分
(
ずゐぶん
)
辛
(
つら
)
いものぢや。
143
アヽ
神
(
かみ
)
さまは
結構
(
けつこう
)
な
飲食
(
おんじき
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さる、
144
臀部
(
でんぶ
)
あたりは
随分
(
ずゐぶん
)
ポツテリと
肉
(
にく
)
がついて
居
(
ゐ
)
るから、
145
スキ
焼
(
やき
)
にして
食
(
く
)
へば
大変
(
たいへん
)
に
味
(
あぢ
)
が
良
(
い
)
いのだけれど、
146
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
道中
(
だうちう
)
の
事
(
こと
)
だから、
147
此
(
この
)
刀
(
かたな
)
で
一片
(
ひときれ
)
々々
(
ひときれ
)
ゑぐつて
生
(
なま
)
で
食
(
く
)
うた
方
(
はう
)
が
味
(
あぢ
)
がよからうぞや。
148
オツホヽヽヽ』
149
タールは
若
(
わか
)
い
女子
(
をなご
)
の
声
(
こゑ
)
で、
150
タール
『お
母
(
か
)
アさま、
151
本当
(
ほんたう
)
にお
腹
(
なか
)
が
空
(
す
)
いて、
152
此
(
この
)
鬼娘
(
おにむすめ
)
も
困
(
こま
)
つて
居
(
を
)
りました。
153
これも
全
(
まつた
)
く
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
さまの
大黒主
(
おほくろぬし
)
が
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さつたのでせう。
154
今日
(
けふ
)
で
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
も
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
さま、
155
小糸姫
(
こいとひめ
)
さまの
所在
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ねると
云
(
い
)
つて、
156
手当
(
てあて
)
ばかりをボツタくり、
157
チツとも
目
(
め
)
ざましい
仕事
(
しごと
)
を
致
(
いた
)
さぬので
罰
(
ばち
)
が
当
(
あた
)
り、
158
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
さまがキツと
吾々
(
われわれ
)
母娘
(
おやこ
)
に
久
(
ひさ
)
しぶりで
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さつたのでせう。
159
どうもグリグリした
厭
(
いや
)
らしい
目玉
(
めだま
)
だから、
160
あの
目
(
め
)
から
先
(
さき
)
にゑぐり
出
(
だ
)
してやりませうか、
161
ホツホヽヽヽ。
162
なんと
甘
(
うま
)
さうな
匂
(
にほ
)
ひが
致
(
いた
)
しますこと、
163
鬼
(
おに
)
も
時々
(
ときどき
)
こんな
事
(
こと
)
が
無
(
な
)
ければやり
切
(
き
)
れませぬワ。
164
イツヒヽヽヽ』
165
靄
(
もや
)
に
包
(
つつ
)
まれて
声
(
こゑ
)
のみより
聞
(
きこ
)
えぬので、
166
ハムは
以前
(
いぜん
)
の
母娘
(
おやこ
)
はヤツパリ
鬼
(
おに
)
であつたか、
167
コリヤたまらぬ……と
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
さうとすれ
共
(
ども
)
、
168
腰
(
こし
)
は
痛
(
いた
)
み、
169
足
(
あし
)
は
萎
(
な
)
え、
170
ビクとも
動
(
うご
)
かれない。
171
とうとうハムは
泣声
(
なきごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
172
ハム
『モシモシ
鬼
(
おに
)
の
母娘
(
おやこ
)
様
(
さま
)
、
173
どうぞ
今日
(
けふ
)
計
(
ばか
)
りは
惜
(
をし
)
い
命
(
いのち
)
をお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ。
174
私
(
わたし
)
は
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
さまの
家来
(
けらい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
175
私
(
わたし
)
のやうな
者
(
もの
)
をおあがりになつては、
176
却
(
かへつ
)
てあなたの
罪
(
つみ
)
になり
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
さまからお
咎
(
とが
)
めの
程
(
ほど
)
も
恐
(
おそ
)
ろしう
厶
(
ござ
)
いませう。
177
味方
(
みかた
)
が
味方
(
みかた
)
を
食
(
く
)
ふといふ
事
(
こと
)
はあり
得
(
う
)
可
(
べか
)
らざる
所
(
ところ
)
、
178
どうぞ
今日
(
けふ
)
の
所
(
ところ
)
は
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
をお
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
179
命
(
いのち
)
計
(
ばか
)
りはお
助
(
たす
)
けを
願
(
ねが
)
ひます』
180
タール『ホツホヽヽヽあのハムの
白々
(
しらじら
)
しい
言葉
(
ことば
)
、
181
コレ
鬼婆
(
おにば
)
アさま、
182
何事
(
なにごと
)
も
耳
(
みみ
)
をふたして
食
(
く
)
つてやりませうか。
183
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
さまだつて、
184
こんな
所
(
ところ
)
までお
目
(
め
)
が
届
(
とど
)
く
道理
(
だうり
)
もなし、
185
頭
(
あたま
)
からスツカリ
食
(
く
)
つて
雪隠
(
せんち
)
で
饅頭
(
まんぢう
)
食
(
く
)
つたやうな
顔
(
かほ
)
さへして
居
(
を
)
ればメツタに
分
(
わか
)
りはしませぬ。
186
幸
(
さいは
)
ひ
山中
(
やまなか
)
の
事
(
こと
)
とて
誰一人
(
たれひとり
)
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
る
鬼
(
おに
)
もなし、
187
こんな
機会
(
きくわい
)
はありませぬ。
188
あゝモウたまらぬたまらぬ、
189
何
(
なん
)
ともいへぬ
甘
(
うま
)
さうな
人
(
ひと
)
の
匂
(
にほ
)
ひだ。
190
ナア
鬼婆
(
おにば
)
アさま、
191
グヅグヅしてゐると
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
来
(
き
)
たら
大変
(
たいへん
)
です』
192
ハムはあわてて、
193
ハム
『モシモシ
鬼婆
(
おにば
)
アさまに
鬼娘
(
おにむすめ
)
さま、
194
そりや
余
(
あま
)
りお
胴欲
(
どうよく
)
ぢや。
195
味方
(
みかた
)
が
味方
(
みかた
)
を
殺
(
ころ
)
すといふ
事
(
こと
)
がどこにありますか。
196
私
(
わたし
)
をバラモン
教
(
けう
)
同士
(
どうし
)
のよしみで
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいな』
197
タール『ホツホヽヽヽ
鬼婆
(
おにば
)
アさまあれをお
聞
(
き
)
きなさいませ。
198
あんな
勝手
(
かつて
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひます、
199
味方
(
みかた
)
の
中
(
なか
)
にも
敵
(
てき
)
があるといふぢやありませぬか。
200
此
(
この
)
ハムといふ
奴
(
やつ
)
、
201
味方
(
みかた
)
の
中
(
なか
)
の
敵
(
てき
)
ですから、
202
何
(
なん
)
の
容捨
(
ようしや
)
もいりますまい、
203
分
(
わか
)
つた
所
(
ところ
)
で
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
こそ
頂
(
いただ
)
け、
204
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
さまからお
叱言
(
こごと
)
を
頂
(
いただ
)
く
気遣
(
きづかひ
)
はありませぬ。
205
此奴
(
こいつ
)
の
同類
(
どうるゐ
)
にレーブ、
206
タールと
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
があつて、
207
最前
(
さいぜん
)
婆
(
ば
)
アさまと
私
(
わたし
)
と
二人
(
ふたり
)
して
谷底
(
たにそこ
)
へ
放
(
ほ
)
り
込
(
こ
)
んでやつたイール、
208
ヨセフ
等
(
ら
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けにはるばる
谷底
(
たにそこ
)
へ
尋
(
たづ
)
ね
行
(
ゆ
)
き、
209
同
(
おな
)
じ
味方
(
みかた
)
であり
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
ハムだけは
悪人
(
あくにん
)
だから
助
(
たす
)
けてやらぬ
方
(
はう
)
がよからう、
210
憎
(
にく
)
まれ
子
(
ご
)
世
(
よ
)
にはばると
云
(
い
)
つて、
211
どうにもかうにも
仕方
(
しかた
)
のない
奴
(
やつ
)
だと、
212
現
(
げん
)
に
此奴
(
こいつ
)
の
部下
(
ぶか
)
でさへも
言
(
い
)
つてゐた
位
(
くらゐ
)
だから、
213
喰
(
く
)
つた
所
(
ところ
)
でメツタに
罰
(
ばち
)
は
当
(
あた
)
りませぬ、
214
のうレーブよ……オツトドツコイ
鬼婆
(
おにば
)
アさま』
215
レーブ『コリヤ
心得
(
こころえ
)
てものを
云
(
い
)
はぬかい、
216
ハム
公
(
こう
)
の
奴
(
やつ
)
、
217
悟
(
さと
)
つたら
折角
(
せつかく
)
の
狂言
(
きやうげん
)
が
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
になるぢやないか』
218
タール『ナーニ
悟
(
さと
)
つたつて
構
(
かま
)
ふものか、
219
ハムは
足腰
(
あしこし
)
が
立
(
た
)
たぬのだから、
220
鬼婆
(
おにばば
)
でなくても
鬼娘
(
おにむすめ
)
でなくても、
221
あの
一升
(
いつしよう
)
徳利
(
どくり
)
をカチわつて、
222
生血
(
なまち
)
を
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
し、
223
臀肉
(
けつにく
)
でも
食
(
く
)
うてやれば
良
(
い
)
いのだ。
224
サアサア、
225
早
(
はや
)
いがお
得
(
とく
)
だ、
226
グヅグヅしてると、
227
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
にでも
見
(
み
)
つかつたら
大変
(
たいへん
)
だぞ』
228
ハム『モシモシ
鬼婆
(
おにば
)
アさま、
229
鬼娘
(
おにむすめ
)
さま、
230
そんなレーブやタールに
化
(
ば
)
けたつて
駄目
(
だめ
)
です。
231
私
(
わたし
)
はそんな
事
(
こと
)
に
騙
(
だま
)
されるやうな
善人
(
ぜんにん
)
では
厶
(
ござ
)
いませぬ、
232
悪人
(
あくにん
)
でも
厶
(
ござ
)
いませぬワイ。
233
どうぞ
今日
(
けふ
)
丈
(
だけ
)
は
気
(
き
)
よう
見
(
み
)
のがして
下
(
くだ
)
さいな、
234
これ
丈
(
だけ
)
脛腰
(
すねこし
)
の
立
(
た
)
たぬやうな
者
(
もの
)
を
自由
(
じいう
)
にするのなら、
235
三
(
み
)
つ
子
(
ご
)
でも
致
(
いた
)
しますぞや。
236
弱味
(
よわみ
)
につけ
込
(
こ
)
んでそんな
事
(
こと
)
をなさると、
237
鬼婆
(
おにば
)
アさま
沽券
(
こけん
)
が
下
(
さが
)
ります、
238
モツト
負惜
(
まけをし
)
みの
強
(
つよ
)
い
代物
(
しろもの
)
の、
239
レーブ、
240
タールが
今
(
いま
)
此
(
この
)
先
(
さき
)
逃
(
に
)
げましたから、
241
彼奴
(
あいつ
)
は
私
(
わたくし
)
と
違
(
ちが
)
つて
肉付
(
にくづき
)
もよし
血
(
ち
)
も
沢山
(
たくさん
)
厶
(
ござ
)
います。
242
どうぞ
今日
(
けふ
)
は
彼奴
(
あいつ
)
をきこしめし、
243
私
(
わたくし
)
は
親
(
おや
)
の
命日
(
めいにち
)
だから
許
(
ゆる
)
して
下
(
くだ
)
さい。
244
冥土
(
めいど
)
に
御座
(
ござ
)
る
父母
(
ちちはは
)
がどれ
丈
(
だけ
)
歎
(
なげ
)
く
事
(
こと
)
か
知
(
し
)
れませぬ。
245
アンアンアン オンオンオン』
246
と
狼
(
おほかみ
)
のやうに
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
した。
247
レーブ『
其
(
その
)
レーブ、
248
タールといふ
奴
(
やつ
)
は、
249
貴様
(
きさま
)
より
善人
(
ぜんにん
)
か
悪人
(
あくにん
)
か、
250
それを
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れ』
251
ハム『ハイハイ
聞
(
き
)
かせます
共
(
とも
)
、
252
私
(
わたくし
)
は
只
(
ただ
)
職務
(
しよくむ
)
忠実
(
ちうじつ
)
に
部下
(
ぶか
)
を
厳
(
きび
)
しく
使
(
つか
)
ひますものだから、
253
悪人
(
あくにん
)
にしられて
居
(
ゐ
)
るのです。
254
そして
地位
(
ちゐ
)
が
高
(
たか
)
いものですから、
255
猜疑心
(
さいぎしん
)
を
起
(
おこ
)
して、
256
何
(
なん
)
とかかんとか
悪評
(
あくひやう
)
を
立
(
た
)
てられてるので、
257
決
(
けつ
)
して
世間
(
せけん
)
に
言
(
い
)
うてるやうな
悪人
(
あくにん
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
258
あなたも
鬼
(
おに
)
さまなら、
259
よく
私
(
わたし
)
の
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
が
分
(
わか
)
りませう。
260
善人面
(
ぜんにんづら
)
をして
歩
(
ある
)
いてる
奴
(
やつ
)
にロクな
奴
(
やつ
)
ア、
261
今
(
いま
)
の
時節
(
じせつ
)
にや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
262
レーブ、
263
タールの
如
(
ごと
)
きは、
264
実
(
じつ
)
に
現代
(
げんだい
)
思潮
(
してう
)
の
悪方面
(
あくはうめん
)
を
遺憾
(
ゐかん
)
なく
具備
(
ぐび
)
した
奴
(
やつ
)
ですから、
265
まだ
遠
(
とほ
)
くも
行
(
ゆ
)
きますまい。
266
此
(
この
)
先
(
さき
)
あたりにマゴついてるに
違
(
ちがひ
)
ないから、
267
彼奴
(
あいつ
)
を
一
(
ひと
)
カブリ カブつてやつて
下
(
くだ
)
さい、
268
然
(
さう
)
すりや
鬼
(
おに
)
さまのお
役目
(
やくめ
)
もつとまり、
269
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
から
悪
(
あく
)
の
断片
(
だんぺん
)
が
取除
(
とりのぞ
)
かれるといふもの、
270
私
(
わたくし
)
のやうな
腰抜
(
こしぬけ
)
の
萎
(
しな
)
びた
善人
(
ぜんにん
)
は
駄目
(
だめ
)
ですよ。
271
どうぞなる
事
(
こと
)
ならば、
272
レーブ、
273
タールを
追
(
お
)
つかけて
下
(
くだ
)
さい』
274
レーブ『
此
(
こ
)
の
鬼婆
(
おにばば
)
アは
悪人
(
あくにん
)
は
骨
(
ほね
)
がこわいから
嫌
(
いや
)
だ、
275
お
前
(
まへ
)
のやうな
善人
(
ぜんにん
)
が
喰
(
く
)
ひたくて
捜
(
さが
)
してゐたのだよ。
276
人間
(
にんげん
)
を
取
(
と
)
つて
食
(
く
)
はうと
思
(
おも
)
へば
世界
(
せかい
)
に
浜
(
はま
)
の
真砂
(
まさご
)
ほどあるが、
277
食
(
く
)
て
味
(
あぢ
)
のよい
善人
(
ぜんにん
)
がないから、
278
かうして
母子
(
おやこ
)
の
鬼
(
おに
)
がひもじい
腹
(
はら
)
を
抱
(
かか
)
へてそこら
中
(
ぢう
)
をウロついてゐるのだ。
279
善人
(
ぜんにん
)
と
聞
(
き
)
けばどうしても
喰
(
く
)
はずに
居
(
を
)
られぬ。
280
コレ
鬼娘
(
おにむすめ
)
今日
(
けふ
)
は
何
(
なん
)
といふ
吉日
(
きちじつ
)
だらう』
281
タール『
本当
(
ほんたう
)
に
鬼婆
(
おにば
)
アさまの
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
り、
282
こんな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
いませぬワ。
283
善人
(
ぜんにん
)
の
少
(
すくな
)
い
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
にハムのやうな
善人
(
ぜんにん
)
が
見
(
み
)
つかつたのは、
284
掃溜
(
はきだめ
)
を
捜
(
さが
)
してダイヤモンドを
拾
(
ひろ
)
つたやうなものだ。
285
これを
喰
(
く
)
はいで
何
(
なに
)
を
喰
(
く
)
ひませう』
286
ハム『モシモシ
私
(
わたくし
)
の
言
(
い
)
ひ
違
(
ちがひ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
287
ハムは
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
大悪人
(
だいあくにん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
288
本当
(
ほんたう
)
の
善人
(
ぜんにん
)
といつたら、
289
タール、
290
レーブの
両人
(
りやうにん
)
で
厶
(
ござ
)
います。
291
最前
(
さいぜん
)
お
前
(
まへ
)
さまが、
292
ハム、
293
イール、
294
ヨセフの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
谷底
(
たにそこ
)
へ
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
みなさつた
時
(
とき
)
、
295
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
はすでに
縡切
(
ことき
)
れむとする
所
(
ところ
)
、
296
危険
(
きけん
)
を
冒
(
をか
)
してあの
谷川
(
たにがは
)
を
渡
(
わた
)
り、
297
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
助
(
たす
)
けてやらうとした
大善人
(
だいぜんにん
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
298
キツと
血
(
ち
)
の
味
(
あぢ
)
もよく、
299
たべ
具合
(
ぐあひ
)
が
宜
(
よろ
)
しいに
違
(
ちがひ
)
はありませぬ。
300
善人
(
ぜんにん
)
が
味
(
あぢ
)
がよければ
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
に
限
(
かぎ
)
ります。
301
私
(
わたくし
)
のやうな
者
(
もの
)
をおあがりになつても
砂
(
すな
)
をかむやうなものですから、
302
どうぞこんなガラクタに
目
(
め
)
をくれず、
303
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
善人
(
ぜんにん
)
を
早
(
はや
)
く
追
(
お
)
つかけなさいませ。
304
グヅグヅしてるとどつかへ
沈没
(
ちんぼつ
)
して
了
(
しま
)
ひます』
305
レーブ『
此
(
この
)
鬼婆
(
おにばば
)
アは
時々
(
ときどき
)
虫
(
むし
)
が
変
(
かは
)
つて
刹那
(
せつな
)
々々
(
せつな
)
に
気
(
き
)
の
持方
(
もちかた
)
が
違
(
ちが
)
つて
来
(
く
)
る。
306
最前
(
さいぜん
)
は
善人
(
ぜんにん
)
が
喰
(
く
)
ひたいと
思
(
おも
)
うたが、
307
余
(
あま
)
り
歯
(
は
)
ごたへがないから、
308
一
(
ひと
)
つ
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
大悪人
(
だいあくにん
)
たるお
前
(
まへ
)
が
喰
(
く
)
つてみたいのだ。
309
サア
覚悟
(
かくご
)
をしたがよからう、
310
お
念仏
(
ねんぶつ
)
でも
申
(
まを
)
さいのう。
311
オツホヽヽヽウツフヽヽヽ
足腰
(
あしこし
)
も
立
(
た
)
たずに
口
(
くち
)
計
(
ばか
)
り
達者
(
たつしや
)
なハムも
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものだ。
312
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
霧
(
きり
)
が
四方
(
しはう
)
を
立
(
た
)
ちこめ、
313
日輪
(
にちりん
)
さまの
御
(
お
)
光
(
ひかり
)
も
無
(
な
)
くなれば、
314
鬼
(
おに
)
の
得意
(
とくい
)
時代
(
じだい
)
だ。
315
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
名残
(
なご
)
りにモ
一度
(
いちど
)
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
光
(
ひかり
)
を
見
(
み
)
せてやりたいは
山々
(
やまやま
)
なれど、
316
そしては
此方
(
こちら
)
の
働
(
はたら
)
きが
出来
(
でき
)
ぬ。
317
サア、
318
タール、
319
オツトドツコイ
鬼娘
(
おにむすめ
)
、
320
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
喰
(
く
)
つてやらうかい』
321
かく
云
(
い
)
ふ
内
(
うち
)
、
322
サツと
吹来
(
ふきく
)
る
山嵐
(
やまあらし
)
に
灰色
(
はひいろ
)
の
霧
(
きり
)
はガラリと
晴
(
は
)
れて、
323
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
姿
(
すがた
)
はハツキリと
分
(
わか
)
つて
来
(
き
)
た。
324
レーブ『アツハヽヽヽ、
325
とうとう
化
(
ば
)
けが
現
(
あら
)
はれた。
326
オイ、
327
ハム、
328
貴様
(
きさま
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
よい
腰抜
(
こしぬけ
)
だなア。
329
サア
二人
(
ふたり
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひかけて
見
(
み
)
よ。
330
腰抜
(
こしぬけ
)
の
分際
(
ぶんざい
)
としてメツタに
追
(
お
)
つかける
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
くまい』
331
ハム『
何
(
なん
)
だ、
332
いらぬ
心配
(
しんぱい
)
をさせやがつて、
333
覚
(
おぼ
)
えてけつかれ、
334
今
(
いま
)
に
仇
(
かたき
)
を
打
(
う
)
つてやるから』
335
と
安心
(
あんしん
)
と
腹立
(
はらだち
)
が
一緒
(
いつしよ
)
になつてハムは
腰
(
こし
)
の
痛
(
いた
)
みも
足
(
あし
)
の
悩
(
なや
)
みも
忘
(
わす
)
れ、
336
スツクと
立上
(
たちあが
)
つた。
337
二人
(
ふたり
)
は
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し『
此奴
(
こいつ
)
アたまらぬ』と
細谷道
(
ほそたにみち
)
をバラバラと
命
(
いのち
)
限
(
かぎ
)
りに
何処
(
いづこ
)
となく
駆出
(
かけだ
)
し
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
338
(
大正一一・一〇・二二
旧九・三
松村真澄
録)
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