黄金姫と清照姫に同行していたレーブは、ハルナの都まで母娘の共をすることを懇願したが、黄金姫は宣伝使として共を連れて行くことは許されない、とレーブを諭した。
そうするうちに、バラモン教のランチ将軍の一軍が近づいてきた。彼らが斎苑館を攻撃するために進んでくると悟ったレーブは、自分が進軍を止めてみせると勇み立った。
黄金姫は、天則にしたがってあくまで言向け和すようにとレーブを諭した。軍勢の先頭に立ちはだかったレーブは、大音声で神素盞嗚大神の館への進軍を止めるようにと呼ばわった。
バラモン軍の小頭・カルは、レーブがバラモン教でありながら三五教の味方をしていることをとがめた。レーブは細く険しい山道にたちはだかり、岩つぶてを傍らに積み重ね、バラモン軍に狙いを定めている。
それでも進軍してくるバラモン軍に対し、レーブは岩つぶてを投げつけ、カルの首筋をつかんで谷底へ放り投げた。レーブは先頭の十人ばかりを相手に奮闘し、皆谷底へ放り投げたが、ついにバラモン軍によって自分も谷底に投げられてしまった。
黄金姫と清照姫はレーブが谷底に投げられてしまったのを見て、もはや天則違反もやむなしと打って出て、軍勢を相手に暴れまわった。矢を射かけるバラモン軍によって二人は谷底に転落した。武術の心得ある二人は柔らかい砂の上に無事に着地し、追ってくるバラモン軍を待ち受けていた。
バラモン軍は谷底へ降りてきて二人を取り囲み、矢を射掛けだした。その勢いに二人は最期を覚悟したが、どこからともなく狼の群れが現れて、ランチ将軍の軍勢に襲い掛かった。
ランチ将軍の軍勢は敗走し、斎苑館への近道である玉山峠を通ることをあきらめたようであった。黄金姫、清照姫の母娘は狼に送られて玉山峠を降り、無人の野を行くごとく進んで行った。