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天祥地瑞
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第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
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第40巻(卯の巻)
序文に代へて
緒言
総説
第1篇 恋雲魔風
01 大雲山
〔1085〕
02 出陣
〔1086〕
03 落橋
〔1087〕
04 珍客
〔1088〕
05 忍ぶ恋
〔1089〕
第2篇 寒梅照国
06 仁愛の真相
〔1090〕
07 文珠
〔1091〕
08 使者
〔1092〕
09 雁使
〔1093〕
第3篇 霊魂の遊行
10 衝突
〔1094〕
11 三途館
〔1095〕
12 心の反映
〔1096〕
13 試の果実
〔1097〕
14 空川
〔1098〕
第4篇 関風沼月
15 氷嚢
〔1099〕
16 春駒
〔1100〕
17 天幽窟
〔1101〕
18 沼の月
〔1102〕
19 月会
〔1103〕
20 入那の森
〔1104〕
余白歌
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第二〇章
入那
(
いるな
)
の
森
(
もり
)
〔一一〇四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻
篇:
第4篇 関風沼月
よみ(新仮名遣い):
かんぷうしょうげつ
章:
第20章 入那の森
よみ(新仮名遣い):
いるなのもり
通し章番号:
1104
口述日:
1922(大正11)年11月05日(旧09月17日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年5月25日
概要:
舞台:
イルナの森(入那の森)
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
黄金姫、清照姫、レーブ、カルの一行は西へを進んで行き、相当広い川辺に着いた。傍らの森には古ぼけた相当に大きな祠が建っている。一行は祝詞を奏上し、この祠で休んだ。カルとレーブは祠の床下に入り、あたりを警戒しながらウトウトと眠ってしまった。
そこへアルマ、ハム、テクの三人が黄金姫母娘を召し捕りにやってきて祠を取り巻いている。カルとレーブは目をさまし、三人の話を聞いている。
アルマが祠の階段を上って中に入ろうとすると、レーブは床下から石でもって床をガンガンをたたいた。三人は驚いて階段から落ちてしまった。
三人はひっくり返ったはずみに、口論を始めた。そのうちにカルとレーブ両人は石で床下を叩いたので、三人の捕り手は驚いて腰を抜かしてしまった。
レーブとカルは床下から階段上に現れて宣伝歌を歌った。バラモン教の捕り手三人は体が動かず、両手を合わせて命乞いをしている。黄金姫母娘は目を覚まして祠から出てきた。黄金姫は、三人の鎮魂をカルとレーブに命じた。
レーブは捕り手たちを悪者と懲らそうとしたが、黄金姫に叱責された。黄金姫が赦すと宣言すると、三人の腰は立ち、逃げるように森から逃げ出した。黄金姫一行は夜が明けるのを待ってイルナの国の都を目指した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-05 12:58:57
OBC :
rm4020
愛善世界社版:
263頁
八幡書店版:
第7輯 514頁
修補版:
校定版:
272頁
普及版:
121頁
初版:
ページ備考:
001
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
照国別
(
てるくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
と
葵沼
(
あふひぬま
)
の
畔
(
ほとり
)
で
東西
(
とうざい
)
に
別
(
わか
)
れ、
002
西
(
にし
)
へ
西
(
にし
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
003
日
(
ひ
)
も
漸
(
やうや
)
く
黄昏
(
たそが
)
れて、
004
百鳥
(
ももどり
)
は
塒
(
ねぐら
)
を
求
(
もと
)
め、
005
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
の
森
(
もり
)
に
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く、
006
其
(
その
)
羽音
(
はおと
)
の
騒
(
さわ
)
がしさ。
007
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
はハタとつき
当
(
あた
)
つた
相当
(
さうたう
)
広
(
ひろ
)
い
川辺
(
かはべ
)
に
着
(
つ
)
いた。
008
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
水
(
みづ
)
が
少
(
すくな
)
くて
徒渉
(
とせふ
)
するにも
余
(
あま
)
り
困難
(
こんなん
)
を
感
(
かん
)
じない
様
(
やう
)
に
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
009
一行
(
いつかう
)
は
薄暗
(
うすくら
)
がりに
裾
(
すそ
)
をからげて
流
(
なが
)
れを
渡
(
わた
)
り、
010
二三丁
(
にさんちやう
)
西
(
にし
)
に
当
(
あた
)
るコンモリとした
森蔭
(
もりかげ
)
を
目当
(
めあて
)
に
辿
(
たど
)
り
着
(
つ
)
いた。
011
後
(
のち
)
の
夜
(
よ
)
の
月
(
つき
)
はまだ
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はさぬ
宵暗
(
よひやみ
)
である。
012
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
には
古
(
ふる
)
ぼけた
相当
(
さうたう
)
に
大
(
おほ
)
きい
祠
(
ほこら
)
が
建
(
た
)
つてゐた。
013
黄金
(
わうごん
)
『
秋
(
あき
)
の
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れ
易
(
やす
)
く、
014
余
(
あま
)
り
足
(
あし
)
も
草臥
(
くたび
)
れない
内
(
うち
)
に
又
(
また
)
休
(
やす
)
まねばならぬ
様
(
やう
)
になりました。
015
幸
(
さいは
)
ひ
此
(
この
)
森
(
もり
)
の
祠
(
ほこら
)
の
中
(
なか
)
で
一休
(
ひとやす
)
み
致
(
いた
)
しませう』
016
清照
(
きよてる
)
『お
母
(
かあ
)
アさま、
017
今晩
(
こんばん
)
は
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
で
休
(
やす
)
まずに、
018
やがて
月
(
つき
)
も
出
(
で
)
ますから、
019
それまでここで
月待
(
つきまち
)
をして
進
(
すす
)
むことにしませう。
020
夜半
(
よなか
)
頃
(
ごろ
)
迄
(
まで
)
歩
(
ある
)
けば、
021
余程
(
よほど
)
里程
(
みちのり
)
がはかどりませうから………』
022
黄金
(
わうごん
)
『
長
(
なが
)
い
道中
(
だうちう
)
のことだから、
023
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けたら
歩
(
ある
)
き、
024
何程
(
なにほど
)
楽
(
らく
)
でも
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れたら
泊
(
とま
)
つてゆくことにしませう』
025
清照
(
きよてる
)
『それでも
何
(
なん
)
だか
気
(
き
)
がせいてなりませぬ。
026
ハルナの
都
(
みやこ
)
にましますお
父
(
とう
)
さまの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
何
(
なに
)
か
変事
(
へんじ
)
でも
起
(
おこ
)
つてゐるやうに
思
(
おも
)
はれて、
027
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でなりませぬ』
028
黄金
(
わうごん
)
『
何程
(
なにほど
)
焦
(
あせ
)
つた
所
(
ところ
)
で
遠
(
とほ
)
い
里程
(
みちのり
)
、
029
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せして、
030
ボツボツ
行
(
ゆ
)
きませう。
031
草臥
(
くたび
)
れて
道
(
みち
)
で
倒
(
たふ
)
れるやうな
事
(
こと
)
があつては、
032
悪神
(
あくがみ
)
の
跋扈
(
ばつこ
)
する
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
033
困
(
こま
)
りますから』
034
レーブ『お
二人
(
ふたり
)
さま、
035
ここで
今晩
(
こんばん
)
は
御
(
ご
)
一宿
(
いつしゆく
)
なさつたらどうです。
036
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
は
互
(
たがひ
)
に
交代
(
かうたい
)
で
不寝番
(
ねずばん
)
を
致
(
いた
)
しますから………』
037
黄金
(
わうごん
)
『それなら
何神
(
なにがみ
)
様
(
さま
)
の
祠
(
ほこら
)
か
知
(
し
)
らぬが
先
(
ま
)
づ
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
038
此
(
この
)
お
宮
(
みや
)
を
拝借
(
はいしやく
)
することに
致
(
いた
)
しませう。
039
清照姫
(
きよてるひめ
)
………さうが
善
(
い
)
いぢやないか』
040
清照
(
きよてる
)
『お
父
(
とう
)
さまの
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
の
事
(
こと
)
は、
041
ここでトツクリ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
しまして、
042
寝
(
やす
)
むことに
致
(
いた
)
しませう』
043
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
軽
(
かる
)
くうなづきながら、
044
型
(
かた
)
の
如
(
ごと
)
く
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
045
祠
(
ほこら
)
の
中
(
なか
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
046
蓑
(
みの
)
を
布
(
し
)
いて
母娘
(
おやこ
)
枕
(
まくら
)
を
並
(
なら
)
べ
寝
(
しん
)
に
就
(
つ
)
いた。
047
レーブ、
048
カルの
両人
(
りやうにん
)
は
祠
(
ほこら
)
の
床下
(
ゆかした
)
に
横
(
よこた
)
はりつつあつたが、
049
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
050
ウトウトと
眠
(
ねむ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
051
ここへスタスタとやつて
来
(
き
)
た
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
がある、
052
足音
(
あしおと
)
を
忍
(
しの
)
ばせながら
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
立寄
(
たちよ
)
り、
053
アルマ『オイ、
054
テク、
055
何
(
なん
)
でもここらあたりの
祠
(
ほこら
)
の
中
(
なか
)
らしいぞ』
056
テク『オイ、
057
アルマ、
058
こんな
所
(
とこ
)
に
何
(
なに
)
が
居
(
を
)
るものかい』
059
アルマ『それでも
何
(
なん
)
だか
妙
(
めう
)
な
響
(
ひびき
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
るぢやないか、
060
メツタに
鼠
(
ねずみ
)
の
鼾
(
いびき
)
ぢやあるまいぞ。
061
イルナの
刹帝利
(
せつていり
)
さまから
聞
(
き
)
いたには、
062
キツと
黄金姫
(
わうごんひめ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
此処
(
ここ
)
を
通
(
とほ
)
るに
違
(
ちが
)
ひないと
仰有
(
おつしや
)
つた。
063
マアマア
黙
(
だま
)
つて
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へたら
如何
(
どう
)
だ。
064
彼奴
(
あいつ
)
さへ
捉
(
つか
)
まへたなら、
065
結構
(
けつこう
)
な
御
(
ご
)
褒美
(
ほうび
)
が
頂
(
いただ
)
けるのだからなア。
066
小
(
ちひ
)
さい
国
(
くに
)
の
一
(
ひと
)
つも
貰
(
もら
)
つてハムとなつて
威張
(
ゐば
)
らうと
儘
(
まま
)
だよ』
067
テク『
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
黄金姫
(
わうごんひめ
)
といふ
奴
(
やつ
)
は
中々
(
なかなか
)
の
豪傑
(
がうけつ
)
で、
068
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
手
(
て
)
には
合
(
あ
)
はないぞ。
069
只
(
ただ
)
所在
(
ありか
)
さへ
分
(
わか
)
れば
黙
(
だま
)
つて
報告
(
はうこく
)
し、
070
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
に
掴
(
つか
)
まへさせばいいのだ。
071
それが
余程
(
よほど
)
利口
(
りこう
)
な
行方
(
やりかた
)
ぢやからなア、
072
おい、
073
テム、
074
貴様
(
きさま
)
はどつちにするか』
075
テム『
俺
(
おれ
)
はどつちかといへば
中立
(
ちうりつ
)
だ。
076
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
同
(
おな
)
じことなら
生擒
(
いけどり
)
にしたいものだ。
077
オイオイどうやら
本真物
(
ほんまもの
)
の
人間
(
にんげん
)
の
鼾
(
いびき
)
がして
来
(
き
)
だしたぞ』
078
レーブ、
079
カルの
両人
(
りやうにん
)
は
床下
(
ゆかした
)
から
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
話
(
はなし
)
を
息
(
いき
)
をこらして
聞
(
き
)
いてゐた。
080
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
床下
(
ゆかした
)
に
二人
(
ふたり
)
がひそんでゐるとは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
081
ドシドシと
階段
(
かいだん
)
を
登
(
のぼ
)
り、
082
アルマ『ヤア
此
(
この
)
縁側
(
えんがは
)
は
数百
(
すうひやく
)
年来
(
ねんらい
)
の
風雨
(
ふうう
)
の
侵害
(
しんがい
)
に
依
(
よ
)
つて、
083
余程
(
よほど
)
老朽
(
らうきう
)
してると
見
(
み
)
えるワイ。
084
気
(
き
)
をつけぬと
底
(
そこ
)
がぬけて、
085
脛
(
すね
)
でもかすつたら、
086
又
(
また
)
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
の
様
(
やう
)
に
吠面
(
ほえづら
)
かわいて、
087
負
(
お
)
うてくれの
何
(
なん
)
のとダダをこねねばならぬやうになるぞ。
088
気
(
き
)
をつけたり
気
(
き
)
をつけたり』
089
レーブは
床下
(
ゆかした
)
から、
090
そこらの
石
(
いし
)
を
拾
(
ひろ
)
つて、
091
古板
(
ふるいた
)
を
下
(
した
)
からガンガンと
力
(
ちから
)
をこめてなぐり
立
(
た
)
てた。
092
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
き、
093
飛上
(
とびあ
)
がつた
途端
(
とたん
)
に、
094
階段
(
かいだん
)
から
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
転落
(
てんらく
)
し、
095
三人
『アイタヽヽ、
096
ウンウン』
097
と
唸
(
うな
)
り
出
(
だ
)
した。
098
テク『オイ、
099
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
チトしつかりせぬか。
100
あれ
位
(
くらゐ
)
な
声
(
こゑ
)
にビツクリしやがつて、
101
挙措
(
きよそ
)
其
(
その
)
度
(
ど
)
を
失
(
しつ
)
し、
102
こんな
所
(
ところ
)
からヒツクリ
返
(
かへ
)
るといふことがあるものか。
103
そんな
臆病
(
おくびやう
)
なことで
如何
(
どう
)
して
吾々
(
われわれ
)
の
御用
(
ごよう
)
が
勤
(
つと
)
まると
思
(
おも
)
ふか』
104
アルマ『テク、
105
お
前
(
まへ
)
もヤツパリ
落
(
お
)
ちたぢやないか。
106
人
(
ひと
)
を
責
(
せ
)
むること
急
(
きふ
)
にして、
107
己
(
おのれ
)
の
失敗
(
しつぱい
)
は
口角
(
こうかく
)
につかねて
知
(
し
)
らぬ
顔
(
かほ
)
の
半兵衛
(
はんべゑ
)
とはチツと
虫
(
むし
)
がよすぎるぢやないか』
108
テク『
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
が
転
(
ころ
)
げやがつたものだから、
109
俺
(
おれ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
について
落
(
おと
)
されたのだ。
110
いはば
俺
(
おれ
)
は
被害者
(
ひがいしや
)
だ。
111
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
両人
(
りやうにん
)
は
証拠
(
しようこ
)
充分
(
じうぶん
)
なる
加害者
(
かがいしや
)
だから、
112
刹帝利
(
せつていり
)
様
(
さま
)
に
報告
(
はうこく
)
して
相当
(
さうたう
)
の
処分
(
しよぶん
)
をやつて
貰
(
もら
)
ふから、
113
さう
思
(
おも
)
へ』
114
アルマ『アハヽヽヽ
旃陀羅
(
せんだら
)
成上
(
なりあ
)
がり
奴
(
め
)
、
115
エラさうに
吐
(
ぬか
)
すない。
116
俺
(
おれ
)
はかう
見
(
み
)
えても、
117
チヤキチヤキの
首陀
(
しゆだ
)
の
家柄
(
いへがら
)
だ。
118
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
とは
人種
(
じんしゆ
)
が
違
(
ちが
)
ふのだからなア』
119
テク『コリヤ
俺
(
おれ
)
が
旃陀羅
(
せんだら
)
なんて、
120
無礼
(
ぶれい
)
なことを
言
(
い
)
ふな、
121
勿体
(
もつたい
)
なくもバラモン
族
(
ぞく
)
だぞ』
122
アルマ『バラモンが
聞
(
き
)
いて
呆
(
あき
)
れるワイ、
123
のうテム、
124
此奴
(
こいつ
)
は
今日
(
けふ
)
も
道
(
みち
)
の
真中
(
まんなか
)
で
旃陀羅
(
せんだら
)
に
会
(
あ
)
ひやがつて、
125
心安
(
こころやす
)
さうに
何
(
なん
)
だか
囁
(
ささや
)
いてゐたぢやないか。
126
彼奴
(
あいつ
)
に
近
(
ちか
)
よつて
物
(
もの
)
をいふ
奴
(
やつ
)
は
矢張
(
やつぱり
)
其
(
その
)
系統
(
けいとう
)
でなければ、
127
汚
(
けが
)
らはしくて
寄
(
よ
)
り
付
(
つ
)
く
者
(
もの
)
はないからのう』
128
テク『コリヤ
両人
(
りやうにん
)
、
129
上官
(
じやうくわん
)
に
対
(
たい
)
して
何
(
なん
)
といふ
無礼
(
ぶれい
)
なこと
申
(
まを
)
す。
130
吾々
(
われわれ
)
捕手
(
とりて
)
の
役人
(
やくにん
)
は
旃陀羅
(
せんだら
)
であらうが
首陀
(
しゆだ
)
であらうが、
131
一々
(
いちいち
)
出会
(
であ
)
ふ
奴
(
やつ
)
の
面
(
つら
)
を
検
(
あらた
)
めねばならず、
132
物
(
もの
)
も
言
(
い
)
はして
見
(
み
)
ねば
人間
(
にんげん
)
の
程度
(
ていど
)
が
分
(
わか
)
らないから、
133
仕方
(
しかた
)
なしに
職務
(
しよくむ
)
を
重
(
おも
)
んじて
物
(
もの
)
を
言
(
い
)
つたのだ。
134
そんな
冷淡
(
れいたん
)
なことで
此
(
この
)
役目
(
やくめ
)
が
勤
(
つと
)
まるか、
135
万々一
(
まんまんいち
)
蜈蚣姫
(
むかでひめ
)
が
此
(
この
)
捜索
(
そうさく
)
の
厳
(
きび
)
しいのを
悟
(
さと
)
つて、
136
人
(
ひと
)
のいやがる
旃陀羅
(
せんだら
)
に
化
(
ば
)
けて
通
(
とほ
)
るかも
知
(
し
)
れない。
137
さうだから、
138
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
職務
(
しよくむ
)
忠実
(
ちうじつ
)
に
勤
(
つと
)
めてゐたのだ。
139
馬鹿
(
ばか
)
野郎
(
やらう
)
だなア。
140
左様
(
さやう
)
な
不心得
(
ふこころえ
)
な
奴
(
やつ
)
は
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
暇
(
ひま
)
をくれてやるから、
141
さう
思
(
おも
)
へ』
142
テム『オイ
大将
(
たいしやう
)
、
143
口
(
くち
)
ばかりエラさうに
言
(
い
)
つてるが、
144
お
前
(
まへ
)
の
腰
(
こし
)
は
立
(
た
)
つのかい』
145
テク『
貴様
(
きさま
)
の
知
(
し
)
つてゐる
通
(
とほ
)
り、
146
腰
(
こし
)
が
立
(
た
)
ちやこそ
此処
(
ここ
)
までやつて
来
(
き
)
たのぢやないかい。
147
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬことを
吐
(
ぬか
)
すものぢやないワイ。
148
サア
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
暇
(
ひま
)
をくれる、
149
どつこへなりと、
150
天下
(
てんか
)
に
放
(
はな
)
ち
飼
(
が
)
ひだ。
151
うせ
たがよからうぞ』
152
アルマ『どこへ
行
(
ゆ
)
けと
云
(
い
)
つても、
153
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
両人
(
りやうにん
)
共
(
とも
)
ビツクリ
腰
(
ごし
)
が
抜
(
ぬ
)
けたのだから、
154
暫
(
しばら
)
く
免職
(
めんしよく
)
丈
(
だけ
)
は
保留
(
ほりう
)
してゐて
呉
(
く
)
れ。
155
同
(
おな
)
じ
免職
(
めんしよく
)
なれば、
156
依願
(
いぐわん
)
免職
(
めんしよく
)
といふ
形式
(
けいしき
)
でやつて
貰
(
もら
)
はねば、
157
今後
(
こんご
)
の
就職口
(
しうしよくぐち
)
に
付
(
つ
)
いて
迷惑
(
めいわく
)
だから、
158
貴様
(
きさま
)
を
旃陀羅
(
せんだら
)
と
云
(
い
)
つた
位
(
くらゐ
)
で、
159
此
(
この
)
結構
(
けつこう
)
……でもない
職
(
しよく
)
を
免
(
めん
)
ぜられて
堪
(
たま
)
るものかい。
160
のうテム
公
(
こう
)
』
161
テク『
武士
(
ぶし
)
の
言葉
(
ことば
)
に
二言
(
にごん
)
はないぞ。
162
いひ
出
(
だ
)
したら
後
(
あと
)
へは
引
(
ひ
)
かぬテクさまの
気性
(
きしやう
)
を
知
(
し
)
つてゐるだらう』
163
アルマ『ヘン、
164
テクテクと
何
(
なん
)
だ
テク
せの
悪
(
わる
)
い、
165
泥棒
(
どろばう
)
上
(
あが
)
り
奴
(
め
)
が、
166
モウ
斯
(
か
)
うなつては、
167
破
(
やぶ
)
れかぶれだ。
168
オイ、
169
テム
公
(
こう
)
、
170
貴様
(
きさま
)
はテム
公
(
こう
)
だから、
171
テクの
奴
(
やつ
)
がかぶりついて
来
(
き
)
たら、
172
手向
(
てむか
)
ふ
役
(
やく
)
となつて
格闘
(
かくとう
)
するのだ。
173
万々一
(
まんまんいち
)
形勢
(
けいせい
)
危
(
あやふ
)
しと
見
(
み
)
たら、
174
俺
(
おれ
)
が
助太刀
(
すけだち
)
をする、
175
併
(
しか
)
しモウ
少
(
すこ
)
し
経
(
た
)
たぬと
駄目
(
だめ
)
だ。
176
まだ
抜
(
ぬ
)
けた
腰
(
こし
)
が
元
(
もと
)
の
鞘
(
さや
)
へ、
177
少
(
すこ
)
しばかり
納
(
をさ
)
まつてゐないからのう。
178
併
(
しか
)
しテクの
奴
(
やつ
)
もきつく
腰
(
こし
)
を
打
(
う
)
ちやがつたに
違
(
ちがひ
)
ない、
179
あの
声
(
こゑ
)
の
色
(
いろ
)
を
見
(
み
)
い、
180
大分
(
だいぶ
)
に
痛
(
いた
)
さうだぞ。
181
大体
(
だいたい
)
旃陀羅
(
せんだら
)
がこんな
尊
(
たふと
)
い
御
(
ご
)
神前
(
しんぜん
)
へ
土足
(
どそく
)
のまま
昇
(
のぼ
)
るものだから、
182
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
り、
183
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
迄
(
まで
)
がマキ
添
(
ぞ
)
ひに
会
(
あ
)
うたのだ』
184
かく
話
(
はな
)
す
時
(
とき
)
しも、
185
又
(
また
)
もや
床下
(
ゆかした
)
から
一層
(
いつそう
)
大
(
おほ
)
きな
怪
(
あや
)
しい
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えてきた。
186
先
(
さき
)
のはレーブ
一人
(
ひとり
)
が
石
(
いし
)
で
床板
(
ゆかいた
)
をコツいたのであつたが、
187
今度
(
こんど
)
は
両人
(
りやうにん
)
が
力
(
ちから
)
一杯
(
いつぱい
)
石
(
いし
)
にて
床下
(
ゆかした
)
を
叩
(
たた
)
いたのだから、
188
四五
(
しご
)
層倍
(
そうばい
)
の
響音
(
きやうおん
)
に
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
189
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はキヤツと
悲鳴
(
ひめい
)
をあげ、
190
逃
(
に
)
げようとして
手
(
て
)
ばかり
もが
いてゐるが、
191
チツとも
腰
(
こし
)
が
立
(
た
)
たない。
192
さうかうしてゐる
間
(
うち
)
に、
193
月
(
つき
)
は
容赦
(
ようしや
)
なく
下界
(
げかい
)
を
照
(
て
)
らし、
194
森
(
もり
)
の
隙間
(
すきま
)
から
強
(
つよ
)
き
光
(
ひかり
)
がさして、
195
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
体
(
からだ
)
を
照
(
て
)
らした。
196
レーブ、
197
カルは
床下
(
ゆかした
)
よりニタリと
笑
(
わら
)
ひながら
這
(
は
)
ひ
出
(
いだ
)
し、
198
階段
(
かいだん
)
の
上
(
うへ
)
にツカツカと
登
(
のぼ
)
り、
199
あたりに
響
(
ひび
)
く
大音声
(
だいおんぜう
)
にて
歌
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
200
レーブ『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
201
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立別
(
たてわ
)
ける
202
刹帝利
(
せつていり
)
浄行
(
じやうぎやう
)
畏舎
(
びしや
)
首陀
(
しゆだ
)
や
203
旃陀羅
(
せんだら
)
族
(
ぞく
)
の
素性
(
すじやう
)
をば
204
立別
(
たてわ
)
け
給
(
たま
)
ふ
時
(
とき
)
は
来
(
き
)
ぬ
205
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
206
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
207
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
208
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
宣直
(
のりなほ
)
し
209
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
知
(
し
)
らずして
210
唯
(
ただ
)
惟神
(
かむながら
)
に
刹帝利
(
せつていり
)
の
211
流
(
なが
)
れのはてとあやまりつ
212
旃陀羅
(
せんだら
)
族
(
ぞく
)
のテク
公
(
こう
)
を
213
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
供人
(
ともびと
)
と
214
使
(
つか
)
ひ
居
(
ゐ
)
たりし
可笑
(
をか
)
しさよ
215
かかる
矛盾
(
むじゆん
)
を
見
(
み
)
るにつけ
216
バラモン
教
(
けう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
217
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
盲神
(
めくらがみ
)
218
ぢやといふ
事
(
こと
)
はハツキリと
219
今
(
いま
)
や
隈
(
くま
)
なく
知
(
し
)
れわたる
220
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
の
御光
(
みひかり
)
に
221
照
(
て
)
らされ
苦
(
くるし
)
む
三人
(
みたり
)
連
(
づれ
)
222
中
(
なか
)
にも
賤
(
いや
)
しきテク
公
(
こう
)
は
223
天地
(
てんち
)
の
間
(
あひだ
)
も
恐
(
おそ
)
れずに
224
勿体
(
もつたい
)
なくもバラモンの
225
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
奥
(
おく
)
さまや
226
小糸
(
こいと
)
嬢
(
ぢやう
)
をば
馬
(
うま
)
に
乗
(
の
)
せ
227
お
供
(
とも
)
に
仕
(
つか
)
へしさへあるに
228
冥加
(
みやうが
)
知
(
し
)
らずのテク
公
(
こう
)
は
229
怪
(
あや
)
しき
眼
(
まなこ
)
を
光
(
ひか
)
らして
230
心
(
こころ
)
に
何
(
なに
)
か
企
(
たく
)
むてふ
231
容子
(
ようす
)
の
色
(
いろ
)
に
見
(
み
)
えければ
232
神
(
かみ
)
に
斉
(
ひと
)
しき
黄金
(
わうごん
)
の
233
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
や
清照
(
きよてる
)
の
234
姫
(
ひめ
)
の
司
(
つかさ
)
はそれとなく
235
玉山峠
(
たまやまたうげ
)
の
麓
(
ふもと
)
にて
236
レーブにかこつけ
暇
(
ひま
)
やると
237
言
(
い
)
はれた
時
(
とき
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
238
これぞ
誠
(
まこと
)
の
生神
(
いきがみ
)
と
239
敬
(
うやま
)
ひ
慕
(
した
)
ひ
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ
240
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
と
苦労
(
くらう
)
して
241
ここ
迄
(
まで
)
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
りしぞ
242
此
(
この
)
床下
(
ゆかした
)
にひそみ
居
(
ゐ
)
て
243
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
の
囁
(
ささや
)
きを
244
残
(
のこ
)
らず
聞
(
き
)
いたレーブ、カル
245
最早
(
もはや
)
叶
(
かな
)
はぬ
百年目
(
ひやくねんめ
)
246
腰
(
こし
)
の
抜
(
ぬ
)
けたを
幸
(
さいは
)
ひに
247
弱目
(
よわめ
)
をみかけて
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が
248
つけ
込
(
こ
)
むのではなけれども
249
耳
(
みみ
)
をさらへてよつく
聞
(
き
)
け
250
汝
(
なんぢ
)
は
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
神
(
かみ
)
251
下僕
(
しもべ
)
とならむといろいろに
252
手
(
て
)
をかへ
品
(
しな
)
を
変
(
か
)
へながら
253
頼
(
たの
)
み
込
(
こ
)
んだが
明察
(
めいさつ
)
の
254
ほまれも
高
(
たか
)
き
神司
(
かむづかさ
)
255
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
256
看破
(
かんぱ
)
なされて
御
(
おん
)
首
(
くび
)
を
257
左右
(
ひだりみぎ
)
りとふり
給
(
たま
)
ひ
258
男
(
をとこ
)
を
下
(
さ
)
げてベソをかき
259
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
下僕
(
しもべ
)
等
(
ら
)
に
260
うまく
取
(
と
)
り
入
(
い
)
り
漸
(
やうや
)
くに
261
下僕
(
しもべ
)
の
数
(
かず
)
に
加
(
くは
)
へられ
262
よからぬ
事
(
こと
)
のみ
行
(
おこな
)
ひつ
263
又
(
また
)
もや
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれて
264
イルナの
国
(
くに
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
と
265
心
(
こころ
)
を
合
(
あは
)
せ
奥様
(
おくさま
)
や
266
嬢様
(
ぢやうさま
)
たちを
捉
(
とら
)
へむと
267
向
(
むか
)
ひ
来
(
きた
)
るぞ
可笑
(
をか
)
しけれ
268
命
(
いのち
)
知
(
し
)
らずの
馬鹿者
(
ばかもの
)
よ
269
心
(
こころ
)
の
鬼
(
おに
)
に
責
(
せ
)
められて
270
チヨツとの
音
(
おと
)
に
胆
(
きも
)
ひやし
271
階段
(
かいだん
)
上
(
じやう
)
から
転落
(
てんらく
)
し
272
腰
(
こし
)
を
痛
(
いた
)
めて
吠面
(
ほえづら
)
を
273
かわき
苦
(
くるし
)
む
憐
(
あは
)
れさよ
274
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
275
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましまして
276
悪
(
あく
)
に
返
(
かへ
)
つた
旃陀羅
(
せんだら
)
の
277
テクの
心
(
こころ
)
を
立直
(
たてなほ
)
し
278
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
三五
(
あななひ
)
の
279
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
逸早
(
いちはや
)
く
280
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
へ
天地
(
あめつち
)
の
281
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
282
慎
(
つつし
)
み
敬
(
いやま
)
ひ
願
(
ね
)
ぎまつる
283
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
284
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
285
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
286
摂取
(
せつしゆ
)
不捨
(
ふしや
)
の
御
(
おん
)
誓
(
ちか
)
ひ
287
人間界
(
にんげんかい
)
に
交
(
まじ
)
こりて
288
賤
(
いや
)
しき
身分
(
みぶん
)
とさげしまれ
289
排斥
(
はいせき
)
されし
旃陀羅
(
せんだら
)
も
290
其
(
その
)
源
(
みなもと
)
を
尋
(
たづ
)
ぬれば
291
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
分霊
(
ぶんれい
)
292
御
(
ご
)
分体
(
ぶんたい
)
ぞと
聞
(
き
)
くからは
293
一切
(
いつさい
)
平等
(
びやうどう
)
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
294
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
御心
(
みこころ
)
に
295
見直
(
みなほ
)
しましてテクの
罪
(
つみ
)
296
許
(
ゆる
)
させ
給
(
たま
)
へと
願
(
ね
)
ぎまつる』
297
カルはレーブの
後
(
あと
)
について
又
(
また
)
歌
(
うた
)
ふ。
298
カル
『おつたまげたか、たまげたか
299
テクにアルマにテムの
奴
(
やつ
)
300
天
(
てん
)
に
口
(
くち
)
あり
壁
(
かべ
)
に
耳
(
みみ
)
301
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
の
悪
(
わる
)
だくみ
302
残
(
のこ
)
らず
聞
(
き
)
いた
床
(
ゆか
)
の
下
(
した
)
303
コリヤ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
304
一
(
ひと
)
つおどして
胆玉
(
きもたま
)
を
305
試
(
ため
)
してやらうとレーブさま
306
カルの
二人
(
ふたり
)
が
二
(
ふた
)
つの
目
(
め
)
307
見合
(
みあは
)
しながら
床下
(
ゆかした
)
の
308
石
(
いし
)
を
拾
(
ひろ
)
ひて
古板
(
ふるいた
)
を
309
ドヽヽヽドンと
打叩
(
うちたた
)
き
310
おどしてみれば
面白
(
おもしろ
)
や
311
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
三人
(
みたり
)
は
胆
(
きも
)
潰
(
つぶ
)
し
312
道路神
(
だうろしん
)
にさいなまれ
313
つまみ
出
(
だ
)
された
其
(
その
)
如
(
ごと
)
く
314
階下
(
かいか
)
にドーツと
打倒
(
うちたふ
)
れ
315
腰
(
こし
)
をぬかしてウンウンと
316
吠面
(
ほえづら
)
かわき
愚痴
(
ぐち
)
並
(
なら
)
べ
317
旃陀羅
(
せんだら
)
族
(
ぞく
)
だ
刹帝利
(
せつていり
)
と
318
味方
(
みかた
)
同志
(
どうし
)
が
内乱
(
ないらん
)
を
319
起
(
おこ
)
し
居
(
を
)
るこそ
馬鹿
(
ばか
)
らしい
320
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
321
神
(
かみ
)
の
神罰
(
しんばつ
)
立
(
たち
)
どころ
322
悪
(
あく
)
の
企
(
たく
)
みの
年
(
ねん
)
の
明
(
あ
)
き
323
大黒主
(
おほくろぬし
)
に
仕
(
つか
)
へたる
324
おれは
名高
(
なだか
)
きカルさまよ
325
今
(
いま
)
床下
(
ゆかした
)
で
聞
(
き
)
き
居
(
を
)
れば
326
アルマやテムの
両人
(
りやうにん
)
を
327
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
免職
(
めんしよく
)
と
328
エラさうにほざいて
居
(
を
)
つただろ
329
おれは
貴様
(
きさま
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
330
十三四
(
じふさんし
)
段
(
だん
)
上役
(
うはやく
)
だ
331
此
(
この
)
カルさまが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
332
代
(
かは
)
つてテクを
免職
(
めんしよく
)
し
333
息
(
いき
)
の
根
(
ね
)
とめて
根
(
ね
)
の
国
(
くに
)
や
334
底
(
そこ
)
の
国
(
くに
)
なる
地獄道
(
ぢごくだう
)
335
派遣
(
はけん
)
してやるテクの
奴
(
やつ
)
336
双手
(
もろて
)
を
合
(
あは
)
せ
感謝
(
かんしや
)
せよ
337
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
のカルさまが
338
お
前
(
まへ
)
の
好
(
す
)
きな
底
(
そこ
)
の
国
(
くに
)
339
青
(
あを
)
赤
(
あか
)
黒
(
くろ
)
の
鬼
(
おに
)
共
(
ども
)
が
340
手具脛
(
てぐすね
)
ひいて
待
(
ま
)
つてゐる
341
焦熱
(
せうねつ
)
地獄
(
ぢごく
)
のドン
底
(
ぞこ
)
へ
342
紹介状
(
せうかいじやう
)
をつけるから
343
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
して
行
(
ゆ
)
くがよい
344
アハヽヽハツハ オホヽヽヽ
345
誠
(
まこと
)
に
誠
(
まこと
)
に
気味
(
きみ
)
がよい
346
それに
引替
(
ひきか
)
へテムアルマ
347
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
はカルさまが
348
抜擢
(
ばつてき
)
致
(
いた
)
して
今
(
いま
)
よりは
349
改心
(
かいしん
)
次第
(
しだい
)
で
三五
(
あななひ
)
の
350
司
(
つかさ
)
のお
供
(
とも
)
に
任
(
ま
)
けてやろ
351
サア
嬉
(
うれ
)
しいか
嬉
(
うれ
)
しいか
352
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
らよ
返答
(
へんたふ
)
せよ
353
返答
(
へんたふ
)
次第
(
しだい
)
で
天
(
てん
)
となり
354
或
(
あるひ
)
は
地獄
(
ぢごく
)
と
早変
(
はやがは
)
り
355
極楽
(
ごくらく
)
地獄
(
ぢごく
)
の
境目
(
さかひめ
)
ぢや
356
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
357
祠
(
ほこら
)
の
中
(
なか
)
にひそみます
358
黄金姫
(
わうごんひめ
)
や
清照
(
きよてる
)
の
359
姫
(
ひめ
)
の
司
(
つかさ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
360
カルが
真心
(
まごころ
)
捧
(
ささ
)
げつつ
361
只今
(
ただいま
)
仲裁
(
ちうさい
)
仕
(
つかまつ
)
る
362
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
363
叶
(
かな
)
はぬならば
逸早
(
いちはや
)
く
364
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ
尻
(
しり
)
をふり
365
頭
(
かしら
)
を
下
(
さ
)
げつ
四
(
よ
)
つ
這
(
ば
)
ひに
366
三
(
さん
)
べん
廻
(
まは
)
つてワンワンと
367
吠
(
ほ
)
えて
改心
(
かいしん
)
したと
云
(
い
)
ふ
368
証拠
(
しようこ
)
を
早
(
はや
)
く
見
(
み
)
せてくれ
369
それをばシホにカルさまが
370
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
に
取持
(
とりも
)
つて
371
お
前
(
まへ
)
を
許
(
ゆる
)
し
結構
(
けつこう
)
な
372
これから
役目
(
やくめ
)
にする
程
(
ほど
)
に
373
昇
(
のぼ
)
る
身魂
(
みたま
)
と
又
(
また
)
降
(
くだ
)
る
374
身魂
(
みたま
)
とさばく
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
375
テク
公
(
こう
)
は
降
(
くだ
)
る
両人
(
りやうにん
)
は
376
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
に
昇
(
のぼ
)
るよな
377
心
(
こころ
)
一
(
ひと
)
つの
持様
(
もちやう
)
で
378
ハツキリ
区別
(
けじめ
)
がつく
程
(
ほど
)
に
379
メソメソ
吠
(
ほ
)
えずに
確
(
しつ
)
かりと
380
早
(
はや
)
く
改心
(
かいしん
)
した
上
(
うへ
)
で
381
感謝
(
かんしや
)
の
誠
(
まこと
)
を
現
(
あら
)
はせよ
382
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
383
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
384
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
体
(
からだ
)
の
身動
(
みうご
)
きもならぬままに、
385
両手
(
りやうて
)
を
合
(
あは
)
せ、
386
三人
『お
助
(
たす
)
け お
助
(
たす
)
け』
387
と
叫
(
さけ
)
んでゐる。
388
此
(
この
)
騒
(
さわ
)
ぎに
黄金姫
(
わうごんひめ
)
、
389
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まし、
390
何事
(
なにごと
)
ならむと
祠
(
ほこら
)
の
戸
(
と
)
を
開
(
ひら
)
いて
外
(
そと
)
に
現
(
あら
)
はれ
見
(
み
)
れば、
391
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
の
此
(
この
)
惨状
(
さんじやう
)
、
392
黄金
(
わうごん
)
『コレ、
393
レーブ、
394
カル
両人
(
りやうにん
)
、
395
ここにどうやら
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
が
倒
(
たふ
)
れてゐるやうだ。
396
早
(
はや
)
く
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
詫
(
わび
)
をしてやつて
下
(
くだ
)
さい。
397
先
(
ま
)
づ
鎮魂
(
ちんこん
)
を
施
(
ほどこ
)
して、
398
腰
(
こし
)
を
立
(
た
)
たしてやらねばなるまいぞや』
399
レーブ『ハイ、
400
畏
(
かしこ
)
まりました。
401
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此奴
(
こいつ
)
はテームス
峠
(
たうげ
)
を
登
(
のぼ
)
る
時
(
とき
)
、
402
清照姫
(
きよてるひめ
)
様
(
さま
)
の
馬
(
うま
)
の
口
(
くち
)
を
取
(
と
)
つて、
403
玉山峠
(
たまやまたうげ
)
の
麓
(
ふもと
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
たテクといふ
悪者
(
わるもの
)
で
厶
(
ござ
)
います。
404
外
(
ほか
)
の
二人
(
ふたり
)
は
助
(
たす
)
けてやつても
宜
(
よろ
)
しいが、
405
此奴
(
こいつ
)
丈
(
だけ
)
はみせしめの
為
(
ため
)
に
此
(
この
)
儘
(
まま
)
に
捨
(
す
)
ておき、
406
頭
(
あたま
)
から
糞
(
くそ
)
でもひつかけてやつた
方
(
はう
)
が
将来
(
しやうらい
)
の
為
(
ため
)
かも
知
(
し
)
れませぬぜ』
407
テク『モシモシ、
408
レーブさま、
409
そんな
殺生
(
せつしやう
)
なことをいはずに、
410
わしも
今日
(
けふ
)
から
改心
(
かいしん
)
しますから、
411
どうぞ
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さいな』
412
レーブ『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
此
(
この
)
レーブさまとしては
許
(
ゆる
)
すことが
出来
(
でき
)
ないワ。
413
今日
(
けふ
)
こそ
思
(
おも
)
ふ
存分
(
ぞんぶん
)
貴様
(
きさま
)
をいぢめてやるのだ。
414
貴様
(
きさま
)
もチツと
小手
(
こて
)
の
利
(
き
)
いてる
代物
(
しろもの
)
だから、
415
こんな
時
(
とき
)
に
仕返
(
しかへ
)
しをしてやらぬと、
416
千載
(
せんざい
)
一遇
(
いちぐう
)
の
機会
(
きくわい
)
を
逸
(
いつ
)
するといふものだ。
417
いつやら
俺
(
おれ
)
の
頭
(
あたま
)
をなぐりやがつて、
418
其
(
その
)
為
(
ため
)
に
俺
(
おれ
)
は
治療
(
ちれう
)
二
(
に
)
週間
(
しうかん
)
を
要
(
えう
)
する
傷
(
きず
)
を
負
(
お
)
うたのだ。
419
それでも
長
(
なが
)
いものには
巻
(
ま
)
かれ
主義
(
しゆぎ
)
で、
420
今日
(
けふ
)
迄
(
まで
)
辛抱
(
しんばう
)
して
来
(
き
)
たのだから、
421
今日
(
けふ
)
は
仇討
(
かたきう
)
ちの
時節
(
じせつ
)
が
到来
(
たうらい
)
したのだ。
422
エヘヽヽヽ、
423
神
(
かみ
)
が
仇
(
かたき
)
をうつてやるぞよと
仰有
(
おつしや
)
るのはここの
事
(
こと
)
だ、
424
こりやテク、
425
観念
(
くわんねん
)
致
(
いた
)
せ』
426
黄金
(
わうごん
)
『コレ、
427
レーブ、
428
お
前
(
まへ
)
も
無抵抗
(
むていかう
)
主義
(
しゆぎ
)
と
忍耐
(
にんたい
)
と
慈悲
(
じひ
)
との
三五教
(
あななひけう
)
へ
入
(
はい
)
つたのだから、
429
今
(
いま
)
までの
恨
(
うら
)
みはサラリと
川
(
かは
)
へ
流
(
なが
)
し
赦
(
ゆる
)
してやりなさい』
430
レーブ
『
奥様
(
おくさま
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
なれど
此奴
(
こいつ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
赦
(
ゆる
)
すことは
出来
(
でき
)
ませぬ。
431
恨
(
うら
)
み
骨髄
(
こつずゐ
)
に
徹
(
とほ
)
してる
不倶
(
ふぐ
)
戴天
(
たいてん
)
の
仇敵
(
きうてき
)
ですから、
432
どうぞ
仇
(
かたき
)
を
討
(
う
)
たして
下
(
くだ
)
さいませ』
433
黄金姫
『お
前
(
まへ
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
を
忘
(
わす
)
れたのかな』
434
レーブ
『イエイエどうして、
435
忘
(
わす
)
れてなりますものか、
436
片時
(
かたとき
)
の
間
(
ま
)
も、
437
尊
(
たふと
)
き
三五
(
あななひ
)
の
教
(
をしへ
)
は
忘却
(
ばうきやく
)
致
(
いた
)
しませぬ』
438
黄金姫
『それなら
何故
(
なぜ
)
仇
(
かたき
)
を
赦
(
ゆる
)
してやらないのか、
439
チツとお
前
(
まへ
)
の
信仰
(
しんかう
)
と、
440
矛盾
(
むじゆん
)
しては
居
(
ゐ
)
ないかなア』
441
レーブ
『
矛盾
(
むじゆん
)
か
撞着
(
どうちやく
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
442
此奴
(
こいつ
)
ばかりは
赦
(
ゆる
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
443
普通
(
ふつう
)
の
人間
(
にんげん
)
に
擲
(
なぐ
)
られたのなら
辛抱
(
しんばう
)
も
致
(
いた
)
しますが、
444
こんな
旃陀羅
(
せんだら
)
にやられたと
思
(
おも
)
へば
残念
(
ざんねん
)
で
堪
(
たま
)
りませぬ。
445
こんな
奴
(
やつ
)
に
擲
(
なぐ
)
られて
其
(
その
)
儘
(
まま
)
にしておいては
出世
(
しゆつせ
)
の
時節
(
じせつ
)
がありませぬから、
446
どうぞ
頭
(
あたま
)
を
一
(
ひと
)
つカチ
割
(
わ
)
らせて
下
(
くだ
)
さいませ。
447
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つてもこれ
丈
(
だけ
)
は
思
(
おも
)
ひとまる
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬ』
448
と
手頃
(
てごろ
)
の
石
(
いし
)
を
拾
(
ひろ
)
ひ、
449
そこに
倒
(
たふ
)
れて
居
(
ゐ
)
るテクの
頭
(
あたま
)
を
打割
(
うちわ
)
らうとするのを、
450
黄金姫
(
わうごんひめ
)
は
大喝
(
たいかつ
)
一声
(
いつせい
)
、
451
黄金姫
『レーブ、
452
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
てツ。
453
これ
程
(
ほど
)
事
(
こと
)
を
分
(
わ
)
けて
申
(
まを
)
すのに、
454
女
(
をんな
)
宣伝使
(
せんでんし
)
と
侮
(
あなど
)
つて、
455
吾
(
わが
)
言
(
げん
)
を
用
(
もち
)
ひないのか。
456
只今
(
ただいま
)
限
(
かぎ
)
り
免職
(
めんしよく
)
を
致
(
いた
)
すから、
457
さう
思
(
おも
)
うたがよからうぞや』
458
レーブは
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
きながら、
459
レーブ
『あゝ
又
(
また
)
免職
(
めんしよく
)
が
伝染
(
でんせん
)
したと
見
(
み
)
えますわい。
460
エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
461
それなら
奥
(
おく
)
さまの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
に
従
(
したが
)
ひませう』
462
テク『コレ、
463
レーブ、
464
さうしたがよいぞや。
465
人
(
ひと
)
を
免職
(
めんしよく
)
させると、
466
又
(
また
)
自分
(
じぶん
)
が
免職
(
めんしよく
)
になるぞや』
467
レーブ『エヽ
貴様
(
きさま
)
まで
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするない、
468
アタ
忌々
(
いまいま
)
しい』
469
黄金
(
わうごん
)
『オホヽヽヽ』
470
清照
(
きよてる
)
『ウフヽヽヽあのマア、
471
レーブさまの
悄気
(
せうげ
)
た
顔
(
かほ
)
わいのう』
472
カル『エツヘヽヽヽ、
473
コリヤ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い』
474
黄金
(
わうごん
)
『
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
共
(
ども
)
、
475
黄金姫
(
わうごんひめ
)
が
赦
(
ゆる
)
すから、
476
何処
(
どこ
)
へなと
勝手
(
かつて
)
に
行
(
い
)
つたがよからう。
477
今度
(
こんど
)
は
決
(
けつ
)
してこんな
割
(
わり
)
のわるい
商売
(
しやうばい
)
は
致
(
いた
)
す
事
(
こと
)
はなりませぬぞ』
478
三
(
さん
)
人
(
にん
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』
479
と
涙声
(
なみだごゑ
)
に
感謝
(
かんしや
)
してゐる。
480
不思議
(
ふしぎ
)
や
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
腰
(
こし
)
は
忽
(
たちま
)
ち
旧
(
もと
)
に
復
(
ふく
)
し、
481
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
匆々
(
さうさう
)
に
此
(
この
)
森
(
もり
)
を
後
(
あと
)
に
逃
(
に
)
ぐるが
如
(
ごと
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
482
黄金姫
(
わうごんひめ
)
一行
(
いつかう
)
は
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるを
待
(
ま
)
ち、
483
悠々
(
いういう
)
として
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立出
(
たちい
)
で、
484
イルナの
国
(
くに
)
の
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
485
(
大正一一・一一・五
旧九・一七
松村真澄
録)
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(B)
(N)
余白歌 >>>
霊界物語
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第40巻
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』発刊!
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【20 入那の森|第40巻(卯の巻)|霊界物語/rm4020】
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