霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 (ぬま)(つき)〔一一〇二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻 篇:第4篇 関風沼月 よみ(新仮名遣い):かんぷうしょうげつ
章:第18章 沼の月 よみ(新仮名遣い):ぬまのつき 通し章番号:1102
口述日:1922(大正11)年11月04日(旧09月16日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
満月が葵の沼を照らす中、黄金姫と清照姫の二人は沼のほとりを通りかかった。二人は月を題材に道歌を交わす。
そこへ、沼に映った月を砕き、バサバサと水音を立てて八人の黒い影が沼を渡ってくる。これは、照国別たちから逃げてきたバラモン教徒たちであった。
黄金姫と清照姫は八人の前に立ち現われて、自ら蜈蚣姫だと名乗り立ちはだかった。母娘二人は、男たちをつかんで沼に投げ返した。この勢いに八人は沼を逆戻りしてまた照国別たちの所に逃げていく。
八人はカルとレーブに赦しを乞うが、カルとレーブは八人を片っ端から沼へ投げ落とした。八人は浅い沼を渡って逃げていく。
春公は、八人の会話から沼の反対側に黄金姫と清照姫がいるのではないかと照国別に諮り、一同は沼を渡って母娘を探しに出た。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-12-04 11:16:57 OBC :rm4018
愛善世界社版:237頁 八幡書店版:第7輯 505頁 修補版: 校定版:245頁 普及版:110頁 初版: ページ備考:
001 十五夜(じふごや)満月(まんげつ)(みづ)(きよ)()なり(ひろ)(あふひ)(ぬま)()いてゐる。002(そら)には円満(ゑんまん)清朗(せいろう)(つき)003(いけ)(おも)にも(また)月影(つきかげ)をうつして、004小波(さざなみ)にゆらいでゐる。005そこを(とほ)りかかつた二人(ふたり)宣伝使(せんでんし)があつた。006これは黄金姫(わうごんひめ)007清照姫(きよてるひめ)二人(ふたり)である。
008黄金(わうごん)今日(けふ)()機嫌(きげん)のよいお(つき)さまの(おん)かむばせ、009まるで黄金色(わうごんいろ)のやうだ。010(ひと)(この)(いけ)(ほとり)(つき)賞翫(しやうぐわん)しながら休息(きうそく)(いた)しませうか』
011清照(きよてる)『お()アさま。012月様(つきさま)(いろ)黄金姫(わうごんひめ)(ござ)いますなア、013そして(きよ)()(かがや)(たま)(ところ)清照姫(きよてるひめ)といつてもいいやうですなア。014さうするとヤツパリ貴方(あなた)(たい)(わたし)(よう)といふやうなもの、015(いち)(にち)(はや)(この)娑婆(しやば)世界(せかい)をして黄金(わうごん)世界(せかい)(くわ)せしめ、016(きよ)()(わた)三五(あななひ)(をしへ)天下(てんか)(かがや)かしたきもので(ござ)います。017(この)(ぬま)(なん)といふ(ぬま)(ござ)いませうか』
018黄金姫(なん)でも葵沼(あふひぬま)とかいふ(こと)だ。019青空(あをぞら)(うつ)つて、020(ほし)(かげ)さへ(うか)んでゐる。021(なん)ともいへぬ景色(けしき)だ。022(ひと)つここで(うた)でもよみませうか』
023清照姫『ハイ(よろ)しからう、024()アさまから(ひと)()して(くだ)さい、025(わたし)(しも)()をつけますから』
026黄金(わうごん)……大空(おほぞら)水底(みなそこ)までも葵沼(あふひぬま)
027清照(きよてる)………黄金色(わうごんいろ)(つき)(かがや)く。
028黄金姫 黄金(わうごん)(たま)姿(すがた)(あめ)(つち)
029清照姫 (かがや)きわたり(きよ)()りぬる。
030黄金姫 (きよ)くてる(つき)(ひかり)(ひと)しほに
031清照姫 (ぬま)(うつ)りていとどさやけし。
032黄金姫 (つき)うかび(ほし)さへ(うか)(この)(ぬま)
033清照姫 高天原(たかあまはら)姿(すがた)なるらむ。
034黄金姫 三五(あななひ)(つき)(をしへ)をまつぶさに
035清照姫 (うへ)(した)とに()らしゆかなむ。
036黄金姫 ()りわたる(この)池水(いけみづ)(なが)むれば
037清照姫 雲井(くもゐ)(そら)にまがふべらなり。
038黄金姫 (かぜ)さへも()ぎわたりたる(いけ)()
039清照姫 黄金(わうごん)(つき)(きよ)()るなり。
040黄金姫 (もち)()(つき)姿(すがた)(なが)むれば
041清照姫 心持(こころもち)よき(ぬま)(おも)かな。
042黄金姫 (ぬま)(つき)(なみ)(くだ)けてなみなみと
043清照姫 (うご)姿(すがた)()れば()かぬかも。
044黄金姫 今宵(こよひ)こそ(ぬま)(ほとり)熟睡(うまゐ)して
045清照姫 身魂(みたま)(つか)(やす)めむとぞ(おも)ふ。
046黄金姫 (わが)(たま)(いま)()(つき)(ごと)くなり
047清照姫 (くだ)けむとしていかな(くだ)けず。
048黄金姫 大空(おほぞら)()(わた)りたる月影(つきかげ)
049清照姫 清照姫(きよてるひめ)姿(すがた)ならまし。
050黄金姫 (きよ)()(つき)姿(すがた)素盞嗚(すさのを)
051清照姫 (かみ)(みこと)(ひかり)なるらむ。
052黄金姫 月読(つきよみ)(かみ)姿(すがた)瑞御霊(みづみたま)
053清照姫 (ぬま)(そこ)まで()りわたる(かな)
054黄金(わうごん)『オホヽヽヽ(きよ)さま、055中々(なかなか)上手(じやうづ)ですこと、056黄金姫(わうごんひめ)如何(どう)やら(うた)(たね)()れました』
057清照(きよてる)『お()アさま、058それなら(わたくし)(はじ)めますから、059どうぞ(あと)()をつけて(くだ)さい』
060黄金(わうごん)『それも面白(おもしろ)からう、061やつて()なさい』
062清照(きよてる)……われは(いま)(あふひ)(ぬま)(つき)()
063黄金(わうごん)………(つき)(をしへ)(ひら)(みち)にて。
064清照姫 (つき)()れば(この)()(なか)(たの)しけれ
065黄金姫 みちかけ(しげ)(ひと)()なれど。
066清照姫 (きよ)()(つき)(こころ)をあらはめや
067黄金姫 (あめ)(した)をば()らし()()は。
068清照姫 (この)(ぬま)(ぬし)(さち)(おほ)からむ
069黄金姫 ()()(きよ)(つき)(なが)めて。
070清照姫 ()(ひかり)打仰(うちあふ)(たび)()(くら)
071黄金姫 (つき)のみ(ひと)(まなこ)(やしな)ふ。
072清照姫 ()(ひかり)(くま)なく()らす()(なか)
073黄金姫 (また)もや(つき)(ひかり)めでたし。
074清照姫 ()(つき)世人(よびと)(ため)大空(おほぞら)
075黄金姫 (かがや)(たま)(かみ)御恵(みめぐみ)
076清照姫 有難(ありがた)三五(あななひ)(つき)御教(みをしへ)
077黄金姫 (あさひ)(ごと)()りわたる()は。
078清照姫 ()(つき)波間(なみま)(うか)葵沼(あふひぬま)
079黄金姫 (こころ)(あか)きわれは(なが)めつ。
080清照姫 (おや)()(あふひ)(ぬま)打眺(うちなが)
081黄金姫 (つき)(ひかり)をめづる今日(けふ)かな。
082清照姫 バラモンの(かみ)(をしへ)晦日(つもごり)
083黄金姫 暗夜(やみよ)(ごと)姿(すがた)なるらむ。
084清照姫 (やみ)()()らし(きよ)むる黄金(わうごん)
085黄金姫 (つき)(ひかり)雄々(をを)しかりけり。
086清照姫 晦日(つもごり)大空(おほぞら)(とほ)(なが)むれば
087黄金姫 大黒主(おほくろぬし)暗夜(やみよ)なりけり。
088清照姫 鬼熊(おにくま)(わけ)(みこと)(たましひ)
089黄金姫 (そら)()(くも)(つつ)まれし(つき)
090清照姫 大空(おほぞら)もやがてハルナの神館(かむやかた)
091黄金姫 三五(あななひ)(つき)(きよ)()るらむ。
092清照(きよてる)『オホヽヽヽ(わたし)もこれで小出(こだ)しが()れました。093(また)(ひま)(とき)094倉庫(さうこ)よりドツサリ()してお()にかけませう』
095黄金(わうごん)『オホヽヽヽヽ(きよ)さま、096(まへ)さまも随分(ずゐぶん)杢助(もくすけ)さまの(そば)()たおかげで、097滑稽(こつけい)上手(じやうづ)になりましたな』
098清照(きよてる)『コツケコと東雲(しののめ)つぐる(とり)(こゑ)
099やがて()()(かみ)(のぼ)らむ』
100黄金(わうごん)『オホヽヽ早速(さつそく)滑稽(こつけい)(はじ)まつた。101ドレ(この)(はは)(ひと)(たび)(つか)れを(なぐさ)むる(ため)102駄句(だく)つて()ませう。
103葵沼(あふひぬま)(あか)(こころ)神司(かむづかさ)
104(しろ)三五(あななひ)(つき)()(かな)
105黄金(わうごん)(ひめ)(つかさ)(あら)はれて
106(あふひ)(ぬま)のわれた(つき)みる』
107清照(きよてる)『われた(つき)そりや(かあ)さまの(こと)ですよ
108(わたし)(つき)はまん(まる)(つき)
109黄金(わうごん)『オツホヽヽヽ()にも(あし)にも()はぬお(ぢやう)さまだなア』
110清照姫『われぬ(つき)とは()ふものの友彦(ともひこ)
111(なみ)(くだ)けし(はん)われの(つき)
112黄金姫『うまうまと(はは)(まへ)にて(うそ)をつき
113つき(とほ)さむとするぞ可笑(をか)しき』
114清照姫(かた)われの(つき)さへ(もち)()となれば
115どこもかけない黄金(わうごん)(つき)
116黄金(わうごん)『オホヽヽヽヽ(あま)月々(つきつき)()うてると、117(つき)がひつくり(かへ)つて、118キズが()()ます。119モウいい加減(かげん)(うた)材料(ざいれう)つきだ。120サアサアここでゆつくり()ツキませう』
121清照(きよてる)(わたし)ツキ()ひにお(そば)ツキ()うて、122()ツキませう。123オホヽヽヽ』
124(わら)ひながら、125(つき)(ひかり)()びつつ、126(みの)()いて(ぬま)(ほとり)たわいもなく(よこた)はる。
127 ()かる(ところ)へ、128(ぬま)(うか)んだ(つき)(くだ)いて、129バサバサバサと(なみ)蹴破(けやぶ)り、130(はし)つて()七八(しちはち)(にん)(くろ)(かげ)
131エル『あゝあ、132ドテライ()()うた。133蜈蚣姫(むかでひめ)134小糸姫(こいとひめ)両人(りやうにん)に、135テツキリと玉山峠(たまやまたうげ)南坂(みなみざか)出会(でつくは)し、136カルの大将(たいしやう)命令(めいれい)で、137遮二(しやに)無二(むに)()めかけた(ところ)138()もなく谷底(たにそこ)()つてほられ、139気絶(きぜつ)して一途(いちづ)(かは)まで(おに)()きゆかれ(こま)つてゐる(ところ)へ、140三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)がやつて()やがつて、141(なん)とも()れぬ甘露水(かんろすゐ)()ませて()れやがつたと(おも)へば、142谷底(たにそこ)にブツ(たふ)れて(ゆめ)()てゐたのであつた。143本当(ほんたう)にこはい(ゆめ)だつたが、144()がついて()ると馬鹿(ばか)らしい、145それにも(かかは)らず、146カルの大将(たいしやう)()147安眠中(あんみんちう)(おこ)されて、148(いのち)()恩人(おんじん)だなどと、149()追従(つゐしよう)百万(ひやくまん)陀羅(だら)(なら)べ、150胸糞(むねくそ)(わる)くつてたまらない、151とうと彼奴(あいつ)三五教(あななひけう)沈没(ちんぼつ)して(しま)ひやがつた、152(ねこ)()(たま)(ほど)よく()(かは)(やつ)だ。153(おれ)(たち)はどこ(まで)初心(しよしん)(へん)ぜず、154大黒主(おほくろぬしの)(かみ)(さま)(ため)身命(しんめい)(ささ)げたのだから、155あんな柔弱(にうじやく)(こと)出来(でき)ない、156なあキル(こう)157本当(ほんたう)(つま)らぬ腰弱(こしよわ)ぢやないか』
158キル『オヽさうだ、159おれも(あま)りケツ(たい)(わる)くて、160あんな宣伝使(せんでんし)に………ハイハイおかげで(いのち)(たす)けて(もら)ひました………などと、161馬鹿(ばか)らしい、162(その)()(のが)れにお世辞(せじ)()つてやつたが、163(なん)だか()たぬ博奕(ばくち)()けた(やう)で、164気色(きしよく)(わる)くて(たま)らない。165(ひと)つは仇討(あだうち)(ため)166(ひと)つは大黒主(おほくろぬし)(さま)(まへ)功名(こうみやう)()てる(ため)167(みな)(やつ)寝息(ねいき)(かんが)へて、168ソツと宣伝使(せんでんし)(こし)(つな)をつけ、169(いつ)ぺんにグイと引張(ひつぱ)つて(のど)のしまる仕掛(しかけ)をしておいた(ところ)170宣伝使(せんでんし)(やつ)171大変(たいへん)古狸(ふるだぬき)だから、172寝真似(ねまね)をしてをつたと()えて、173いつの()にか魔法(まはふ)使(つか)ひ、174あべこべに(おれ)(たち)をフン(じば)り、175レーブに(つな)()かしやがつた(とき)(くる)しさ、176今度(こんど)こそ本当(ほんたう)幽界(いうかい)旅行(りよかう)をせねばならぬかと心配(しんぱい)したよ。177一体(いつたい)貴様(きさま)(たち)()()かぬ(やつ)だから、178(おほ)きな(こゑ)()しやがつて………(いのち)()恩人(おんじん)(おん)(あだ)(かへ)すよな(こと)をしたら神罰(しんばつ)(あた)るなんて(ぬか)しやがるものだから、179とうとう計略(けいりやく)(はづ)れ、180虻蜂取(あぶはちと)らずになつて(しま)つたぢやないか。181今度(こんど)から()をつけぬと、182どんな()()はされるか()れやしないぞ。183本当(ほんたう)馬鹿(ばか)だなア。184(いま)にも蜈蚣姫(むかでひめ)小糸姫(こいとひめ)(この)(ぬま)迂回(うくわい)して、185ここに()るに(ちがひ)ないから、186今度(こんど)はぬかつちやならないぞ。187おれ(たち)貴様(きさま)(たち)大黒主(おほくろぬし)(さま)のおかげで、188女房(にようぼう)()安楽(あんらく)(やしな)うてゐるのぢやないか。189よう(かんが)へて()い、190果物(くだもの)ばかり()つて(いのち)をつなぐ(わけ)にもゆくまい。191大黒主(おほくろぬし)(さま)から()扶持(ふち)(いただ)かなかつたら、192家内中(かないぢう)(みな)かつゑて()なねばならない。193それ(ほど)大恩(たいおん)(ふか)()主人(しゆじん)(さま)(こと)打忘(うちわす)れ、194たつた自分(じぶん)一人(ひとり)(いのち)(たす)けてくれた宣伝使(せんでんし)が、195ナニそれ(ほど)有難(ありがた)いか、196(しか)安眠(あんみん)してゐる(ところ)(おこ)されたと()つていい(やう)なものだ。197大勢(おほぜい)(いのち)常住(じやうぢう)不断(ふだん)につながして(くだ)さる大黒主(おほくろぬし)(さま)に、198如何(どう)して()へる(こと)出来(でき)ようか。199(みな)(やつ)200さうぢやないか』
201一同(いちどう)『さう(こと)()けて説明(せつめい)して(もら)へば、202大黒主(おほくろぬし)さまは有難(ありがた)いなア。203(この)御恩(ごおん)(むく)ゆるには如何(どう)しても蜈蚣姫(むかでひめ)204小糸姫(こいとひめ)二人(ふたり)(さが)して()(かへ)るのが第一(だいいち)()恩報(おんはう)じだ。205最早(もはや)将軍(しやうぐん)はイソ(やかた)進軍(しんぐん)され、206(とほ)()かれたに(ちがひ)ないから、207(おれ)(たち)到底(たうてい)本隊(ほんたい)をはなれて、208(この)小部隊(せうぶたい)では険呑(けんのん)(すす)(こと)出来(でき)ないから、209せめては母娘(おやこ)二人(ふたり)行方(ゆくへ)(さが)して、210彼奴(あいつ)捕縛(ほばく)して凱旋(がいせん)する(はう)が、211何程(なんぼ)手柄(てがら)になるか()れたものぢやないぞ。212(あさ)(ぬま)ではあるが、213時々(ときどき)泥深(どろぶか)(ところ)があつて、214睾丸(きんたま)(ふんどし)もズクタンボー但馬地方の方言で「ずぶ濡れ」を意味する「ずくたんぼ」のことだと思われる。になりよつた。215(なん)とかして此奴(こいつ)(はや)(かは)かさぬと、216気分(きぶん)(わる)くて仕方(しかた)ない。217(つき)()つてゐるが、218彼奴(あいつ)はあつてもなうてもよい(やつ)だから、219(おれ)(ふんどし)(ひと)つよう(かわ)かす(ちから)()つてゐやがらせぬワイ。220(その)(こと)(おも)へば、221日輪(にちりん)さまはエライものだなア。222三五教(あななひけう)(つき)(をしへ)だとか(ぬか)して()るが、223(よる)守護(しゆご)だから、224サツパリ駄目(だめ)だ。225サア(みな)(やつ)226ここで(ひと)一服(いつぷく)(いた)さうかい』
227 黄金姫(わうごんひめ)(くさ)(なか)から、
228黄金姫『われこそは一途(いちづ)(かは)鬼婆(おにばば)だぞよ、229(その)(はう)此処(ここ)(あふひ)(ぬま)(おも)うて()るか、230ここは冥途(めいど)関所(せきしよ)だ。231サア(はや)(その)(ころも)()げ』
232キル『オイ(みな)(やつ)233ヤツパリ此奴(こいつ)(ゆめ)かも()れぬぞ。234宣伝使(せんでんし)(たす)けよつたと(おも)うたのは(うそ)だつたかいな。235一途(いちづ)(かは)のヤツパリここは連続(れんぞく)だ。236エヽもう()うなつてはヤケクソだ。237どつかここらの(くさ)(なか)脱衣婆(だついばば)(こゑ)がして()た。238サア突貫(とつくわん)々々(とつくわん)
239号令(がうれい)する。240黄金姫(わうごんひめ)241清照姫(きよてるひめ)(くさ)()けて(はち)(にん)(まへ)にスツクと立現(たちあら)はれ、
242黄金(わうごん)『バラモン(けう)悪人(あくにん)(ども)243サア(これ)から蜈蚣姫(むかでひめ)武勇(ぶゆう)(ため)(どき)244覚悟(かくご)いたせ』
245キル『ナヽ(なん)だあ、246蜈蚣姫(むかでひめ)だ、247(うま)(こと)(ぬか)すない、248一途(いちづ)(かは)星々婆(ほしほしばば)()249ガキも人数(にんず)だ。250(はち)(にん)一人(ひとり)では(かな)ふまい。251サア突貫(とつくわん)々々(とつくわん)
252清照(きよてる)(わらは)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)小糸姫(こいとひめ)だ。253バラモン(けう)悪人(あくにん)(ども)254一人(ひとり)(のこ)らず冥途(めいど)旅立(たびだち)をさしてやらう。255サア覚悟(かくご)はよいか』
256キル『ヤア此奴(こいつ)(また)(わか)脱衣婆(だついばば)アだ。257コリヤ両人(りやうにん)258蜈蚣姫(むかでひめ)小糸姫(こいとひめ)()をかたつても駄目(だめ)だぞ。259()()()ツ』
260といひながら、261(はち)(にん)二人(ふたり)(むか)つて武者(むしや)()りつくを、
262『エヽ面倒(めんだう)
263母娘(おやこ)二人(ふたり)首筋(くびすぢ)つかんで(あふひ)(ぬま)真中(まんなか)へ、264一人(ひとり)(のこ)らず、265バサリバサリと()()んだ。266(はち)(にん)(この)(いきほひ)辟易(へきえき)し、267一生(いつしやう)懸命(けんめい)(ふたた)(ぬま)真中(まんなか)をバサバサバサと(きた)()して()げて()く。
268 (はち)(にん)(やつ)(おどろ)きの(あま)り、269照国別(てるくにわけ)(やす)んでゐる(ところ)へ、270以前(いぜん)(こは)さを(わす)れて(また)もやバサバサバサと(いのち)からがら(あが)つて()た。271レーブは(この)姿(すがた)()て、
272レーブ『アハヽヽヽ、273コリヤ()つの(かへる)274如何(どう)したのだ。275いかにカヘルだと()つて、276(ふたた)(もと)(ところ)()げカヘル(やつ)があるかい』
277キル『ヤア…………此奴(こいつ)アしまつた、278(あま)りビツクリして(わす)れてゐた。279前門(ぜんもん)(おほかみ)280後門(こうもん)(とら)だ。281オイ、282レーブ、283こらへてくれ。284(むか)ふへ(わた)ると蜈蚣姫(むかでひめ)285小糸姫(こいとひめ)()をかたつて(ばば)(むすめ)がヒユードロドロと()やがるなり、286こつちへ()れば(また)(この)(とほ)り、287進退(しんたい)これ(きは)まるだ。288モウ改心(かいしん)するから(ゆる)してくれ。289(たの)(たの)む』
290レーブ『たとへ宣伝使(せんでんし)がお(ゆる)しになつても、291貴様(きさま)(やう)不都合(ふつがふ)(やつ)(この)レーブが(ゆる)さぬのだ。292オイ、293カル、294貴様(きさま)(ひと)手伝(てつだ)つてくれ。295この八匹(はつぴき)(かへる)(もと)のドブ(いけ)突込(つつこ)んでやるのだから』
296カル『ヨシ()た』
297とカルは立上(たちあが)り、298()(つば)して、299(かた)つぱしからドブンドブンと(ぬま)()がけて投込(なげこ)んだ。300(はち)(にん)(また)もやバサバサバサと(あさ)(ぬま)(いのち)カラガラ(みなみ)()して()げて()く。
301春公(はるこう)『モシ宣伝使(せんでんし)(さま)302ヒヨツとしたら、303黄金姫(わうごんひめ)(さま)304清照姫(きよてるひめ)(さま)(この)(ぬま)向方(むかふ)あたりにお(やす)みになつてるのかも()れませぬぜ』
305照国(てるくに)『いかにもさうかも()れない、306(ひと)(この)(ぬま)(わた)つて、307()つついて(しら)べてみよう。308サア一同(いちどう)用意(ようい)だ』
309()ひながら、310(はや)くも照国別(てるくにわけ)(すそ)をからげ、311(あさ)(ぬま)をバサバサと(あゆ)()した。312(てる)313(うめ)314(はる)315レーブ、316カルの一行(いつかう)照国別(てるくにわけ)(あと)(したが)ひ、317(つき)()(わた)(ぬま)(なか)をバサリバサリと、318(なみ)(ゑん)(ゑが)きながら(いそ)()く。
319大正一一・一一・四 旧九・一六 松村真澄録)
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