霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。実験用サイトサブスク
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一七章 天幽窟(てんいうくつ)〔一一〇一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第40巻 舎身活躍 卯の巻 篇:第4篇 関風沼月 よみ(新仮名遣い):かんぷうしょうげつ
章:第17章 天幽窟 よみ(新仮名遣い):てんゆうくつ 通し章番号:1101
口述日:1922(大正11)年11月04日(旧09月16日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
テームス峠を下った一行はライオン川の川辺に着いた。春公は、川をしばらく下ったところに人に知られていない浅瀬があるのでそこを渡ろうと提案した。浅瀬に向かう途中、一頭の馬を見つけ、春公は宣伝使一行にならって馬に乗ることにした。
川を渡ると、春公は兄の岩彦がヤッコスという名でバラモン教に潜入していたころに聞いた評判話を始めた。ヤッコスというバラモン教の新入りが、ライオン川で溺れていた唐獅子の子を助け、それ以来ヤッコスが危難に陥るたびに獅子が現れて助けるという。
春公は、テームス峠を獅子に乗った文殊菩薩が走り抜けたという噂も語り、自分の兄の岩彦は文殊菩薩のようだと感嘆した。
一行が玉山峠の頂上近くにさしかかると、狼の群れが現れ、その中の大きな一頭が春公の裾を加えて引き留めた。照国別は、狼は義獣だから何か変事を知らせてくれるのだろうと、着いていくことにした。
狼は一行を谷川に案内した。そこには十人ばかりの人間が人事不省になって横たわっていた。照国別は従者たちに介抱を命じると、天津祝詞を奏上して魂呼びを始めた。
カル、レーブを始めバラモン教徒たちは息を吹き返し、宣伝使たちに感謝した。そして照国別の一行に加わって大原野を行くことになった。行き当たった沼(葵の沼)で一夜を明かすことになる。
一行が眠りに就くと、スガル、チルという二人の男は宣伝使一行とレーブとカルを縄で縛ってしまった。バラモン教の鬼春別将軍に差し出し、手柄を立てようという魂胆でひそひそと相談を始めた。
しかし照国別はレーブとカル以外は心から三五教に改心したわけではなかったことを見抜いており、先手を打っていたレーブが縄を引っ張ると、逆にバラモン教の八人が縛られてしまった。
照国別がレーブに命じて八人の縄を解くと、八人は沼に転がり落ちながら一生懸命に逃げ出してしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-12-04 12:04:31 OBC :rm4017
愛善世界社版:223頁 八幡書店版:第7輯 499頁 修補版: 校定版:231頁 普及版:102頁 初版: ページ備考:
001 一行(いつかう)()(にん)(やうや)くにしてテームス(たうげ)(くだ)り、002ライオン(がは)川辺(かはべ)()いた。
003春公(はるこう)大分(だいぶ)(あし)(つか)れました。004この(まま)川中(かはなか)(わた)ると層一層(そういつそう)(あし)(くたび)れるものです。005貴方(あなた)(がた)(うま)があるから差支(さしつかへ)ないと()ふやうなものの、006矢張(やはり)(うま)だつて(つか)れてゐませう。007(わたし)最前(さいぜん)(うた)つた(とほ)り、008(すこ)(まは)(みち)になりますが、009これから十四五(じふしご)(ちやう)(しも)(くだ)ると川幅(かははば)(ひろ)()(ゆる)浅瀬(あさせ)(ござ)います。010それはバラモン(けう)連中(れんちう)でもあまり()らない秘密(ひみつ)場所(ばしよ)です。011如何(どう)でせう、012それから(わた)れば大変(たいへん)無難(ぶなん)ですが』
013照国(てるくに)『さうだのう、014安全(あんぜん)(わた)()があるのに危険(きけん)(をか)して急流(きふりう)(わた)必要(ひつえう)もあるまい。015それなら(すこ)迂回(うくわい)でも下流(かりう)(わた)りませう』
016 かく(はな)(ところ)へ、017バラモン(けう)神司(かむづかさ)()()てた一匹(いつぴき)(うま)018道端(みちばた)(くさ)()(ふさ)いでむしりながら、019ノソリノソリとやつて()る。
020春公(はるこう)『ヤア(なん)(かみ)(さま)()ふお(かた)親切(しんせつ)なものだなア。021(さん)(にん)(こま)022自分(じぶん)親譲(おやゆづ)りの膝栗毛(ひざくりげ)てくつてお(とも)をして()たが、023(をり)よく一匹(いつぴき)(こま)()ちてゐる。024これで(いよいよ)四馬(しめ)(また)がると()ふものだ。025宣伝使(せんでんし)(さま)026()つても(よろ)しいか』
027照国(てるくに)()ちて()(うま)だから(べつ)(ぬす)んだものにもなるまい。028もし(おと)(ぬし)(わか)つたら(その)(とき)(かへ)してやればよいから遠慮(ゑんりよ)なしに()つたがよからう』
029 (この)言葉(ことば)春公(はるこう)(いさ)()ち、030(うま)(そば)(ちか)づき首筋(くびすぢ)()でながら、
031春公『オイ馬公(うまこう)032()苦労(くらう)だが(たの)むよ。033今日(けふ)から(おれ)がお(まへ)(かり)主人(しゆじん)だ』
034()ひながらヒラリと()()つた。035比較(ひかく)(てき)おとなしき(うま)稀代(きだい)尤物(いうぶつ)である。036これはバラモン(けう)釘彦(くぎひこ)()つて()名馬(めいば)であつた。037いかなる激流(げきりう)大海(たいかい)(すこ)しも(くつ)せず(わた)()くと()(やつ)である。038ここに()(にん)(くつわ)(なら)べシヤンコ シヤンコと足並(あしなみ)(そろ)へて下流(かりう)浅瀬(あさせ)到着(たうちやく)した。039(みづ)(ふか)さは四五寸(しごすん)から(いつ)(しやく)(まで)(くらゐ)浅瀬(あさせ)である。040(その)(かは)りに川幅(かははば)(ほか)場所(ばしよ)(くら)べて三倍(さんばい)ばかりも展開(てんかい)して()る。041()(にん)悠々(いういう)として四方山(よもやま)(はなし)(ふけ)りながら四馬(しめ)(くび)一緒(いつしよ)(なら)べて(わた)()く。
042春公(はるこう)宣伝使(せんでんし)(さま)043バラモン(けう)清春山(きよはるやま)岩窟(がんくつ)(つか)へて()たヤツコスと()(をとこ)(わたし)(あに)岩彦(いはひこ)だと()きましたが、044(この)(かは)(わた)るについて(この)ヤツコスに(くわん)面白(おもしろ)(はなし)(ござ)いますから(はな)して()ませうか』
045照国(てるくに)何卒(どうぞ)(はな)して(くだ)さい。046随分(ずゐぶん)珍談(ちんだん)が……あの(をとこ)(こと)だからあるだらうなア』
047春公(わたし)もヤツコスが(あに)ぢやと()いて(この)(かは)一入(ひとしほ)(ゆか)しうなつて()ました。048(この)(かは)にライオン(がは)()のついたのは(この)川上(かはかみ)天幽窟(てんいうくつ)()樹木(じゆもく)(しげ)つた人間(にんげん)()りつかれない(だい)秘密境(ひみつきやう)があつて、049そこにはライオンが幾百千(いくひやくせん)とも(かぎ)りなく棲居(すまゐ)(いた)して()ります。050それでその天幽窟(てんいうくつ)一名(いちめい)ライオン(くつ)とも(とな)へ、051(したが)つて(この)(かは)をライオン(がは)名付(なづ)けられたさうです。052昨年(さくねん)(はる)(ころ)053ヤツコスと()(をとこ)(この)(かは)(わた)(とき)054川上(かはかみ)()つた唐獅子(からじし)()二匹(にひき)(かは)(あそ)びに()て、055(あやま)つて激流(げきりう)()()りブカブカと(なが)れて()ました。056そこをヤツコスが(とほ)りかかり、057(おぼ)()なむとする獅子(しし)()二匹(にひき)ながら取掴(とつつか)まへて川堤(かはどて)(すく)ひあげ、058色々(いろいろ)介抱(かいほう)して(みづ)()かせ、059背中(せなか)()うて天幽窟(てんいうくつ)まで大胆(だいたん)至極(しごく)()()み、060獅子(しし)巣窟(さうくつ)(おく)(とど)けてやつたと()(はなし)(ござ)います。061それから(その)ヤツコスには獅子(しし)守護(しゆご)をしてヤツコスの()危難(きなん)(せま)つた(とき)は、062何処(どこ)ともなしにライオンが沢山(たくさん)(あら)はれて()て、063危急(ききふ)(すく)ふと()(もつぱ)評判(ひやうばん)……いや事実(じじつ)ださうで(ござ)います。064それを()きこんで、065清春山(きよはるやま)大足別(おほだるわけ)がこんな(をとこ)(かか)へて()いたら、066まさかの(とき)大丈夫(だいぢやうぶ)だと(おも)ひ、067自分(じぶん)家来(けらい)にしたと()(こと)ですが、068(その)ヤツコスが(はた)して(あに)岩彦(いはひこ)ならば本当(ほんたう)(うれ)しい(こと)(ござ)います。069昨日(きのふ)文珠(もんじゆ)師利(しり)菩薩(ぼさつ)獅子(しし)()つてテームス(たうげ)関所(せきしよ)()えたと()(こと)()きましたが、070丁度(ちやうど)(わたし)(あに)文珠(もんじゆ)菩薩(ぼさつ)(やう)(をとこ)(ござ)いますなア』
071照国別(なん)(めづ)らしい(はなし)()いた。072ライオン(がは)でライオンの(はなし)()くとは(これ)(なに)かの神界(しんかい)摂理(せつり)だらう』
073 ()(はな)しつつ(やうや)くにして(なん)なく(ひろ)(かは)(むか)(ぎし)(わた)り、074(ふたた)(みち)十四五(じふしご)(ちやう)ばかり(きた)にとり、075玉山峠(たまやまたうげ)(ふもと)にさしかかり、076ハイハイハイと秋風(あきかぜ)()かれながら頂上(ちやうじやう)さして(のぼ)()く。
077 一行(いつかう)()(にん)は、078玉山峠(たまやまたうげ)頂上(ちやうじやう)から(うま)()()り、079各自(めいめい)(うま)(くち)をとりながらハアハア ハイハイと注意(ちうい)(こま)(うなが)しつつ七八分(しちはちぶ)ばかり(くだ)つて()た。080(にはか)一匹(いつぴき)のかなり(おほ)きな(おほかみ)(あら)はれ(きた)り、081先頭(せんとう)()てる春公(はるこう)(すそ)(くは)へて無理(むり)やりに()つぱらうとする(その)挙動(きよどう)(あや)しさ。
082春公(はるこう)『こん畜生(ちくしやう)083人間(にんげん)(さま)(すそ)()ひやがつて貴様(きさま)(おほかみ)ぢやないか。084こりや畜生(ちくしやう)085(おれ)()はうと(おも)つても貴様(きさま)()には()はないぞ。086(この)(はう)さまは勿体(もつたい)なくも(この)()をお(つく)(あそ)ばした大自在天(だいじざいてん)……オツトドツコイ国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)(さま)のお(みち)(ひら)三五教(あななひけう)金線(きんすぢ)宣伝使(せんでんし)照国別(てるくにわけ)(さま)のお(とも)(つか)ふる春公別(はるこうわけ)さまだぞ。087人間違(ひとまちが)ひを(いた)すな。088人間(にんげん)()ひたければテームス(たうげ)頂上(ちやうじやう)(さけ)(くら)()うて(たふ)れて()半死(はんし)半生(はんしやう)関守(せきもり)がある。089彼奴(あいつ)をガブリとやつて鱈腹(たらふく)090(はら)(ふく)らすが()からう。091シーツどけどけ』
092(みぎ)()()ちふつて()()けようとすれども、093(おほかみ)(べつ)(おこ)つた気色(けしき)もなく、094()(いぬ)(やう)左右(さいう)()ちふりながら(すそ)(くは)引張(ひつぱ)つて(はな)さぬ。
095春公(はるこう)『こりやこりや、096(おれ)(いそ)(たび)だ。097往来(わうらい)(さまた)げを(いた)すと、098交番(かうばん)往来(わうらい)妨害罪(ばうがいざい)(うつた)へてやるぞ。099(なん)飼犬(かひいぬ)(やう)()をふりやがつて、100ハハア此奴(こいつ)山犬(やまいぬ)だなア。101もとは人間(にんげん)(うち)()はれて()やがつたのが、102主人(しゆじん)没落(ぼつらく)()貴様(きさま)一緒(いつしよ)流浪(るらう)して到頭(たうとう)(やま)()()み、103山犬(やまいぬ)となり、104デモ(おほかみ)進化(しんくわ)したのだなア。105(ひと)境遇(きやうぐう)によつて人相(にんさう)(まで)(かは)ると()(こと)だが矢張(やつぱり)畜生(ちくしやう)でも(その)道理(だうり)()れぬと()えるわい。106こりや狼犬(おほかみいぬ)畜生(ちくしやう)107(はな)さぬかい、108十七八(じふしちはち)のナイスに引張(ひつぱ)られるのならチツとは気分(きぶん)()いが、109貴様(きさま)()(すそ)引張(ひつぱ)られると、110あまり()心持(こころもち)がせぬわい。111エー畜生(ちくしやう)112合点(がてん)(わる)(やつ)だな。113貴様(きさま)狼犬(おほかみいぬ)ならチツとは(けもの)(うち)でも(わう)部分(ぶぶん)だから人間(にんげん)さまの言霊(ことたま)(くらゐ)(わか)(はず)だ。114グヅグヅ(いた)すと(うま)()(ころ)さしてやるぞ』
115 (おほかみ)()(しき)りにふり(すそ)(くは)(みち)(かたはら)()(しげ)みへ無理(むり)()()まうとする。
116春公(はるこう)『もし宣伝使(せんでんし)(さま)117(この)畜生(ちくしやう)118洒落(しやれ)(やつ)で、119(がら)にも似合(にあ)はぬ四足(よつあし)分際(ぶんざい)として吾々(われわれ)揶揄(からか)ひやがるのです。120一層(いつそう)(こと)()(ころ)してやつたら如何(どう)でせうか』
121照国(てるくに)(おほかみ)()(やつ)義獣(ぎじう)だから、122そんな乱暴(らんばう)(こと)をしてはならない。123(なに)吾々(われわれ)変事(へんじ)()らして()れるのだらう。124()(おほかみ)引張(ひつぱ)つて()(はう)へついて()つて()たら如何(どう)だ。125千匹(せんびき)(おほかみ)(とほ)るので吾々(われわれ)一同(いちどう)(たす)けてやらうと(おも)つて隠家(かくれが)()()かうとするのかも()れぬぞ』
126春公『さうだと()つて(おほかみ)引張(ひつぱ)られて()くのはあまり気分(きぶん)()いものぢやありませぬわ』
127照国別『おい(おほかみ)128(まへ)()(ところ)へついて()くから春公(はるこう)(すそ)(はな)してやつて()れ』
129 (この)(こゑ)(おほかみ)(くは)へた(すそ)をパツと(はな)し、130照国別(てるくにわけ)(まへ)にスタスタとやつて()て、131一寸(ちよつと)(かうべ)()挨拶(あいさつ)をしながらガサリガサリと谷川(たにがは)()がけて(くだ)つて()く。132照国別(てるくにわけ)一行(いつかう)(おほかみ)(あと)について、133(みづ)のチヨロチヨロ(なが)れて()谷川(たにがは)(くだ)つた。134()れば其処(そこ)(じふ)(にん)ばかりの人間(にんげん)が、135(かほ)()()(かた)(はづ)して人事(じんじ)不省(ふせい)になつて(よこた)はつてゐる。
136照国別『ヤア、137沢山(たくさん)怪我人(けがにん)だ。138大方(おほかた)バラモン(けう)連中(れんちう)黄金姫(わうごんひめ)(さま)との一隊(いつたい)とが衝突(しようとつ)結果(けつくわ)であらう。139さア(てる)140(うめ)141(はる)(さん)(にん)142一人(ひとり)々々(ひとり)谷水(たにみづ)()(すく)つて(くち)(ふく)ませ、143面部(めんぶ)()きかけてやつてくれ。144(わたし)はここで天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)魂呼(たまよ)びをするから』
145『ハイ』
146(こた)へて(さん)(にん)各自(てんで)種々(いろいろ)介抱(かいほう)(ちから)(つく)した。147(やうや)くにして一人(ひとり)(のこ)らず蘇生(そせい)した。148(かた)(はづ)れた(をとこ)がある、149此奴(こいつ)()のつかぬ(うち)(もと)(ほね)(なほ)しやり、150さうして鎮魂(ちんこん)(ほどこ)した。151(やうや)くにして(いき)()(かへ)したのは黄金姫(わうごんひめ)152清照姫(きよてるひめ)をここ(まで)(おく)つて()たレーブであつた。153一人(ひとり)(かほ)大変(たいへん)擦傷(すりきず)()うてゐた(をとこ)は、154バラモン(けう)軍隊(ぐんたい)先頭(せんとう)()つて()たカルであつた。155(この)二人(ふたり)(はじ)一同(いちどう)救命(きうめい)(おん)(しや)し、156三五教(あななひけう)大神(おほかみ)慈徳(じとく)感謝(かんしや)しながら宣伝使(せんでんし)(あと)(したが)玉山峠(たまやまたうげ)(くだ)り、157魔神(まがみ)(たけ)(くる)大原野(だいげんや)前後(ぜんご)警戒(けいかい)しながら(まも)()(こと)となつた。
158 照国別(てるくにわけ)(ほか)()(にん)(うま)()りレーブ、159カルを(はじ)(はち)(にん)前後(ぜんご)(まも)りつつ荒野(あらの)(はら)(すす)()く。160前方(ぜんぱう)にピタリと()(あた)つた(あさ)(ひろ)(ぬま)がある。161(やうや)くにして()()れかかつた。162照国別(てるくにわけ)一同(いちどう)(むか)つて此処(ここ)一夜(いちや)()かすことを命令(めいれい)した。163照国別(てるくにわけ)先導(せんだう)にて天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)神言(かみごと)(とな)各自(かくじ)(つか)れはてて熟睡(じゆくすい)して(しま)つた。164(もち)()(つき)玉山峠(たまやまたうげ)(いただ)きから皎々(かうかう)(かがや)きつつ(のぼ)(はじ)めた。165一同(いちどう)姿(すがた)()()(ごと)くハツキリして()た。166スガル、167チルと()(をとこ)熟睡(じゆくすい)(よそほ)ひつつ一同(いちどう)寝息(ねいき)(かんが)へてゐた。168()正子(しやうね)(こく)169(つき)頭上(づじやう)()らす刻限(こくげん)170スガル、171チルの両人(りやうにん)はソツと()(あが)り、172懐中(ふところ)から捕縄(とりなは)()し、173一々(いちいち)数珠(じゆず)つなぎに照国別(てるくにわけ)174照公(てるこう)175梅公(うめこう)176春公(はるこう)177レーブ、178カルの(ろく)(にん)(しば)つて(しま)つた。179さうして(ほか)(ろく)(にん)をソツと()(おこ)してる。180熟睡(じゆくすい)(ゆめ)(やぶ)られたキルと()(をとこ)『ウンウンウン』と()ひながら()()き、
181キル『ダヽヽヽ(だれ)だい、182(ひと)小気味(こぎみ)()()()るのに(はな)をつまんだり、183こそばしやがつて()加減(かげん)()ぬかい。184(こま)つた(やつ)だなア』
185 チルは(ちひ)さい(こゑ)(みみ)(はた)(くち)()せ、
186チル『おい、187キル(こう)188(おほ)きな(こゑ)()ふな。189(いま)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)裏返(うらがへ)(もの)をフン(じば)つた(ところ)だから、190貴様(きさま)(たち)(これ)から()()まして彼奴(あいつ)()(あたま)かち()つてしまふか、191(ただし)鬼春別(おにはるわけ)(さま)のお(うま)(そば)引連(ひきつ)れて()つて手柄(てがら)をするのだから』
192 キルはド拍子(びやうし)()けた銅羅声(どらごゑ)で、
193キル『お(まへ)はチルぢやないか。194折角(せつかく)(いのち)(たす)けてくれた宣伝使(せんでんし)(しば)ると()(こと)何処(どこ)にあるかい。195こんな(こと)をすると(ばち)があたるぞ』
196チル『エー(こま)つた(やつ)ぢやな。197()()かぬにも(ほど)がある。198あんな(やつ)(たす)けて(たま)るものかい』
199キル『(おれ)ア、200貴様(きさま)(なん)()つてもあの宣伝使(せんでんし)(おん)があるのだ。201(おん)(あだ)(かへ)さうとは人間(にんげん)のなすべき(こと)でないぞ。202チツと(まこと)(こころ)となつて(かんが)へて()い』
203 スガルは(また)(つぎ)(をとこ)小声(こごゑ)で、
204スガル『オイオイ』
205()ひながら、206(はな)をつまんだり(わき)(した)こそばかし()()まさうとしてゐる。
207セル『だゝゝゝ(だれ)ぢやい、208セルさまの(はな)をつまみやがつたり(わき)(した)をくすぐる(やつ)は。209こら()(とき)はトツトと()(はたら)(とき)には(せい)()して(はたら)くのだぞ。210安眠(あんみん)妨害(ばうがい)をさらすと(おれ)了簡(れうけん)せぬから、211さう(おも)へ』
212 スガルは小声(こごゑ)(みみ)(くち)()せ、
213スガル『おいセル、214(おほ)きな(こゑ)()ふな。215宣伝使(せんでんし)()()ましちや大変(たいへん)だ。216何奴(どいつ)此奴(こいつ)(みな)(おれ)引括(ひつくく)つておいたのだから、217(これ)から(みな)()つて()()まして彼奴(あいつ)(たた)()せるか、218(ただし)将軍(しやうぐん)(さま)(まへ)引張(ひつぱ)つて()くつもりだ。219さうすれば貴様(きさま)(たち)手柄(てがら)になるのだから』
220 セルは()ぶた()(こす)りながら、
221セル(なに)222(おれ)(なに)か、223将軍(しやうぐん)(さま)(まへ)引張(ひつぱ)つて()くと()ふのか。224そりや()しからぬ。225(おれ)何時(いつ)そんな(わる)(こと)をしたかい。226勝負(しようぶ)(とき)(うん)だ。227(おれ)()けて九死(きうし)一生(いつしやう)場合(ばあひ)(おちい)つたと()つて、228それが(つみ)になると()つては(いくさ)()(こと)出来(でき)ぬぢやないか。229そりや一寸(ちよつと)無理(むり)だよ。230(おほ)きい(こゑ)で)おい(みな)(やつ)231()きてくれ、232スガルの(やつ)233(おれ)(たち)(かた)(ぱし)から引張(ひつぱ)つて将軍(しやうぐん)(さま)(まへ)へつれて()くと(ぬか)しよるわいのう』
234照国(てるくに)『アツハヽヽヽ』
235レーブ『ウツフヽヽヽ』
236照国(てるくに)六蹈(りくたう)三略(さんりやく)兵法(へいはふ)味方(みかた)(なか)から(やぶ)れるか、237面白(おもしろ)いものだなア。238グウグウグウ』
239(また)(いびき)をかく。
240レーブ『こりやスガル、241チルの両人(りやうにん)242(おれ)狸寝(たぬきね)をして()れば(ふところ)から捕縄(とりなは)()しやがつて、243(おれ)(たち)(ろく)(にん)(しば)りつけやがらうとしやがつたな。244ヘン馬鹿(ばか)にするない。245(この)レーブさまは神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)神術(かむわざ)(もつ)て、246(しば)られた(やう)(かほ)をして貴様(きさま)捕縄(とりなは)をグツと(にぎ)り、247貴様(きさま)(たち)(はち)(にん)()らぬ()(くく)つておいてやつた。248(おれ)(ひと)()(なは)引張(ひつぱ)るが最後(さいご)249貴様(きさま)()(はち)(にん)(くび)一遍(いつぺん)(しま)つて(いき)がとまるやうにしてあるのだ』
250()ひながらグイグイとしやくつてみた。251不思議(ふしぎ)(はち)(にん)(くび)徳利結(とつくりむす)びになり(たちま)(いき)がつまり、252ウンウンウンと()()手足(てあし)をジタバタさせ(くる)しみ(もだ)()した。
253レーブ『アハヽヽヽ面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、254もしもし宣伝使(せんでんし)(さま)255(うめ)さま、256(てる)さま、257カルさま、258()きた()きた。259これから(ひと)猿廻(さるまは)しの芸当(げいたう)だ』
260照国(てるくに)『アハヽヽヽうまくやつたなア』
261レーブ貴方(あなた)()内命(ないめい)(どほ)り、262内々(ないない)(わたし)得意(とくい)捕縄(とりなは)何奴(どいつ)此奴(こいつ)(しば)りあげてやりました。263(ひと)(つな)()きませうか』
264照国別一人(ひとり)づつ(つな)(ほど)いてやつたが()からう』
265レーブ『さう(はや)(ほど)いてやると()つから興味(きようみ)(うす)いぢや(ござ)いませぬか。266(てる)さま、267(うめ)さま、268(はる)さま、269カルさまにも(ひと)面白(おもしろ)(ところ)をお()にかけて(その)(うへ)でも滅多(めつた)(おそ)くはありますまいぜ』
270照国別『グヅグヅして()ると(いき)()れて(しま)ふぢやないか』
271レーブ(なに)(かま)ひますものか。272此奴(こいつ)(いま)(わたし)(たち)一緒(いつしよ)冥土(めいど)(たび)をして()(やつ)です。273一遍(いつぺん)一途(いちづ)(かは)(わた)らしてやるも(よろ)しからうぜ』
274 (はち)(にん)はウンウンと(うめ)()した。
275照国(てるくに)『おい、276(てる)277(うめ)278(はる)279カルの()(にん)280(はや)(つな)をゆるめてやれ』
281 (この)命令(めいれい)()(にん)(あわただ)しく徳利結(とつくりむす)びをチクリチクリと(ゆる)めてやつた。282(きふ)(ほど)くと(また)もや(いき)()えるからである。283(はち)(にん)はムツクと()(あが)り、284(かへる)つく()ひとなつて(ふる)へて()る。
285レーブ『おい、286スガル、287チルの両人(りやうにん)288貴様(きさま)(いのち)()恩人(おんじん)(たい)(あだ)(もつ)(むく)いむとした犬畜生(いぬちくしやう)だ。289サア(ほか)(やつ)(ろく)(にん)()(かく)も、290貴様(きさま)()両人(りやうにん)(おれ)(ひと)(くわつ)()れてやる。291貴様(きさま)(たましひ)()んで()る。292(いな)(くさ)つて()る。293烙鉄(こて)でもあててやらねば到底(たうてい)(もと)正念(しやうねん)にはなるまい』
294 スガル、295チルは、
296『ハイハイ』
297()ひながらヂリヂリと一歩(ひとあし)々々(ひとあし)(うしろ)()り、298(すき)()すまし(ぬま)()がけて一生(いつしやう)懸命(けんめい)バサバサバサと()()()()した。299セル、300キル(ほか)()(にん)(やつ)二人(ふたり)(あと)について(ぬま)(なか)一生(いつしやう)懸命(けんめい)に、301バサバサバサバサと(ぬま)(うつ)つた満月(まんげつ)粉砕(ふんさい)しながら一生(いつしやう)懸命(けんめい)()げて()く。
302レーブ『アハヽヽヽ到頭(たうとう)蛙突這(かへるつくば)ひになつて往生(わうじやう)しやがつたな。303まるつきり(かへる)(やう)(やつ)だ。304(かはづ)行列(ぎやうれつ)(むか)()ずとは(この)(こと)だ。305到頭(たうとう)(みづ)(たす)かりやがつたなア』
306 無心(むしん)(つき)皎々(かうかう)()(かがや)き、307(この)活劇(くわつげき)(ひそ)かに見下(みおろ)してゐる。
308大正一一・一一・四 旧九・一六 北村隆光録)
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki