霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第67巻(午の巻)
序文
総説
第1篇 美山梅光
01 梅の花香
〔1703〕
02 思想の波
〔1704〕
03 美人の腕
〔1705〕
04 笑の座
〔1706〕
05 浪の皷
〔1707〕
第2篇 春湖波紋
06 浮島の怪猫
〔1708〕
07 武力鞘
〔1709〕
08 糸の縺れ
〔1710〕
09 ダリヤの香
〔1711〕
10 スガの長者
〔1712〕
第3篇 多羅煩獄
11 暗狐苦
〔1713〕
12 太子微行
〔1714〕
13 山中の火光
〔1715〕
14 獣念気
〔1716〕
15 貂心暴
〔1717〕
16 酒艶の月
〔1718〕
17 晨の驚愕
〔1719〕
第4篇 山色連天
18 月下の露
〔1720〕
19 絵姿
〔1721〕
20 曲津の陋呵
〔1722〕
21 針灸思想
〔1723〕
22 憧憬の美
〔1724〕
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サブスクのお知らせ
霊界物語
>
第67巻
> 第3篇 多羅煩獄 > 第14章 獣念気
<<< 山中の火光
(B)
(N)
貂心暴 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第一四章
獣念気
(
じゆうねんき
)
〔一七一六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻
篇:
第3篇 多羅煩獄
よみ(新仮名遣い):
たらはんごく
章:
第14章 獣念気
よみ(新仮名遣い):
じゅうねんき
通し章番号:
1716
口述日:
1924(大正13)年12月28日(旧12月3日)
口述場所:
祥雲閣
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年8月19日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
場面は変わって、タラハン城市の西北十里の地点にあるタニグク山。周りを険峻な山に囲まれ、山麓には天然の大岩窟がある。タラハン国の元の左守シャカンナは、娘のスバール姫と共にこの岩窟に潜み、遠近の無頼漢を集め、山賊の頭目となっていた。ガンヂーとその一派を討伐せんと、密かに力を蓄えていた。
バラモン軍の横行で、最近は山賊の見入りも少なくなってきている。ちょうどシャカンナの妻の命日にあたり、供養の宴をせんと酒食を揃えた。妻の回向の読経をさせるため、修験者を探しに行った子分のコルトンを待ちながら、子分のバルギーと語り合っている。
そこへ、コルトンが、美女を連れた怪しげな修験者を連れて帰る。
修験者は自分は天帝の化身であり、一緒にいる美女は棚機姫であると大見得を切る。
シャカンナは一目で偽修験者を見破る。修験者は玄真坊の正体をあらわす(前巻にて、オーラ山にたてこもっていた3悪人の一人。他の二人は梅公によって三五教に改心し宣伝使となるが、玄真坊だけは再び悪化して、行方をくらましていた)。
山賊となり現政権の転覆を企てるシャカンナは玄真坊と心を通じ、参謀として招き入れようとする。シャカンナは玄真坊の新しい偽名として、「天真坊」と名づける。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-05-03 19:40:45
OBC :
rm6714
愛善世界社版:
176頁
八幡書店版:
第12輯 95頁
修補版:
校定版:
178頁
普及版:
68頁
初版:
ページ備考:
001
タラハン
城市
(
じやうし
)
を
去
(
さ
)
る
正北
(
せいほく
)
十
(
じふ
)
里
(
り
)
の
地点
(
ちてん
)
に、
002
タニグク
山
(
やま
)
といふ
高山
(
かうざん
)
が
聳
(
そび
)
えてゐる。
003
南西北
(
なんせいほく
)
の
三方
(
さんぱう
)
は
嶮峻
(
けんしゆん
)
なる
高山
(
かうざん
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
004
僅
(
わづか
)
に
東
(
ひがし
)
の
一方
(
いつぱう
)
に
細
(
ほそ
)
い
入口
(
いりぐち
)
があつて、
005
淙々
(
そうそう
)
たる
谷水
(
たにみづ
)
は
此
(
この
)
東口
(
ひがしぐち
)
より
流出
(
りうしゆつ
)
するやうになつてゐる。
006
タニグク
山
(
やま
)
の
山麓
(
さんろく
)
には
天然
(
てんねん
)
の
大岩窟
(
だいがんくつ
)
が
穿
(
うが
)
たれてゐる。
007
カラピン
王
(
わう
)
を
諫
(
いさ
)
めて
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
を
殺
(
ころ
)
され、
008
自分
(
じぶん
)
も
亦
(
また
)
刃
(
やいば
)
の
錆
(
さび
)
とならむとせし
危機
(
きき
)
一髪
(
いつぱつ
)
の
難
(
なん
)
を
遁
(
のが
)
れ、
009
太子
(
たいし
)
スダルマンの
妃
(
きさき
)
と
迄
(
まで
)
内定
(
ないてい
)
してゐた
当時
(
たうじ
)
六
(
ろく
)
才
(
さい
)
の
娘
(
むすめ
)
スバール
姫
(
ひめ
)
を
背
(
せな
)
に
負
(
お
)
ひ、
010
都
(
みやこ
)
を
後
(
あと
)
に
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
潜
(
ひそ
)
んで、
011
遠近
(
ゑんきん
)
の
無頼漢
(
ぶらいかん
)
を
集
(
あつ
)
め、
012
自
(
みづか
)
ら
山賊
(
さんぞく
)
の
張本
(
ちやうほん
)
となり、
013
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
たりしガンヂー
並
(
ならび
)
に
彼
(
かれ
)
が
部下
(
ぶか
)
のサクレンスの
奸者
(
かんじや
)
を
払
(
はら
)
ひ、
014
君側
(
くんそく
)
を
清
(
きよ
)
めむと、
015
日夜
(
にちや
)
肺肝
(
はいかん
)
を
砕
(
くだ
)
いてゐた
彼
(
かれ
)
は
016
カラピン
王
(
わう
)
に
仕
(
つか
)
へてゐた
左守
(
さもり
)
のシャカンナであつた。
017
古
(
いにしへ
)
より
獅子
(
しし
)
の
棲処
(
すみか
)
と
称
(
とな
)
へられ、
018
誰一人
(
たれひとり
)
此
(
この
)
山奥
(
やまおく
)
に
足
(
あし
)
を
入
(
い
)
るる
者
(
もの
)
がなかつた。
019
シャカンナは
年
(
とし
)
と
共
(
とも
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
部下
(
ぶか
)
が
殖
(
ふ
)
えて
来
(
き
)
た。
020
そして
其
(
その
)
部下
(
ぶか
)
を
夜
(
よる
)
私
(
ひそ
)
かにタラハンの
城下
(
じやうか
)
を
始
(
はじ
)
め
各地
(
かくち
)
に
派遣
(
はけん
)
し、
021
富者
(
ふうしや
)
の
家
(
いへ
)
を
狙
(
ねら
)
つて
財物
(
ざいぶつ
)
を
奪
(
うば
)
ひ、
022
ガンヂー
討伐
(
たうばつ
)
の
準備
(
じゆんび
)
を
整
(
ととの
)
へてゐた。
023
六
(
ろく
)
才
(
さい
)
の
時
(
とき
)
伴
(
ともな
)
ふて
来
(
き
)
た
娘
(
むすめ
)
のスバールは
今年
(
ことし
)
漸
(
やうや
)
く
十五
(
じふご
)
才
(
さい
)
の
春
(
はる
)
を
迎
(
むか
)
へた。
024
シャカンナは
岩窟
(
がんくつ
)
の
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
大胡坐
(
おほあぐら
)
をかき
脇息
(
けうそく
)
にもたれ
乍
(
なが
)
ら、
025
数多
(
あまた
)
の
乾児
(
こぶん
)
共
(
ども
)
の
報告
(
はうこく
)
を
聞
(
き
)
いてゐた。
026
シャカンナ『オイ、
027
バルギー、
028
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
根
(
ね
)
つからお
前
(
まへ
)
の
組
(
くみ
)
は
働
(
はたら
)
きが
足
(
た
)
らぬぢやないか。
029
チツと
確
(
しつか
)
りしてくれないと、
030
折角
(
せつかく
)
蓄
(
たくは
)
へた
軍需品
(
ぐんじゆひん
)
迄
(
まで
)
が
無
(
な
)
くなつて
了
(
しま
)
ひ、
031
何時
(
いつ
)
になつたら
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
するやら
殆
(
ほと
)
んど
見当
(
けんたう
)
がつかぬぢやないか』
032
バルギー『ハイ、
033
仰
(
おほせ
)
では
厶
(
ござ
)
いますが、
034
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はバラモン
軍
(
ぐん
)
が
横行
(
わうかう
)
濶歩
(
くわつぽ
)
致
(
いた
)
しますので、
035
思
(
おも
)
はしい
仕事
(
しごと
)
が
出来
(
でき
)
ませず、
036
チツと
物
(
もの
)
のあり
相
(
さう
)
な
家
(
いへ
)
は
皆
(
みな
)
バラモン
軍
(
ぐん
)
にしてやられ、
037
僅
(
わづか
)
に
二十
(
にじふ
)
や
三十
(
さんじふ
)
の
手下
(
てした
)
を
連
(
つ
)
れて、
038
あの
大軍隊
(
だいぐんたい
)
を
向
(
むか
)
ふにまはし
戦
(
たたか
)
ふ
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
きませず、
039
残念
(
ざんねん
)
乍
(
なが
)
ら
軍隊
(
ぐんたい
)
の
退却
(
たいきやく
)
する
迄
(
まで
)
時機
(
じき
)
を
考
(
かんが
)
へてゐるので
厶
(
ござ
)
います。
040
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り、
041
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
食
(
く
)
ひ
込
(
こ
)
みになるやうで
厶
(
ござ
)
いますが、
042
少
(
すこ
)
しお
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいますれば、
043
屹度
(
きつと
)
大
(
おほ
)
きな
活動
(
はたらき
)
をしてお
目
(
め
)
にかけます。
044
私
(
わたし
)
も
精々
(
せいぜい
)
部下
(
ぶか
)
を
督励
(
とくれい
)
して
居
(
を
)
りますなれど、
045
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
夜
(
よる
)
許
(
ばか
)
りの
仕事
(
しごと
)
で、
046
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
に
捗
(
はかど
)
りませぬ。
047
此
(
この
)
十
(
じふ
)
里
(
り
)
の
山路
(
やまみち
)
を
忍
(
しの
)
び
変装
(
へんさう
)
して、
048
バルガン
市
(
し
)
に
出
(
い
)
で、
0481
又
(
また
)
夜
(
よる
)
の
間
(
うち
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
なくちやならないので
厶
(
ござ
)
いますから、
049
肝腎
(
かんじん
)
の
働
(
はたら
)
く
間
(
あひだ
)
は、
050
ホンの
半時
(
はんとき
)
か
四半時
(
しはんとき
)
許
(
ばか
)
りで
厶
(
ござ
)
いますから、
051
乾児
(
こぶん
)
共
(
ども
)
も
大変
(
たいへん
)
に
困
(
こま
)
つて
居
(
を
)
ります』
052
シャ『エー
仕方
(
しかた
)
がないなア。
053
マア
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
054
精々
(
せいぜい
)
働
(
はたら
)
くやうにいつてくれ。
055
そしてガンヂーの
屋敷
(
やしき
)
の
様子
(
やうす
)
は
何
(
ど
)
うぢや、
056
判然
(
はつきり
)
分
(
わか
)
つたか』
057
バル『ハイ、
058
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はバラモン
軍
(
ぐん
)
が
襲来
(
しふらい
)
するとか
云
(
い
)
つて、
059
塀
(
へい
)
を
高
(
たか
)
くし、
060
不寝番
(
ねずのばん
)
の
兵士
(
へいし
)
が
七八十
(
しちはちじふ
)
人
(
にん
)
許
(
ばか
)
り、
061
裏表
(
うらおもて
)
の
門
(
もん
)
を
警護
(
けいご
)
して
居
(
を
)
りますので、
062
近
(
ちか
)
よる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ』
063
シャ『さうか、
064
それも
仕方
(
しかた
)
がない。
065
もう
暫
(
しばら
)
く
計画
(
けいくわく
)
を
延
(
の
)
ばさうかな』
066
バル『どうか、
067
さう
願
(
ねが
)
へますれば
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
います』
068
シャ『
今日
(
けふ
)
は
吾
(
わが
)
女房
(
にようばう
)
が
城中
(
じやうちう
)
に
於
(
おい
)
て、
069
大王
(
だいわう
)
の
手
(
て
)
にかかり、
070
命
(
いのち
)
をすてた
命日
(
めいにち
)
だから、
071
コルトンに
言
(
い
)
ひ
付
(
つ
)
け、
072
いい
修験者
(
しゆげんじや
)
を、
073
どつかで
求
(
もと
)
めて
来
(
き
)
て、
074
回向
(
ゑかう
)
をして
貰
(
もら
)
ひたいと
思
(
おも
)
ひ、
075
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
から
派遣
(
はけん
)
したのだが、
076
今日
(
けふ
)
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
ぬやうな
事
(
こと
)
では、
077
到底
(
たうてい
)
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はない。
078
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
だワイ。
079
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らコルトンは
義
(
ぎ
)
の
固
(
かた
)
い
奴
(
やつ
)
だから、
080
屹度
(
きつと
)
どつかで
修験者
(
しゆげんじや
)
を
探
(
さが
)
して
来
(
く
)
るだらう。
081
それについては、
082
馴走
(
ちそう
)
の
用意
(
ようい
)
をしておけ。
083
それから
今日
(
けふ
)
は
二百
(
にひやく
)
の
乾児
(
こぶん
)
に
腹
(
はら
)
一杯
(
いつぱい
)
馳走
(
ちそう
)
を
食
(
く
)
はせ
084
酒
(
さけ
)
を
鱈腹
(
たらふく
)
振舞
(
ふるま
)
つてやるが
可
(
よ
)
からうぞ』
085
バル『ハイ、
086
今朝来
(
こんてうらい
)
部下
(
ぶか
)
を
督励
(
とくれい
)
し、
087
馳走
(
ちそう
)
の
準備
(
じゆんび
)
やお
祭
(
まつり
)
の
用意
(
ようい
)
はチヤンと
整
(
ととの
)
つてをります。
088
どうぞ
其
(
その
)
点
(
てん
)
丈
(
だけ
)
は
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
089
さり
乍
(
なが
)
らコルトンが
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
ないとすれば、
090
折角
(
せつかく
)
の
馳走
(
ちそう
)
も
無駄
(
むだ
)
になる
道理
(
だうり
)
で
厶
(
ござ
)
います。
091
若
(
も
)
し
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
なかつたら、
092
どう
致
(
いた
)
しませうか』
093
シャ『そんな
心配
(
しんぱい
)
は
要
(
い
)
らぬ。
094
若
(
も
)
し
彼
(
かれ
)
が
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
なかつたならば、
095
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
俺
(
おれ
)
が
霊前
(
れいぜん
)
に
於
(
おい
)
て
経文
(
きやうもん
)
を
唱
(
とな
)
へ、
096
十年忌
(
じふねんき
)
を
済
(
す
)
ます
考
(
かんが
)
へだ。
097
売僧
(
まいす
)
坊主
(
ばうず
)
の
読経
(
どくきやう
)
よりも、
098
夫
(
をつと
)
の
俺
(
おれ
)
が
直接
(
ちよくせつ
)
の
読経
(
どくきやう
)
が
却
(
かへつ
)
て
故人
(
こじん
)
の
為
(
ため
)
には
可
(
い
)
いかも
知
(
し
)
れぬ。
099
日
(
ひ
)
の
内
(
うち
)
は
彼
(
かれ
)
も
帰
(
かへ
)
るのを
憚
(
はばか
)
るだらう。
100
何
(
いづ
)
れ
夜
(
よる
)
の
事
(
こと
)
だらう』
101
バル『
今晩
(
こんばん
)
の
四
(
よ
)
つ
時
(
どき
)
迄
(
まで
)
待
(
ま
)
つ
事
(
こと
)
に
致
(
いた
)
しませう。
102
それで
帰
(
かへ
)
らねば、
103
最早
(
もはや
)
断念
(
だんねん
)
遊
(
あそ
)
ばして、
104
御
(
おん
)
大
(
たい
)
自
(
みづか
)
ら
比丘
(
びく
)
のお
勤
(
つと
)
めをなさいませ。
105
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
ら
此
(
この
)
バルギーも
子供
(
こども
)
の
時
(
とき
)
はウラル
教
(
けう
)
の
小僧
(
こぞう
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
を
)
りました
経験
(
けいけん
)
が
厶
(
ござ
)
いますから、
106
経文
(
きやうもん
)
の
素知
(
そし
)
り
走
(
ばし
)
り
位
(
ぐらゐ
)
は
覚
(
おぼ
)
えてをりますから……』
107
シャ『
俺
(
おれ
)
は
今日
(
けふ
)
は
何
(
なん
)
だか
体
(
からだ
)
が
疲
(
つか
)
れたやうだ。
108
コルトンが
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
迄
(
まで
)
、
1081
休息
(
きうそく
)
するから
109
お
前
(
まへ
)
は
部下
(
ぶか
)
の
奴
(
やつ
)
によく
気
(
き
)
をつけ、
110
監督
(
かんとく
)
を
怠
(
おこた
)
らない
様
(
やう
)
にしてくれ』
111
と
言
(
い
)
ひのこし、
112
吾
(
わが
)
寝室
(
しんしつ
)
なる
岩窟
(
がんくつ
)
を
指
(
さ
)
して
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
した。
113
黄昏
(
たそがれ
)
過
(
す
)
ぐる
頃
(
ころ
)
コルトンは
114
威風
(
ゐふう
)
堂々
(
だうだう
)
たる
一人
(
ひとり
)
の
修験者
(
しゆげんじや
)
や
彼
(
かれ
)
の
妻
(
つま
)
か
娘
(
むすめ
)
か
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
、
115
天女
(
てんによ
)
の
如
(
や
)
うな
十七八
(
じふしちはち
)
の
美人
(
びじん
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
116
二三
(
にさん
)
の
部下
(
ぶか
)
と
共
(
とも
)
に、
117
肩
(
かた
)
をそびやかし、
1171
凱旋
(
がいせん
)
将軍
(
しやうぐん
)
のやうな
意気
(
いき
)
込
(
ご
)
みで、
118
悠々
(
いういう
)
と
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
119
バルギーはコルトンの
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより、
120
あわてて
出迎
(
でむか
)
ひ、
121
バル『ヤ、
122
兄弟
(
きやうだい
)
、
123
お
手柄
(
てがら
)
お
手柄
(
てがら
)
。
124
何
(
なん
)
とマア
立派
(
りつぱ
)
な
比丘
(
びく
)
をつれて
来
(
き
)
たものだなア。
125
親分
(
おやぶん
)
さまが
大変
(
たいへん
)
なお
待兼
(
まちかね
)
だ。
126
用意
(
ようい
)
万端
(
ばんたん
)
チンと
整
(
ととの
)
つてゐるのだ。
127
亡
(
な
)
き
奥様
(
おくさま
)
も
嘸
(
さぞ
)
お
喜
(
よろこ
)
び
遊
(
あそ
)
ばすだらう。
128
かういふ
事
(
こと
)
はお
前
(
まへ
)
に
限
(
かぎ
)
る
哩
(
わい
)
』
129
コルトン『ヤア、
130
サウ
褒
(
ほ
)
めて
呉
(
く
)
れちや、
131
物
(
もの
)
が
言
(
い
)
へなくなる。
132
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
彼方
(
あちら
)
此方
(
こちら
)
とかけまはり、
133
名僧
(
めいそう
)
知識
(
ちしき
)
を
尋
(
たづ
)
ね
廻
(
まは
)
つた
所
(
ところ
)
、
134
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
はバラモン
軍
(
ぐん
)
の
襲来
(
しふらい
)
で、
135
比丘
(
びく
)
も
修験者
(
しゆげんじや
)
もどつかへ
影
(
かげ
)
をかくし、
136
容易
(
ようい
)
に
見当
(
みあた
)
らなかつたのだ。
137
そして
寺
(
てら
)
を
有
(
も
)
つてゐる
坊主
(
ばうず
)
を
頼
(
たの
)
んぢや、
138
此
(
この
)
かくれ
家
(
が
)
が
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
へ
発覚
(
はつかく
)
する
虞
(
おそれ
)
があるものだから、
139
風来者
(
ふうらいもの
)
の
神力
(
しんりき
)
の
強
(
つよ
)
い、
140
徳
(
とく
)
の
高
(
たか
)
い
比丘
(
びく
)
をと
思
(
おも
)
つたものだから、
141
今日
(
けふ
)
で
三日
(
みつか
)
捜索
(
そうさく
)
にかかり、
142
漸
(
やうや
)
く
今朝
(
けさ
)
、
143
こんな
立派
(
りつぱ
)
な
修験者
(
しゆげんじや
)
否
(
いな
)
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
様
(
さま
)
に
出会
(
でつくは
)
し、
144
事情
(
じじやう
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げた
所
(
ところ
)
、
145
快
(
こころよ
)
く
承諾
(
しようだく
)
して
下
(
くだ
)
さつたものだから、
146
お
伴
(
とも
)
して
来
(
き
)
たのだよ』
147
バルギー『あ、
148
それは
好都合
(
かうつがふ
)
だつた。
149
マ、
150
奥
(
おく
)
へ
行
(
い
)
つて
休
(
やす
)
んでくれ。
151
……これはこれは
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
様
(
さま
)
、
152
始
(
はじ
)
めてお
目
(
め
)
にかかります。
153
私
(
わたし
)
は
当館
(
たうやかた
)
の
番頭
(
ばんとう
)
を
致
(
いた
)
す
者
(
もの
)
でバルギーと
申
(
まを
)
します。
154
何分
(
なにぶん
)
斯様
(
かやう
)
な
山中
(
さんちう
)
で
厶
(
ござ
)
いますから、
155
充分
(
じゆうぶん
)
の
御
(
ご
)
待遇
(
たいぐう
)
も
出来
(
でき
)
ませず、
156
不都合
(
ふつがふ
)
許
(
ばかり
)
で
厶
(
ござ
)
いますけれど、
157
そこは
何
(
なに
)
とぞ
寛大
(
くわんだい
)
なるお
心
(
こころ
)
に
見直
(
みなほ
)
し、
158
聞直
(
ききなほ
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
159
亡
(
な
)
き
奥様
(
おくさま
)
の
御
(
ご
)
回向
(
ゑかう
)
を
願
(
ねが
)
ひたう
厶
(
ござ
)
います。
160
失礼
(
しつれい
)
乍
(
なが
)
ら
御
(
ご
)
姓名
(
せいめい
)
は
何
(
なん
)
と
申
(
まを
)
されますか。
161
主人
(
しゆじん
)
へ
報告
(
ほうこく
)
の
都合
(
つがふ
)
も
厶
(
ござ
)
いますから
承
(
うけたま
)
はりたいもので
厶
(
ござ
)
います』
162
修験者
(
しゆげんじや
)
はさも
鷹揚
(
おうやう
)
にそり
身
(
み
)
になり、
163
修験者
(
しゆげんじや
)
(玄真坊)
『ヤ、
164
其方
(
そなた
)
は
当家
(
たうけ
)
の
番頭
(
ばんとう
)
バルギー
殿
(
どの
)
で
厶
(
ござ
)
つたかのう。
165
コルトン
殿
(
どの
)
に
其方
(
そなた
)
の
才子
(
さいし
)
たる
事
(
こと
)
は
能
(
よ
)
く
聞
(
き
)
いてゐる。
166
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
当家
(
たうけ
)
は
普通
(
ふつう
)
の
家
(
いへ
)
ではあるまい。
167
コルトン
殿
(
どの
)
の
巧
(
うま
)
き
口
(
くち
)
に
乗
(
の
)
せられ、
168
此
(
この
)
山奥
(
やまおく
)
へ
連
(
つ
)
れ
込
(
こ
)
まれ、
169
四辺
(
あたり
)
の
様子
(
やうす
)
を
見
(
み
)
れば、
170
どうやら
山賊
(
さんぞく
)
の
住家
(
すみか
)
と
見
(
み
)
える。
171
其方
(
そなた
)
は
親玉
(
おやだま
)
に
仕
(
つか
)
へてゐる
小頭
(
こがしら
)
であらうがな』
172
バル『ハイ、
173
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
ります。
174
いかにも
貴方
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
明察
(
めいさつ
)
には
感服
(
かんぷく
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
175
最早
(
もはや
)
今
(
いま
)
となつては
隠
(
かく
)
しても
駄目
(
だめ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
176
吾々
(
われわれ
)
は
山賊
(
さんぞく
)
の
小頭
(
こがしら
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
177
大親分
(
おほおやぶん
)
はシャカンナと
申
(
まを
)
し、
178
大変
(
たいへん
)
な
豪傑
(
がうけつ
)
で
厶
(
ござ
)
います。
179
失礼
(
しつれい
)
乍
(
なが
)
ら、
180
重
(
かさ
)
ねて
御
(
お
)
名
(
な
)
をお
聞
(
きき
)
申
(
まを
)
したう
厶
(
ござ
)
いますが……』
181
修
(
しゆ
)
(玄真坊)
『アハヽヽヽ、
182
吾
(
わが
)
名
(
な
)
を
聞
(
き
)
いて
何
(
なん
)
と
致
(
いた
)
すか。
183
人間
(
にんげん
)
ならば
名
(
な
)
もある、
184
苗字
(
めうじ
)
もある。
185
拙僧
(
せつそう
)
こそは
天
(
てん
)
を
父
(
ちち
)
となし
地
(
ち
)
を
母
(
はは
)
と
致
(
いた
)
し、
186
天帝
(
てんてい
)
の
精気
(
せいき
)
凝
(
こ
)
つて、
187
茲
(
ここ
)
に
人体
(
じんたい
)
を
現
(
あら
)
はし、
188
衆生
(
しゆじやう
)
済度
(
さいど
)
を
致
(
いた
)
す
者
(
もの
)
、
189
たつて
吾
(
わが
)
名
(
な
)
を
言
(
い
)
はば
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
とでも
名
(
な
)
づけておかうかい、
190
アツハヽヽヽ』
191
バル『いかにも、
192
縦
(
たて
)
から
見
(
み
)
ても
横
(
よこ
)
から
見
(
み
)
ても、
193
威厳
(
ゐげん
)
の
備
(
そな
)
はつた
御
(
ご
)
神格
(
しんかく
)
、
194
天帝
(
てんてい
)
の
御
(
ご
)
化身
(
けしん
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
195
あゝ、
196
奥様
(
おくさま
)
は
何
(
なん
)
たる
幸福
(
かうふく
)
な
方
(
かた
)
だらう。
197
そして
其処
(
そこ
)
にゐらつしやる
御
(
ご
)
婦人
(
ふじん
)
は
奥様
(
おくさま
)
で
厶
(
ござ
)
いますか、
198
或
(
あるひ
)
はお
娘子
(
むすめご
)
で
厶
(
ござ
)
いますか』
199
修
(
しゆ
)
(玄真坊)
『アハヽヽヽ、
200
妻
(
つま
)
もなければ
娘
(
むすめ
)
もない、
201
此
(
この
)
御
(
おん
)
方
(
かた
)
は
天極
(
てんごく
)
紫微宮
(
しびきう
)
より、
202
万民
(
ばんみん
)
済度
(
さいど
)
の
為
(
ため
)
、
203
此
(
この
)
度
(
たび
)
御
(
ご
)
降臨
(
かうりん
)
遊
(
あそ
)
ばした
棚機姫
(
たなばたひめ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
るぞや』
204
バルギー
『いかにも、
205
さう
承
(
うけたま
)
はりますれば、
206
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
に
臍
(
へそ
)
の
緒
(
を
)
切
(
き
)
つた
御人
(
ごじん
)
とは
見
(
み
)
えませぬ。
207
いふに
云
(
い
)
はれぬ
御
(
ご
)
気品
(
きひん
)
の
高
(
たか
)
い、
208
御
(
お
)
綺麗
(
きれい
)
なお
姿
(
すがた
)
、
209
私
(
わたし
)
は
一目
(
ひとめ
)
拝
(
をが
)
んで
目
(
め
)
がくらむやうで
厶
(
ござ
)
います。
210
サア、
211
どうか、
212
主人
(
しゆじん
)
が
待兼
(
まちか
)
ねて
居
(
を
)
りますから、
213
奥
(
おく
)
へお
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
214
修
(
しゆ
)
(玄真坊)
『
然
(
しか
)
らば
案内
(
あんない
)
めされ。
215
主人
(
しゆじん
)
に
会
(
あ
)
うて、
216
とくと
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
を
聞
(
き
)
かしてやらう』
217
バルギーは……
天地
(
てんち
)
の
道理
(
だうり
)
を
泥棒
(
どろばう
)
の
親分
(
おやぶん
)
に
聞
(
き
)
かされちや
大変
(
たいへん
)
だ。
218
愛善
(
あいぜん
)
を
以
(
もつ
)
て
旨
(
むね
)
とする
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
化身
(
けしん
)
と、
219
人
(
ひと
)
を
脅
(
おど
)
かし、
2191
金銭
(
きんせん
)
物品
(
ぶつぴん
)
を
捕
(
と
)
る
大親分
(
おほおやぶん
)
とはそりが
合
(
あ
)
ふまい。
220
コルトンも
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かねい、
221
何故
(
なぜ
)
こんな
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
化身
(
けしん
)
などを
引
(
ひつ
)
ぱつて
来
(
き
)
やがつたらう……と
口
(
くち
)
の
中
(
うち
)
で
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
222
シャカンナの
巣
(
す
)
ごもつてゐる
立派
(
りつぱ
)
な
岩窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
へ
案内
(
あんない
)
した。
223
バル『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
224
只今
(
ただいま
)
コルトンが
修験者
(
しゆげんじや
)
否
(
いな
)
モツト モツト モツト、
225
尊
(
たふと
)
い
尊
(
たふと
)
い
偉
(
えら
)
い
御
(
お
)
方
(
かた
)
様
(
さま
)
をお
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
して
帰
(
かへ
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
226
此
(
この
)
方
(
かた
)
は
人間
(
にんげん
)
ぢやない
相
(
さう
)
です。
227
天帝
(
てんてい
)
の
御
(
ご
)
化身
(
けしん
)
、
228
又
(
また
)
モ
一人
(
ひとり
)
の
御
(
おん
)
方
(
かた
)
は
棚機姫
(
たなばたひめ
)
様
(
さま
)
ぢやといふ
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
います。
229
どうぞ
不都合
(
ふつがふ
)
のないやう、
230
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
のない
様
(
やう
)
、
231
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
を
下
(
くだ
)
さいませ』
232
シャ『
何
(
なに
)
、
233
コルトンが、
234
神
(
かみ
)
の
化身
(
けしん
)
をつれて
来
(
き
)
たといふのか、
235
ヤ、
236
それは
重畳
(
ちようぢやう
)
々々
(
ちようぢやう
)
。
237
先
(
ま
)
づ
其
(
その
)
神
(
かみ
)
の
化身
(
けしん
)
とやらに
会
(
あ
)
ふてみやう』
238
バル『
只今
(
ただいま
)
此処
(
ここ
)
へお
伴
(
とも
)
して
参
(
まゐ
)
りました。
239
どうか
起
(
お
)
きて
下
(
くだ
)
さい。
240
失礼
(
しつれい
)
で
厶
(
ござ
)
いますぞ』
241
シャカンナはガハとはね
起
(
お
)
き、
242
居
(
ゐ
)
ずまいを
直
(
なほ
)
し
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
と
称
(
しよう
)
する
男
(
をとこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
熟視
(
じゆくし
)
し
乍
(
なが
)
ら、
243
ニヤリと
打笑
(
うちわら
)
ひ、
244
シャ『イヨー、
245
能
(
よ
)
く
化
(
ば
)
けたものだなア。
246
売僧
(
まいす
)
もそれ
丈
(
だけ
)
立派
(
りつぱ
)
な
衣服
(
いふく
)
をつけ、
247
尊大
(
そんだい
)
ぶつて
居
(
を
)
れば、
248
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
とも、
249
素人
(
しろうと
)
の
目
(
め
)
には
見
(
み
)
えるだらう。
250
併
(
しか
)
し
俺
(
おれ
)
の
目
(
め
)
では
山子
(
やまこ
)
坊主
(
ばうず
)
とより
見
(
み
)
えないワ、
251
アハヽヽヽ。
252
オイ、
253
狸坊主
(
たぬきばうず
)
、
254
汝
(
きさま
)
は
一体
(
いつたい
)
何処
(
どこ
)
の
者
(
もの
)
だい』
255
修
(
しゆ
)
(玄真坊)
『これは
怪
(
け
)
しからぬ。
256
天来
(
てんらい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
、
257
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
たる
拙僧
(
せつそう
)
に
向
(
むか
)
つて、
258
狸坊主
(
たぬきばうず
)
とは
余
(
あま
)
りの
暴言
(
ばうげん
)
ではないか。
259
左様
(
さやう
)
な
挨拶
(
あいさつ
)
を
承
(
うけたま
)
はるべく、
260
はるばるかやうな
山奥
(
やまおく
)
へは
参
(
まゐ
)
り
申
(
まを
)
さぬ。
261
お
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬとあれば、
262
拙僧
(
せつそう
)
は
此
(
この
)
儘
(
まま
)
帰
(
かへ
)
るで
厶
(
ござ
)
らう』
263
シャ『アハヽヽヽ、
264
オイ
坊主
(
ばうず
)
、
265
さう
怒
(
おこ
)
るものぢやないよ。
266
糞尿
(
ふんねう
)
の
身
(
み
)
を
錦
(
にしき
)
に
包
(
つつ
)
み、
267
夜叉
(
やしや
)
の
心
(
こころ
)
を
菩薩
(
ぼさつ
)
の
仮衣
(
かりぎぬ
)
に
装
(
よそほ
)
うて、
268
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
を
困惑
(
こんわく
)
せしめむとする
大野心
(
だいやしん
)
を
有
(
いう
)
する
者
(
もの
)
が、
269
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
一言
(
いちごん
)
に
恐
(
おそ
)
れ、
270
早
(
はや
)
逃
(
にげ
)
仕度
(
じたく
)
を
致
(
いた
)
すとは、
2701
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
だ。
271
オイ
坊主
(
ばうず
)
、
272
汝
(
なんぢ
)
は
虚勢
(
きよせい
)
を
張
(
は
)
つて
強
(
つよ
)
相
(
さう
)
に
偉
(
えら
)
相
(
さう
)
に
構
(
かま
)
へてゐるが、
273
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
はビクビクものだらう。
274
甘
(
うま
)
い
鳥
(
とり
)
が
見
(
み
)
つかつたと
思
(
おも
)
つて、
275
コルトンの
野郎
(
やらう
)
にマンマと
騙
(
だま
)
し
込
(
こ
)
まれ、
276
来
(
き
)
てみれば
意外
(
いぐわい
)
な
硬骨
(
こうこつ
)
爺
(
おやぢ
)
、
277
さぞ
驚
(
おどろ
)
いたであらう』
278
修
(
しゆ
)
(玄真坊)
『
益々
(
ますます
)
以
(
もつ
)
て
怪
(
け
)
しからぬお
言葉
(
ことば
)
、
279
拙者
(
せつしや
)
は
愛善
(
あいぜん
)
の
徳
(
とく
)
に
住
(
ぢう
)
し、
280
信真
(
しんしん
)
の
光
(
ひかり
)
に
充
(
み
)
ち、
281
智慧
(
ちゑ
)
証覚
(
しようかく
)
の
輝
(
かがや
)
き
亘
(
わた
)
る
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
に
間違
(
まちがひ
)
厶
(
ござ
)
らぬぞや。
282
年
(
とし
)
をとられて、
283
其方
(
そなた
)
は
眼力
(
がんりき
)
がうすくなり、
284
拙僧
(
せつそう
)
の
神格
(
しんかく
)
容貌
(
ようばう
)
並
(
ならび
)
に
威光
(
ゐくわう
)
が
分
(
わか
)
らぬので
厶
(
ござ
)
らう。
285
チツと
許
(
ばか
)
り
手洗
(
てうず
)
を
使
(
つか
)
つて
来
(
き
)
なさい。
286
寝
(
ね
)
とぼけ
眼
(
まなこ
)
で
神人
(
しんじん
)
を
見
(
み
)
ようとは、
287
身分
(
みぶん
)
不相応
(
ふさうおう
)
で
厶
(
ござ
)
らうぞ』
288
シャ『アハヽヽヽ、
289
ても
偖
(
さて
)
も
面白
(
おもしろ
)
い
狸坊主
(
たぬきばうず
)
だ。
290
オイ
売僧
(
まいす
)
、
291
其
(
その
)
格好
(
かくかう
)
は
何
(
なん
)
だ、
292
肩
(
かた
)
を
四角
(
しかく
)
にしよつて、
293
チツと
削
(
けづ
)
りおとしてやらうか。
294
棚機姫
(
たなばたひめ
)
様
(
さま
)
の
天降
(
あまくだ
)
りだとか
何
(
なん
)
とか
申
(
まを
)
して、
295
良家
(
りやうか
)
の
娘
(
むすめ
)
をチヨロまかして
来
(
き
)
たのだらう。
296
どうだ、
297
俺
(
おれ
)
の
眼力
(
がんりき
)
が、
298
これでも
衰
(
おとろ
)
へて
居
(
を
)
ると
申
(
まを
)
すか。
299
可
(
い
)
いかげんに
我
(
が
)
を
折
(
を
)
り、
300
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はせ』
301
修
(
しゆ
)
(玄真坊)
『アハヽヽヽ、
302
そこ
迄
(
まで
)
看破
(
かんぱ
)
されちや、
303
モウ
仕方
(
しかた
)
がない。
304
オイ
爺
(
おやぢ
)
、
305
しつかり
聞
(
き
)
け、
306
俺
(
おれ
)
こそはトルマン
国
(
ごく
)
の
有名
(
いうめい
)
なオーラ
山
(
さん
)
に
立
(
たて
)
こもり、
307
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
、
308
天来
(
てんらい
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
と
名乗
(
なの
)
つてゐた
玄真坊
(
げんしんばう
)
の
成
(
な
)
れの
果
(
はて
)
だ。
309
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
にかけては、
310
決
(
けつ
)
して
人後
(
じんご
)
に
落
(
お
)
ちない
積
(
つも
)
りだ。
311
悪鬼
(
あくき
)
も
羅刹
(
らせつ
)
も、
312
大蛇
(
をろち
)
も
狼
(
おほかみ
)
も
313
俺
(
おれ
)
の
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いたら、
3131
跣
(
はだし
)
で
逃
(
にげ
)
出
(
だ
)
すといふ、
314
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
の
英雄
(
えいゆう
)
豪傑
(
がうけつ
)
だぞ。
315
オイ
爺
(
おやぢ
)
、
316
汝
(
きさま
)
は
山賊
(
さんぞく
)
の
張本
(
ちやうほん
)
とはいひ
乍
(
なが
)
ら、
317
何
(
なに
)
か
善
(
よ
)
からぬ
目的
(
もくてき
)
を
抱
(
かか
)
へて
此
(
こ
)
の
山砦
(
さんさい
)
に
立籠
(
たてこ
)
もり、
318
天下
(
てんか
)
を
狙
(
ねら
)
つてゐる
曲者
(
くせもの
)
であらうがな。
319
否
(
いな
)
国盗人
(
くにぬすびと
)
であらうがな。
320
爺
(
おやぢ
)
の
計画
(
けいくわく
)
は
実
(
じつ
)
に
天下
(
てんか
)
の
壮図
(
さうと
)
だ。
321
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
には、
322
爺
(
おやぢ
)
には
棟梁
(
とうりやう
)
の
真価
(
かち
)
がない。
323
否
(
いな
)
立派
(
りつぱ
)
な
参謀
(
さんぼう
)
がない。
324
痩山
(
やせやま
)
の
蕨
(
わらび
)
のやうな
代物
(
しろもの
)
許
(
ばか
)
り、
325
幾
(
いく
)
ら
集
(
あつ
)
めた
所
(
ところ
)
で、
326
何
(
なん
)
の
役
(
やく
)
にも
立
(
た
)
つものか。
327
こんなヒヨロヒヨロ
部下
(
ぶか
)
を
集
(
あつ
)
めて、
328
そんな
大望
(
たいまう
)
が
成就
(
じやうじゆ
)
すると
思
(
おも
)
うてゐるのか、
329
てもさても
迂愚
(
うぐ
)
の
骨頂
(
こつちやう
)
だな、
330
アハヽヽヽ。
331
爺
(
おやぢ
)
の
心根
(
こころね
)
がおいとしいワイ、
332
イツヒヽヽヽ』
333
シャ『ヤア、
334
此奴
(
こいつ
)
ア
面白
(
おもしろ
)
い
糞坊主
(
くそばうず
)
だ、
335
話
(
はな
)
せるワイ。
336
オイ
狸
(
たぬき
)
、
337
腕
(
うで
)
まくりでもして、
338
胡坐
(
あぐら
)
をかけ。
339
そんな
業々
(
げふげふ
)
しいコケおどしの
法服
(
ほふふく
)
を
纒
(
まと
)
うてゐると、
340
何
(
なん
)
だか
俺
(
おれ
)
も
心
(
こころ
)
から
打
(
うち
)
とけられない
気
(
き
)
がするワ。
341
鬼
(
おに
)
と
蛇
(
じや
)
との
会合
(
くわいがふ
)
だ。
342
今夜
(
こんや
)
はゆつくり
語
(
かた
)
り
明
(
あ
)
かし、
343
幸
(
さいは
)
ひに
肝胆
(
かんたん
)
相
(
あひ
)
照
(
て
)
らすを
得
(
え
)
ば、
344
どうだ
一
(
ひと
)
つ、
345
天下
(
てんか
)
取
(
と
)
りの
大
(
おほ
)
バクチを
打
(
う
)
つてみようぢやないか』
346
玄真
(
げんしん
)
『ヤア、
347
其奴
(
そいつ
)
アしやれてる。
348
ワリとは
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
爺
(
おやぢ
)
だ。
349
併
(
しか
)
し
俺
(
おれ
)
を
狸坊主
(
たぬきばうず
)
といつたが、
350
狸
(
たぬき
)
の
称号
(
しやうがう
)
丈
(
だけ
)
は
正
(
まさ
)
に
返上
(
へんじやう
)
する、
351
受取
(
うけと
)
つてくれ。
352
序
(
ついで
)
に
売僧
(
まいす
)
坊主
(
ばうず
)
の
尊称
(
そんしよう
)
も
返上
(
へんじやう
)
しておかう、
353
糞坊主
(
くそばうず
)
など
云
(
い
)
はれるのは
沙汰
(
さた
)
の
限
(
かぎ
)
りだ、
354
無礼
(
ぶれい
)
の
極
(
きよく
)
だ。
355
コラ
爺
(
おやぢ
)
、
356
之
(
これ
)
からきめておかないと
本当
(
ほんたう
)
の
話
(
はなし
)
が
出来
(
でき
)
ないワ。
357
そして
爺
(
おやぢ
)
の
女房
(
にようばう
)
の
十年忌
(
じふねんき
)
だと
云
(
い
)
つて、
358
俺
(
おれ
)
をコルトンが
引張
(
ひつぱ
)
つて
来
(
き
)
よつたのだが、
359
お
経
(
きやう
)
なんか
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
いからやめたら
何
(
ど
)
うだい。
360
心
(
こころ
)
に
豺狼
(
さいらう
)
の
欲
(
よく
)
を
逞
(
たくま
)
しうし、
361
鬼
(
おに
)
の
剣
(
けん
)
を
含
(
ふく
)
んで
毒気
(
どくき
)
を
吐
(
は
)
いた
所
(
ところ
)
で
仏
(
ほとけ
)
は
喜
(
よろこ
)
ぶまいぞ』
362
シャ『ウン、
363
汝
(
きさま
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほり
)
だ。
364
女房
(
にようばう
)
の
回向
(
ゑかう
)
をしてやつた
所
(
ところ
)
で、
365
有難
(
ありがた
)
いとも
嬉
(
うれ
)
しいともいふぢやないし、
366
又
(
また
)
汝
(
そなた
)
の
様
(
やう
)
な
売僧
(
まいす
)
坊主
(
ばうず
)
の
読経
(
どくきやう
)
を
聞
(
き
)
いた
所
(
ところ
)
で
何
(
なん
)
の
役
(
やく
)
にも
立
(
た
)
つまい。
367
英雄
(
えいゆう
)
と
英雄
(
えいゆう
)
が、
368
女房
(
にようばう
)
の
十年忌
(
じふねんき
)
の
命日
(
めいにち
)
に
会合
(
くわいがふ
)
したのは、
369
女房
(
にようばう
)
の
霊
(
れい
)
が
残
(
のこ
)
つて
居
(
を
)
れば
嘸
(
さぞ
)
喜
(
よろこ
)
ぶだらう。
370
これが
何
(
なに
)
よりの
回向
(
ゑかう
)
だ。
371
幸
(
さいは
)
ひ
今日
(
けふ
)
は
沢山
(
たくさん
)
の
馳走
(
ちそう
)
が
拵
(
こしら
)
へてある。
372
坊主
(
ばうず
)
鉢巻
(
はちまき
)
でもして、
373
大
(
おほい
)
に
鯨飲
(
げいいん
)
馬食
(
ばしよく
)
でもやつたらどうだ』
374
玄
(
げん
)
『そら
面白
(
おもしろ
)
からう、
375
大
(
おほい
)
に
吾
(
わが
)
意
(
い
)
を
得
(
え
)
てゐる。
376
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
今
(
いま
)
俺
(
おれ
)
を
売僧
(
まいす
)
坊主
(
ばうず
)
といつたね、
377
どうか
其
(
そ
)
れ
丈
(
だけ
)
は
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
りたいものだよ』
378
シャ『
狸坊主
(
たぬきばうず
)
379
糞坊主
(
くそばうず
)
の
称号
(
しやうがう
)
は
返還
(
へんくわん
)
を
受
(
う
)
けたが、
380
まだ
売僧
(
まいす
)
坊主
(
ばうず
)
の
返上
(
へんじやう
)
はなかつたやうだね。
381
売僧
(
まいす
)
坊主
(
ばうず
)
が
厭
(
いや
)
なら
山子
(
やまこ
)
坊主
(
ばうず
)
といはうか、
382
一層
(
いつそう
)
383
蛸坊主
(
たこばうず
)
は
何
(
ど
)
うだ、
384
アツハヽヽヽヽヽ』
385
玄
(
げん
)
『エー、
386
どこ
迄
(
まで
)
も
俺
(
おれ
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするのか、
387
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
様
(
さま
)
を
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
てゐるのだい』
388
シャ『
鼬
(
いたち
)
の
化身
(
けしん
)
か
貂
(
てん
)
の
化身
(
けしん
)
か
猿
(
さる
)
の
化身
(
けしん
)
か
知
(
し
)
らぬけれど、
389
随分
(
ずいぶん
)
偉
(
えら
)
い
馬力
(
ばりき
)
だな。
390
メートルもそこ
迄
(
まで
)
上
(
あ
)
げたら
天下
(
てんか
)
無敵
(
むてき
)
だらうよ、
391
ウツフヽヽヽ』
392
玄
(
げん
)
『オイ
爺
(
おやぢ
)
、
393
お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
との
仲
(
なか
)
だから、
394
狸
(
たぬき
)
といはうが、
395
汝
(
きさま
)
と
言
(
い
)
はうが
差支
(
さしつかへ
)
ないやうなものだが、
396
ここで
一
(
ひと
)
つ
大芝居
(
おほしばゐ
)
を
打
(
う
)
たうと
思
(
おも
)
へば、
397
俺
(
おれ
)
をヤツパリ
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
にしておかねば、
398
甘
(
うま
)
く
大望
(
たいまう
)
が
成功
(
せいこう
)
しないよ。
399
其
(
その
)
称号
(
しやうがう
)
から
一
(
ひと
)
つ
定
(
き
)
めておかうぢやないか』
400
シャ『
実
(
じつ
)
にシャカンナ
勢
(
いきほひ
)
だのう。
401
よしよし、
402
それでは
汝
(
きさま
)
は
天帝
(
てんてい
)
の
化身
(
けしん
)
、
403
玄真坊
(
げんしんばう
)
だから
頭字
(
かしらじ
)
と
尻
(
しり
)
の
字
(
じ
)
を
取
(
と
)
つて、
404
天真坊
(
てんしんばう
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
つたら
何
(
ど
)
うだ、
405
余
(
あま
)
り
天真
(
てんしん
)
爛漫
(
らんまん
)
な
身魂
(
みたま
)
でもないけれどな。
406
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
欺
(
あざむ
)
くには
格好
(
かくかう
)
の
名称
(
めいしよう
)
だらう』
407
玄
(
げん
)
『ヤ、
408
流石
(
さすが
)
は
山賊
(
さんぞく
)
の
親分
(
おやぶん
)
丈
(
だけ
)
あつて、
409
可
(
い
)
い
所
(
ところ
)
へ
気
(
き
)
がつくワイ。
410
天真
(
てんしん
)
なる
哉
(
かな
)
天真
(
てんしん
)
なる
哉
(
かな
)
、
411
只今
(
ただいま
)
から
天真坊
(
てんしんぼう
)
さまだぞ、
412
可
(
い
)
いか』
413
シャ『そんなら、
4131
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
、
414
何卒
(
なにとぞ
)
々々
(
なにとぞ
)
415
天下
(
てんか
)
経綸
(
けいりん
)
の
為
(
ため
)
にやつがれが
謀師
(
ぼうし
)
となり、
416
機略
(
きりやく
)
縦横
(
じうわう
)
の
神策
(
しんさく
)
を
教
(
をし
)
へて
下
(
くだ
)
さい。
417
そして
現界
(
げんかい
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり、
418
死後
(
しご
)
の
世界
(
せかい
)
迄
(
まで
)
も
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
幸福
(
かうふく
)
ならむ
事
(
こと
)
を
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
下
(
くだ
)
さいませ。
419
偏
(
ひとへ
)
に
懇願
(
こんぐわん
)
し
奉
(
たてまつ
)
ります。
420
帰命
(
きみやう
)
頂礼
(
ちやうらい
)
、
421
謹請
(
ごんじやう
)
再拝
(
さいはい
)
』
422
玄
(
げん
)
『コリヤコリヤ
爺
(
おやぢ
)
、
423
さう
俄
(
にはか
)
に
改
(
あらた
)
まつちや、
424
俺
(
おれ
)
も
何
(
なん
)
だか、
425
ウーン……
馬鹿
(
ばか
)
にされてるやうな
気
(
き
)
がしてならないワ。
426
併
(
しか
)
し
丁寧
(
ていねい
)
な
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
はれると、
427
からかはれてるとは
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら、
428
余
(
あま
)
り
気分
(
きぶん
)
の
悪
(
わる
)
くないものだ。
429
言霊
(
ことたま
)
は
神
(
かみ
)
也
(
なり
)
430
とは
実
(
じつ
)
に
能
(
よ
)
く
云
(
い
)
つたものだな、
431
アハヽヽヽ』
432
シャ『
天真坊
(
てんしんぼう
)
様
(
さま
)
、
433
御意
(
ぎよい
)
に
召
(
め
)
しましたかな。
434
ヤ、
435
やつがれも
無上
(
むじやう
)
の
光栄
(
くわうえい
)
で
厶
(
ござ
)
います。
436
壮健
(
さうけん
)
なる
御
(
ご
)
尊顔
(
そんがん
)
を
拝
(
はい
)
し、
437
やつがれ
身
(
み
)
にとり
欣喜
(
きんき
)
雀躍
(
じやくやく
)
の
至
(
いた
)
りに
堪
(
た
)
へませぬ、
438
アツハヽヽヽ』
439
玄
(
げん
)
『オイ、
440
其
(
その
)
アツハヽヽヽ
丈
(
だけ
)
をのけてくれないか』
441
シャ『ハイ
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました。
442
アツハヽヽヽ、
443
ヤ、
444
此
(
この
)
アツハヽヽヽは
撤回
(
てつくわい
)
致
(
いた
)
します、
445
アツハヽヽ。
446
エー、
447
どこ
迄
(
まで
)
もアツハヽヽの
奴
(
やつ
)
448
追撃
(
つゐげき
)
しやがる。
449
コリヤ
決
(
けつ
)
して、
450
此
(
この
)
シャカンナが
云
(
い
)
つたのぢやない。
451
悪
(
あし
)
からず
御
(
ご
)
勘弁
(
かんべん
)
を
願
(
ねが
)
ひたい。
452
イツヒヽヽ、
453
エー、
454
又
(
また
)
イツヒヽヽヽの
奴
(
やつ
)
455
尾行
(
びかう
)
し
出
(
だ
)
したな、
456
イツヒヽヽヽ』
457
(
大正一三・一二・三
新一二・二八
於祥雲閣
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 山中の火光
(B)
(N)
貂心暴 >>>
霊界物語
>
第67巻
> 第3篇 多羅煩獄 > 第14章 獣念気
Tweet
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【14 獣念気|第67巻(午の巻)|霊界物語/rm6714】
合言葉「みろく」を入力して下さい→