霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サブスクのお知らせ
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第七章 (ゆめ)(みち)〔一七九六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第71巻 山河草木 戌の巻 篇:第1篇 追僧軽迫 よみ(新仮名遣い):ついそうけいはく
章:第7章 夢の道 よみ(新仮名遣い):ゆめのみち 通し章番号:1796
口述日:1925(大正14)年11月07日(旧09月21日) 口述場所:祥明館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年2月1日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
バルギーはいつのまにか、破れ寺にやってきていて、一夜の宿を頼んでいる。
寺から現れた尼僧は、尼寺に男を泊めることはできないといってバルギーを閉め出す。
途方にくれたバルギーは野宿を覚悟するが、そこへ宿の客引き婆がやってきて、小さな宿に案内する。
婆が宿の戸を開けると、そこには牛頭・馬頭の妖怪が何十と居て、人間を食っていた。
婆は突然、真っ黒な熊となってバルギーを捕まえてしまう。客引き婆は、バルギーを妖怪の晩飯にしようと、連れてきたのであった。
バルギーは命乞いするが、熊はバルギーの悪業を数え上げる。
牛頭・馬頭の妖怪は、これまでバルギーが殺めて来た人々の化身であり、この地獄はバルギー自身が作ったものであった。
バルギーは進退きわまり、ダリヤ姫から聞き覚えた三五教の数歌を唱えた。すると、熊や牛頭馬頭の妖怪たちは次第に影が薄くなり、消えてしまった。気が付くと、枯草が生い茂る道のかたわらに、泥まみれになって倒れていた。
バルギーはよろよろと再び歩き出す。すると、以前に尼寺であった尼僧が、青黒い顔を枯草の中からあらわし、バルギーを呼び止め、自分はダリヤ姫であると名乗る。
尼僧は言う。
自分は、バルギーをだまして家まで送らせようとした、ダリヤ姫の悪念である。
不公平のない神界では、だました相手の許しを得て罪の償いをしなければならない。
そのために、このようなところにうろついている。
神谷村からバルギーが追い出されるとき、バルギーを諭すつもりで頭を三つたたいたが、その罪で、バルギーに頭を三つたたいてもらわなければ浮かばれないのだ、と語る。
バルギー尼から渡された扇子で尼の頭を三つ打つと、尼僧の姿はぱっと消えてしまった。
次に、山の向こうから「オーイオーイ」と自分を呼ぶ声がする。聞き覚えがある声に引かれてそちらに進んでいくと、たちまち東方の天から大きな火光が現れ、バルギーの面前に落下し、ドンと地響きを立てて爆発した。
気が付くと、自分はハル山峠のふもとに、がんじがらめに縛られていた。
そこへ、ダリヤ姫、玉清別、村人らがやってきて、助け起こした。
村人たちは、神素盞嗚大神の託宣により、バルギーが命をかけて玄真坊らに抵抗してダリヤ姫の居場所を明かさなかったことを知り、助けに来たのであった。
バルギーは村に運ばれ、ダリヤ姫に介抱されて玉清別の館で一ケ月ばかり養生することとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7107
愛善世界社版:89頁 八幡書店版:第12輯 532頁 修補版: 校定版:93頁 普及版:41頁 初版: ページ備考:
001 (そら)一面(いちめん)(みなぎ)つた灰色(はひいろ)(くも)所々(ところどころ)(ほころ)びて()ちさうな(あか)(くも)が、002(ところ)(まんだ)(のぞ)いてゐる。003山下(さんか)(やぶ)(でら)(のき)には(けやき)大木(たいぼく)(こがらし)()かれて、004(いち)(まい)々々(いちまい)羽衣(はごろも)()がれ(ふる)ふてゐる。005白黒斑(しろくろまだら)(からす)二三羽(にさんば)006縁起(えんぎ)(わる)(さう)なダミ(ごゑ)でガアガアとほえてゐる。007赤茶気(あかちやつけ)になつた(かはら)(かべ)()ちた(たか)(たふ)が、008あたりの全景(ぜんけい)独占(どくせん)してゐる。009諸行(しよぎやう)無常(むじやう)()ぐる梵鐘(ぼんしよう)(こゑ)は、010(この)(てら)からとも()えず(とほ)(とほ)(ひび)いてゐる。011霜柱(しもばしら)()つた(なか)()ちたる木造(きづく)りの土橋(どばし)をトボトボ(わた)一人(ひとり)(をとこ)012青竹(あをだけ)(つゑ)をつき(なが)ら、013(こし)(かが)めて、0131(たの)(たの)も」と(ちから)なげに(よば)はつてゐる。014(やぶ)障子(しやうじ)をサラリと(ひき)あけ、015ニユツと(かほ)()したのは、016形相(ぎやうさう)(すさま)じい尼僧(にそう)であつた。017尼僧(にそう)(きた)(さう)(つら)をしかめ(なが)ら、
018『お(まへ)何処(どこ)(もの)だい、019何用(なによう)あつて此処(ここ)へふん(まよ)ふて()たのだ。020(まへ)さまの()(ところ)ぢやない、021とつとと(かへ)つて(くだ)さい』
022(をとこ)(わたし)はバルギーと(まを)しまして、023チツと(ばか)()()られた(をとこ)です。024(たづ)ねしたい(もの)があつて此処(ここ)(まで)やつて(まゐ)りました。025玄真坊(げんしんばう)といふ和尚(おしやう)(この)(てら)(まゐ)つて()りませぬか』
026(あま)『そんな(かた)()りませぬよ。027とつとと(かへ)つて(くだ)さい。028(まへ)さまは此処(ここ)何処(どこ)だと(おも)つてゐるか、029(あま)(ばか)りの()んでゐるお(てら)で、030男禁制(をとこきんせい)場処(ばしよ)だ。031男子(だんし)不可入(いるべからず)立札(たてふだ)()つてゐるのに()()かないのかい』
032バル『あゝ左様(さやう)御座(ござ)いましたか、033つい、034()(くれ)まぐれに、0341(あわ)てたものですから、035つい見当(みあた)りませず、0351失礼(しつれい)(こと)(いた)しました。036(しか)(なが)斯様(かやう)()()れはて、037あたりに人家(じんか)はなし、038男禁制(をとこきんせい)かは(ぞん)じませぬが、039どうかお(には)のスミでも(よろ)しいから、040一夜(いちや)宿(やど)(ねが)ひたいもので御座(ござ)います』
041(あま)絶対(ぜつたい)になりませぬ。042男子(だんし)にものを()つてさへも(ほとけ)冥罰(めいばつ)(かうむ)りますから、043(まへ)さまの()には()()えるか()らぬが、044此処(ここ)極楽(ごくらく)浄土寺(じやうどじ)といふ立派(りつぱ)なお(てら)御座(ござ)いますよ、045サアサア(はや)くお(かへ)りなさいませ』
046()(なが)ら、047ピシヤリと(やぶ)障子(しやうじ)をしめ、048プンプンとして姿(すがた)(かく)した。049バルギーは(また)もや(はし)(わた)り、050(ちから)なげに何処(どこ)(あて)ともなく、051ヒヨロリ ヒヨロリと(あゆ)んでゆく。052半時(はんとき)(ばか)(きた)(きた)へと(すす)んだと(おも)(とき)053(うしろ)(はう)から「オーイ オーイ」と皺枯声(しわがれごゑ)張上(はりあ)(なが)ら、054(かみ)をサンバラに()(みだ)し、055八十(はちじふ)(ばか)りの(くろ)(かほ)した(ばば)アが()んで()る。056バルギーはツと立止(たちどま)り、057怪訝(けげん)(つら)をし(なが)ら、
058バル『(わし)()んだのはお(まへ)さまかな、059何用(なによう)あつて()()められたか』
060(ばば)(わし)はあの(やぶ)(くろ)に、061グレ宿(やど)をしてゐるお(くま)といふ(ばば)アだ。062どうか今晩(こんばん)(わし)(ところ)()(とま)つて(くだ)さる(わけ)には()こまいかな』
063バル『ヤア其奴(そいつ)有難(ありがた)い、064(しか)しお(ばあ)さま、065(ちひ)さいと()つても宿屋(やどや)をしてる以上(いじやう)は、066二間(ふたま)三間(みま)はあるのだらうな』
067(ばば)()心配(しんぱい)なさるな、068(ちひ)さいと()つても木賃(もくちん)ホテルだ。069(まへ)一人(ひとり)二人(ふたり)は、070どこの(すみ)でも()めて()げる』
071バル『宿賃(やどちん)(いく)らだな』
072(ばば)(いく)らでも()いから、073(まへ)のやろうと(おも)ふだけ(くだ)され、074(べつ)(よく)なこた()はないからな』
075バル『ヤア、076そんなら、077宿屋(やどや)がなくて(こま)つてた(ところ)だ、078()めて(いただ)かう』
079(ばば)アの(うしろ)について、080雑草(ざつさう)(しげ)るシクシク(ばら)四五丁(しごちやう)(ばか)()いて()くと、081(いへ)のぐるりには牛馬(ぎうば)(ふん)(うづたか)()()げられ、082臭気(しうき)紛々(ふんぷん)として(はな)をついて()る。
083バル『(ばあ)さま、084どうも(くさ)(いへ)だな。085牛馬(ぎうば)もゐないのに、086なぜ(この)(やう)沢山(たくさん)牛糞(うしぐそ)馬糞(うまぐそ)がたまつてゐるのだい』
087(ばば)毎日(まいにち)(とま)らつしやるお(きやく)さまが、088牛糞(うしぐそ)馬糞(うまぐそ)をドツサリたれて(かへ)るものだから、089これ(この)(とほ)り……(ちり)(つも)れば(やま)となる……といつて、090(くそ)(やま)出来(でき)たのだよ』
091バル『フヽン、092此奴(こいつ)(めう)だ、093人間(にんげん)(うし)グソをたれ馬糞(うまぐそ)をたれるとは()(はじめ)だ。094そんな人間(にんげん)(つら)()たいものだなア』
095(ばば)(いま)人間(にんげん)(みんな)(けだもの)だよ、096それだから(きつね)グソもたれる、097馬糞(うまぐそ)もたれる、098(たぬき)のタメ(ぐそ)(うら)(はう)沢山(たくさん)()りたれてあるから、099(なん)なら()案内(あんない)せうかな』
100バル『イヤお(ばば)さま、101モウ結構(けつこう)です。102()(かく)雨露(あめつゆ)さへ(しの)がして(いただ)けば結構(けつこう)だから、103どうか(かど)()をあけて(くだ)さいな』
104(ばば)『ヨシヨシあけて()げよう、105ビツクリをしなさるなや』
106(やぶ)()をガタつかせ、107パツと()けた。108()れば牛頭(ごづ)馬頭(めづ)妖怪(えうくわい)何十(なんじふ)とも()れず、109(には)一面(いちめん)荒蓆(あらむしろ)()き、110胡座(あぐら)をかき、111人間(にんげん)太腿(ふともも)(かひな)()のたれる(やつ)(うま)(さう)(かじ)つてゐる。112此奴(こいつ)アたまらぬと、113バルギーは()()さうとすると、114(くま)(にはか)真黒(まつくろ)けの大熊(おほくま)となり、115(くろ)(ふと)(つめ)でバルギーの(あたま)をグツと(にぎ)り、
116(くま)『コリヤコリヤ泥棒(どろばう)117()げようと()つたつて、118いつかな いつかな、119()がしはせぬぞ。120(きさま)(あぢ)(わる)いやせつぽしだけれど、121まだチツと(ばか)()(かよ)ふて()るやうだから、122ここで(ひと)荒料理(あられうり)をして()つてやろ。123あの(とほ)沢山(たくさん)なお(きやく)さまが(とま)つて御座(ござ)るけれど、124まだ一人前(いちにんまへ)()らぬので、125あれあの(とほ)り、126(おほ)きな(くち)をパクつかせて()つてゐらつしやる、127(きさま)がよい餌食(ゑじき)だ、128イヒヽヽヽ、129(なん)とマア、130バカ野郎(やらう)だな、131尼寺(あまでら)では()()され、132木賃宿(もくちんやど)(とま)つたと(おも)へば(からだ)()はれる、133(なん)()ふお(まへ)頓馬(とんま)だろう、134(あはれ)代物(しろもの)だらう、135(しか)(なが)らここにゐる136牛頭(ごづ)馬頭(めづ)のお(きやく)さまは(いづ)れも(きさま)(かね)(いのち)()られ、137畜生道(ちくしやうだう)へおち()んで、138()(ところ)へも()けず飢渇(きかつ)(せま)り、139(この)木賃宿(もくちんやど)(しらみ)だらけになつて逗留(とうりゆう)して御座(ござ)るのだ。140かうなるも(みな)(きさま)(つく)つた罪業(ざいごふ)(むく)いだから、141(たれ)不足(ふそく)はあらうまい』
142バル『モシモシお(くま)さま、143そんな殺生(せつしやう)(こと)()はずに、144どうぞ見逃(みのが)して(くだ)さいな。145一生(いつしやう)のお(ねがひ)ですから、146キツと御恩(ごおん)(むく)いますから』
147(くま)『バカを()ふない、148泥棒(どろばう)をするやうな(やつ)に、149そんな徳義心(とくぎしん)があつてたまらうかい。150(まへ)はスガの(さと)のダリヤ(ひめ)恋慕(れんぼ)(こころ)(おこ)した揚句(あげく)151(かれ)歓心(くわんしん)()むとして、152杢兵衛(もくべゑ)(うち)泥棒(どろばう)()()み、153家内中(かないぢう)をふん(じば)り、154有金(ありがね)(のこ)らずひつ(さら)へ、155門口(かどぐち)深井戸(ふかゐど)()()み、156袋叩(ふくろだた)きに()ふて、1561追放(つゐはう)された代物(しろもの)だらうがな。157そんな(やつ)万古(まんご)末代(まつだい)(たす)ける(わけ)には()かぬのだ。158(この)(ばば)がそんな(こと)をせうものなら、159悪魔(あくま)大王(だいわう)(さま)よりヒドいお目玉(めだま)頂戴(ちやうだい)せなくちやならないのだ』
160バル『いかにも、161せぬとは(まを)しませぬ、162泥棒(どろばう)(はい)りました。163(しか)(なが)()つた(もの)はすつかり(かへ)したのですから、164(かへ)した(あと)(まで)(ばつ)せられちや(たま)りませぬワ、165(かへ)せば元々(もともと)ぢやありませぬか』
166(くま)(この)問題(もんだい)問題(もんだい)として、167(きさま)(これ)(まで)随分(ずいぶん)沢山(たくさん)(をんな)強姦(がうかん)し、168(ひと)(ころ)し、169(かね)()つたであらうがな、170あの牛頭(ごづ)馬頭(めづ)のお(きやく)さまをみよ、171(みな)(おぼ)えがあらうがな。172ここは(きさま)(つく)つた地獄(ぢごく)だから観念(くわんねん)したが()からうぞや』
173 (うし)()うな(つの)()やした真黒(まつくろ)けの()だらけの(をとこ)174のそりのそりと、175(くま)176バルギーの(まへ)ににじり(きた)り、177カラ カラ カラと大口(おほぐち)をあけて(うち)(わら)ひ、
178(をとこ)『コーリヤ、179バルギー、180(おれ)(つら)見知(みし)つてゐるか、181ヨモヤ(わす)れは(いた)そまいがな。182二十三(にじふさん)()月待(つきまち)()183(おれ)大事(だいじ)(むすめ)二三(にさん)(にん)小盗人(こぬすと)(とも)(うば)()りにふん()んだ矢先(やさき)へ、184(おれ)(むすめ)(わた)さじと(ちから)(かぎ)抵抗(ていかう)したら、185(きさま)牛刀(ぎうたう)(ひき)()いて、186(おれ)(はら)をグサツとつき、187(くるし)(おれ)尻目(しりめ)にかけ、188悪口(あくこう)(たた)いて(かへ)つた(こと)があらうがな。189サ、190()(ところ)()た。191これから(おれ)(その)(うらみ)をはらす(ため)(なぶり)(ごろし)にした(うへ)192(にく)(ほね)(たた)いて、193(この)牛腹(ぎうふく)(はうむ)つてやる(つもり)だ。194(おれ)折角(せつかく)人間(にんげん)(うま)れて、195(きさま)(ため)(いのち)()られ、196(その)怨恨(ゑんこん)(かさ)なつて、197牛頭(ごづ)魔王(まわう)とまで()(さが)つたのだ、198修羅(しゆら)妄執(まうしふ)をはらすのは(いま)(この)(とき)だ。199イヤイヤ(おれ)(ばか)りでない、200此処(ここ)にゐる連中(れんぢう)は、201どれもこれも(きさま)毒手(どくしゆ)にかかつた(あは)れな人間(にんげん)(なれ)(はて)(ばか)りだ。202ジタバタしても、203モウ(のが)れつこはないぞ、204念仏(ねんぶつ)でも(とな)へて覚悟(かくご)をしたが()からう。205てもさても小気味(こぎみ)のよい(こと)だな、206アハヽヽヽ』
207一同(いちどう)牛頭(ごづ)馬頭(めづ)怪物(くわいぶつ)(こゑ)(そろ)へて、208天地(てんち)もわれむ(ばか)りに鯨波(とき)(こゑ)をあげた。
209 バルギーは進退(しんたい)(これ)(きは)まり、210一生(いつしやう)懸命(けんめい)にダリヤ(ひめ)から聞覚(ききおぼ)えた三五教(あななひけう)数歌(かずうた)を、211(ほそ)いかすつた(こゑ)(しぼ)つて、212(ひと)(ふた)()()(いつ)(むゆ)(なな)()(ここの)(たり)(もも)()(よろづ)と、213やつとの(こと)(とな)()げた。214牛頭(ごづ)馬頭(めづ)(およ)びお(くま)(など)215一同(いちどう)妖怪(えうくわい)次第(しだい)々々(しだい)(かげ)うすくなり、216(つひ)には跡型(あとかた)もなく(きえ)()せた。217あたりをみれば、218枯草(かれくさ)()(しげ)細路(ほそみち)(かたへ)自分(じぶん)着衣(ちやくい)(どろ)まぶれにして(たふ)れてゐた。219バルギーは(やうや)くにして立上(たちあが)り、
220『ヤーア、221大変(たいへん)(ゆめ)()たものだ、222コラ一体(いつたい)何処(どこ)だろう、223(くら)さは(くら)し、224斯様(かやう)なシクシク(ばら)にねる(わけ)にも()かず、225(みち)(とほ)(もの)はなし、226(こま)つたものだな。227エー仕方(しかた)がない、228コンパスの(つづ)(とこ)まで()つてみよう。229(また)(この)(やう)(ところ)(よこた)はつてゐて、230あんな(おそろ)しい(ゆめ)()ては仕方(しかた)がない』
231(つぶや)(なが)232屠所(としよ)()かるる(ひつじ)(ごと)くヨボヨボとコンパスの運転(うんてん)(はじ)めかけた。233(みち)(かたへ)以前(いぜん)古寺(ふるでら)出会(であ)つた尼僧(にそう)(ただ)一人(ひとり)234青黒(あをぐろ)(つら)をニユツと枯草(かれくさ)(なか)から(あら)はし(なが)ら、
235『モシモシ』
236()んでゐる。237バルギーはギヨツとし(なが)ら、
238『ヤア、239(まへ)さまは最前(さいぜん)()にかかつた尼僧(にそう)ぢやないか、240こんな(ところ)(なに)して御座(ござ)るのだい』
241(あま)(わたし)ですかいな、242貴下(あなた)よく御存(ごぞん)じでせう、243ダリヤ(ひめ)御座(ござ)いますよ』
244バル『ヘーン、245馬鹿(ばか)にしなさんな、246ダリヤさまはそんな青黒(あをぐろ)いしなびたお(かほ)ぢやありませぬわ。247(まへ)さまは大方(おほかた)豆狸(まめだぬき)だらう、248最前(さいぜん)尼僧(にそう)()けてゐるのだらう』
249(あま)『イエイエ、250(けつ)して(けつ)して、251(わたし)豆狸(まめだぬき)でも(なん)でも御座(ござ)いませぬ。252タニグク(だに)泥棒(どろばう)岩窟(がんくつ)玄真坊(げんしんばう)(ため)におびき()され、253(その)急場(きふば)(のが)れむと鬼心(おにごころ)()して、254自分(じぶん)美貌(びばう)(たて)に、255(まへ)さまに(ほれ)たと()せかけ、256(わが)()(まで)(おく)らさうとした悪念(あくねん)(つよ)い、257(わたし)副守(ふくしゆ)(れい)御座(ござ)います。258どうぞ一言(ひとこと)(ゆる)してやると仰有(おつしや)つて(くだ)さい。259さうでないと(わたし)(うか)ばれませぬから、260(かみ)(さま)世界(せかい)はチツとの不公平(ふこうへい)御座(ござ)いませぬ、261貴方(あなた)(あざむ)いた(だけ)(つみ)はどうしても(つぐな)はねばなりませぬので、262斯様(かやう)(ところ)にウロついて()りまする』
263バル『いかにも、264よくよく()ればどつか()(ところ)がある(やう)だ。265ヤ、266(わたし)貴女(あなた)(たい)しては(じつ)()まない無礼(ぶれい)(こと)(まを)しました。267(しか)(なが)(ゆる)すも(ゆる)さぬもありませぬ、268どうぞ安心(あんしん)して(くだ)さいませ』
269(あま)(わらは)貴下(あなた)をウマウマと(だま)した(うへ)270(おそ)(おほ)くも(つみ)()()(なが)ら、271貴下(あなた)()意見(いけん)(まを)(つもり)(かみ)(さま)宿(やど)(たま)ふお(つむり)(みつ)(ばか)(たた)いたで御座(ござ)いませう、272(その)(つみ)(あたま)(この)(とほ)禿(はげ)テコとなり、273かやうな(ところ)にウロついて()るので御座(ござ)います。274(あたま)()つべき資格(しかく)なくして(あたま)()つたのが大変(たいへん)(つみ)となつたので御座(ござ)います』
275バル『(なん)とマア、276(かみ)(さま)規則(きそく)といふ(もの)(むつ)しいものですな、277そんなら(おそ)(なが)ら、278(わたくし)(くは)へた無礼(ぶれい)(つみ)を、279(あらた)めて(ゆる)しませう』
280(あま)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います。281どうぞ貴下(あなた)のお()(この)扇子(せんす)(もつ)(わたし)(あたま)()()つて(くだ)さい』
282バル『ヤア、283これはこれは()均等(きんとう)さまに、284左様(さやう)ならば(おほ)せに(したが)御免(ごめん)(かうむ)りませう』
285といひ(なが)ら、286(かる)くポンポンポンと扇子(せんす)(むね)三度(さんど)()つた。287これつきり尼僧(にそう)姿(すがた)はパツと(けむり)(ごと)()えて(しま)つた。288「オーイオーイ」と向方(むかふ)(やま)()から(わが)()(よび)とめる(もの)がある。289(その)(こゑ)(なん)となく聞覚(ききおぼえ)があるので、290バルギーは(ひき)ずらるる(ごと)心地(ここち)(なが)ら、291(こゑ)する(はう)何時(いつ)とはなしに(すす)んで()つた。292(たちま)(てん)(こが)して東方(とうはう)より一大(いちだい)火光(くわくわう)(あら)はれ、293バルギーの面前(めんぜん)落下(らくか)し、294ドンと地響(ぢひびき)うつて爆発(ばくはつ)した途端(とたん)()がつけば、295自分(じぶん)はハル山峠(やまたうげ)(ふもと)草原(くさばら)雁字搦(がんじがらみ)(くく)られて(たふ)れてゐた(こと)(わか)つた。296バルギーは(いまし)められた(まま)297(やうや)くにして()(おこ)し、298(くさ)(うへ)胡座(あぐら)をかき、299(そら)ゆく(くも)(なが)めてゐると、300そこへスタスタとやつて()たのは、301ダリヤ(ひめ)302玉清別(たまきよわけ)303(およ)数人(すうにん)村人(むらびと)であつた。
304ダリ『オヤ、305バルギー(さま)306おいとしや、307何者(なにもの)にさう(しば)られたので御座(ござ)いますか、308サアサア(みな)さま、309(はや)(いまし)めを()いて()げて(くだ)さい』
310バル『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います、311(おも)はぬ(やつ)(いさか)ひをやり、312何分(なにぶん)腰骨(こしぼね)()つて(よわ)つてゐたものですから、313(もろ)くも(てき)にくくられ、314()取失(とりうしな)つて()たやうです、315ようマアー()(くだ)さいました』
316ダリ『バルギーさま、317貴方(あなた)本当(ほんたう)()(かた)(かた)ですね、318玉清別(たまきよわけ)神司(かむづかさ)(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)(くだ)らせ(たま)ひ、319ハル山峠(やまたうげ)(ふもと)(おい)て、320玄真坊(げんしんばう)(その)()(もの)(せめ)られ、321(わらは)在所(ざいしよ)詰問(きつもん)され(なが)ら、322(いのち)(まと)にお(かく)(くだ)さつた(その)義侠心(ぎけふしん)323(かみ)(さま)大変(たいへん)おほめ(あそ)ばし、324(いち)()(はや)(たす)けに()けよとの()宣示(せんじ)325()るものも()(あへ)ずお(たす)けに(まゐ)りました。326どうか()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
327バル『イヤ、328これはこれは恐入(おそれい)りまする。329(おん)(れい)(まを)(あげ)(やう)御座(ござ)いませぬ。330(ただ)(この)(とほ)りで御座(ござ)います』
331落涙(らくるゐ)(なが)合掌(がつしやう)する。
332玉清(たまきよ)『バルギー(さま)333貴方(あなた)男気(をとこぎ)には感心(かんしん)(いた)しました。334どうか(わたくし)(うち)()(かへ)し、335(こし)(きづ)(なほ)(まで)()養生(やうじやう)なさつたら如何(どう)ですか、336(いま)(かご)(まゐ)りますから』
337バル『(わたくし)のやうな悪人(あくにん)をそこ(まで)(おも)ふて(くだ)さいますか、338ヤ、339モウ(これ)(かぎ)(わる)(こと)(いた)しませぬ。340天性(てんせい)善人(ぜんにん)(かへ)り、341社会(しやくわい)(ため)(みち)(ため)一生(いつしやう)(ささ)げる(かんが)へで御座(ござ)います。342何分(なにぶん)(よろ)しう()(ねがひ)(まをし)ます』
343 (これ)よりバルギーは村人(むらびと)(かつ)がれ、344ダリヤ(ひめ)(とも)玉清別(たまきよわけ)神館(かむやかた)(やまひ)(やしな)ひ、345ダリヤ(ひめ)手厚(てあつ)介抱(かいはう)()(なが)ら、346(いつ)(げつ)(ばか)逗留(とうりう)する(こと)となつた。347あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
348大正一四・一一・七 旧九・二一 於祥明館 松村真澄録)
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki