春山峠の南に、春山村という小部落があった。その一軒家にカンコという男が、名前も知れぬ病にかかって臥せっていた。
友人のキンスが見舞いにやってくる。キンスは病の原因を尋ねる。
カンコは、去年の夏にタラハン市の呉服屋に行き、そこで買い物をした時、呉服屋の娘インジンに恋焦がれてしまった。その後、インジンがカンコの家までわざわざやってきて、何か書き物をくれたのだが、それが恋文じゃないかと思ったとたん、病に臥せってしまったのだと言う。
キンスは、字の読めないカンコに代わって、その書き物を読んでやる。それは、カンコが買った木綿の請求書であった。
キンスは気の病を治すためには申の年・申の月・申の日・申の刻に生まれた女の生胆が効くという噂を信じて、友の恋の病を治すために、自分の妹の生胆をとろうとする。
妹のリンジャンを呼んでくるが、そこへ玄真坊一行が暴れこんできて金銭を要求する。
玄真坊はリンジャンの美貌を見て、気を引こうと、にわかに僧侶となり、自分は二人の泥棒からリンジャンを守ろうとしたのだ、と格好をつける。
しかしリンジャンは玄真坊の顔を見て、自分の妹をだまして汚したオーラ山の偽救世主だと見破り、役人を呼ぼうと外へ駆け出してしまった。
玄真坊らは役人が来る前にさっさと逃げ出してしまう。