霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第16巻(卯の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 神軍霊馬
01 天橋立
〔591〕
02 暗夜の邂逅
〔592〕
03 門番の夢
〔593〕
04 夢か現か
〔594〕
05 秋山館
〔595〕
06 石槍の雨
〔596〕
07 空籠
〔597〕
08 衣懸松
〔598〕
09 法螺の貝
〔599〕
10 白狐の出現
〔600〕
第2篇 深遠微妙
11 宝庫の鍵
〔601〕
12 捜索隊
〔602〕
13 神集の玉
〔603〕
14 鵜呑鷹
〔604〕
15 谷間の祈
〔605〕
16 神定の地
〔606〕
17 谷の水
〔607〕
第3篇 真奈為ケ原
18 遷宅婆
〔608〕
19 文珠如来
〔609〕
20 思はぬ歓
〔610〕
21 御礼参詣
〔611〕
跋
霊の礎(一)
霊の礎(二)
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。
実験用サイト
|
サブスク
霊界物語
>
第16巻
> 第1篇 神軍霊馬 > 第1章 天橋立
<<< 総説歌
(B)
(N)
暗夜の邂逅 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第一章
天橋立
(
あまのはしだて
)
〔五九一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
篇:
第1篇 神軍霊馬
よみ(新仮名遣い):
しんぐんれいば
章:
第1章 天橋立
よみ(新仮名遣い):
あまのはしだて
通し章番号:
591
口述日:
1922(大正11)年04月05日(旧03月09日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
顕恩郷を鬼雲彦から取り戻した神素盞嗚大神の娘たち・八乙女らだったが、鬼雲彦は東に逃げて教線を延ばした。
神素盞嗚大神が千座の置戸を負って追放された後は、五人の娘たちは邪神に囚われて、小さな舟に乗せられて海原に捨てられてしまった。
英子姫は従者の悦子姫とともに舟に捨てられ、長く苦しい航海の末に天の橋立の竜燈松の根元に着いた。
そこへ四五人のバラモン教の捕り手が現れて、英子姫らを探し始めた。しかし捕り手たちは酒に酔っている。鬼虎は英子姫を幽霊だと思って腰を抜かしてしまう。
悦子姫は捕り手たちに霊縛をかけて、その間に主従二人はその場を逃げ出す。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-05 22:20:25
OBC :
rm1601
愛善世界社版:
11頁
八幡書店版:
第3輯 405頁
修補版:
校定版:
11頁
普及版:
4頁
初版:
ページ備考:
001
葦原
(
あしはら
)
の
瑞穂
(
みづほ
)
の
国
(
くに
)
に
名
(
な
)
にしおふ
002
メソポタミヤの
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
003
ノアの
子孫
(
しそん
)
と
生
(
うま
)
れたる
004
ハムの
一族
(
いちぞく
)
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
005
バラモン
教
(
けう
)
を
楯
(
たて
)
となし
006
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
を
標榜
(
へうぼう
)
し
007
現
(
うつつ
)
の
世
(
よ
)
をば
軽
(
かろ
)
んじて
008
魂
(
たま
)
の
行方
(
ゆくへ
)
の
幽界
(
かくりよ
)
を
009
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
の
住所
(
すみか
)
ぞと
010
教
(
をし
)
へ
諭
(
さと
)
すはよけれども
011
名実
(
めいじつ
)
共
(
とも
)
に
叶
(
かな
)
はねば
012
醜
(
しこ
)
の
曲事
(
まがごと
)
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
013
潮
(
うしほ
)
の
如
(
ごと
)
く
拡
(
ひろ
)
がりて
014
天
(
あめ
)
の
下
(
した
)
なる
神人
(
しんじん
)
は
015
苦
(
くるし
)
み
悶
(
もだ
)
え
村肝
(
むらきも
)
の
016
心
(
こころ
)
ねぢけて
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
017
世
(
よ
)
は
常暗
(
とこやみ
)
と
曇
(
くも
)
り
行
(
ゆ
)
く
018
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
019
醜神
(
しこがみ
)
率
(
ひき
)
ゐる
曲鬼
(
まがおに
)
を
020
言向和
(
ことむけやは
)
し
豊
(
ゆたか
)
なる
021
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
を
樹
(
た
)
てむとて
022
恵
(
めぐみ
)
も
広
(
ひろ
)
き
瑞霊
(
みづみたま
)
023
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
024
教
(
をしへ
)
を
開
(
ひら
)
く
八乙女
(
やおとめ
)
の
025
珍
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
をば
遣
(
つか
)
はして
026
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
が
身辺
(
しんぺん
)
を
027
見守
(
みまも
)
り
給
(
たま
)
ひ
曲神
(
まがかみ
)
の
028
醜
(
しこ
)
の
健
(
たけ
)
びを
鎮
(
しづ
)
めむと
029
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
030
肝太玉
(
きもふとだま
)
の
命
(
みこと
)
をば
031
遣
(
つか
)
はし
給
(
たま
)
ひ
八乙女
(
やおとめ
)
と
032
心
(
こころ
)
を
併
(
あは
)
せ
力
(
ちから
)
をば
033
一
(
ひと
)
つになして
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
034
治
(
をさ
)
め
給
(
たま
)
ひし
折柄
(
をりから
)
に
035
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りし
036
バラモン
教
(
けう
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
037
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
一類
(
いちるゐ
)
は
038
フサの
国
(
くに
)
をば
打渡
(
うちわた
)
り
039
あちらこちらに
教線
(
けうせん
)
を
040
布
(
し
)
きつつ
進
(
すす
)
む
魔
(
ま
)
の
力
(
ちから
)
041
斯
(
か
)
かる
時
(
とき
)
しも
天教山
(
てんけうざん
)
の
042
高天原
(
たかあまはら
)
に
大御神
(
おほみかみ
)
は
043
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
に
隠
(
かく
)
ろひて
044
暗
(
くら
)
さは
暗
(
くら
)
し
烏羽玉
(
うばたま
)
の
045
闇
(
やみ
)
に
徨
(
さまよ
)
ふ
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
046
人
(
ひと
)
の
憂
(
うれ
)
ひに
附
(
つ
)
け
入
(
い
)
りて
047
時
(
とき
)
を
得顔
(
えがほ
)
の
曲神
(
まがかみ
)
は
048
益々
(
ますます
)
荒
(
すさ
)
び
初
(
そ
)
めにけり
049
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
050
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
はせつつ
051
何処
(
いづく
)
を
当
(
あて
)
と
長
(
なが
)
の
旅
(
たび
)
052
姿
(
すがた
)
隠
(
かく
)
して
千万
(
ちよろづ
)
の
053
悩
(
なや
)
みに
遭
(
あ
)
はせ
給
(
たま
)
ひつつ
054
八千八
(
はつせんや
)
声
(
こゑ
)
の
時鳥
(
ほととぎす
)
055
血
(
ち
)
を
吐
(
は
)
く
思
(
おも
)
ひの
旅
(
たび
)
の
空
(
そら
)
056
遠
(
とほ
)
き
近
(
ちか
)
きの
隔
(
へだ
)
てなく
057
八洲
(
やしま
)
の
国
(
くに
)
を
漂浪
(
さすらひ
)
の
058
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
果
(
はて
)
ぞ
憐
(
あはれ
)
なる
059
勢
(
いきほひ
)
猛
(
たけ
)
き
竜神
(
たつがみ
)
も
060
時
(
とき
)
を
得
(
え
)
ざれば
身
(
み
)
を
潜
(
ひそ
)
め
061
蠑螈
(
いもり
)
蚯蚓
(
みみづ
)
と
成
(
な
)
り
果
(
は
)
てて
062
塵
(
ちり
)
や
芥
(
あくた
)
に
潜
(
ひそ
)
むごと
063
高天原
(
たかあまはら
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
064
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
弟
(
おとうと
)
と
065
生
(
うま
)
れ
出
(
い
)
でたる
大神
(
おほかみ
)
も
066
いと
浅猿
(
あさま
)
しき
罪神
(
つみがみ
)
の
067
怪
(
あや
)
しき
御名
(
みな
)
に
包
(
つつ
)
まれて
068
心
(
こころ
)
も
曇
(
くも
)
る
五月空
(
さつきぞら
)
069
空
(
そら
)
行
(
ゆ
)
く
雲
(
くも
)
の
果
(
はて
)
しなく
070
親
(
おや
)
に
離
(
はな
)
れし
雛鳥
(
ひなどり
)
の
071
愛
(
いと
)
しき
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
姫御子
(
ひめみこ
)
は
072
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
き
曲神
(
まがかみ
)
の
073
捕虜
(
とりこ
)
となりて
痛
(
いた
)
はしく
074
塩
(
しほ
)
の
八百路
(
やほぢ
)
の
八潮路
(
やしほぢ
)
の
075
大海原
(
おほうなばら
)
に
捨小船
(
すてをぶね
)
076
波
(
なみ
)
のまにまに
漂
(
ただよ
)
ひつ
077
海路
(
うなぢ
)
も
遠
(
とほ
)
き
竜宮
(
りうぐう
)
の
078
魔神
(
まがみ
)
の
猛
(
たけ
)
ぶ
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
079
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
や
錫蘭
(
しろ
)
の
島
(
しま
)
080
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
や
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
081
波
(
なみ
)
のまにまに
流
(
なが
)
されて
082
ここに
姉妹
(
おとどひ
)
五柱
(
いつはしら
)
083
詮術
(
せんすべ
)
さへも
浪
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
084
涙
(
なみだ
)
の
雨
(
あめ
)
にうるほひつ
085
雨
(
あめ
)
風
(
かぜ
)
霜
(
しも
)
に
打
(
う
)
たれつつ
086
漂泊
(
さすら
)
ひ
給
(
たま
)
ふぞ
苛
(
いぢら
)
しき
087
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
088
霊
(
みたま
)
に
生
(
あ
)
れます
八柱
(
やはしら
)
の
089
乙女
(
おとめ
)
の
中
(
なか
)
にも
秀
(
ひい
)
でたる
090
姿
(
すがた
)
優
(
やさ
)
しき
英子姫
(
ひでこひめ
)
091
容
(
みめ
)
も
貌
(
かたち
)
も
悦子姫
(
よしこひめ
)
の
092
待女
(
じぢよ
)
を
引
(
ひき
)
つれ
朽
(
く
)
ち
果
(
は
)
てし
093
危
(
あやふ
)
き
生命
(
いのち
)
の
捨小船
(
すてをぶね
)
094
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
日数
(
ひかず
)
を
重
(
かさ
)
ね
095
年
(
とし
)
も
二八
(
にはち
)
の
若狭湾
(
わかさわん
)
096
身
(
み
)
の
行先
(
ゆくさき
)
はどうなりと
097
成生
(
なりふ
)
の
岬
(
みさき
)
を
後
(
あと
)
にして
098
昨日
(
きのふ
)
や
経
(
きやう
)
ケ
岬
(
みさき
)
をば
099
右手
(
めて
)
に
眺
(
なが
)
めて
宮津湾
(
みやづわん
)
100
神
(
かむ
)
伊弉諾
(
いざなぎ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
101
いねます
間
(
うち
)
に
倒
(
たふ
)
れしと
102
言
(
い
)
ひ
伝
(
つた
)
へたる
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
103
長
(
なが
)
く
浮
(
う
)
かべる
橋立
(
はしだて
)
の
104
切
(
き
)
り
戸
(
ど
)
を
越
(
こ
)
えて
成相
(
なりあひ
)
の
105
山
(
やま
)
の
嵐
(
あらし
)
に
吹
(
ふ
)
かれつつ
106
漸
(
やうや
)
く
心地
(
ここち
)
も
与謝
(
よさ
)
の
海
(
うみ
)
107
波
(
なみ
)
も
柔
(
やはら
)
ぐ
竜灯
(
りうとう
)
の
108
松
(
まつ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
着
(
つ
)
きにける。
109
二人
(
ふたり
)
は
舟
(
ふね
)
を
棄
(
す
)
てて、
110
竜灯松
(
りうとうまつ
)
の
根元
(
ねもと
)
に
漸
(
やうや
)
く
上陸
(
じやうりく
)
したり。
111
折柄
(
をりから
)
の
烈風
(
れつぷう
)
海面
(
かいめん
)
を
撫
(
な
)
で、
112
峰
(
みね
)
吹
(
ふ
)
き
渡
(
わた
)
る
松風
(
まつかぜ
)
の
音
(
おと
)
は、
113
一層
(
ひとしほ
)
寂寥
(
せきれう
)
の
感
(
かん
)
を
与
(
あた
)
へたり。
114
寒
(
さむ
)
さ
身
(
み
)
に
沁
(
し
)
む
夕暮
(
ゆふぐれ
)
の
空
(
そら
)
、
115
ねぐら
求
(
もと
)
めて
立帰
(
たちかへ
)
る
烏
(
からす
)
の
群
(
むれ
)
幾千羽
(
いくせんば
)
、
116
カワイカワイと
啼
(
な
)
き
立
(
た
)
て
乍
(
なが
)
ら、
117
大江山
(
おほえやま
)
の
方面
(
はうめん
)
指
(
さ
)
して
翔
(
かけ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
118
雲
(
くも
)
の
衣
(
ころも
)
は
破
(
やぶ
)
れて、
119
処々
(
ところどころ
)
より
天書
(
ほし
)
の
光
(
ひかり
)
瞬
(
またた
)
き
始
(
はじ
)
めける。
120
二人
(
ふたり
)
は
路傍
(
ろばう
)
に
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
し、
121
来
(
こ
)
し
方
(
かた
)
行末
(
ゆくすゑ
)
の
身
(
み
)
を
案
(
あん
)
じ
煩
(
わづら
)
ひつつ、
122
ヒソビソ
物語
(
ものがた
)
る。
123
悦子姫
(
よしこひめ
)
『
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
、
124
メソポタミヤの
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
を
立出
(
たちい
)
でましてより、
125
情無
(
つれな
)
き
魔神
(
まがみ
)
の
為
(
ため
)
に、
126
朽
(
く
)
ち
果
(
は
)
てたる
舟
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せられ、
127
押流
(
おしなが
)
された
時
(
とき
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば、
128
夢
(
ゆめ
)
の
様
(
やう
)
で
御座
(
ござ
)
いますなア。
129
それにしても、
130
君子姫
(
きみこひめ
)
様
(
さま
)
始
(
はじ
)
め、
131
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は、
132
どふやも
計
(
はか
)
り
難
(
がた
)
しうなられましたでせう、
133
……
貴女
(
あなた
)
の
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
に
此処
(
ここ
)
へお
着
(
つ
)
きになつたに
就
(
つ
)
いて、
134
四柱
(
よはしら
)
の
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
135
心
(
こころ
)
にかかる
冬
(
ふゆ
)
の
空
(
そら
)
、
136
情
(
つれ
)
無
(
な
)
き
凩
(
こがらし
)
に
吹
(
ふ
)
き
捲
(
ま
)
くられ、
137
冷
(
つめ
)
たき
人
(
ひと
)
のさいなみに、
138
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
かせ
給
(
たま
)
ふやも
計
(
はか
)
り
難
(
がた
)
し、
139
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
此処
(
ここ
)
もやつぱり
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
が
縄張
(
なはばり
)
の
内
(
うち
)
、
140
ウカウカすれば、
141
又
(
また
)
もや
如何
(
いか
)
なる
憂目
(
うきめ
)
にあはされむも
計
(
はか
)
られませぬ。
142
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
森林
(
しんりん
)
に
身
(
み
)
を
忍
(
しの
)
び、
143
一夜
(
ひとや
)
を
明
(
あ
)
かし、
144
山越
(
やまごし
)
に
聖地
(
せいち
)
を
指
(
さ
)
して
参
(
まゐ
)
りませうか』
145
英子姫
(
ひでこひめ
)
『アさうだな、
146
長居
(
ながゐ
)
は
恐
(
おそ
)
れ、
147
何
(
なん
)
とかせなくてはなりますまい。
148
それに
就
(
つい
)
ても
姉妹
(
きやうだい
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
149
今頃
(
いまごろ
)
は
何処
(
いづく
)
の
果
(
はて
)
に
悩
(
なや
)
み
煩
(
わづら
)
ふならむか』
150
と
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
151
暫
(
しば
)
し
涙
(
なみだ
)
に
沈
(
しづ
)
む。
152
暫
(
しば
)
しあつて
英子姫
(
ひでこひめ
)
は
頭
(
かうべ
)
をあげ、
153
英子姫
『アヽ
思
(
おも
)
ふまい
思
(
おも
)
ふまい、
154
何事
(
なにごと
)
も
刹那心
(
せつなしん
)
、
155
惟神
(
かむながら
)
に
任
(
まか
)
すより
途
(
みち
)
はない、
156
サア
悦子姫
(
よしこひめ
)
、
157
急
(
いそ
)
ぎませう』
158
と
立上
(
たちあが
)
らむとする
所
(
ところ
)
へ、
159
近付
(
ちかづ
)
き
来
(
きた
)
る
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
の
声
(
こゑ
)
、
160
ハツと
驚
(
おどろ
)
き
逃
(
に
)
げむとする
時
(
とき
)
しも
如何
(
いかが
)
はしけむ、
161
英子姫
(
ひでこひめ
)
は
其
(
その
)
場
(
ば
)
にピタリと
倒
(
たふ
)
れたり。
162
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
探
(
さぐ
)
り
探
(
さぐ
)
りて
磯端
(
いそばた
)
の
水
(
みづ
)
を
手
(
て
)
に
掬
(
すく
)
ひ
口
(
くち
)
に
含
(
ふく
)
み、
163
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
面部
(
めんぶ
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
伊吹
(
いぶき
)
の
狭霧
(
さぎり
)
を
吹
(
ふ
)
きかけたるに、
164
英子姫
(
ひでこひめ
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
顔
(
かほ
)
をあげ、
165
英子姫
『アヽ
悦子姫
(
よしこひめ
)
どの、
166
又
(
また
)
もや
吾身
(
わがみ
)
を
襲
(
おそ
)
ふ
持病
(
ぢびやう
)
の
癪
(
しやく
)
、
167
モウ
斯
(
か
)
うなつては
一足
(
ひとあし
)
も
歩
(
ある
)
かれませぬ、
168
敵
(
てき
)
に
捉
(
とら
)
はれては
一大事
(
いちだいじ
)
、
169
そなたは
妾
(
わらは
)
に
構
(
かま
)
はず
疾
(
と
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
落
(
お
)
ち
延
(
の
)
びなさい。
170
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
171
と
苦
(
くる
)
しき
息
(
いき
)
の
下
(
した
)
より
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
つるを、
172
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
揮
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
173
悦子姫
『
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
、
174
何
(
なん
)
と
仰
(
あふ
)
せられます。
175
大切
(
たいせつ
)
な
主人
(
しゆじん
)
の
危難
(
きなん
)
を
見棄
(
みす
)
てて、
176
どうして
是
(
こ
)
れが
逃
(
に
)
げられませうか、
177
仮令
(
たとへ
)
如何
(
いか
)
なる
運命
(
うんめい
)
に
陥
(
おちい
)
る
共
(
とも
)
、
178
主従
(
しゆじゆう
)
死生
(
しせい
)
を
共
(
とも
)
にし、
179
未来
(
みらい
)
は
必
(
かなら
)
ず
一蓮
(
いちれん
)
托生
(
たくしやう
)
と
詔
(
の
)
らせ
給
(
たま
)
ひしお
詞
(
ことば
)
は、
180
妾
(
わらは
)
が
胸
(
むね
)
に
深
(
ふか
)
く
刻
(
きざ
)
み
込
(
こ
)
まれ、
181
一日
(
ひとひ
)
片時
(
かたとき
)
も
忘
(
わす
)
れた
暇
(
ひま
)
とては
御座
(
ござ
)
いませぬ。
182
どうぞ
妾
(
わらは
)
に
介抱
(
かいほう
)
させて
下
(
くだ
)
さいませ』
183
と
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
しにければ、
184
英子姫
(
ひでこひめ
)
は、
185
英子姫
『エヽ
聞分
(
ききわ
)
けのない
悦子姫
(
よしこひめ
)
、
186
妾
(
わらは
)
は
病身
(
びやうしん
)
の
体
(
からだ
)
、
187
仮令
(
たとへ
)
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
無事
(
ぶじ
)
に
遁
(
のが
)
るればとて、
188
再
(
ふたた
)
び
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
の、
189
何時
(
いつ
)
病
(
やまひ
)
に
犯
(
をか
)
され、
190
悪神
(
あくがみ
)
の
為
(
ため
)
に
捉
(
とら
)
はるるやも
計
(
はか
)
り
難
(
がた
)
し、
191
汝
(
なんぢ
)
は
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
り、
192
聖地
(
せいち
)
をさして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
かれよ』
193
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
首
(
くび
)
を
振
(
ふ
)
り、
194
悦子姫
『イエイエ、
195
何
(
なん
)
と
仰
(
おほ
)
せられても、
196
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
去
(
さ
)
ることは
忍
(
しの
)
ばれませぬ』
197
英子姫
『エヽ
聞分
(
ききわ
)
けのない、
198
主人
(
しゆじん
)
の
言葉
(
ことば
)
を
汝
(
なんぢ
)
は
背
(
そむ
)
くか。
199
妾
(
わらは
)
は
今
(
いま
)
より
主従
(
しゆじゆう
)
の
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
るぞゑ』
200
悦子姫
『
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
、
201
縁
(
えん
)
を
切
(
き
)
るとはお
情
(
なさけ
)
無
(
な
)
い
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
……』
202
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
203
暗
(
やみ
)
に
閃
(
ひらめ
)
く
両刃
(
もろは
)
の
短刀
(
たんたう
)
、
204
英子姫
(
ひでこひめ
)
は、
205
病
(
やまひ
)
に
苦
(
くるし
)
む
身
(
み
)
を
打忘
(
うちわす
)
れ、
206
手早
(
てばや
)
く
悦子姫
(
よしこひめ
)
の
腕
(
うで
)
を、
207
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
握
(
にぎ
)
り
締
(
し
)
め、
208
涙声
(
なみだごゑ
)
、
209
英子姫
『
逸
(
はや
)
まるな
悦子姫
(
よしこひめ
)
、
210
其方
(
そなた
)
は
壮健
(
さうけん
)
なる
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
211
一日
(
ひとひ
)
も
永
(
なが
)
く
生
(
い
)
き
長
(
なが
)
らへて、
212
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
に
巡
(
めぐ
)
り
会
(
あ
)
ひ、
213
妾
(
わらは
)
姉妹
(
おとどひ
)
が
消息
(
せうそく
)
を
伝
(
つた
)
へて
呉
(
く
)
れねばならぬ。
214
サアどうぞ
気
(
き
)
を
取直
(
とりなほ
)
し、
215
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
216
………アレあの
通
(
とほ
)
り
間近
(
まぢか
)
く
聞
(
きこ
)
える
人々
(
ひとびと
)
の
声
(
こゑ
)
、
217
見付
(
みつ
)
けられては
一大事
(
いちだいじ
)
、
218
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く……』
219
と
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
て
玉
(
たま
)
へば、
220
悦子姫
『ぢやと
申
(
まを
)
して
此
(
こ
)
れが、
221
どうして
見逃
(
みのが
)
せませう。
222
仮令
(
たとへ
)
主従
(
しゆじゆう
)
の
縁
(
えん
)
は
切
(
き
)
られても、
223
是
(
こ
)
れが
見棄
(
みす
)
てて
行
(
ゆ
)
けませうか』
224
英子姫
『
主人
(
しゆじん
)
が
一生
(
いつしやう
)
の
頼
(
たの
)
みぢや、
225
どうぞ
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
226
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふ
間
(
うち
)
にも
人
(
ひと
)
の
足音
(
あしおと
)
サア
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
227
と
小声
(
こごゑ
)
に
急
(
せ
)
き
立
(
た
)
てる。
228
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
後髪
(
うしろがみ
)
引
(
ひ
)
かるる
心地
(
ここち
)
して、
229
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
見棄
(
みす
)
てかね、
230
心
(
こころ
)
二
(
ふた
)
つに
身
(
み
)
は
一
(
ひと
)
つ、
231
胸
(
むね
)
を
砕
(
くだ
)
く
時
(
とき
)
こそあれ、
232
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
荒男
(
あらをとこ
)
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
り、
233
稍
(
やや
)
酒気
(
しゆき
)
を
帯
(
お
)
びたる
銅羅声
(
どらごゑ
)
にて、
234
男(鬼虎)
『ナナ
何
(
なん
)
だ、
235
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
立去
(
たちさ
)
れとは、
236
それや
誰
(
たれ
)
に
吐
(
ぬ
)
かすのだい、
237
立去
(
たちさ
)
るも、
238
立去
(
たちさ
)
らぬ、
239
もあつたものかい、
240
俺
(
おれ
)
は
今
(
いま
)
大江山
(
おほえやま
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしよう
)
の
命令
(
めいれい
)
を
受
(
う
)
けて、
241
此処
(
ここ
)
へ
漂着
(
へうちやく
)
して
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
の、
242
二人
(
ふたり
)
の
女
(
あま
)
つちよ
を
捉
(
とら
)
まへようと
思
(
おも
)
つて、
243
立現
(
たちあら
)
はれた
所
(
ところ
)
だ。
244
立去
(
たちさ
)
れも
糞
(
くそ
)
も
有
(
あ
)
つたものかい、
245
………ヘン、
246
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするない、
247
石熊
(
いしくま
)
の
野郎
(
やらう
)
め、
248
貴様
(
きさま
)
は
何時
(
いつ
)
も
暗
(
くら
)
がりになると
怪
(
け
)
つ
体
(
たい
)
の
悪
(
わる
)
い、
249
女
(
をんな
)
の
泣声
(
なきごゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて………チツト
男
(
をとこ
)
らしうせないかい』
250
と
云
(
い
)
ひつつ
拳骨
(
げんこつ
)
を
固
(
かた
)
めて、
251
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
の
横
(
よこ
)
つ
面
(
つら
)
をポカンと
打
(
う
)
つたり。
252
石熊
(
いしくま
)
は、
253
石熊
『アイタタ、
254
コラ
鬼虎
(
おにとら
)
の
奴
(
やつ
)
、
255
馬鹿
(
ばか
)
にしやがるない』
256
と
又
(
また
)
もや、
257
石熊
(
いしくま
)
は、
258
石熊
『サア
返礼
(
へんれい
)
だ』
259
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
260
鬼虎
(
おにとら
)
の
横
(
よこ
)
つ
面
(
つら
)
を
続
(
つづ
)
け
打
(
うち
)
に、
261
腕
(
うで
)
の
折
(
を
)
れるほど
擲
(
なぐ
)
り
付
(
つ
)
ける。
262
其
(
その
)
機
(
はづみ
)
に
鬼虎
(
おにとら
)
はヨロヨロとヨロめいて、
263
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
の
上
(
うへ
)
にドサンと
倒
(
たふ
)
れ、
264
鬼虎
(
おにとら
)
は、
265
鬼虎
『ワアー、
266
恐
(
おそ
)
ろしい、
267
……ヤイヤイ
出
(
で
)
やがつた、
268
毛
(
け
)
の
長
(
なが
)
い……
色
(
いろ
)
の
青
(
あを
)
い、
269
冷
(
つめた
)
い
奴
(
やつ
)
ぢや。
270
コラ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
271
俺
(
おれ
)
を
伴
(
つ
)
れて
逃
(
に
)
げぬかい』
272
石熊
(
いしくま
)
は、
273
暗
(
くら
)
がりより、
274
石熊
『アハヽヽヽ、
275
態
(
ざま
)
ア
見
(
み
)
やがれ、
276
臆病者
(
おくびやうもの
)
奴
(
め
)
が……オイオイ
皆
(
みな
)
の
連中
(
れんぢう
)
、
277
彼奴
(
あいつ
)
ア、
278
酒
(
さけ
)
に
喰
(
くら
)
ひ
酔
(
よ
)
つて、
279
あんな
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
やがつたのだ、
280
ウツカリ
傍
(
そば
)
へ
行
(
ゆ
)
かうものなら、
281
暗
(
くら
)
がりに
握拳
(
にぎりこぶし
)
を
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
されて、
282
目玉
(
めだま
)
が
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
るような
目
(
め
)
に
遇
(
あ
)
はされるぞ。
283
……
行
(
ゆ
)
くな
行
(
ゆ
)
くな、
284
まあジツと
酔
(
よ
)
ひの
醒
(
さ
)
める
迄
(
まで
)
、
285
容子
(
ようす
)
を
見
(
み
)
て
居
(
を
)
らうぢやないか……アーア
俺
(
おれ
)
も
大分
(
だいぶ
)
に
酔
(
ゑひ
)
がまはつた、
286
どうやら
足
(
あし
)
が
隠居
(
いんきよ
)
した
様
(
やう
)
だワイ』
287
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
大声
(
おほごゑ
)
で、
288
男(熊鷹)
『
一体
(
いつたい
)
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
、
289
何
(
なん
)
の
為
(
ため
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
手当
(
てあて
)
を
貰
(
もら
)
つて
偵察
(
ていさつ
)
に
歩
(
ある
)
いて
居
(
ゐ
)
るのだい……
其
(
その
)
足
(
あし
)
は
何
(
なん
)
だ、
290
肝腎要
(
かんじんかなめ
)
の
正念場
(
しやうねんば
)
になつて、
291
足
(
あし
)
を
取
(
と
)
られると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものかい、
292
チツと
確
(
しつか
)
りせないか』
293
石熊
(
いしくま
)
『
有
(
あ
)
るとも
有
(
あ
)
るとも、
294
俺
(
おれ
)
やアル
中
(
ちう
)
だ』
295
男
(熊鷹)
『アルチウと
云
(
い
)
つても、
296
歩
(
ある
)
いて
居
(
を
)
らぬぢやないか』
297
石熊
『アルコール
中毒
(
ちうどく
)
だ、
298
邪魔
(
じやま
)
臭
(
くさ
)
いから、
299
アル
中
(
ちう
)
と
云
(
い
)
つたのだい、
300
………アーア、
301
もう
一足
(
ひとあし
)
もアル
中
(
ちう
)
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬ
様
(
やう
)
になつたワイ………。
302
コラ
熊鷹
(
くまたか
)
の
野郎
(
やらう
)
、
303
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なん
)
だ、
304
他人
(
ひと
)
にばつかり
偉相
(
えらさう
)
に
云
(
い
)
ひよつて……
貴様
(
きさま
)
も
足
(
あし
)
が
変
(
へん
)
テコぢやないか』
305
熊鷹
(
くまたか
)
『チチチツと、
306
なんだ、
307
何
(
なん
)
して……
居
(
ゐ
)
るものだから、
308
いまこそは、
309
千鳥
(
ちどり
)
にあらめノチハ、
310
ナトリニアラムヲ、
311
イノチハ、
312
ナシセタマヘソ、
313
イシトウヤ、
314
アマハセヅカイ、
315
アマノハシダテ、
316
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
見失
(
みうしな
)
ひ、
317
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
様
(
さま
)
に、
318
コトノカタリゴトモコウバだ、
319
アハヽヽヽ。
320
アヲヤマニ、
321
ヒガカクラバ、
322
ヌバタマノヨハイデナン、
323
アサヒノ、
324
エミサカヘキテ、
325
タクヅヌノ、
326
シロキタダムキ、
327
アワユキノ、
328
ワカヤルムネヲ、
329
ソダタキ、
330
タタキマナガリ、
331
マタマデタマデ、
332
サシマキ、
333
モモナガニ、
334
イヲシナセ、
335
トヨミキタテマツラセ……てな
事
(
こと
)
を
宅
(
うち
)
の
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
奴
(
め
)
が
仰有
(
おつしや
)
りまして、
336
ついトヨミキをアカニノホに
飲
(
きこ
)
し
召
(
め
)
したのだ。
337
神酒
(
みき
)
は
甕瓶
(
みかのへ
)
高
(
たか
)
しり、
338
甕
(
みか
)
のはら
満
(
み
)
て
並
(
なら
)
べて、
339
海河
(
うみかは
)
山野
(
やまぬの
)
種々
(
くさぐさ
)
の
珍物
(
うましもの
)
を
横山
(
よこやま
)
の
如
(
ごと
)
く、
340
うまらに、
341
つばらに
飲食
(
きこしめ
)
し、
342
大海原
(
おほうなばら
)
に
船
(
ふね
)
充
(
み
)
ち
続
(
つづ
)
けて、
343
陸
(
くが
)
より
行
(
ゆ
)
く
路
(
みち
)
を、
344
荷
(
に
)
の
緒
(
を
)
結
(
ゆひ
)
かため、
345
駒
(
こま
)
の
蹄
(
つめ
)
の
至
(
いた
)
り
止
(
とど
)
まる
限
(
かぎ
)
り、
346
………
熊鷹
(
くまたか
)
の
爪
(
つめ
)
は、
347
随分
(
ずゐぶん
)
長
(
なが
)
いぞ。
348
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
吐
(
ぬ
)
かすと、
349
石熊
(
いしくま
)
の
菊石面
(
あばたづら
)
を
抓
(
つめ
)
つてやらう、
350
イヤサ
掻
(
か
)
きむしらうかい、
351
ウーンウン アハヽヽヽ』
352
石熊
(
いしくま
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだい、
353
お
役目
(
やくめ
)
大切
(
たいせつ
)
に
致
(
いた
)
さぬかい、
354
コンナ
処
(
ところ
)
へ、
355
暗
(
くら
)
まぎれに、
356
二人
(
ふたり
)
の
娘
(
むすめ
)
が
遣
(
や
)
つて
来
(
き
)
よつたら、
357
貴様
(
きさま
)
どうする
積
(
つも
)
りだ。
358
彼奴
(
あいつ
)
ア、
359
中々
(
なかなか
)
女
(
をんな
)
に
似合
(
にあ
)
はぬ
腕利
(
うでき
)
きと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ、
360
経
(
きよう
)
ケ
岬
(
みさき
)
の
虎彦
(
とらひこ
)
が
急報
(
きふはう
)
に
依
(
よ
)
つて、
361
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
より
火急
(
くわきふ
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
、
362
しつかり
致
(
いた
)
さぬと、
363
反対
(
あべこべ
)
にやられて
了
(
しま
)
ふぞ。
364
アーツ、
365
エーツ、
366
ガ、
367
ガアー、
368
ガラガラガラガラ』
369
熊鷹
(
くまたか
)
は、
370
熊鷹
『アア
臭
(
くさ
)
いワイ、
371
酒
(
さけ
)
や
飯
(
めし
)
の
混合
(
こんがふ
)
した
滝
(
たき
)
を、
372
人
(
ひと
)
の
顔
(
かほ
)
の
上
(
うへ
)
へ
流
(
なが
)
しよつて、
373
……
胸
(
むね
)
の
悪
(
わる
)
い……エエ、
374
アどうやら
俺
(
おれ
)
もへへへへ、
375
へどが
出
(
で
)
さうな。
376
オイコラ、
377
おとら……ヲヲ
桶
(
をけ
)
を
持
(
も
)
て
来
(
こ
)
い、
378
………
背
(
せなか
)
を
叩
(
たた
)
け、
379
ガアヽヽヽガラガラガラガラ』
380
鬼虎
(
おにとら
)
は
震
(
ふる
)
ひ
声
(
ごゑ
)
で、
381
鬼虎
『オオオイ、
382
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なに
)
を
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ、
383
早
(
はや
)
く
来
(
こ
)
ぬかい、
384
俺
(
おれ
)
をかたげて
逃
(
に
)
げてくれ、
385
何
(
なん
)
だか
怪体
(
けたい
)
な、
386
ババ
化州
(
ばけしう
)
が
出
(
で
)
やがつたゾ』
387
石熊
(
いしくま
)
は、
388
石熊
『エー
喧
(
やかま
)
し
吐
(
ぬか
)
すない、
389
……
俺
(
おれ
)
の
口
(
くち
)
から
大洪水
(
だいこうずゐ
)
が
出
(
で
)
て、
390
人家
(
じんか
)
殆
(
ほとん
)
ど
流失
(
りうしつ
)
、
391
死傷
(
ししやう
)
算
(
さん
)
なしと
云
(
い
)
ふ
惨状
(
さんじやう
)
だ、
392
貴様
(
きさま
)
を
助
(
たす
)
ける
所
(
どころ
)
かい、
393
非常組
(
ひじやうぐみ
)
でも
繰出
(
くりだ
)
して
救援
(
きうゑん
)
に
向
(
むか
)
はぬかい、
394
ガラガラガラガラ』
395
熊鷹
(
くまたか
)
『エー
怪
(
け
)
つ
体
(
たい
)
の
悪
(
わる
)
い、
396
合点
(
がてん
)
の
往
(
ゆ
)
かぬ
夜
(
よ
)
さだナア、
397
此処
(
ここ
)
まで
来
(
き
)
たと
思
(
おも
)
へば、
398
俄
(
にはか
)
にピタリと
足
(
あし
)
が
止
(
と
)
まり、
399
まるで
地
(
つち
)
から
生
(
は
)
えた
木
(
き
)
の
様
(
やう
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
400
……ヤイ
何
(
なん
)
とかして
俺
(
おれ
)
の
足
(
あし
)
を
動
(
うご
)
く
様
(
やう
)
にせぬかい』
401
暗
(
くら
)
がりより、
402
高(?)
『
動
(
うご
)
く
様
(
やう
)
にせいと
云
(
い
)
つたつて、
403
俄
(
にはか
)
に、
404
鋸
(
のこ
)
の
持合
(
もちあは
)
せがないから、
405
根
(
ね
)
から
伐
(
き
)
つてやる
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
406
マア
冬
(
ふゆ
)
が
来
(
き
)
て、
407
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
が
散
(
ち
)
り、
408
枯木
(
かれき
)
になる
迄
(
まで
)
辛抱
(
しんばう
)
したが
宜
(
よ
)
からう。
409
さうすりや
又
(
また
)
、
410
三五教
(
あななひけう
)
ぢやないが、
411
枯木
(
かれき
)
に
冷
(
つめ
)
たい
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
かうも
知
(
し
)
れぬぞ、
412
ワハヽヽヽ』
413
熊鷹
(
くまたか
)
『エ、
414
エ、
415
どいつも
此奴
(
こいつ
)
も、
416
腰
(
こし
)
の
弱
(
よわ
)
い
奴
(
やつ
)
許
(
ばか
)
りだナア』
417
鬼虎
(
おにとら
)
『ヤーイ、
418
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
419
どうやら
此奴
(
こいつ
)
ア、
420
目的
(
もくてき
)
の
二人
(
ふたり
)
の
奴
(
やつ
)
らしいぞ、
421
しつかりして
生捕
(
いけどり
)
にせうぢやないか』
422
石熊
(
いしくま
)
『ナ、
423
ナ、
424
何
(
なん
)
ぢやア、
425
貴様
(
きさま
)
、
426
最前
(
さいぜん
)
から
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けたと
吐
(
ぬ
)
かしよつて、
427
綺麗
(
きれい
)
な
女
(
をんな
)
の
二人
(
ふたり
)
の
上
(
うへ
)
に、
428
ムツクリと
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
よつたのか、
429
抜目
(
ぬけめ
)
のない
奴
(
やつ
)
だのう』
430
鬼虎
(
おにとら
)
『まだ
目
(
め
)
は
抜
(
ぬ
)
けぬが、
431
サツパリ
腰
(
こし
)
が
抜
(
ぬ
)
けたのだ。
432
……
誰
(
たれ
)
か
腰
(
こし
)
の
抜
(
ぬ
)
けぬ
奴
(
やつ
)
、
433
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
此奴
(
こいつ
)
を
縛
(
しば
)
らないか。
434
どうやら
癪
(
しやく
)
を
起
(
お
)
こして
居
(
ゐ
)
るらしい、
435
今
(
いま
)
フン
縛
(
じば
)
るのなら、
436
容易
(
ようい
)
なものだ……コラ
石熊
(
いしくま
)
、
437
熊鷹
(
くまたか
)
、
438
早
(
はや
)
く
来
(
き
)
て
捕縛
(
ほばく
)
せよ』
439
熊鷹
(
くまたか
)
『
何
(
なん
)
だか
今日
(
けふ
)
は
日和
(
ひより
)
が
悪
(
わる
)
いので、
440
キヽヽ
気
(
き
)
に
喰
(
く
)
はぬので……ヲヽヽ
叔母
(
をば
)
の
命日
(
めいにち
)
だから
殺生
(
せつしやう
)
は
廃
(
や
)
めとこかい、
441
……コラ、
442
ヤイヤイ
石熊
(
いしくま
)
、
443
今日
(
けふ
)
は
貴様
(
きさま
)
の
番
(
ばん
)
だ、
444
貴様
(
きさま
)
に
手柄
(
てがら
)
を
譲
(
ゆづ
)
つてやらう』
445
石熊
(
いしくま
)
『
俺
(
おれ
)
も
何
(
なん
)
だか
今日
(
けふ
)
は
気
(
き
)
が
進
(
すす
)
まぬワイ、
446
女房
(
にようばう
)
の
命日
(
めいにち
)
だから、
447
殺生
(
せつしやう
)
はやめとこかい』
448
熊鷹
(
くまたか
)
『アハヽヽヽ、
449
貴様
(
きさま
)
、
450
女房
(
にようばう
)
も
持
(
も
)
つた
事
(
こと
)
のないのに、
451
命日
(
めいにち
)
が
何処
(
どこ
)
にあるか、
452
馬鹿
(
ばか
)
にするない』
453
石熊
(
いしくま
)
『
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
は
貴様
(
きさま
)
知
(
し
)
らぬのか、
454
ザツと
十八
(
じふはち
)
人
(
にん
)
だ、
455
其
(
その
)
中
(
なか
)
に
一番
(
いちばん
)
大事
(
だいじ
)
のお
春
(
はる
)
が
今日
(
けふ
)
死
(
し
)
ンだ
日
(
ひ
)
ぢや、
456
彼女
(
あれ
)
が
俺
(
おれ
)
の
霊
(
みたま
)
の
女房
(
にようばう
)
だ。
457
アーア
思
(
おも
)
へば
可哀相
(
かはいさう
)
な
事
(
こと
)
をしたワイ、
458
オンオンだ』
459
鬼虎
(
おにとら
)
『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬ
)
かしやがる、
460
ソラ
隣
(
となり
)
の
八兵衛
(
はちべゑ
)
の
女房
(
にようばう
)
だらう、
461
間違
(
まちが
)
へると
云
(
い
)
つても、
462
嬶
(
かかあ
)
を
取違
(
とりちが
)
へる
奴
(
やつ
)
がどこにあるかい』
463
石熊
(
いしくま
)
『
俺
(
おれ
)
は
勝手
(
かつて
)
に
俺
(
おれ
)
の
心
(
こころ
)
で
女房
(
にようばう
)
にして
居
(
を
)
つたのだ。
464
アンアンアン、
465
思
(
おも
)
へば
可憐
(
いぢ
)
らしい
事
(
こと
)
をしたワイの、
466
オンオンだい』
467
英子姫
(
ひでこひめ
)
は、
468
英子姫
『ヤア
悦子姫
(
よしこひめ
)
殿
(
どの
)
、
469
妾
(
わらは
)
も
其方
(
そなた
)
の
親切
(
しんせつ
)
なる
介抱
(
かいほう
)
で
快
(
こころよ
)
くなりました。
470
サアサア
二人
(
ふたり
)
揃
(
そろ
)
うて
行
(
ゆ
)
きませう』
471
悦子姫
『ハア
夫
(
そ
)
れは
夫
(
そ
)
れは
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います、
472
是
(
こ
)
れと
申
(
まを
)
すも
全
(
まつた
)
く
御
(
おん
)
父
(
ちち
)
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の……』
473
英子姫
(
ひでこひめ
)
は
小声
(
こごゑ
)
で、
474
英子姫
『シツ』
475
と
制
(
せい
)
しながら、
476
口
(
くち
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
てたまへば、
477
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
早速
(
さつそく
)
の
頓智
(
とんち
)
、
478
悦子姫
『
是
(
こ
)
れと
申
(
まを
)
すも
全
(
まつた
)
くお
酒
(
さけ
)
の
爛
(
かん
)
が
荒
(
すさ
)
びましたので、
479
皆様
(
みなさま
)
があの
通
(
とほ
)
り、
480
妾
(
わらは
)
達
(
たち
)
に
余興
(
よきよう
)
をして
見
(
み
)
せて
下
(
くだ
)
さいますのですなア。
481
ここへお
月様
(
つきさま
)
でも
上
(
あが
)
つて
下
(
くだ
)
さいましたら、
482
さぞ
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
でせうに、
483
………お
声
(
こゑ
)
許
(
ばか
)
りで
見栄
(
みばえ
)
が
御座
(
ござ
)
いませぬ、
484
耳
(
みみ
)
で
見
(
み
)
て、
485
目
(
め
)
で
聞
(
き
)
けとの
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
教
(
をしへ
)
、
486
ホヽヽヽ』
487
熊鷹
(
くまたか
)
『ヤイヤイヤイ、
488
貴様
(
きさま
)
は
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
娘
(
むすめ
)
であらう、
489
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだい、
490
耳
(
みみ
)
で
見
(
み
)
るの
目
(
め
)
で
聞
(
き
)
くのと、
491
まるでババ
化物
(
ばけもの
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
吐
(
ぬか
)
す
奴
(
やつ
)
だ。
492
コリヤ
女
(
をんな
)
、
493
そこ
動
(
うご
)
くなツ』
494
悦子姫
(
よしこひめ
)
は、
495
悦子姫
『オホヽヽヽ
皆
(
みな
)
さま、
496
動
(
うご
)
くなと
仰有
(
おつしや
)
つても、
497
何
(
なん
)
だか
体
(
からだ
)
が
独
(
ひと
)
り
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
動
(
うご
)
いて
仕方
(
しかた
)
がありませぬワ、
498
皆
(
みな
)
さまは
動
(
うご
)
きたいと
思
(
おも
)
つても
動
(
うご
)
けますまい、
499
妾
(
わらは
)
が
一寸
(
ちよつと
)
霊縛
(
れいばく
)
をかけて
置
(
お
)
きましたからネー、
500
マアマア
御寛
(
ごゆる
)
りと
管
(
くだ
)
でも
巻
(
ま
)
いて
夜徹
(
よあ
)
かしをなさいませ、
501
……
左様
(
さやう
)
ならば
皆
(
みな
)
さま、
502
お
気
(
き
)
の
毒様
(
どくさま
)
乍
(
なが
)
ら、
503
お
先
(
さき
)
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
します………あの、
504
もし
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
、
505
サア
斯
(
こ
)
うお
出
(
い
)
でなさいませ』
506
英子姫
(
ひでこひめ
)
は、
507
英子姫
『ホヽヽヽ
皆様
(
みなさま
)
、
508
御寛
(
ごゆる
)
りと、
509
何
(
なに
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬが、
510
ヘドなつと
掻
(
か
)
き
集
(
あつ
)
めて、
511
ネーおあがり
遊
(
あそ
)
ばせ。
512
あなたのお
身
(
み
)
の
内
(
うち
)
から
出
(
で
)
た
物
(
もの
)
、
513
あなたの
又
(
また
)
お
身
(
み
)
の
内
(
うち
)
へお
入
(
い
)
れ
遊
(
あそ
)
ばすのだ。
514
人
(
ひと
)
を
呪
(
のろ
)
はば
穴
(
あな
)
二
(
ふた
)
つ、
515
おのれに
出
(
い
)
でて
己
(
おの
)
れに
帰
(
かへ
)
るとかや、
516
あな
有難
(
ありがた
)
や
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
守
(
まも
)
り』
517
と
行
(
ゆ
)
かむとするを、
518
鬼虎
(
おにとら
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
裾
(
すそ
)
を
握
(
にぎ
)
つた
儘
(
まま
)
放
(
はな
)
さぬ。
519
英子姫
(
ひでこひめ
)
『ヤア
厭
(
いや
)
なこと、
520
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
、
521
妾
(
わらは
)
の
裾
(
すそ
)
を
握
(
にぎ
)
つてチツとも
放
(
はな
)
して
呉
(
く
)
れないワ』
522
悦子姫
(
よしこひめ
)
『どうしませう………アヽさうさう、
523
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
が
姫君
(
ひめぎみ
)
様
(
さま
)
のお
裾
(
すそ
)
を
握
(
にぎ
)
つた
儘
(
まま
)
霊縛
(
れいばく
)
をかけられたものですから、
524
其
(
その
)
儘
(
まま
)
凝
(
かたま
)
つて
了
(
しま
)
つたのでせう。
525
ホヽヽヽ、
526
是
(
こ
)
れは
偉
(
えら
)
い
不調法
(
ぶてうはふ
)
致
(
いた
)
しました。
527
……コリヤコリヤ
此
(
この
)
鬼
(
おに
)
の
様
(
やう
)
な
片腕
(
かたかいな
)
、
528
霊縛
(
れいばく
)
を
解
(
と
)
いて
遣
(
や
)
る、
529
サア
放
(
はな
)
せ』
530
『ウン』と
一声
(
ひとこゑ
)
、
531
鬼虎
(
おにとら
)
の
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
はパラリと
解
(
と
)
けたりける。
532
英子姫
(
ひでこひめ
)
『アヽ
有難
(
ありがた
)
う、
533
是
(
こ
)
れで
放
(
はな
)
れました』
534
石熊
(
いしくま
)
『ヤイヤイ
鬼虎
(
おにとら
)
の
奴
(
やつ
)
、
535
案
(
あん
)
に
違
(
たが
)
はず、
536
女
(
をんな
)
の
裾
(
すそ
)
をひつぱつて
居
(
ゐ
)
やがつたな、
537
ナマクラな
奴
(
やつ
)
だ。
538
よしよし
貴様
(
きさま
)
の
嬶
(
かかあ
)
に、
539
明朝
(
みやうてう
)
早々
(
さうさう
)
告発
(
こくはつ
)
だ、
540
さう
覚悟
(
かくご
)
致
(
いた
)
せ』
541
熊鷹
(
くまたか
)
『ナニ
心配
(
しんぱい
)
するな、
542
俺
(
おれ
)
が
特別
(
とくべつ
)
弁護人
(
べんごにん
)
になつて
喋々
(
てふてふ
)
と
弁論
(
べんろん
)
をまくし
立
(
た
)
ててやるから、
543
キツト
石熊
(
いしくま
)
の
敗訴
(
はいそ
)
だ、
544
無罪
(
むざい
)
放免
(
はうめん
)
になつた
上
(
うへ
)
、
545
損害
(
そんがい
)
賠償
(
ばいしやう
)
を
此方
(
こちら
)
から
提起
(
ていき
)
してやらうか、
546
アハヽヽヽ』
547
英子姫
(
ひでこひめ
)
、
548
悦子姫
(
よしこひめ
)
は
暗
(
やみ
)
に
紛
(
まぎ
)
れてスタスタと、
549
何処
(
いづく
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
没
(
ぼつ
)
したりける。
550
後
(
あと
)
には
海面
(
かいめん
)
を
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
、
551
天鼓
(
てんこ
)
の
如
(
ごと
)
くドドンドドンと
鳴
(
な
)
り
響
(
ひび
)
きぬ。
552
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
は
暗
(
くら
)
がりより、
553
破
(
やぶ
)
れ
太鼓
(
だいこ
)
の
様
(
やう
)
な
声
(
こゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げて、
554
五人
『オーイオーイ、
555
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
、
556
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
てい。
557
オーイオーイ、
558
かやせ、
559
戻
(
もど
)
せい……』
560
と
熊谷
(
くまがい
)
もどきに
叫
(
さけ
)
び
居
(
ゐ
)
たりけり。
561
(
大正一一・四・五
旧三・九
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 総説歌
(B)
(N)
暗夜の邂逅 >>>
霊界物語
>
第16巻
> 第1篇 神軍霊馬 > 第1章 天橋立
Tweet
文芸社文庫『あらすじで読む霊界物語』絶賛発売中!
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【01 天橋立|第16巻(卯の巻)|霊界物語/rm1601】
合言葉「みろく」を入力して下さい→