霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第16巻(卯の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 神軍霊馬
01 天橋立
〔591〕
02 暗夜の邂逅
〔592〕
03 門番の夢
〔593〕
04 夢か現か
〔594〕
05 秋山館
〔595〕
06 石槍の雨
〔596〕
07 空籠
〔597〕
08 衣懸松
〔598〕
09 法螺の貝
〔599〕
10 白狐の出現
〔600〕
第2篇 深遠微妙
11 宝庫の鍵
〔601〕
12 捜索隊
〔602〕
13 神集の玉
〔603〕
14 鵜呑鷹
〔604〕
15 谷間の祈
〔605〕
16 神定の地
〔606〕
17 谷の水
〔607〕
第3篇 真奈為ケ原
18 遷宅婆
〔608〕
19 文珠如来
〔609〕
20 思はぬ歓
〔610〕
21 御礼参詣
〔611〕
跋
霊の礎(一)
霊の礎(二)
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。
実験用サイト
|
サブスク
霊界物語
>
第16巻
> 第1篇 神軍霊馬 > 第8章 衣懸松
<<< 空籠
(B)
(N)
法螺の貝 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第八章
衣懸松
(
きぬかけまつ
)
〔五九八〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
篇:
第1篇 神軍霊馬
よみ(新仮名遣い):
しんぐんれいば
章:
第8章 衣懸松
よみ(新仮名遣い):
きぬかけまつ
通し章番号:
598
口述日:
1922(大正11)年04月14日(旧03月18日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
怪しい男女二人は、地中から這い出てきた。それはウラナイ教の高姫と、そのお付の青彦であった。この岩窟は、二人が隠れ家としていたものであった。
高姫は、鬼雲彦のように悪を標榜して悪をなすのは馬鹿だ、神素盞嗚大神の教えを嘘だと言って教え子を食い殺す、などの自説を悦に入って展開する。
そこへ鬼雲彦が手勢を率いてやってきて、ウラナイ教の二人を捕らえようと、岩窟の蓋の大岩を除こうとするが、岩はびくともしない。
そこへ今度は亀彦、英子姫、悦子姫らがやってきて、言霊で鬼雲彦の軍勢を追い散らしてしまった。一行は祝詞を唱えて休息していると、高姫、青彦がやってきた。
高姫は、峠の向こうの衣懸松の自宅に一行を誘って教えを説こうとする。高姫と亀彦はおかしな問答をした後、亀彦一行は高姫についていく。しかし、高姫宅は火事の猛火で焼け落ちている最中であった。
高姫と青彦は慌てて物を持ち出そうとするが、猛火に袖を焼かれて川に落ちてしまう。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-01-27 17:07:00
OBC :
rm1608
愛善世界社版:
100頁
八幡書店版:
第3輯 437頁
修補版:
校定版:
104頁
普及版:
43頁
初版:
ページ備考:
001
大江山
(
おほえやま
)
の
本城
(
ほんじやう
)
に
間近
(
まぢか
)
くなつた
童子
(
どうじ
)
ケ
淵
(
ふち
)
の
傍
(
かたはら
)
に
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
二人
(
ふたり
)
の
男女
(
だんぢよ
)
、
002
又
(
また
)
もや
地中
(
ちちう
)
より
這
(
は
)
ひ
出
(
い
)
でて、
003
岩戸
(
いはと
)
の
入口
(
いりぐち
)
を
打眺
(
うちなが
)
め、
004
青彦
(
あをひこ
)
『ヤア
高姫
(
たかひめ
)
さま、
005
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
006
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
入口
(
いりぐち
)
を、
007
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
き
千引
(
ちびき
)
の
岩
(
いは
)
を
以
(
もつ
)
て
塞
(
ふさ
)
ぎよつたと
見
(
み
)
えます。
008
幸
(
さいは
)
ひ
脱
(
ぬ
)
け
穴
(
あな
)
より
斯
(
か
)
うして
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たものの、
009
万一
(
まんいち
)
此
(
この
)
穴
(
あな
)
がなかつたならば
吾々
(
われわれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
に
魂
(
たま
)
を
抜
(
ぬ
)
かれた
鬼彦
(
おにひこ
)
一派
(
いつぱ
)
の
奴
(
やつ
)
と
共
(
とも
)
に、
010
徳利詰
(
とつくりづめ
)
に
遭
(
あ
)
つて
滅
(
ほろ
)
びねばならない
所
(
ところ
)
であつたのです。
011
何
(
なん
)
とかして、
012
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
取
(
と
)
り
除
(
の
)
けたいものですな』
013
高姫
(
たかひめ
)
『オホヽヽ、
014
是
(
こ
)
れ
全
(
まつた
)
くウラナイ
教
(
けう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
015
何
(
いづ
)
れ
又
(
また
)
時節
(
じせつ
)
到来
(
たうらい
)
せば、
016
此
(
この
)
岩
(
いは
)
は
春
(
はる
)
の
日
(
ひ
)
に
氷
(
こほり
)
の
解
(
と
)
けるが
如
(
ごと
)
く
消滅
(
せうめつ
)
するであらう。
017
瑞
(
みづ
)
の
御魂
(
みたま
)
の
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
が
悪戯
(
いたづら
)
を
致
(
いた
)
しよつたに
相違
(
さうゐ
)
なからふ。
018
必
(
かなら
)
ず
心配
(
しんぱい
)
に
及
(
およ
)
びますまい』
019
青彦
(
あをひこ
)
『さうだと
言
(
い
)
つて、
020
此
(
この
)
巨大
(
きよだい
)
なる
岩石
(
がんせき
)
が、
021
どうして
解
(
と
)
けませうか。
022
押
(
お
)
したつて、
023
曳
(
ひ
)
いたつて、
024
百
(
ひやく
)
人
(
にん
)
や
千
(
せん
)
人
(
にん
)
の
力
(
ちから
)
では、
025
ビクとも
致
(
いた
)
しますまい』
026
高姫
(
たかひめ
)
『あのマア
青彦
(
あをひこ
)
さまの
青
(
あを
)
ざめた
顔
(
かほ
)
ワイなあ、
027
これ
位
(
くらゐ
)
な
事
(
こと
)
に
心配
(
しんぱい
)
致
(
いた
)
す
様
(
やう
)
では、
028
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
は
出来
(
でき
)
ますまい。
029
あなたも
聖地
(
せいち
)
ヱルサレムに
現
(
あら
)
はれた
行成彦
(
ゆきなりひこの
)
命
(
みこと
)
と
化
(
ば
)
けた
以上
(
いじやう
)
は、
030
モウ
少
(
すこ
)
し
肝玉
(
きもだま
)
を
大
(
おほ
)
きうして
下
(
くだ
)
さいや』
031
青彦
(
あをひこ
)
『ぢやと
申
(
まを
)
して、
032
此
(
この
)
岩
(
いは
)
を
取
(
と
)
り
除
(
の
)
けなくては、
033
再
(
ふたた
)
び
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
地底
(
ちてい
)
の
巌窟
(
がんくつ
)
に
出入
(
しゆつにふ
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
申
(
まを
)
さぬ。
034
出
(
で
)
る
事
(
こと
)
はヤツトの
事
(
こと
)
で、
035
胸
(
むね
)
の
薄皮
(
うすかは
)
を
摺剥
(
すりむ
)
き
乍
(
なが
)
ら
出
(
で
)
て
来
(
き
)
ましたが、
036
這入
(
はい
)
るのは
到底
(
たうてい
)
困難
(
こんなん
)
です。
037
早速
(
さつそく
)
の
間
(
ま
)
に
合
(
あはぬ
)
ぢやありませぬか。
038
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
大勢力
(
だいせいりよく
)
を
以
(
もつ
)
て、
039
今
(
いま
)
にも
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
るとあらば、
040
吾々
(
われわれ
)
は
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
すで
御座
(
ござ
)
らう、
041
吁
(
あゝ
)
、
042
心許
(
こころもと
)
ない
今
(
いま
)
の
有様
(
ありさま
)
』
043
と
悄気
(
しほげ
)
返
(
かへ
)
る。
044
高姫
(
たかひめ
)
はカラカラと
打笑
(
うちわら
)
ひ、
045
高姫
『ホヽヽヽ、
046
マア
阿呆
(
あはう
)
正直
(
しやうぢき
)
な
青彦
(
あをひこ
)
さま、
047
顔
(
かほ
)
から
首
(
くび
)
まで
真青
(
まつさを
)
にして、
048
慄
(
ふる
)
うて
居
(
を
)
るのか、
049
夫
(
そ
)
れだから、
050
世間
(
せけん
)
からお
前
(
まへ
)
は
青首
(
あをくび
)
だと
言
(
い
)
はれても
仕方
(
しかた
)
があるまい。
051
チト
確乎
(
しつかり
)
なさらぬか、
052
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
が
何恐
(
なにおそ
)
ろしい』
053
青彦
(
あをひこ
)
『それでも
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
はバラモン
教
(
けう
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
、
054
彼奴
(
あいつ
)
が
恐
(
こは
)
さに、
055
万一
(
まさか
)
の
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
と、
056
此処
(
ここ
)
に
巌窟
(
がんくつ
)
を
掘
(
ほ
)
つておいたのではなかつたのですか』
057
高姫
(
たかひめ
)
『
一旦
(
いつたん
)
はさう
考
(
かんが
)
へたが、
058
最早
(
もはや
)
今日
(
こんにち
)
となつては、
059
何事
(
なにごと
)
も
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
胸中
(
きようちう
)
の
策略
(
さくりやく
)
を
以
(
もつ
)
て、
060
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
も
大半
(
たいはん
)
此方
(
こちら
)
の
者
(
もの
)
、
061
あまり
心配
(
しんぱい
)
するものでない。
062
お
前
(
まへ
)
もチツトは
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
して、
063
鬼心
(
おにごころ
)
になつたが
宜
(
よ
)
からう』
064
青彦
(
あをひこ
)
『イヤ、
065
其
(
その
)
様
(
やう
)
な
悪魔
(
あくま
)
に
与
(
くみ
)
するならば、
066
吾々
(
われわれ
)
は
真
(
ま
)
つ
平
(
ぴら
)
御免
(
ごめん
)
だ、
067
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
りお
暇
(
ひま
)
を
頂
(
いただ
)
きませう』
068
高姫
(
たかひめ
)
『オホヽヽヽモウ
斯
(
こ
)
うなつては、
069
逃
(
に
)
げようと
云
(
い
)
つたつて、
070
金輪
(
こんりん
)
奈落
(
ならく
)
、
071
逃
(
に
)
がすものか、
072
チヤンと、
073
湯巻
(
ゆまき
)
の
紐
(
ひも
)
でお
前
(
まへ
)
の
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に、
074
体
(
からだ
)
も
魂
(
たましひ
)
も
縛
(
しば
)
つて
置
(
お
)
いた。
075
逃
(
に
)
げようと
云
(
い
)
つたつて、
076
どうも
出来
(
でき
)
まい、
077
逃
(
に
)
げるなら、
078
勝手
(
かつて
)
に
逃
(
に
)
げて
御覧
(
ごら
)
うじ、
079
妾
(
わたし
)
の
掛
(
か
)
けた
細紐
(
ほそひも
)
は、
080
鉄
(
てつ
)
の
鎖
(
くさり
)
よりもまだ
強
(
つよ
)
い、
081
女
(
をんな
)
の
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
一筋
(
ひとすぢ
)
で
大象
(
たいざう
)
でも
繋
(
つな
)
ぐと
云
(
い
)
ふではないか。
082
夫
(
そ
)
れさへあるに
下紐
(
したひも
)
を
以
(
もつ
)
て
結
(
むす
)
び
付
(
つ
)
けた
以上
(
いじやう
)
は、
083
ジタバタしてもあきませぬ。
084
ホヽヽヽ』
085
青彦
(
あをひこ
)
『わたしは
今迄
(
いままで
)
、
086
あなたの
教
(
をしへ
)
は、
087
三五教
(
あななひけう
)
以上
(
いじやう
)
だ、
088
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
御霊
(
みたま
)
をトコトン
懲
(
こら
)
しめ、
089
部下
(
ぶか
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
を
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず、
090
ウラナイ
教
(
けう
)
の
擒
(
とりこ
)
に
致
(
いた
)
し、
091
善
(
ぜん
)
に
導
(
みちび
)
き
助
(
たす
)
けてやらうと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たのに、
092
これや
又
(
また
)
大変
(
たいへん
)
な
当違
(
あてちが
)
ひ、
093
善
(
ぜん
)
か
悪
(
あく
)
か、
094
あなたの
本心
(
ほんしん
)
が
聞
(
き
)
きたい』
095
高姫
(
たかひめ
)
『
善
(
ぜん
)
に
見
(
み
)
せて
悪
(
あく
)
を
働
(
はたら
)
く
神
(
かみ
)
もあれば、
096
悪
(
あく
)
に
見
(
み
)
せて
善
(
ぜん
)
を
働
(
はたら
)
く
神
(
かみ
)
もある。
097
善悪
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやせい
)
の
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
で、
098
能
(
よ
)
う
今迄
(
いままで
)
妾
(
わし
)
に
随
(
つ
)
いて
来
(
き
)
た、
099
………
愛想
(
あいさう
)
が
尽
(
つ
)
きた
身魂
(
みたま
)
ぢやなア、
100
ホヽヽホーホ』
101
青彦
(
あをひこ
)
『さうすると、
102
ウラナイ
教
(
けう
)
は、
103
善
(
ぜん
)
に
見
(
み
)
せて
悪
(
あく
)
を
働
(
はたら
)
くのか、
104
悪
(
あく
)
に
見
(
み
)
せて
善
(
ぜん
)
を
働
(
はたら
)
くのか、
105
どちらが
本当
(
ほんたう
)
で
御座
(
ござ
)
る』
106
高姫
(
たかひめ
)
『エー、
107
悟
(
さと
)
りの
悪
(
わる
)
い、
108
悪
(
あく
)
と
言
(
い
)
へば
何事
(
なにごと
)
に
係
(
かか
)
はらずキチリキチリと
埒
(
らち
)
の
明
(
あ
)
く
人間
(
にんげん
)
の
事
(
こと
)
だ。
109
善
(
ぜん
)
と
云
(
い
)
へば、
110
他人
(
ひと
)
の
苦労
(
くらう
)
で
得
(
とく
)
を
取
(
と
)
る、
111
畢竟
(
つまり
)
御
(
お
)
膳
(
ぜん
)
を
据
(
す
)
ゑさして、
112
苦労
(
くらう
)
なしに
箸
(
はし
)
を
取
(
と
)
ることだ』
113
青彦
(
あをひこ
)
『
益々
(
ますます
)
合点
(
がてん
)
が
往
(
い
)
かぬ、
114
あなたの
仰
(
あふ
)
せ……』
115
高姫
(
たかひめ
)
『
善
(
ぜん
)
に
強
(
つよ
)
ければ
悪
(
あく
)
にも
強
(
つよ
)
い、
116
此方
(
こちら
)
は
仮令
(
たとへ
)
善
(
ぜん
)
であらうと、
117
ソンナ
事
(
こと
)
に
頓着
(
とんちやく
)
はない、
118
盗人
(
ぬすびと
)
の
群
(
むれ
)
に
捕手
(
とりて
)
が
来
(
き
)
たら、
119
其
(
その
)
捕手
(
とりて
)
は
盗人
(
ぬすびと
)
からは
大悪人
(
だいあくにん
)
ぢや、
120
コツソリと
博奕
(
ばくち
)
を
打
(
う
)
つて
居
(
ゐ
)
る
其
(
その
)
場
(
ば
)
へポリスが
踏
(
ふ
)
み
込
(
こ
)
んで
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
は、
121
博奕打
(
ばくちうち
)
から
見
(
み
)
たら、
122
其
(
その
)
ポリスは
大悪人
(
だいあくにん
)
だ。
123
お
前
(
まへ
)
と
妾
(
わし
)
と
暗
(
やみ
)
の
夜
(
よ
)
に
橋
(
はし
)
の
袂
(
たもと
)
でヒソヒソ
話
(
ばなし
)
をして
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
へ、
124
三五
(
さんご
)
の
月
(
つき
)
が
雲
(
くも
)
の
戸
(
と
)
開
(
あ
)
けて
覗
(
のぞ
)
いた
時
(
とき
)
は、
125
其
(
その
)
月
(
つき
)
こそ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
為
(
ため
)
には
大
(
だい
)
の
悪魔
(
あくま
)
だ。
126
これ
位
(
くらゐ
)
の
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
らいで、
127
ウラナイ
教
(
けう
)
がどうして
開
(
ひら
)
けるか。
128
全然
(
まるで
)
是
(
こ
)
れから
数十万
(
すふじふまん
)
年
(
ねん
)
未来
(
みらい
)
の
十七八
(
じふしちはつ
)
世紀
(
せいき
)
の
人間
(
にんげん
)
の
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
らつしやる。
129
せめて
十九
(
じふく
)
世紀末
(
せいきまつ
)
か、
130
二十
(
にじつ
)
世紀
(
せいき
)
初頭
(
しよとう
)
の、
131
善悪
(
ぜんあく
)
不可解
(
ふかかい
)
の
人間
(
にんげん
)
に
改善
(
かいぜん
)
しなさい。
132
エーエー
悟
(
さと
)
りの
悪
(
わる
)
い。
133
……
一人
(
ひとり
)
の
神柱
(
かむばしら
)
を
拵
(
こしら
)
へるのにも
骨
(
ほね
)
のをれた
事
(
こと
)
だ。
134
若
(
わか
)
い
時
(
とき
)
から
男性
(
をとこ
)
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
はれたる
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が、
135
心
(
こころ
)
に
潜
(
ひそ
)
む
一厘
(
いちりん
)
の
仕組
(
しぐみ
)
、
136
言
(
い
)
うてやりたいは
山々
(
やまやま
)
なれど、
137
まだまだお
前
(
まへ
)
にや
明
(
あ
)
かされぬ、
138
エーエー
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
になつたワイ』
139
青彦
(
あをひこ
)
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
み、
140
暫
(
しば
)
し
思案
(
しあん
)
にくれて
居
(
ゐ
)
る。
141
高姫
(
たかひめ
)
『アヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
142
コンナ
分
(
わか
)
らぬ
神柱
(
かむばしら
)
を
相手
(
あひて
)
にして
居
(
を
)
ると、
143
肩
(
かた
)
が
凝
(
こ
)
る。
144
エー
仕方
(
しかた
)
がない。
145
サアサア
衣懸松
(
きぬかけまつ
)
の
麓
(
ふもと
)
の
妾
(
わたし
)
が
隠
(
かく
)
れ
家
(
が
)
に
引返
(
ひきかへ
)
して、
146
酒
(
さけ
)
でも
飲
(
の
)
みて
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
し、
147
ヒソヒソ
話
(
ばなし
)
の
序
(
ついで
)
に、
148
誠
(
まこと
)
の
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
らして
遣
(
や
)
らう。
149
さうしたら、
150
チツとはお
前
(
まへ
)
も
改悪
(
かいあく
)
して
胸
(
むね
)
が
落着
(
おちつ
)
くであらう。
151
改心
(
かいしん
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
152
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
誠
(
まこと
)
の
教
(
をしへ
)
を、
153
嘘
(
うそ
)
だ
嘘
(
うそ
)
だと
言
(
い
)
つて、
154
其
(
その
)
教子
(
をしへご
)
を
虱殺
(
しらみごろ
)
しに
喰
(
く
)
ひ
殺
(
ころ
)
し、
155
そつと
舌
(
した
)
を
出
(
だ
)
して、
156
会心
(
くわいしん
)
の
笑
(
ゑみ
)
を
漏
(
も
)
らすと
云
(
い
)
ふ
謎
(
なぞ
)
だよ。
157
お
前
(
まへ
)
もまだ
悪
(
あく
)
が
足
(
た
)
らぬ、
158
飽
(
あ
)
くまで
改心
(
かいしん
)
……ドツコイ……
慢心
(
まんしん
)
するが
宜
(
よ
)
い。
159
慢心
(
まんしん
)
の
裏
(
うら
)
は
改心
(
かいしん
)
だ、
160
改心
(
かいしん
)
の
裏
(
うら
)
は
慢心
(
まんしん
)
だ、
161
表教
(
おもてけう
)
の
裏
(
うら
)
はウラル
教
(
けう
)
、
162
表
(
おもて
)
と
裏
(
うら
)
と
一
(
ひと
)
つになつて、
163
天地
(
てんち
)
の
経綸
(
けいりん
)
が
行
(
おこな
)
はれるのだよ』
164
青彦
(
あをひこ
)
『エー
益々
(
ますます
)
訳
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
らなくなつた。
165
さうすると
貴女
(
あなた
)
は
迷信教
(
めいしんけう
)
を
開
(
ひら
)
くのだな』
166
高姫
(
たかひめ
)
『さうだ、
167
迷信
(
めいしん
)
とは
米
(
こめ
)
の
字
(
じ
)
に、
168
辵
(
しんにう
)
をかけたのだ。
169
米
(
こめ
)
の
字
(
じ
)
は
大八洲
(
おほやしま
)
の
形
(
かたち
)
だよ、
170
大八洲
(
おほやしま
)
彦
(
ひこ
)
の
命
(
みこと
)
の
砦
(
とりで
)
に
侵入
(
しんにふ
)
して、
171
信者
(
しんじや
)
をボツタクるから、
172
所謂
(
いはゆる
)
迷信教
(
めいしんけう
)
だ。
173
オホヽヽヽ、
174
迷
(
まよ
)
うたと
云
(
い
)
ふ
言葉
(
ことば
)
は、
175
悪魔
(
あくま
)
の
魔
(
ま
)
を
呼
(
よ
)
ぶと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
176
それに
三五教
(
あななひけう
)
の
奴
(
やつ
)
は
馬鹿
(
ばか
)
だから、
177
迷
(
まよ
)
うたと
云
(
い
)
ふのは、
178
誠
(
まこと
)
のマに
酔
(
よ
)
ふのだなどと、
179
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つてゐよる、
180
嗚呼
(
ああ
)
迷信
(
めいしん
)
なる
哉
(
かな
)
、
181
迷信
(
めいしん
)
なるかなだ』
182
青彦
(
あをひこ
)
『ますます
迷宮
(
めいきう
)
に
入
(
い
)
つて
来
(
き
)
た』
183
高姫
(
たかひめ
)
『
定
(
き
)
まつた
事
(
こと
)
だ。
184
米
(
こめ
)
の
字
(
じ
)
に
因縁
(
いんねん
)
のある
所
(
ところ
)
に
建
(
た
)
てたお
宮
(
みや
)
に
立
(
た
)
てこもつた
吾々
(
われわれ
)
は、
185
迷宮
(
めいきう
)
に
居
(
ゐ
)
るのは
当然
(
あたりまへ
)
だ。
186
三五教
(
あななひけう
)
の
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
は、
187
よつぽど、
188
馬鹿
(
ばか
)
正直
(
しやうぢき
)
な
奴
(
やつ
)
だ、
189
世界
(
せかい
)
の
為
(
ため
)
に
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
ひよつて、
190
善
(
ぜん
)
を
尽
(
つく
)
し、
191
美
(
び
)
を
尽
(
つく
)
し、
192
世界
(
せかい
)
から
悪魔
(
あくま
)
だ、
193
外道
(
げだう
)
だと
言
(
い
)
はれて、
194
十字架
(
じふじか
)
を
負
(
お
)
ふのは
自分
(
じぶん
)
の
天職
(
てんしよく
)
だと
甘
(
あま
)
ンじて
居
(
ゐ
)
る、
195
コンナ
馬鹿
(
ばか
)
が
世界
(
せかい
)
に
又
(
また
)
と
一人
(
ひとり
)
あるものか、
196
世界
(
せかい
)
の
中
(
うち
)
で
馬鹿
(
ばか
)
の
鑑
(
かがみ
)
と
云
(
い
)
へば、
197
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて
木登
(
きのぼ
)
りする
奴
(
やつ
)
と、
198
自
(
みづか
)
ら
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
ふ
奴
(
やつ
)
と、
199
広
(
ひろ
)
い
街道
(
かいだう
)
を
人
(
ひと
)
の
軒下
(
のきした
)
を
歩
(
ある
)
いて、
200
看板
(
かんばん
)
で
頭
(
あたま
)
を
打
(
う
)
つて
瘤
(
こぶ
)
を
拵
(
こしら
)
へて
吠
(
ほ
)
える
奴
(
やつ
)
位
(
くらゐ
)
が
大関
(
おほぜき
)
だ。
201
……
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
も
余
(
よ
)
つ
程
(
ぽど
)
馬鹿
(
ばか
)
だ。
202
初
(
はじめ
)
から
悪
(
あく
)
を
標榜
(
へうぼう
)
して
悪
(
あく
)
を
働
(
はたら
)
かうと
思
(
おも
)
つたつて、
203
ナニそれが
成功
(
せいこう
)
するものか、
204
智慧
(
ちゑ
)
の
無
(
な
)
い
奴
(
やつ
)
のする
事
(
こと
)
は、
205
大抵
(
たいてい
)
皆
(
みんな
)
頓珍漢
(
とんちんかん
)
ばつかりだよ。
206
善悪
(
ぜんあく
)
不二
(
ふじ
)
、
207
正邪
(
せいじや
)
同根
(
どうこん
)
と
云
(
い
)
ふ
真理
(
しんり
)
を
知
(
し
)
らぬ
馬鹿者
(
ばかもの
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
208
青彦
(
あをひこ
)
、
209
お
前
(
まへ
)
も
大分
(
だいぶん
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
に
被
(
かぶ
)
れたな、
210
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
何事
(
なにごと
)
も
裏表
(
うらおもて
)
のあるものだよ、
211
ゴンベレル
丈
(
だけ
)
権兵衛
(
ごんべ
)
り、
212
ボロレル
丈
(
だけ
)
ボロつて、
213
其
(
その
)
後
(
あと
)
は、
214
白蓮
(
びやくれ
)
るのが
賢
(
かしこ
)
い
行方
(
やりかた
)
だ。
215
お
前
(
まへ
)
も
余
(
よ
)
つ
程
(
ぽど
)
能
(
よ
)
い
青瓢箪
(
あをべうたん
)
だなア』
216
と、
217
ビシヤリと
額
(
ひたひ
)
を
叩
(
たた
)
く。
218
青彦
(
あをひこ
)
『ヤアどうも
意味
(
いみ
)
深長
(
しんちやう
)
なる
御
(
ご
)
説明
(
せつめい
)
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つて
御座
(
ござ
)
います。
219
モウ
斯
(
こ
)
うなる
上
(
うへ
)
は、
220
どうならうとも、
221
あなたにお
任
(
まか
)
せ
致
(
いた
)
しますワ』
222
高姫
(
たかひめ
)
『アヽさうぢや さうぢや、
223
さうなくては
信仰
(
しんかう
)
は
出来
(
でき
)
ない。
224
信仰
(
しんかう
)
は
恋慕
(
れんぼ
)
の
心
(
こころ
)
と
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
だ、
225
男女間
(
だんぢよかん
)
の
恋愛
(
れんあい
)
を
極度
(
きよくど
)
に
拡大
(
くわくだい
)
し、
226
宇宙大
(
うちうだい
)
に
拡
(
ひろ
)
めたのが
信仰
(
しんかう
)
だ。
227
恋
(
こひ
)
に
上下
(
じやうげ
)
美醜
(
びしう
)
善悪
(
ぜんあく
)
の
隔
(
へだ
)
ては
無
(
な
)
い、
228
宜
(
よ
)
いか、
229
分
(
わ
)
かりましたか』
230
青彦
(
あをひこ
)
『ハイ、
231
根
(
ね
)
つから……
能
(
よ
)
く
分
(
わか
)
りました』
232
高姫
(
たかひめ
)
『エー
怪体
(
けつたい
)
な、
233
歯切
(
はぎ
)
れのせぬ、
234
古綿
(
ふるわた
)
を
噛
(
か
)
む
様
(
やう
)
な、
235
歯脱
(
はぬ
)
けが
蛸
(
たこ
)
でもシヤブル
様
(
やう
)
な
返辞
(
へんじ
)
だなア、
236
オホヽヽヽ、
237
何
(
なに
)
は
兎
(
と
)
もあれ、
238
衣懸松
(
きぬかけまつ
)
の
隠
(
かく
)
れ
家
(
が
)
へ
行
(
ゆ
)
きませう』
239
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つてスタスタとコンパスの
廻転
(
くわいてん
)
を
初
(
はじ
)
める。
240
青彦
(
あをひこ
)
は
不性
(
ふしよう
)
不性
(
ぶしよう
)
に
随
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
241
最前
(
さいぜん
)
現
(
あら
)
はれた
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
使
(
つかひ
)
の
魔神
(
まがみ
)
、
242
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
は
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
ち、
243
数多
(
あまた
)
の
魔軍
(
まぐん
)
を
引連
(
ひきつ
)
れて、
244
此方
(
こちら
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る。
245
忽
(
たちま
)
ち
聞
(
きこ
)
ゆる
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごゑ
)
、
246
右
(
みぎ
)
か
左
(
ひだり
)
か
後
(
うしろ
)
か
前
(
まへ
)
か、
247
何方
(
いづかた
)
ならむと
窺
(
うかが
)
へど、
248
姿
(
すがた
)
は
見
(
み
)
えず
声
(
こゑ
)
ばかり、
249
足
(
あし
)
の
下
(
した
)
より
響
(
ひび
)
き
来
(
く
)
る。
250
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
栗毛
(
くりげ
)
の
馬
(
うま
)
にチリンチリンのチヨコチヨコ
走
(
ばし
)
り、
251
馬
(
うま
)
を
止
(
と
)
めて
大音声
(
だいおんじやう
)
、
252
鬼雲彦
『ヤアヤア
者共
(
ものども
)
、
253
此
(
この
)
岩石
(
がんせき
)
を
取除
(
とりのぞ
)
け。
254
…
此
(
この
)
地底
(
ちてい
)
には
宏大
(
くわうだい
)
なる
岩窟
(
いはや
)
がある、
255
ウラナイ
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
高姫
(
たかひめ
)
、
256
青彦
(
あをひこ
)
の
二人
(
ふたり
)
、
257
数多
(
あまた
)
の
人々
(
ひとびと
)
と
共
(
とも
)
に
隠
(
かく
)
れ
忍
(
しの
)
ぶと
見
(
み
)
えたり。
258
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
岩石
(
がんせき
)
を
取除
(
とりのぞ
)
けよ』
259
と
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
つれば、
260
数多
(
あまた
)
の
魔神
(
まがみ
)
は
此
(
この
)
巨岩
(
きよがん
)
に
向
(
むか
)
つて、
261
牡丹餅
(
ぼたもち
)
に
蟻
(
あり
)
が
集
(
たか
)
つた
様
(
やう
)
に、
262
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
より
武者
(
むしや
)
振
(
ぶ
)
り
付
(
つ
)
く。
263
然
(
さ
)
れども
幾千万
(
いくせんまん
)
貫
(
くわん
)
とも
知
(
し
)
れぬ、
264
小山
(
こやま
)
の
如
(
ごと
)
き
岩石
(
がんせき
)
に
対
(
たい
)
して、
265
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ざりけり。
266
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
気
(
き
)
を
焦
(
いら
)
ち、
267
自
(
みづか
)
ら
駒
(
こま
)
を
飛
(
と
)
び
下
(
お
)
りて、
268
人
(
ひと
)
の
頭髪
(
とうはつ
)
を
以
(
もつ
)
て
綯
(
あざな
)
へる
太
(
ふと
)
き
毛綱
(
けづな
)
を
持出
(
もちだ
)
し
来
(
きた
)
り、
269
巌
(
いはほ
)
に
引
(
ひ
)
つかけ、
270
一度
(
いちど
)
に
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
271
エーヤエーヤと
曳
(
ひ
)
きつける。
272
曳
(
ひ
)
けども、
273
引
(
ひ
)
けども、
274
動
(
うご
)
かばこそ、
275
蟻
(
あり
)
の
飛脚
(
ひきやく
)
が
通
(
とほ
)
る
程
(
ほど
)
も、
276
岩
(
いは
)
は
腰
(
こし
)
を
上
(
あ
)
げぬ。
277
中
(
なか
)
より
聞
(
きこ
)
ゆる
数多
(
あまた
)
の
人声
(
ひとごゑ
)
刻々
(
こくこく
)
に
迫
(
せま
)
り
来
(
く
)
る。
278
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
天地
(
てんち
)
も
揺
(
ゆ
)
るぐ
許
(
ばか
)
りの
大声
(
おほごゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
279
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ、
280
十曜
(
とえう
)
の
手旗
(
てばた
)
を
打振
(
うちふ
)
り
打振
(
うちふ
)
り
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る
一男
(
いちなん
)
二女
(
にぢよ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
ありき。
281
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤアヤア
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
一派
(
いつぱ
)
の
奴輩
(
やつばら
)
、
282
最早
(
もはや
)
汝
(
なんぢ
)
が
運
(
うん
)
の
尽
(
つ
)
き、
283
吾
(
わ
)
れこそは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
284
万代
(
よろづよ
)
祝
(
いは
)
ふ
亀彦
(
かめひこ
)
、
285
暗夜
(
やみよ
)
を
照
(
て
)
らす
英子姫
(
ひでこひめ
)
、
286
悦子姫
(
よしこひめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
なるぞ。
287
一言
(
いちげん
)
天地
(
てんち
)
を
震動
(
しんどう
)
し、
288
一声
(
いつせい
)
風雨
(
ふうう
)
雷霆
(
らいてい
)
を
叱咤
(
しつた
)
するてふ
三五教
(
あななひけう
)
独特
(
どくとく
)
の
清
(
きよ
)
き
言霊
(
ことたま
)
を
食
(
く
)
つて
見
(
み
)
よ』
289
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
290
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
謡
(
うた
)
ひ
上
(
あ
)
げつつ、
291
三
(
さん
)
人
(
にん
)
一度
(
いちど
)
に
右手
(
みぎて
)
を
差出
(
さしだ
)
し
食指
(
ひとさしゆび
)
の
先
(
さき
)
より
五色
(
ごしき
)
の
霊光
(
れいくわう
)
を
発射
(
はつしや
)
して、
292
一同
(
いちどう
)
にサーチライトの
如
(
ごと
)
く
射照
(
いてら
)
せば、
293
流石
(
さすが
)
の
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
も
馬
(
うま
)
を
乗
(
の
)
り
棄
(
す
)
て、
294
転
(
こ
)
けつ、
295
輾
(
まろ
)
びつ
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
、
296
大江山
(
おほえやま
)
の
本城
(
ほんじやう
)
指
(
さ
)
して
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
297
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ』
298
二女
(
にぢよ
)
『ホヽヽヽヽ』
299
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い、
300
彼
(
あ
)
れが
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
301
我
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
畏縮
(
ゐしゆく
)
して
逃散
(
にげち
)
つたる
時
(
とき
)
の
可笑
(
をか
)
しさ、
302
イヤもう
話
(
はなし
)
にも
杭
(
くひ
)
にも
掛
(
かか
)
つたもので
御座
(
ござ
)
らぬ。
303
是
(
こ
)
れと
申
(
まを
)
すも
全
(
まつた
)
く、
304
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
尊
(
たふと
)
き
御
(
お
)
守
(
まも
)
り、
305
国武彦
(
くにたけひこ
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
の
力
(
ちから
)
の
致
(
いた
)
す
所
(
ところ
)
、
306
先
(
ま
)
づ
先
(
ま
)
づ
此処
(
ここ
)
で
一服
(
いつぷく
)
仕
(
つかまつ
)
り、
307
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
308
神界
(
しんかい
)
に
対
(
たい
)
し
御
(
お
)
礼
(
れい
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
309
ボツボツと
参
(
まゐ
)
りませう。
310
今日
(
けふ
)
は
九
(
く
)
月
(
ぐわつ
)
九日
(
ここのか
)
菊
(
きく
)
の
紋日
(
もんび
)
、
311
是
(
ぜ
)
が
非
(
ひ
)
でも、
312
今日
(
けふ
)
の
内
(
うち
)
に
悪神
(
わるがみ
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
さねばなりますまい。
313
六日
(
むゆか
)
の
菖蒲
(
あやめ
)
十日
(
とをか
)
の
菊
(
きく
)
となつては、
314
最早
(
もはや
)
手遅
(
ておく
)
れ、
315
後
(
あと
)
の
祭
(
まつ
)
り、
316
ゆるゆると
急
(
いそ
)
ぎませう』
317
茲
(
ここ
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
巨岩
(
きよがん
)
の
傍
(
そば
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
318
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
したりしが、
319
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
は
九天
(
きうてん
)
に
響
(
ひび
)
き、
320
百千
(
ひやくせん
)
の
天人
(
てんにん
)
天女
(
てんによ
)
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
つて、
321
音楽
(
おんがく
)
を
奏
(
かな
)
づるかと
疑
(
うたが
)
はるる
許
(
ばか
)
りなり。
322
祝詞
(
のりと
)
の
声
(
こゑ
)
は
山
(
やま
)
又
(
また
)
山
(
やま
)
、
323
谷
(
たに
)
と
谷
(
たに
)
との
木霊
(
こだま
)
に
響
(
ひび
)
き、
324
悪魔
(
あくま
)
の
影
(
かげ
)
は
刻々
(
こくこく
)
と
煙
(
けむり
)
となつて
消
(
き
)
ゆるが
如
(
ごと
)
き
思
(
おもひ
)
に
充
(
み
)
たされける。
325
亀彦
(
かめひこ
)
『サアサア
御
(
お
)
二方
(
ふたかた
)
、
326
ゆつくりと
休息
(
きうそく
)
を
致
(
いた
)
しませう』
327
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
大変
(
たいへん
)
に
足
(
あし
)
も
疲労
(
ひらう
)
を
感
(
かん
)
じました。
328
休息
(
きうそく
)
も
宜
(
よろ
)
しからう』
329
悦子姫
(
よしこひめ
)
『ゆつくり
英気
(
えいき
)
を
養
(
やしな
)
つて、
330
又
(
また
)
もや
華々
(
はなばな
)
しく
言霊戦
(
ことたません
)
を
開始
(
かいし
)
しませう』
331
茲
(
ここ
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
手足
(
てあし
)
を
延
(
の
)
ばし、
332
芝生
(
しばふ
)
の
上
(
うへ
)
に
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなく、
333
ゴロリと
横
(
よこ
)
たはりぬ。
334
後
(
うしろ
)
の
方
(
はう
)
より
震
(
ふる
)
ひを
帯
(
お
)
びた
疳声
(
かんごゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げ
乍
(
なが
)
ら、
335
男女二人(高姫、青彦)
『オーイオーイ』
336
と
呼
(
よ
)
ばはりつつ、
337
此方
(
こなた
)
を
指
(
さ
)
してスタスタと
息
(
いき
)
をはづませ
遣
(
や
)
つて
来
(
く
)
るのは
男女
(
だんぢよ
)
の
二人
(
ふたり
)
、
338
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
何
(
なん
)
だか
気分
(
きぶん
)
の
悪
(
わる
)
い、
339
亡国
(
ばうこく
)
的
(
てき
)
悲調
(
ひてう
)
を
帯
(
お
)
びた
声
(
こゑ
)
がする。
340
あの
言霊
(
ことたま
)
より
観察
(
くわんさつ
)
すれば、
341
どうで
碌
(
ろく
)
な
神
(
かみ
)
ではあるまい。
342
ウラル
教
(
けう
)
的
(
てき
)
声調
(
せいてう
)
を
帯
(
お
)
びて
居
(
ゐ
)
る。
343
……モシ
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
、
344
一寸
(
ちよつと
)
起
(
お
)
きて
御覧
(
ごらん
)
なさいませ』
345
英子姫
(
ひでこひめ
)
はムツクと
立上
(
たちあ
)
がり、
346
後
(
うしろ
)
を
振返
(
ふりかへ
)
り
眺
(
なが
)
むれば、
347
顔
(
かほ
)
を
真白
(
まつしろ
)
に
塗
(
ぬ
)
り
立
(
た
)
て、
348
天上
(
てんじやう
)
眉毛
(
まゆげ
)
の
角隠
(
つのかく
)
し、
349
焦茶色
(
こげちやいろ
)
の
着物
(
きもの
)
を
着流
(
きなが
)
した
男女
(
だんぢよ
)
の
二人
(
ふたり
)
、
350
忽
(
たちま
)
ち
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれて、
351
女
(
をんな
)
『これはこれは
旅
(
たび
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
様
(
さま
)
、
352
斯様
(
かやう
)
な
所
(
ところ
)
で
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
なされては、
353
嘸
(
さぞ
)
やお
背
(
せな
)
が
痛
(
いた
)
う
御座
(
ござ
)
いませう、
354
少
(
すこ
)
し
道寄
(
みちよ
)
りになりますが、
355
妾
(
わたし
)
の
宅
(
うち
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいますれば、
356
渋茶
(
しぶちや
)
なりと
差上
(
さしあ
)
げませう。
357
あの
衣懸松
(
きぬかけまつ
)
の
麓
(
ふもと
)
に
出張
(
しゆつちやう
)
致
(
いた
)
す
者
(
もの
)
、
358
どうぞ
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なくお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいませ。
359
あなたのお
姿
(
すがた
)
を
眺
(
なが
)
むれば、
360
どうやら
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
とお
見受
(
みう
)
け
申
(
まを
)
す。
361
妾
(
わたし
)
等
(
ら
)
も
三五教
(
あななひけう
)
には
切
(
き
)
つても
切
(
き
)
れぬ、
362
浅
(
あさ
)
からぬ
因縁
(
いんねん
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
る、
363
実地
(
じつち
)
誠
(
まこと
)
の
事
(
こと
)
は、
364
常世姫
(
とこよひめ
)
の
霊
(
みたま
)
の
憑
(
うつ
)
つた
此
(
この
)
肉体
(
にくたい
)
、
365
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
にお
聞
(
き
)
きなさらねば、
366
後
(
あと
)
で
後悔
(
こうくわい
)
して、
367
地団駄
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
みても
戻
(
もど
)
らぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
まする。
368
あなたは
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
をお
開
(
ひら
)
きなさるのは、
369
天下
(
てんか
)
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
、
370
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いまするが、
371
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
は
国武彦
(
くにたけひこの
)
命
(
みこと
)
が
表
(
おもて
)
であつて、
372
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
は
緯役
(
よこやく
)
、
373
邪
(
よこ
)
さの
道
(
みち
)
ばつかり
教
(
をし
)
へる。
374
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
を
閉
(
し
)
める、
375
悪
(
あく
)
の
鑑
(
かがみ
)
で
御座
(
ござ
)
いまする。
376
根本
(
こんぽん
)
のトコトンの
一厘
(
いちりん
)
の
仕組
(
しぐみ
)
は、
377
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
が
扇
(
あふぎ
)
の
要
(
かなめ
)
を
握
(
にぎ
)
つて
居
(
を
)
りますれば、
378
マアマア
一寸
(
ちよつと
)
立寄
(
たちよ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
379
本当
(
ほんたう
)
の
因縁
(
いんねん
)
聞
(
き
)
かして
上
(
あ
)
げませう。
380
他人
(
ひと
)
の
苦労
(
くらう
)
で
徳
(
とく
)
を
取
(
と
)
らうと
致
(
いた
)
す
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
教
(
をしへ
)
は
駄目
(
だめ
)
ですよ。
381
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
は
国武彦
(
くにたけひこ
)
の
神
(
かみ
)
がお
開
(
ひら
)
き
遊
(
あそ
)
ばしたのだ。
382
本当
(
ほんたう
)
の
事
(
こと
)
は
系統
(
ひつぱう
)
に
聞
(
き
)
かねば
分
(
わか
)
りませぬ。
383
サアサア
永
(
なが
)
い
暇
(
ひま
)
は
取
(
と
)
りませぬ。
384
どうぞお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さりませ』
385
亀彦
(
かめひこ
)
『
私
(
わたくし
)
はお
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
386
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
387
あなたとは
反対
(
はんたい
)
で、
388
国武彦
(
くにたけひこ
)
の
教
(
をしへ
)
は
嫌
(
いや
)
です、
389
緯役
(
よこやく
)
の
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
教
(
をしへ
)
が
飯
(
めし
)
より
好
(
すき
)
、
390
お
生憎
(
あひにく
)
様
(
さま
)
乍
(
なが
)
ら、
391
どうしても、
392
あなたと
私
(
わたくし
)
は
意向
(
そり
)
が
合
(
あ
)
はぬ。
393
真
(
ま
)
つ
平
(
ぴら
)
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
りませう、
394
ナア
英子姫
(
ひでこひめ
)
さま、
395
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま』
396
英子姫
(
ひでこひめ
)
『ホヽヽヽ、
397
亀彦
(
かめひこ
)
さま、
398
物
(
もの
)
は
試
(
ため
)
しだ、
399
一服
(
いつぷく
)
がてらに
聞
(
き
)
いてやつたらどうでせう』
400
高姫
(
たかひめ
)
眉
(
まゆ
)
を
逆立
(
さかだ
)
て、
401
口
(
くち
)
をへの
字
(
じ
)
に
結
(
むす
)
び、
402
グツと
睨
(
にら
)
み、
403
暫
(
しばら
)
くあつて
歯
(
は
)
の
脱
(
ぬ
)
けた
大口
(
おほぐち
)
を
開
(
ひら
)
き、
404
高姫
『サア
夫
(
そ
)
れだから、
405
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
教
(
をしへ
)
は
不可
(
いか
)
ぬと
云
(
い
)
ふのだよ。
406
女
(
をんな
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
407
今
(
いま
)
の
言葉
(
ことば
)
遣
(
づか
)
ひは
何
(
なん
)
の
態
(
ざま
)
、
408
……ホンニホンニ
立派
(
りつぱ
)
な
三五教
(
あななひけう
)
ぢや、
409
ホヽヽヽ。
410
コレコレ
青彦
(
あをひこ
)
さま、
411
お
前
(
まへ
)
もチツト
言
(
い
)
はぬかいな、
412
唖
(
おし
)
か
人形
(
にんぎやう
)
の
様
(
やう
)
に、
413
知
(
し
)
らぬ
顔
(
かほ
)
の
半兵衛
(
はんべゑ
)
では、
414
三五教
(
あななひけう
)
崩壊
(
ほうくわい
)
の
大望
(
たいもう
)
は…………ドツコイ………
三五教
(
あななひけう
)
改良
(
かいりやう
)
の
大望
(
たいもう
)
は
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
しませぬぞや』
415
青彦
(
あをひこ
)
『
何
(
いづ
)
れの
方
(
かた
)
かは
存
(
ぞん
)
じませぬが、
416
吾々
(
われわれ
)
も
元
(
もと
)
は
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
教
(
をしへ
)
を
信
(
しん
)
じ、
417
三五教
(
あななひけう
)
に
迷
(
まよ
)
うて
居
(
ゐ
)
ました。
418
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らどうしても
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
言行
(
げんかう
)
が
腑
(
ふ
)
に
落
(
お
)
ちぬので、
419
五里
(
ごり
)
霧中
(
むちゆう
)
に
彷徨
(
さまよ
)
ふ
折
(
をり
)
から、
420
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
のお
肉体
(
にくたい
)
より
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
うた
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
、
421
誠
(
まこと
)
生粋
(
きつすゐ
)
の
日本
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
の
高姫
(
たかひめ
)
さまのお
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いて、
422
スツクリと
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
しました。
423
あなたも
今
(
いま
)
は
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
に
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
と
見
(
み
)
えますが、
424
マア
一寸
(
ちよつと
)
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
なさい、
425
如何
(
いか
)
な
金太郎
(
きんたらう
)
のあなたでも、
426
訳
(
わけ
)
を
聞
(
き
)
いたら
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
に
愛想
(
あいさう
)
が
尽
(
つ
)
きて、
427
嘔吐
(
へど
)
でも
吐
(
は
)
き
掛
(
か
)
けたい
様
(
やう
)
になりますぜ。
428
物
(
もの
)
は
試
(
ため
)
しだ、
429
一
(
ひと
)
つ
行
(
ゆ
)
きなさつたら
如何
(
どう
)
ですか』
430
亀彦
(
かめひこ
)
『ソンナラ
一
(
ひと
)
つ
聴
(
き
)
いてやらうか』
431
高姫
(
たかひめ
)
『
聴
(
き
)
いて
要
(
い
)
りませぬ、
432
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
教
(
をし
)
へて、
433
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げようと、
434
親切
(
しんせつ
)
に
言
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
るのに、
435
聴
(
き
)
いてやらうとは、
436
何
(
なん
)
たる
暴言
(
ばうげん
)
ぞや。
437
どうぞお
聴
(
き
)
かせ
下
(
くだ
)
され………と
何故
(
なぜ
)
手
(
て
)
を
合
(
あ
)
はしてお
頼
(
たの
)
みなさらぬか』
438
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
439
お
前
(
まへ
)
の
方
(
はう
)
から
聴
(
き
)
いて
呉
(
く
)
れいと
頼
(
たの
)
みたぢやないか、
440
夫
(
そ
)
れだから、
441
研究
(
けんきう
)
の
為
(
ため
)
に
聴
(
き
)
いてやらうと
言
(
い
)
つたのが、
442
何
(
なに
)
が
誤
(
あやま
)
りだ。
443
エーもう
煩雑
(
うるさ
)
くなつた。
444
ご
免
(
めん
)
蒙
(
かうむ
)
らうかい』
445
高姫
(
たかひめ
)
『
妾
(
わらは
)
が
是
(
こ
)
れと
見込
(
みこ
)
みた
以上
(
いじやう
)
は、
446
どうしても、
447
斯
(
か
)
うしても、
448
ウラナイ
教
(
けう
)
を、
449
腹
(
はら
)
を
破
(
やぶ
)
つてでも、
450
叩
(
たた
)
き
込
(
こ
)
まねば
承知
(
しようち
)
がならぬ、
451
厭
(
いや
)
でも、
452
応
(
おう
)
でも、
453
改心
(
かいしん
)
させる。
454
早
(
はや
)
く
我
(
が
)
を
折
(
を
)
りなされ、
455
素直
(
すなほ
)
にするのが、
456
各自
(
めいめい
)
のお
得
(
とく
)
だ。
457
あいた
口
(
くち
)
が
塞
(
すぼ
)
まらぬ、
458
キリキリ
舞
(
まひ
)
を
致
(
いた
)
さなならぬ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
ては
可哀相
(
かはいさう
)
だから、
459
……サアサア
早
(
はや
)
う、
460
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を、
461
耳
(
みみ
)
を
浚
(
さら
)
へて
聴
(
き
)
いたが
能
(
よ
)
からう』
462
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ』
463
英子姫
(
ひでこひめ
)
『オホヽヽヽ』
464
悦子姫
(
よしこひめ
)
『ホヽヽヽヽ』
465
高姫
(
たかひめ
)
『
何
(
なん
)
ぢや、
466
お
前
(
まへ
)
さま
等
(
ら
)
は、
467
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするのかい』
468
亀彦
(
かめひこ
)
『イエイエ、
469
どうしてどうして、
470
あまり
勿体
(
もつたい
)
なくて、
471
見当
(
けんたう
)
が
取
(
と
)
れなくなつて、
472
面白
(
おもしろ
)
笑
(
わら
)
ひに
笑
(
わら
)
ひました。
473
笑
(
わら
)
ふ
門
(
かど
)
には
福
(
ふく
)
来
(
きた
)
る。
474
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
か、
475
伏魔
(
ふくま
)
か
知
(
し
)
らぬが、
476
米々
(
こめこめ
)
と
能
(
よ
)
く
囀
(
さへづ
)
つて
人
(
ひと
)
の
虚
(
きよ
)
に
侵入
(
しんにふ
)
せむとする、
477
天晴
(
あつぱれ
)
の
手腕
(
しゆわん
)
、
478
天
(
てん
)
の
星
(
ほし
)
を
ガラツ
様
(
やう
)
な
御
(
ご
)
説教
(
せつけう
)
、
479
旅
(
たび
)
の
憂
(
う
)
さを
散
(
さん
)
ずる
為
(
ため
)
聴
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひませう』
480
高姫
(
たかひめ
)
『サアサア
神政
(
しんせい
)
成就
(
じやうじゆ
)
、
481
日本
(
やまと
)
魂
(
だましひ
)
の
根本
(
こつぽん
)
の
一厘
(
いちりん
)
の
仕組
(
しぐみ
)
を
聴
(
き
)
かして
上
(
あ
)
げよう………エヘン……オホン……』
482
と
女
(
をんな
)
に
似合
(
にあ
)
はぬ、
483
肩
(
かた
)
を
怒
(
いか
)
らし、
484
拳
(
こぶし
)
を
握
(
にぎ
)
り、
485
大手
(
おほて
)
を
振
(
ふ
)
り、
486
外輪
(
そとわ
)
に
歩
(
ある
)
いて、
487
ヅシンヅシンと、
488
衣懸松
(
きぬかけまつ
)
の
麓
(
ふもと
)
を
指
(
さ
)
して
跨
(
また
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
489
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
微笑
(
びせう
)
を
泛
(
うか
)
べ
乍
(
なが
)
ら、
490
青彦
(
あをひこ
)
を
後
(
うしろ
)
に
従
(
したが
)
へ
伴
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く。
491
衣懸松
(
きぬかけまつ
)
の
麓
(
ふもと
)
に
近寄
(
ちかより
)
見
(
み
)
れば、
492
些
(
ささ
)
やかなる
草屋根
(
わらやね
)
の
破風口
(
はふぐち
)
より
黒烟
(
こくえん
)
、
493
猛炎
(
まうえん
)
々々
(
まうえん
)
と
立
(
た
)
ち
昇
(
のぼ
)
る。
494
高姫
(
たかひめ
)
は
此
(
この
)
態
(
てい
)
を
見
(
み
)
てビツクリ
仰天
(
ぎやうてん
)
、
495
高姫
(
たかひめ
)
『ヤア
火事
(
くわじ
)
だ
火事
(
くわじ
)
だ、
496
サアサア
皆
(
みな
)
さま、
497
火
(
ひ
)
を
消
(
け
)
して
下
(
くだ
)
さい』
498
亀彦
(
かめひこ
)
『
煙
(
けむり
)
は
猛炎
(
まうえん
)
々々
(
まうえん
)
と
立上
(
たちあが
)
れ
共
(
ども
)
、
499
家
(
いへ
)
はヤツパリ
燃
(
も
)
えると
見
(
み
)
える。
500
お
前
(
まへ
)
さまの
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
も
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
紅蓮
(
ぐれん
)
の
舌
(
した
)
を
吐
(
は
)
いて
燃
(
も
)
えて
居
(
を
)
るであらう、
501
霊肉
(
れいにく
)
一致
(
いつち
)
、
502
本当
(
ほんたう
)
に
眼
(
め
)
から
火
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
だ、
503
アハヽヽヽ』
504
高姫
(
たかひめ
)
『ソンナ
事
(
こと
)
は
後
(
あと
)
で
聞
(
き
)
いたら
宜
(
よろ
)
しい。
505
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
506
早
(
はや
)
く
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さい、
507
水
(
みづ
)
を
掛
(
か
)
けなされ』
508
亀彦
(
かめひこ
)
『ヤア
大分
(
だいぶん
)
最前
(
さいぜん
)
から
問答
(
もんだふ
)
もして
来
(
き
)
た。
509
水掛論
(
みづかけろん
)
は
良
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
に
止
(
や
)
めて
貰
(
もら
)
はうかい、
510
舌端
(
ぜつたん
)
火
(
ひ
)
を
吐
(
は
)
いた
報
(
むく
)
いに、
511
家
(
いへ
)
まで
火
(
ひ
)
を
吐
(
は
)
いた。
512
人
(
ひと
)
を
烟
(
けむり
)
に
巻
(
ま
)
いた
天罰
(
てんばつ
)
で、
513
家
(
いへ
)
まで
烟
(
けむり
)
に
巻
(
ま
)
かれよつた。
514
天罰
(
てんばつ
)
と
云
(
い
)
ふものは
恐
(
おそ
)
ろしいものだ。
515
マアゆつくり
高姫
(
たかひめ
)
さまの
活動振
(
くわつどうぶり
)
を
見
(
み
)
せて
貰
(
もら
)
ひませう。
516
雪隠
(
せんち
)
小屋
(
ごや
)
の
様
(
やう
)
な
家
(
いへ
)
が
焼
(
や
)
けた
所
(
ところ
)
で、
517
別
(
べつ
)
に
騒
(
さわ
)
ぐ
必要
(
ひつえう
)
もなからう。
518
人
(
ひと
)
の
飛出
(
とびだ
)
した
空
(
から
)
の
家
(
いへ
)
が
焼
(
や
)
けるのだ。
519
高姫
(
たかひめ
)
さまは
雪隠
(
せんち
)
の
火事
(
くわじ
)
で
糞
(
くそ
)
やけ
になつて
居
(
を
)
らうが、
520
此方
(
こちら
)
は
高見
(
たかみ
)
の
見物
(
けんぶつ
)
で、
521
対岸
(
たいがん
)
の
火災視
(
くわさいし
)
するとは
此
(
この
)
事
(
こと
)
だ。
522
一切
(
いつさい
)
の
執着心
(
しふちやくしん
)
を
取
(
と
)
る
為
(
ため
)
には、
523
火
(
ひ
)
の
洗礼
(
せんれい
)
が
一番
(
いちばん
)
だ、
524
是
(
こ
)
れで
火
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
神徳
(
しんとく
)
が
完全
(
くわんぜん
)
に
発揮
(
はつき
)
されたのだ。
525
ナア
高姫
(
たかひめ
)
さま、
526
あなたの……
此
(
こ
)
れで
御
(
ご
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
証明
(
しようめい
)
されると
云
(
い
)
ふものだ。
527
お
喜
(
よろこ
)
びなさい』
528
高姫
(
たかひめ
)
『エー
喧
(
やかま
)
しいワイ、
529
何
(
なに
)
どこの
騒
(
さわ
)
ぎぢやない、
530
グヅグヅして
居
(
を
)
ると、
531
皆
(
みな
)
焼
(
や
)
けて
仕舞
(
しま
)
わア、
532
中
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
つて、
533
燗徳利
(
かんどくり
)
なと
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
り
出
(
だ
)
して
呉
(
く
)
れい。
534
コレコレ
青彦
(
あをひこ
)
、
535
何
(
なに
)
して
居
(
を
)
る、
536
火事
(
くわじ
)
と
云
(
い
)
ふのは
家
(
いへ
)
が
焼
(
や
)
けるのだ、
537
水
(
みづ
)
が
流
(
なが
)
れるのは
川
(
かは
)
だ、
538
目
(
め
)
は
鼻
(
はな
)
の
上
(
うへ
)
に
在
(
あ
)
る』
539
と
狼狽
(
うろた
)
へ
騒
(
さわ
)
いで
半気違
(
はんきちがひ
)
になり、
540
摺鉢
(
すりばち
)
抱
(
かか
)
へて
右往
(
うわう
)
左往
(
さわう
)
に
狂
(
くる
)
ひ
廻
(
まは
)
る
可笑
(
をか
)
しさ。
541
瞬
(
またた
)
く
間
(
うち
)
に
火
(
ひ
)
は
棟
(
むね
)
を
貫
(
つらぬ
)
き、
542
バサリと
焼
(
や
)
け
落
(
お
)
ちた。
543
高姫
(
たかひめ
)
、
544
青彦
(
あをひこ
)
は
着衣
(
ちやくい
)
の
袖
(
そで
)
を
猛火
(
まうくわ
)
に
嘗
(
な
)
められ、
545
頭髪
(
とうはつ
)
をチリチリと
燻
(
くす
)
べ
乍
(
なが
)
ら、
546
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
走
(
はし
)
りゆく。
547
火
(
ひ
)
は
風
(
かぜ
)
に
煽
(
あふ
)
られて
益々
(
ますます
)
燃
(
も
)
え
拡
(
ひろ
)
がる。
548
警鐘
(
けいしよう
)
乱打
(
らんだ
)
の
声
(
こゑ
)
、
549
速大鼓
(
はやだいこ
)
の
音
(
おと
)
頻
(
しき
)
りに
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る、
550
二人
(
ふたり
)
は
進退
(
しんたい
)
谷
(
きは
)
まり、
551
丸木橋
(
まるきばし
)
の
上
(
うへ
)
より
青淵
(
あをぶち
)
目蒐
(
めが
)
けて、
552
井戸
(
ゐど
)
に
西瓜
(
すゐくわ
)
を
投
(
な
)
げた
様
(
やう
)
に、
553
ドブンと
落込
(
おちこ
)
みしが、
554
此
(
この
)
音
(
おと
)
に
驚
(
おどろ
)
いて
目
(
め
)
を
覚
(
さま
)
せば、
555
宮垣内
(
みやがいち
)
の
賤
(
しづ
)
の
伏屋
(
ふせや
)
に、
556
王仁
(
おに
)
の
身
(
み
)
は
横
(
よこ
)
たはり
居
(
ゐ
)
たり。
557
堅法華
(
かたほつけ
)
のお
睦婆
(
むつば
)
アが、
558
豆太鼓
(
まめだいこ
)
を
叩
(
たた
)
き
鐘
(
かね
)
を
鳴
(
な
)
らして、
559
法華経
(
ほつけきやう
)
のお
題目
(
だいもく
)
を
唱
(
とな
)
へる
音
(
おと
)
かしまし。
560
(
大正一一・四・一四
旧三・一八
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 空籠
(B)
(N)
法螺の貝 >>>
霊界物語
>
第16巻
> 第1篇 神軍霊馬 > 第8章 衣懸松
Tweet
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【08 衣懸松|第16巻(卯の巻)|霊界物語/rm1608】
合言葉「みろく」を入力して下さい→