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第16巻(卯の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 神軍霊馬
01 天橋立
〔591〕
02 暗夜の邂逅
〔592〕
03 門番の夢
〔593〕
04 夢か現か
〔594〕
05 秋山館
〔595〕
06 石槍の雨
〔596〕
07 空籠
〔597〕
08 衣懸松
〔598〕
09 法螺の貝
〔599〕
10 白狐の出現
〔600〕
第2篇 深遠微妙
11 宝庫の鍵
〔601〕
12 捜索隊
〔602〕
13 神集の玉
〔603〕
14 鵜呑鷹
〔604〕
15 谷間の祈
〔605〕
16 神定の地
〔606〕
17 谷の水
〔607〕
第3篇 真奈為ケ原
18 遷宅婆
〔608〕
19 文珠如来
〔609〕
20 思はぬ歓
〔610〕
21 御礼参詣
〔611〕
跋
霊の礎(一)
霊の礎(二)
余白歌
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第六章
石槍
(
いしやり
)
の
雨
(
あめ
)
〔五九六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第16巻 如意宝珠 卯の巻
篇:
第1篇 神軍霊馬
よみ(新仮名遣い):
しんぐんれいば
章:
第6章 石槍の雨
よみ(新仮名遣い):
いしやりのあめ
通し章番号:
596
口述日:
1922(大正11)年04月14日(旧03月18日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月25日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
神素盞嗚大神、国武彦命、また亀彦、英子姫、悦子姫らは桶伏山の蓮華台上に上り、天神地祇・八百万の神々を集えた。神々は皇大神の出でましを口々に讃えた。
神素盞嗚大神は、国武彦に何事かを密かに任命し、ミロク神政の三十五万年後の再会を約して、丹頂の鶴に乗って東を指して飛んでいった。
国武彦命は亀彦、英子姫、悦子姫らに何事かをささやき、万神に厳格な神示を与えた後、ひとり四王の峰の彼方に姿をお隠しになった。この神界の秘密は容易にうかがい知ることのできるものではない。
亀彦らは再び大江山に進むこととなった。
一方、秋山彦の館を襲った鬼彦らは、神素盞嗚大神を始め、秋山彦ら三五教の神人たちを生け捕ったと思い、囚人の駕籠を担ぎながら大江山の山道を登っていた。
すると、一行を石の槍雨が襲ってその場に打ち倒されてしまう。気がつくと、捕らえたはずの神素盞嗚大神らは駕籠を抜け出して、笑っている。鬼虎は気合を入れるが、今度は矢の雨が一同を襲った。
秋山彦は天の数歌を唱えた。すると魔神らの身体は癒え、あちこちに喜びの声が満ちた。秋山彦が三五教への帰順を促す宣伝歌を歌うと、鬼彦らは感謝の涙に咽んだ。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-08-30 17:27:59
OBC :
rm1606
愛善世界社版:
78頁
八幡書店版:
第3輯 429頁
修補版:
校定版:
81頁
普及版:
33頁
初版:
ページ備考:
001
大空
(
おほぞら
)
碧
(
あを
)
く
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
り
002
山河
(
やまかは
)
清
(
きよ
)
くさやかにて
003
静
(
しづ
)
かに
流
(
なが
)
るる
和知
(
わち
)
の
川
(
かは
)
004
枝
(
えだ
)
も
鳴
(
な
)
らさぬ
音無瀬
(
おとなせ
)
の
005
川
(
かは
)
の
流
(
なが
)
れは
緩
(
ゆる
)
やかに
006
幾千丈
(
いくせんぢやう
)
の
青絹
(
あをぎぬ
)
を
007
流
(
なが
)
すが
如
(
ごと
)
くゆらゆらと
008
水瀬
(
みなせ
)
も
深
(
ふか
)
き
由良
(
ゆら
)
の
川
(
かは
)
009
神代
(
かみよ
)
も
廻
(
めぐ
)
り
北
(
きた
)
の
風
(
かぜ
)
010
真帆
(
まほ
)
を
膨
(
ふく
)
らせ
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る
011
深
(
ふか
)
き
恵
(
めぐみ
)
を
河守駅
(
かうもりえき
)
や
012
河
(
かは
)
の
中央
(
なかば
)
に
立
(
た
)
ち
岩
(
いは
)
の
013
関所
(
せきしよ
)
を
越
(
こ
)
えて
漸
(
やうや
)
うに
014
足許
(
あしもと
)
早
(
はや
)
き
長谷
(
はせ
)
の
川
(
かは
)
015
水
(
みづ
)
の
落合
(
おちあひ
)
右左
(
みぎひだり
)
016
左手
(
ゆんで
)
に
向
(
むか
)
ひ
舵
(
かぢ
)
をとり
017
上
(
のぼ
)
る
河路
(
かはぢ
)
も
長砂
(
ながすな
)
や
018
幾多
(
いくた
)
の
村
(
むら
)
の
瀬
(
せ
)
を
越
(
こ
)
えて
019
此処
(
ここ
)
は
聖地
(
せいち
)
と
白瀬橋
(
しらせばし
)
020
下
(
した
)
を
潜
(
くぐ
)
つて
上
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る
021
臥竜
(
ぐわりよう
)
の
松
(
まつ
)
の
川水
(
かはみづ
)
に
022
枝
(
えだ
)
を
浸
(
ひた
)
して
魚
(
うを
)
躍
(
をど
)
り
023
月
(
つき
)
は
梢
(
こづゑ
)
に
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
る
024
向方
(
むかう
)
に
見
(
み
)
ゆるは
稲山
(
いねやま
)
か
025
丹波
(
たんば
)
の
富士
(
ふじ
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
026
弥仙
(
みせん
)
の
山
(
やま
)
は
雲表
(
うんぺう
)
に
027
聳
(
そび
)
えて
立
(
た
)
てる
雄々
(
をを
)
しさよ
028
敵
(
てき
)
も
無
(
な
)
ければ
味方郷
(
みかたがう
)
029
味方平
(
みかただひら
)
に
船
(
ふね
)
留
(
と
)
めて
030
四方
(
よも
)
の
国形
(
くにがた
)
眺
(
なが
)
むれば
031
青垣山
(
あをがきやま
)
を
繞
(
めぐ
)
らせる
032
下津
(
したつ
)
岩根
(
いはね
)
の
竜宮館
(
りうぐうやかた
)
033
此処
(
ここ
)
は
名
(
な
)
におふ
小
(
せう
)
亜細亜
(
アジア
)
034
地上
(
ち
)
の
高天
(
たかあま
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
035
昔
(
むかし
)
の
聖地
(
せいち
)
ヱルサレム
036
橄欖山
(
かんらんざん
)
や
由良
(
ヨルダン
)
の
037
景色
(
けしき
)
に
勝
(
まさ
)
る
聖地
(
せいち
)
なり。
038
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
、
039
国武彦
(
くにたけひこの
)
命
(
みこと
)
其
(
その
)
他
(
た
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
040
桶伏山
(
をけふせやま
)
の
蓮華台
(
れんげだい
)
上
(
じやう
)
に
登
(
のぼ
)
らせ
給
(
たま
)
ひ、
041
天神
(
てんしん
)
地祇
(
ちぎ
)
八百万
(
やほよろづ
)
の
神
(
かみ
)
を
神集
(
かむつど
)
へに
集
(
つど
)
へ
給
(
たま
)
へば、
042
命
(
みこと
)
の
清
(
きよ
)
き
言霊
(
ことたま
)
に
先
(
さき
)
を
争
(
あらそ
)
ひ
寄
(
よ
)
り
来
(
く
)
る
百
(
もも
)
の
神
(
かみ
)
等
(
たち
)
、
043
処
(
ところ
)
狭
(
せま
)
きまで
集
(
あつ
)
まりて、
044
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
出
(
い
)
でましを、
045
祝
(
いは
)
ひ
寿
(
ことほ
)
ぐ
有様
(
ありさま
)
は、
046
蓮花
(
はちすのはな
)
の
一時
(
いつとき
)
に、
047
開
(
ひら
)
き
初
(
そ
)
めたる
如
(
ごと
)
くなり。
048
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
は、
049
国武彦
(
くにたけひこの
)
命
(
みこと
)
に
何事
(
なにごと
)
か、
050
密
(
ひそか
)
に
依
(
よ
)
さし
給
(
たま
)
ひ、
051
ミロク
神政
(
しんせい
)
の
暁
(
あかつき
)
迄
(
まで
)
三十五万
(
さんじふごまん
)
年
(
ねん
)
の
其
(
その
)
後
(
のち
)
に
再会
(
さいくわい
)
を
約
(
やく
)
し、
052
忽
(
たちま
)
ち
来
(
きた
)
る
丹頂
(
たんちやう
)
の
鶴
(
つる
)
にヒラリと
跨
(
またが
)
り、
053
中空
(
ちうくう
)
高
(
たか
)
く
東
(
ひがし
)
を
指
(
さ
)
して
飛
(
と
)
び
去
(
さ
)
り
給
(
たま
)
ふ。
054
国武彦
(
くにたけひこの
)
命
(
みこと
)
は
亀彦
(
かめひこ
)
を
始
(
はじ
)
め、
055
英子姫
(
ひでこひめ
)
、
056
悦子姫
(
よしこひめ
)
に
何事
(
なにごと
)
か
囁
(
ささや
)
き
乍
(
なが
)
ら
万司
(
ばんしん
)
に
向
(
むか
)
ひ
厳格
(
げんかく
)
なる
神示
(
しんじ
)
を
与
(
あた
)
へ、
057
茲
(
ここ
)
に
別
(
わか
)
れて
只一柱
(
ただひとはしら
)
、
058
四王
(
よつわう
)
の
峰
(
みね
)
の
彼方
(
あなた
)
に
雄々
(
をを
)
しき
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したまひける。
059
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
されし
一男
(
いちなん
)
二女
(
にぢよ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
二神
(
にしん
)
の
依
(
よ
)
さしの
神言
(
かみごと
)
を
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
に
秘
(
ひ
)
め
置
(
お
)
きて、
060
又
(
また
)
もや
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて、
061
大江
(
おほえ
)
の
山
(
やま
)
を
目蒐
(
めが
)
けて、
062
いそいそ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
063
嗟
(
ああ
)
此
(
こ
)
の
山上
(
さんじやう
)
の
五柱
(
いつはしら
)
は、
064
如何
(
いか
)
なる
神策
(
しんさく
)
を
提議
(
ていぎ
)
されしぞ。
065
神界
(
しんかい
)
の
秘密
(
ひみつ
)
容易
(
ようい
)
に
窺知
(
きち
)
すべからず、
066
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも、
067
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ、
068
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
が
出現
(
しゆつげん
)
し
再
(
ふたた
)
びミロクの
御代
(
みよ
)
となり、
069
世界
(
せかい
)
悉
(
ことごと
)
く
其
(
その
)
堵
(
と
)
に
安
(
やす
)
むじて、
070
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みを
寿
(
ことほ
)
ぎ、
071
喜
(
よろこ
)
び、
072
勇
(
いさ
)
む
尊
(
たふと
)
き
神代
(
かみよ
)
の
来
(
きた
)
るまで、
073
云
(
い
)
うてはならぬ
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
、
074
言
(
い
)
ふに
言
(
い
)
はれぬ
此
(
この
)
仕組
(
しぐみ
)
、
075
坊子頭
(
ぼうずあたま
)
か、
076
禿頭
(
はげあたま
)
、
077
頭
(
あたま
)
かくして
尻尾
(
しつぽ
)
の
先
(
さき
)
を
些
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
述
(
の
)
べて
置
(
お
)
く。
078
もとより
物語
(
ものがたり
)
する
王仁
(
おに
)
も、
079
筆
(
ふで
)
執
(
と
)
る
人
(
ひと
)
も
聞
(
き
)
く
人
(
ひと
)
も、
080
何
(
なん
)
だか
拍子
(
へうし
)
の
抜
(
ぬ
)
けたやうな
心
(
こころ
)
いぶせき
物語
(
ものがたり
)
、
081
今
(
いま
)
は
包
(
つつ
)
みてかく
言
(
い
)
ふになむ。
082
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
門前
(
もんぜん
)
に
数多
(
あまた
)
の
魔人
(
まびと
)
を
引連
(
ひきつ
)
れて、
083
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
鬼彦
(
おにひこ
)
は、
084
第一着
(
だいいちちやく
)
に
秋山彦
(
あきやまひこ
)
の
口
(
くち
)
に
石
(
いし
)
を
捻込
(
ねぢこ
)
み、
085
猿轡
(
さるぐつわ
)
を
箝
(
は
)
ませ、
086
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
縛
(
いまし
)
め
置
(
お
)
き、
087
尚
(
なほ
)
も
進
(
すす
)
みて
奥殿
(
おくでん
)
深
(
ふか
)
く、
088
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
を
始
(
はじ
)
め、
089
国武彦
(
くにたけひこ
)
、
090
紅葉姫
(
もみじひめ
)
、
091
英子姫
(
ひでこひめ
)
、
092
亀彦
(
かめひこ
)
諸共
(
もろとも
)
、
093
高手
(
たかて
)
小手
(
こて
)
に
踏
(
ふ
)
ン
縛
(
じば
)
り、
094
勝鬨
(
かちどき
)
あげて
悠々
(
いういう
)
と
大江山
(
おほえやま
)
の
本城
(
ほんじやう
)
を
指
(
さ
)
して
勇
(
いさ
)
み
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
095
千歳
(
ちとせ
)
の
老松
(
らうしよう
)
生茂
(
おひしげ
)
れる
山道
(
やまみち
)
を、
096
網代
(
あじろ
)
の
駕籠
(
かご
)
を
舁
(
か
)
つぎながら、
097
川
(
かは
)
を
飛
(
と
)
び
越
(
こ
)
え
岩間
(
いはま
)
を
伝
(
つた
)
ひ、
098
やつと
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
、
099
一同
(
いちどう
)
網代
(
あじろ
)
の
駕籠
(
かご
)
を
下
(
お
)
ろし
周囲
(
あたり
)
の
岩
(
いは
)
に
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ち
掛
(
か
)
け、
100
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めながら
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
る。
101
甲
(
かふ
)
(熊鷹)
『オイ
鬼虎
(
おにとら
)
、
102
貴様
(
きさま
)
は
竜灯松
(
りうとうまつ
)
の
根本
(
ねもと
)
に
於
(
おい
)
て、
103
さしも
強敵
(
きやうてき
)
なる
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
に
ちやつちや
、
104
もちやく
にせられ、
105
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
に
目
(
め
)
から
火
(
ひ
)
の
出
(
で
)
るやうなお
目玉
(
めだま
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
して
真青
(
まつさを
)
になり、
106
縮上
(
ちぢみあが
)
つて
居
(
ゐ
)
よつたが、
107
何
(
ど
)
うだい、
108
今日
(
けふ
)
は
大
(
おほ
)
きな
顔
(
かほ
)
をして
帰
(
かへ
)
れるだらう、
109
帰
(
かへ
)
つたら
一
(
ひと
)
つ
奢
(
おご
)
らにやなるまいぞ』
110
鬼虎
(
おにとら
)
『オヽさうだ、
111
熊鷹
(
くまたか
)
、
112
貴様
(
きさま
)
らも
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
だ、
113
あの
時
(
とき
)
の
態
(
ざま
)
つたら
見
(
み
)
られたものぢやなかつたよ。
114
何分
(
なにぶん
)
此
(
この
)
方様
(
はうさま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
通
(
どほ
)
り
服従
(
ふくじゆう
)
せないものだから、
115
ハーモニイ
的
(
てき
)
行動
(
かうどう
)
を
欠
(
か
)
いだ
為
(
た
)
めに
思
(
おも
)
はぬ
失敗
(
しつぱい
)
を
演
(
えん
)
じたのだ。
116
それにしても
慎
(
つつし
)
むべきは
酒
(
さけ
)
ではないか、
117
あの
時
(
とき
)
に
吾々
(
われわれ
)
は
酒
(
さけ
)
さへ
飲
(
の
)
みて
居
(
ゐ
)
なかつたら、
118
アンナ
失敗
(
しつぱい
)
は
演
(
えん
)
じなかつたのだよ』
119
熊鷹
(
くまたか
)
『ナニ、
120
決
(
けつ
)
して
失敗
(
しつぱい
)
でもない、
121
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
を
取
(
と
)
り
逃
(
に
)
がした
為
(
ため
)
に
却
(
かへつ
)
て
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
り、
122
禍
(
わざはひ
)
転
(
てん
)
じて
幸
(
さいはひ
)
となつたやうなものだ。
123
何事
(
なにごと
)
も
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
人間
(
にんげん
)
万事
(
ばんじ
)
塞翁
(
さいをう
)
が
馬
(
うま
)
の
糞
(
くそ
)
だ、
124
併
(
しか
)
し
今日
(
けふ
)
は
鬼彦
(
おにひこ
)
の
指揮
(
しき
)
宜
(
よろ
)
しきを
得
(
え
)
たる
為
(
ため
)
に、
125
かういう
効果
(
かうくわ
)
を
齎
(
もたら
)
したのだ、
126
何事
(
なにごと
)
も
戦
(
たたか
)
ひは
上下
(
じやうか
)
一致
(
いつち
)
ノーマル
的
(
てき
)
の
活動
(
くわつどう
)
でなくては
駄目
(
だめ
)
だワイ、
127
何程
(
なにほど
)
ジヤンジヤヒエールが
沢山
(
たくさん
)
揃
(
そろ
)
つて
居
(
ゐ
)
たところで
総
(
すべ
)
ての
行動
(
かうどう
)
に
統一
(
とういつ
)
を
欠
(
か
)
いだならば
失敗
(
しつぱい
)
は
目前
(
まのあたり
)
だ。
128
総
(
すべ
)
て
何事
(
なにごと
)
も
大将
(
たいしやう
)
の
注意
(
ちうい
)
周到
(
しうたう
)
なる
指揮
(
しき
)
命令
(
めいれい
)
と、
129
吾々
(
われわれ
)
が
大将
(
たいしやう
)
に
対
(
たい
)
する
忠実
(
ちうじつ
)
至誠
(
しせい
)
のベストを
尽
(
つく
)
すにあるのだ、
130
サテ
鬼彦
(
おにひこ
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
、
131
今日
(
こんにち
)
の
御
(
ご
)
成功
(
せいこう
)
お
祝
(
いは
)
ひ
申
(
まを
)
す、
132
之
(
これ
)
で
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
も
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
貴方
(
あなた
)
も
安心
(
あんしん
)
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
も
安心
(
あんしん
)
、
133
共
(
とも
)
に
吾々
(
われわれ
)
も
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
だ、
134
アハヽヽヽ』
135
此
(
この
)
時
(
とき
)
頭上
(
づじやう
)
の
松
(
まつ
)
の
茂
(
しげ
)
みよりポトリポトリと
石
(
いし
)
の
団子
(
だんご
)
が
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
く
降
(
ふ
)
り
来
(
きた
)
り、
136
鬼彦
(
おにひこ
)
始
(
はじ
)
め、
137
鬼虎
(
おにとら
)
、
138
熊鷹
(
くまたか
)
其
(
その
)
他
(
た
)
一同
(
いちどう
)
の
体
(
からだ
)
に
向
(
むか
)
つて
叩
(
たた
)
きつけるやうに
落
(
お
)
ち
来
(
き
)
たり。
139
一同
(
いちどう
)
はアイタヽ、
140
コイタヽ、
141
イヽイタイと
逃
(
に
)
げようとすれども、
142
石雨
(
いしあめ
)
の
槍襖
(
やりぶすま
)
に
隔
(
へだ
)
てられ、
143
些
(
すこ
)
しも
身動
(
みうご
)
きならず
頭部
(
とうぶ
)
面部
(
めんぶ
)
に
団瘤
(
たんこぶ
)
を
幾
(
いく
)
つとなく
拵
(
こしら
)
へけり。
144
石熊
(
いしくま
)
は
頭上
(
づじやう
)
を
仰
(
あふ
)
ぐ
途端
(
とたん
)
に
鼻柱
(
はなばしら
)
にパチツと
当
(
あた
)
つた
拳骨大
(
げんこつだい
)
の
石
(
いし
)
に
鼻
(
はな
)
をへしやがれ、
145
血
(
ち
)
をたらたらと
流
(
なが
)
し、
146
目
(
め
)
をしかめ、
147
ウンと
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れたり。
148
網代
(
あじろ
)
駕籠
(
かご
)
の
中
(
なか
)
に
囚
(
とら
)
はれたる
神々
(
かみがみ
)
は、
149
金城
(
きんじやう
)
鉄壁
(
てつぺき
)
極
(
きは
)
めて
安全
(
あんぜん
)
無事
(
ぶじ
)
、
150
此
(
この
)
光景
(
くわうけい
)
を
眺
(
なが
)
めて
思
(
おも
)
はず
一度
(
いちど
)
に
高笑
(
たかわら
)
ひ、
151
アハヽヽヽ、
152
オヽホヽヽヽ。
153
石
(
いし
)
の
雨
(
あめ
)
はピタリとやみぬ。
154
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
を
始
(
はじ
)
め、
155
一同
(
いちどう
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
はヌツと
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれたりと
見
(
み
)
れば
猿轡
(
さるぐつわ
)
も
縛
(
いましめ
)
の
縄
(
なは
)
も
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
解
(
と
)
かれ
居
(
ゐ
)
たりける。
156
悦子姫
(
よしこひめ
)
『オー
皆様
(
みなさま
)
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
な
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ましたナア。
157
此
(
この
)
峻嶮
(
しゆんけん
)
の
難路
(
なんろ
)
を
吾々
(
われわれ
)
を
駕籠
(
かご
)
に
乗
(
の
)
せて、
158
命辛々
(
いのちからがら
)
汗水
(
あせみづ
)
垂
(
た
)
らして
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れました
博愛
(
はくあい
)
無限
(
むげん
)
な
人足
(
にんそく
)
を、
159
頭部
(
とうぶ
)
面部
(
めんぶ
)
の
嫌
(
きら
)
ひなく、
160
支店
(
してん
)
を
開業
(
かいげふ
)
して
団子
(
だんご
)
販売
(
はんばい
)
営業
(
えいげふ
)
を
盛
(
さかん
)
に
奨励
(
しやうれい
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
161
何
(
ど
)
うか
皆
(
みな
)
さま
腹
(
おなか
)
も
減
(
す
)
いたでせう、
162
あの
出店
(
でみせ
)
の
団瘤
(
たんこぶ
)
を
一
(
ひと
)
つ
宛
(
づつ
)
買
(
か
)
つてやつて
下
(
くだ
)
さい、
163
アハヽヽヽ』
164
亀彦
(
かめひこ
)
『
吾々
(
われわれ
)
も
大変
(
たいへん
)
腹
(
はら
)
が
減
(
す
)
きました。
165
支店
(
してん
)
の
売品
(
ばいひん
)
では
面白
(
おもしろ
)
くない、
166
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
本店
(
ほんてん
)
の
背
(
せ
)
から
上
(
うへ
)
の
目鼻
(
めはな
)
の
附
(
つ
)
いた
団瘤
(
だんこぶ
)
を
捩
(
ねぢ
)
ちぎ
つて
頂戴
(
ちやうだい
)
致
(
いた
)
しませうか。
167
アハヽヽヽ』
168
一同
(
いちどう
)
『ホヽヽヽヽ』
169
鬼虎
(
おにとら
)
は
顔
(
かほ
)
を
顰
(
しか
)
めながら、
170
鬼虎
『ヤイヤイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
確
(
しつか
)
りせぬかい、
171
石
(
いし
)
の
雨
(
あめ
)
が
降
(
ふ
)
つたつてさう
屁古垂
(
へこた
)
れるものぢやない。
172
俺
(
おれ
)
は
除外例
(
ぢよがいれい
)
だが、
173
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
は
早
(
はや
)
く
元気
(
げんき
)
をつけて
此奴
(
こいつ
)
を
踏
(
ふ
)
ン
縛
(
じば
)
つて
仕舞
(
しま
)
はねば、
174
ドンナ
事
(
こと
)
が
出来
(
しゆつたい
)
致
(
いた
)
すも
分
(
わか
)
らぬぞ。
175
エイ、
176
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
腰抜
(
こしぬ
)
けばかりだナア、
177
鬼掴
(
おにつかみ
)
の
奴
(
やつ
)
、
178
敵
(
てき
)
と
味方
(
みかた
)
と
感違
(
かんちが
)
ひを
仕
(
し
)
よつて、
179
味方
(
みかた
)
の
頭上
(
づじやう
)
に
石弾
(
いしだま
)
を
降
(
ふ
)
らしよつたのだ。
180
敵
(
てき
)
の
石弾
(
せきだん
)
に
打
(
う
)
たれたと
云
(
い
)
ふのならまだしもだが、
181
味方
(
みかた
)
の
石弾
(
いしだま
)
に
打
(
う
)
たれてこの
谷川
(
たにがは
)
の
露
(
つゆ
)
と
消
(
き
)
えるかと
思
(
おも
)
へば、
182
俺
(
おれ
)
ア
死
(
し
)
ンでも
死
(
し
)
なれぬ
哩
(
わい
)
。
183
アヽヽ
何
(
ど
)
うやら
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れさうだ、
184
オイ
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
、
185
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
を
呼
(
よ
)
ンで
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れ、
186
最後
(
いまは
)
の
際
(
きは
)
に
唯
(
ただ
)
一目
(
ひとめ
)
会
(
あ
)
うて
死
(
し
)
にたい
顔
(
かほ
)
見
(
み
)
たい、
187
そればつかりが
黄泉
(
よみぢ
)
の
迷
(
まよ
)
ひだ。
188
アンアンアン』
189
熊鷹
(
くまたか
)
『ヤイヤイ
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
確
(
しつか
)
りせぬかい、
190
何
(
なん
)
ぢや、
191
地獄
(
ぢごく
)
から
火
(
ひ
)
を
取
(
と
)
りに
来
(
き
)
たやうな
真青
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
をしよつて、
192
ソンナ
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
でこの
役目
(
やくめ
)
が
勤
(
つと
)
まらうか、
193
確
(
しつか
)
りせぬかい、
194
アイタヽヽ、
195
矢張
(
やつぱ
)
り
俺
(
おれ
)
も
苦
(
くる
)
しい
哩
(
わい
)
、
196
苦
(
くる
)
しい
時
(
とき
)
の
鬼頼
(
おにだの
)
みだ、
197
南無
(
なむ
)
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
大明神
(
だいみやうじん
)
様
(
さま
)
、
198
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
精忠
(
せいちう
)
無比
(
むひ
)
の
真心
(
まごころ
)
を
憐
(
あは
)
れみ
給
(
たま
)
ひ、
199
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
痛
(
いた
)
みを
止
(
とど
)
め、
200
其
(
その
)
反対
(
はんたい
)
に
素盞嗚
(
すさのを
)
一派
(
いつぱ
)
の
奴
(
やつ
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
に
鋼鉾
(
まがねのほこ
)
の
雨
(
あめ
)
でも
降
(
ふ
)
らして
滅
(
ほろ
)
ぼし
給
(
たま
)
へ。
201
それも
矢張
(
やつぱり
)
貴方
(
あなた
)
の
為
(
ため
)
ぢや、
202
一挙
(
いつきよ
)
両得
(
りやうとく
)
自分
(
じぶん
)
が
助
(
たす
)
かりや
家来
(
けらい
)
も
助
(
たす
)
かる、
203
コンナ
好
(
よ
)
い
事
(
こと
)
が
何処
(
どこ
)
にあるものか、
204
エヽナンボ
頼
(
たの
)
みても
聞
(
き
)
き
分
(
わ
)
けのないバラモン
教
(
けう
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
だワイ』
205
此
(
この
)
時
(
とき
)
又
(
また
)
もや
鋭利
(
えいり
)
なる
切尖
(
きつさき
)
の
付
(
つ
)
いた
矢
(
や
)
は
雨
(
あめ
)
の
如
(
ごと
)
く
降
(
ふ
)
り
来
(
きた
)
り、
206
鬼彦
(
おにひこ
)
以下
(
いか
)
の
魔神
(
まがみ
)
の
身体
(
しんたい
)
に
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなく
突
(
つ
)
き
立
(
た
)
ちにける。
207
熊鷹(か?)
『アヽまたか、
208
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
は
感違
(
かんちがひ
)
をなされたか、
209
敵
(
てき
)
はあの
通
(
とほ
)
り
無事
(
ぶじ
)
、
210
味方
(
みかた
)
には
激
(
はげ
)
しき
征矢
(
そや
)
の
集注
(
しふちう
)
、
211
好
(
よ
)
く
間違
(
まちが
)
へば
間違
(
まちが
)
ふものだなア、
212
アイタヽヽヽ
耐
(
たま
)
らぬ
真実
(
ほんと
)
に
此
(
この
)
度
(
たび
)
は
息
(
いき
)
が
切
(
き
)
れるぞ、
213
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い
死
(
し
)
ンだら
最後
(
さいご
)
地獄
(
ぢごく
)
の
鬼
(
おに
)
となつて
此奴
(
こいつ
)
共
(
ども
)
の
来
(
く
)
るのを
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
け、
214
返報
(
へんぱう
)
がへしをしてこます、
215
ヤイ
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
、
216
其
(
その
)
他
(
た
)
の
奴
(
やつ
)
等
(
ら
)
覚
(
おぼ
)
えて
居
(
を
)
れ、
217
貴様
(
きさま
)
が
死
(
し
)
ンだら
目
(
め
)
が
潰
(
つぶ
)
れるやうに、
218
口
(
くち
)
が
利
(
き
)
けぬやうに、
219
びくとも
動
(
うご
)
けぬやうにしてやるぞや』
220
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
221
吐
(
ほざ
)
くな
吐
(
ほざ
)
くな、
222
目
(
め
)
が
潰
(
つぶ
)
れる
口
(
くち
)
が
利
(
き
)
けぬ、
223
体
(
からだ
)
が
動
(
うご
)
かぬやうにしてやらうとは
好
(
よ
)
くも
言
(
い
)
へたものだワイ、
224
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
珍言
(
ちんげん
)
妙語
(
めうご
)
だ、
225
モシモシ
英子姫
(
ひでこひめ
)
さま、
226
悦子姫
(
よしこひめ
)
さま、
227
舞
(
まひ
)
でも
舞
(
ま
)
うたらどうでせう、
228
コンナ
面白
(
おもしろ
)
い
光景
(
くわうけい
)
は
滅多
(
めつた
)
に、
229
大江山
(
おほえやま
)
でなくては
見
(
み
)
られませぬよ』
230
英子姫、悦子姫
『ホヽヽヽヽ』
231
秋山彦
(
あきやまひこ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
232
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
と
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
唱
(
とな
)
ふるや、
233
一同
(
いちどう
)
の
魔神
(
まがみ
)
の
創所
(
きずしよ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
拭
(
ぬぐ
)
ふが
如
(
ごと
)
くに
癒
(
い
)
え
来
(
き
)
たり、
234
彼方
(
あちら
)
にも
此方
(
こちら
)
にも
喜
(
よろこ
)
びの
声
(
こゑ
)
、
235
充
(
み
)
ち
充
(
み
)
ちにける。
236
『アヽ
助
(
たす
)
かつた』
237
『
妙
(
めう
)
だ』
238
『
不思議
(
ふしぎ
)
だ』
239
『
怪体
(
けたい
)
の
事
(
こと
)
があるものだワイ』
240
と
囁
(
ささや
)
き
始
(
はじ
)
めたり。
241
秋山彦
(
あきやまひこ
)
は
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
ふ。
242
秋山彦
『
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
243
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
244
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
強
(
つよ
)
くとも
245
大江
(
おほえ
)
の
山
(
やま
)
は
深
(
ふか
)
くとも
246
数多
(
あまた
)
の
部下
(
てした
)
はあるとても
247
虱
(
しらみ
)
の
如
(
ごと
)
き
弱虫
(
よわむし
)
の
248
人
(
ひと
)
の
生血
(
いきち
)
を
朝夕
(
あさゆふ
)
に
249
漁
(
あさ
)
りて
喰
(
くら
)
ふ
奴
(
やつ
)
ばかり
250
沢山
(
たくさん
)
絞
(
しぼ
)
つて
蓄
(
たくは
)
へた
251
身体
(
からだ
)
の
中
(
なか
)
の
生血
(
いきち
)
をば
252
吐
(
は
)
き
出
(
だ
)
すための
神
(
かみ
)
の
業
(
わざ
)
253
頭
(
あたま
)
を
砕
(
くだ
)
く
石
(
いし
)
の
雨
(
あめ
)
254
血
(
ち
)
を
絞
(
しぼ
)
り
出
(
だ
)
す
征矢
(
そや
)
の
先
(
さき
)
255
潮
(
うしほ
)
の
如
(
ごと
)
く
流
(
なが
)
れ
出
(
い
)
でぬ
256
吾
(
われ
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふてふ
257
人子
(
ひとご
)
の
司
(
つかさ
)
三五
(
あななひ
)
の
258
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
のまめ
人
(
ひと
)
ぞ
259
鬼
(
おに
)
や
悪魔
(
あくま
)
となり
果
(
は
)
てし
260
汝
(
なんぢ
)
が
身魂
(
みたま
)
を
谷川
(
たにがは
)
の
261
清
(
きよ
)
き
流
(
なが
)
れに
禊
(
みそぎ
)
して
262
天津
(
あまつ
)
御神
(
みかみ
)
のたまひたる
263
もとの
身魂
(
みたま
)
に
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
264
今迄
(
いままで
)
犯
(
をか
)
せし
罪咎
(
つみとが
)
を
265
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し
266
百千万
(
ももちよろづ
)
の
過
(
あやま
)
ちを
267
直日
(
なほひ
)
の
御霊
(
みたま
)
に
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
268
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
269
恵
(
めぐみ
)
も
深
(
ふか
)
き
御
(
おん
)
教
(
をしへ
)
270
胆
(
きも
)
に
銘
(
めい
)
じて
忘
(
わす
)
れなよ
271
石熊
(
いしくま
)
、
熊鷹
(
くまたか
)
、
鬼虎
(
おにとら
)
よ
272
心
(
こころ
)
猛
(
たけ
)
しき
鬼彦
(
おにひこ
)
も
273
此処
(
ここ
)
で
心
(
こころ
)
を
取
(
と
)
り
直
(
なほ
)
せ
274
如何
(
いか
)
なる
敵
(
てき
)
も
敵
(
てき
)
とせず
275
救
(
すく
)
ひ
助
(
たす
)
くる
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
276
誠
(
まこと
)
の
力
(
ちから
)
は
身
(
み
)
を
救
(
すく
)
ふ
277
救
(
すく
)
ひの
神
(
かみ
)
に
従
(
したが
)
ふか
278
曲津
(
まがつ
)
の
神
(
かみ
)
に
心服
(
まつろ
)
ふか
279
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
との
国境
(
くにざかひ
)
280
栄
(
さか
)
え
久
(
ひさ
)
しき
天国
(
てんごく
)
の
281
神
(
かみ
)
の
御魂
(
みたま
)
となり
変
(
か
)
はり
282
誠
(
まこと
)
一
(
ひと
)
つの
三五
(
あななひ
)
の
283
教
(
をしへ
)
にかへれ
百人
(
ももびと
)
よ
284
元
(
もと
)
は
天地
(
てんち
)
の
分霊
(
わけみたま
)
285
善
(
ぜん
)
もなければ
悪
(
あく
)
もない
286
善悪
(
ぜんあく
)
邪正
(
じやせい
)
を
超越
(
てうゑつ
)
し
287
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
の
気
(
き
)
になりて
288
天地
(
てんち
)
の
法則
(
のり
)
に
従
(
したが
)
へば
289
鬼
(
おに
)
や
大蛇
(
をろち
)
の
荒
(
すさ
)
ぶなる
290
魔窟
(
まくつ
)
ケ
原
(
はら
)
も
忽
(
たちま
)
ちに
291
メソポタミヤの
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
292
栄
(
さか
)
えの
花
(
はな
)
は
永久
(
とこしへ
)
に
293
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
は
熟
(
じゆく
)
し
味
(
あぢ
)
もよく
294
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
いて
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
を
295
苦
(
くる
)
しめ
悩
(
なや
)
め
吾
(
わが
)
身
(
み
)
亦
(
また
)
296
苦
(
くる
)
しむ
事
(
こと
)
は
要
(
い
)
らぬもの
297
サア
諸人
(
もろびと
)
よ
諸人
(
もろびと
)
よ
298
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
改
(
あらた
)
めて
299
真
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
帰
(
かへ
)
るなら
300
神
(
かみ
)
は
救
(
すくひ
)
の
御手
(
みて
)
を
延
(
の
)
べ
301
栄
(
さかえ
)
に
充
(
み
)
てる
永久
(
とこしへ
)
の
302
高天
(
たかま
)
に
救
(
すく
)
ひ
玉
(
たま
)
ふべし
303
応
(
こたへ
)
は
如何
(
いか
)
にサア
如何
(
いか
)
に
304
心
(
こころ
)
を
定
(
き
)
めて
返
(
かへ
)
り
言
(
ごと
)
305
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
宣
(
の
)
れよかし
306
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
の
身
(
み
)
に
添
(
そ
)
ひて
307
厚
(
あつ
)
く
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
ふらむ
308
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
309
霊
(
みたま
)
幸倍
(
さちはへ
)
坐世
(
ましませ
)
よ』
310
と
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
れば、
311
鬼彦
(
おにひこ
)
始
(
はじ
)
め
一同
(
いちどう
)
は
大地
(
だいち
)
に
はた
と
身
(
み
)
を
伏
(
ふ
)
せて、
312
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
びつつ
山岳
(
さんがく
)
も
揺
(
ゆる
)
ぐばかりに
声
(
こゑ
)
を
放
(
はな
)
つて
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
びける。
313
(
大正一一・四・一四
旧三・一八
加藤明子
録)
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