第三章 真心の花(二)〔七六八〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第26巻 海洋万里 丑の巻
篇:第1篇 伊都宝珠
よみ(新仮名遣い):いずほっしゅ
章:第3章 真心の花(二)
よみ(新仮名遣い):まごころのはな
通し章番号:768
口述日:1922(大正11)年07月17日(旧閏05月23日)
口述場所:
筆録者:北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:1923(大正12)年6月5日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:続いて玉治別は銀扇を広げて立ち、歌った。自分が三五教に導かれた経緯から初めて、鷹依姫退治の後に宝玉に紛失して玉探しが始まった経緯を歌った。玉の執着にとらわれた高姫を見守って竜宮島に至り、ネルソン山を越えて諏訪の湖に達して麻邇の宝玉の神業に携わった経緯を歌った。そして神素盞嗚大神と国武彦命に、生きとし生けるすべてのものに平安と栄光と歓喜を祈願して歌を終えた。
黄竜姫は立ち上がり歌い始めた。自分のこれまでの経緯を明かし、友彦と共に父母の許から逐電したが、錫欄の島で友彦と別れて五十子姫に救われ、オーストラリヤの新女王となった経緯、その後の麻邇の宝玉の神業に携わった経緯を歌った。しかしその中で、密かに玉治別に恋心を抱いていた心のたけを歌に歌いこんで明かした。
玉治別は当惑しながら、言葉静かに返歌を歌った。自分にはすでにお勝という妻があり、黄竜姫の思いには応えられないと、神の前に表白した。
黄竜姫はこの返歌に恋の雲も晴れて、いよいよ熱心に神業に奉仕することとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2021-09-24 19:39:14
OBC :rm2603
愛善世界社版:36頁
八幡書店版:第5輯 160頁
修補版:
校定版:40頁
普及版:13頁
初版:
ページ備考:
001 玉治別は立上り銀扇を拡げて歌ひ舞ひ始めた。
002玉治別『吾は玉治別司 003天と地との三五の
004誠を諭す神使 005宇都山郷に現はれて
006樵の業や野良仕事 007名も田吾作の賤の男が
008天の真浦の宣伝使
013教の館を構へたる
014此処に在れます蜈蚣姫
017茂る山路を打ち渉り
018岩窟の中に乗り込みて 019お玉の方に廻り会ひ
020蜈蚣の姫の秘蔵せる 021黄金の玉を発見し
022綾の高天原へ持ち帰り 023意気揚々と宣伝の
025彷徨ひ歩く其中に
026バラモン教の其一派
028高春山に居を構へ 029体主霊従の御教を
030四方に開くと聞きしより 031国依別や竜国別の
032貴の命と諸共に 033心の駒に鞭韃ちて
034進む折しも津田の湖 035敵の捕手に囲まれて
036生命危き折柄に 037杢助司や初稚姫の
039高春山に立ち向ひ
040廻り会うたる天の森
043神の恵みの御光に
045神の御稜威を伏し拝み
046鷹依姫の割拠せる 047岩窟の中に立ち入りて
048高姫、黒姫両人を 049救ひ出して鷹依の
054高天原に連れ帰り 055黄金の玉の紛失に
056思はぬ濡衣被せられ 057泣く泣く立つて和田の原
058遥々越えて何処となく 059黄金の玉の在処をば
060探らむ為に親と子が 061海の彼方に出でましぬ
064一日も早く片時も 065疾く速けく親と子が
066在処を知らせ給へよと
069金剛不壊の如意宝珠
071在処探ねて高姫が
072又もや神都を後にして 073海の内外の区別なく
074探ねて廻る気の毒さ 075神の仕組を打ち明けて
076当所も知らぬ玉探し
079屋根無し小舟に身を任せ
080遠き浪路を打ち渡り 081高姫一行の危難をば
082救ひ守りつ竜宮島 083到りて見れば高姫は
085暗に紛れて逸早く
089高姫一行が執着の
091一日も早く真心に
097西に渉りて山深み
098谷底潜り種々と 099百の艱難に出会ひつつ
102石の枕に星の夜具 103猛獣哮ける大野原
104夜を日に次いで進みつつ 105虎狼や大蛇まで
106吾三五の言霊に 107言向け和し玉野原
108一眸千里の草分けて 109諏訪の湖辺に辿り着き
111善言美詞の太祝詞
112汗に穢れし身体を 113清き湖水に禊ぎつつ
114拍手の声は中天に 115轟き渡る折柄に
116浪を十字に引き分けて 117現はれ給ふ百の神
118天火水地と結びつつ 119五づの身魂の御宝
120携へ来る女神等 121吾等一行に立ち向ひ
122竜宮海の麻邇の玉 123汝等五人に授けむと
125身魂を研けと言ひ捨てて
126後白浪と消え給ふ 127初稚姫や玉能姫
128玉治別は伏し拝み
130西北指して進みつつ
132深き試錬に遇ひながら
134神の使の霊鳥に 135救はれ無事に国人を
136言向け和し神業を 137略了へまつる折柄に
138神の使の八咫烏 139黄金の翼拡げつつ
140吾等一行五つ身魂 141其背に乗せて玉依姫の
143竜の宮居に送りけり
145御霊の幸を蒙りて
146吾等五人は皇神の
149執着心の雲晴れて
150輝き渡る日月は 151心の空に永久に
153不言実行の神の業
155時の到るを待つ間に
156梅子の姫を始めとし 157黄竜姫や蜈蚣姫
159黄金の舟に浮びつつ
160黄金の門を潜りぬけ
162互に見合はす顔と顔
164言葉を掛くる術もなく 165無言の儘に奥殿に
166進む折柄玉依姫の 167神の命は悠々と
169露の滴る青の玉
170ものをも言はず玉治別の
173喜び畏み村肝の
175黄竜姫の双の手に
176漸く渡し胸を撫で 177不言実行の一端に
179玉依姫は奥深く
180御神姿隠し給ひけり 181吾等一同勇み立ち
182三つの御門を潜りぬけ 183黄金の浪の漂へる
184諏訪の湖辺に来て見れば 185忽ち飛び来る八咫烏
186吾等を乗せて白雲の 187御空を高く翔上り
189漸く当館に帰りけり
193堅磐常磐に松の世の
196百の神等百人を
198守らせ給へ惟神 199神の命の御前に
201開いて細さに願ぎまつる
202神素盞嗚大神や 203国治立の御分魂
205三五教は言ふも更
206島の八十島八十の国 207青雲棚引く其限り
208天地百の生物に 209平安と栄光と歓喜を
213と歌ひ終つて自席に着いた。
214 次に黄竜姫は立ち上り歌ひ始めた。
215黄竜姫『大国彦の神霊 216堅磐常磐に祀りたる
219開き給ひし貴の道 220万里の波濤を乗り越えて
222教の園を開く折
223三五教の宣伝使
226鬼雲彦の大棟梁
227根城を抜かれ是非もなく 228数多の部下を引き率れて
230見捨てて来る中津国
232漸く此処に落ち付いて
233堅磐常磐に根城をば 234固めて道を四方の国
235布き弘めたる折柄に 236神素盞嗚大神の
238神姿優しき八乙女が
242忍び忍びに出で給ふ
244鬼熊別や蜈蚣姫
248仕へ給へる折柄に
249功績も太玉宣伝使 250現はれ況して言霊の
251珍の剣を抜き放ち 252誠の鉾を振廻し
253薙立て斬り立てバラモンの
255真心籠めて出で給ふ
257烟に巻かれて大棟梁
259従ひ給ふ神司
261波斯の御国へ出で給ふ
263顕恩郷の神司 264幹部一同を従へて
265花見の宴を開きまし 266饗応の酒に酔ひしれて
268御舟の傍に立ち居たる
269十五の春の吾姿
272流れて底に白浪の
273生命絶えむとする折に 274従僕の司の友彦は
275身を躍らして川中を
277妾を抱きて救ひ上げ 278背に負ひつつ吾父の
279館を指して帰りましぬ
282二つなき身の生命をば
284助け呉れたる友彦に
285心は移る恋の闇 286吾垂乳根の目を忍び
287闇に紛れて顕恩郷を 288ソツト脱け出で友彦と
289手に手を取つて錫蘭の島 290深山の奥に身を潜め
291一年ばかり経る中に 292妾が心機一転し
294後に残して逃げて行く
295錫蘭の浜辺の里人の
298大海原を打ち渡り
299九死一生の苦みを 300五十子の姫や梅子姫
301御供の神に助けられ 302長き浪路を渡りつつ
303昼は終日終夜
305心の底の奥庭に
308五十子の姫の一行に
310黄金花咲く一つ島
311地恩の郷に顕現し
314あらゆる名誉を身に負ひて
315本末顛倒の境遇を 316知らず識らずに日を送る
317心の中の浅間しさ
319政務教務を打ち任せ
321政教一致の神業を 322開いて国を守る折
324共に来ませし蜈蚣姫
325母の命に廻り会ひ
327心を協せ身を尽し 328教は四方に輝きて
329朝日の豊栄昇る如 330歓ぎ楽しむ折柄に
331現はれ来る友彦が 332夫婦の神の来訪に
333喜び驚き一時は 334心の海に荒浪の
335立つ瀬なき迄狼狽し 336互に過去を語り合ひ
339昔の交り温めつ 340東と西と相応じ
344現はれ出でし蜃気楼
345如何なる事の天啓か
347紛ふ方なき諏訪の湖 348地恩の城に仕へたる
349左守神の清公が
351二人の供と諸共に 352荘厳美麗の玉の宮
353玉依姫の御前に 354近く仕ふる有様は
355手に取る如く見えにけり
358思ひ定めて梅子姫
360姫の命と諸共に
362旅の枕も数重ね
363漸く来る玉野原 364金砂銀砂を敷きし如
366諏訪の湖畔に建てられし
367祠の前に辿り着き 368湖面に向つて再拝し
369天津祝詞を奏上し 370愈此処に村肝の
371心の帳も開け初め 372梅子の姫の御前に
374百の罪咎詫びぬれば
376天火水地の大道を
377諭し給へば小糸姫 378蜈蚣の姫や一同は
379転迷開悟の蓮花 380一度に開く梅子姫
381尊き神の御教を 382心の底より正覚し
383感謝祈願の折柄に 384諏訪の湖面に浮びたる
385浮島影を悠々と 386黄金の船に真帆を上げ
387此方に向つて進み来る
389湖上を看守る折もあれ 390左守神の清公が
391四人の供と諸共に
394妾一行五人連れ
395直に船に打ち乗りて 396黄金の浪を辷りつつ
397西北指して進み行く 398天国浄土か楽園か
399青赤白黄紫の 400花は梢に咲き乱れ
401大小無数の島嶼は 402彼方此方に永久に
403浮べる中を心地よく 404勇み進んで玉依の
406竜の宮居に行き見れば
409十二の神姿立ち並び 410玉治別や初稚姫の
411神の命や玉能姫 412久助お民も諸共に
413吾等一行を迎へつつ 414奥殿深く進み入る
415梅子の姫は奥の間の 416宝座に静に座を占めて
417暗祈黙祷なし給ふ
419扉を開き悠々と 420現はれ給ふ貴姿
421玉依姫の御神は 422数多の侍女を従へて
423貴の玉器携へつ 424十曜の紋の十人連れ
427五色の玉を手づからに 428渡し給へば玉治の
429別の命の神司
431直に吾手に微笑みつ
433天火水地と結びたる 434麻邇の御玉の其一つ
435授かり給ひし喜びを
437渡し給ひし功績を 438建てよと示す玉治別の
440玉を争ふ世の中に
442月日の如く明けき
443其の御身魂々々々
445感謝は忽ち村肝の 446心の海に浪起り
449天地の神も嘉すらむ 450妾は賤しき小糸姫
452今は嬉しき宣伝使
454心汚き人の身の
456斯る身魂も省みず
457尊き玉の神業を 458惜しまず妾に譲りてし
459清き心は又と世に 460何処の果を探ぬとも
462漂ひ浮ぶ一つ島
463夫なき身の独身者
465妾は切なき恋の闇
467照らさせ給へ妹と背の 468尊き道の誓言
469神素盞嗚大神や
471尊き御前を顧みず
473幾重に願ひ奉る
475麻邇の御玉を妾のみ
479神の司も諸共に 480空前絶後の此度の
481尊き神業に参加させ 482心の隔てを除き去り
484月日輝く地上に
485照させ給へ厳魂 486瑞の魂の御前に
487黄竜姫が真心を 488捧げて謹み願ぎ申す
491神伊弉諾大御神 492神伊弉冊大神の
493撞の御柱右左 494廻り給ひて千代八千代
495誓ひ給ひし其如く 496妹背の契を結ばせて
497神の教を四方の国 498夫婦の息を合せつつ
500許させ給へ玉治別の
501神の司の宣伝使 502心の底を打ち明けて
503完全に詳細に願ぎ奉る 504朝日は照るとも曇るとも
506仮令大地は沈むとも
507神の御前に誓ひたる 508妹背の道は永久に
510尊き神の御心に
511八千代を籠めて願ぎ奉る
514と祝賀と喜悦と恋慕とゴツチヤにして心のたけを歌ひ終り座に着いた。515玉治別は聊か当惑し直に立つて黄竜姫の歌に答ふべく、516再び銀扇を開いて言葉静かに歌ひ始めた。
517玉治別『神の恵に助けられ 518玉治別と名を負ひて
519今は尊き宣伝使
521天地四方に開かむと 522山の尾渉り川を越え
523潮の八百路も厭ひなく 524進み進みて竜宮の
525一つの島に上陸し 526心も清き諏訪の湖
527玉依姫の御神に 528麻邇の御玉を賜はりて
529地恩の城を治めます 530黄竜姫の玉の手に
531渡して神の功績を
533神の御前に現はして
535心を尽す玉治が 536清き身魂を臠し
537妹背の道を結ばむと
540別の命は其昔
541宇都山郷に現はれし
544夫婦揃ひて睦まじく
545神の神業に仕ふ身ぞ 546黄竜姫の真心は
548無限の感謝に充ちぬれど
549皇大神の定めたる 550一夫一婦の御規則
552国に残せし若草の
553妻の命の心根を
555宇都山郷の田吾作と
558尊き神の御裔もて
559吾に仕へし貴の妻 560吾身に一人ある事を
561完全に詳細に聞こし召し 562此事のみは今日限り
563心に放させ給へかし 564汝が身を思ひ妻の身を
565思ふ玉治別神
567必ず怒らせ給ふまじ
573汲ませ給へよ黄竜姫 574神素盞嗚大御神
575国武彦の御前に 576真心明かし汝が身の
577思ひを此処に情なくも 578科戸の風に打ち払ふ
579黄竜姫の神司 580汝が切なる心根を
581仇には捨てぬ玉治別の 582仇に思はぬ真心を
583直日に見直し聞直し 584弥永久に宣り直し
588神の御前に玉治が
589真心明かし奉る』
590と妻のお勝の宇都山郷にありて神業に奉仕し居れば、591貴嬢の御心は察すれども、592到底夫婦たる事を得ずとの旨を神の前に表白したのである。593黄竜姫は愈恋の雲晴れて熱心に神業に奉仕する事となつた。
594(大正一一・七・一七 旧閏五・二三 北村隆光録)