霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 ()(どもゑ)〔七七八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第26巻 海洋万里 丑の巻 篇:第4篇 波瀾重畳 よみ(新仮名遣い):はらんちょうじょう
章:第13章 三つ巴 よみ(新仮名遣い):みつどもえ 通し章番号:778
口述日:1922(大正11)年07月19日(旧閏05月25日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫、黒姫、高山彦らは、偽神懸りに乗せられて、神素盞嗚大神の誓約から生まれた三女神を祀った竹生島に、社殿の下から玉を掘り出そうと、それぞれ一人ずつやってきた。
天の安河にて神素盞嗚大神が誓約をなし給いしとき、瑞の御魂の表徴として三女神が現れた。この竹生島に三女神の御魂が留め置かれた後、女神たちを慰めるために竜神がときどきやってきて琵琶を弾じた。そのため、島のある湖は琵琶湖と呼ばれるようになったのである。
言霊学者は、琵琶湖を天の真奈井とも唱えている。現代の竹生島は湖の北側にあるが、この物語の時代にはほぼ中央にあり、また松の島・竹の島・梅の島の三つがあって、それぞれに三女神が祀られていた。
高姫は、舟をこいでまず、竹の島にやってきた。闇夜の中、黒姫と高山彦も竹の島にこぎつけて上陸した。三人はそれと知らず、同じ社の床下に集まってくることになった。
竹生島の司・英子姫と亀彦は、社で夕拝をしていると、高姫が舟から上陸して社にやってきて、天津祝詞を唱えるのを聞いた。英子姫は見るに忍びず独り館に帰って行った。
亀彦は闇の中、声を潜めて社の中に隠れた。高姫は、亀彦が社の中に居るとも知らず、三つの宝珠を授けたまえと祈願すると、床下に潜り込んで行った。続いて黒姫と高山彦が同じようにやってきて、床下に潜った。
三人はときどき頭をぶつけて火花を出しながら、床下を探っていた。高姫は二人も同じ目的でやってきていることに気付き、もし自分以外が玉を掘り出したら、変性男子の系統を楯に取って玉を取ってやろうと考えながら、執着心を露にしつつ、すでに四五尺も穴を掘っていた。
一方黒姫も、誰か二人やってきて社の床下を掘っているのは、てっきり言依別命の差配だと思い込んでいた。そして言依別や杢助をアフンとさせてやろうと必死で玉を探して一生懸命に掘っていた。
高山彦は次第に、他の二人の人影が高姫と黒姫ではないかと疑い始めたが、天狗が嘘をつくはずがないと思い直す。そして、自分は別に玉探しも興味がないのだが、妻の黒姫が騒ぐので、執着の心の雲を晴らしてやろうとしていたのだ、と独り思いながら掘っている。
高山彦は、高姫・黒姫に懸っている神が神力が足りないやくざ神であると気付きながらも、二人の心の雲の執着が払われるように、と心の中に祈願している。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2613
愛善世界社版:179頁 八幡書店版:第5輯 205頁 修補版: 校定版:197頁 普及版:64頁 初版: ページ備考:
001炎熱(えんねつ)火房(くわばう)()(ごと)
002(あだか)釜中(ふちう)()(ごと)
003酷暑(こくしよ)(そら)瑞月(ずゐげつ)
004()(よこ)たへて()()つる
005(まは)すハンドル(ちから)なく
006(なかば)(やぶ)れしレコードも
007(はり)(つか)れにキシキシと
008()()()ねしかすり(ごゑ)
009妙音(めうおん)菩薩(ぼさつ)山上(やまがみ)()
010(そば)(あら)はれましませど
011()(から)したる時鳥(ほととぎす)
012八千八(はつせんや)(こゑ)()()てて
013(くちびる)加藤(かとう)()きかぬる
014(うづ)言霊(ことたま)松村(まつむら)()
015真澄(ますみ)(そら)(なが)めつつ
016此処迄(ここまで)()べて北村(きたむら)
017(にしき)(みや)隆光(たかひか)
018三五(さんご)(つき)神教(みをしへ)
019(まも)神人(しんじん)言依別(ことよりわけ)
020(みづ)(みこと)(はじ)めとし
021玉照彦(たまてるひこ)玉照姫(たまてるひめ)
022(みづ)(みこと)聖顔(かんばせ)
023外山(とやま)(かすみ)()()けて
024豊二(ゆたかに)(のぼ)朝日子(あさひこ)
025()出神(でのかみ)(ごと)くなり
026五六七(みろく)太夫(だいふ)谷村(たにむら)()
027(まこと)(とも)水火(いき)(あは)
028(あせ)眼鏡(めがね)(くも)らせつ
029万年筆(まんねんひつ)(くち)(さき)
030素的(すてき)滅法(めつぱふ)(とが)らせて
031松雲閣(しよううんかく)(なか)()
032鼻高姫(はなたかひめ)黒姫(くろひめ)
033御玉探(みたまさが)しの大騒(おほさわ)
034(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)
035()ばせ(たま)ひし御佩刀(みはかせ)
036三段(みきだ)()りし誓約(うけひ)より
037(あら)はれませる三女神(さんぢよしん)
038市杵嶋(いちきしま)(ひめ)多紀理(たぎり)(ひめ)
039多岐都(たきつ)(ひめ)(まつ)りたる
040御稜威(みいづ)(かがや)竹生島(ちくぶじま)
041社殿(しやでん)(した)瑞宝(ずゐはう)
042(かく)されありと国依別(くによりわけ)
043俄天狗(にはかてんぐ)にそそられて
044此処(ここ)三人(みたり)玉抜(たまぬ)けや
045ヤツサモツサの経緯(いきさつ)
046(ふで)(うつ)して(とど)()
047あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
048御霊(みたま)(さち)はへましませよ。
049
050三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
051変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)
052唯一(ゆゐいつ)(たて)(たの)みたる
053()出神(でのかみ)(にく)(みや)
054(うそ)(まこと)()らねども
055天狗(てんぐ)(はな)高姫(たかひめ)
056(たふと)御魂(みたま)()ちながら
057肝腎要(かんじんかなめ)神業(かむわざ)
058()(のぞ)かれし(ねた)ましさ
059言依別(ことよりわけ)(かく)したる
060(たま)在処(ありか)何処迄(どこまで)
061仮令(たとへ)()になり(へび)になり
062(ほね)になるとも執拗(しつえう)
063(さぐ)()てねば()かないと
064執着心(しふちやくしん)(おに)大蛇(をろち)
065(しこ)曲津(まがつ)(さそ)はれて
066自転倒(おのころ)(じま)()ふも(さら)
067明石(あかし)(うみ)淡路島(あはぢしま)
068家島(えじま)()えて小豆島(せうどしま)
069波濤(はたう)(うか)南洋(なんやう)
070蘇鉄(そてつ)(しげ)大島(おほしま)
071バナヽの(かほ)(かう)ばしき
072南洋一(なんやういち)のアンボイナ
073谷水(たにみづ)(きよ)(こけ)(あを)
074竜宮島(りうぐうじま)(きこ)えたる
075これの聖地(せいち)(あと)にして
076(なが)(なが)れて(ひと)(じま)
077黄金(こがね)(しま)上陸(じやうりく)
078地恩(ちおん)(しろ)(あら)はれて
079黄竜姫(わうりようひめ)(たま)()かれ
080流石(さすが)剛気(がうき)高姫(たかひめ)
081(むね)(とどろ)かし黒姫(くろひめ)
082高山彦(たかやまひこ)(ともな)ひて
083(しほ)八百路(やほぢ)八潮路(やしほぢ)
084(しほ)八百会(やほあひ)()(かへ)
085淡路(あはぢ)(しま)東助(とうすけ)
086鉄門(かなど)(まも)虻蜂(あぶはち)
087(はな)()られて再度(ふたたび)
088(やま)目蒐(めが)けて()(かへ)
089生田(いくた)(もり)()(たか)
090玉能(たまの)(ひめ)神館(かむやかた)
091執念深(しふねんぶか)くも(たづ)ぬれば
092国依別(くによりわけ)(あき)(こま)
093(おも)ひも()らぬ三人(みたり)()
094やつさもつさと争論(あげつら)
095揚句(あげく)(はて)竹生島(ちくぶじま)
096憑依(ひようい)もしない天狗(てんぐ)(くち)
097鼻高姫(はなたかひめ)(いさ)()
098今度(こんど)願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)
099(やかた)裏口(うらぐち)(はし)りぬけ
100(やみ)(まぎ)れて細道(ほそみち)
101(すす)()くこそ可憐(いぢ)らしき
102上野(うへの)篠原(しのはら)()()えて
103(あき)御空(みそら)住吉(すみよし)
104(さと)(やうや)辿(たど)()
105(あづま)(そら)(なが)むれば
106金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
107(ひかり)(あらそ)朝日子(あさひこ)
108()出神(でのかみ)(おん)姿(すがた)
109両手(りやうて)(あは)()(をが)
110中野(なかの)(さと)もいつしかに
111(よし)芦屋(あしや)(いそが)しく
112(はこ)(あゆ)みも立花(たちばな)
113小田郷(をだがう)柴島(くにじま)(よど)(かは)
114(やうや)(みち)枚方(ひらかた)
115いつしか(まは)大塚(おほつか)
116(この)坂道(さかみち)高槻(たかつき)
117山崎(やまざき)()えて美豆(みづ)(さと)
118(かは)(なが)れも(よど)(まち)
119銀波(ぎんぱ)(ただよ)巨椋池(おぐらいけ)
120宇治(うぢ)(なが)れに()()ちて
121()()(みづ)醍醐味(だいごみ)
122小山(をやま)大谷(おほたに)(はや)()えて
123逢坂山(あふさかやま)真葛(さねかづら)
124(ひと)()らされ()(よし)
125(うれ)しき(たま)三井(みゐ)(てら)
126ミロクの神世(みよ)大津辺(おほつべ)
127幾多(いくた)(ふね)(その)(なか)
128殊更(ことさら)堅固(けんご)(ふね)()
129高姫(たかひめ)()をば(あやつ)りて
130(こころ)(あと)(おき)(しま)
131(なみ)(すべ)つて(すす)()
132(むか)ふに()ゆるは竹生島(ちくぶじま)
133(つき)西山(せいざん)(かたむ)きて
134(やみ)(とばり)(みづ)(おも)
135四辺(あたり)(つつ)大空(おほぞら)
136(ひらめ)(わた)(ほし)(かげ)
137(ふね)()(なみ)(くだ)きつつ
138浅黄(あさぎ)(ほし)(もん)つけた
139(くろ)()さまがやつて()
140(また)もや(つづ)いて()(ふね)
141(あたま)(ひか)福禄寿(げほう)さま
142弁天(べんてん)さまの(この)(しま)
143女布袋(をんなほてい)大黒(だいこく)
144黄金(こがね)(つち)はなけれども
145(つち)(なか)より瑞宝(ずゐはう)
146(さぐ)()てむと執着(しふちやく)
147(こころ)(やみ)(とざ)されて
148星影(ほしかげ)(うつ)(うみ)(うへ)
149(たがひ)(いき)()らしつつ
150(すす)()るこそ(いぶ)かしき。
151 近江(あふみ)(くに)琵琶(びは)湖水(こすゐ)は、152(その)(かたち)楽器(がくき)琵琶(びは)()たるをもつて、153(この)()ありと巷間(こうかん)(つた)へらる。154(しか)(なが)(この)湖中(こちう)(うか)べる竹生島(ちくぶしま)に、155(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)()かせ(たま)ひし十握(とつか)(つるぎ)を、156(あま)安河(やすかは)(おい)誓約(うけひ)(たま)ひし(とき)157(みづ)御霊(みたま)表徴(へうちよう)として、158温順(をんじゆん)貞淑(ていしゆく)(ほまれ)(たか)三女神(さんぢよしん)(あら)はれ(たま)ひ、159此処(ここ)(その)御霊(みたま)(とど)めさせられ、160時々(ときどき)竜神(りうじん)(きた)りて、161姫神(ひめがみ)御心(みこころ)(なぐさ)(たてまつ)るため、162琵琶(びは)(だん)じたるより琵琶(びは)(うみ)(とな)ふるに(いた)つたのである。163(また)一名(いちめい)(あめ)真奈井(まなゐ)とも言霊(げんれい)学者(がくしや)(とな)へて()る。164(いま)竹生島(ちくぶじま)湖水(こすゐ)極北(きよくほく)にあれども、165(この)時代(じだい)湖水(こすゐ)(ほとん)中央(ちうあう)(まつ)(しま)166(たけ)(しま)167(うめ)(しま)三島嶼(さんたうしよ)(あひ)(うか)()(どもゑ)となつて(その)雄姿(ゆうし)紺碧(こんぺき)波上(はじやう)(うか)べて()たのである。168(まつ)(しま)には多紀理(たぎり)(ひめの)(かみ)鎮座(ちんざ)(まし)まし、169(たけ)(しま)には市杵島(いちきしま)(ひめの)(かみ)(しづ)まり(たま)ひ、170(うめ)(しま)には多岐都(たきつ)(ひめの)(かみ)(しづ)まらせ(たま)ひ、171各島(かくたう)(おのおの)百間(ひやくけん)(ばか)りの位置(ゐち)(たも)つて行儀(ぎやうぎ)よく配列(はいれつ)されてあつた。172高姫(たかひめ)()(たけ)(しま)市杵島(いちきしま)(ひめ)(まつ)りたる(やしろ)()して()ぎつけた。
173 黒姫(くろひめ)174高山彦(たかやまひこ)()せずして闇夜(やみよ)(かな)しさ、175(おな)(たけ)(しま)(ふね)()せ、176(おな)(やしろ)床下(ゆかした)玉探(たまさが)しの()(あたま)(あつ)めた。
177(かむ)素盞嗚(すさのを)(うづ)()
178(うま)(たま)ひし英子姫(ひでこひめ)
179万世(よろづよ)(いは)亀彦(かめひこ)
180(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)
181(いづ)神業(かむわざ)詳細(まつぶさ)
182()げさせ(たま)へと朝夕(あさゆふ)
183天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)
184(あま)数歌(かずうた)(いさぎよ)
185(ひと)(ふた)(みい)()(いつ)()
186(なな)()(ここの)(とう)たらり
187(もも)()(よろづ)村肝(むらきも)
188(こころ)()めて(いの)(をり)
189(いそ)彼方(かなた)(ふね)(つな)
190しとしと(きた)(くろ)(かげ)
191()にも()めずに一向(ひたすら)
192(いの)最中(もなか)(かみ)(まへ)
193(たちま)(あら)はれ(ぬかづ)きて
194天津(あまつ)祝詞(のりと)()()ぐる
195(やみ)(しか)とは(わか)らねど
196皺嗄(しわが)(ごゑ)高姫(たかひめ)
197執着心(しふちやくしん)(から)まれて
198当所(あてど)()らぬ玉探(たまさが)
199()るも無残(むざん)英子姫(ひでこひめ)
200そつと(この)()()()でて
201(おの)(やかた)静々(しづしづ)
202(ほし)(ひかり)(ちから)とし
203闇路(やみぢ)()けて島影(しまかげ)
204(きよ)(やかた)(かへ)りけり
205(あと)亀彦(かめひこ)(ただ)一人(ひとり)
206(こゑ)(ひそ)めて御扉(みとびら)
207そつと(ひら)いて(なか)()
208様子(やうす)如何(いか)にと(うかが)へば
209(かみ)ならぬ()高姫(たかひめ)
210(やしろ)(なか)(ひと)ありと
211()らぬが(ほとけ)一心(いつしん)
212無事(ぶじ)安着(あんちやく)感謝(かんしや)しつ
213拍手(はくしゆ)(おと)湿(しめ)やかに
214金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
215黄金(こがね)(たま)(むらさき)
216(うづ)宝珠(ほつしゆ)高姫(たかひめ)
217両手(もろて)(さづ)(たま)へよと
218(こゑ)(ふる)はせ(いの)()
219(しばら)くありて高姫(たかひめ)
220(うづ)(やしろ)床下(ゆかした)
221(ねずみ)(ごと)()()つて
222黒白(あやめ)()かぬ(やみ)(なか)
223小声(こごゑ)神名(しんめい)(とな)へつつ
224(さぐ)()るこそ可笑(をか)しけれ
225(また)もや(ちか)づく足音(あしおと)
226(やしろ)(まへ)()()つて
227(こころ)秘密(ひみつ)(かた)りつつ
228暗祈(あんき)黙祷(もくたう)(やや)(しば)
229(こころ)いそいそ御社(みやしろ)
230四辺(あたり)(ひそ)かに(うかが)ひつ
231土竜(もぐら)(ごと)床下(ゆかした)
232(また)もや姿(すがた)(かく)しける
233(つき)(ひかり)()けれども
234(ほし)(ひかり)()らされて
235(なが)(あたま)(ただ)(ひと)
236(やみ)()()(すす)()
237入日(いりひ)(かげ)竿竹(さをだけ)
238見越(みこし)入道(にふだう)大男(おほをとこ)
239(また)もや社前(しやぜん)()()つて
240感謝(かんしや)(こゑ)(くち)(なか)
241(なに)細々(こまごま)()()へて
242(たちま)社殿(しやでん)(ゆか)(した)
243(なが)(あたま)(かく)しける
244あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
245(まよ)身魂(みたま)()(どもゑ)
246(まこと)仕組(しぐみ)白浪(しらなみ)
247(おき)(うか)べる神島(かみしま)
248(むね)荒波(あらなみ)()たせつつ
249(こころ)(おに)(つま)()てて
250無暗(むやみ)矢鱈(やたら)()(まは)
251(あせ)をたらたら(さん)(にん)
252時々(ときどき)(あたま)衝突(しようとつ)
253ピカリピカリと()()して
254四辺(あたり)(やみ)()らせども
255(こころ)(やみ)()れやらず
256(たがひ)(かほ)不知火(しらぬひ)
257(こころ)(くだ)くる(おも)ひなり
258高姫(たかひめ)(こころ)(おも)ふやう
259国依別(くによりわけ)()うたには
260言依別(ことよりわけ)のハイカラが
261二人(ふたり)使(つかひ)(つか)はして
262肝腎要(かんじんかなめ)神宝(しんぱう)
263()(いだ)させてうまうまと
264(ふたた)びどこかに(うづ)()
265初稚姫(はつわかひめ)玉能姫(たまのひめ)
266可愛(かあい)二人(ふたり)(はな)()かせ
267折角(せつかく)()てた功績(いさをし)
268オジヤンにしようとの悪戯(いたづら)
269(にく)さも(にく)言依別(ことよりわけ)
270(しこ)(みこと)のドハイカラ
271初稚姫(はつわかひめ)玉能姫(たまのひめ)
272(おも)へば(おも)へばお()(どく)
273(わが)()功績(いさを)(はな)にかけ
274高天原(たかあまはら)参上(まゐのぼ)
275総務(そうむ)々々(そうむ)(うやま)はれ
276威張(ゐば)つて御座(ござ)つた杢助(もくすけ)
277今度(こんど)はアフンと(くち)あけて
278吠面(ほえづら)かわくも()のあたり
279嗚呼(ああ)面白(おもしろ)面白(おもしろ)
280さはさりながら何者(なにもの)
281(この)()二人(ふたり)もやつて()
282(たま)()()(かへ)らうと
283一生(いつしやう)懸命(けんめい)(さが)()
284何処(どこ)(やつ)かは()らねども
285(いよいよ)(たま)()(とき)
286変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)
287()出神(でのかみ)(たて)()
288(この)高姫(たかひめ)(つつが)なく
289(おほ)きな(かほ)()()らう
290それにつけても黒姫(くろひめ)
291高山彦(たかやまひこ)(いま)何処(いづこ)
292黄金(こがね)(たま)(むらさき)
293(たから)はもはや(わか)りしか
294(こころ)もとなき(わが)(おも)
295仮令(たとへ)小爪(こづめ)()けるとも
296金輪(こんりん)奈落(ならく)(つち)(そこ)
297土竜(もぐら)蚯蚓(みみづ)にあらねども
298(つち)()()けて(さが)()
299(わが)()()らねば()くものか
300あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
301(かな)はぬ(とき)神頼(かみだの)
302南洋(なんやう)諸島(しよたう)遥々(はるばる)
303危険(きけん)(をか)して玉探(たまさが)
304()(こと)(おも)へば一丈(いちぢやう)
305二丈(にぢやう)三丈(さんぢやう)()つたとて
306(なん)手間暇(てまひま)()るものか
307国依別(くによりわけ)()うたには
308三角石(さんかくいし)()()けて
309(した)三尺(さんじやく)(ふか)さぞと
310天狗(てんぐ)()かれて()むを()
311白状(はくじやう)(いた)した面白(おもしろ)
312天狗(てんぐ)(まを)した(その)(ごと)
313三角形(さんかくけい)(いし)はある
314(はや)三尺(さんじやく)()()へて
315もはや四五(しご)(しやく)()りぬいた
316されども(たま)(あら)はれぬ
317(これ)はてつきり三丈(さんぢやう)
318(ふか)さのきつと間違(まちが)ひだ
319三丈(さんぢやう)四丈(しぢやう)はまだ(おろか)
320仮令(たとへ)地獄(ぢごく)(そこ)(まで)
321()つて()つて()()いて
322(さが)()てねば()くものか
323苦労(くらう)苦労(くらう)(かたまり)
324(たふと)(はな)()くと()
325(かみ)(をしへ)()くからは
326仮令(たとへ)(ひやく)(ねん)かかるとも
327()らねば()かぬ(わが)(こころ)
328(をんな)(まこと)一心(いつしん)
329(いは)をも射貫(いぬ)くためしあり
330きつと()()()せてやろ
331目出度(めでた)(たま)()()らば
332意気(いき)揚々(やうやう)()(かへ)
333言依別(ことよりわけ)(はじ)めとし
334杢助(もくすけ)(はつ)やお(せつ)()
335(かほ)(いろ)(まで)()へさせて
336改心(かいしん)さして(すく)はねば
337()出神(でのかみ)生宮(いきみや)
338どうして(かほ)()つものか
339あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
340御霊(みたま)(さち)はへましませよ。
341(こころ)(そこ)(まよ)ひの(くも)(おこ)しながら、342一生(いつしやう)懸命(けんめい)(あせ)(なが)して火鼠(ひねずみ)土竜(もぐらもち)のやうに(すな)(まじ)りの(つち)()()げて()る。
343
344黒姫(くろひめ)(こころ)(おも)ふやう
345再度山(ふたたびやま)大天狗(だいてんぐ)
346国依別(くによりわけ)(くち)()つて
347黄金(こがね)(たま)(かく)場所(ばしよ)
348近江(あふみ)(くに)竹生島(ちくぶじま)
349弁天社(べんてんやしろ)床下(ゆかした)
350(たしか)(たしか)()ひよつた
351国依別(くによりわけ)()ふのなら
352(すこ)しは(うたが)余地(よち)もある
353天狗(てんぐ)(こころ)潔白(けつぱく)
354(ちつ)とも(うそ)()はぬもの
355間違(まちが)気遣(きづか)ひあるものか
356天狗(てんぐ)(あふ)せの(その)(ごと)
357言依別(ことよりわけ)のハイカラが
358あらぬ智慧(ちゑ)をば(しぼ)()
359此処(ここ)(かく)して()きながら
360高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)
361昼夜(ちうや)不断(ふだん)活動(くわつどう)
362(きも)(つぶ)して狼狽(らうばい)
363見付(みつ)けられない(その)(うち)
364(ほか)へこつそり(かく)さうと
365猿智慧(さるぢゑ)(しぼ)つて態人(わざびと)
366一足先(ひとあしさき)(この)(しま)
367()らしに()したに(ちが)ひない
368あの熱心(ねつしん)(さが)しやう
369如何(いか)剛気(がうき)黒姫(くろひめ)
370(あき)れて(もの)()はれない
371(たから)(さが)しの神業(かむわざ)
372(ただ)一言(ひとこと)言霊(ことたま)
373使(つか)つちやならない(かみ)(つげ)
374迂濶(うつかり)言葉(ことば)()すならば
375折角(せつかく)()つけた宝玉(ほうぎよく)
376(けむり)となつて()()せむ
377(くしやみ)(ひと)(いき)(ひと)
378ほんに碌々(ろくろく)出来(でき)はせぬ
379(くる)しい(とき)神頼(かみだの)
380祝詞(のりと)(とな)へて(かみ)(さま)
381(ねが)ひする(こと)()つて()
382()ふに()はれぬ玉探(たまさが)
383こんな(くる)しい(こと)あらうか
384言依別(ことよりわけ)使(つかひ)()
385黄金(こがね)(たま)発見(はつけん)
386()(かへ)らうとした(とこ)
387竜宮(りうぐう)()乙姫(おとひめ)
388(しづ)まりいます(にく)(みや)
389千騎(せんき)一騎(いつき)(この)場合(ばあひ)
390黒姫(くろひめ)中々(なかなか)承知(しようち)せぬ
391仮令(たとへ)地獄(ぢごく)(そこ)までも
392()つて()つて()つて()()いて
393(ひかり)(まばゆ)金玉(きんぎよく)
394(ふたた)(わが)()(をさ)めつつ
395(あや)聖地(せいち)()(かへ)
396言依別(ことよりわけ)杢助(もくすけ)
397アフンとさせてやりませう
398あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
399(かな)はぬ(とき)神頼(かみだの)
400(たよ)りもならぬ口無(くちな)しの
401(いき)をつまへる鴛鴦(をしどり)
402(つがひ)(はな)れぬハズバンド
403高山彦(たかやまひこ)(いま)何処(いづこ)
404紫色(むらさきいろ)宝玉(ほうぎよく)
405何処(いづこ)(しま)()らねども
406もはや()()(たま)ひしか
407高姫(たかひめ)さまは(いま)何処(いづこ)
408金剛(こんがう)不壊(ふゑ)如意(によい)宝珠(ほつしゆ)
409首尾(しゆび)よく(おん)()(かへ)りしか
410あちらこちらと()()める
411あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
412(かな)はぬ(まで)(さが)()
413初心(しよしん)貫徹(くわんてつ)せにやおかぬ
414苦労(くらう)苦労(くらう)(かたまり)
415(はな)()くのはこんな(とき)
416(また)()()(この)時節(じせつ)
417琵琶(びは)湖水(こすゐ)(ふか)くとも
418(やみ)(とばり)(あつ)くとも
419三五教(あななひけう)神司(かむづかさ)
420高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
421言依別(ことよりわけ)()せられた
422(はぢ)(ころも)()()てて
423神国魂(みくにだましひ)をどこ(まで)
424()せねばならぬ(この)立場(たちば)
425何処(どこ)(やつ)かは()らねども
426高山(たかやま)さまに()()たる
427茶瓶頭(ちやびんあたま)がやつて()
428(また)もや がさがさ(さが)()
429(よく)(よく)とのかちあひで
430(たま)詮議(せんぎ)(あたま)うち
431火花(ひばな)()らす(くる)しさよ
432仮令(たとへ)天地(てんち)(かへ)るとも
433黄金(こがね)(たま)何処迄(どこまで)
434(さが)()てねば()くものか
435(いは)をも射貫(いぬ)一心(いつしん)
436(をんな)たる()天性(もちまへ)
437あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
438御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ。
439とひそかに(おも)ひ、440ひそかに(ねん)じながら、441(あせ)をたらたら(しぼ)()し、442一生(いつしやう)懸命(けんめい)(すな)()()げて()る。
443
444高山彦(たかやまひこ)(いぶ)かりつ
445(こころ)(うち)(おも)ふやう
446再度山(ふたたびやま)大天狗(だいてんぐ)
447国依別(くによりわけ)(くち)()つて
448竹生(ちくぶ)(しま)神社(かむやしろ)
449(その)床下(ゆかした)三角(さんかく)
450(いし)(かぶ)せて(むらさき)
451宝玉(ほうぎよく)(ふか)荒金(あらがね)
452土中(どちう)埋没(まいぼつ)せしと()
453三角石(さんかくいし)此処(ここ)にある
454さはさりながら(いぶ)かしや
455言依別(ことよりわけ)使(つかひ)とも
456(おも)へぬ(ふし)(ひと)つある
457(やみ)(とばり)(おろ)されて
458さだかにそれとは(わか)らねど
459(からだ)恰好(かくかう)(うご)きやう
460(かしら)をぶりぶり()(ところ)
461高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)
462どこやら()()気配(けはい)ぢやぞ
463天狗(てんぐ)(いた)つて正直(しやうぢき)
464(むかし)(ひと)()うて()
465滅多(めつた)(うそ)(まを)すまい
466高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)
467よく()(もの)()(なか)
468一人(ひとり)二人(ふたり)はあるだらう
469(なに)()うても鴛鴦(をしどり)
470名乗(なのり)もならぬ玉探(たまさが)
471実際(じつさい)(おれ)言依別(ことよりわけ)
472(かみ)(みこと)神界(しんかい)
473仕組(しぐみ)によりて(かく)されし
474(たから)在処(ありか)(さが)そとは
475(ゆめ)にも(おも)うた(こと)はない
476さはさりながら高姫(たかひめ)
477黒姫(くろひめ)までが()()つて
478(たま)(たま)よとやかましく
479(さわ)(まは)るが(うるさ)さに
480(おれ)(なん)とか工夫(くふう)して
481(たま)在処(ありか)(さが)()
482二人(ふたり)(ばば)執着(しふちやく)
483(くも)()らさしやらうかと
484(うし)()かれて善光寺(ぜんくわうじ)
485(こころ)ならずも竜宮(りうぐう)
486(ひと)(じま)(まで)駆廻(かけまは)
487地恩(ちおん)(しろ)にブランヂー
488クロンバー(まで)(つと)めつつ
489数多(あまた)国人(くにびと)使役(しえき)して
490(たま)在処(ありか)(さが)したが
491これ(ほど)(ひろ)()(なか)
492土中(どちう)(ふか)(かく)されし
493(たま)(わか)らう(はず)がない
494高山彦(たかやまひこ)今日(けふ)(かぎ)
495此処(ここ)失敗(しつぱい)したならば
496これきり(おも)()りませう
497()出神(でのかみ)竜宮(りうぐう)
498乙姫(おとひめ)さまかは()らねども
499(おれ)にはチツと()()ちぬ
500(まこと)()出神(でのかみ)なれば
501(たま)在処(ありか)何処(どこ)其処(そこ)
502ハツキリ()らして()れるだらう
503竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さまならば
504猶更(なほさら)(たま)(かく)場所(ばしよ)
505()らない道理(だうり)がどこにあろ
506(おな)()のつく(かみ)(さま)
507沢山(たくさん)あると()えるわい
508高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)
509(うつ)つて御座(ござ)(かみ)さまは
510神力(しんりき)()らぬ厄雑神(やくざがみ)
511それでなければどうしても
512(おれ)(こころ)にはまらない
513六十路(むそぢ)(さか)()ながらも
514五十(ごじふ)(をんな)(あやつ)られ
515(たま)(さが)しに何処迄(どこまで)
516()かねばならぬか(なさけ)ない
517あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
518(かな)ひませぬから高姫(たかひめ)
519黒姫(くろひめ)二人(ふたり)執着(しふちやく)
520科戸(しなど)(かぜ)()(はら)
521(うま)赤子(あかご)()てかへて
522何卒(どうぞ)(たす)けて(くだ)しやんせ
523竹生(ちくぶ)(しま)(おん)(かみ)
524(こころ)()めて()ぎまつる
525あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
526御霊(みたま)(さち)はへましませよ。
527(こころ)(なか)(つぶや)きながら、528高姫(たかひめ)529黒姫(くろひめ)改心(かいしん)専一(せんいつ)祈願(きぐわん)し、530(むらさき)(たま)(ほとん)念頭(ねんとう)()かぬものの(ごと)くであつた。
531大正一一・七・一九 旧閏五・二五 加藤明子録)
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