エールは二三の供人らとともに聖地を脱出し、泰安城近くの山に身を忍ばせて、形成を伺っていた。
聖地の重臣たちは出陣と意向を固め、泰安城に攻め寄せることとなった。真道彦は必死で自分の意ではないことを説いて回ったが、重臣たちは真道彦の言を逆に取り、逆に真道彦も推されて出陣することになってしまった。
日楯・月鉾をそれぞれ天嶺、泰嶺の要所に守りとして残し、聖地にはヤーチン姫、マリヤス姫を残して、三万の兵を率いて泰安城に向かった。
先に泰安城付近に潜んでいたエールは、数十人の部下を集めていた。そして、真道彦の神軍を待ち伏せていた。エールたちを見た、真道彦軍先頭のテールスタンは、仲間割れはやめて共に闘おうと呼びかけた。
エールは感激し、カールス王救出のために一軍を割いてくれないかとテールスタンに頼み込んだ。テールスタンは自分が率いる軍を、カールス王の救出に向かわせることになった。
セールス姫一派のサアルボースは、カールス王を幽閉した淡渓の館を警護していた。トロレンスは王を自分の手中に収めようと、淡渓の館を取り囲んだ。
落城寸前の状況に、サアルボースはカールス王に自害を迫り、王が承諾しないと自ら手を下そうとした。すると一塊の大火光が落下して、サアルボースは失神して倒れてしまった。
トロレンスは勝ちに乗じて館に乱入しようとしたが、そこへテールスタンとエールの神軍が現れ、不意を付かれたトロレンス軍は泰安城方面に敗走した。正気づいたサアルボースも、三五教軍が現れたことに驚いてその場を逃げ出した。
テールスタンとエールはカールス王を救い出し、淡渓をさかのぼった新高山の岩窟を仮の城塞となして立て籠もり、状況を窺うこととなった。
泰安城はセールス姫軍の本体が守り、シャーカルタンの革命軍を防いでいた。そこへテールスタンの一隊が攻め寄せたため、シャーカルタン軍は窮地に陥った。
また、真道彦軍の本隊も到着して攻め寄せたが、はからずもテールスタン軍と衝突してしまった。テールスタン軍は敗走して、新高山岩窟に逃げ帰った。テールスタンは、真道彦のことをカールス王に讒言したため、王は真道彦を疑うこととなった。
真道彦軍は泰安城をセールス姫一派らから奪い返すと、三五教の大神を祀り、戦勝の祝いの宴を開いた。
真道彦は、聖地からヤーチン姫、マリヤス姫を泰安城に招いた。そして、新高山の岩窟にカールス王が隠れていることを知ると、王を城に迎えようと重臣を使いに出した。しかし使いはいつまで待っても帰ってこなかった。そのため後から数人の重臣を使いに出したが、いずれも帰ってこなかった。
真道彦はマリヤス姫に泰安城を任せると、ついに自らヤーチン姫とともに、王の元に向かうこととなった。