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第9巻(申の巻)
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第11巻(戌の巻)
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第13巻(子の巻)
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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
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特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第80巻(未の巻)
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第28巻(卯の巻)
序歌
総説歌
第1篇 高砂の島
01 カールス王
〔801〕
02 無理槍
〔802〕
03 玉藻山
〔803〕
04 淡渓の流
〔804〕
05 難有迷惑
〔805〕
06 麻の紊れ
〔806〕
第2篇 暗黒の叫
07 無痛の腹
〔807〕
08 混乱戦
〔808〕
09 当推量
〔809〕
10 縺れ髪
〔810〕
11 木茄子
〔811〕
12 サワラの都
〔812〕
第3篇 光明の魁
13 唖の対面
〔813〕
14 二男三女
〔814〕
15 願望成就
〔815〕
16 盲亀の浮木
〔816〕
17 誠の告白
〔817〕
18 天下泰平
〔818〕
第4篇 南米探険
19 高島丸
〔819〕
20 鉈理屈
〔820〕
21 喰へぬ女
〔821〕
22 高砂上陸
〔822〕
跋(暗闇)
余白歌
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第一〇章
縺
(
もつ
)
れ
髪
(
がみ
)
〔八一〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻
篇:
第2篇 暗黒の叫
よみ(新仮名遣い):
あんこくのさけび
章:
第10章 縺れ髪
よみ(新仮名遣い):
もつれがみ
通し章番号:
810
口述日:
1922(大正11)年08月08日(旧06月16日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年8月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
日楯夫婦と月鉾は、父・真道彦やヤーチン姫が重臣たちの裏切りによって捕らえられたことに心を痛め、神前にて祈願をこらしていた。たちまちユリコ姫に神懸りがあり、国魂神・竜世姫命の神勅が降りた。
それによると、このたび真道彦の禍はすべて神界の経綸によるものであり、案じ煩うことは無い、とのことであった。そしてカールス王の迷夢を覚ますためには、日楯夫婦と月鉾の三人で、南琉球の王である照彦王を尋ね、救援を求めよ、と神命を下した。
三人は密かに旅立ち、キールの港を指して山道を進んだ。月の照る夜、三人はアーリス山の山頂で休んでいた。すると峠を登ってくる菅笠が見えた。見ると巡礼姿の妙齢の美人である。
巡礼姿の美人は、月鉾を追って来たテーリン姫であった。テーリン姫はどうしても月鉾と同行すると言い張り、三人が神勅による旅だと言っても、月鉾が自分から逃げて、マリヤス姫の元に逃げるのではないかと疑って聞かない。
三人が困り果てていると、最前より木陰に潜んで様子を窺っていたマリヤス姫が現れ、月鉾が自分のところに逃げるなど無礼千万と言って、月鉾に打ってかかった。テーリン姫はそれを見てマリヤス姫に狂気のごとく組み付いた。
月鉾はこれを見てテーリン姫を縛り上げた。そして三人はこの機に乗じてその場を逃げた。後に残されたマリヤス姫は、テーリン姫に優しく接した。最初は疑っていたテーリン姫も、正直に身の上を話すマリヤス姫に心を開き、二人は姉妹のように親しむようになった。そして月鉾らの帰りを待つこととなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
キールの港(基隆の港)
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-11-24 16:59:25
OBC :
rm2810
愛善世界社版:
112頁
八幡書店版:
第5輯 393頁
修補版:
校定版:
116頁
普及版:
53頁
初版:
ページ備考:
001
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
の
教主
(
けうしゆ
)
を
始
(
はじ
)
めヤーチン
姫
(
ひめ
)
は、
002
淡渓
(
たんけい
)
の
上流
(
じやうりう
)
なる
岩窟
(
がんくつ
)
の
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
ぜられ、
003
数多
(
あまた
)
の
幹部
(
かんぶ
)
は
鉾
(
ほこ
)
を
逆
(
さか
)
さまにして、
004
カールス
王
(
わう
)
に
取
(
と
)
り
入
(
い
)
り、
005
暴政
(
ばうせい
)
を
振
(
ふる
)
ひ、
006
其
(
その
)
勢
(
いきほ
)
ひ
猛烈
(
まうれつ
)
にして
何時
(
いつ
)
如何
(
いか
)
なる
難題
(
なんだい
)
を
此
(
この
)
聖地
(
せいち
)
に
向
(
むか
)
つて
持込
(
もちこ
)
み
来
(
きた
)
るやも
計
(
はか
)
られず、
007
且
(
か
)
つ
数多
(
あまた
)
の
信徒
(
しんと
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
離散
(
りさん
)
し、
008
寂寥
(
せきれう
)
の
気
(
き
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
009
日楯
(
ひたて
)
夫婦
(
ふうふ
)
を
始
(
はじ
)
め、
010
月鉾
(
つきほこ
)
は
心
(
こころ
)
も
落
(
お
)
ちつかず、
011
薄氷
(
はくひよう
)
を
踏
(
ふ
)
む
如
(
ごと
)
き
心地
(
ここち
)
し
乍
(
なが
)
ら、
012
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
始
(
はじ
)
め、
013
父
(
ちち
)
の
寃罪
(
ゑんざい
)
の
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
晴
(
は
)
れむ
事
(
こと
)
を、
014
朝夕
(
あさゆふ
)
神前
(
しんぜん
)
に
祈願
(
きぐわん
)
しつつあつた。
015
忽
(
たちま
)
ちユリコ
姫
(
ひめ
)
に
神懸
(
かむがか
)
りあり、
016
詞
(
ことば
)
おごそかに
宣
(
の
)
り
玉
(
たま
)
ふよう、
017
ユリコ姫(に懸かった竜世姫命)
『
汝
(
なんぢ
)
日楯
(
ひたて
)
、
018
月鉾
(
つきほこ
)
の
兄弟
(
きやうだい
)
よ、
019
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
の
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
奇禍
(
きくわ
)
は、
020
すべて
神界
(
しんかい
)
の
経綸
(
けいりん
)
に
出
(
い
)
でさせ
玉
(
たま
)
ふものなれば
必
(
かなら
)
ず
案
(
あん
)
じ
煩
(
わづら
)
ふ
勿
(
なか
)
れ。
021
頓
(
やが
)
て
晴天
(
せいてん
)
白日
(
はくじつ
)
の
時
(
とき
)
来
(
きた
)
るべし。
022
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
、
023
此
(
この
)
度
(
たび
)
の
遭難
(
さうなん
)
なくば、
024
到底
(
たうてい
)
三五教
(
あななひけう
)
の
救世主
(
きうせいしゆ
)
としての
任務
(
にんむ
)
を
全
(
まつた
)
うする
事
(
こと
)
能
(
あた
)
はず。
025
今日
(
こんにち
)
の
悲
(
かな
)
しみは
後日
(
ごじつ
)
の
喜
(
よろこ
)
びなり、
026
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
傷心
(
しやうしん
)
する
事
(
こと
)
勿
(
なか
)
れ。
027
是
(
こ
)
れより
汝
(
なんぢ
)
兄弟
(
きやうだい
)
は、
028
ユリコ
姫
(
ひめ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
029
暗夜
(
あんや
)
に
乗
(
じやう
)
じて
聖地
(
せいち
)
を
去
(
さ
)
り、
030
荒波
(
あらなみ
)
を
渡
(
わた
)
りて、
031
琉球
(
りうきう
)
の
南島
(
なんたう
)
に
在
(
あ
)
る
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
兼
(
けん
)
国王
(
こきし
)
たる
照彦
(
てるひこ
)
、
032
照子姫
(
てるこひめ
)
の
許
(
もと
)
に
到
(
いた
)
り、
033
事情
(
じじやう
)
を
打明
(
うちあ
)
かし、
034
救援
(
きうゑん
)
を
求
(
もと
)
めよ。
035
然
(
しか
)
らばカールス
王
(
わう
)
の
迷夢
(
めいむ
)
も
醒
(
さ
)
め、
036
汝
(
なんぢ
)
が
父
(
ちち
)
の
疑
(
うたがひ
)
も
全
(
まつた
)
く
晴
(
は
)
るるに
至
(
いた
)
らむ。
037
汝
(
なんぢ
)
兄弟
(
きやうだい
)
は
未
(
いま
)
だ
年
(
とし
)
若
(
わか
)
く、
038
如何
(
いか
)
なる
艱難
(
かんなん
)
辛苦
(
しんく
)
にも
堪
(
た
)
へ
得
(
う
)
べき
能力
(
のうりよく
)
あり。
039
年
(
とし
)
老
(
おい
)
たる
父
(
ちち
)
の
危難
(
きなん
)
を
思
(
おも
)
へば、
040
如何
(
いか
)
なる
難事
(
なんじ
)
に
遭遇
(
さうぐう
)
する
共
(
とも
)
、
041
物
(
もの
)
の
数
(
かず
)
にも
非
(
あら
)
ざるべし。
042
今宵
(
こよひ
)
は
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず、
043
聖地
(
せいち
)
を
立出
(
たちい
)
で
琉球
(
りうきう
)
の
島
(
しま
)
に
向
(
むか
)
へよ。
044
中途
(
ちうと
)
にして
種々
(
しゆじゆ
)
雑多
(
ざつた
)
の
迫害
(
はくがい
)
艱難
(
かんなん
)
に
遭
(
あ
)
ふ
事
(
こと
)
あるとも、
045
撓
(
たゆ
)
まず
屈
(
くつ
)
せず、
046
勇猛心
(
ゆうまうしん
)
を
発揮
(
はつき
)
して、
047
此
(
この
)
使命
(
しめい
)
を
果
(
はた
)
すべし。
048
我
(
わ
)
れは
本島
(
ほんたう
)
の
国魂神
(
くにたまがみ
)
竜世姫
(
たつよひめの
)
命
(
みこと
)
なるぞ。
049
ゆめゆめ
我
(
わが
)
神勅
(
しんちよく
)
を
疑
(
うたが
)
ふな』
050
と
云
(
い
)
ひ
終
(
をは
)
つて、
051
ユリコ
姫
(
ひめ
)
の
神懸
(
かむがか
)
りは
元
(
もと
)
に
復
(
ふく
)
した。
052
茲
(
ここ
)
に
日楯
(
ひたて
)
、
053
月鉾
(
つきほこ
)
兄弟
(
きやうだい
)
はユリコ
姫
(
ひめ
)
と
共
(
とも
)
に、
054
身
(
み
)
を
巡礼姿
(
じゆんれいすがた
)
にやつし、
055
蓑笠
(
みのかさ
)
草鞋
(
わらぢ
)
脚絆
(
きやはん
)
の
扮装
(
いでたち
)
、
056
金剛杖
(
こんがうづゑ
)
をつき
乍
(
なが
)
ら、
057
人里
(
ひとざと
)
離
(
はな
)
れし
山途
(
やまみち
)
を
辿
(
たど
)
りて
遂
(
つひ
)
に
基隆
(
キール
)
の
港
(
みなと
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
むこととなつた。
058
月
(
つき
)
照
(
て
)
りわたる
涼
(
すず
)
しき
夏
(
なつ
)
の
夜
(
よ
)
を、
059
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
漸
(
やうや
)
くにして、
060
アーリス
山
(
ざん
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
辿
(
たど
)
り
着
(
つ
)
き、
061
傍
(
かたはら
)
の
巌
(
いはほ
)
に
腰打
(
こしうち
)
かけ
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めてゐた。
062
フト
見
(
み
)
れば、
063
月夜
(
つきよ
)
の
中
(
なか
)
に
白
(
しろ
)
く
光
(
ひか
)
つた
菅
(
すげ
)
の
小笠
(
をがさ
)
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
、
064
ゆらぎつつ
峠
(
たうげ
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
登
(
のぼ
)
り
来
(
く
)
る。
065
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
目
(
め
)
を
瞠
(
みは
)
り、
066
テールスタンの
部下
(
ぶか
)
の
間者
(
かんじや
)
にはあらざるかと
稍
(
やや
)
胸
(
むね
)
を
轟
(
とどろ
)
かせ
乍
(
なが
)
ら、
067
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
にて
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
称
(
とな
)
へつつあつた。
068
笠
(
かさ
)
は
漸
(
やうや
)
く
間近
(
まぢか
)
くなつた。
069
見
(
み
)
れば
一人
(
ひとり
)
の
巡礼姿
(
じゆんれいすがた
)
の
妙齢
(
めうれい
)
の
美人
(
びじん
)
である。
070
美人
(
びじん
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
憩
(
いこ
)
へる
前
(
まへ
)
に、
071
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
近
(
ちか
)
づき
来
(
きた
)
り、
072
さも
慇懃
(
いんぎん
)
に、
073
巡礼
(
じゆんれい
)
『
失礼
(
しつれい
)
乍
(
なが
)
ら、
074
あなたは
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
の
一行
(
いつかう
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか。
075
妾
(
わたし
)
は
泰嶺
(
たいれい
)
の
聖地
(
せいち
)
に
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
な
仕
(
つか
)
へまつれるテーリン
姫
(
ひめ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
076
月鉾
(
つきほこ
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
き、
077
あたりを
見廻
(
みまは
)
し
乍
(
なが
)
ら、
078
声
(
こゑ
)
をひそめて、
079
月鉾
『
如何
(
いか
)
にも
私
(
わたくし
)
は
月鉾
(
つきほこ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
080
此
(
この
)
深山
(
しんざん
)
を
繊弱
(
かよわ
)
き
婦人
(
ふじん
)
の
身
(
み
)
として、
081
同伴
(
つれ
)
もなく
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
082
御
(
お
)
越
(
こ
)
しになるとは
大胆
(
だいたん
)
至極
(
しごく
)
の
御
(
お
)
振舞
(
ふるまひ
)
、
083
何処
(
どこ
)
へ
御
(
お
)
出
(
い
)
でになりますか』
084
テーリン
姫
(
ひめ
)
は
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
085
テーリン姫
『
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
、
086
何
(
いづ
)
れへ
行
(
ゆ
)
くかとは、
087
それは
余
(
あま
)
り
御
(
お
)
胴欲
(
どうよく
)
で
御座
(
ござ
)
います。
088
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
心願
(
しんぐわん
)
を
掛
(
か
)
け、
089
ヤツト
叶
(
かな
)
うた
妾
(
わたし
)
の
恋路
(
こひぢ
)
、
090
あなたは
妾
(
わたし
)
に
仰
(
あふ
)
せられた
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
091
最早
(
もはや
)
御
(
お
)
忘
(
わす
)
れになりましたか。
092
エヽ
残念
(
ざんねん
)
で
御座
(
ござ
)
います。
093
そんな
御
(
お
)
心
(
こころ
)
とは
露知
(
つゆし
)
らず、
094
互
(
たがひ
)
に
心
(
こころ
)
を
変
(
かは
)
るまじとの
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教示
(
けうじ
)
と
信
(
しん
)
じ、
095
夢
(
ゆめ
)
にも
忘
(
わす
)
れぬ
妾
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
、
096
……エヽ
口惜
(
くや
)
しい、
097
残念
(
ざんねん
)
な』
098
とあたり
構
(
かま
)
はず、
099
身
(
み
)
を
大地
(
だいち
)
にうちつけて
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶのであつた。
100
月鉾
(
つきほこ
)
は
当惑顔
(
たうわくがほ
)
にて、
101
太
(
ふと
)
き
息
(
いき
)
をつき
乍
(
なが
)
ら、
102
月鉾
『あなたに
誓
(
ちか
)
つた
言葉
(
ことば
)
は、
103
夢寐
(
むび
)
にも
忘
(
わす
)
れは
致
(
いた
)
しませぬ。
104
去
(
さ
)
り
乍
(
なが
)
ら、
105
已
(
や
)
むに
止
(
や
)
まれぬ
事情
(
じじやう
)
の
為
(
ため
)
、
106
あなたにも
委細
(
ゐさい
)
を
打明
(
うちあ
)
けず、
107
俄
(
にはか
)
に
或
(
ある
)
秘密
(
ひみつ
)
の
用務
(
ようむ
)
を
帯
(
お
)
びて、
108
暫
(
しばら
)
く
聖地
(
せいち
)
を
離
(
はな
)
れねばならぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ました。
109
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
貴女
(
あなた
)
を
嫌
(
きら
)
つたのでも、
110
忘
(
わす
)
れたのでも
有
(
あ
)
りませぬ。
111
此
(
この
)
月鉾
(
つきほこ
)
が
天晴
(
あつぱ
)
れ
使命
(
しめい
)
を
果
(
はた
)
すまで、
112
泰嶺
(
たいれい
)
に
帰
(
かへ
)
り
神妙
(
しんめう
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
仕
(
つか
)
へて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい。
113
キツト
貴女
(
あなた
)
との
約束
(
やくそく
)
は
反古
(
ほご
)
には
致
(
いた
)
しませぬ。
114
サア
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふ
内
(
うち
)
にも、
115
テールスタンの
部下
(
ぶか
)
の
者共
(
ものども
)
の
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
らば、
116
互
(
たがひ
)
の
不覚
(
ふかく
)
、
117
今
(
いま
)
の
辛
(
つら
)
き
別
(
わか
)
れは
後
(
のち
)
の
楽
(
たのし
)
み、
118
どうぞ
此
(
この
)
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
き
分
(
わ
)
けて、
119
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい』
120
テーリン『イエイエあなたはさう
仰有
(
おつしや
)
つて、
121
うまく
妾
(
わたし
)
を
振棄
(
ふりす
)
て、
122
泰安城
(
たいあんじやう
)
に
隠
(
かく
)
れますマリヤス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
側
(
そば
)
へ
招
(
まね
)
かれて
行
(
ゆ
)
かれるのでせう。
123
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
124
妾
(
わたし
)
は
仮令
(
たとへ
)
火
(
ひ
)
の
中
(
なか
)
、
125
水
(
みづ
)
の
底
(
そこ
)
をも
厭
(
いと
)
ひませぬ。
126
あなたに
影
(
かげ
)
の
如
(
ごと
)
く
附添
(
つきそ
)
ひ
参
(
まゐ
)
ります』
127
月鉾
(
つきほこ
)
『あゝ
困
(
こま
)
つたなア。
128
……
日楯
(
ひたて
)
さま、
129
ユリコ
姫
(
ひめ
)
さま、
130
どうしたら
宜
(
よ
)
いでせうか』
131
日楯
(
ひたて
)
『ハテ
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ましたなア。
132
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
133
今度
(
こんど
)
は
特別
(
とくべつ
)
の
使命
(
しめい
)
が
有
(
あ
)
るのだから、
134
ここの
所
(
ところ
)
はテーリンさまに
聞分
(
ききわ
)
けて
貰
(
もら
)
つて、
135
帰
(
かへ
)
つて
貰
(
もら
)
ふより
仕方
(
しかた
)
が
有
(
あ
)
りますまい』
136
テーリン『あなた
迄
(
まで
)
が
腹
(
はら
)
を
合
(
あ
)
はして、
137
妾
(
わたし
)
を
排斥
(
はいせき
)
なされますか。
138
キツト
御
(
お
)
恨
(
うら
)
み
申
(
まを
)
します』
139
日楯
(
ひたて
)
『あゝあ、
140
どうしたら
良
(
よ
)
からうかなア。
141
竜世姫
(
たつよひめ
)
様
(
さま
)
がいろいろの
迫害
(
はくがい
)
や
艱難
(
かんなん
)
に
遭
(
あ
)
うても、
142
撓
(
たゆ
)
まず
屈
(
くつ
)
せず、
143
初心
(
しよしん
)
を
貫徹
(
くわんてつ
)
せよと
仰有
(
おつしや
)
つたが、
144
これは
又
(
また
)
同情
(
どうじやう
)
ある
迫害
(
はくがい
)
に
会
(
あ
)
つたものだ。
145
情
(
なさけ
)
ある
艱難
(
かんなん
)
に
出会
(
でつくわ
)
したものだ。
146
……ナア
月鉾
(
つきほこ
)
さま』
147
ユリコ『もし、
148
テーリン
様
(
さま
)
、
149
妾
(
わたし
)
は
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
として、
150
差出
(
さしで
)
がましく
申上
(
まをしあ
)
げるのも、
151
何
(
なん
)
となく
恥
(
はづ
)
かしう
御座
(
ござ
)
いますが、
152
貴方
(
あなた
)
も
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
と
深
(
ふか
)
く
契合
(
ちぎりあ
)
うたお
仲
(
なか
)
、
153
切
(
せつ
)
なき
御
(
お
)
心
(
こころ
)
は
御
(
お
)
察
(
さつ
)
し
申上
(
まをしあ
)
げます。
154
さり
乍
(
なが
)
ら
夫
(
をつと
)
の
一大事
(
いちだいじ
)
、
155
ここは
能
(
よ
)
く
噛
(
か
)
み
分
(
わ
)
けて、
156
一先
(
ひとま
)
づ
聖地
(
せいち
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
157
何
(
いづ
)
れ
遠
(
とほ
)
からぬ
内
(
うち
)
に、
158
吉
(
よ
)
き
便
(
たよ
)
りをお
聞
(
き
)
かせ
申
(
まを
)
すことが
出来
(
でき
)
ませう』
159
と
慰
(
なぐさ
)
める
様
(
やう
)
に、
160
言葉
(
ことば
)
やさしく
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
す。
161
テーリン
姫
(
ひめ
)
は
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
にふり、
162
テーリン『イエイエ、
163
夫
(
をつと
)
が
行
(
ゆ
)
かるる
所
(
ところ
)
へ、
164
仮令
(
たとへ
)
内縁
(
ないえん
)
にせよ、
165
妻
(
つま
)
の
妾
(
わたし
)
が
行
(
ゆ
)
かれない
道理
(
だうり
)
が
有
(
あ
)
りますか。
166
女房
(
にようばう
)
が
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないのならば、
167
あなたも
日楯
(
ひたて
)
さまと
此処
(
ここ
)
で
袂
(
たもと
)
を
別
(
わか
)
ち、
168
泰嶺
(
たいれい
)
の
聖地
(
せいち
)
へ
帰
(
かへ
)
つて、
169
神前
(
しんぜん
)
に
御
(
ご
)
奉仕
(
ほうし
)
なさりませ。
170
貴女
(
あなた
)
がさうなされば、
171
妾
(
わたし
)
も
泰嶺
(
たいれい
)
の
聖地
(
せいち
)
へ
潔
(
いさぎよ
)
く
帰
(
かへ
)
ります』
172
と
抜差
(
ぬきさ
)
しならぬ
理詰
(
りづ
)
めに、
173
ユリコ
姫
(
ひめ
)
は
是非
(
ぜひ
)
なく
黙
(
だま
)
り
込
(
こ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
174
月鉾
(
つきほこ
)
は
父
(
ちち
)
の
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
ふべく、
175
意
(
い
)
を
決
(
けつ
)
して
住
(
す
)
み
慣
(
な
)
れし
聖地
(
せいち
)
をあとに、
176
漸
(
や
)
う
漸
(
や
)
う
此処
(
ここ
)
まで
息
(
いき
)
せき
来
(
きた
)
りしものを、
177
恋女
(
こひをんな
)
に
追
(
お
)
ひせまられ、
178
恥
(
はづ
)
かしさと
苦
(
くる
)
しさに、
179
五色
(
ごしき
)
の
息
(
いき
)
を
吐
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
180
日楯
(
ひたて
)
『テーリンさま、
181
貴女
(
あなた
)
は
最前
(
さいぜん
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
に
依
(
よ
)
れば、
182
泰安
(
たいあん
)
の
城
(
しろ
)
に
御座
(
ござ
)
るマリヤス
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
会
(
あ
)
はむとて、
183
月鉾
(
つきほこ
)
さまが
御
(
お
)
出
(
い
)
でになる
様
(
やう
)
に
仰有
(
おつしや
)
つたが、
184
左様
(
さやう
)
な
気楽
(
きらく
)
な
場合
(
ばあひ
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ。
185
吾々
(
われわれ
)
兄弟
(
きやうだい
)
は
父上
(
ちちうへ
)
の
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
はねばならぬ
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
、
186
どうして
気楽
(
きらく
)
相
(
さう
)
に
女
(
をんな
)
を
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
くことが
出来
(
でき
)
ませう。
187
まさかの
時
(
とき
)
に
手足
(
てあし
)
纏
(
まと
)
ひになるのは
女
(
をんな
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ』
188
テーリン『オホヽヽヽ、
189
勝手
(
かつて
)
な
事
(
こと
)
能
(
よ
)
う
仰有
(
おつしや
)
ります。
190
ユリコ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
は
男
(
をとこ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか、
191
そして
貴方
(
あなた
)
と
無関係
(
むくわんけい
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いますか。
192
あなた
方
(
がた
)
は
夫婦
(
ふうふ
)
で
御
(
お
)
出
(
い
)
でになつても
陽気
(
やうき
)
ではなくて、
193
妾
(
わたし
)
が
月鉾
(
つきほこ
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
に
参
(
まゐ
)
るのが
陽気
(
やうき
)
なとは、
194
そりや
又
(
また
)
如何
(
どう
)
した
訳
(
わけ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
195
此
(
この
)
事
(
こと
)
をハツキリと
妾
(
わたし
)
の
合点
(
がつてん
)
の
往
(
ゆ
)
く
様
(
やう
)
に
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
196
心
(
こころ
)
の
僻
(
ひが
)
みか
存
(
ぞん
)
じませぬが、
197
左様
(
さやう
)
な
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
れば
仰有
(
おつしや
)
る
程
(
ほど
)
、
198
妾
(
わたし
)
は
月鉾
(
つきほこ
)
さまに
見放
(
みはな
)
されたとより
思
(
おも
)
はれませぬ。
199
月鉾
(
つきほこ
)
さまには、
200
マリヤス
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
恋女
(
こひをんな
)
が
御座
(
ござ
)
いますから、
201
ここでは
一人旅
(
ひとりたび
)
なれど、
202
泰安
(
たいあん
)
の
都
(
みやこ
)
迄
(
まで
)
御
(
お
)
着
(
つ
)
きになれば、
203
キツと
二夫婦
(
ふたふうふ
)
手
(
て
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて、
204
どつかへ
御
(
お
)
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばすのでせう』
205
月鉾
(
つきほこ
)
『あゝ
持
(
も
)
つ
可
(
べか
)
らざるものは
女
(
をんな
)
なりけり。
206
余
(
あま
)
りの
親切
(
しんせつ
)
にほだされて、
207
内縁
(
ないえん
)
を
結
(
むす
)
んだのは
今
(
いま
)
になつて
見
(
み
)
ると、
208
チト
早計
(
さうけい
)
だつた。
209
あゝ
如何
(
どう
)
したら
良
(
よ
)
からうかなア』
210
テーリン『そら
御覧
(
ごらん
)
、
211
吾
(
わ
)
れと
吾
(
わが
)
手
(
て
)
に
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
を
御
(
お
)
明
(
あ
)
かしなさつたぢやありませぬか。
212
それ
程
(
ほど
)
妾
(
わたし
)
がうるさくて
堪
(
たま
)
らねば、
213
どうぞ
此
(
この
)
場
(
ば
)
であなたの
御
(
お
)
手
(
て
)
にかけて、
214
一思
(
ひとおも
)
ひに
殺
(
ころ
)
して
下
(
くだ
)
さい。
215
さうすれば
定
(
さだ
)
めし、
216
マリヤス
姫
(
ひめ
)
も
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
遊
(
あそ
)
ばし、
217
夫婦
(
ふうふ
)
睦
(
むつま
)
じく
末永
(
すえなが
)
く
暮
(
くら
)
して
下
(
くだ
)
さるでせう』
218
と
身
(
み
)
を
悶
(
もだ
)
えて
泣
(
な
)
きまろぶ。
219
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
代
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る
理
(
り
)
を
分
(
わ
)
けて
諭
(
さと
)
せ
共
(
ども
)
、
220
テーリン
姫
(
ひめ
)
は
容易
(
ようい
)
に
承知
(
しようち
)
せず、
221
言
(
い
)
へば
言
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
、
222
益々
(
ますます
)
疑
(
うたがひ
)
烈
(
はげ
)
しくなる
計
(
ばか
)
りである。
223
最前
(
さいぜん
)
よりあたりの
木蔭
(
こかげ
)
に
潜
(
ひそ
)
んで、
224
此
(
この
)
悲劇
(
ひげき
)
を
聞
(
き
)
き
居
(
ゐ
)
たる
人影
(
ひとかげ
)
があつた。
225
忽
(
たちま
)
ち
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
226
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
につつ
立
(
た
)
ち、
227
(マリヤス姫)
『ヤア
汝
(
なんぢ
)
は
月鉾
(
つきほこ
)
の
一行
(
いつかう
)
であらう。
228
最前
(
さいぜん
)
よりここを
通
(
とほ
)
り
合
(
あは
)
せ
見
(
み
)
れば、
229
何事
(
なにごと
)
か
人
(
ひと
)
の
囁
(
ささや
)
き
声
(
ごゑ
)
、
230
様子
(
やうす
)
あらむと
木蔭
(
こかげ
)
に
立寄
(
たちよ
)
り、
231
聞
(
き
)
くともなしに
聞
(
き
)
き
居
(
を
)
れば、
232
汚
(
けが
)
らはしや、
233
アークス
王
(
わう
)
の
娘
(
むすめ
)
と
生
(
うま
)
れたる、
234
マリヤス
姫
(
ひめ
)
と
月鉾
(
つきほこ
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
の
約束
(
やくそく
)
を
結
(
むす
)
びしとか、
235
結
(
むす
)
ぶとか、
236
無礼
(
ぶれい
)
千万
(
せんばん
)
なる
申様
(
まうしやう
)
、
237
妾
(
わたし
)
は
仮令
(
たとへ
)
父
(
ちち
)
に
死
(
し
)
に
別
(
わか
)
れたりとはいへ、
238
カールス
王
(
わう
)
の
妹
(
いもうと
)
、
239
かかる
尊貴
(
そんき
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
240
如何
(
いか
)
に
泰嶺
(
たいれい
)
の
神司
(
かむづかさ
)
たりとはいへ、
241
月鉾
(
つきほこ
)
の
如
(
ごと
)
きに、
242
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
らむや。
243
吾
(
わ
)
れは
神
(
かみ
)
を
信
(
しん
)
ずるの
余
(
あま
)
り、
244
泰嶺
(
たいれい
)
の
聖地
(
せいち
)
に
仕
(
つか
)
へ
居
(
を
)
れ
共
(
ども
)
、
245
決
(
けつ
)
して、
246
月鉾
(
つきほこ
)
如
(
ごと
)
きに
従
(
したが
)
ひ
居
(
を
)
るものにあらず、
247
雑言
(
ざふごん
)
無礼
(
ぶれい
)
、
248
思
(
おも
)
ひこらし
呉
(
く
)
れん』
249
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
250
蓑
(
みの
)
の
上
(
うへ
)
より、
251
骨
(
ほね
)
も
砕
(
くだ
)
けよと
計
(
ばか
)
り、
252
月鉾
(
つきほこ
)
を
打据
(
うちす
)
ゑた。
253
月鉾
(
つきほこ
)
は
一言
(
ひとこと
)
も
発
(
はつ
)
せず、
254
マリヤス
姫
(
ひめ
)
の
乱打
(
らんだ
)
の
鞭
(
むち
)
を
痛
(
いた
)
さを
忍
(
しの
)
んで
怺
(
こら
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
255
此
(
この
)
態
(
てい
)
を
見
(
み
)
て、
256
テーリン
姫
(
ひめ
)
は
狂気
(
きやうき
)
の
如
(
ごと
)
くマリヤス
姫
(
ひめ
)
に
飛
(
と
)
びつき、
257
直
(
ただち
)
に
右
(
みぎ
)
の
腕
(
うで
)
にカブリつき、
258
一口
(
ひとくち
)
計
(
ばか
)
り
肉
(
にく
)
を
喰
(
く
)
ひちぎつた。
259
忽
(
たちま
)
ち
血
(
ち
)
はボトボトと
流
(
なが
)
れ
出
(
い
)
で、
260
月夜
(
つきよ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
を
黒
(
くろ
)
く
染
(
そ
)
むるに
至
(
いた
)
つた。
261
月鉾
(
つきほこ
)
は
此
(
この
)
態
(
てい
)
を
見
(
み
)
て、
262
テーリン
姫
(
ひめ
)
の
腕
(
うで
)
を
後
(
うしろ
)
に
廻
(
まは
)
し、
263
笠
(
かさ
)
の
紐
(
ひも
)
を
以
(
もつ
)
て
厳
(
きび
)
しく
縛
(
しば
)
りあげた。
264
日楯
(
ひたて
)
、
265
ユリコ
姫
(
ひめ
)
は、
266
直
(
ただち
)
におのが
帯
(
おび
)
を
引裂
(
ひきさ
)
き、
267
マリヤス
姫
(
ひめ
)
の
傷所
(
きずしよ
)
に、
268
土
(
つち
)
をかき
集
(
あつ
)
めて、
269
塗
(
ぬ
)
りつけ、
270
固
(
かた
)
く
縛
(
しば
)
り、
271
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
歌
(
うた
)
ひ、
272
伊吹
(
いぶき
)
の
狭霧
(
さぎり
)
を
吹
(
ふ
)
きかけた。
273
傷
(
きず
)
は
忽
(
たちま
)
ち
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
くに
癒
(
い
)
えて
了
(
しま
)
つた。
274
日楯
(
ひたて
)
、
275
月鉾
(
つきほこ
)
、
276
ユリコ
姫
(
ひめ
)
は
此
(
この
)
機
(
き
)
に
乗
(
じやう
)
じて、
277
足早
(
あしばや
)
に
何処
(
いづく
)
ともなく
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
了
(
しま
)
つた。
278
跡
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
りし
二人
(
ふたり
)
は
稍
(
やや
)
暫
(
しば
)
し、
279
無言
(
むごん
)
の
儘
(
まま
)
にて
互
(
たがひ
)
に
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
つめて
居
(
ゐ
)
た。
280
暫
(
しばら
)
くあつて、
281
マリヤス
姫
(
ひめ
)
は
言葉
(
ことば
)
を
軟
(
やは
)
らげ、
282
マリヤス姫
『
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
はテーリン
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
283
不思議
(
ふしぎ
)
な
所
(
ところ
)
でお
目
(
め
)
にかかりました。
284
何事
(
なにごと
)
も
人間
(
にんげん
)
は
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
の
儘
(
まま
)
によりなるものでは
御座
(
ござ
)
いませぬから、
285
どうぞ
心
(
こころ
)
を
落
(
お
)
ちつけて、
286
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
の
無事
(
ぶじ
)
使命
(
しめい
)
を
了
(
をは
)
つて、
287
泰嶺
(
たいれい
)
の
聖地
(
せいち
)
へ
無事
(
ぶじ
)
御
(
お
)
帰
(
かへ
)
りなさる
日
(
ひ
)
を
御
(
お
)
待
(
ま
)
ちなされませ。
288
キツト
妾
(
わたし
)
があなたの
望
(
のぞ
)
みを
叶
(
かな
)
へさして
上
(
あ
)
げませう』
289
テーリン
姫
(
ひめ
)
は
後手
(
うしろで
)
に
縛
(
しば
)
られ
乍
(
なが
)
ら、
290
歯
(
は
)
を
喰
(
く
)
ひしばり、
291
血
(
ち
)
さへ
滲
(
にぢ
)
らして
居
(
ゐ
)
る
其
(
その
)
形相
(
ぎやうさう
)
の
凄
(
すさま
)
じさ。
292
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
に
照
(
て
)
らし
見
(
み
)
て、
293
マリヤス
姫
(
ひめ
)
は
恋
(
こひ
)
の
妄執
(
まうしふ
)
の
如何
(
いか
)
にも
恐
(
おそ
)
ろしきものたることに
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
いた。
294
テーリン
姫
(
ひめ
)
『あなたは、
295
妾
(
わたし
)
に
比
(
くら
)
べて、
296
余程
(
よほど
)
年
(
とし
)
をとつて
居
(
を
)
られます
丈
(
だけ
)
あつて、
297
実
(
じつ
)
に
巧名
(
こうめう
)
な
八百長
(
やほちやう
)
を
行
(
や
)
られますなア。
298
田舎
(
いなか
)
の
未通娘
(
おぼこむすめ
)
をだまさうとなさつても、
299
私
(
わたくし
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
ですから、
300
そんな
手
(
て
)
には
乗
(
の
)
りませぬよ。
301
要
(
い
)
らぬ
気休
(
きやす
)
めはモウ
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さるな。
302
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
303
あなたには、
304
そんな
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
る
資格
(
しかく
)
はありませぬ。
305
三五教
(
あななひけう
)
一般
(
いつぱん
)
の
喧
(
やかま
)
しい
噂
(
うはさ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
306
マリヤス
姫
(
ひめ
)
『あゝ
情
(
なさけ
)
ない
事
(
こと
)
になりました。
307
実
(
じつ
)
の
事
(
こと
)
を、
308
妾
(
わたし
)
は
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
して、
309
貴女
(
あなた
)
の
疑
(
うたがひ
)
を
晴
(
は
)
らして
頂
(
いただ
)
かねばなりませぬ。
310
妾
(
わたし
)
は
或
(
ある
)
事情
(
じじやう
)
の
為
(
ため
)
、
311
泰安城
(
たいあんじやう
)
をのがれ、
312
泰嶺
(
たいれい
)
の
聖地
(
せいち
)
に
参
(
まゐ
)
りまして、
313
尊
(
たうと
)
き
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
教
(
をしへ
)
を
奉
(
ほう
)
じ、
314
今
(
いま
)
は
神前
(
しんぜん
)
近
(
ちか
)
く
仕
(
つか
)
ふる
聖職
(
せいしよく
)
となりました。
315
一度
(
いちど
)
は
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
し、
316
妾
(
わたし
)
も
非常
(
ひじやう
)
に
恋慕
(
れんぼ
)
の
念
(
ねん
)
を
起
(
おこ
)
し、
317
いろいろと
言
(
い
)
ひよりましたが、
318
如何
(
どう
)
しても、
319
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
は
御
(
お
)
聞
(
き
)
き
下
(
くだ
)
さりませぬ。
320
翻
(
ひるがへ
)
つてよく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
れば、
321
妾
(
わたし
)
はアークス
王
(
わう
)
の
落胤
(
らくいん
)
とは
申
(
まを
)
し
乍
(
なが
)
ら、
322
父
(
ちち
)
が
母
(
はは
)
の
目
(
め
)
を
忍
(
しの
)
んで
生
(
う
)
みましたる
罪
(
つみ
)
の
子
(
こ
)
の
妾
(
わたし
)
、
323
如何
(
どう
)
して
尊
(
たふと
)
い
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
の
女房
(
にようばう
)
になることが
出来
(
でき
)
ませうか。
324
又
(
また
)
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
奉
(
ほう
)
じ
玉
(
たま
)
ふ
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
は、
325
アークス
王
(
わう
)
に
弥
(
いや
)
増
(
ま
)
して
尊
(
たふと
)
き
御
(
お
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
326
其
(
その
)
御
(
お
)
方
(
かた
)
の
珍
(
うづ
)
の
子
(
こ
)
と
生
(
うま
)
れ
玉
(
たま
)
ひし
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
に、
327
恋慕
(
れんぼ
)
の
心
(
こころ
)
を
起
(
おこ
)
すといふは、
328
全
(
まつた
)
く
早
(
はや
)
まつた
考
(
かんが
)
へだと
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
きました。
329
其
(
その
)
日
(
ひ
)
よりプツツリと
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
り、
330
今
(
いま
)
は
極
(
きは
)
めて
清
(
きよ
)
き
心
(
こころ
)
を
以
(
もつ
)
て
神前
(
しんぜん
)
に
奉仕
(
ほうし
)
して
居
(
ゐ
)
るので
御座
(
ござ
)
います。
331
世間
(
せけん
)
の
噂
(
うはさ
)
の
喧
(
やかま
)
しく
立
(
た
)
つたのも、
332
元
(
もと
)
はヤツパリ
妾
(
わたし
)
の
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
を
恋
(
こ
)
ひ
慕
(
した
)
ふ
其
(
その
)
様子
(
やうす
)
が
何
(
なん
)
となく
目
(
め
)
に
立
(
た
)
つたからで
御座
(
ござ
)
いませう。
333
全
(
まつた
)
く
妾
(
わたし
)
の
罪
(
つみ
)
と
諦
(
あきら
)
めるより
仕方
(
しかた
)
はありませぬ。
334
……どうぞテーリン
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
335
今迄
(
いままで
)
の
疑
(
うたがひ
)
を
私
(
わたくし
)
の
此
(
この
)
告白
(
こくはく
)
に
依
(
よ
)
つてお
晴
(
は
)
らし
下
(
くだ
)
さいませ。
336
貴女
(
あなた
)
は
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
とは
従兄妹
(
いとこ
)
同志
(
どうし
)
の
仲
(
なか
)
、
337
何
(
いづ
)
れも
尊
(
たふと
)
い
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
胤
(
たね
)
、
338
こんな
結構
(
けつこう
)
な
縁
(
えん
)
はないと
存
(
ぞん
)
じまして、
339
妾
(
わたし
)
は
内々
(
ないない
)
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
に、
340
あなたとの
御
(
ご
)
結婚
(
けつこん
)
を、
341
お
勧
(
すす
)
め
申
(
まを
)
して
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います』
342
テーリン
姫
(
ひめ
)
『
其
(
そ
)
のお
言葉
(
ことば
)
に
依
(
よ
)
つて、
343
妾
(
わたし
)
も
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました。
344
月鉾
(
つきほこ
)
様
(
さま
)
は
父上
(
ちちうへ
)
の
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
はねばならぬ
大切
(
たいせつ
)
な
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
妾
(
わたし
)
などが
此
(
こ
)
んな
所
(
ところ
)
へ
参
(
まゐ
)
りまして、
345
ゴテゴテと
御
(
お
)
邪魔
(
じやま
)
を
致
(
いた
)
す
場合
(
ばあひ
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬが、
346
つい
恋
(
こひ
)
の
意地
(
いぢ
)
から
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
事
(
こと
)
が
気
(
き
)
にかかり、
347
妬
(
ねた
)
ましくなり、
348
最前
(
さいぜん
)
の
様
(
やう
)
な
恥
(
はづか
)
しい
事
(
こと
)
をお
目
(
め
)
にかけました。
349
どうぞ
御
(
お
)
宥
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
350
妾
(
わたし
)
は
月鉾
(
つきほこ
)
に
後手
(
うしろで
)
に
縛
(
いまし
)
められて
居
(
を
)
ります。
351
どうぞ
此
(
この
)
縛
(
いましめ
)
をお
解
(
と
)
き
下
(
くだ
)
さいますまいか』
352
マリヤス
姫
(
ひめ
)
『あゝさうで
御座
(
ござ
)
いましたか、
353
夜分
(
やぶん
)
の
事
(
こと
)
とて、
354
……つい、
355
気
(
き
)
が
付
(
つ
)
きませなんだ』
356
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
357
テーリン
姫
(
ひめ
)
の
縛
(
いましめ
)
を
解
(
と
)
き、
358
背
(
せ
)
を
撫
(
な
)
でさすり、
359
労
(
いたは
)
り
助
(
たす
)
け
抱
(
だ
)
き
起
(
おこ
)
し、
360
マリヤス
姫
(
ひめ
)
『サア
妾
(
わたし
)
も
是
(
こ
)
れより
泰嶺
(
たいれい
)
へ
参
(
まゐ
)
りませう。
361
泰安城
(
たいあんじやう
)
には
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
突発
(
とつぱつ
)
致
(
いた
)
し、
362
何時
(
いつ
)
妾
(
わたし
)
に
追手
(
おつて
)
がかかるかも
計
(
はか
)
られませぬ。
363
何事
(
なにごと
)
も
運
(
うん
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
任
(
まか
)
せ、
364
泰嶺
(
たいれい
)
の
聖地
(
せいち
)
に
於
(
おい
)
て
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
奉仕
(
ほうし
)
し、
365
惟神
(
かむながら
)
の
御
(
ご
)
摂理
(
せつり
)
に
任
(
まか
)
す
考
(
かんが
)
へで
御座
(
ござ
)
います。
366
又
(
また
)
日楯
(
ひたて
)
様
(
さま
)
が
夫婦
(
ふうふ
)
連
(
づれ
)
にてお
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばしたのも、
367
これには
特別
(
とくべつ
)
の
事情
(
じじやう
)
が
御座
(
ござ
)
いますから、
368
聖地
(
せいち
)
へ
帰
(
かへ
)
つた
上
(
うへ
)
御
(
ご
)
得心
(
とくしん
)
の
行
(
ゆ
)
く
様
(
やう
)
に
御
(
お
)
話
(
はな
)
し
申上
(
まをしあ
)
げませう。
369
サア
斯様
(
かやう
)
な
処
(
ところ
)
にグヅグヅ
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りましては
険呑
(
けんのん
)
千万
(
せんばん
)
、
370
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
りませう』
371
とテーリン
姫
(
ひめ
)
の
手
(
て
)
を
取
(
と
)
り、
372
互
(
たがひ
)
に
打解
(
うちと
)
けて、
373
アーリス
山
(
ざん
)
を
降
(
くだ
)
り、
374
日月潭
(
じつげつたん
)
の
湖辺
(
こへん
)
を
辿
(
たど
)
りて、
375
遂
(
つひ
)
に
玉藻山
(
たまもやま
)
の
聖地
(
せいち
)
に
参拝
(
さんぱい
)
し、
376
漸
(
やうや
)
くにして
泰嶺
(
たいれい
)
の
聖地
(
せいち
)
に
帰
(
かへ
)
り
着
(
つ
)
いた。
377
これよりテーリン
姫
(
ひめ
)
の
疑
(
うたがひ
)
は
全
(
まつた
)
く
晴
(
は
)
れ、
378
姉妹
(
しまい
)
の
如
(
ごと
)
く
相親
(
あひした
)
しみ、
379
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
し、
380
月鉾
(
つきほこ
)
の
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
るを
待
(
ま
)
ち
居
(
ゐ
)
たりける。
381
(
大正一一・八・八
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松村真澄
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