霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。実験用サイトサブスク
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一〇章 (もつ)(がみ)〔八一〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻 篇:第2篇 暗黒の叫 よみ(新仮名遣い):あんこくのさけび
章:第10章 縺れ髪 よみ(新仮名遣い):もつれがみ 通し章番号:810
口述日:1922(大正11)年08月08日(旧06月16日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年8月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
日楯夫婦と月鉾は、父・真道彦やヤーチン姫が重臣たちの裏切りによって捕らえられたことに心を痛め、神前にて祈願をこらしていた。たちまちユリコ姫に神懸りがあり、国魂神・竜世姫命の神勅が降りた。
それによると、このたび真道彦の禍はすべて神界の経綸によるものであり、案じ煩うことは無い、とのことであった。そしてカールス王の迷夢を覚ますためには、日楯夫婦と月鉾の三人で、南琉球の王である照彦王を尋ね、救援を求めよ、と神命を下した。
三人は密かに旅立ち、キールの港を指して山道を進んだ。月の照る夜、三人はアーリス山の山頂で休んでいた。すると峠を登ってくる菅笠が見えた。見ると巡礼姿の妙齢の美人である。
巡礼姿の美人は、月鉾を追って来たテーリン姫であった。テーリン姫はどうしても月鉾と同行すると言い張り、三人が神勅による旅だと言っても、月鉾が自分から逃げて、マリヤス姫の元に逃げるのではないかと疑って聞かない。
三人が困り果てていると、最前より木陰に潜んで様子を窺っていたマリヤス姫が現れ、月鉾が自分のところに逃げるなど無礼千万と言って、月鉾に打ってかかった。テーリン姫はそれを見てマリヤス姫に狂気のごとく組み付いた。
月鉾はこれを見てテーリン姫を縛り上げた。そして三人はこの機に乗じてその場を逃げた。後に残されたマリヤス姫は、テーリン姫に優しく接した。最初は疑っていたテーリン姫も、正直に身の上を話すマリヤス姫に心を開き、二人は姉妹のように親しむようになった。そして月鉾らの帰りを待つこととなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ:キールの港(基隆の港) データ凡例: データ最終更新日:2021-11-24 16:59:25 OBC :rm2810
愛善世界社版:112頁 八幡書店版:第5輯 393頁 修補版: 校定版:116頁 普及版:53頁 初版: ページ備考:
001 真道彦(まみちひこの)(みこと)教主(けうしゆ)(はじ)めヤーチン(ひめ)は、002淡渓(たんけい)上流(じやうりう)なる岩窟(がんくつ)牢獄(らうごく)(とう)ぜられ、003数多(あまた)幹部(かんぶ)(ほこ)(さか)さまにして、004カールス(わう)()()り、005暴政(ばうせい)(ふる)ひ、006(その)(いきほ)猛烈(まうれつ)にして何時(いつ)如何(いか)なる難題(なんだい)(この)聖地(せいち)(むか)つて持込(もちこ)(きた)るやも(はか)られず、007()数多(あまた)信徒(しんと)(ほとん)離散(りさん)し、008寂寥(せきれう)()(つつ)まれ、009日楯(ひたて)夫婦(ふうふ)(はじ)め、010月鉾(つきほこ)(こころ)()ちつかず、011薄氷(はくひよう)()(ごと)心地(ここち)(なが)ら、012ヤーチン(ひめ)(はじ)め、013(ちち)寃罪(ゑんざい)(いち)(にち)(はや)()れむ(こと)を、014朝夕(あさゆふ)神前(しんぜん)祈願(きぐわん)しつつあつた。015(たちま)ちユリコ(ひめ)神懸(かむがか)りあり、016(ことば)おごそかに()(たま)ふよう、
017ユリコ姫(に懸かった竜世姫命)(なんぢ)日楯(ひたて)018月鉾(つきほこ)兄弟(きやうだい)よ、019真道彦(まみちひこの)(みこと)(この)(たび)奇禍(きくわ)は、020すべて神界(しんかい)経綸(けいりん)()でさせ(たま)ふものなれば(かなら)(あん)(わづら)(なか)れ。021(やが)晴天(せいてん)白日(はくじつ)(とき)(きた)るべし。022真道彦(まみちひこの)(みこと)023(この)(たび)遭難(さうなん)なくば、024到底(たうてい)三五教(あななひけう)救世主(きうせいしゆ)としての任務(にんむ)(まつた)うする(こと)(あた)はず。025今日(こんにち)(かな)しみは後日(ごじつ)(よろこ)びなり、026(かなら)(かなら)傷心(しやうしん)する(こと)(なか)れ。027()れより(なんぢ)兄弟(きやうだい)は、028ユリコ(ひめ)(ともな)ひ、029暗夜(あんや)(じやう)じて聖地(せいち)()り、030荒波(あらなみ)(わた)りて、031琉球(りうきう)南島(なんたう)()三五教(あななひけう)神司(かむづかさ)(けん)国王(こきし)たる照彦(てるひこ)032照子姫(てるこひめ)(もと)(いた)り、033事情(じじやう)打明(うちあ)かし、034救援(きうゑん)(もと)めよ。035(しか)らばカールス(わう)迷夢(めいむ)()め、036(なんぢ)(ちち)(うたがひ)(まつた)()るるに(いた)らむ。037(なんぢ)兄弟(きやうだい)(いま)(とし)(わか)く、038如何(いか)なる艱難(かんなん)辛苦(しんく)にも()()べき能力(のうりよく)あり。039(とし)(おい)たる(ちち)危難(きなん)(おも)へば、040如何(いか)なる難事(なんじ)遭遇(さうぐう)する(とも)041(もの)(かず)にも(あら)ざるべし。042今宵(こよひ)(とき)(うつ)さず、043聖地(せいち)立出(たちい)琉球(りうきう)(しま)(むか)へよ。044中途(ちうと)にして種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)迫害(はくがい)艱難(かんなん)()(こと)あるとも、045(たゆ)まず(くつ)せず、046勇猛心(ゆうまうしん)発揮(はつき)して、047(この)使命(しめい)(はた)すべし。048()れは本島(ほんたう)国魂神(くにたまがみ)竜世姫(たつよひめの)(みこと)なるぞ。049ゆめゆめ(わが)神勅(しんちよく)(うたが)ふな』
050()(をは)つて、051ユリコ(ひめ)神懸(かむがか)りは(もと)(ふく)した。052(ここ)日楯(ひたて)053月鉾(つきほこ)兄弟(きやうだい)はユリコ(ひめ)(とも)に、054()巡礼姿(じゆんれいすがた)にやつし、055蓑笠(みのかさ)草鞋(わらぢ)脚絆(きやはん)扮装(いでたち)056金剛杖(こんがうづゑ)をつき(なが)ら、057人里(ひとざと)(はな)れし山途(やまみち)辿(たど)りて(つひ)基隆(キール)(みなと)()して(すす)むこととなつた。
058 (つき)()りわたる(すず)しき(なつ)()を、059(さん)(にん)(やうや)くにして、060アーリス(ざん)頂上(ちやうじやう)辿(たど)()き、061(かたはら)(いはほ)腰打(こしうち)かけ(いき)(やす)めてゐた。062フト()れば、063月夜(つきよ)(なか)(しろ)(ひか)つた(すげ)小笠(をがさ)(いち)(まい)064ゆらぎつつ(たうげ)目蒐(めが)けて(のぼ)()る。065(さん)(にん)()(みは)り、066テールスタンの部下(ぶか)間者(かんじや)にはあらざるかと(やや)(むね)(とどろ)かせ(なが)ら、067(こころ)(なか)にて(あま)数歌(かずうた)(とな)へつつあつた。068(かさ)(やうや)間近(まぢか)くなつた。069()れば一人(ひとり)巡礼姿(じゆんれいすがた)妙齢(めうれい)美人(びじん)である。070美人(びじん)(さん)(にん)(いこ)へる(まへ)に、071(おそ)(おそ)(ちか)づき(きた)り、072さも慇懃(いんぎん)に、
073巡礼(じゆんれい)失礼(しつれい)(なが)ら、074あなたは月鉾(つきほこ)(さま)一行(いつかう)では御座(ござ)いませぬか。075(わたし)泰嶺(たいれい)聖地(せいち)(あさ)(ゆふ)(つか)へまつれるテーリン(ひめ)御座(ござ)います』
076 月鉾(つきほこ)(この)(こゑ)(おどろ)き、077あたりを見廻(みまは)(なが)ら、078(こゑ)をひそめて、
079月鉾如何(いか)にも(わたくし)月鉾(つきほこ)御座(ござ)います。080(この)深山(しんざん)繊弱(かよわ)婦人(ふじん)()として、081同伴(つれ)もなく(ただ)一人(ひとり)082()()しになるとは大胆(だいたん)至極(しごく)()振舞(ふるまひ)083何処(どこ)()()でになりますか』
084 テーリン(ひめ)(なみだ)(ぬぐ)(なが)ら、
085テーリン姫月鉾(つきほこ)(さま)086(いづ)れへ()くかとは、087それは(あま)()胴欲(どうよく)御座(ござ)います。088三五教(あななひけう)(かみ)(さま)心願(しんぐわん)()け、089ヤツト(かな)うた(わたし)恋路(こひぢ)090あなたは(わたし)(あふ)せられた()言葉(ことば)091最早(もはや)()(わす)れになりましたか。092エヽ残念(ざんねん)御座(ござ)います。093そんな()(こころ)とは露知(つゆし)らず、094(たがひ)(こころ)(かは)るまじとの()言葉(ことば)(かみ)(さま)教示(けうじ)(しん)じ、095(ゆめ)にも(わす)れぬ(わたし)(こころ)096……エヽ口惜(くや)しい、097残念(ざんねん)な』
098とあたり(かま)はず、099()大地(だいち)にうちつけて()(さけ)ぶのであつた。100月鉾(つきほこ)当惑顔(たうわくがほ)にて、101(ふと)(いき)をつき(なが)ら、
102月鉾『あなたに(ちか)つた言葉(ことば)は、103夢寐(むび)にも(わす)れは(いた)しませぬ。104()(なが)ら、105()むに()まれぬ事情(じじやう)(ため)106あなたにも委細(ゐさい)打明(うちあ)けず、107(にはか)(ある)秘密(ひみつ)用務(ようむ)()びて、108(しばら)聖地(せいち)(はな)れねばならぬ(こと)出来(でき)ました。109(けつ)して(けつ)して貴女(あなた)(きら)つたのでも、110(わす)れたのでも()りませぬ。111(この)月鉾(つきほこ)天晴(あつぱ)使命(しめい)(はた)すまで、112泰嶺(たいれい)(かへ)神妙(しんめう)(かみ)(さま)(つか)へて()(くだ)さい。113キツト貴女(あなた)との約束(やくそく)反古(ほご)には(いた)しませぬ。114サア()()(うち)にも、115テールスタンの部下(ぶか)者共(ものども)(みみ)()らば、116(たがひ)不覚(ふかく)117(いま)(つら)(わか)れは(のち)(たのし)み、118どうぞ(この)(こと)()()けて、119一刻(いつこく)(はや)(かへ)つて(くだ)さい』
120テーリン『イエイエあなたはさう仰有(おつしや)つて、121うまく(わたし)振棄(ふりす)て、122泰安城(たいあんじやう)(かく)れますマリヤス(ひめ)(さま)のお(そば)(まね)かれて()かれるのでせう。123(なん)仰有(おつしや)つても、124(わたし)仮令(たとへ)()(なか)125(みづ)(そこ)をも(いと)ひませぬ。126あなたに(かげ)(ごと)附添(つきそ)(まゐ)ります』
127月鉾(つきほこ)『あゝ(こま)つたなア。128……日楯(ひたて)さま、129ユリコ(ひめ)さま、130どうしたら()いでせうか』
131日楯(ひたて)『ハテ(こま)つた(こと)出来(でき)ましたなア。132(なん)()つても、133今度(こんど)特別(とくべつ)使命(しめい)()るのだから、134ここの(ところ)はテーリンさまに聞分(ききわ)けて(もら)つて、135(かへ)つて(もら)ふより仕方(しかた)()りますまい』
136テーリン『あなた(まで)(はら)()はして、137(わたし)排斥(はいせき)なされますか。138キツト()(うら)(まを)します』
139日楯(ひたて)『あゝあ、140どうしたら()からうかなア。141竜世姫(たつよひめ)(さま)がいろいろの迫害(はくがい)艱難(かんなん)()うても、142(たゆ)まず(くつ)せず、143初心(しよしん)貫徹(くわんてつ)せよと仰有(おつしや)つたが、144これは(また)同情(どうじやう)ある迫害(はくがい)()つたものだ。145(なさけ)ある艱難(かんなん)出会(でつくわ)したものだ。146……ナア月鉾(つきほこ)さま』
147ユリコ『もし、148テーリン(さま)149(わたし)(をんな)()として、150差出(さしで)がましく申上(まをしあ)げるのも、151(なん)となく(はづ)かしう御座(ござ)いますが、152貴方(あなた)月鉾(つきほこ)(さま)(ふか)契合(ちぎりあ)うたお(なか)153(せつ)なき()(こころ)()(さつ)申上(まをしあ)げます。154さり(なが)(をつと)一大事(いちだいじ)155ここは()()()けて、156一先(ひとま)聖地(せいち)(かへ)つて(くだ)さいませ。157(いづ)(とほ)からぬ(うち)に、158()便(たよ)りをお()かせ(まを)すことが出来(でき)ませう』
159(なぐさ)める(やう)に、160言葉(ことば)やさしく()(さと)す。161テーリン(ひめ)(くび)左右(さいう)にふり、
162テーリン『イエイエ、163(をつと)()かるる(ところ)へ、164仮令(たとへ)内縁(ないえん)にせよ、165(つま)(わたし)()かれない道理(だうり)()りますか。166女房(にようばう)()(こと)出来(でき)ないのならば、167あなたも日楯(ひたて)さまと此処(ここ)(たもと)(わか)ち、168泰嶺(たいれい)聖地(せいち)(かへ)つて、169神前(しんぜん)()奉仕(ほうし)なさりませ。170貴女(あなた)がさうなされば、171(わたし)泰嶺(たいれい)聖地(せいち)(いさぎよ)(かへ)ります』
172抜差(ぬきさ)しならぬ理詰(りづ)めに、173ユリコ(ひめ)是非(ぜひ)なく(だま)()んで(しま)つた。
174 月鉾(つきほこ)(ちち)危難(きなん)(すく)ふべく、175()(けつ)して()()れし聖地(せいち)をあとに、176()()此処(ここ)まで(いき)せき(きた)りしものを、177恋女(こひをんな)()ひせまられ、178(はづ)かしさと(くる)しさに、179五色(ごしき)(いき)()いて()る。
180日楯(ひたて)『テーリンさま、181貴女(あなた)最前(さいぜん)()言葉(ことば)()れば、182泰安(たいあん)(しろ)御座(ござ)るマリヤス(ひめ)(さま)()はむとて、183月鉾(つきほこ)さまが()()でになる(やう)仰有(おつしや)つたが、184左様(さやう)気楽(きらく)場合(ばあひ)では御座(ござ)いませぬ。185吾々(われわれ)兄弟(きやうだい)父上(ちちうへ)危難(きなん)(すく)はねばならぬ千騎(せんき)一騎(いつき)(この)場合(ばあひ)186どうして気楽(きらく)(さう)(をんな)()れて()くことが出来(でき)ませう。187まさかの(とき)手足(てあし)(まと)ひになるのは(をんな)御座(ござ)いますよ』
188テーリン『オホヽヽヽ、189勝手(かつて)(こと)()仰有(おつしや)ります。190ユリコ(ひめ)(さま)(をとこ)御座(ござ)いますか、191そして貴方(あなた)無関係(むくわんけい)()(かた)御座(ござ)いますか。192あなた(がた)夫婦(ふうふ)()()でになつても陽気(やうき)ではなくて、193(わたし)月鉾(つきほこ)さまと一緒(いつしよ)(まゐ)るのが陽気(やうき)なとは、194そりや(また)如何(どう)した(わけ)御座(ござ)います。195(この)(こと)をハツキリと(わたし)合点(がつてん)()(やう)仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ。196(こころ)(ひが)みか(ぞん)じませぬが、197左様(さやう)(こと)仰有(おつしや)れば仰有(おつしや)(ほど)198(わたし)月鉾(つきほこ)さまに見放(みはな)されたとより(おも)はれませぬ。199月鉾(つきほこ)さまには、200マリヤス(ひめ)()立派(りつぱ)恋女(こひをんな)御座(ござ)いますから、201ここでは一人旅(ひとりたび)なれど、202泰安(たいあん)(みやこ)(まで)()()きになれば、203キツと二夫婦(ふたふうふ)()()()つて、204どつかへ()()(あそ)ばすのでせう』
205月鉾(つきほこ)『あゝ()(べか)らざるものは(をんな)なりけり。206(あま)りの親切(しんせつ)にほだされて、207内縁(ないえん)(むす)んだのは(いま)になつて()ると、208チト早計(さうけい)だつた。209あゝ如何(どう)したら()からうかなア』
210テーリン『そら御覧(ごらん)211()れと(わが)()(こころ)(そこ)()()かしなさつたぢやありませぬか。212それ(ほど)(わたし)がうるさくて(たま)らねば、213どうぞ(この)()であなたの()()にかけて、214一思(ひとおも)ひに(ころ)して(くだ)さい。215さうすれば(さだ)めし、216マリヤス(ひめ)()満足(まんぞく)(あそ)ばし、217夫婦(ふうふ)(むつま)じく末永(すえなが)(くら)して(くだ)さるでせう』
218()(もだ)えて()きまろぶ。219(さん)(にん)(かは)(がは)()()けて(さと)(ども)220テーリン(ひめ)容易(ようい)承知(しようち)せず、221()へば()(ほど)222益々(ますます)(うたがひ)(はげ)しくなる(ばか)りである。
223 最前(さいぜん)よりあたりの木蔭(こかげ)(ひそ)んで、224(この)悲劇(ひげき)()()たる人影(ひとかげ)があつた。225(たちま)(この)()(あら)はれ、226()(にん)(まへ)につつ()ち、
227(マリヤス姫)『ヤア(なんぢ)月鉾(つきほこ)一行(いつかう)であらう。228最前(さいぜん)よりここを(とほ)(あは)()れば、229何事(なにごと)(ひと)(ささや)(ごゑ)230様子(やうす)あらむと木蔭(こかげ)立寄(たちよ)り、231()くともなしに()()れば、232(けが)らはしや、233アークス(わう)(むすめ)(うま)れたる、234マリヤス(ひめ)月鉾(つきほこ)夫婦(ふうふ)約束(やくそく)(むす)びしとか、235(むす)ぶとか、236無礼(ぶれい)千万(せんばん)なる申様(まうしやう)237(わたし)仮令(たとへ)(ちち)()(わか)れたりとはいへ、238カールス(わう)(いもうと)239かかる尊貴(そんき)()(もつ)て、240如何(いか)泰嶺(たいれい)神司(かむづかさ)たりとはいへ、241月鉾(つきほこ)(ごと)きに、242秋波(しうは)(おく)らむや。243()れは(かみ)(しん)ずるの(あま)り、244泰嶺(たいれい)聖地(せいち)(つか)()(ども)245(けつ)して、246月鉾(つきほこ)(ごと)きに(したが)()るものにあらず、247雑言(ざふごん)無礼(ぶれい)248(おも)ひこらし()れん』
249()ふより(はや)く、250(みの)(うへ)より、251(ほね)(くだ)けよと(ばか)り、252月鉾(つきほこ)打据(うちす)ゑた。253月鉾(つきほこ)一言(ひとこと)(はつ)せず、254マリヤス(ひめ)乱打(らんだ)(むち)(いた)さを(しの)んで(こら)へて()る。255(この)(てい)()て、256テーリン(ひめ)狂気(きやうき)(ごと)くマリヤス(ひめ)()びつき、257(ただち)(みぎ)(うで)にカブリつき、258一口(ひとくち)(ばか)(にく)()ひちぎつた。259(たちま)()はボトボトと(なが)()で、260月夜(つきよ)木蔭(こかげ)(くろ)()むるに(いた)つた。261月鉾(つきほこ)(この)(てい)()て、262テーリン(ひめ)(うで)(うしろ)(まは)し、263(かさ)(ひも)(もつ)(きび)しく(しば)りあげた。264日楯(ひたて)265ユリコ(ひめ)は、266(ただち)におのが(おび)引裂(ひきさ)き、267マリヤス(ひめ)傷所(きずしよ)に、268(つち)をかき(あつ)めて、269()りつけ、270(かた)(しば)り、271(あま)数歌(かずうた)(うた)ひ、272伊吹(いぶき)狭霧(さぎり)()きかけた。273(きず)(たちま)(もと)(ごと)くに()えて(しま)つた。
274 日楯(ひたて)275月鉾(つきほこ)276ユリコ(ひめ)(この)()(じやう)じて、277足早(あしばや)何処(いづく)ともなく姿(すがた)(かく)して(しま)つた。278(あと)(のこ)りし二人(ふたり)(やや)(しば)し、279無言(むごん)(まま)にて(たがひ)(かほ)()つめて()た。
280 (しばら)くあつて、281マリヤス(ひめ)言葉(ことば)(やは)らげ、
282マリヤス姫貴女(あなた)(さま)はテーリン(ひめ)(さま)御座(ござ)いましたか。283不思議(ふしぎ)(ところ)でお()にかかりました。284何事(なにごと)人間(にんげん)神界(しんかい)()経綸(けいりん)(まま)によりなるものでは御座(ござ)いませぬから、285どうぞ(こころ)()ちつけて、286月鉾(つきほこ)(さま)無事(ぶじ)使命(しめい)(をは)つて、287泰嶺(たいれい)聖地(せいち)無事(ぶじ)()(かへ)りなさる()()()ちなされませ。288キツト(わたし)があなたの(のぞ)みを(かな)へさして()げませう』
289 テーリン(ひめ)後手(うしろで)(しば)られ(なが)ら、290()()ひしばり、291()さへ(にぢ)らして()(その)形相(ぎやうさう)(すさま)じさ。292(つき)(ひかり)()らし()て、293マリヤス(ひめ)(こひ)妄執(まうしふ)如何(いか)にも(おそ)ろしきものたることに(した)()いた。
294テーリン(ひめ)『あなたは、295(わたし)(くら)べて、296余程(よほど)(とし)をとつて()られます(だけ)あつて、297(じつ)巧名(こうめう)八百長(やほちやう)()られますなア。298田舎(いなか)未通娘(おぼこむすめ)をだまさうとなさつても、299(わたくし)一生(いつしやう)懸命(けんめい)ですから、300そんな()には()りませぬよ。301()らぬ気休(きやす)めはモウ()つて(くだ)さるな。302(なん)仰有(おつしや)つても、303あなたには、304そんな(こと)仰有(おつしや)資格(しかく)はありませぬ。305三五教(あななひけう)一般(いつぱん)(やかま)しい(うはさ)御座(ござ)います』
306マリヤス(ひめ)『あゝ(なさけ)ない(こと)になりました。307(じつ)(こと)を、308(わたし)白状(はくじやう)(いた)して、309貴女(あなた)(うたがひ)()らして(いただ)かねばなりませぬ。310(わたし)(ある)事情(じじやう)(ため)311泰安城(たいあんじやう)をのがれ、312泰嶺(たいれい)聖地(せいち)(まゐ)りまして、313(たうと)(かみ)(さま)(をしへ)(ほう)じ、314(いま)神前(しんぜん)(ちか)(つか)ふる聖職(せいしよく)となりました。315一度(いちど)月鉾(つきほこ)(さま)(たい)し、316(わたし)非常(ひじやう)恋慕(れんぼ)(ねん)(おこ)し、317いろいろと()ひよりましたが、318如何(どう)しても、319月鉾(つきほこ)(さま)()()(くだ)さりませぬ。320(ひるがへ)つてよく(かんが)へて()れば、321(わたし)はアークス(わう)落胤(らくいん)とは(まを)(なが)ら、322(ちち)(はは)()(しの)んで()みましたる(つみ)()(わたし)323如何(どう)して(たふと)月鉾(つきほこ)(さま)女房(にようばう)になることが出来(でき)ませうか。324(また)国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)(さま)御教(みをしへ)(ほう)(たま)真道彦(まみちひこの)(みこと)(さま)は、325アークス(わう)(いや)()して(たふと)()()(うへ)326(その)()(かた)(うづ)()(うま)(たま)ひし月鉾(つきほこ)(さま)に、327恋慕(れんぼ)(こころ)(おこ)すといふは、328(まつた)(はや)まつた(かんが)へだと()()きました。329(その)()よりプツツリと(おも)()り、330(いま)(きは)めて(きよ)(こころ)(もつ)神前(しんぜん)奉仕(ほうし)して()るので御座(ござ)います。331世間(せけん)(うはさ)(やかま)しく()つたのも、332(もと)はヤツパリ(わたし)月鉾(つきほこ)(さま)()(した)(その)様子(やうす)(なん)となく()()つたからで御座(ござ)いませう。333(まつた)(わたし)(つみ)(あきら)めるより仕方(しかた)はありませぬ。334……どうぞテーリン(ひめ)(さま)335今迄(いままで)(うたがひ)(わたくし)(この)告白(こくはく)()つてお()らし(くだ)さいませ。336貴女(あなた)月鉾(つきほこ)(さま)とは従兄妹(いとこ)同志(どうし)(なか)337(いづ)れも(たふと)(かみ)(さま)()(たね)338こんな結構(けつこう)(えん)はないと(ぞん)じまして、339(わたし)内々(ないない)月鉾(つきほこ)(さま)に、340あなたとの()結婚(けつこん)を、341(すす)(まを)して()(もの)御座(ござ)います』
342テーリン(ひめ)()のお言葉(ことば)()つて、343(わたし)安心(あんしん)(いた)しました。344月鉾(つきほこ)(さま)父上(ちちうへ)危難(きなん)(すく)はねばならぬ大切(たいせつ)(この)場合(ばあひ)(わたし)などが()んな(ところ)(まゐ)りまして、345ゴテゴテと()邪魔(じやま)(いた)場合(ばあひ)では御座(ござ)いませぬが、346つい(こひ)意地(いぢ)から貴女(あなた)(さま)(こと)()にかかり、347(ねた)ましくなり、348最前(さいぜん)(やう)(はづか)しい(こと)をお()にかけました。349どうぞ()(ゆる)(くだ)さいませ。350(わたし)月鉾(つきほこ)後手(うしろで)(いまし)められて()ります。351どうぞ(この)(いましめ)をお()(くだ)さいますまいか』
352マリヤス(ひめ)『あゝさうで御座(ござ)いましたか、353夜分(やぶん)(こと)とて、354……つい、355()()きませなんだ』
356()(なが)ら、357テーリン(ひめ)(いましめ)()き、358()()でさすり、359(いたは)(たす)()(おこ)し、
360マリヤス(ひめ)『サア(わたし)()れより泰嶺(たいれい)(まゐ)りませう。361泰安城(たいあんじやう)には大変(たいへん)(こと)突発(とつぱつ)(いた)し、362何時(いつ)(わたし)追手(おつて)がかかるかも(はか)られませぬ。363何事(なにごと)(うん)(かみ)(さま)(まか)せ、364泰嶺(たいれい)聖地(せいち)(おい)(かみ)(さま)奉仕(ほうし)し、365惟神(かむながら)()摂理(せつり)(まか)(かんが)へで御座(ござ)います。366(また)日楯(ひたて)(さま)夫婦(ふうふ)(づれ)にてお()(あそ)ばしたのも、367これには特別(とくべつ)事情(じじやう)御座(ござ)いますから、368聖地(せいち)(かへ)つた(うへ)()得心(とくしん)()(やう)()(はな)申上(まをしあ)げませう。369サア斯様(かやう)(ところ)にグヅグヅ(いた)して()りましては険呑(けんのん)千万(せんばん)370(はや)(かへ)りませう』
371とテーリン(ひめ)()()り、372(たがひ)打解(うちと)けて、373アーリス(ざん)(くだ)り、374日月潭(じつげつたん)湖辺(こへん)辿(たど)りて、375(つひ)玉藻山(たまもやま)聖地(せいち)参拝(さんぱい)し、376(やうや)くにして泰嶺(たいれい)聖地(せいち)(かへ)()いた。377これよりテーリン(ひめ)(うたがひ)(まつた)()れ、378姉妹(しまい)(ごと)相親(あひした)しみ、379神業(しんげふ)奉仕(ほうし)し、380月鉾(つきほこ)(かへ)(きた)るを()()たりける。
381大正一一・八・八 旧六・一六 松村真澄録)
ロシアのプーチン大統領が霊界物語に予言されていた!?<絶賛発売中>
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki