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第71巻(戌の巻)
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第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第28巻(卯の巻)
序歌
総説歌
第1篇 高砂の島
01 カールス王
〔801〕
02 無理槍
〔802〕
03 玉藻山
〔803〕
04 淡渓の流
〔804〕
05 難有迷惑
〔805〕
06 麻の紊れ
〔806〕
第2篇 暗黒の叫
07 無痛の腹
〔807〕
08 混乱戦
〔808〕
09 当推量
〔809〕
10 縺れ髪
〔810〕
11 木茄子
〔811〕
12 サワラの都
〔812〕
第3篇 光明の魁
13 唖の対面
〔813〕
14 二男三女
〔814〕
15 願望成就
〔815〕
16 盲亀の浮木
〔816〕
17 誠の告白
〔817〕
18 天下泰平
〔818〕
第4篇 南米探険
19 高島丸
〔819〕
20 鉈理屈
〔820〕
21 喰へぬ女
〔821〕
22 高砂上陸
〔822〕
跋(暗闇)
余白歌
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(B)
(N)
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第九章
当推量
(
あてすゐりやう
)
〔八〇九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻
篇:
第2篇 暗黒の叫
よみ(新仮名遣い):
あんこくのさけび
章:
第9章 当推量
よみ(新仮名遣い):
あてすいりょう
通し章番号:
809
口述日:
1922(大正11)年08月08日(旧06月16日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年8月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
テールスタンは、泰安城で真道彦軍本隊に敗退させられたことを根に持って、真道彦を口を極めて讒言した。そのため、真道彦の使者は疑心暗鬼のカールス王に尋問され、真道彦を擁護した者は投獄され、共に真道彦を讒言した者は取り立てられた。
そうとも知らずやってきた真道彦とヤーチン姫は、たちまち捕らえられて投獄されてしまった。
そうしてカールス王は軍勢を率いて泰安城へ乗り込んだ。この勢いと教主の投獄に、マリヤス姫ら聖地軍は敗走し、カールス王は泰安城を取り戻した。三五教は火の消えたようになってしまった。
カールス王は泰安城を取り戻して政務を取ったが、国内の情勢は穏やかならず、セールス姫一派が再来するとか、シャーカルタンやトロレンスが再起を図っているとかの噂で持ちきりだった。
しかしカールス王は重臣の甘言に耳を塞がれており、天下は無事太平であると信じてしまっていた。テールスタンら真道彦を讒言して王に取り入った重臣たちは、三五教を捨てて元のバラモン教を祀り、国勢の補助とした。そのため国内には怨嗟の声が満ちることとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-11-23 21:42:51
OBC :
rm2809
愛善世界社版:
105頁
八幡書店版:
第5輯 391頁
修補版:
校定版:
109頁
普及版:
50頁
初版:
ページ備考:
001
テールスタンは
泰安城
(
たいあんじやう
)
に
於
(
おい
)
て、
002
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
の
神軍
(
しんぐん
)
より
手厳
(
てきび
)
しく
撃退
(
げきたい
)
されたる
無念
(
むねん
)
を
晴
(
は
)
らさむが
為
(
ため
)
に、
003
エールと
共
(
とも
)
にカールス
王
(
わう
)
に
向
(
むか
)
つて
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて、
004
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
一派
(
いつぱ
)
を
讒訴
(
ざんそ
)
した。
005
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
斯
(
か
)
かる
王
(
わう
)
の
怒
(
いか
)
りに
触
(
ふ
)
れ
居
(
ゐ
)
ることは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
006
マールエースをして、
007
王
(
わう
)
を
泰安城
(
たいあんじやう
)
に
迎
(
むか
)
へむと、
008
誠意
(
せいい
)
をこめて
遣
(
つか
)
はしたるにも
関
(
かか
)
はらず、
009
エール
等
(
ら
)
の
讒訴
(
ざんそ
)
を
固
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じたるカールス
王
(
わう
)
は
容易
(
ようい
)
に
怒
(
いか
)
り
解
(
と
)
けず、
010
真道彦
(
まみちひこ
)
の
使者
(
ししや
)
を
悉
(
ことごと
)
く
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
じ、
011
日夜
(
にちや
)
エールをして
厳
(
きび
)
しく
訊問
(
じんもん
)
せしめつつあつた。
012
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
は
幾度
(
いくたび
)
使
(
つかひ
)
を
遣
(
つか
)
はすも、
013
一人
(
ひとり
)
として
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
らざるに
不審
(
ふしん
)
を
抱
(
いだ
)
き、
014
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
と
共
(
とも
)
に、
015
王
(
わう
)
の
陣屋
(
ぢんや
)
に
伺候
(
しこう
)
し、
016
誠意
(
せいい
)
をこめて
王
(
わう
)
を
泰安城
(
たいあんじやう
)
に
迎
(
むか
)
へむと、
017
遥々
(
はるばる
)
訪問
(
はうもん
)
したりける。
018
手具脛
(
てぐすね
)
ひいて
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
たエール
一味
(
いちみ
)
の
者
(
もの
)
は、
019
有無
(
うむ
)
を
言
(
い
)
はせず、
020
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
、
021
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
を
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
じ、
022
日夜
(
にちや
)
訊問
(
じんもん
)
を
続
(
つづ
)
けたり。
023
第一
(
だいいち
)
に
王
(
わう
)
の
前
(
まへ
)
に
堅
(
かた
)
く
両手
(
りやうて
)
を
縛
(
いまし
)
められて
引出
(
ひきいだ
)
されたるは、
024
マールエース、
025
ホーレンスの
二人
(
ふたり
)
であつた。
026
正面
(
しやうめん
)
にカールス
王
(
わう
)
は
閻羅王
(
えんらわう
)
の
如
(
ごと
)
く
厳然
(
げんぜん
)
として
眼
(
め
)
を
光
(
ひか
)
らせ、
027
エール、
028
テールスタンは
左右
(
さいう
)
に
赤面
(
あかづら
)
を
曝
(
さら
)
し、
029
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らして、
030
訊問
(
じんもん
)
の
矢
(
や
)
を
放
(
はな
)
ちゐる。
031
王
(
わう
)
はマールエースに
向
(
むか
)
ひ、
032
カールス
王
(
わう
)
『
汝
(
なんぢ
)
は
玉藻山
(
たまもやま
)
の
聖地
(
せいち
)
に
永
(
なが
)
らく
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
みて、
033
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
と
何事
(
なにごと
)
かを
企画
(
きくわく
)
しつつありしと
聞
(
き
)
く。
034
委細
(
ゐさい
)
を
詳
(
つぶ
)
さに
陳弁
(
ちんべん
)
せよ』
035
と
厳
(
きび
)
しく
問
(
と
)
ひかくれば、
036
マールエースは、
037
マールエース
『ハイ
私
(
わたし
)
は
王
(
わう
)
が
御
(
ご
)
病気
(
びやうき
)
の
為
(
ため
)
、
038
淡渓
(
たんけい
)
の
館
(
やかた
)
に
御
(
ご
)
退去
(
たいきよ
)
の
後
(
のち
)
はセールス
姫
(
ひめ
)
、
039
セウルスチン
其
(
その
)
他
(
た
)
の
悪人輩
(
あくにんばら
)
の
行動
(
かうどう
)
、
040
見
(
み
)
るに
忍
(
しの
)
びず、
041
時
(
とき
)
を
待
(
ま
)
つてカールス
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
親政
(
しんせい
)
に
復帰
(
ふくき
)
し
奉
(
たてまつ
)
らむと
心
(
こころ
)
を
決
(
けつ
)
し、
042
玉藻山
(
たまもやま
)
に
身
(
み
)
を
逃
(
のが
)
れて、
043
時機
(
じき
)
の
到
(
いた
)
るを
待
(
ま
)
ちつつありましたので
御座
(
ござ
)
います。
044
然
(
しか
)
るに
此
(
この
)
度
(
たび
)
泰安城
(
たいあんじやう
)
の
大変事
(
だいへんじ
)
を
聞
(
き
)
き、
045
王
(
わう
)
の
御
(
ご
)
身辺
(
しんぺん
)
を
危
(
あやぶ
)
み、
046
救援
(
きうゑん
)
の
為
(
ため
)
に
神軍
(
しんぐん
)
を
率
(
ひき
)
ゐ
参
(
まゐ
)
りました。
047
外
(
ほか
)
にそれ
以上
(
いじやう
)
の
目的
(
もくてき
)
は
何
(
なに
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
048
何卒
(
なにとぞ
)
公平
(
こうへい
)
なる
御
(
ご
)
判断
(
はんだん
)
を
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
ります』
049
カールス
王
(
わう
)
『
汝
(
なんぢ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
、
050
よもや
間違
(
まちがひ
)
はあるまい。
051
それに
就
(
つ
)
いて、
052
汝
(
なんぢ
)
に
尋
(
たづ
)
ねたき
事
(
こと
)
がある。
053
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
と
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
二人
(
ふたり
)
の
間
(
あひだ
)
の
関係
(
くわんけい
)
は
存
(
ぞん
)
じて
居
(
ゐ
)
るや』
054
マールエース『ハイ
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
共
(
とも
)
忠実
(
ちうじつ
)
に
御
(
ご
)
神務
(
しんむ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
されて
居
(
を
)
られました。
055
別
(
べつ
)
に
噂
(
うはさ
)
にのぼつて
居
(
ゐ
)
る
如
(
ごと
)
き
醜関係
(
しうくわんけい
)
は、
056
私
(
わたくし
)
としては
認
(
みと
)
められませぬ』
057
カールス
王
(
わう
)
『テールスタンやエールも
永
(
なが
)
らく
汝
(
なんぢ
)
の
如
(
ごと
)
く
聖地
(
せいち
)
に
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
んで、
058
幹部
(
かんぶ
)
に
列
(
れつ
)
して
居
(
ゐ
)
た
者
(
もの
)
、
059
彼
(
か
)
れら
両人
(
りやうにん
)
の
言
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
に
依
(
よ
)
れば、
060
真道彦
(
まみちひこ
)
はヤーチン
姫
(
ひめ
)
と
怪
(
あや
)
しき
関係
(
くわんけい
)
を
結
(
むす
)
び、
061
時
(
とき
)
を
得
(
え
)
て
泰安城
(
たいあんじやう
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
062
台湾島
(
たいわんたう
)
の
主権
(
しゆけん
)
を
握
(
にぎ
)
り、
063
自
(
みづか
)
ら
王
(
わう
)
と
称
(
しよう
)
する
計画
(
けいくわく
)
を
立
(
た
)
てて
居
(
を
)
つたではないか。
064
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
歴然
(
れきぜん
)
たる
二人
(
ふたり
)
の
証人
(
しようにん
)
ある
上
(
うへ
)
は、
065
隠
(
かく
)
すも
無駄
(
むだ
)
であらう。
066
有態
(
ありてい
)
に
白状
(
はくじやう
)
せよ』
067
マールエース『
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
に
限
(
かぎ
)
りて、
068
決
(
けつ
)
して
左様
(
さやう
)
な
政治
(
せいぢ
)
的
(
てき
)
野心
(
やしん
)
も、
069
又
(
また
)
醜行
(
しうかう
)
も、
070
毛頭
(
まうとう
)
御座
(
ござ
)
いませぬ。
071
三五教
(
あななひけう
)
の
古来
(
こらい
)
の
主義
(
しゆぎ
)
として、
072
教主
(
けうしゆ
)
たる
者
(
もの
)
は
政治
(
せいぢ
)
的
(
てき
)
野心
(
やしん
)
を
持
(
も
)
つ
可
(
べ
)
からずと
云
(
い
)
ふ
厳
(
きび
)
しき
掟
(
おきて
)
が
御座
(
ござ
)
いまする。
073
信心
(
しんじん
)
堅固
(
けんご
)
なる
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
に
於
(
おい
)
て、
074
如何
(
どう
)
して
左様
(
さやう
)
な
御
(
お
)
心
(
こころ
)
を
抱
(
いだ
)
かれませう。
075
全
(
まつた
)
く
人々
(
ひとびと
)
の
邪推
(
じやすい
)
より
出
(
い
)
でたる
噂
(
うはさ
)
で
御座
(
ござ
)
いますれば、
076
何卒
(
なにとぞ
)
神直日
(
かむなほひ
)
大直日
(
おほなほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞直
(
ききなほ
)
し、
077
公平
(
こうへい
)
なる
御
(
ご
)
判断
(
はんだん
)
を
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
ります』
078
王
(
わう
)
は
烈火
(
れつくわ
)
の
如
(
ごと
)
く
憤
(
いきどほ
)
り、
079
カールス
王
(
わう
)
『
汝
(
なんぢ
)
、
080
マールエース、
081
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
真道彦
(
まみちひこ
)
と
心
(
こころ
)
を
協
(
あは
)
せ、
082
泰安城
(
たいあんじやう
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
083
政治
(
せいぢ
)
の
全権
(
ぜんけん
)
を
握
(
にぎ
)
り、
084
且
(
か
)
つ
吾
(
わ
)
れを
排斥
(
はいせき
)
せむとの
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
一類
(
いちるゐ
)
であらう。
085
……ヤア、
086
エール、
087
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
くマールエースが
事実
(
じじつ
)
を
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
す
迄
(
まで
)
、
088
牢獄
(
らうごく
)
に
投
(
とう
)
じ、
089
水責
(
みづぜ
)
め
火責
(
ひぜ
)
めの
責苦
(
せめく
)
に
会
(
あ
)
はしても、
090
事実
(
じじつ
)
を
吐露
(
とろ
)
せしめよ』
091
エールは
傍
(
かたはら
)
の
従卒
(
じゆうそつ
)
に
命
(
めい
)
じ、
092
目配
(
めくば
)
せすれば、
093
従卒
(
じゆうそつ
)
はマールエースを
荒々
(
あらあら
)
しく
引立
(
ひきた
)
て、
094
暗黒
(
あんこく
)
なる
牢獄
(
らうごく
)
の
中
(
なか
)
に
投込
(
なげこ
)
んで
了
(
しま
)
つた。
095
カールス
王
(
わう
)
は、
096
続
(
つづ
)
いてホーレンスに
向
(
むか
)
ひ、
097
カールス
王
(
わう
)
『
汝
(
なんぢ
)
はホーレンス、
098
久
(
ひさ
)
しく
玉藻山
(
たまもやま
)
の
聖地
(
せいち
)
に
参
(
まゐ
)
り
居
(
を
)
りし
者
(
もの
)
、
099
エール、
100
テールスタンの
申
(
まを
)
した
事
(
こと
)
に
間違
(
まちがひ
)
はあるまいなア』
101
ホーレンス『ハイ
決
(
けつ
)
して
間違
(
まちがひ
)
は
御座
(
ござ
)
いますまい。
102
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
の
醜関係
(
しうくわんけい
)
は、
103
私
(
わたくし
)
は
実地
(
じつち
)
目撃
(
もくげき
)
は
致
(
いた
)
しませぬが、
104
これは
随分
(
ずゐぶん
)
喧
(
やかま
)
しき
噂
(
うはさ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
105
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
の
間柄
(
あひだがら
)
はつまり
公然
(
こうぜん
)
の
秘密
(
ひみつ
)
も
同様
(
どうやう
)
、
106
三
(
さん
)
歳
(
さい
)
の
童児
(
どうじ
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
知
(
し
)
らぬ
者
(
もの
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ』
107
カールス
王
(
わう
)
『
真道彦
(
まみちひこ
)
はヤーチン
姫
(
ひめ
)
と
関係
(
くわんけい
)
を
結
(
むす
)
び、
108
将来
(
しやうらい
)
は
泰安城
(
たいあんじやう
)
の
国王
(
こくわう
)
となり、
109
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
を
妃
(
きさき
)
とし、
110
日頃
(
ひごろ
)
の
野心
(
やしん
)
を
遂行
(
すゐかう
)
し、
111
且
(
か
)
つ
此
(
この
)
カールスを
目
(
め
)
の
上
(
うへ
)
の
瘤
(
こぶ
)
と
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
ひ、
112
排斥
(
はいせき
)
せむとの
計画
(
けいくわく
)
を
立
(
た
)
て
居
(
を
)
りしと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
、
113
事実
(
じじつ
)
であらうなア』
114
ホーレンス『ハイ、
115
夫
(
それ
)
も
私
(
わたし
)
の
考
(
かんが
)
へでは
事実
(
じじつ
)
だと
信
(
しん
)
じて
居
(
を
)
ります。
116
此
(
この
)
度
(
たび
)
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
ふる
身
(
み
)
であり
乍
(
なが
)
ら
数多
(
あまた
)
の
部下
(
ぶか
)
を
引率
(
いんそつ
)
し、
117
泰安城
(
たいあんじやう
)
へ
救援
(
きうゑん
)
の
名
(
な
)
の
下
(
もと
)
に
攻寄
(
せめよ
)
せ
来
(
きた
)
りしは、
118
全
(
まつた
)
く
王者
(
わうじや
)
たらむとの、
119
野心
(
やしん
)
より
起
(
おこ
)
つたる
出陣
(
しゆつぢん
)
と
考
(
かんが
)
へるより
途
(
みち
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ』
120
王
(
わう
)
『あゝさうであらう。
121
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
正直
(
しやうぢき
)
な
奴
(
やつ
)
だ。
122
サア
只今
(
ただいま
)
より
縛
(
いまし
)
めの
縄
(
なは
)
を
解
(
と
)
いてやらう』
123
エールは
従卒
(
じゆうそつ
)
に
命
(
めい
)
じ、
124
ホーレンスの
縛
(
いまし
)
めを
解
(
と
)
いた。
125
ホーレンスは
大
(
おほ
)
いに
喜
(
よろこ
)
び、
126
三拝
(
さんぱい
)
九拝
(
きうはい
)
して、
127
王
(
わう
)
の
意
(
い
)
を
迎
(
むか
)
ふる
事
(
こと
)
のみに
熱中
(
ねつちゆう
)
し、
128
夫
(
それ
)
が
為
(
ため
)
に
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
の
寃罪
(
ゑんざい
)
は
容易
(
ようい
)
に
拭
(
ぬぐ
)
ふ
可
(
べか
)
らざるものとなりにける。
129
続
(
つづ
)
いてユートピヤール、
130
ツーレンス、
131
シーリンス、
132
ハーレヤール
其
(
その
)
他
(
た
)
数多
(
あまた
)
の
嫌疑
(
けんぎ
)
を
受
(
う
)
けて
投獄
(
とうごく
)
されたる
三五教
(
あななひけう
)
の
幹部
(
かんぶ
)
は、
133
ホーレンスと
略
(
ほぼ
)
同様
(
どうやう
)
の
陳述
(
ちんじゆつ
)
をなし、
134
遂
(
つひ
)
に
縛
(
いまし
)
めを
解
(
と
)
かれ、
135
再
(
ふたた
)
び
王
(
わう
)
の
寵臣
(
ちようしん
)
として
深
(
ふか
)
く
用
(
もち
)
ゐらるる
事
(
こと
)
となりけり。
136
茲
(
ここ
)
にカールス
王
(
わう
)
はエールをして
此
(
この
)
岩城
(
がんじやう
)
の
総監督
(
そうかんとく
)
たらしめ、
137
且
(
か
)
つ
真道彦
(
まみちひこの
)
命
(
みこと
)
、
138
ヤーチン
姫
(
ひめ
)
を
牢獄
(
らうごく
)
につなぎ、
139
数多
(
あまた
)
の
従卒
(
じゆうそつ
)
をして
監視
(
かんし
)
せしめつつ、
140
テールスタンの
部下
(
ぶか
)
を
引率
(
ひきつ
)
れ、
141
数多
(
あまた
)
の
幹部
(
かんぶ
)
と
共
(
とも
)
に、
142
泰安城
(
たいあんじやう
)
に
堂々
(
だうだう
)
として
乗
(
の
)
り
込
(
こ
)
んだ。
143
此
(
この
)
勢
(
いきほひ
)
に
真道彦
(
まみちひこ
)
の
率
(
ひき
)
ゐ
来
(
きた
)
れる
神軍
(
しんぐん
)
を
始
(
はじ
)
め、
144
マリヤス
姫
(
ひめ
)
は
思
(
おも
)
ひ
思
(
おも
)
ひに
遁走
(
とんそう
)
し、
145
再
(
ふたた
)
びアーリス
山
(
ざん
)
の
東南方
(
とうなんぱう
)
に
避難
(
ひなん
)
する
者
(
もの
)
、
146
或
(
あるひ
)
は
各自
(
かくじ
)
の
郷里
(
きやうり
)
に
帰
(
かへ
)
りて、
147
何喰
(
なにく
)
はぬ
顔
(
かほ
)
にて
樵夫
(
きこり
)
、
148
耕
(
たがや
)
しなどに
従事
(
じうじ
)
し、
149
暫
(
しばら
)
くは
玉藻山
(
たまもやま
)
の
霊地
(
れいち
)
にも、
150
大部分
(
だいぶぶん
)
足
(
あし
)
を
向
(
む
)
けなくなり、
151
カールス
王
(
わう
)
の
威力
(
ゐりよく
)
と
真道彦
(
まみちひこ
)
教主
(
けうしゆ
)
の
投獄
(
とうごく
)
とに
萎縮
(
ゐしゆく
)
して、
152
一
(
いち
)
時
(
じ
)
三五教
(
あななひけう
)
は
火
(
ひ
)
の
消
(
き
)
えし
如
(
ごと
)
く
淋
(
さび
)
しくなりにけり。
153
カールス
王
(
わう
)
は
再
(
ふたた
)
び
泰安城
(
たいあんじやう
)
の
城主
(
じやうしゆ
)
となり、
154
テールスタンを
宰相
(
さいしやう
)
とし
其
(
その
)
他
(
た
)
の
一同
(
いちどう
)
を
重用
(
ぢうよう
)
して、
155
万機
(
ばんき
)
の
政事
(
せいじ
)
を
執
(
と
)
り
行
(
おこな
)
ひつつあつた。
156
され
共
(
ども
)
何
(
なん
)
となく
国内
(
こくない
)
の
情勢
(
じやうせい
)
は
穏
(
おだや
)
かならず、
157
サアルボースはセールス
姫
(
ひめ
)
を
奉
(
ほう
)
じて、
158
日
(
ひ
)
ならず
泰安城
(
たいあんじやう
)
へ
攻来
(
せめきた
)
るべしとか、
159
シヤーカルタン、
160
トロレンスの
一派
(
いつぱ
)
、
161
同志
(
どうし
)
を
集
(
あつ
)
め
捲土
(
けんど
)
重来
(
ぢうらい
)
、
162
再
(
ふたた
)
び
戦闘
(
せんとう
)
は
開始
(
かいし
)
さるべしとか、
163
種々
(
しゆじゆ
)
雑多
(
ざつた
)
の
噂
(
うはさ
)
にて
持切
(
もちき
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
164
されどカールス
王
(
わう
)
はテールスタン
以下
(
いか
)
の
重臣
(
ぢうしん
)
の
甘言
(
かんげん
)
に
誤
(
あやま
)
られ、
165
少
(
すこ
)
しも
国内
(
こくない
)
の
不穏
(
ふおん
)
なることを
知
(
し
)
らず、
166
天下
(
てんか
)
は
無事
(
ぶじ
)
太平
(
たいへい
)
にて、
167
国民
(
こくみん
)
はカールス
王
(
わう
)
の
徳
(
とく
)
に
悦服
(
えつぷく
)
するものとのみ
確
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じつつありしなり。
168
テールスタン、
169
ホーレンス、
170
ユートピヤール、
171
其
(
その
)
他
(
た
)
の
重臣
(
ぢうしん
)
は
王
(
わう
)
に
諂
(
へつら
)
ひ、
172
下
(
しも
)
を
虐
(
しへた
)
げ、
173
我利
(
がり
)
我欲
(
がよく
)
にのみ
耽
(
ふけ
)
り、
174
バラモンの
神
(
かみ
)
を
祀
(
まつ
)
り、
175
今迄
(
いままで
)
信
(
しん
)
じ
居
(
ゐ
)
たりし
三五教
(
あななひけう
)
を
塵芥
(
ぢんかい
)
の
如
(
ごと
)
く
振棄
(
ふりす
)
てて、
176
新高山
(
にひたかやま
)
以北
(
いほく
)
の
地
(
ち
)
には、
177
再
(
ふたた
)
びバラモンの
教
(
をしへ
)
を
布
(
し
)
き、
178
以
(
もつ
)
て
国政
(
こくせい
)
の
輔助
(
ほじよ
)
となしつつあつた。
179
国民
(
こくみん
)
怨嗟
(
えんさ
)
の
声
(
こゑ
)
は
以前
(
いぜん
)
に
倍加
(
ばいか
)
して、
180
何時
(
いつ
)
動乱
(
どうらん
)
の
勃発
(
ぼつぱつ
)
するやも
計
(
はか
)
り
難
(
がた
)
き
危機
(
きき
)
に
迫
(
せま
)
りつつあつた。
181
(
大正一一・八・八
旧六・一六
松村真澄
録)
182
(昭和一〇・旧五・七 王仁校正)
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