第一五章 願望成就〔八一五〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻
篇:第3篇 光明の魁
よみ(新仮名遣い):こうみょうのさきがけ
章:第15章 願望成就
よみ(新仮名遣い):がんもうじょうじゅ
通し章番号:815
口述日:1922(大正11)年08月09日(旧06月17日)
口述場所:
筆録者:松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:1923(大正12)年8月10日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:日楯と月鉾は、マリヤス姫にならって、これまでの艱難辛苦から、今の神宝を授けられて戻ってきた喜びと、これからの戦いに臨む意気込みを歌った。
月鉾はテーリン姫に向かって、泰安城の戦に出て見事凱旋してから夫婦の契りを結ぼうと歌いかけた。
それに対してテーリン姫は、本当に自分を想う気持ちがあるのであれば、出陣前に今ここで、夫婦の誓いをして自分も戦に連れて行ってくれと歌って月鉾に迫った。
マリヤス姫も月鉾を促した。そして、ここに月鉾とテーリン姫の結婚式が行われた。これより、マリヤス姫を主将とし、日楯・月鉾夫婦と八千代姫、照代姫らは準備を整えて出陣することとなった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2021-12-01 18:11:35
OBC :rm2815
愛善世界社版:179頁
八幡書店版:第5輯 418頁
修補版:
校定版:184頁
普及版:84頁
初版:
ページ備考:
001 日楯は祝意を表する為、002マリヤス姫に傚つて自ら歌ひ且つ自ら舞ひ始めた。
003日楯『遠き神代の昔より
005高砂島の中心地 006雲に聳えた新高の
007山の巽の神聖地
009控へて清き玉藻山 010遠津御祖の真道彦命は
011代毎々々に神定の
013尊き神の御教を 014四方の民草残りなく
016父の命の御代になり
017醜の教のバラモン教 018此神島に渡り来て
019体主霊従の振舞を 020世人の頭に浸み込ませ
021日に夜に曇る人心 022山河どよみ草木枯れ
023四方の人々泣き叫び
025修羅の巷となり果てぬ 026父の命は今の世の
027有様見るに忍びかね 028心を尽し身を尽し
029誠の道を世の人に
031諭し玉へど如何にせむ 032時の力は容赦なく
033悪人栄え蔓りて
035神の威徳も完全に 036現はれ玉はず今は早
037御国の為に尽したる 038其真心が仇となり
040往来絶えたる岩窟上の
041暗き牢獄に呻吟し 042果敢なき浮世を歎ちつつ
044吾等兄弟両人は
046旭の豊栄昇るごと
047照し清めて国民を 048塗炭の苦より救ひ出し
049父の命の寃罪を
052竜世の姫の神勅を
055須安の山の峰伝ひ 056ふみも慣らはぬ長の旅
057千里の波を乗切りて 058弟月鉾、ユリコ姫
059茲に三人は琉球の 060南の島に安着し
061サワラの都に進み入り
063国王を兼ねたる照彦王や 064照子の姫に面会し
065神政成就の神策を
069進み進みて常楠の 070神の司の仙人に
072二男三女の五つ身魂
073心も勇み身も軽く
075此神島に到着し
078御霊の幸を蒙りて
079吾等兄弟始めとし 080ユリコの姫や八千代姫
081曇る此世も照代姫 082奇き功績を現はして
083父の命の永久に
088仰ぐも畏き神の徳
089いよいよ吾等は大神の
091泰安城に立向ひ 092玉と鏡を手に持ちて
094魔神を残らず言向けて
097恋しき父の生命をば 098救ひ奉らむ時は来ぬ
099思へば嬉し神の恩 100仰げば高し神の徳
103と歌ひ終つて座に着いた。104月鉾は又もや立上り自ら歌ひ自ら舞ひ始めた。
105月鉾『時世時節といひ乍ら 106父は牢獄に捕へられ
108玉藻の山に立向ひ
109千代の住家と定めたる 110数多の神の取次も
111父の命の遭難に 112心の生地を露はして
113神に反いて逃げ帰り 114阿諛諂佞の限りを尽し
116自己の利益や栄達を
117謀る魔神と還りけり
119仮令大地は沈むとも 120二つなき身の生命をば
122口先計り華やかに
125素知らぬ顔の曲業に
127朝な夕なに国魂神の 128珍の御前にひれ伏して
129祈る折りしも竜世姫
131吾等二人に打向ひ
133南の島に打渡り 134サワラの都の照彦王に
135一日も早く面会し 136至治太平の神策を
137授かり帰れと詳細と
139兄の日楯やユリコ姫 140暗に紛れて聖地をば
141密に立出で蓑笠の
145巌に腰を打掛けて 146息を休むる折柄に
148蛇が蛙を狙ひし如く
149執念深くも後追ひて 150大胆至極の一人旅
153困り切つたる最中に 154現はれ出でしマリヤス姫の
155珍の命の御計らひ
157吾身体を滅多打
159腹は切りに立騒ぎ 160悔し涙は雨の如
161降り来れ共如何にせむ 162大事を抱へし今の身は
164諦め居たる折柄に
169吾等三人は逸早く
171山の尾渉り谷を越え
174船を求めて波の上
175琉球島に安着し 176竜世の姫の命の如
177照彦夫婦や常楠の
179五つの宝を授かりて 180漸く茲に帰り来ぬ
183今日の生日の喜びは 184煎りたる豆に生花の
186天津御神や国津神
187国魂神の御恵 188未だ吾々兄弟を
189見放し玉はぬ嬉しさよ 190さらば是れより五つ身魂
191水火を合せて泰安の 192都に進み言霊の
193伊吹の征矢を放しつつ 194群がる魔神を言向けて
196仕組ませ玉ひし五六七の世
197堅磐常磐の松の世を 198千代万代に動ぎなく
199建設せむは案の中
202山の尾の上の争ひを
203漸く茲に納得し 204今迄時節を待居たる
205其心根の健気さよ
207妹背の契を今ここで
209泰安城の一戦 210無事に凱旋する迄は
213竜世の姫の御前に 214固く御誓ひ奉る
215必ず共にテーリン姫 216心を悩ます事勿れ』
217と歌ひ了つた。218テーリン姫は直に立上り、219銀扇を拡げて、220自ら歌ひ自ら舞うた。
221テーリン姫『男心と秋の空 222猫の目玉と諸共に
224如何なる固き御言葉も
227今でも将来でも同じこと 228美味い物なら先に食へ
230何れの人に気兼して
231左様の事を仰有るか
233そんな気休め妾に云うて 234結構な玉を手に入れた
235為にお前の心が変り
237一生一代の女房に持つよりは
239桃や菫や桜花 240選り取り見取りのよい女房
241勝手気儘に娶らむと 242先を見越してのお前の言葉
245大事を抱へたお前の身の上 246無理に枕を交せとは
247妾も野暮な女でない限り
250二世も三世も夫婦ぞと
252お前の兄の日楯さま
254仲よう暮して厶るでないか
255お前は妾を邪魔者扱に
258夫婦の中に只一つ
260お前の兄の日楯さま
261夫婦揃うて神業に
263玉と鏡の夫婦事
265あの時お前が此妾を 266御用に伴れて行つたなら
267妾も結構な神業に 268加はり珍の御鏡を
269貰うて帰つたに違ひない 270今度お前が泰安城へ
272日楯夫婦と同じ様に
273妾と結婚相済まし 274夫婦の水火を合せつつ
275神の御用に立たうでないか
279嘘と言はれても仕方があるまい 280早く返答承はりませう
282国魂神の竜世姫様
283何卒々々今ここで 284夫婦の契を結ばせ玉へ
289と歌ひ了つた。290月鉾は当惑顔を隠し、
291月鉾『あゝテーリン姫様、292あなたの御心はよく分りました。293私もこれから千騎一騎の活動を致さねばなりませぬ。294女房があつては、295其為心を惹かれ、296思ふ様の活動が出来ませぬから、297どうぞ凱旋の後まで待つて下さい。298キツト約束を履行致しませう。299……マリヤス姫様、300さう致しましたら、301如何で厶いませうかな』
303と言つた限り、304黙然として俯むいてゐる。
305テーリン姫『女房があつては気を惹かれて十分の働きが出来ぬとは、306これは又妙な事を仰有いますな。307女房があつて働きが出来ないのなら、308世界の男は残らず未結婚で居る筈ぢやありませぬか。309日楯さまでさへも、310夫婦揃うて立派に御神業を御勤め遊ばしたぢやありませぬか。311瓢箪鯰式に何とか彼んとか云つて、312一時逃れに日を延ばし、313妾を姥桜にして了ふ貴方の御考へでせう。314何と仰有つても、315妾は貴方の後を慕ひ戦場に向ひます。316貴方と一緒に参り、317チツとでも御邪魔になる様な事がありましたら、318妾も女の端くれ、319潔う喉を掻き切つて死んで見せませう』
320月鉾『そんな事をさせともないから、321凱旋の後まで待つて呉れと云ふのだ』
322テーリン姫『それ程妾をヤクザの女とお見下げ遊ばして御座るのですか。323妾だつてユリコ姫様のなさる事位は立派に勤めてお目にかけます。324……コレコレ、325マリヤス姫様、326貴女は、327アーリス山で妾に仰有つたぢや御座いませぬか。328どうぞ早く結婚の取持をして下さいませ。329此期に及んで躊躇なさるのはヤツパリ末になつて月鉾さまと情意投合なさるお考へでせう』
330と妙な所へ鉾を向けて駄々を捏ね出した。331マリヤス姫は是非なく思ひ切つた様に、
332マリヤス姫『月鉾さま、333是非此場で結婚の式を挙げて下さい。334万一お聞き下さらねば、335妾はテーリン姫様の疑惑を解く為、336ここで自刃して相果てまする』
337と早くも懐剣をスラリと引抜き決心の心を現はし、338唇をビリビリ震はせ、339顔色青ざめて、340唯事ならぬ気配を示してゐる。
341月鉾『ハイ、342貴女の御意に従ひます。343……テーリン姫様、344そんなら今日から天下晴れての夫婦仲、345どうぞ末長う御世話を頼みます』
346 テーリン姫飛び立つ許りに打喜び、
347テーリン姫『マリヤス姫様、348有難う、349……月鉾さま、350お前は立派な男、351流石は真道彦様の御胤、352私の観察は違はなかつた』
353と狂気の如く喜び、354直に神前に駆上つて、355感謝の祝詞を奏上するのであつた。
356 マリヤス姫の媒酌にて芽出度く、357月鉾、358テーリン姫の結婚は行はれた。359これより、360マリヤス姫を首領とし、361日、362月夫婦を始め、363八千代姫、364照代姫の二男五女は、365愈準備を整へ、366泰安城へカールス王、367ヤーチン姫、368真道彦命其他を救ふべく出陣する事となつた。
369(大正一一・八・九 旧六・一七 松村真澄録)