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第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
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第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
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第25巻(子の巻)
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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第28巻(卯の巻)
序歌
総説歌
第1篇 高砂の島
01 カールス王
〔801〕
02 無理槍
〔802〕
03 玉藻山
〔803〕
04 淡渓の流
〔804〕
05 難有迷惑
〔805〕
06 麻の紊れ
〔806〕
第2篇 暗黒の叫
07 無痛の腹
〔807〕
08 混乱戦
〔808〕
09 当推量
〔809〕
10 縺れ髪
〔810〕
11 木茄子
〔811〕
12 サワラの都
〔812〕
第3篇 光明の魁
13 唖の対面
〔813〕
14 二男三女
〔814〕
15 願望成就
〔815〕
16 盲亀の浮木
〔816〕
17 誠の告白
〔817〕
18 天下泰平
〔818〕
第4篇 南米探険
19 高島丸
〔819〕
20 鉈理屈
〔820〕
21 喰へぬ女
〔821〕
22 高砂上陸
〔822〕
跋(暗闇)
余白歌
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第二一章
喰
(
く
)
へぬ
女
(
をんな
)
〔八二一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻
篇:
第4篇 南米探険
よみ(新仮名遣い):
なんべいたんけん
章:
第21章 喰へぬ女
よみ(新仮名遣い):
くえぬおんな
通し章番号:
821
口述日:
1922(大正11)年08月10日(旧06月18日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年8月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
船長のタルチールは、そろそろ本当のことを高姫に告げて、安心させてやった方がよいのでは、と言依別命に話しかけた。言依別命は、宝珠の神業は大神様の御経綸なので、高姫に明かすことはできない、と答えた。
そして言依別命はタルチールに明かして、如意宝珠の宝玉は自転倒島の冠島と沓島に隠してあるのだ、と答えた。そして、いかに自分たちが玉を所持していないと言っても、高姫は信用しないので、高姫にそれとなく示してくれないか、とタルチールに頼んだ。
タルチールは宣伝使の初陣として引き受けた。船長は高姫を船室に招き、丁重に迎えた。そしてバラモン教の信者を装って高姫の教示を聞くふりをして、高姫と問答を始めた。
タルチールは高姫から言依別命の名が出てくると、最近自分の船で三五教の言依別命一行に会ったと話し、立派な宝玉を高姫から守るために自転倒島に戻っていったと告げ、高姫に自転倒島に戻るように促した。
しかし高姫は船長を信用せず、言依別命が自分を騙すために仕組んだものと疑って、船室を出て行ってしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-12-14 18:27:50
OBC :
rm2821
愛善世界社版:
261頁
八幡書店版:
第5輯 446頁
修補版:
校定版:
271頁
普及版:
117頁
初版:
ページ備考:
001
タルチールの
船長室
(
せんちやうしつ
)
には、
002
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
、
003
国依別
(
くによりわけ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
鼎座
(
ていざ
)
して、
004
神界
(
しんかい
)
の
経綸談
(
けいりんだん
)
に
就
(
つ
)
いて、
005
熱心
(
ねつしん
)
に
意見
(
いけん
)
を
戦
(
たたか
)
はして
居
(
ゐ
)
た。
006
船長
(
せんちやう
)
『
只今
(
ただいま
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
高姫
(
たかひめ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
007
甲板
(
かんばん
)
上
(
じやう
)
にて、
008
取
(
と
)
りとめもなき
事
(
こと
)
を
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りましたが、
009
如何
(
いか
)
にも
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
の
通
(
とほ
)
り、
010
執着心
(
しふちやくしん
)
の
深
(
ふか
)
い
偏狭
(
へんけふ
)
な
人物
(
じんぶつ
)
ですなア。
011
何
(
なん
)
とかして
彼
(
かれ
)
を
救
(
すく
)
うてやる
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬか。
012
何
(
なん
)
でもあなた
様
(
さま
)
を
非常
(
ひじやう
)
に
恨
(
うら
)
み
且
(
か
)
つ
疑
(
うたが
)
ひ、
013
麻邇
(
まに
)
の
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
が
懐中
(
ふところ
)
にして、
014
高砂島
(
たかさごじま
)
へ
逃
(
に
)
げたに
違
(
ちが
)
ひないから、
015
どこまでも
追
(
お
)
つかけて
取返
(
とりかへ
)
さなならぬと、
016
それはそれは
大変
(
たいへん
)
な
逆上
(
のぼせ
)
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いましたよ。
017
あなたも
良
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
実
(
じつ
)
を
吐
(
は
)
いて、
018
あの
高姫
(
たかひめ
)
を
安心
(
あんしん
)
さしておやりになつたら
如何
(
どう
)
でせう』
019
言依別
(
ことよりわけ
)
『
麻邇
(
まに
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
替玉
(
かへだま
)
事件
(
じけん
)
は
全
(
まつた
)
く
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
に
出
(
い
)
でさせられたものでありまして、
020
吾々
(
われわれ
)
としては
其
(
その
)
一切
(
いつさい
)
を
高姫
(
たかひめ
)
に
対
(
たい
)
し、
021
明示
(
めいじ
)
することは
出来
(
でき
)
ない
事
(
こと
)
になつて
居
(
を
)
ります。
022
又
(
また
)
高姫
(
たかひめ
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
申
(
まを
)
すことは
決
(
けつ
)
して
信
(
しん
)
ずる
者
(
もの
)
ではありませぬ。
023
何程
(
なにほど
)
誠
(
まこと
)
の
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひ
聞
(
き
)
かしましても、
024
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
からひがみ
切
(
き
)
つて
居
(
を
)
りますから、
025
到底
(
たうてい
)
本当
(
ほんたう
)
には
致
(
いた
)
しませぬ。
026
どうも
困
(
こま
)
つたものです』
027
船長
(
せんちやう
)
『あなたで
可
(
い
)
かなければ、
028
国依別
(
くによりわけ
)
様
(
さま
)
を
通
(
とほ
)
してお
示
(
しめ
)
しになつたら
如何
(
どう
)
ですか』
029
言依別
(
ことよりわけ
)
『
到底
(
たうてい
)
物
(
もの
)
になりませぬ。
030
国依別
(
くによりわけ
)
は
随分
(
ずゐぶん
)
高姫
(
たかひめ
)
に
対
(
たい
)
し、
031
幾回
(
いくくわい
)
となくからかひ、
032
且
(
か
)
つ
玉
(
たま
)
の
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らせて
失敗
(
しつぱい
)
をさせた
事
(
こと
)
がありますから、
033
なほなほ
聞
(
き
)
く
道理
(
だうり
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ』
034
船長
(
せんちやう
)
『
其
(
その
)
玉
(
たま
)
は
一体
(
いつたい
)
如何
(
どう
)
なつてゐるのですか』
035
言依
(
ことより
)
『
何人
(
なにびと
)
にも
口外
(
こうぐわい
)
することは
出来
(
でき
)
ないのですが、
036
あなたに
限
(
かぎ
)
つて
他言
(
たごん
)
をして
下
(
くだ
)
さらねば
申上
(
まをしあ
)
げませう。
037
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
天火
(
てんくわ
)
水地
(
すいち
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
は、
038
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
中心地
(
ちうしんち
)
、
039
冠島
(
かむりじま
)
、
040
沓島
(
くつじま
)
に
大切
(
たいせつ
)
に
隠
(
かく
)
してあります。
041
それを
高姫
(
たかひめ
)
が、
042
吾々
(
われわれ
)
が
持逃
(
もちにげ
)
したものと
思
(
おも
)
ひ、
043
私
(
わたし
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
うて
此処
(
ここ
)
までやつて
来
(
き
)
たのでせう。
044
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
は
玉
(
たま
)
などは
一個
(
いつこ
)
も
所持
(
しよぢ
)
してはゐませぬでせう』
045
船長
(
せんちやう
)
『
仰
(
あふ
)
せの
通
(
とほ
)
り
何
(
なに
)
も
御
(
お
)
持
(
も
)
ちになつて
居
(
を
)
られませぬ。
046
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
047
高姫
(
たかひめ
)
に
直接
(
ちよくせつ
)
御
(
お
)
会
(
あ
)
ひになつて、
048
これ
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り、
049
吾々
(
われわれ
)
は
玉
(
たま
)
なんか
持
(
も
)
つてゐない、
050
と
御
(
お
)
示
(
しめ
)
しになつたら
如何
(
どう
)
でせう』
051
国依別
(
くによりわけ
)
『それは
駄目
(
だめ
)
ですよ。
052
ここに
持
(
も
)
つてゐなくても、
053
どつかに
隠
(
かく
)
したのだらうと、
054
どこどこ
迄
(
まで
)
も
疑
(
うたが
)
つて、
055
尚更
(
なほさら
)
手
(
て
)
きびしき
脅迫
(
けふはく
)
を
致
(
いた
)
しますから、
056
自然
(
しぜん
)
に
気
(
き
)
のつく
迄
(
まで
)
棄
(
す
)
てておく
方
(
はう
)
が
利益
(
りえき
)
だと
思
(
おも
)
ひます』
057
言依
(
ことより
)
『
吾々
(
われわれ
)
両人
(
りやうにん
)
が
何程
(
なにほど
)
誠
(
まこと
)
を
申
(
まを
)
しても、
058
高姫
(
たかひめ
)
に
限
(
かぎ
)
つて
信用
(
しんよう
)
してくれませぬから、
059
あなた、
060
誠
(
まこと
)
に
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
をかけますが、
061
高姫
(
たかひめ
)
をソツと
何処
(
どこ
)
かへ
御
(
お
)
招
(
まね
)
きになつて、
062
高砂島
(
たかさごじま
)
には
決
(
けつ
)
して
玉
(
たま
)
なんか
隠
(
かく
)
してない、
063
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
を
探
(
さが
)
せよ……と
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
つた
方
(
はう
)
が、
064
却
(
かへつ
)
て
信用
(
しんよう
)
するかも
知
(
し
)
れませぬ。
065
下
(
くだ
)
らぬことに
無駄骨
(
むだぼね
)
折
(
を
)
らすも、
066
可哀相
(
かあいさう
)
でたまりませぬから……
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
其
(
その
)
玉
(
たま
)
は
高姫
(
たかひめ
)
に
探
(
さが
)
させ
今迄
(
いままで
)
の
失敗
(
しつぱい
)
を
回復
(
くわいふく
)
し、
067
天晴
(
あつぱ
)
れ
聖地
(
せいち
)
の
神司
(
かむづかさ
)
として
恥
(
はづ
)
かしくない
様
(
やう
)
にしてやりたいとの、
068
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
思召
(
おぼしめし
)
に
依
(
よ
)
り
言依別
(
ことよりわけ
)
が
持逃
(
もちにげ
)
したことに
致
(
いた
)
し、
069
私
(
わたし
)
は
犠牲
(
ぎせい
)
となつて
聖地
(
せいち
)
を
離
(
はな
)
れ、
070
これより
高砂島
(
たかさごじま
)
、
071
常世国
(
とこよくに
)
を
宣伝
(
せんでん
)
し、
072
遂
(
つひ
)
にフサの
国
(
くに
)
ウブスナ
山脈
(
さんみやく
)
の
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
参
(
まゐ
)
り、
073
コーカス
山
(
ざん
)
に
至
(
いた
)
る
計画
(
けいくわく
)
で
御座
(
ござ
)
います。
074
どうぞあなたより、
075
高姫
(
たかひめ
)
に
対
(
たい
)
して、
076
無駄骨
(
むだぼね
)
を
折
(
を
)
らない
様
(
やう
)
に
能
(
よ
)
く
諭
(
さと
)
して
下
(
くだ
)
さいませぬか』
077
船長
(
せんちやう
)
『ハイ、
078
私
(
わたし
)
もあなたより
宣伝使
(
せんでんし
)
の
職
(
しよく
)
を
命
(
めい
)
ぜられたる
上
(
うへ
)
は、
079
高姫
(
たかひめ
)
さまに
対
(
たい
)
し、
080
宣伝
(
せんでん
)
の
初陣
(
うひぢん
)
を
試
(
こころ
)
みませう。
081
もしも
不成功
(
ふせいこう
)
に
終
(
をは
)
つたならば、
082
宣伝使
(
せんでんし
)
を
辞職
(
じしよく
)
せねばなりませぬか』
083
言依
(
ことより
)
『そんな
心配
(
しんぱい
)
は
御
(
ご
)
無用
(
むよう
)
です。
084
成
(
な
)
るも
成
(
な
)
らぬも
惟神
(
かむながら
)
ですから、
085
成否
(
せいひ
)
を
度外
(
どぐわい
)
に
置
(
お
)
いて、
086
一
(
ひと
)
つ
掛合
(
かけあ
)
つて
見
(
み
)
て
下
(
くだ
)
さい』
087
船長
(
せんちやう
)
『ハイ
左様
(
さやう
)
ならば、
088
一
(
ひと
)
つ
初陣
(
うひぢん
)
をやつて
見
(
み
)
ませう』
089
茲
(
ここ
)
に
船長
(
せんちやう
)
は、
090
高姫
(
たかひめ
)
を
吾
(
わが
)
一室
(
ひとま
)
に
招
(
まね
)
き、
091
私
(
ひそ
)
かに
高姫
(
たかひめ
)
に
向
(
むか
)
つて
注意
(
ちうい
)
を
与
(
あた
)
ふる
事
(
こと
)
とした。
092
船長
(
せんちやう
)
は
繁忙
(
はんばう
)
なる
事務
(
じむ
)
を
繰合
(
くりあは
)
せ、
093
真心
(
まごころ
)
より
顔色
(
がんしよく
)
を
和
(
やはら
)
げ、
094
言葉
(
ことば
)
もしとやかに
高姫
(
たかひめ
)
に
向
(
むか
)
つて
話
(
はな
)
しかけた。
095
船長
(
せんちやう
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
096
先程
(
さきほど
)
は、
097
誠
(
まこと
)
に
尊
(
たふと
)
き
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
とも
知
(
し
)
らず
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
を
致
(
いた
)
しました。
098
今
(
いま
)
更
(
あらた
)
めて
御
(
お
)
詫
(
わび
)
をいたします』
099
高姫
(
たかひめ
)
『お
前
(
まへ
)
は
高島丸
(
たかしままる
)
の
船長
(
せんちやう
)
、
100
それ
位
(
くらゐ
)
なことが
気
(
き
)
がつかねばならぬ
筈
(
はず
)
だ。
101
何故
(
なにゆゑ
)
に
今迄
(
いままで
)
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
が
分
(
わか
)
らぬのだらうかと、
102
実
(
じつ
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
でたまらなかつた。
103
併
(
しか
)
し
賢明
(
けんめい
)
なるお
前
(
まへ
)
、
104
滅多
(
めつた
)
に
分
(
わか
)
らぬ
筈
(
はず
)
がないのだが、
105
つまりお
前
(
まへ
)
にバラモン
教
(
けう
)
の
悪神
(
あくがみ
)
が
憑依
(
ひようい
)
してゐて、
106
あのような
下
(
くだ
)
らぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
はしたのですよ。
107
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
がチヤンと
一目
(
ひとめ
)
睨
(
にら
)
んだら
能
(
よ
)
う
分
(
わか
)
つてゐます。
108
流石
(
さすが
)
の
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
も、
109
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
威勢
(
ゐせい
)
に
恐
(
おそ
)
れて、
110
波
(
なみ
)
を
渡
(
わた
)
つて
逃
(
にげ
)
て
了
(
しま
)
ひよつたのです。
111
今
(
いま
)
のお
前
(
まへ
)
の
顔
(
かほ
)
と、
112
最前
(
さいぜん
)
の
顔
(
かほ
)
とは
丸
(
まる
)
で
閻魔
(
えんま
)
と
地蔵
(
ぢざう
)
程
(
ほど
)
違
(
ちが
)
つてゐます。
113
あなたも
之
(
こ
)
れから
此
(
この
)
高姫
(
たかひめ
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
いて、
114
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
におなりになさつたら、
115
益々
(
ますます
)
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
が
現
(
あら
)
はれて
立派
(
りつぱ
)
な
人格者
(
じんかくしや
)
におなり
遊
(
あそ
)
ばし、
116
これから
先
(
さき
)
、
117
高砂島
(
たかさごじま
)
の
国王
(
こくわう
)
にもなれまいものでも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
118
同
(
おな
)
じ
一生
(
いつしやう
)
を
暮
(
くら
)
すなら、
119
船頭
(
せんどう
)
になつて、
120
日蔭者
(
ひかげもの
)
で
了
(
をは
)
るよりも、
121
チツとは
気苦労
(
きぐらう
)
もあれど、
122
あの
広
(
ひろ
)
い
高砂島
(
たかさごじま
)
の
国王
(
こくわう
)
になつて、
123
名
(
な
)
を
万世
(
ばんせい
)
に
轟
(
とどろ
)
かしなさるが、
124
何程
(
なにほど
)
結構
(
けつこう
)
ぢや
分
(
わか
)
りますまい』
125
船長
(
せんちやう
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う、
126
私
(
わたし
)
は
御
(
お
)
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
りバラモン
教
(
けう
)
の
信者
(
しんじや
)
で
御座
(
ござ
)
います』
127
とワザと
空呆
(
そらとぼ
)
けて、
128
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
より
宣伝使
(
せんでんし
)
の
職名
(
しよくめい
)
を
与
(
あた
)
へられたことを
絶対
(
ぜつたい
)
に
包
(
つつ
)
みかくしてゐる。
129
高姫
(
たかひめ
)
『バラモン
教
(
けう
)
なんて
駄目
(
だめ
)
ですよ。
130
あんな
邪教
(
じやけう
)
に
首
(
くび
)
を
突込
(
つつこ
)
んで
何
(
なん
)
になりますか。
131
あなたも
立派
(
りつぱ
)
な
十人並
(
じふにんなみ
)
秀
(
すぐ
)
れた
男
(
をとこ
)
と
生
(
うま
)
れ
乍
(
なが
)
ら、
132
その
様
(
やう
)
な
教
(
をしへ
)
にお
這入
(
はい
)
りなさるとは、
133
チト
権衡
(
けんかう
)
がとれませぬ。
134
早
(
はや
)
く
三五教
(
あななひけう
)
にお
這入
(
はい
)
りなさい。
135
キツと
御
(
ご
)
出世
(
しゆつせ
)
が
出来
(
でき
)
ますぞえ』
136
船長
(
せんちやう
)
『
私
(
わたし
)
は
国王
(
こくわう
)
なんかにならうとは
夢
(
ゆめ
)
にも
思
(
おも
)
ひませぬ。
137
船長
(
せんちやう
)
は
船長
(
せんちやう
)
として
最善
(
さいぜん
)
の
努力
(
どりよく
)
を
尽
(
つく
)
し、
138
吾
(
わが
)
使命
(
しめい
)
を
完全
(
くわんぜん
)
に
遂行
(
すゐかう
)
すれば、
139
これに
勝
(
まさ
)
つた
喜
(
よろこ
)
びはありませぬ、
140
又
(
また
)
三五教
(
あななひけう
)
とか、
141
バラモン
教
(
けう
)
とか
云
(
い
)
ふやうな
雅号
(
ががう
)
に
囚
(
とら
)
はれてゐては、
142
本当
(
ほんたう
)
の
真理
(
しんり
)
は
分
(
わか
)
りますまい。
143
雨
(
あめ
)
霰
(
あられ
)
雪
(
ゆき
)
や
氷
(
こほり
)
とへだつ
共
(
とも
)
、
144
おつれば
同
(
おな
)
じ
谷川
(
たにがは
)
の
水
(
みづ
)
……とやら、
145
大海
(
だいかい
)
は
細流
(
さいりう
)
を
選
(
えら
)
ばずとか
云
(
い
)
つて、
146
真理
(
しんり
)
の
光明
(
くわうみやう
)
は
左様
(
さやう
)
な
区別
(
くべつ
)
や
雅号
(
ががう
)
に
関係
(
くわんけい
)
なく
皎々
(
かうかう
)
と
輝
(
かがや
)
いて
居
(
を
)
ります。
147
善
(
ぜん
)
とか、
148
悪
(
あく
)
とか、
149
三五
(
あななひ
)
とか、
150
バラモンとかに
囚
(
とら
)
はれて
宗派心
(
しうはしん
)
を
極端
(
きよくたん
)
に
発揮
(
はつき
)
してゐる
間
(
あひだ
)
は、
151
却
(
かへつ
)
て
其
(
その
)
教
(
をしへ
)
を
狭
(
せば
)
め、
152
其
(
その
)
光
(
ひかり
)
を
隠
(
かく
)
し、
153
自
(
みづか
)
ら
獅子
(
しし
)
身中
(
しんちう
)
の
虫
(
むし
)
となるものです。
154
三五教
(
あななひけう
)
は
諸教
(
しよけう
)
大統一
(
だいとういつ
)
の
大光明
(
だいくわうみやう
)
だとか
聞
(
き
)
いて
居
(
を
)
りました。
155
然
(
しか
)
るに
貴女
(
あなた
)
は
世界
(
せかい
)
を
輝
(
かがや
)
きわたす
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
中
(
なか
)
でも、
156
一粒
(
ひとつぶ
)
よりの
系統
(
ひつぽう
)
の
御
(
おん
)
身魂
(
みたま
)
而
(
しか
)
も
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
さまの
生宮
(
いきみや
)
であり
乍
(
なが
)
ら、
157
偏狭
(
へんけふ
)
な
宗派心
(
しうはしん
)
に
駆
(
か
)
られて
他教
(
たけう
)
を
研究
(
けんきう
)
もせず、
158
只
(
ただ
)
一口
(
ひとくち
)
に
排斥
(
はいせき
)
し
去
(
さ
)
らうとなさるのはチツと
無謀
(
むぼう
)
ではありませぬか。
159
猪
(
しし
)
を
追
(
お
)
ふ
猟師
(
れふし
)
は
山
(
やま
)
を
見
(
み
)
ず……
井中
(
せいちう
)
の
蛙
(
かはず
)
大海
(
たいかい
)
を
知
(
し
)
らず……
富士
(
ふじ
)
へ
来
(
き
)
て
富士
(
ふじ
)
を
尋
(
たづ
)
ねつ
富士詣
(
ふじまう
)
で……とか
云
(
い
)
ふ
諺
(
ことわざ
)
の
通
(
とほ
)
り、
160
余
(
あま
)
り
区別
(
くべつ
)
された
一
(
ひと
)
つの
物
(
もの
)
に
熱中
(
ねつちゆう
)
すると、
161
誠
(
まこと
)
の
本体
(
ほんたい
)
を
掴
(
つか
)
むことは
出来
(
でき
)
ますまい。
162
如何
(
いか
)
がなもので
厶
(
ござ
)
いませうか。
163
併
(
しか
)
し
私
(
わたし
)
は
未
(
いま
)
だバラモン
教
(
けう
)
の
教
(
をしへ
)
を
全部
(
ぜんぶ
)
究
(
きは
)
めたと
云
(
い
)
ふのでは
厶
(
ござ
)
いませぬ。
164
未成品
(
みせいひん
)
的
(
てき
)
信者
(
しんじや
)
の
身分
(
みぶん
)
を
以
(
もつ
)
て、
165
錚々
(
さうさう
)
たる
宣伝使
(
せんでんし
)
の
貴女
(
あなた
)
に
斯様
(
かやう
)
なことを
申上
(
まをしあ
)
ぐるは、
166
恰
(
あたか
)
も
釈迦
(
しやか
)
に
向
(
むか
)
つて
経文
(
きやうもん
)
を
説
(
と
)
き、
167
幼稚園
(
えうちゑん
)
に
通
(
かよ
)
ふ
凸坊
(
でこぼう
)
が
大学
(
だいがく
)
の
教頭
(
けうとう
)
に
向
(
むか
)
つて
教鞭
(
けうべん
)
を
執
(
と
)
る
様
(
やう
)
な
矛盾
(
むじゆん
)
かは
存
(
ぞん
)
じませぬ。
168
どうぞ
不都合
(
ふつがふ
)
な
点
(
てん
)
は
宜
(
よろ
)
しく
御
(
お
)
諭
(
さと
)
し
下
(
くだ
)
さいまして
御
(
ご
)
訂正
(
ていせい
)
を
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
169
と
極
(
きは
)
めて
円滑
(
ゑんくわつ
)
に
言依別
(
ことよりわけ
)
仕込
(
じこ
)
みの
雄弁
(
ゆうべん
)
を
揮
(
ふる
)
ひ、
170
下
(
した
)
から
低
(
ひく
)
う
出
(
で
)
て、
171
高姫
(
たかひめ
)
の
心
(
こころ
)
を
改
(
あらた
)
めしめむと
努
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
172
高姫
(
たかひめ
)
『
何
(
なん
)
とお
前
(
まへ
)
さまはお
口
(
くち
)
の
達者
(
たつしや
)
な
方
(
かた
)
ですなア。
173
丁度
(
ちやうど
)
三五教
(
あななひけう
)
にもあなたの
様
(
やう
)
なことを
申
(
まを
)
す、
174
ドハイカラが
厶
(
ござ
)
いますワイ。
175
其
(
その
)
ドハイカラが
而
(
しか
)
も
教主
(
けうしゆ
)
となつてゐるのですから、
176
幽玄
(
いうげん
)
微妙
(
びめう
)
なる
神界
(
しんかい
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
を、
177
智慧
(
ちゑ
)
学
(
がく
)
や
理屈
(
りくつ
)
で
探
(
さぐ
)
らうと
致
(
いた
)
すから、
178
何時
(
いつ
)
も
細引
(
ほそびき
)
の
褌
(
ふんどし
)
であちらへ
外
(
はづ
)
れ、
179
こちらへ
外
(
はづ
)
れ、
180
一
(
ひと
)
つも
成就
(
じやうじゆ
)
は
致
(
いた
)
しはせぬぞよと、
181
変性
(
へんじやう
)
男子
(
なんし
)
のお
筆
(
ふで
)
に
出
(
で
)
てをる
通
(
とほ
)
り、
182
失敗
(
しつぱい
)
だらけになつて
了
(
をは
)
らねばなりませぬぞや。
183
お
前
(
まへ
)
もそんな
小理屈
(
こりくつ
)
を
云
(
い
)
はないやうになつたら、
184
それこそ
誠
(
まこと
)
の
信者
(
しんじや
)
ですよ。
185
ツベコベと
善悪
(
ぜんあく
)
の
批評
(
ひへう
)
をしたり、
186
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
に
意見
(
いけん
)
をするやうな
慢神心
(
まんしんごころ
)
では、
187
誠
(
まこと
)
の
正真
(
しやうまつ
)
は
分
(
わか
)
りませぬぞえ。
188
智慧
(
ちゑ
)
と
学
(
がく
)
と
理屈
(
りくつ
)
と
嘘
(
うそ
)
とで
固
(
かた
)
めた
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
の
身魂
(
みたま
)
が、
189
変性
(
へんじやう
)
女子
(
によし
)
の
言依別
(
ことよりわけ
)
に
映写
(
えいしや
)
して
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
に、
190
お
前
(
まへ
)
も
人間
(
にんげん
)
としては、
191
実
(
じつ
)
に
立派
(
りつぱ
)
なお
方
(
かた
)
だが、
192
神
(
かみ
)
の
方
(
はう
)
から
見
(
み
)
れば、
193
丸
(
まる
)
で
赤
(
あか
)
ん
坊
(
ばう
)
のやうな
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
る。
194
人間
(
にんげん
)
の
理解力
(
りかいりよく
)
で、
195
如何
(
どう
)
して
神界
(
しんかい
)
の
真相
(
しんさう
)
が
分
(
わか
)
りますか。
196
妾
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
に
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
の
うぶ
の
心
(
こころ
)
になつて、
197
神
(
かみ
)
さまの
仰有
(
おつしや
)
る
通
(
とほ
)
りに
致
(
いた
)
さねば、
198
三五教
(
あななひけう
)
の
一厘
(
いちりん
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
は
到底
(
たうてい
)
分
(
わか
)
りはしませぬぞや』
199
船長
(
せんちやう
)
『
成程
(
なるほど
)
、
200
言依別
(
ことよりわけ
)
さまに……ウン……オツとドツコイ
言依別
(
ことよりわけ
)
さまと
云
(
い
)
ふ
方
(
かた
)
は、
201
私
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
な
理屈
(
りくつ
)
言
(
い
)
ひで
御座
(
ござ
)
いますか。
202
さぞお
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
にお
困
(
こま
)
りでせうなア』
203
高姫
(
たかひめ
)
『さうです
共
(
とも
)
、
204
言依別
(
ことよりわけ
)
は
有名
(
いうめい
)
な
新
(
あたら
)
しがりで、
205
ドハイカラで、
206
仕舞
(
しまひ
)
の
果
(
はて
)
には
大
(
だい
)
それた
麻邇
(
まに
)
の
玉
(
たま
)
迄
(
まで
)
チヨロまかし、
207
今頃
(
いまごろ
)
は
高砂島
(
たかさごじま
)
で
何
(
なに
)
か
一
(
ひと
)
つ
謀叛
(
むほん
)
を
企
(
たく
)
んでゐるに
違
(
ちが
)
ひありませぬ。
208
それだから
言依別
(
ことよりわけ
)
の
思惑
(
おもわく
)
がチツとでも
立
(
た
)
たうものなら、
209
それこそ
世界
(
せかい
)
は
暗雲
(
やみくも
)
になつて
了
(
しま
)
ひ、
210
再
(
ふたた
)
び
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
をしめねばなりませぬから、
211
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
が
活動
(
くわつどう
)
して、
212
言依別
(
ことよりわけ
)
のなす
事
(
こと
)
、
213
一
(
いち
)
から
十
(
じふ
)
迄
(
まで
)
、
214
百
(
ひやく
)
から
千
(
せん
)
まで、
215
茶々
(
ちやちや
)
を
入
(
い
)
れて
邪魔
(
じやま
)
をしてやらねば
世界
(
せかい
)
の
人民
(
じんみん
)
が
助
(
たす
)
かりませぬ。
216
ホンにホンに
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
位
(
くらゐ
)
気
(
き
)
の
揉
(
も
)
めたものは
御座
(
ござ
)
いませぬワイ』
217
船長
(
せんちやう
)
『あなたは
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
だと
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
218
世界
(
せかい
)
のことは
居
(
ゐ
)
乍
(
なが
)
らにして、
219
曽富登
(
そほと
)
の
神
(
かみ
)
のやうに、
220
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
のことは
悉
(
ことごと
)
くお
知
(
し
)
りで
御座
(
ござ
)
いませうなア』
221
高姫
(
たかひめ
)
『
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
のことなら、
222
何
(
なん
)
なつと
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
され。
223
昔
(
むかし
)
の
世
(
よ
)
の
初
(
はじ
)
まりの
根本
(
こつぽん
)
の、
224
大先祖
(
おほせんぞ
)
の
因縁
(
いんねん
)
性来
(
しやうらい
)
から、
225
先
(
さき
)
の
世
(
よ
)
のまだ
先
(
さき
)
の
世
(
よ
)
の
事
(
こと
)
から、
226
鏡
(
かがみ
)
にかけた
様
(
やう
)
にハツキリと
知
(
し
)
らしてあげませう』
227
船長
(
せんちやう
)
『さうすると、
228
貴女
(
あなた
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
力
(
りき
)
で
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
、
229
国依別
(
くによりわけ
)
のお
二方
(
ふたかた
)
は
今
(
いま
)
何処
(
どこ
)
に
御座
(
ござ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
御存
(
ごぞん
)
じでせうなア』
230
高姫
(
たかひめ
)
『ヘン、
231
阿呆
(
あほ
)
らしい
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
るな。
232
モツトらしい
事
(
こと
)
を
御
(
お
)
尋
(
たづ
)
ねなされ。
233
言依別
(
ことよりわけ
)
は
今
(
いま
)
テルの
都
(
みやこ
)
に、
234
国依別
(
くによりわけ
)
と
二人
(
ふたり
)
、
235
何
(
なに
)
か
大
(
だい
)
それた
謀叛
(
むほん
)
を
企
(
たく
)
んで、
236
四
(
よ
)
つの
玉
(
たま
)
を
飾
(
かざ
)
り、
237
山子
(
やまこ
)
を
始
(
はじ
)
めて
居
(
を
)
りますよ』
238
船長
(
せんちやう
)
『あゝ
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますか。
239
実
(
じつ
)
に
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ふお
方
(
かた
)
は
偉
(
えら
)
いお
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いますなア。
240
ソンならこれからテルの
都
(
みやこ
)
へ
私
(
わたし
)
を
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ。
241
そして、
242
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
に
御
(
お
)
会
(
あ
)
ひ
申
(
まを
)
して、
243
あなたの
教
(
をしへ
)
を
以
(
もつ
)
て
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
致
(
いた
)
して
見
(
み
)
ませう。
244
キツト、
245
テルの
都
(
みやこ
)
に
御座
(
ござ
)
るに
間違
(
まちがひ
)
はありませぬなア』
246
高姫
(
たかひめ
)
『
神
(
かみ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
二言
(
にごん
)
ありませぬ。
247
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
の
所
(
ところ
)
は、
248
テルの
都
(
みやこ
)
に
居
(
を
)
りますが、
249
此
(
この
)
船
(
ふね
)
が
向
(
むか
)
うにつく
時分
(
じぶん
)
には
又
(
また
)
、
250
向
(
むか
)
うも
歩
(
ある
)
きますから、
251
テルの
都
(
みやこ
)
には
居
(
を
)
りますまい。
252
こちらが
歩
(
ある
)
く
丈
(
だけ
)
、
253
向
(
むか
)
うも
歩
(
ある
)
きますから、
254
今
(
いま
)
どこに
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
で、
255
会
(
あ
)
ふことは
出来
(
でき
)
ませぬよ』
256
船長
(
せんちやう
)
『そんなら
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
で、
257
言依別
(
ことよりわけ
)
さまを、
258
テルの
都
(
みやこ
)
を
御
(
お
)
立
(
た
)
ちなさらぬ
様
(
やう
)
に
守
(
まも
)
つて
頂
(
いただ
)
くことは
出来
(
でき
)
ますまいか』
259
高姫
(
たかひめ
)
『その
位
(
くらゐ
)
なことは、
260
屁
(
へ
)
の
御
(
お
)
茶
(
ちや
)
でもありませぬが、
261
言依別
(
ことよりわけ
)
は
妾
(
わたし
)
の
嫌
(
きら
)
ひなドハイカラで
厶
(
ござ
)
いますから、
262
どうも
妾
(
わたし
)
の
霊
(
みたま
)
が
感
(
かん
)
じにくいので
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
うてなりませぬから、
263
言依別
(
ことよりわけ
)
や
国依別
(
くによりわけ
)
に
対
(
たい
)
しては
例外
(
れいぐわい
)
と
思
(
おも
)
うて
下
(
くだ
)
さいませ。
264
あゝモウ
此
(
この
)
事
(
こと
)
は
言
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいますな、
265
胸
(
むね
)
が
悪
(
わる
)
うなつて
来
(
き
)
ました。
266
オツホヽヽヽ』
267
船長
(
せんちやう
)
『あゝそれで
分
(
わか
)
りました。
268
言依別
(
ことよりわけ
)
の
教主
(
けうしゆ
)
に
関
(
くわん
)
する
事
(
こと
)
は
御
(
ご
)
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
くなつて、
269
身魂
(
みたま
)
がお
曇
(
くも
)
り
遊
(
あそ
)
ばし、
270
何事
(
なにごと
)
も
御
(
お
)
分
(
わか
)
り
憎
(
にく
)
いと
仰有
(
おつしや
)
るのでせう。
271
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
此
(
この
)
少
(
すこ
)
し
前
(
まへ
)
、
272
私
(
わたし
)
の
船
(
ふね
)
に
図
(
はか
)
らずも、
273
言依別
(
ことよりわけ
)
さま、
274
国依別
(
くによりわけ
)
さまが
乗
(
の
)
つて
下
(
くだ
)
さいまして、
275
仰有
(
おつしや
)
るのには、
276
実
(
じつ
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
立派
(
りつぱ
)
な
麻邇
(
まに
)
の
玉
(
たま
)
を
四
(
よつ
)
つ
迄
(
まで
)
聖地
(
せいち
)
から
持出
(
もちだ
)
して
来
(
き
)
たが、
277
どうも
高姫
(
たかひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
278
執念深
(
しふねんぶか
)
く
附
(
つ
)
け
狙
(
ねら
)
ふので、
279
高砂島
(
たかさごじま
)
へ
往
(
い
)
つても
又
(
また
)
追
(
おつ
)
かけて
来
(
く
)
るだらうから、
280
ヤツパリ
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
の
冠島
(
をしま
)
沓島
(
めしま
)
へ
隠
(
かく
)
しておかうと、
281
慌
(
あわた
)
だしく
私
(
わたくし
)
の
船
(
ふね
)
から
他
(
た
)
の
船
(
ふね
)
へ
乗替
(
のりか
)
へ
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
されましたよ。
282
キツと
其処
(
そこ
)
に
隠
(
かく
)
してあるに
違
(
ちがひ
)
ありませぬぜ。
283
お
前
(
まへ
)
さまも
其
(
その
)
玉
(
たま
)
を
探
(
さが
)
す
積
(
つも
)
りならば、
284
高砂島
(
たかさごじま
)
へ
御
(
お
)
出
(
い
)
でになつても
駄目
(
だめ
)
ですよ。
285
それはそれは
美
(
うつく
)
しい、
286
青
(
あを
)
赤
(
あか
)
白
(
しろ
)
黄
(
き
)
の
四
(
よつ
)
つの
立派
(
りつぱ
)
な、
287
喉
(
のど
)
のかわく
様
(
やう
)
な
宝玉
(
ほうぎよく
)
でした』
288
高姫
(
たかひめ
)
『エヽ
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
る。
289
言依別
(
ことよりわけ
)
にお
会
(
あ
)
ひになりましたか。
290
そして
本当
(
ほんたう
)
に
玉
(
たま
)
を
持
(
も
)
つてゐましたか』
291
船長
(
せんちやう
)
『それはそれは
立派
(
りつぱ
)
な
物
(
もの
)
でしたよ。
292
現
(
げん
)
に
此
(
この
)
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
つてゐられたのですもの、
293
モウ
今頃
(
いまごろ
)
は
余程
(
よほど
)
遠
(
とほ
)
く
台湾島
(
たいわんたう
)
附近
(
ふきん
)
を
航海
(
かうかい
)
して
居
(
を
)
られるでせう』
294
高姫
(
たかひめ
)
暫
(
しばら
)
く
首
(
くび
)
をかたげ、
295
思案
(
しあん
)
にくれてゐたが、
296
俄
(
にはか
)
に
体
(
からだ
)
をビリビリと
振
(
ふる
)
はし、
297
高姫
(
たかひめ
)
『
船長
(
せんちやう
)
さま、
298
あなた
言依別
(
ことよりわけ
)
に
幾
(
いく
)
ら
貰
(
もら
)
ひましたか。
299
コン
丈
(
だけ
)
ですか』
300
と
五本
(
ごほん
)
の
指
(
ゆび
)
を
出
(
だ
)
して
見
(
み
)
せる。
301
船長
(
せんちやう
)
『
言依別
(
ことよりわけ
)
さまに
別
(
べつ
)
に
口止
(
くちど
)
め
料
(
れう
)
を
貰
(
もら
)
ふ
必要
(
ひつえう
)
もなし、
302
只
(
ただ
)
実地
(
じつち
)
目撃
(
もくげき
)
した
丈
(
だけ
)
の
事
(
こと
)
を、
303
お
前
(
まへ
)
さまに
親切
(
しんせつ
)
上
(
じやう
)
御
(
お
)
知
(
し
)
らせした
迄
(
まで
)
の
事
(
こと
)
だ。
304
貰
(
もら
)
うのなら
高姫
(
たかひめ
)
さまから
貰
(
もら
)
ふべきものだよ』
305
高姫
(
たかひめ
)
は
船長
(
せんちやう
)
の
顔
(
かほ
)
を
穴
(
あな
)
のあく
程
(
ほど
)
眺
(
なが
)
め、
306
いやらしき
笑
(
ゑみ
)
を
浮
(
う
)
かべ
乍
(
なが
)
ら、
307
高姫
『
何
(
なん
)
とマア
悪神
(
あくがみ
)
の
仕組
(
しぐみ
)
は、
308
どこから
何処
(
どこ
)
まで、
309
能
(
よ
)
う
行届
(
ゆきとど
)
いたものだなア。
310
言依別
(
ことよりわけ
)
が
自転倒
(
おのころ
)
島
(
じま
)
へ
帰
(
かへ
)
つたと
見
(
み
)
せかけ、
311
外
(
ほか
)
の
船
(
ふね
)
に
乗替
(
のりか
)
へ、
312
キツと
高砂島
(
たかさごじま
)
に
渡
(
わた
)
つたに
相違
(
さうゐ
)
ない、
313
どうも
高姫
(
たかひめ
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
には
彷彿
(
はうふつ
)
として
見
(
み
)
えてゐる。
314
……コレ
船頭
(
せんどう
)
さま、
315
イヽ
加減
(
かげん
)
になぶつておきなさい。
316
外
(
ほか
)
の
者
(
もの
)
ならいざ
知
(
し
)
らず、
317
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の
生宮
(
いきみや
)
がさう
易々
(
やすやす
)
とチヨロまかされるものですかいな。
318
そんなアザとい
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
ると、
319
人
(
ひと
)
が
馬鹿
(
ばか
)
に
致
(
いた
)
しますで、
320
ホヽヽヽヽ』
321
と
首
(
くび
)
を
肩
(
かた
)
の
中
(
なか
)
に
埋
(
うづ
)
めて、
322
頤
(
あご
)
をしやくり
乍
(
なが
)
ら、
323
両手
(
りやうて
)
を
垂直
(
すゐちよく
)
に
下
(
さ
)
げ、
324
十本
(
じつぽん
)
の
指
(
ゆび
)
をパツと
開
(
ひら
)
いて
腰
(
こし
)
を
前後
(
まへうしろ
)
に
揺
(
ゆす
)
り
乍
(
なが
)
ら
笑
(
わら
)
うて
見
(
み
)
せた。
325
船長
(
せんちやう
)
『
高姫
(
たかひめ
)
さま、
326
マアゆるりと
貴女
(
あなた
)
の
御
(
お
)
席
(
せき
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
休息
(
きうそく
)
して
下
(
くだ
)
さい。
327
又
(
また
)
後
(
のち
)
程
(
ほど
)
ゆるゆると
御
(
お
)
話
(
はなし
)
を
承
(
うけたまは
)
りませう』
328
高姫
(
たかひめ
)
は
舌
(
した
)
を
巻出
(
まきだ
)
し、
329
目
(
め
)
をキヨロツと
剥
(
む
)
いて、
330
高姫
『ハーイ』
331
と
云
(
い
)
つた
限
(
き
)
り、
332
チヨコチヨコ
走
(
ばし
)
りに
船長室
(
せんちやうしつ
)
を
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く。
333
(
大正一一・八・一〇
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松村真澄
録)
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