霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 バリーの(やかた)〔九九三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻 篇:第1篇 天意か人意か よみ(新仮名遣い):てんいかじんいか
章:第5章 バリーの館 よみ(新仮名遣い):ばりーのやかた 通し章番号:993
口述日:1922(大正11)年09月21日(旧08月1日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
サガレン王派の重臣たちのみならず、王自身をも幽閉してしまった竜雲は、今や誰はばかることなくケールス姫と夫婦気取りになり王の権力を行使し、ますます傍若無人の行動をなした。
そのため国内には人民の恨みの声がとどろいた。竜雲もさすがに公然と王を名乗ることはせず、ケールス姫を表に立てて自分は黒幕となって国政を掌握した。
竜雲は、サール、アナン、セール、ウインチら正義派の残党を捕えようと部下を四方に派遣した。四人はバリーの山中に隠れて王派の部下を集め、竜雲をどうにかして滅ぼして王を復位させ、捕えられている人々を助けようと計画していた。
竜雲は自分の信任厚い弟子・テーリスに獄舎の王派の人々の監視を命じた。しかしテーリスは実は思慮深い王派の人物であり、竜雲とケールス姫の信任を受けて彼らの企みを探っていたのであった。
バリーの山奥にある巨大な岩窟の中で、サガレン王派の人々は竜雲討伐の計画を練っていた。アナンはケールス姫一派に深く入り込んでいるテーリスと連絡をつけて獄中の人たちを救い出そうと計画した。
アナンはわざと捕まってテーリスと連絡をつける計画の出立にあたり、門出の歌を歌った。竜雲の横暴に憤り、サガレン王とその忠臣たちを助け出して戦を仕掛け、竜雲を追い払おうという意気を勇ましく歌い、旅装を整えて出立した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-05 15:18:13 OBC :rm3605
愛善世界社版:42頁 八幡書店版:第6輯 598頁 修補版: 校定版:43頁 普及版:20頁 初版: ページ備考:
001 竜雲(りううん)は、002サガレン(わう)発狂者(はつきやうしや)として幽閉(いうへい)し、003左守(さもりの)(かみ)のタールチン夫婦(ふうふ)(はじ)め、004右守(うもりの)(かみ)のエームス、005ゼム、006エール、007シルレング、008ユーズ()のバラモン(けう)信者(しんじや)にして(わう)誠忠(せいちう)なる人物(じんぶつ)(のこ)らず(ごく)(とう)じたれば、009(いま)(たれ)(はばか)(もの)もなく、010ケールス(ひめ)(とも)国王(こくわう)気取(きど)りになつて、011益々(ますます)傍若(ばうじやく)無人(ぶじん)行動(かうどう)をなし、012悪逆(あくぎやく)()増長(ぞうちよう)して、013怨嗟(ゑんさ)(こゑ)国内(こくない)(とどろ)(わた)(こと)となつた。014竜雲(りううん)(さすが)人心(じんしん)向背(かうはい)如何(いかん)(かへり)み、015公然(こうぜん)(わう)名乗(なの)(こと)をなさず、016ケールス(ひめ)(おもて)()て、017自分(じぶん)黒幕(くろまく)となつて国政(こくせい)掌握(しやうあく)し、018ケリヤを左守(さもりの)(かみ)とし、019ハルマを右守(うもりの)(かみ)となし、020ベール、021メール、022ヨールの(さん)(にん)抜擢(ばつてき)して重要(ぢゆうえう)なる位置(ゐち)()ゑ、023日夜(にちや)024茗宴(めいえん)(ふけ)り、025放埒(はうらつ)不覊(ふき)生活(せいくわつ)(おく)りつつあつた。
026 さうしてサール、027アナン、028セール、029ウインチなぞの正義派(せいぎは)(ことごと)(とら)へて(ごく)(とう)ぜむと、030部下(ぶか)四方(しはう)()して捜索(そうさく)(はじ)めた。031されど()(にん)は、032(はや)くも姿(すがた)をかくし、033バリーの山中(さんちう)(かく)れ、034数多(あまた)(ただ)しき(わう)部下(ぶか)(あつ)めて、035竜雲(りううん)(ほろ)ぼし、036(わう)をして(ふたた)(もと)地位(ちゐ)()たせむと企劃(きくわく)しつつあつた。037さうして、038タールチン以下(いか)冥窓(めいそう)(くる)しむ人々(ひとびと)(いち)(にち)(はや)(すく)()さむと、039昼夜(ちうや)肝胆(かんたん)(くだ)きつつあつたのである。
040 竜雲(りううん)秘蔵(ひざう)弟子(でし)(たの)みたるテーリスをして牢獄(ろうごく)番人頭(ばんにんがしら)となし、041一同(いちどう)動静(どうせい)監視(かんし)せしめつつあつた。042されど(この)テーリスは(もつと)思慮(しりよ)(ふか)人物(じんぶつ)にして、043サガレン(わう)今日(こんにち)境遇(きやうぐう)予知(よち)()たれば、044(はじ)めよりケールス(ひめ)045竜雲(りううん)()()り、046絶対(ぜつたい)(てき)信任(しんにん)()けて()た。047それ(ゆゑ)竜雲(りううん)はテーリスを抜擢(ばつてき)して牢獄(ろうごく)(まも)らしめ、048これにて大丈夫(だいぢやうぶ)安堵(あんど)(むね)()(おろ)しつつあつたのである。
049 バリーの山奥(やまおく)には巨大(きよだい)なる岩窟(がんくつ)があつて、050(なか)天然(てんねん)住家(すみか)となつて()る。051此処(ここ)にサガレン(わう)忠実(ちうじつ)なる人々(ひとびと)(しば)姿(すがた)(かく)し、052竜雲(りううん)誅伐(ちうばつ)計画(けいくわく)(めぐ)らしつつあつた。
053 サールは一同(いちどう)(むか)ひ、
054サール最早(もはや)今日(こんにち)となつては、055竜雲(りううん)(やや)安心(あんしん)(むね)()(おろ)()(ゆる)()るならむ。056(なん)とか(いた)して夜襲(やしふ)(こころ)(かれ)()(とら)へ、057()(もの)()せてやらずば、058(わう)(さま)(はじ)忠実(ちうじつ)なる人々(ひとびと)身辺(しんぺん)刻々(こくこく)危険(きけん)(せま)り、059呑臍(どんぜい)(くい)(のこ)(こと)あるべし。060如何(いか)にすれば宜敷(よろし)からむや』
061一同(いちどう)(はか)れば、062アナンは(すす)()で、
063アナン()第一(だいいち)にタールチン以下(いか)(すく)()し、064短兵急(たんぺいきふ)()()せて竜雲(りううん)(うば)ひとり、065(おもむろ)にケールス(ひめ)()改心(かいしん)(ねが)ふをもつて穏健(おんけん)なるやり(かた)(かんが)へます。066(みだ)りに(ひと)(ころ)すは(てん)(ゆる)さざる(ところ)067()むを()ざれば(かれ)誅伐(ちうばつ)するも(せん)なけれど、068()らう(こと)なら一旦(いつたん)(かれ)捕縛(ほばく)して改心(かいしん)をせまり、069どうしても()かざれば(その)(とき)手段(しゆだん)(いた)さうでは御座(ござ)らぬか』
070ウインチ『この()(およ)んで、071そんな手緩(てぬる)(こと)はして()られますまい。072(かく)(ごと)忠臣(ちうしん)義士(ぎし)(あつ)まりし(うへ)からは、073一挙(いつきよ)()めよせ竜雲(りううん)(ほろぼ)し、074国家(こくか)()(がい)をのぞくに()くはありますまい』
075セール『()第一(だいいち)に、076タールチン、077エームス以下(いか)(すく)()すのが肝腎(かんじん)御座(ござ)らう。078(しか)(なが)らこれは容易(ようい)(わざ)では御座(ござ)らぬ。079(みな)さまは(なに)確信(かくしん)御座(ござ)いますかな』
080アナン『(たしか)にあります。081テーリスと内外(ないぐわい)相応(あひおう)じ、082()(かれ)をして(とき)(うかが)ひタールチン以下(いか)(すく)()さしめ、083それを機会(きくわい)()()せなば易々(いい)たる(わざ)御座(ござ)らう』
084ウインチ『(なに)()うても名利(めいり)(はし)()(なか)085(あく)(したが)ふものは大多数(だいたすう)086(われ)()(くわ)をもつて(しう)(あた)(こと)なれば、087(あま)楽観(らくくわん)出来(でき)(まを)さぬ。088(また)テーリスは竜雲(りううん)股肱(ここう)(たの)(だい)味方(みかた)089さう註文(ちうもん)(どほ)(かれ)(かへ)(ちう)(いた)気遣(きづか)ひもありますまい』
090アナン『(けつ)して(けつ)して()心配(しんぱい)()無用(むよう)御座(ござ)る。091テーリスは今日(こんにち)ある(こと)予知(よち)し、092わざと竜雲(りううん)喉下(のどもと)這入(はい)り、093(うま)(かれ)股肱(ここう)となつた(もの)(ゆゑ)094牢獄(ろうごく)監督(かんとく)(めい)じたので御座(ござ)います。095きつとテーリスは吾々(われわれ)(いた)るを()つて()るでせう』
096ウインチ『(はた)して()れが(しん)なりとすれば、097(じつ)(この)(うへ)なき好都合(かうつがふ)御座(ござ)る。098(なん)とか(かれ)面会(めんくわい)する機会(きくわい)御座(ござ)るまいかなア』
099 アナンはニツコと(わら)ひ、
100アナン沢山(たくさん)手段(しゆだん)御座(ござ)る。101()()一同(いちどう)夜討(ようち)計画(けいくわく)(ととの)へられた(うへ)102(わたし)神地城(かうぢじやう)(ちか)(すす)()り、103(わざ)竜雲(りううん)部下(ぶか)(とら)へられ、104入牢(にふらう)してテーリスに()ひ、105この計画(けいくわく)(ひそか)(しめ)(あは)せ、106(こと)(はか)るで御座(ござ)らう。107()(わたし)(これ)より神地(かうぢ)(みやこ)(ちか)くに(すす)みませう。108こちらの(はう)準備(じゆんび)(ととの)へば牢獄(ろうごく)近辺(きんぺん)(よる)(ひそか)(あら)はれて、109爆竹(ばくちく)合図(あひづ)をして(くだ)さい。110さすれば(わたし)はテーリスと(とも)に、111内部(ないぶ)人々(ひとびと)牢獄(らうごく)より(はな)ちし(うへ)112爆竹(ばくちく)をもつて合図(あひづ)(いた)しませう。113その(おと)()くと(とも)表門(おもてもん)殺到(さつたう)されたし。114(かなら)(うち)より(もん)(ひら)き、115(とも)(とも)大活動(だいくわつどう)(いた)しませう。116これより(ほか)計略(けいりやく)はありませぬ』
117サール『なる(ほど)結構(けつこう)(はかりごと)ではありますが、118竜雲(りううん)(また)119神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)妖術(えうじゆつ)使(つか)(やつ)なれば、120吾々(われわれ)計略(けいりやく)前知(ぜんち)(かへつ)(てき)(はか)られ、121反対(はんたい)(ほろぼ)さるるやうな(こと)はありますまいかなア』
122アナン『(けつ)して左様(さやう)心配(しんぱい)()りませぬ。123竜雲(りううん)(すこ)しも神通力(じんつうりき)はもつて()ませぬ。124もし、125(はた)して(かれ)神通力(じんつうりき)がありとすれば、126テーリスの(こころ)看破(かんぱ)せずには()りますまい』
127 ウインチ、128サール、129セールは『成程(なるほど)』と()(うなづ)き、130(おも)はず()らず『アハヽヽヽ』と()(わら)ふ。
131 アナンは門出(かどで)(いはひ)として(うた)(うた)ふ。
132アナン『あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
133不倶(ふぐ)戴天(たいてん)(あだ)()
134(きみ)(たす)くる(とき)()
135ウラルの(をしへ)竜雲(りううん)
136いつの()にやら錫蘭(シロ)(しま)
137神地(かうぢ)(みやこ)(あら)はれて
138種々(いろいろ)雑多(ざつた)計画(けいくわく)
139ケールス(ひめ)傍近(そばちか)
140(はべ)りて(ひめ)誑惑(けふわく)
141()()につのる悪逆(あくぎやく)無道(むだう)
142左守(さもりの)(かみ)のタールチン
143キングス(ひめ)(はじ)めとし
144エームス、ユーズ、ゼム、エール
145シルレング(まで)無残(むざん)にも
146牢獄(ひとや)(なか)()()みて
147自己(われ)(したが)悪者(わるもの)
148(ちか)づけ(つひ)野心(やしん)をば
149遂行(すゐかう)せむと朝夕(あさゆふ)
150よからぬ(こと)(たく)みつつ
151サガレン(わう)幽閉(いうへい)
152()(とり)さへも(おと)すよな
153その(いきほひ)のすさまじく
154(あなど)(がた)()えにけり
155さはさりながら天地(あめつち)
156(すめ)大神(おほかみ)はいかにして
157(この)狂暴(きやうばう)(ゆる)すべき
158天地(てんち)道理(だうり)(そむ)きたる
159(まが)(つかさ)竜雲(りううん)
160(ほろ)ぼしたまふ(とき)()
161あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
162精忠(せいちう)無比(むひ)人々(ひとびと)
163この隠家(かくれや)(あつ)まりて
164(きみ)(おん)(ため)(くに)(ため)
165(いくさ)(ととの)神地城(かうぢじやう)
166さして堂々(だうだう)(すす)()
167天地(てんち)(かみ)吾々(われわれ)
168(まこと)(うべな)ひたまひつつ
169(ふと)(いさを)永久(とこしへ)
170()てさせたまはむ逸早(いちはや)
171準備(じゆんび)(ととの)曲神(まがかみ)
172()(たひら)げて天ケ下(あめがした)
173四方(よも)民草(たみぐさ)(やす)らけく
174いと(たひら)けく(をさ)むべし
175(われ)はこれより一走(ひとはし)
176神地(かうぢ)(みやこ)()(むか)
177()竜雲(りううん)手下(てした)()
178(うま)(とら)はれ入獄(にふごく)
179テーリスさまに(めぐ)()
180すべての計画(けいくわく)()(あは)
181サール、セールやウインチの
182神軍(しんぐん)()めて(きた)(まで)
183(すべ)ての準備(じゆんび)(ととの)へむ
184あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
185御霊(みたま)(さち)はひましませよ
186忠義(ちうぎ)(はや)吾々(われわれ)
187(ねが)ひを()らさず(きこ)()
188神地(かうぢ)(しろ)(たか)くとも
189周囲(めぐり)(ほり)(ふか)くとも
190忠義(ちうぎ)一途(いちづ)真心(まごころ)
191刃向(はむか)(てき)はよもあらじ
192あゝ(いさ)ましや(いさ)ましや
193(きみ)(たす)くる(とき)()
194あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
195数多(あまた)(ただ)しき人々(ひとびと)
196(あと)より用意(ようい)(ととの)へて
197(すす)んで(きた)逸早(いちはや)
198(われ)一先(ひとま)()()でむ
199朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
200(つき)()つとも()くるとも
201仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
202(まこと)(ちから)()(すく)
203(かみ)(おもて)(あら)はれて
204(ぜん)(あく)とを()てわける
205三五教(あななひけう)ではなけれども
206(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
207(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
208(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
209直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
210()(あやま)ちは()(なほ)
211(かみ)(こころ)(かへり)みて
212悪逆(あくぎやく)無道(むだう)竜雲(りううん)
213(こころ)(あらた)めまつろへば
214(かなら)(いのち)(たす)くべし
215いざいざさらばいざさらば
216いづれも無事(ぶじ)神軍(しんぐん)
217指揮(しき)して(あと)より(きた)りませ』
218足早(あしばや)旅装束(たびしやうぞく)調(ととの)へ、219神地(かうぢ)(みやこ)()して(すす)()く。
220大正一一・九・二一 旧八・一 加藤明子録)
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