霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 門雀(もんじやく)〔一〇〇四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻 篇:第3篇 神地の暗雲 よみ(新仮名遣い):こうじのあんうん
章:第16章 門雀 よみ(新仮名遣い):もんじゃく 通し章番号:1004
口述日:1922(大正11)年09月23日(旧08月3日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
門番のシールとベスは、酒を酌み交わしながら雑談にふけっていた。そして、ケールス姫が勇ましい戦支度のいでたちで血相変えて門前にやってきたが、こそこそとお館に戻って行ったことを話題にしていた。
ケールは、何か奥に危急の事態が起こっていたら大変だから、ベスに見に行ってくるようにと言いつけた。ベスは白鉢巻にたすき十字のいでたちを整えると、奥殿に進んでいった。
すると左守のケリヤが負傷しており、竜雲、ケールス姫、テールらが驚きに気もそぞろになっている様子が見えた。ベスは状況を見て、それほどたいしたことではないだろうと考え、門に戻ろうとした。
ケールス姫はベスの姿を目ざとく見つけ、門番が奥殿まで入ってきたことを怒鳴りつけた。ベスはただならぬ姫の様子に、何事か出来したかと様子を見に来ただけだと答えた。竜雲とケールス姫は、ここで見たことは決して口外するなとしてベスを追い出した。
これより城内には間断なく不可解なことが続出し、竜雲以下城内の者はみな、戦々恐々として心休まらず日々を暮らすことになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-11 13:38:17 OBC :rm3616
愛善世界社版:168頁 八幡書店版:第6輯 643頁 修補版: 校定版:174頁 普及版:74頁 初版: ページ備考:
001 神地(かうぢ)(しろ)表門(おもてもん)には、002門番(もんばん)のシール、003ベスの両人(りやうにん)が、004あまりの無聊(むれう)(あつ)さとを(わす)れむため、005チビリチビリと胡坐(あぐら)をかいて(さけ)()(かは)雑談(ざつだん)(ふけ)つて()る。
006シール『オイ、007ベス、008ケールス(ひめ)(さま)血相(けつさう)()へて(たすき)十字(じふじ)綾取(あやど)り、009後鉢巻(うしろはちまき)(りん)()め、010(すそ)もあらはに大薙刀(おほなぎなた)小脇(こわき)抱込(かいこ)み、011此処迄(ここまで)(あら)はれ(きた)り、012手持(てもち)無沙汰(ぶさた)のお面貌(かほつき)でコソコソと(ふたた)(もと)のお(やかた)()(かへ)されたのは一体(いつたい)(なん)だらう。013まるで戦場(せんぢやう)()ける女武者(をんなむしや)のやうぢやないか。014(おれ)此処(ここ)門番(もんばん)(さけ)一緒(いつしよ)神妙(しんめう)につとめて()るから、015貴様(きさま)一寸(ちよつと)(やかた)()つて様子(やうす)(さぐ)つて()()れ。016(なん)だか()()()かないやうな心持(こころもち)がして()たからなア』
017ベス『さうだなア。018合点(がてん)()かぬ(ひめ)(さま)()様子(やうす)019(これ)には(なに)(わけ)があるのであらう。020(しか)られるか()らないが一寸(ちよつと)(おく)(まで)()つて()る。021(おれ)(たち)門番(もんばん)分際(ぶんざい)として、022昇殿(しようでん)(ゆる)されない()(うへ)だが、023(なん)でも非常(ひじやう)(こと)大奥(おほおく)には突発(とつぱつ)して()るに(ちが)ひない。024万々一(まんまんいち)竜雲(りううん)(さま)()()(うへ)一大事(いちだいじ)があつては、025吾々(われわれ)悠々(いういう)閑々(かんかん)として()(わけ)には()かない。026(しか)られても(かま)はぬ、027(おく)(まで)踏込(ふみこ)んで()る。028様子(やうす)(あと)から(くは)しく(わか)るであらう』
029()ひのこし、030ベスは白鉢巻(しろはちまき)()(たすき)十字(じふじ)綾取(あやど)りながら、031尻引(しりひ)つからげ無雑作(むざふさ)奥殿(おくでん)さして(すす)()り、032ケリヤの負傷(ふしやう)や、033竜雲(りううん)034ケールス(ひめ)035テールの(おどろ)きの場面(ばめん)一見(いつけん)し、036()大体(だいたい)様子(やうす)垣間(かいま)()ながら、037(この)(ぶん)ならば(あま)(たい)した(こと)はあるまい、038(ゆめ)騒動(さうだう)だと(つぶや)きながらスタスタと(きびす)(かへ)さむとする(とき)039目敏(めざと)くもケールス(ひめ)はベスの姿(すがた)()(こゑ)(とが)らせ、
040ケールス姫『お(まへ)門番(もんばん)のベスではないか。041(やかた)禁制(きんせい)(やぶ)り、042()かる大奥(おほおく)(まで)(なに)しに()たのだい』
043呶鳴(どな)りつけられ、044ベスは(ふる)ひながら(あたま)()き、
045ベス『ハヽハイ、046マヽ(まこと)申訳(まをしわけ)御座(ござ)りませぬ。047(じつ)はケールス(ひめ)(さま)(ただ)ならぬ()様子(やうす)(をが)みまして、048(この)大奥(おほおく)には何事(なにごと)珍事(ちんじ)突発(とつぱつ)せしならむ、049如何(いか)(いや)しき門番(もんばん)なりとて、050(きみ)危難(きなん)(すく)はずには()られない、051昇殿(しようでん)()禁制(きんせい)(ひやく)(せん)承知(しようち)(いた)しては()りますが、052()かる非常時(ひじやうじ)にはそんな(こと)(まも)つて()(こと)出来(でき)ない、053とも(かく)二方(ふたかた)(たす)(まを)さねばならないと、054シールと(まを)(あは)せ、055不都合(ふつがふ)(かへり)みずここ(まで)(まゐ)りました。056どうぞ()勘弁(かんべん)(ねが)ひます』
057ケールス姫(ゆる)(がた)(なんぢ)行動(かうどう)058(つね)ならば(この)(まま)差措(さしお)くべきではないが、059(なんぢ)(われ)()(おも)誠忠(せいちう)(めん)じて唯今(ただいま)(かぎ)(わす)れて(つか)はす。060()をつけて厳重(げんぢゆう)(もん)(まも)れよ。061さうして大奥(おほおく)(この)有様(ありさま)を、062何人(なんぴと)にも口外(こうぐわい)してはならないぞ。063(かた)口留(くちどめ)して()く』
064ベス『ハイ()(がた)御座(ござ)います。065(けつ)して(けつ)して(くび)()んでも(まを)しませぬから()安心(あんしん)(くだ)さいませ』
066 竜雲(りううん)(こゑ)(とが)らせて、
067竜雲『ベス、068(はや)(この)()退却(たいきやく)(いた)せ!』
069 「ハイ」と(こた)へてベスは(この)()立去(たちさ)る。070ケリヤは(ひめ)(あし)()られて苦悶(くもん)(こゑ)(はな)ち「ウン ウン」と(うな)つて()る。071テールは(こし)()かした(まま)072目玉(めだま)(ばか)りヂヤイロコンパスのやうに急速度(きふそくど)をもつて白黒(しろくろ)交替(かうたい)転回(てんくわい)させて()る。
073(こころ)(きたな)竜雲(りううん)
074寵児(ちようじ)となりて朝夕(あさゆふ)
075(ちか)(つか)へし青年(せいねん)テールは
076一間(ひとま)()りてウラル(けう)
077(かみ)御文(みふみ)拝読(はいどく)
078()らず()らずに(ゆめ)()
079前後(ぜんご)()らぬ(その)(すき)
080(こころ)(ひそ)曲鬼(まがおに)
081自由(じいう)自在(じざい)跳梁(てうりやう)
082夢路(ゆめぢ)をたどる(とき)もあれ
083神地(かうぢ)(しろ)表門(おもてもん)
084人馬(じんば)物音(ものおと)(もの)(すご)
085()()(てき)(とき)(こゑ)
086(いぶ)かしさよと()()きて
087(やかた)勾欄(こうらん)かけ(のぼ)
088眼下(がんか)をきつと見渡(みわた)せば
089(いま)(まで)(あるじ)(たの)みたる
090サガレン(わう)(いさ)ましく
091連銭(れんせん)葦毛(あしげ)(うま)()
092金覆輪(きんぷくりん)(くら)()いて
093(こま)(いなな)(いさ)ましく
094采配(さいはい)()つて()(きた)
095(つづ)いて青鹿毛(あをかげ)黒鹿毛(くろかげ)
096(また)がる勇士(ゆうし)何人(なんびと)
097(まなこ)()ゑて(なが)むれば
098テーリス、エームス両勇士(りやうゆうし)
099黄金(こがね)采配(さいはい)()(ふる)
100(きび)しき下知(げち)兵士(つはもの)
101(うしほ)(ごと)()()する
102スワ一大事(いちだいじ)とかけ(くだ)
103数十(すじふ)勇士(ゆうし)引率(いんそつ)
104(てき)(むか)つて()()めば
105(しう)(たの)みて()()せし
106(さすが)(てき)辟易(へきえき)
107()せては(かへ)(いそ)(なみ)
108旗色(はたいろ)(わる)()えけるが
109膝下(しつか)(ひび)(とき)(こゑ)
110雲霞(うんか)(ごと)大軍(たいぐん)
111単梯陣(たんていぢん)()りながら
112少数(せうすう)味方(みかた)(あなど)つて
113阿修羅(あしゆら)(わう)(ごと)()(きた)
114味方(みかた)慄悍(へうかん)決死(けつし)()
115鬼神(きしん)(ひし)豪傑(がうけつ)
116如何(いかが)はしけむバタバタと
117(するど)(やいば)(つらぬ)かれ
118()もなく(その)()(たふ)れたり
119テールは(おどろ)(ただ)一人(ひとり)
120門内(もんない)(ふか)(しの)()
121(もん)(とざ)してスタスタと
122ケールス(ひめ)竜雲(りううん)
123居間(ゐま)をばさして(すす)()
124(てき)間近(まぢか)(せま)つたり
125(この)()(はや)遁走(とんそう)
126後日(ごじつ)(そな)へをなしませと
127(まこと)しやかに()()つる
128昼寝(ひるね)(ゆめ)物語(ものがたり)
129(まこと)となして竜雲(りううん)
130(かほ)(いろ)までサツと()
131(たちま)(その)()腰抜(こしぬ)かし
132(ふる)(をのの)くをかしさよ
133まさかの(とき)(つよ)いのは
134女心(をんなごころ)一心(いつしん)
135ケールス(ひめ)()(あが)
136長押(なげし)薙刀(なぎなた)おつ()つて
137(おもて)をさして駆出(かけいだ)
138()()(てき)一騎(いつき)だも
139(あま)(こと)なくなぎ(はら)
140(をんな)武勇(ぶゆう)(あら)はすは
141(いま)(この)(とき)(いさ)()
142立出(たちい)でなむとするところ
143左守(さもり)のケリヤは()(きた)
144平穏(へいおん)無事(ぶじ)(この)(しろ)
145(なに)をもつてか(ひめ)(さま)
146仰々(ぎやうぎやう)しくも(その)姿(すがた)
147(とど)まり(たま)へと()ひければ
148(ひめ)(いか)つて(たちま)ちに
149ケリヤの(あし)()(はら)
150ウンと一声(ひとこゑ)(さけ)びつつ
151(その)()(たふ)れし(あは)れさよ
152死物狂(しにものぐるひ)のケールス(ひめ)
153後鉢巻(うしろはちまき)(りん)としめ
154(たすき)十字(じふじ)綾取(あやど)りて
155強敵(きやうてき)こそは御参(ござん)なれ
156唯今(ただいま)(おも)()らせむと
157猛虎(まうこ)(ごと)駆出(かけだ)せば
158こは(そも)如何(いか)門前(もんぜん)
159ソヨ()(かぜ)(おと)()
160天地(てんち)(しづか)()ぬるごと
161閑寂(かんじやく)()(ただよ)ひぬ
162(ひめ)不審(ふしん)()へずして
163(ふたた)(やかた)(おく)()
164手持(てもち)無沙汰(ぶさた)(かへ)()
165とくと様子(やうす)調(しら)ぶれば
166テールが(ゆめ)空騒(からさわ)
167()りつめ()たる(たましひ)
168グタリと(ゆる)みケールス(ひめ)
169テールの(つかさ)()(むか)
170その不都合(ふつがふ)()めかくる
171(ゆめ)夢見(ゆめみ)(あは)(もの)
172テールは(あたま)()きながら
173やつと(ゆる)され虎口(ここう)をば
174(のが)れし(ごと)心地(ここち)して
175(むね)なで(おろ)すぞをかしけれ
176(この)()(おに)はなけれども
177(わが)()(つく)りし村肝(むらきも)
178(こころ)(おに)()められて
179(くる)しみなやむはテールのみか
180ケールス(ひめ)竜雲(りううん)
181(おな)じく(こころ)(いた)めつつ
182挙措(きよそ)(その)()をば(うしな)ひて
183(ふる)()たるぞおそろしき。
184 (さいはひ)にケリヤの薙刀(なぎなた)(きず)(おも)つたよりは(あさ)く、185切口(きりくち)粘土(ねんど)をつけ繃帯(はうたい)(ほどこ)したれば、186数日(すうじつ)(のち)には殿中(でんちう)歩行(ほかう)自由(じいう)(わづか)()(ところ)(まで)回復(くわいふく)したりける。
187 (これ)より城内(じやうない)間断(かんだん)なく不可解(ふかかい)なる(こと)のみ続出(ぞくしゆつ)し、188竜雲(りううん)(はじ)上下(じやうげ)(つかさ)(たち)戦々(せんせん)兢々(きやうきやう)として(やす)(こころ)もなく、189(さび)しげに(その)月日(つきひ)(おく)りつつありしといふ。
190大正一一・九・二三 旧八・三 加藤明子録)
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