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第36巻(亥の巻)
序文
総説
第1篇 天意か人意か
01 二教対立
〔989〕
02 川辺の館
〔990〕
03 反間苦肉
〔991〕
04 無法人
〔992〕
05 バリーの館
〔993〕
06 意外な答
〔994〕
07 蒙塵
〔995〕
08 悪現霊
〔996〕
第2篇 松浦の岩窟
09 濃霧の途
〔997〕
10 岩隠れ
〔998〕
11 泥酔
〔999〕
12 無住居士
〔1000〕
13 恵の花
〔1001〕
14 歎願
〔1002〕
第3篇 神地の暗雲
15 眩代思潮
〔1003〕
16 門雀
〔1004〕
17 一目翁
〔1005〕
18 心の天国
〔1006〕
19 紅蓮の舌
〔1007〕
第4篇 言霊神軍
20 岩窟の邂逅
〔1008〕
21 火の洗礼
〔1009〕
22 春の雪
〔1010〕
23 雪達磨
〔1011〕
24 三六合
〔1012〕
余白歌
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第36巻
> 第2篇 松浦の岩窟 > 第9章 濃霧の途
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第九章
濃霧
(
のうむ
)
の
途
(
みち
)
〔九九七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第36巻 海洋万里 亥の巻
篇:
第2篇 松浦の岩窟
よみ(新仮名遣い):
まつうらのがんくつ
章:
第9章 濃霧の途
よみ(新仮名遣い):
のうむのみち
通し章番号:
997
口述日:
1922(大正11)年09月22日(旧08月2日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年12月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
サガレン王とエームス、テーリスの主従三人連れは、霧の立ち込める谷道を逃げていく。一行はセムの里を抜け、松浦の小糸の館に身を隠そうと進んで行く。
エームスとテーリスは述懐の歌を歌いながら、道中の無事をバラモン教の神に祈りつつ進んで行く。この谷川は常に濃霧が立ち、危険な生き物が棲息し山賊も出没する地帯であったが、一行は竜雲の追っ手を避けるために、心ならずもこの道筋を行かざるを得なかった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-07 14:45:07
OBC :
rm3609
愛善世界社版:
83頁
八幡書店版:
第6輯 612頁
修補版:
校定版:
85頁
普及版:
36頁
初版:
ページ備考:
001
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
の
自在天
(
じざいてん
)
002
大国別
(
おほくにわけ
)
の
珍
(
うづ
)
の
子
(
こ
)
と
003
生
(
うま
)
れ
出
(
い
)
でたるサガレン
王
(
わう
)
は
004
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
を
後
(
あと
)
にして
005
ペルシヤの
国
(
くに
)
を
横断
(
わうだん
)
し
006
印度
(
インド
)
の
国
(
くに
)
を
遠近
(
をちこち
)
と
007
さまよひ
廻
(
めぐ
)
り
漸
(
やうや
)
くに
008
シロの
島
(
しま
)
へと
安着
(
あんちやく
)
し
009
バラモン
教
(
けう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
010
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
へ
011
漸
(
やうや
)
く
茲
(
ここ
)
に
時
(
とき
)
を
得
(
え
)
て
012
神地
(
かうぢ
)
の
都
(
みやこ
)
のバンガロー
013
青垣山
(
あをがきやま
)
を
三方
(
さんぱう
)
に
014
清
(
きよ
)
くめぐらす
絶頂
(
ぜつちやう
)
の
015
地点
(
ちてん
)
に
館
(
やかた
)
を
立
(
た
)
て
並
(
なら
)
べ
016
シロ
一国
(
いつこく
)
の
主権者
(
しゆけんじや
)
と
017
仰
(
あふ
)
がれここにケールス
姫
(
ひめ
)
を
018
娶
(
めと
)
りて
御代
(
みよ
)
を
治
(
をさ
)
めしが
019
漸次
(
ぜんじ
)
に
悪魔
(
あくま
)
のつけ
狙
(
ねら
)
ふ
020
其
(
その
)
有様
(
ありさま
)
は
味
(
あぢ
)
のよき
021
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
に
虫
(
むし
)
のわく
如
(
ごと
)
く
022
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
醜霊
(
しこみたま
)
023
いろいろさまざま
身
(
み
)
を
変
(
へん
)
じ
024
妖術
(
えうじゆつ
)
使
(
つか
)
ふ
竜雲
(
りううん
)
と
025
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
りてバンガロー
026
神地
(
かうぢ
)
の
館
(
やかた
)
に
侵入
(
しんにふ
)
し
027
あらゆる
手段
(
しゆだん
)
をめぐらして
028
ケールス
姫
(
ひめ
)
の
側
(
そば
)
近
(
ちか
)
く
029
進
(
すす
)
み
寄
(
よ
)
りたる
凄
(
すさま
)
じさ
030
蟻穴
(
ぎけつ
)
は
遂
(
つひ
)
に
堤防
(
ていばう
)
を
031
崩
(
くづ
)
すの
比喩
(
たとへ
)
に
漏
(
も
)
れずして
032
さしもに
固
(
かた
)
き
神館
(
かむやかた
)
033
サガレン
王
(
わう
)
の
居城
(
きよじやう
)
をば
034
苦
(
く
)
もなく
茲
(
ここ
)
に
占領
(
せんりやう
)
し
035
暴威
(
ばうゐ
)
を
揮
(
ふる
)
ふ
憎
(
にく
)
らしさ
036
忠臣
(
ちうしん
)
義士
(
ぎし
)
に
助
(
たす
)
けられ
037
やうやく
危難
(
きなん
)
を
免
(
まぬが
)
れて
038
九五
(
きうご
)
の
位
(
くらゐ
)
に
立
(
た
)
ち
乍
(
なが
)
ら
039
其
(
その
)
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て
逃
(
のが
)
れたる
040
サガレン
王
(
わう
)
は
大野原
(
おほのはら
)
041
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
風
(
かぜ
)
にも
心魂
(
しんこん
)
を
042
痛
(
いた
)
めながらも
河森
(
かうもり
)
の
043
河辺
(
かはべ
)
を
伝
(
つた
)
ひてスタスタと
044
テーリス、エームス
両人
(
りやうにん
)
と
045
セムの
里
(
さと
)
へと
忍
(
しの
)
び
来
(
く
)
る
046
深
(
ふか
)
き
谷間
(
たにま
)
に
霧
(
きり
)
こめて
047
水音
(
みなおと
)
ばかり
淙々
(
そうそう
)
と
048
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
れる
川
(
かは
)
の
辺
(
べ
)
に
049
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
れる
折
(
をり
)
もあれ
050
心
(
こころ
)
汚
(
きたな
)
き
竜雲
(
りううん
)
が
051
差
(
さし
)
まはしたる
目附役
(
めつけやく
)
052
数人
(
すうにん
)
許
(
ばか
)
りの
若者
(
わかもの
)
は
053
一方口
(
いつぱうぐち
)
の
谷路
(
たにみち
)
に
054
霧
(
きり
)
に
紛
(
まぎ
)
れて
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し
055
手具脛
(
てぐすね
)
ひいて
待
(
ま
)
ちゐたり
056
かかる
企
(
たく
)
みのあることは
057
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らぬ
主従
(
しゆじう
)
が
058
声
(
こゑ
)
も
静
(
しづ
)
かに
宣伝歌
(
せんでんか
)
059
歌
(
うた
)
ひながらにシトシトと
060
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
くこそ
危
(
あや
)
ふけれ
061
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
062
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ。
063
テーリスは
路々
(
みちみち
)
歌
(
うた
)
ふ。
064
テーリス
『
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
の
雲
(
くも
)
分
(
わ
)
けて
065
あもりましたる
世
(
よ
)
の
元
(
もと
)
の
066
神
(
かみ
)
の
御祖
(
みおや
)
と
現
(
あ
)
れませる
067
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
の
自在天
(
じざいてん
)
068
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
其
(
その
)
御裔
(
みすゑ
)
069
国別彦
(
くにわけひこ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
070
サガレン
王
(
わう
)
の
吾
(
わが
)
君
(
きみ
)
は
071
神地
(
かうぢ
)
の
都
(
みやこ
)
、バンガロー
072
珍
(
うづ
)
の
館
(
やかた
)
に
現
(
あ
)
れまして
073
天
(
あめ
)
の
下
(
した
)
なる
人草
(
ひとぐさ
)
を
074
恵
(
めぐ
)
み
守
(
まも
)
らせ
玉
(
たま
)
ひつつ
075
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
政事
(
まつりごと
)
076
開
(
ひら
)
かせ
玉
(
たま
)
ふ
折柄
(
をりから
)
に
077
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
紊
(
みだ
)
す
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
078
醜
(
しこ
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
現
(
あら
)
はれて
079
ケールス
姫
(
ひめ
)
を
誑惑
(
きやうわく
)
し
080
遂
(
つひ
)
に
進
(
すす
)
んで
王位
(
わうゐ
)
をば
081
占領
(
せんりやう
)
せむと
村肝
(
むらきも
)
の
082
心
(
こころ
)
を
砕
(
くだ
)
き
朝夕
(
あさゆふ
)
に
083
名利
(
めいり
)
にはやる
曲人
(
まがびと
)
を
084
説
(
と
)
きつ
諭
(
さと
)
しつ
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に
085
同気
(
どうき
)
求
(
もと
)
むる
悪党
(
あくたう
)
の
086
団結
(
だんけつ
)
強
(
つよ
)
くつき
固
(
かた
)
め
087
忠誠
(
ちうせい
)
の
士
(
し
)
を
悉
(
ことごと
)
く
088
無辜
(
むこ
)
の
罪名
(
ざいめい
)
負
(
お
)
はせつつ
089
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
牢獄
(
らうごく
)
に
090
投込
(
なげこ
)
みおきて
竜雲
(
りううん
)
は
091
おのれが
非望
(
ひばう
)
を
達
(
たつ
)
せむと
092
企
(
たく
)
み
居
(
ゐ
)
たりし
恐
(
おそ
)
ろしさ
093
吾
(
われ
)
は
始
(
はじ
)
めて
竜雲
(
りううん
)
が
094
神地
(
かうぢ
)
の
都
(
みやこ
)
に
来
(
きた
)
りしゆ
095
怪
(
あや
)
しき
者
(
もの
)
と
推量
(
すゐりやう
)
し
096
彼
(
かれ
)
が
心
(
こころ
)
を
探
(
さぐ
)
らむと
097
心
(
こころ
)
にもなき
阿諛
(
へつらひ
)
を
098
会
(
あ
)
ふ
度
(
たび
)
毎
(
ごと
)
に
並
(
なら
)
べ
立
(
た
)
て
099
漸
(
やうや
)
く
彼
(
かれ
)
に
見出
(
みいだ
)
され
100
すべての
計画
(
けいくわく
)
一々
(
いちいち
)
に
101
それとはなしにあちこちと
102
探
(
さぐ
)
り
得
(
え
)
たりし
嬉
(
うれ
)
しさよ
103
さはさり
乍
(
なが
)
ら
徒
(
いたづら
)
に
104
あばき
立
(
た
)
てなば
悪神
(
あくがみ
)
の
105
仕組
(
しぐみ
)
の
罠
(
わな
)
に
陥
(
おちい
)
らむ
106
心
(
こころ
)
は
千々
(
ちぢ
)
に
逸
(
はや
)
れども
107
ヂツと
胸
(
むね
)
をば
抑
(
おさ
)
へつつ
108
尚
(
なほ
)
も
進
(
すす
)
みて
竜雲
(
りううん
)
が
109
腹
(
はら
)
を
叩
(
たた
)
けば
案
(
あん
)
の
定
(
ぢやう
)
110
レール、キングス、ベツトする
111
其
(
その
)
謀計
(
ぼうけい
)
はありありと
112
手
(
て
)
に
取
(
と
)
る
如
(
ごと
)
く
見
(
み
)
えにける
113
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
114
大国彦
(
おほくにひこの
)
大御神
(
おほみかみ
)
115
何卒
(
なにとぞ
)
彼
(
かれ
)
が
計略
(
けいりやく
)
を
116
根本
(
こんぽん
)
的
(
てき
)
に
覆
(
くつが
)
やし
117
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
より
曲神
(
まがかみ
)
を
118
改
(
あらた
)
めしめてバラモンの
119
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
降服
(
かうふく
)
し
120
サガレン
王
(
わう
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
121
清
(
きよ
)
き
正
(
ただ
)
しき
真心
(
まごころ
)
を
122
捧
(
ささ
)
げまつりて
誠忠
(
せいちう
)
の
123
臣
(
おみ
)
となさしめ
玉
(
たま
)
へよと
124
祈
(
いの
)
りし
事
(
こと
)
も
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
125
悪心
(
あくしん
)
益々
(
ますます
)
増長
(
ぞうちよう
)
し
126
ケールス
姫
(
ひめ
)
を
踏台
(
ふみだい
)
に
127
種々
(
しゆじゆ
)
の
画策
(
くわくさく
)
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
128
進
(
すす
)
みて
茲
(
ここ
)
にクーデターの
129
大惨劇
(
だいさんげき
)
を
演
(
えん
)
じけり
130
さはさり
乍
(
なが
)
ら
天地
(
あめつち
)
に
131
正
(
ただ
)
しき
神
(
かみ
)
のます
限
(
かぎ
)
り
132
善
(
ぜん
)
を
助
(
たす
)
けて
悪神
(
あくしん
)
を
133
こらさせ
玉
(
たま
)
ふは
目
(
ま
)
のあたり
134
只
(
ただ
)
今日
(
けふ
)
の
身
(
み
)
は
是非
(
ぜひ
)
もなし
135
暫
(
しばら
)
く
姿
(
すがた
)
を
山奥
(
やまおく
)
に
136
隠
(
かく
)
して
時
(
とき
)
を
松風
(
まつかぜ
)
の
137
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
を
吹
(
ふ
)
きて
竜雲
(
たつくも
)
を
138
打
(
う
)
ち
払
(
はら
)
ふべき
神策
(
しんさく
)
を
139
心
(
こころ
)
静
(
しづ
)
かにめぐらせつ
140
捲土
(
けんど
)
重来
(
ぢゆうらい
)
バンガロー
141
再
(
ふたた
)
び
王
(
わう
)
の
都
(
みやこ
)
とし
142
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
二人
(
ふたり
)
が
忠誠
(
ちうせい
)
を
143
現
(
あら
)
はし
君
(
きみ
)
の
御心
(
みこころ
)
を
144
慰
(
なぐさ
)
めまつらむ
今
(
いま
)
暫
(
しば
)
し
145
忍
(
しの
)
ばせ
玉
(
たま
)
へサガレン
王
(
わう
)
146
テーリス、エームス
両人
(
りやうにん
)
が
147
心
(
こころ
)
の
限
(
かぎ
)
り
身
(
み
)
のきはみ
148
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
大秘術
(
だいひじゆつ
)
149
尽
(
つく
)
して
御
(
おん
)
身
(
み
)
を
始
(
はじ
)
めとし
150
之
(
これ
)
の
御国
(
みくに
)
を
泰山
(
たいざん
)
の
151
安
(
やす
)
きに
救
(
すく
)
ひまつるべし
152
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
153
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
154
と
霧込
(
きりこ
)
むる
河森川
(
かうもりがは
)
の
谷道
(
たにみち
)
を
伝
(
つた
)
ひ
伝
(
つた
)
ひて、
155
セムの
里
(
さと
)
を
越
(
こ
)
え、
156
松浦
(
まつうら
)
の
里
(
さと
)
の
小糸
(
こいと
)
の
館
(
やかた
)
を
指
(
さ
)
して、
157
忍
(
しの
)
び
行
(
ゆ
)
かむと
道
(
みち
)
を
急
(
いそ
)
ぎぬ。
158
エームスは
又
(
また
)
歌
(
うた
)
ふ。
159
エームス
『
渺茫
(
べうばう
)
千里
(
せんり
)
の
海原
(
うなばら
)
に
160
浮
(
うか
)
びて
清
(
きよ
)
きシロの
島
(
しま
)
161
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
や
国
(
くに
)
の
君
(
きみ
)
162
二
(
ふた
)
つを
兼
(
か
)
ねて
治
(
しろ
)
しめす
163
国別彦
(
くにわけひこ
)
のサガレン
王
(
わう
)
164
其
(
その
)
仁徳
(
じんとく
)
は
天ケ下
(
あめがした
)
165
四方
(
よも
)
の
草木
(
くさき
)
に
至
(
いた
)
るまで
166
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
を
垂
(
た
)
れ
玉
(
たま
)
ひ
167
君
(
きみ
)
のほまれは
大空
(
おほぞら
)
を
168
輝
(
かがや
)
きわたる
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
か
169
夜
(
よる
)
の
守
(
まも
)
りとあれませる
170
月
(
つき
)
の
如
(
ごと
)
くに
輝
(
かがや
)
きて
171
きらめき
渡
(
わた
)
る
星
(
ほし
)
の
如
(
ごと
)
172
まつろひ
来
(
きた
)
る
神人
(
かみびと
)
も
173
数
(
かず
)
ある
中
(
なか
)
に
黒雲
(
くろくも
)
は
174
忽
(
たちま
)
ち
中空
(
ちうくう
)
に
巻
(
ま
)
き
起
(
おこ
)
り
175
雲入道
(
くもにふだう
)
と
現
(
あら
)
はれし
176
曲
(
まが
)
の
変化
(
へんげ
)
の
竜雲
(
りううん
)
が
177
月日
(
つきひ
)
を
隠
(
かく
)
し
諸星
(
もろぼし
)
の
178
光
(
ひかり
)
を
包
(
つつ
)
みて
此
(
この
)
国
(
くに
)
は
179
暫
(
しば
)
しは
常夜
(
とこよ
)
の
闇
(
やみ
)
となり
180
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
は
閉
(
と
)
ざされて
181
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
や
醜狐
(
しこぎつね
)
182
曲鬼
(
まがおに
)
探女
(
さぐめ
)
醜女
(
しこめ
)
等
(
ら
)
は
183
五月蠅
(
さばへ
)
の
如
(
ごと
)
く
湧
(
わ
)
きみちて
184
黒白
(
あやめ
)
も
分
(
わ
)
かぬ
世
(
よ
)
となりぬ
185
曲
(
まが
)
に
組
(
くみ
)
する
悪神
(
あくがみ
)
の
186
ケリヤ、ハルマを
始
(
はじ
)
めとし
187
ベールやメール、ヨール
迄
(
まで
)
188
名利
(
めいり
)
の
欲
(
よく
)
に
晦
(
くら
)
まされ
189
大恩
(
たいおん
)
深
(
ふか
)
き
吾
(
わが
)
君
(
きみ
)
を
190
見棄
(
みす
)
つるのみか
危害
(
きがい
)
まで
191
加
(
くは
)
へて
一味
(
いちみ
)
の
欲望
(
よくばう
)
を
192
立
(
た
)
てむとしたる
愚
(
おろか
)
さよ
193
御空
(
みそら
)
は
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれて
194
星
(
ほし
)
さへ
見
(
み
)
えぬ
世
(
よ
)
ありとも
195
神
(
かみ
)
の
伊吹
(
いぶき
)
の
神風
(
かみかぜ
)
は
196
何時迄
(
いつまで
)
吹
(
ふ
)
かであるべきぞ
197
天地
(
てんち
)
は
元
(
もと
)
より
活物
(
いきもの
)
と
198
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
聞
(
き
)
くからは
199
又
(
また
)
もや
吹
(
ふ
)
かむ
時津風
(
ときつかぜ
)
200
満天
(
まんてん
)
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
す
如
(
ごと
)
201
包
(
つつ
)
みし
醜
(
しこ
)
の
黒雲
(
くろくも
)
も
202
拭
(
ぬぐ
)
ふが
如
(
ごと
)
く
晴
(
は
)
れわたり
203
光輝
(
くわうき
)
赫々
(
かくかく
)
万物
(
ばんぶつ
)
を
204
伊照
(
いて
)
らし
玉
(
たま
)
ふ
日月
(
じつげつ
)
の
205
光
(
ひかり
)
を
見
(
み
)
むは
目
(
ま
)
のあたり
206
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
よ
大君
(
おほぎみ
)
よ
207
必
(
かなら
)
ず
心
(
こころ
)
を
悩
(
なや
)
まして
208
身
(
み
)
をば
弱
(
よわ
)
らせ
玉
(
たま
)
ふまじ
209
テーリス、エームス
始
(
はじ
)
めとし
210
サール、ウインチ、シルレング
211
ユーズ、アナンやゼム、エール
212
セールの
司
(
つかさ
)
の
真心
(
まごころ
)
は
213
必
(
かなら
)
ず
天
(
てん
)
に
貫徹
(
くわんてつ
)
し
214
誠
(
まこと
)
の
花
(
はな
)
の
咲
(
さ
)
き
出
(
い
)
でて
215
再
(
ふたた
)
び
君
(
きみ
)
の
御
(
ご
)
治世
(
ぢせい
)
の
216
実
(
みの
)
りを
結
(
むす
)
ぶは
惟神
(
かむながら
)
217
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
にましまさむ
218
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
之
(
これ
)
より
大君
(
おほぎみ
)
を
219
松浦
(
まつら
)
の
里
(
さと
)
のバラモンの
220
小糸
(
こいと
)
の
館
(
やかた
)
に
導
(
みちび
)
きて
221
茲
(
ここ
)
に
神示
(
しんじ
)
を
奉戴
(
ほうたい
)
し
222
時節
(
じせつ
)
を
待
(
ま
)
つて
竜雲
(
りううん
)
が
223
醜
(
しこ
)
の
望
(
のぞ
)
みを
根底
(
こんてい
)
より
224
顛覆
(
てんぷく
)
させむ
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
225
神
(
かみ
)
の
御水火
(
みいき
)
に
現
(
あ
)
れませる
226
科戸
(
しなど
)
の
風
(
かぜ
)
の
空
(
そら
)
高
(
たか
)
く
227
吹
(
ふ
)
きすさぶまで
日月
(
じつげつ
)
の
228
再
(
ふたた
)
び
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
現
(
あら
)
はれて
229
悪魔
(
あくま
)
の
頭
(
かしら
)
をてらすまで
230
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
231
神
(
かみ
)
のまにまに
村肝
(
むらきも
)
の
232
心
(
こころ
)
を
洗
(
あら
)
ひ
身
(
み
)
を
清
(
きよ
)
め
233
サガレン
王
(
わう
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
に
234
仮令
(
たとへ
)
生命
(
いのち
)
はすつるとも
235
忠義
(
ちうぎ
)
に
固
(
かた
)
き
武夫
(
もののふ
)
の
236
誠
(
まこと
)
を
徹
(
とほ
)
さでおくべきや
237
赤
(
あか
)
き
心
(
こころ
)
のいつ
迄
(
まで
)
も
238
輝
(
かがや
)
きわたらでおくべきか
239
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
240
大国彦
(
おほくにひこの
)
大神
(
おほかみ
)
の
241
御前
(
みまへ
)
に
慎
(
つつし
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる
242
御前
(
みまへ
)
に
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる』
243
と
声
(
こゑ
)
も
静
(
しづ
)
かに
祈
(
いの
)
りつつ、
244
轟々
(
がうがう
)
たる
激流
(
げきりう
)
の
音
(
おと
)
を
便
(
たよ
)
りに
川辺伝
(
かはべつた
)
ひに
霧
(
きり
)
の
中
(
なか
)
を
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
245
此
(
この
)
谷川
(
たにがは
)
には
常
(
つね
)
に
濃霧
(
のうむ
)
立
(
た
)
ちこめ、
246
数多
(
あまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
、
247
猛獣
(
まうじう
)
などの
好適
(
かうてき
)
の
棲息所
(
せいそくしよ
)
と
自然
(
しぜん
)
になつてゐた。
248
山賊
(
さんぞく
)
などの
白昼
(
はくちう
)
出没
(
しゆつぼつ
)
するも、
249
大部分
(
だいぶぶん
)
此
(
この
)
道筋
(
みちすぢ
)
である。
250
王
(
わう
)
の
一行
(
いつかう
)
は
竜雲
(
りううん
)
の
捕手
(
とりて
)
の
追及
(
つゐきふ
)
を
恐
(
おそ
)
れて、
251
心
(
こころ
)
ならずも
此
(
この
)
難路
(
なんろ
)
を
選
(
えら
)
まれたのである。
252
(
大正一一・九・二二
旧八・二
松村真澄
録)
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