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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
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第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
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天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第44巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 神示の合離
01 笑の恵
〔1170〕
02 月の影
〔1171〕
03 守衛の囁
〔1172〕
04 滝の下
〔1173〕
05 不眠症
〔1174〕
06 山下り
〔1175〕
07 山口の森
〔1176〕
第2篇 月明清楓
08 光と熱
〔1177〕
09 怪光
〔1178〕
10 奇遇
〔1179〕
11 腰ぬけ
〔1180〕
12 大歓喜
〔1181〕
13 山口の別
〔1182〕
14 思ひ出の歌
〔1183〕
第3篇 珍聞万怪
15 変化
〔1184〕
16 怯風
〔1185〕
17 罵狸鬼
〔1186〕
18 一本橋
〔1187〕
19 婆口露
〔1188〕
20 脱線歌
〔1189〕
21 小北山
〔1190〕
余白歌
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> 第1篇 神示の合離 > 第2章 月の影
<<< 笑の恵
(B)
(N)
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第二章
月
(
つき
)
の
影
(
かげ
)
〔一一七一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第44巻 舎身活躍 未の巻
篇:
第1篇 神示の合離
よみ(新仮名遣い):
しんじのごうり
章:
第2章 月の影
よみ(新仮名遣い):
つきのかげ
通し章番号:
1171
口述日:
1922(大正11)年12月07日(旧10月19日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年8月18日
概要:
舞台:
祠の森
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
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:
主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2023-01-15 12:04:56
OBC :
rm4402
愛善世界社版:
19頁
八幡書店版:
第8輯 146頁
修補版:
校定版:
20頁
普及版:
9頁
初版:
ページ備考:
001
治国別
(
はるくにわけ
)
は
万公
(
まんこう
)
、
002
晴公
(
はるこう
)
の
他愛
(
たあい
)
なき
鼾声
(
いびきごゑ
)
を
聞
(
き
)
き
乍
(
なが
)
ら
諸手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
み
差俯向
(
さしうつむ
)
いてしばし
冥想
(
めいさう
)
に
耽
(
ふけ
)
りゐる。
003
そこへ
慌
(
あわ
)
ただしく、
004
息
(
いき
)
を
喘
(
はづ
)
ませ
森
(
もり
)
の
急坂
(
きふはん
)
を
登
(
のぼ
)
り
来
(
き
)
たるものは
五三公
(
いそこう
)
にぞありける。
005
五三公
『もし、
006
先生
(
せんせい
)
、
007
奥
(
おく
)
さまが
見
(
み
)
えました。
008
さア
何卒
(
どうぞ
)
早
(
はや
)
く
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
迄
(
まで
)
お
下
(
くだ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
009
治国別
『
何
(
なに
)
、
010
奥
(
おく
)
が
見
(
み
)
えたとは
何
(
なに
)
しに
来
(
き
)
たのだらう。
011
奥
(
おく
)
に
用
(
よう
)
はない。
012
面会
(
めんくわい
)
は
相叶
(
あひかな
)
はぬから
直
(
すぐ
)
に
引返
(
ひきかへ
)
せと
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れ』
013
と
治国別
(
はるくにわけ
)
は
不興顔
(
ふきようがほ
)
なり。
014
五三公
『
何程
(
なにほど
)
あなたが
権利
(
けんり
)
があると
云
(
い
)
つて、
015
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
の
奥様
(
おくさま
)
に
対
(
たい
)
し、
016
そンな
命令権
(
めいれいけん
)
があるとは
五三公
(
いそこう
)
には
思
(
おも
)
はれませぬワ』
017
治国別
『
何
(
なん
)
だ、
018
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
か、
019
お
前
(
まへ
)
は
奥様
(
おくさま
)
だと
云
(
い
)
ふから
又
(
また
)
菊子姫
(
きくこひめ
)
が
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
うて
来
(
き
)
たのではあるまいか、
020
怪
(
け
)
しからぬ
奴
(
やつ
)
だと
思
(
おも
)
つたからだ』
021
五三公
『
本当
(
ほんたう
)
に
怪
(
け
)
しからぬですな。
022
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
023
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
案
(
あん
)
じ
煩
(
わづら
)
ひ、
024
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
をも
顧
(
かへり
)
みず
此
(
この
)
山坂
(
やまさか
)
を
夜
(
よ
)
を
日
(
ひ
)
に
次
(
つ
)
いでお
尋
(
たづ
)
ね
遊
(
あそ
)
ばされました。
025
それに
同
(
おな
)
じ
宣伝使
(
せんでんし
)
の
奥様
(
おくさま
)
菊子姫
(
きくこひめ
)
様
(
さま
)
こそ、
026
怪
(
け
)
しからぬぢやありませぬか。
027
夫婦
(
ふうふ
)
の
情合
(
じやうあひ
)
と
云
(
い
)
ふものは、
028
そンな
水臭
(
みづくさ
)
いものぢやなからうと
五三公
(
いそこう
)
は
思
(
おも
)
ひますよ』
029
治国別
『アハヽヽヽ
人間
(
にんげん
)
の
心
(
こころ
)
といふものは
一人
(
ひとり
)
一人
(
ひとり
)
違
(
ちが
)
ふものだな。
030
俺
(
わし
)
は
斯
(
か
)
うして
宣伝
(
せんでん
)
しに
出
(
で
)
た
以上
(
いじやう
)
は
女房
(
にようばう
)
も
忘
(
わす
)
れ、
031
家
(
いへ
)
も
忘
(
わす
)
れ、
032
自分
(
じぶん
)
の
生命
(
せいめい
)
までも
忘
(
わす
)
れて
居
(
ゐ
)
るのだよ』
033
五三公
『
何
(
なん
)
とまア、
034
水臭
(
みづくさ
)
い
方
(
かた
)
ですな。
035
菊子姫
(
きくこひめ
)
様
(
さま
)
がお
聞
(
き
)
きになつたら
嘸
(
さぞ
)
失望
(
しつばう
)
落胆
(
らくたん
)
なさるでせう。
036
天
(
てん
)
にも
地
(
ち
)
にも
掛替
(
かけがへ
)
のない
一人
(
ひとり
)
の
夫
(
をつと
)
が
左様
(
さやう
)
の(
浄瑠璃
(
じやうるり
)
)
水臭
(
みづくさ
)
いお
心
(
こころ
)
とは
露
(
つゆ
)
知
(
し
)
らず、
037
都
(
みやこ
)
でお
別
(
わか
)
れ
申
(
まを
)
してより、
038
雨
(
あめ
)
の
晨
(
あした
)
、
039
風
(
かぜ
)
の
夕
(
ゆふべ
)
、
040
片時
(
かたとき
)
たりとも
忘
(
わす
)
れし
暇
(
ひま
)
はなきものを、
041
思
(
おも
)
へば
情
(
つれ
)
なき
貴方
(
あなた
)
の
心
(
こころ
)
、
042
あゝ
何
(
なん
)
としようぞいな
何
(
なん
)
としようぞいなア……とお
嘆
(
なげ
)
き
遊
(
あそ
)
ばすは
石
(
いし
)
の
証文
(
しようもん
)
に
岩
(
いは
)
の
判
(
はん
)
を
押
(
お
)
した
様
(
やう
)
なものですよ。
043
肝腎
(
かんじん
)
の
女房
(
にようばう
)
を
忘
(
わす
)
れるやうな
先生
(
せんせい
)
だから
弟子
(
でし
)
の
私
(
わたし
)
等
(
たち
)
をお
忘
(
わす
)
れになる
位
(
くらゐ
)
は
何
(
なん
)
でもないでせう。
044
一人
(
ひとり
)
途中
(
とちう
)
に
放
(
ほ
)
つとけぼりを
喰
(
くら
)
はされては、
045
それこそ……
本当
(
ほんたう
)
に
つれ
ないわ、
046
本当
(
ほんたう
)
につれないわ』
047
治国別
『アハヽヽヽ、
048
怪体
(
けたい
)
な
男
(
をとこ
)
だな、
049
河鹿
(
かじか
)
峠
(
たうげ
)
の
猿
(
さる
)
の
霊
(
れい
)
が
憑
(
つ
)
いたと
見
(
み
)
えるわい。
050
エーエ、
051
困
(
こま
)
つた
人足
(
にんそく
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
たものだ。
052
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
053
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
のお
帰
(
かへ
)
りの
時
(
とき
)
に
五三公
(
いそこう
)
を
袂
(
たもと
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
れて
這
(
は
)
ひ
出
(
で
)
ぬ
様
(
やう
)
に
袂
(
たもと
)
の
先
(
さき
)
を
蔓
(
つる
)
ででも
括
(
くく
)
つて
帰
(
かへ
)
りて
貰
(
もら
)
ひ
雪隠
(
せんち
)
の
隅
(
すみ
)
にでも
放
(
ほ
)
つといて
貰
(
もら
)
はうかな。
054
アハハヽヽ』
055
万公
(
まんこう
)
、
056
晴公
(
はるこう
)
は
今迄
(
いままで
)
治国別
(
はるくにわけ
)
の
厳
(
きび
)
しき
命令
(
めいれい
)
に
寝
(
ね
)
れぬ
目
(
め
)
を
無理
(
むり
)
に
塞
(
ふさ
)
ぎ、
057
態
(
わざ
)
とに
高鼾
(
たかいびき
)
をかき、
058
寝真似
(
ねまね
)
をしてゐたが、
059
余
(
あま
)
りの
可笑
(
をか
)
しさに
両人
(
りやうにん
)
一度
(
いちど
)
に
吹
(
ふ
)
き
出
(
だ
)
し、
060
両人
『ギヤツハヽヽヽギユツフヽヽヽ』
061
治国別
『
万公
(
まんこう
)
、
062
晴公
(
はるこう
)
、
063
治国別
(
はるくにわけ
)
に
寝
(
ね
)
た
真似
(
まね
)
をして
見
(
み
)
せてゐたのだな、
064
仕方
(
しかた
)
のない
男
(
をとこ
)
ばかりだな』
065
五三公
『
本当
(
ほんたう
)
に
男
(
をとこ
)
ばかりでは
仕方
(
しかた
)
がありませぬ、
066
殺風景
(
さつぷうけい
)
なものですよ。
067
あの
祠
(
ほこら
)
の
近辺
(
きんぺん
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
068
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
今子姫
(
いまこひめ
)
様
(
さま
)
、
069
仲々
(
なかなか
)
仕方
(
しかた
)
がたつぷりありますよ。
070
こりや
万公
(
まんこう
)
、
071
晴公
(
はるこう
)
、
072
いい
加減
(
かげん
)
に
狸
(
たぬき
)
の
代理
(
だいり
)
はよしにして
先生
(
せんせい
)
のお
伴
(
とも
)
に
参
(
まゐ
)
り
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
の
春
(
はる
)
の
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
を
御
(
お
)
相伴
(
しやうばん
)
しようぢやないか。
073
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
をたつてから
異性
(
いせい
)
の
香
(
にほひ
)
を
嗅
(
か
)
いだ
事
(
こと
)
もなく、
074
殺風景
(
さつぷうけい
)
な
場面
(
ばめん
)
ばかり、
075
心
(
こころ
)
も
気
(
き
)
も
荒
(
あ
)
れ
果
(
は
)
てた
処
(
ところ
)
で
春陽
(
しゆんやう
)
の
気
(
き
)
の
漂
(
ただよ
)
ふ
絶世
(
ぜつせい
)
のナイスがやつてきたのだから
何
(
なん
)
とはなしに
上気分
(
じやうきぶん
)
だ。
076
エーン、
077
いい
加減
(
かげん
)
に
森
(
もり
)
を
出立
(
しゆつたつ
)
して
ホコラ
(そこら)あたりを
五三公
(
いそこう
)
と
共
(
とも
)
に
迂路
(
うろ
)
つかうぢやないか』
078
万公
『
万公
(
まんこう
)
さまの
御
(
お
)
耳
(
みみ
)
には、
079
何
(
なん
)
だか
祠
(
ほこら
)
の
近辺
(
きんぺん
)
には
笑声
(
せうせい
)
が
湧
(
わ
)
きたつて
居
(
ゐ
)
るやうに
聞
(
き
)
こへて
堪
(
たま
)
らないがナア』
080
五三公
『それだから
小生
(
せうせい
)
が
人間
(
にんげん
)
の
処世
法
(
しよせいはふ
)
は
笑
(
わら
)
ふに
限
(
かぎ
)
る、
081
笑
(
わら
)
ひは
天国
(
てんごく
)
の
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
く
捷径
(
せふけい
)
だと
云
(
い
)
つてゐるのだよ。
082
さア
先生
(
せんせい
)
、
083
五三公
(
いそこう
)
と
共
(
とも
)
に
参
(
まゐ
)
りませう。
084
貴方
(
あなた
)
も
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
にお
会
(
あ
)
ひになつても、
085
あまり
悪
(
わる
)
い
気
(
き
)
は
致
(
いた
)
しますまいぜ。
086
義理
(
ぎり
)
の
姉
(
ねえ
)
さまぢやありませぬか。
087
やがて
松公
(
まつこう
)
さまも
伊太公
(
いたこう
)
を
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
られませうから
兄弟
(
きやうだい
)
の
対面
(
たいめん
)
も
間近
(
まぢか
)
に
迫
(
せま
)
つたりと
云
(
い
)
ふもの、
088
さア
早
(
はや
)
く
御輿
(
みこし
)
をお
上
(
あ
)
げなさいませ。
089
如何
(
いか
)
に
重々
(
おもおも
)
しいのが
宣伝使
(
せんでんし
)
の
威厳
(
ゐげん
)
だと
云
(
い
)
つても、
090
さう
尻
(
しり
)
が
重
(
おも
)
たくては
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
活動
(
くわつどう
)
は
出来
(
でき
)
ませぬぞや』
091
治国別
『アハヽヽヽそンなら
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
に
擁立
(
ようりつ
)
されて
治国別
(
はるくにわけ
)
も
危険
(
きけん
)
区域
(
くゐき
)
へ
出陣
(
しゆつぢん
)
しようかな』
092
五三公
『(
芝居
(
しばゐ
)
口調
(
くてう
)
)
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
、
093
五三公
(
いそこう
)
身
(
み
)
にとり、
094
光栄
(
くわうえい
)
至極
(
しごく
)
に
存
(
ぞん
)
じます。
095
然
(
しか
)
らば
私
(
わたし
)
が
先登
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つて
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
、
096
あいや、
097
万公
(
まんこう
)
、
098
晴公
(
はるこう
)
は
治国別
(
はるくにわけ
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
前後
(
ぜんご
)
を
守
(
まも
)
り
吾
(
わが
)
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
つて
来
(
こ
)
よ。
099
下
(
した
)
に
下
(
した
)
に
下
(
した
)
に』
100
と
杖
(
つゑ
)
を
以
(
もつ
)
て
四辺
(
あたり
)
を
払
(
はら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
祠
(
ほこら
)
をさして
下
(
くだ
)
り
進
(
すす
)
む。
101
治国別
(
はるくにわけ
)
は
漸
(
やうや
)
く
祠前
(
しぜん
)
に
進
(
すす
)
み、
102
拝礼
(
はいれい
)
終
(
をは
)
つた
後
(
のち
)
、
103
治国別
『
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
、
104
お
塩梅
(
あんばい
)
は
如何
(
いかが
)
でございますか。
105
これはこれは
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
106
ようまアおいで
下
(
くだ
)
さいました。
107
やア
之
(
これ
)
で
私
(
わたし
)
も
一安心
(
ひとあんしん
)
、
108
誠
(
まこと
)
に
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
はお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
で
厶
(
ござ
)
りました』
109
五十子姫
『
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
、
110
夫
(
をつと
)
が
色々
(
いろいろ
)
と
深
(
ふか
)
いお
世話
(
せわ
)
になりましてお
礼
(
れい
)
の
申
(
まを
)
しやうも
厶
(
ござ
)
りませぬ。
111
吾々
(
われわれ
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
改心
(
かいしん
)
のため
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
目
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まさして
下
(
くだ
)
さつたので
厶
(
ござ
)
りませう。
112
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
実
(
じつ
)
に
有難
(
ありがた
)
い
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
頂
(
いただ
)
きました』
113
治国別
『
今子姫
(
いまこひめ
)
様
(
さま
)
、
114
治国別
(
はるくにわけ
)
で
厶
(
ござ
)
りますよ、
115
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
でしたな。
116
嘸
(
さぞ
)
お
疲
(
つか
)
れになつたでせう』
117
五三公
『エヘヽヽヽ
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
ふものは
結構
(
けつこう
)
な
者
(
もの
)
だな。
118
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
に
一寸
(
ちよつと
)
義理
(
ぎり
)
一遍
(
いつぺん
)
の
簡単
(
かんたん
)
な
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
、
119
それから
異性
(
いせい
)
の
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
に
対
(
たい
)
しては
至
(
いた
)
れり
尽
(
つく
)
せりの
親切
(
しんせつ
)
振
(
ぶ
)
り、
120
其
(
その
)
余波
(
よは
)
を
今子姫
(
いまこひめ
)
様
(
さま
)
へタツプリ
浴
(
あび
)
せかけ、
121
いやもう
抜目
(
ぬけめ
)
のない
先生
(
せんせい
)
のやり
方
(
かた
)
、
122
五三公
(
いそこう
)
も
女
(
をんな
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たらモチト
位
(
ぐらゐ
)
やさしい
言葉
(
ことば
)
をかけて
頂
(
いただ
)
くのだけどな。
123
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
と
五三公
(
いそこう
)
との
間違
(
まちが
)
ひで、
124
之
(
これ
)
程
(
ほど
)
社会
(
しやくわい
)
の
待遇
(
たいぐう
)
が
変
(
かは
)
るものかな』
125
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
は
吹
(
ふ
)
き
出
(
い
)
だし、
126
五十子姫
『オホヽヽヽ
何
(
なん
)
と
面白
(
おもしろ
)
い、
127
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
は
同勢
(
どうぜい
)
を
連
(
つ
)
れて
居
(
ゐ
)
なさいますこと、
128
屹度
(
きつと
)
道中
(
だうちう
)
は
弥次
(
やじ
)
喜多
(
きた
)
気分
(
きぶん
)
が
漂
(
ただよ
)
うて
愉快
(
ゆくわい
)
な
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
りませう』
129
治国別
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
為
(
た
)
めに
活動
(
くわつどう
)
する
位
(
くらゐ
)
、
130
楽
(
たの
)
しい
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
りませぬ。
131
就
(
つ
)
いては
此処
(
ここ
)
に
一
(
ひと
)
つ
云
(
い
)
ふに
云
(
い
)
はれぬ
有難
(
ありがた
)
い
事
(
こと
)
が
私
(
わたし
)
の
身
(
み
)
に
突発
(
とつぱつ
)
致
(
いた
)
しました』
132
と
聞
(
き
)
くより
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
は
驚
(
おどろ
)
きの
色
(
いろ
)
をなして、
133
五十子姫
『それは
何
(
なに
)
より
結構
(
けつこう
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
134
さうして、
135
その
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
とは
何
(
なん
)
で
厶
(
ござ
)
りますか、
136
早
(
はや
)
く
聞
(
き
)
かして
下
(
くだ
)
さりませ』
137
治国別
(
はるくにわけ
)
は「ハイ」と
言
(
い
)
つて
首
(
くび
)
を
垂
(
た
)
れてゐる。
138
五三公
『
先生
(
せんせい
)
様
(
さま
)
に
代
(
かは
)
つて
五三公
(
いそこう
)
が
報告
(
はうこく
)
の
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
りませう。
139
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
兄弟
(
きやうだい
)
の
対面
(
たいめん
)
を
成
(
な
)
さいました。
140
それはそれは
立派
(
りつぱ
)
な
弟
(
おとうと
)
さまがお
在
(
あ
)
りなさるのですよ。
141
しかも
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
の
秘書役
(
ひしよやく
)
ですから
随分
(
ずゐぶん
)
立派
(
りつぱ
)
な
方
(
かた
)
ですわ。
142
人品
(
じんぴん
)
骨柄
(
こつがら
)
と
云
(
い
)
ひ、
143
其
(
その
)
容貌
(
ようばう
)
と
云
(
い
)
ひ、
144
先生
(
せんせい
)
様
(
さま
)
と
瓜二
(
うりふた
)
つですもの』
145
五十子姫
『
何
(
なに
)
、
146
御
(
ご
)
兄弟
(
きやうだい
)
に
御
(
ご
)
対面
(
たいめん
)
遊
(
あそ
)
ばしましたと、
147
それはそれはお
目出度
(
めでた
)
い
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
148
然
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らバラモン
教
(
けう
)
の
片彦
(
かたひこ
)
将軍
(
しやうぐん
)
が
秘書役
(
ひしよやく
)
とは
不思議
(
ふしぎ
)
ぢや
厶
(
ござ
)
りませぬか。
149
運命
(
うんめい
)
とか
云
(
い
)
ふ
神
(
かみ
)
の
手
(
て
)
に
人間
(
にんげん
)
は
翻弄
(
ほんろう
)
されて
居
(
を
)
るやうなものですな。
150
如何
(
どう
)
かして
三五教
(
あななひけう
)
に
御
(
ご
)
帰順
(
きじゆん
)
遊
(
あそ
)
ばし
兄弟
(
きやうだい
)
揃
(
そろ
)
うて
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
にお
尽
(
つく
)
し
遊
(
あそ
)
ばすことは
出来
(
でき
)
ぬもので
厶
(
ござ
)
りませうか』
151
と
稍
(
やや
)
心配
(
しんぱい
)
げに
治国別
(
はるくにわけ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
つめる。
152
治国別
『
惟神
(
かむながら
)
の
御
(
ご
)
摂理
(
せつり
)
によつて
都合
(
つがふ
)
よくして
下
(
くだ
)
さるでせう。
153
伊太公
(
いたこう
)
さまの
所在
(
ありか
)
を
尋
(
たづ
)
ねて
参
(
まゐ
)
りましたから、
154
やがて
弟
(
おとうと
)
は
帰順
(
きじゆん
)
の
上
(
うへ
)
、
155
ここへ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
るでせう』
156
五十子姫
『
伊太公
(
いたこう
)
さまは
何処
(
どこ
)
へ
行
(
ゆ
)
きましたか。
157
バラモンの
手
(
て
)
にでも、
158
捕
(
とら
)
はれたのぢや
厶
(
ござ
)
りますまいかな』
159
と
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
の
晴
(
は
)
れぬ
顔色
(
かほいろ
)
を
見
(
み
)
るや
治国別
(
はるくにわけ
)
は、
160
治国別
『ハイ
伊太公
(
いたこう
)
はバラモンの
軍人
(
いくさびと
)
に
捕
(
とら
)
へられ、
161
清春山
(
きよはるやま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
幽閉
(
いうへい
)
されて
居
(
を
)
りますのを
私
(
わたし
)
の
弟
(
おとうと
)
が
改心
(
かいしん
)
帰順
(
きじゆん
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
162
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
へ
御
(
ご
)
奉公
(
ほうこう
)
始
(
はじ
)
めに
伊太公
(
いたこう
)
さまを、
163
とり
返
(
かへ
)
しに
行
(
い
)
つたので
厶
(
ござ
)
ります。
164
伊太公
(
いたこう
)
さまを
首尾
(
しゆび
)
克
(
よ
)
く
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
る
迄
(
まで
)
は
此
(
この
)
治国別
(
はるくにわけ
)
は
兄弟
(
きやうだい
)
の
名乗
(
なの
)
りを
許
(
ゆる
)
さない
覚悟
(
かくご
)
で
厶
(
ござ
)
ります』
165
と
云
(
い
)
ひ
終
(
をは
)
つて
涙
(
なみだ
)
ぐむ。
166
斯
(
か
)
く
話
(
はな
)
す
折
(
をり
)
しも
谷道
(
たにみち
)
の
下方
(
かはう
)
より
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
人声
(
ひとごゑ
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
たる。
167
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
其
(
その
)
人声
(
ひとごゑ
)
に
耳
(
みみ
)
を
聳
(
そばた
)
てバラモン
教
(
けう
)
の
残党
(
ざんたう
)
の
襲来
(
しふらい
)
に
非
(
あら
)
ずやと
胸
(
むね
)
を
躍
(
をど
)
らし
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へ
居
(
ゐ
)
る、
168
斯
(
かか
)
る
処
(
ところ
)
へ
伊太公
(
いたこう
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
れるは
松公
(
まつこう
)
、
169
竜公
(
たつこう
)
外
(
ほか
)
数人
(
すうにん
)
なりける。
170
松公
(
まつこう
)
は
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
合掌
(
がつしやう
)
し
感謝
(
かんしや
)
の
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
終
(
をは
)
つて
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ
恭
(
うやうや
)
しく
礼
(
れい
)
を
施
(
ほどこ
)
し
治国別
(
はるくにわけ
)
の
前
(
まへ
)
へ
進
(
すす
)
み
出
(
い
)
で、
171
松公
『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
172
松公
(
まつこう
)
で
厶
(
ござ
)
ります。
173
お
蔭
(
かげ
)
を
以
(
もつ
)
て
伊太公
(
いたこう
)
様
(
さま
)
を
迎
(
むか
)
へて
参
(
まゐ
)
りました』
174
治国別
『それは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
感謝
(
かんしや
)
する。
175
まづゆるゆると
休息
(
きうそく
)
して
下
(
くだ
)
さい。
176
伊太公
(
いたこう
)
さま、
177
嘸
(
さぞ
)
お
困
(
こま
)
りでしたらう。
178
お
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します』
179
伊太公
(
いたこう
)
は
第一
(
だいいち
)
に
玉国別
(
たまくにわけ
)
に
向
(
むか
)
つて
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
を
終
(
をは
)
り
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
、
180
今子姫
(
いまこひめ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
に
対
(
たい
)
し
感謝
(
かんしや
)
の
涙
(
なみだ
)
を
湛
(
たた
)
へ
無事
(
ぶじ
)
を
祝
(
しゆく
)
し、
181
治国別
(
はるくにわけ
)
に
向
(
むか
)
ひ
容
(
かたち
)
を
改
(
あらた
)
め、
182
伊太公
『
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御恵
(
みめぐみ
)
と
松公
(
まつこう
)
、
183
竜公
(
たつこう
)
さまのお
蔭
(
かげ
)
によりまして
無事
(
ぶじ
)
に
先生
(
せんせい
)
のお
側
(
そば
)
へ
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
ました。
184
有難
(
ありがた
)
く
御
(
おん
)
礼
(
れい
)
を
申
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げます』
185
治国別
『
貴方
(
あなた
)
の
壮健
(
さうけん
)
なお
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
治国別
(
はるくにわけ
)
も
安心
(
あんしん
)
致
(
いた
)
しました。
186
お
蔭
(
かげ
)
で
弟
(
おとうと
)
に
公然
(
こうぜん
)
と
対面
(
たいめん
)
が
出来
(
でき
)
るやうになりました。
187
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』
188
と
合掌
(
がつしやう
)
する。
189
道公
『もし
先生
(
せんせい
)
、
190
道公
(
みちこう
)
の
一行
(
いつかう
)
はもとの
森蔭
(
もりかげ
)
へ
転宅
(
てんたく
)
致
(
いた
)
しませうか。
191
兄弟
(
きやうだい
)
御
(
ご
)
対面
(
たいめん
)
につきまして
何
(
いづ
)
れ
海山
(
うみやま
)
の
話
(
はなし
)
がありませう。
192
貴方
(
あなた
)
が
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
の
時
(
とき
)
も
治国別
(
はるくにわけ
)
様
(
さま
)
は
気
(
き
)
を
利
(
き
)
かしてあの
森蔭
(
もりかげ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さつたのですから、
193
此方
(
こちら
)
も
其
(
その
)
返礼
(
へんれい
)
にしばらく
此
(
この
)
幕
(
まく
)
を
切
(
き
)
り
上
(
あ
)
げようぢやありませぬか。
194
ねえ
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
195
さうでせう』
196
五十子姫
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
197
私
(
わたし
)
が
手
(
て
)
を
曳
(
ひ
)
いて
上
(
あ
)
げますから、
198
あの
森蔭
(
もりかげ
)
迄
(
まで
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
致
(
いた
)
しませう』
199
治国別
『
別
(
べつ
)
に
男
(
をとこ
)
と
男
(
をとこ
)
との
兄弟
(
きやうだい
)
が
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りに
巡
(
めぐ
)
り
合
(
あ
)
うたのですから、
200
又
(
また
)
夫婦
(
ふうふ
)
の
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
とは
模様
(
もやう
)
が
違
(
ちが
)
ひます。
201
何卒
(
なにとぞ
)
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
要
(
い
)
りませぬから、
202
ここに
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいな』
203
玉国別
『
伊太公
(
いたこう
)
お
前
(
まへ
)
は
如何
(
どう
)
だつた。
204
随分
(
ずゐぶん
)
困
(
こま
)
つたらうな。
205
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
かずに
血気
(
けつき
)
の
勇
(
ゆう
)
を
揮
(
ふる
)
つて
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
すものだから
皆
(
みんな
)
のお
方
(
かた
)
に
心配
(
しんぱい
)
をかけたのだよ。
206
これからは
気
(
き
)
をつけて
貰
(
もら
)
はねば
困
(
こま
)
るよ』
207
伊太公
『はい、
208
誠
(
まこと
)
に
申訳
(
まをしわけ
)
も
厶
(
ござ
)
りませぬ。
209
至
(
いた
)
つて
至
(
いた
)
らぬ
伊太公
(
いたこう
)
、
210
此
(
この
)
後
(
ご
)
は
屹度
(
きつと
)
心得
(
こころえ
)
、
211
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
は
今日
(
けふ
)
限
(
かぎ
)
り
鼬
(
いたち
)
の
道切
(
みちぎ
)
れと
いたち
ます』
212
道公
『アハヽヽヽ
何処迄
(
どこまで
)
も
気楽
(
きらく
)
な
男
(
をとこ
)
だなア、
213
道公
(
みちこう
)
の
私
(
わたし
)
もあきれて
了
(
しま
)
ひました。
214
先生
(
せんせい
)
、
215
此奴
(
こいつ
)
はもう
脈上
(
みやくあが
)
りですよ。
216
こんながらがらを
旅
(
たび
)
につれて
歩
(
ある
)
くのは
一
(
ひと
)
つ
考
(
かんが
)
へ
物
(
もの
)
です。
217
奥様
(
おくさま
)
のお
帰
(
かへ
)
りの
時
(
とき
)
に
懐
(
ふところ
)
へでも
入
(
い
)
れて
持
(
も
)
つて
帰
(
かへ
)
つて
頂
(
いただ
)
いたら
如何
(
どう
)
でせう』
218
五十子姫
『
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
だつて、
219
さう
二人
(
ふたり
)
も
軽
(
かる
)
い
男
(
をとこ
)
を
懐
(
ふところ
)
に
入
(
い
)
れて
帰
(
かへ
)
るのは
困
(
こま
)
ります。
220
ねえ
今子
(
いまこ
)
さま』
221
今子姫
『あの
五十子
(
いそこ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
の
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
りますこと、
222
今子
(
いまこ
)
は
歯痒
(
はが
)
ゆくなりましたワ。
223
男
(
をとこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
や
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
髪
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
一筋
(
ひとすぢ
)
あればつないで
帰
(
かへ
)
れるぢやありませぬか。
224
現代
(
げんだい
)
の
男
(
をとこ
)
はまるで
屁
(
へ
)
の
様
(
やう
)
なものですからな。
225
ホヽヽヽヽ』
226
伊太公
『
此奴
(
こいつ
)
あ
怪
(
け
)
しからぬ。
227
斯
(
か
)
う
女
(
をんな
)
に
侮辱
(
ぶじよく
)
されては
伊太公
(
いたこう
)
も
男子
(
だんし
)
を
廃業
(
はいげふ
)
したくなつて
来
(
き
)
たわい』
228
治国別
(
はるくにわけ
)
は
言葉
(
ことば
)
を
改
(
あらた
)
めて、
229
治国別
『
今日
(
けふ
)
より
松公
(
まつこう
)
は
治国別
(
はるくにわけ
)
の
弟
(
おとうと
)
、
230
竜公
(
たつこう
)
さまは
義理
(
ぎり
)
の
弟
(
おとうと
)
、
231
何卒
(
どうぞ
)
皆
(
みな
)
さまと
一緒
(
いつしよ
)
に
仲良
(
なかよ
)
うして
神業
(
しんげふ
)
に
尽
(
つく
)
して
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
い』
232
松
(
まつ
)
、
233
竜
(
たつ
)
両人
(
りやうにん
)
はハツとばかりに
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
び
頭
(
かしら
)
も
得上
(
えあ
)
げず
大地
(
だいち
)
に
踞
(
しやが
)
みて
俯向
(
うつむ
)
き
居
(
ゐ
)
る。
234
治国別
『
皆
(
みな
)
さまに
御免
(
ごめん
)
を
蒙
(
かうむ
)
つて
治国別
(
はるくにわけ
)
が
其方
(
そなた
)
と
別
(
わか
)
れし
後
(
のち
)
のアーメニヤの
状況
(
じやうきやう
)
を
詳
(
くは
)
しく
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れないか。
235
さうして
其方
(
そなた
)
は
如何
(
どう
)
云
(
い
)
ふ
手続
(
てつづ
)
きでバラモン
教
(
けう
)
に
這入
(
はい
)
つたのか。
236
その
動機
(
どうき
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
い』
237
松公
『
兄上
(
あにうへ
)
様
(
さま
)
がアーメニヤの
神都
(
しんと
)
より
宣伝使
(
せんでんし
)
となつて
竜宮
(
りうぐう
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
へ
渡
(
わた
)
られた
後
(
のち
)
、
238
バラモン
教
(
けう
)
の
一派
(
いつぱ
)
に
襲
(
おそ
)
はれ
刹帝利
(
せつていり
)
、
239
浄行
(
じやうぎやう
)
を
始
(
はじ
)
め
毘舎
(
びしや
)
、
240
首陀
(
しゆだ
)
の
四族
(
しぞく
)
は
四方
(
しはう
)
に
散乱
(
さんらん
)
し
目
(
め
)
も
当
(
あ
)
てられぬ
大惨事
(
だいさんじ
)
が
突発
(
とつぱつ
)
しました。
241
大宜津
(
おほげつ
)
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
がコーカス
山
(
ざん
)
から
敗亡
(
はいばう
)
の
体
(
てい
)
で
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
こ
)
られてから
間
(
ま
)
もない
疲弊
(
ひへい
)
の
瘡
(
きず
)
の
癒
(
い
)
え
切
(
き
)
らない
所
(
ところ
)
だから、
242
忽
(
たちま
)
ち
神都
(
しんと
)
は
防禦力
(
ばうぎよりよく
)
を
失
(
うしな
)
ひ
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
へウラル
彦
(
ひこ
)
、
243
ウラル
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
一族
(
いちぞく
)
は
其
(
その
)
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
し
玉
(
たま
)
ひ
諸司
(
しよし
)
百官
(
ひやくくわん
)
庶民
(
しよみん
)
の
住宅
(
ぢうたく
)
は
焼
(
や
)
き
亡
(
ほろ
)
ぼされ、
244
ウラル
河
(
がは
)
の
辺
(
ほと
)
りに
武士
(
ぶし
)
の
館
(
やかた
)
が
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
残
(
のこ
)
されたのみ。
245
離々
(
りり
)
たる
原上
(
げんじやう
)
の
草
(
くさ
)
、
246
累々
(
るゐるゐ
)
たる
白骨
(
はくこつ
)
叢
(
くさむら
)
に
纒
(
まと
)
はれて、
247
ありし
昔
(
むかし
)
の
都
(
みやこ
)
の
俤
(
おもかげ
)
も
見
(
み
)
えず
蓮府
(
れんぷ
)
槐門
(
くわいもん
)
の
貴勝
(
きしよう
)
を
初
(
はじ
)
め
毘舎
(
びしや
)
の
族
(
ぞく
)
に
至
(
いた
)
るまでウラル
河
(
がは
)
に
身
(
み
)
を
投
(
とう
)
じて
水屑
(
みくづ
)
となつたものも
沢山
(
たくさん
)
にあり、
248
中
(
なか
)
には
遠国
(
ゑんごく
)
に
落
(
お
)
ち
延
(
の
)
び
田夫野人
(
でんぷやじん
)
の
賤
(
いや
)
しきに
身
(
み
)
を
寄
(
よ
)
せ
或
(
あるひ
)
は
山奥
(
やまおく
)
の
片田舎
(
かたいなか
)
に
忍
(
しの
)
び
隠
(
かく
)
れて
桑門
(
さうもん
)
竹扉
(
ちくひ
)
に
詫住居
(
わびずまゐ
)
する
貴勝
(
きしよう
)
の
身
(
み
)
の
果敢
(
はか
)
なさ。
249
夜
(
よる
)
の
衣
(
ころも
)
は
薄
(
うす
)
くして
暁
(
あかつき
)
の
霜
(
しも
)
冷
(
つめ
)
たく
朝餉
(
あさげ
)
の
煙
(
けぶり
)
も
絶
(
た
)
えて
首陽
(
しゆやう
)
に
死
(
し
)
する
人
(
ひと
)
も
少
(
すくな
)
からず。
250
その
中
(
なか
)
にも
私
(
わたし
)
は
父母
(
ふぼ
)
兄弟
(
きやうだい
)
に
生別
(
いきわか
)
れ、
251
死別
(
しにわか
)
れの
憂目
(
うきめ
)
に
会
(
あ
)
ひ、
252
広
(
ひろ
)
い
天下
(
てんか
)
を
当所
(
あてど
)
もなく
漂流
(
へうりう
)
する
内
(
うち
)
バラモン
教
(
けう
)
の
片彦
(
かたひこ
)
に
見出
(
みいだ
)
され、
253
心
(
こころ
)
ならずも
兄
(
にい
)
様
(
さま
)
の
所在
(
ありか
)
を
探
(
さぐ
)
るを
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
目的
(
もくてき
)
として
今日
(
けふ
)
まで
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
つて
参
(
まゐ
)
りました。
254
アヽ
有難
(
ありがた
)
き
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
引合
(
ひきあは
)
せ、
255
コンナ
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
は
厶
(
ござ
)
りませぬ』
256
と
袖
(
そで
)
に
涙
(
なみだ
)
を
搾
(
しぼ
)
る。
257
一同
(
いちどう
)
は
松公
(
まつこう
)
の
物語
(
ものがたり
)
を
聞
(
き
)
き
感
(
かん
)
に
打
(
う
)
たれてすすり
泣
(
な
)
きするものさへありき。
258
夜
(
よ
)
は
段々
(
だんだん
)
と
更
(
ふ
)
け
渡
(
わた
)
り、
259
月
(
つき
)
は
黒雲
(
こくうん
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
260
忽
(
たちま
)
ち
四面
(
しめん
)
暗黒
(
あんこく
)
の
帳
(
とばり
)
は
深
(
ふか
)
く
下
(
お
)
ろされぬ。
261
山猿
(
やまざる
)
の
叫
(
さけ
)
ぶ
声
(
こゑ
)
、
262
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
の
谷間
(
たにま
)
より
消魂
(
けたたま
)
しく
響
(
ひび
)
き
来
(
きた
)
る。
263
(
大正一一・一二・七
旧一〇・一九
北村隆光
録)
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