霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。実験用サイトサブスク
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第一八章 一本橋(いつぽんばし)〔一一八七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第44巻 舎身活躍 未の巻 篇:第3篇 珍聞万怪 よみ(新仮名遣い):ちんぶんばんかい
章:第18章 一本橋 よみ(新仮名遣い):いっぽんばし 通し章番号:1187
口述日:1922(大正11)年12月09日(旧10月21日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年8月18日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
松彦一行は宣伝歌を歌いながら進んで行く。ここには河鹿川の下流があり、ライオン川に注いでいるという。かなり広い川に天然の川中の石を土台として一本橋が架けられている。橋を渡ってくる老女と少女があった。
万公が二人に声をかけると、老女はバラモン軍が村にやってきて村人を徴収するので皆逃げてしまい、橋を渡って小北山の神様の館に隠れていたのだという。そこが手狭になって断られたので、親子でここまで帰ってきたのだという。
婆が言うには、小北山の神様にも十曜の紋がついていて、国治立命様を祀っているのだという。松彦は、そこへよって様子を見たいといい、一行四人も賛成した。
かく小北山の様子について話していると、婆はアク、テク、タクの三人は先日、村へきて女を徴収していったバラモン軍の者だと気が付き、ものすごい権幕で怒鳴りつけて睨みつけた。
松彦がこの三人はもう改心したのだとなだめたが、婆はどうしても三人に土下座して詫びをさせねば済まぬと怒りが収まらない。アク、タク、テクの三人は逃げ出したが、アクは足をすべらせて川に落ち込んでしまった。
お寅というこの婆さんは、万公の首筋をぐっと引いた。娘の少女お菊も万公の足をさらえて、川端に倒してしまった。万公は助けを求めたが、他の者はみな、アクを助けようと駆け出している。
アクは下流に流れ着いて、何事もなく着物を絞っている。松彦たちが、万公がいないのに気が付いて振り向くと、万公は婆と少女に押さえられて責められている。
お寅婆さんによると万公は、お菊の姉のお里と無理矢理くっついて一年ばかり暮らしていたのだが、お里が難産で死んでしまった。するとこの万公は薄情にも逃げ出したのだという。
お寅とお菊は、娘の仇、姉の仇だと万公を打っている。松彦と五三公になだめられ、また万公は注意を受けて、ようやくお寅とお菊は万公を離した。万公は捨て台詞を残して逃げて行く。
お寅は追いかけようとするが、五三公になだめられる。お寅は、憎いやつではあるがたとえ一年でも娘の夫になっていた男だから、なんとか懲らして一人前の男にしてやりたい一心で手荒いことをしたのだ、と明かした。
五三公は親の恩に感心し、一本橋を渡って一行とともに小北山の霊場に急いた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2023-02-16 19:03:19 OBC :rm4418
愛善世界社版:241頁 八幡書店版:第8輯 224頁 修補版: 校定版:253頁 普及版:106頁 初版: ページ備考:
001 松彦(まつひこ)一行(いつかう)野中(のなか)(もり)(あと)にして、002宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら浮木(うきき)(はら)をさして(すす)()く。003此処(ここ)には河鹿川(かじかがは)下流(かりう)(よこ)たはつて()る。004()(かは)は、005ライオン(がは)(そそ)ぐと(つた)へられて()る。
006 ()なり(ひろ)(かは)に、007天然(てんねん)(かは)(なか)(いは)土台(どだい)として、008一本橋(いつぽんばし)()けられてある。009(はし)(わた)つて(かへ)つて()二人(ふたり)(をんな)があつた。010一人(ひとり)中年増(ちうどしま)011一人(ひとり)十五六(じふごろく)(さい)少女(せうぢよ)である。012一行(いつかう)(ろく)(にん)(はし)()めに()つて(きよ)らかな激流(げきりう)(なが)めて(いき)(やす)めて()た。013万公(まんこう)二人(ふたり)(をんな)(むか)ひ、
014万公随分(ずゐぶん)015(はげ)しい(なが)れだが、016こンな一本橋(いつぽんばし)(をんな)()としてよく(わた)れたものだなア、017一体(いつたい)(まへ)さまは、018何処(どこ)から()たのだイ』
019女(お寅)『ハイ(わたくし)浮木(うきき)(さと)(もの)(ござ)いますが、020(この)(あひだ)から沢山(たくさん)軍人(ぐんじん)(わたし)(むら)陣取(ぢんど)り、021(をんな)()(をんな)軒別(けんべつ)徴集(ちようしふ)して炊事(すゐじ)をさせたり、022いろいろと(はづかしめ)たりするので、023(たれ)(かれ)(みな)()げて仕舞(しま)ひました。024(わたし)(ばば)(こと)なり、025相手(あひて)にはして()れませなンだが、026段々(だんだん)(をんな)()るにつけ、027(ばば)でも少女(こども)でも(かま)はぬ、028(をんな)でさへあれば引張(ひつぱ)つて(かへ)りますので(わが)(むら)()()し、029(この)(はし)(わた)つて小北山(こぎたやま)(かみ)(さま)のお(やかた)()(かく)して()りましたが、030あまり沢山(たくさん)(をんな)()(ところ)もなく(ことわ)られて、031親子(おやこ)二人(ふたり)此処(ここ)(まで)(かへ)つて()たので(ござ)います』
032 アクは言葉(ことば)せはしく、
033アク『ウン、034(をんな)(ばか)りが小北山(こぎたやま)(かく)れて()るとは一体(いつたい)幾十(いくじふ)(にん)(ほど)()るのだい』
035女(お寅)『ハイ、036一寸(ちよつと)(ひやく)(にん)(ばか)(あつ)まつて()りますが、037(わたし)(あと)から()つたものですから、038部屋(へや)()部屋(へや)酢司詰(すしづめ)有様(ありさま)軒下(のきした)にも()(ところ)がないので(ござ)ります。039それ(ゆゑ)(かへ)つて(まゐ)りました。040(この)(さき)()うしたらよからうかと思案(しあん)()れて()ます。041貴方(あなた)(かさ)には十曜(とえう)(もん)がついて()ますが、042不思議(ふしぎ)(こと)には小北山(こぎたやま)(かみ)(さま)にも十曜(とえう)(もん)がつけてありました』
043アク『さうして(なん)といふ(かみ)(さま)(まつ)つてあるのだ』
044女(お寅)『ハイ国治立(くにはるたちの)(みこと)(さま)とか(うけたま)はりました』
045アク『ハテ国治立(くにはるたちの)(みこと)(さま)(まつ)つてあるとは合点(がてん)()かぬ。046三五教(あななひけう)一派(いつぱ)ではあるまいかなア』
047女(お寅)(なん)だか()りませぬが、048小北山(こぎたやま)(かみ)(さま)()うて(まゐ)つて()ります。049一寸(ちよつと)(そと)からは(わか)りませぬが、050あれ御覧(ごらん)なさい、051(ほそ)(けぶり)()(のぼ)つて()りませう、052あすこが(かみ)(さま)(まつ)つてある(ところ)です。053そして(もん)もあり、054沢山(たくさん)(かみ)(さま)(まつ)つてあつて一々(いちいち)()(おぼ)えて()ませぬが(なん)でも六ケ敷(むつかしき)()のついた(かみ)(さま)(ばか)りで(ござ)います』
055アク松彦(まつひこ)さま、056(この)(ばあ)さまの(はなし)耳寄(みみよ)りぢやありませぬか。057国治立(くにはるたちの)(かみ)(さま)(まつ)つてあると()十曜(とえう)(もん)がついて()ると()つたでせう。058ひよつとしたら治国別(はるくにわけ)先生(せんせい)が、059其処(そこ)()かれたのではありますまいかな』
060松彦『さうでもあるまいが、061松彦(まつひこ)もその小北山(こぎたやま)とやらへ一寸(ちよつと)立寄(たちよ)つて様子(やうす)(かんが)へて見度(みた)いものだなア』
062アク『そンならお(とも)(いた)しませうか。063オイ、064五三(いそ)さま、065万公(まんこう)さま、066タク、067テク、068(まへ)()賛成(さんせい)だらうなア』
069 ()(にん)一度(いちど)に「賛成(さんせい)々々(さんせい)」とばつ(あは)した。
070アク『ヤア小生(せうせい)提案(ていあん)満場(まんぢやう)一致(いつち)賛成(さんせい)(くだ)さいまして、071アクの()()()(がた)(ござ)います』
072松彦『ハヽヽヽヽ、073アクさま、074この二人(ふたり)(をんな)見殺(みごろし)にする(つも)りかな、075(なん)とかして()れて()つてやらねば、076可愛(かあい)さうぢやないか。077(ひやく)(にん)()(ところ)二人(ふたり)(くらゐ)融通(ゆうづう)のつかぬ(はず)はあるまい。078(この)()さまは(なに)(まん)びきでもやつたのぢやあるまいかな』
079アク『さうだなア、080やりよつたのだらう。081随分(ずゐぶん)手癖(てくせ)(わる)(やつ)が、082(をんな)(なか)にもあるからなア』
083女(お寅)『これこれあなた(がた)084(わたし)手癖(てくせ)(わる)いと仰有(おつしや)つたが、085さうどんどんと仰有(おつしや)るからには(なん)証拠(しようこ)がありますかな、086サアそれを()かして(もら)はう、087こンな(こと)()いては、088何程(なにほど)(をんな)だと()うて()()てになりませぬ、089盗人(ぬすびと)()をきせられて、090先祖(せんぞ)(たい)して申訳(まをしわけ)がありますか、091(むすめ)にだつて(あは)(かほ)がない。092(なに)証拠(しようこ)にそンな(こと)仰有(おつしや)いますか』
093(まゆ)逆立(さかだ)て、094(にら)みつける。
095アク『ヤアこいつは失敗(しくじ)つた、096まことに粗疎(そさう)千万(せんばん)アク(げん)申上(まをしあ)げました。097つい(くち)(すべ)りましてなア』
098女(お寅)(くち)(すべ)つたの、099(あし)(すべ)つたのと、100そンな(こと)()(わけ)()ちますか。101(わたし)()せた()(ぎぬ)をサアどうして(かわ)かして(くだ)さる。102(まへ)さまも世界(せかい)(ひと)(みちび)いて(ある)くお(かた)だと()えるが、103そンな(こと)でどうして(かみ)(さま)御用(ごよう)出来(でき)ますか』
104アク『イヤ(まこと)閉口(へいこう)頓首(とんしゆ)だ、105アクの身魂(みたま)はやられた(わい)
106万公『オイ、107アクさま、108(ざま)()ろ、109(あま)言霊(ことたま)使(つか)()ぎると、110(しち)(しやく)以上(いじやう)(をとこ)(をんな)屁古(へこ)まされるやうな(こと)(おこ)るのだよ。111アハヽヽヽ(まん)(わる)代物(しろもの)だなア』
112女(お寅)『さうするとお(まへ)はアクと()ふのかい、113道理(だうり)万引(まんびき)(やう)(つら)をして(ござ)るわい。114オヽ(おそ)ろしい(おそ)ろしい、115こンな(ところ)追剥(おひはぎ)せられては大変(たいへん)だ、116サア(きく)117長居(ながゐ)(おそ)れ、118(はや)(かへ)りませう』
119お菊『お(かあ)さま、120浮木(うきき)(さと)(かへ)ればバラモンの軍人(ぐんじん)追剥(おひはぎ)をされたり、121念仏講(ねんぶつかう)()はされたりしては(たま)りませぬから、122一層(いつそう)此処(ここ)()()げて()にませうか。123小北山(こぎたやま)()つても(はふ)()される、124ここへ()れば追剥(おひはぎ)にせられる。125(いへ)(かへ)れば軍人(ぐんじん)(さいな)まれる、126()うする(こと)出来(でき)ぬぢやありませぬか』
127五三公『これこれ母子(おやこ)()両人(りやうにん)さま、128(わたし)五三公(いそこう)(まを)すもの、129(けつ)して盗人(どろぼう)ぢやありませぬ。130三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)のお(とも)だ。131(けつ)して(ひと)(なや)めたり、132追剥(おひはぎ)なンどはして()れと()はれても(いた)しませぬから安心(あんしん)して(くだ)さい。133大切(たいせつ)(いのち)をこンな(ところ)(はた)すとは(わる)了見(れうけん)だ。134()(みじか)いにも(ほど)がある。135これお(きく)さま、136この叔父(おぢ)さまはそンな(こは)(もの)ぢやない、137まア安心(あんしん)してお()れ』
138お菊『イエイエお(まへ)さまは泥棒(どろばう)だよ。139そこに(ござ)(さん)(にん)のお(かた)は、140(この)(あひだ)(わたし)(むら)()()て「(をんな)徴集(ちようしふ)だ」と()つて、141()(さら)ひに()たお(かた)ぢや。142(かほ)見覚(みおぼえ)があります。143そんな(こと)仰有(おつしや)つても(わたし)承知(しようち)出来(でき)ませぬよ。144なアお(かあ)さま、145さうでせう』
146母(お寅)()(ほど)147そこの(さん)(にん)(をとこ)(うち)へもやつてきた(をとこ)だ。148(となり)のお(かめ)(さら)へよつたのはそこの(さん)(にん)だ。149バラモン(けう)目付(めつ)けだと()つて威張(ゐば)りよつた。150こら(さん)(にん)(やつ)151(この)(ばば)はかう()えても浮木(うきき)(はら)のお(とら)()つて(わか)(とき)には賭場(とば)開張(かいちやう)して()つた白浪(しらなみ)(をんな)だ。152もはや(むすめ)(いのち)()てると覚悟(かくご)した以上(いじやう)は、153このお(とら)足手(あして)(まと)ひがなくて(ちから)(いつ)ぱい活動(くわつどう)出来(でき)る。154サア小童(こわつぱ)(ども)このお(とら)(かは)()()ンで(むら)(ひと)(あだ)()つてやらう。155サアどうぢや』
156()釣上(つりあ)げ、157(えら)剣幕(けんまく)()めつけた。158アク、159タク、160テクの(さん)(にん)はお寅婆(とらばば)(いきほひ)辟易(へきえき)し、161(あと)ずさりして(あたま)()いて()る。
162万公『ハヽヽヽヽ、163オイ、164アク、165貴様(きさま)()(さん)(にん)(えら)さうに()つて()るが随分(ずゐぶん)(わる)(こと)をしよつたなア、166年貢(ねんぐ)(をさ)(どき)だ。167(ひと)()アサンとこの激流(げきりう)()()まれて()よ、168(おれ)(なん)なら()アさまの助太刀(すけだち)をせぬ(こと)もないワ、169万公(まんこう)末代(まつだい)(ぜん)(かがみ)だから』
170アク『これこれお(ばあ)さま、171さう(おこ)つて()れては(こま)る、172アクの(おれ)役目(やくめ)()むを()女徴集(をんなちようしふ)()たのだ。173役目(やくめ)だと(おも)うてまア見直(みなほ)して()れ』
174お寅(なん)()つてもお寅婆(とらばば)死物狂(しにものぐる)ひ、175(ゆる)すものかい。176これや万公(まんこう)とやら貴様(きさま)同類(どうるゐ)であらう。177これお(きく)178(まへ)()ぬと覚悟(かくご)()めた(うへ)一人(ひとり)()ぬのも勿体(もつたい)ない。179これ()(ろく)(にん)(のこ)らず(かは)()()ンで、180大活動(だいくわつどう)をし、181天晴(あつぱ)勇者(ゆうしや)となつて、182冥途(めいど)()つた(とき)(その)勇名(ゆうめい)(ほこ)らうぢやないか』
183お菊『お(かあ)さまそンなら(ひと)(わたし)死物狂(しにものぐるひ)活動(くわつどう)(いた)しませう。184仮令(たとへ)一人(ひとり)でも道連(みちづれ)にしてやらねば(はら)()へませぬからなア』
185 松彦(まつひこ)(はじ)めて(くち)(ひら)き、
186松彦『もしもし、187(とら)さま、188(きく)さま、189()づお(しづ)まりなさい、190(けつ)して吾々(われわれ)悪人(あくにん)ではありませぬよ。191バラモン(けう)(なか)にもたまには善人(ぜんにん)(まじ)つて()りますからなア。192(この)(さん)(にん)()(ほど)女徴集(をんなちようしふ)()つたのは事実(じじつ)でせう。193(しか)今日(こんにち)最早(もはや)改心(かいしん)をして三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)のお(とも)して(ある)いて()るのだから、194どうぞ(ゆる)してやつて(くだ)さい』
195お寅『お(まへ)さまは一寸(ちよつと)(かしこ)さうな(かほ)をして()るだけに一寸(ちよつと)(わか)つた(こと)仰有(おつしや)る。196(ゆる)(がた)餓鬼(がき)なれども、197今日(けふ)見逃(みのが)しておきませう。198そのかはり(さん)(にん)餓鬼(がき)に「どうも(わる)かつた」と犬蹲(いぬつくば)ひになつてお(わび)をさせにや承知(しようち)しませぬよ。199(いのち)だけは(たす)けてやります』
200万公『オイ、201アク、202テク、203タク(さん)(にん)薩張(さつぱり)顔色(がんしよく)()しだナ、204(をんな)一人(ひとり)二人(ふたり)にこみわられて(ふる)つて()るやうな(こと)で、205どうして(をとこ)(かほ)()つか。206(これ)(おも)へば(わる)(こと)出来(でき)ぬものぢやなア。207万公(まんこう)末代(まつだい)(まん)(ねん)(はぢ)だよ。208アハヽヽヽ』
209アク(なに)(おれ)(この)(ばあ)さまにあやまりの(すぢ)がないのだ。210(ばあ)さまや(むすめ)(からだ)指一本(ゆびいつぽん)さへたのでもない、211(となり)(うち)まで()つたのみだ。212オイ(ばあ)さま、213(となり)(うち)敵打(かたきうち)だなンて(ふる)いぢやないか。214(まへ)随分(ずゐぶん)(あたま)(ふる)いなア』
215お寅『エヽつべこべと(いま)(やつ)青表紙(あをべうし)蟹文字(かにもじ)(かぢ)つてけつかるから、216そンな小理屈(こりくつ)(ぬか)すのぢや、217強太(しぶと)(いた)して謝罪(あやま)らぬなら謝罪(あやま)らないでもよい。218此方(こちら)にも覚悟(かくご)があるのだから』
219アク『ハヽヽヽヽ剛情(がうじやう)(ばば)だな、220江戸(えど)(かたき)長崎(ながさき)()たうとして()る。221オイ、222(おれ)(たち)(さん)(にん)はこの一本橋(いつぽんばし)(むか)ふへ(わた)つて、223(ばば)()ぬやうに、224この(はし)(おと)してやらうぢやないか、225タク、226テク、227サア()い』
228(しり)()(まく)一本橋(いつぽんばし)無性(むしやう)矢鱈(やたら)(わた)らむとし(あわて)てアクは(うづ)まく激流(げきりう)にドブンと()()ンだ。229タク、230テクの両人(りやうにん)(から)うじて(むか)ふへ(わた)る。231(とら)とお(きく)両手(りやうて)()げて、232ウワイ ウワイとぞめいて()る。
233 松彦(まつひこ)(おどろ)き、
234松彦『オイ、235万公(まんこう)236五三公(いそこう)237これやかうしては()られない。238(ばあ)さまも(ばあ)さまだがアクを(たす)けてやらねばなるまい、239サア(わた)らう』
240()ひながら松彦(まつひこ)(さき)()つて一本橋(いつぽんばし)(わた)(はじ)める。241(つづ)いて五三公(いそこう)(わた)()した。242万公(まんこう)は、
243万公『アクを(たす)けるとは(めう)だなア、244(おれ)だつたら(ぜん)(たす)けるがなア』
245とほざいて()る。246(あと)からお(とら)万公(まんこう)首筋(くびすぢ)をグツと()き、247(きく)(あし)(さら)へ、248ドスンと河端(かはばた)(たふ)して仕舞(しま)つた。
249万公『バヽヽヽ()さま、250ナヽヽ(なに)をするのだ。251(おれ)はスヽヽ(すこ)しもシヽヽ()らぬぢやないか』
252お寅()つても()らぬでもよいわ。253貴様(きさま)(かたき)片割(かたわ)れだから親子(おやこ)()つて(たか)つて(いのち)()つてやるのだ』
254 万公(まんこう)吃驚(びつくり)して、
255万公『オイ松彦(まつひこ)さま、256五三公(いそこう)さま、257人殺(ひとごろし)だ、258(たす)けて()れ』
259(こゑ)(かぎ)りに(さけ)()る。260激流(げきりう)(おと)(さへぎ)られて(むか)(ぎし)には(きこ)えなかつた。261()(にん)はアクを(たす)けむと右往(うわう)左往(さわう)周章(うろた)(まは)つて()る。262アクはどうしたものか二三町(にさんちやう)下手(しもて)(きし)(やうや)(およ)ぎつき、263真裸体(まつぱだか)となつて()れた着物(きもの)圧搾(あつさく)(はじ)めた。
264松彦『アーもう大丈夫(だいぢやうぶ)だ、265矢張(やつぱり)アクは(えら)(やつ)だ。266松彦(まつひこ)感心(かんしん)した。267悪運(あくうん)(つよ)いとは(この)(こと)であらう、268ハヽヽヽヽ』
269五三公『もし松彦(まつひこ)さま、270万公(まんこう)()らぬぢやありませぬか』
271松彦(なに)272五三公(いそこう)273万公(まんこう)()らぬか』
274()ひながら(むか)ふの(きし)()ると、275二人(ふたり)(をんな)(おさ)へられ藻掻(もが)いて()る。
276 松彦(まつひこ)(ことば)せはしく、
277松彦『オイ、278タク、279テクの両人(りやうにん)はアクの(はう)()つて世話(せわ)をしてやつて()れ、280五三公(いそこう)()苦労(くらう)ぢやが一本橋(いつぽんばし)(わた)つて万公(まんこう)(たす)けて()い』
281五三公『ヘイ承知(しようち)(いた)しました、282(しか)貴方(あなた)はどうなさるお(つも)りです』
283松彦(わたし)宣伝使(せんでんし)代理(だいり)だから()中央(ちうあう)()()めて両軍(りやうぐん)戦闘振(せんとうぶり)講評(かうひやう)する(つも)りだ、284サア(はや)くゆかないか』
285五三公『エヽ仕方(しかた)がない』
286五三公(いそこう)一本橋(いつぽんばし)(また)もや(わた)り、
287五三公『これやツ!!』
288呶鳴(どな)りつけるを、289(とら)にお(きく)平気(へいき)なもので、
290お寅『これお(まへ)さま(なに)邪魔(じやま)をするのだイ。291(むか)ふに先生(せんせい)()つて(ござ)るぢやないか、292とつととあちらに()かつしやれ。293此奴(こいつ)万公(まんこう)()つてな、294(わたし)(むすめ)をチヨロマカした(やつ)だよ。295(きく)(あね)のお(さと)野良(のら)()つた(ところ)()(ぶせ)して野倒(のだふ)しをやり、296たうとう夫婦(ふうふ)気取(きど)りで、297(いち)(ねん)(ばか)りも(わたし)(うち)(くら)して()つた(やつ)ぢや。298(さと)悪縁(あくえん)(はら)(ふく)れ、299(その)ために難産(なんざん)をした揚句(あげく)()ンで仕舞(しま)ひよつた。300さうするとこの薄情(はくじやう)(をとこ)()後足(あとあし)(すな)をかけて()げてしまひよつたのだ。301どこへ()つたかと(さが)して()たが、302天命(てんめい)(のが)れず此処(ここ)(めぐ)()つたのだ、303(むすめ)(かたき)だ、304どうしても(ころ)さねや承知(しようち)しないのだ。305()(わる)いと(おも)うて万公(まんこう)(やつ)()らぬ(かほ)して()るが、306そンな(こと)(わか)らぬ()さまぢやない。307(むすめ)(かたき)この鉄拳(てつけん)でも(くら)へ』
308(にぎ)(こぶし)をふり()げてコンコンと(たた)く。
309万公『アイタヽヽヽ万々々(まんまんまん)どうぞ勘弁(こら)へてお()れ』
310お菊(ねえ)さまの(かたき)承知(しようち)しないぞ』
311(また)(こぶし)(かた)めてコンコンと()つ。
312万公『オイ五三公(いそこう)(やつ)313(たす)けて()れないか。314(わたし)(さん)(にん)四人(よつたり)(をんな)(よわ)るやうな(をとこ)ぢやないが、315(とら)()アさまは柔道(じうだう)百段(ひやくだん)だから、316グツと(つか)まれたら、317どうする(こと)出来(でき)ないのだ』
318お寅『オホヽヽヽ、319これ五三公(いそこう)とやらこの(ばば)指一本(ゆびいつぽん)でもこの(からだ)にさへたら承知(しようち)せぬぞ』
320五三公『これや五三公(いそこう)()()しやうがないわい、321滅多(めつた)(いのち)()るやうな(こと)もあるまいから、322(せい)()して(たた)いて(もら)へ。323なアお(ばあ)さま()うぞ()つく、324(やはら)かう(たの)みますよ』
325お菊『お(かあ)さま、326こンな腰抜(こしぬ)(をとこ)(たた)いても仕方(しかた)がない。327もう勘忍(かんにん)してやりませうか。328それよりも浮木(うきき)(はら)(かへ)り、329ランチ将軍(しやうぐん)陣営(ぢんえい)()()み、330()つて()つて()(じに)をした(はう)死甲斐(しにがひ)があるかも()れませぬぜ』
331お寅『さうだ、332こンな蠅虫(はへむし)二匹(にひき)三匹(さんびき)相手(あひて)にしたつて仕方(しかた)がない、333(ゆる)してやらう。334命冥加(いのちみやうが)(やつ)だ。335今後(こんご)はきつと(つつし)め、336万公(まんこう)()
337万公『ハイ(つつし)みます』
338お寅(わたし)()(こと)何時(いつ)(まで)(おぼ)えて()つて、339あの先生(せんせい)()(こと)()()いて善心(ぜんしん)()(かへ)るのだよ。340サア三千(さんぜん)世界(せかい)(はな)()ひ、341何処(いづこ)へなりと万公(まんこう)勝手(かつて)()け』
342(つか)むで()()をパツと(はな)した。343万公(まんこう)はムクムクと()(あが)り、
344万公(ばあ)さま(おほ)きにお世話(せわ)になりました。345(かげ)(かた)()りが(なほ)りました』
346捨台詞(すてぜりふ)(のこ)して()げて()く。
347お寅仕方(しかた)のない(をとこ)だな。348彼奴(あいつ)はまだ、349どせう(ぼね)土性骨(なほ)つて()ないと()える。350(あと)より()つついて、351(ひと)折檻(せつかん)してやらう、352サアお(きく)
353一本橋(いつぽんばし)(わた)らうとする。354五三公(いそこう)両手(りやうて)(ひろ)げ、
355五三公『お(ばあ)さま、356まあまあ()つて(くだ)さい、357(わたし)がとつくと()うて()かしますから、358もうこれ()(ゆる)してやつて(くだ)さい。359貴女(あなた)一旦(いつたん)(ゆる)すと仰有(おつしや)つたのだから、360もう、361これ()(ゆる)して(くだ)さい。362さう執念深(しふねんぶか)追駆(おつかけ)ないでもよいぢやありませぬか』
363お寅(にく)(やつ)ではあるけれど、364たとへ(いち)(ねん)でも可愛(かあい)(むすめ)可愛(かあい)がつて()(をとこ)だから、365十分(じふぶん)()うて()かして(こら)してやり、366一人前(いちにんまへ)(をとこ)にしてやりたい(ばか)りに、367かうして母子(おやこ)手荒(てあら)(こと)をしたのだ。368万公(まんこう)打擲(ちやうちやく)したのは矢張(やつぱり)可愛(かあい)いからだよ。369(なに)しに(にく)うて(あたま)(ひと)つも(たた)かれやうぞ』
370()ひながら(なみだ)(そで)(ぬぐ)ふ。371(きく)(かほ)(かく)(なみだ)をそつと()いて()る。
372五三公『アヽ(おや)(おん)()ふものは()(がた)いものぢやなア。373(ばあ)さま左様(さやう)なら』
374()()て、375五三公(いそこう)(また)もや一本橋(いつぽんばし)(あわただ)しく(わた)つて仕舞(しま)ひ、376小北(こぎた)霊場(れいぢやう)へと(いそ)ぎける。
377大正一一・一二・九 旧一〇・二一 加藤明子録)
378(昭和九・一二・二九 於湯ケ島 王仁校正)
目で読むのに疲れたら耳で聴こう!霊界物語の朗読ユーチューブ
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→  
霊界物語ネットは飯塚弘明が運営しています。【メールアドレス】 / 動作に不具合や誤字脱字等を発見されましたら是非お知らせ下さるようお願い申し上げます。 / 本サイトに掲載されている霊界物語等の著作物の電子データは飯塚弘明ほか、多数の方々の協力によって作られました。(スペシャルサンクス) / 本サイトの著作権(デザイン、プログラム、凡例等)は飯塚弘明にあります。出口王仁三郎の著作物(霊界物語等)の著作権は保護期間が過ぎていますのでご自由にお使いいただいて構いません。ただし一部分を引用するのではなく、本サイト掲載の大部分を利用して電子書籍等に転用する場合には、必ず出典と連絡先を記して下さい。→「本サイト掲載文献の利用について」 / 出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別的と見なされる言葉や表現もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。 / プライバシーポリシー
(C) 2007-2024 Iizuka Hiroaki