松彦一行は宣伝歌を歌いながら進んで行く。ここには河鹿川の下流があり、ライオン川に注いでいるという。かなり広い川に天然の川中の石を土台として一本橋が架けられている。橋を渡ってくる老女と少女があった。
万公が二人に声をかけると、老女はバラモン軍が村にやってきて村人を徴収するので皆逃げてしまい、橋を渡って小北山の神様の館に隠れていたのだという。そこが手狭になって断られたので、親子でここまで帰ってきたのだという。
婆が言うには、小北山の神様にも十曜の紋がついていて、国治立命様を祀っているのだという。松彦は、そこへよって様子を見たいといい、一行四人も賛成した。
かく小北山の様子について話していると、婆はアク、テク、タクの三人は先日、村へきて女を徴収していったバラモン軍の者だと気が付き、ものすごい権幕で怒鳴りつけて睨みつけた。
松彦がこの三人はもう改心したのだとなだめたが、婆はどうしても三人に土下座して詫びをさせねば済まぬと怒りが収まらない。アク、タク、テクの三人は逃げ出したが、アクは足をすべらせて川に落ち込んでしまった。
お寅というこの婆さんは、万公の首筋をぐっと引いた。娘の少女お菊も万公の足をさらえて、川端に倒してしまった。万公は助けを求めたが、他の者はみな、アクを助けようと駆け出している。
アクは下流に流れ着いて、何事もなく着物を絞っている。松彦たちが、万公がいないのに気が付いて振り向くと、万公は婆と少女に押さえられて責められている。
お寅婆さんによると万公は、お菊の姉のお里と無理矢理くっついて一年ばかり暮らしていたのだが、お里が難産で死んでしまった。するとこの万公は薄情にも逃げ出したのだという。
お寅とお菊は、娘の仇、姉の仇だと万公を打っている。松彦と五三公になだめられ、また万公は注意を受けて、ようやくお寅とお菊は万公を離した。万公は捨て台詞を残して逃げて行く。
お寅は追いかけようとするが、五三公になだめられる。お寅は、憎いやつではあるがたとえ一年でも娘の夫になっていた男だから、なんとか懲らして一人前の男にしてやりたい一心で手荒いことをしたのだ、と明かした。
五三公は親の恩に感心し、一本橋を渡って一行とともに小北山の霊場に急いた。