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霊界物語
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第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
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第19巻(午の巻)
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第21巻(申の巻)
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第23巻(戌の巻)
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海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
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第33巻(申の巻)
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第41巻(辰の巻)
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第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第81巻(申の巻)
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第63巻(寅の巻)
序歌
総説
第1篇 妙法山月
01 玉の露
〔1608〕
02 妙法山
〔1609〕
03 伊猛彦
〔1610〕
04 山上訓
〔1611〕
05 宿縁
〔1612〕
06 テルの里
〔1613〕
第2篇 日天子山
07 湖上の影
〔1614〕
08 怪物
〔1615〕
09 超死線
〔1616〕
第3篇 幽迷怪道
10 鷺と鴉
〔1617〕
11 怪道
〔1618〕
12 五託宣
〔1619〕
13 蚊燻
〔1620〕
14 嬉し涙
〔1621〕
第4篇 四鳥の別
15 波の上
〔1622〕
16 諒解
〔1623〕
17 峠の涙
〔1624〕
18 夜の旅
〔1625〕
第5篇 神検霊査
19 仕込杖
〔1626〕
20 道の苦
〔1627〕
21 神判
〔1628〕
22 蚯蚓の声
〔1629〕
余白歌
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> 第1篇 妙法山月 > 第2章 妙法山
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第二章
妙法
(
スダルマ
)
山
(
さん
)
〔一六〇九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻
篇:
第1篇 妙法山月
よみ(新仮名遣い):
すだるまさんげつ
章:
第2章 妙法山
よみ(新仮名遣い):
すだるまさん
通し章番号:
1609
口述日:
1923(大正12)年05月18日(旧04月3日)
口述場所:
教主殿
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1926(大正15)年2月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
スダルマ山の山道の入り口で、木こりのカークス、ベースが世相についてしきりに語り合っていた。そこへ玉国別宣伝使一行がやってきた。
伊太彦は二人からスーラヤ山のウバナンダ竜王の珍宝の話を聞いて、玉国別に自分に竜王への宣教と玉取りをやらせてほしいと頼み込んだ。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-06-03 16:31:46
OBC :
rm6302
愛善世界社版:
17頁
八幡書店版:
第11輯 268頁
修補版:
校定版:
18頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
夏樹
(
なつき
)
生
(
おひ
)
茂
(
しげ
)
り
緑
(
みどり
)
したたるスダルマ
山
(
さん
)
の
山道
(
やまみち
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
002
甲
(
かふ
)
乙
(
おつ
)
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
が
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ちかけて、
003
杣
(
そま
)
の
手
(
て
)
を
休
(
やす
)
めて
雑談
(
ざつだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐた。
004
甲
(
かふ
)
『オイ
兄貴
(
あにき
)
、
005
吾々
(
われわれ
)
もせめて
人並
(
ひとなみ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
が
為
(
し
)
たいものだなア。
006
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
山
(
やま
)
深
(
ふか
)
く
分
(
わ
)
け
入
(
い
)
つて、
007
杣
(
そま
)
ばかりやつて
居
(
を
)
つても
汗
(
あせ
)
を
搾
(
しぼ
)
る
許
(
ばか
)
りで
008
何時
(
いつ
)
も
金槌
(
かなづち
)
の
川
(
かは
)
流
(
なが
)
れ
同様
(
どうやう
)
、
009
天窓
(
あたま
)
の
上
(
あが
)
りやうが
無
(
な
)
いぢや
無
(
な
)
いか。
010
今日
(
こんにち
)
の
人間
(
にんげん
)
は
文化
(
ぶんくわ
)
生活
(
せいくわつ
)
を
以
(
もつ
)
て
最上
(
さいじやう
)
の
処世法
(
しよせいはふ
)
としてゐるが、
011
吾々
(
われわれ
)
も
自然
(
しぜん
)
とやらを
征服
(
せいふく
)
する
文化
(
ぶんくわ
)
生活
(
せいくわつ
)
に
入
(
い
)
つて
012
安楽
(
あんらく
)
な
生涯
(
しやうがい
)
を
送
(
おく
)
りたいものだなア』
013
乙
(
おつ
)
『
吾々
(
われわれ
)
は
文化
(
ぶんくわ
)
生活
(
せいくわつ
)
といふものを
転用
(
てんよう
)
して
人格
(
じんかく
)
問題
(
もんだい
)
に
当
(
あ
)
てたいと
思
(
おも
)
ふのだ。
014
バラモン
教徒
(
けうと
)
は
煩悩
(
ぼんなう
)
即
(
そく
)
菩提
(
ぼだい
)
だなどと
気楽
(
きらく
)
さうな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
つてゐるが、
015
夫
(
それ
)
は
悟道
(
ごだう
)
の
境地
(
きやうち
)
に
立
(
たち
)
至
(
いた
)
つた
上根
(
じやうこん
)
の
人間
(
にんげん
)
の
言
(
い
)
ふことで
016
普通
(
ふつう
)
の
人間
(
にんげん
)
はソンナ
軽々
(
かるがる
)
しい
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬ。
017
迚
(
とて
)
も
人格
(
じんかく
)
を
磨
(
みが
)
いて
向上
(
かうじやう
)
する
事
(
こと
)
は
不可能事
(
ふかのうじ
)
だよ。
018
絶
(
た
)
えず
内観
(
ないくわん
)
自省
(
じせい
)
して、
019
肉的
(
にくてき
)
本能
(
ほんのう
)
を
征服
(
せいふく
)
しておかねばならない。
020
霊体
(
れいたい
)
共
(
とも
)
に
自然
(
しぜん
)
であることは
無論
(
むろん
)
だが
021
この
両者
(
りやうしや
)
を
並行
(
へいかう
)
さす
事
(
こと
)
は
困難
(
こんなん
)
だ。
022
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
聖言
(
せいげん
)
には、
023
「
体欲
(
たいよく
)
に
富
(
と
)
める
者
(
もの
)
は
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
に
入
(
い
)
ること
難
(
かた
)
し。
024
富貴
(
ふうき
)
の
人
(
ひと
)
の
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
に
入
(
い
)
るよりは
025
蛤
(
はまぐり
)
を
以
(
もつ
)
て
大海
(
だいかい
)
を
替
(
か
)
へ
干
(
ほ
)
す
方
(
はう
)
却
(
かへつ
)
て
易
(
やす
)
かるべし。
026
人
(
ひと
)
は
二人
(
ふたり
)
の
主人
(
しゆじん
)
に
仕
(
つか
)
ふること
能
(
あた
)
はず、
027
故
(
ゆゑ
)
に
人
(
ひと
)
も
028
神
(
かみ
)
と
体欲
(
たいよく
)
とに
兼
(
かね
)
仕
(
つか
)
ふることを
得
(
え
)
ず」と
教
(
をし
)
へられてある。
029
実
(
じつ
)
に
深遠
(
しんゑん
)
なる
教訓
(
けうくん
)
ではあるまいかなア』
030
甲
(
かふ
)
『
神
(
かみ
)
さまもチト
判
(
わか
)
らぬぢや
無
(
な
)
いかエーン。
031
よく
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ。
032
吾々
(
われわれ
)
の
様
(
やう
)
な
貧乏人
(
びんばふにん
)
は
033
聖典
(
せいてん
)
を
研究
(
けんきう
)
いな
研究
(
けんきう
)
と
言
(
い
)
つては
勿体
(
もつたい
)
ないかも
知
(
し
)
らぬ、
034
拝誦
(
はいしよう
)
して
心魂
(
しんこん
)
を
磨
(
みが
)
く
余裕
(
よゆう
)
がないが、
035
富者
(
ふうしや
)
となれば
日々
(
にちにち
)
遊
(
あそ
)
んで
暮
(
くら
)
す
暇
(
ひま
)
が
在
(
あ
)
るのだから、
036
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
に
聖典
(
せいてん
)
を
拝誦
(
はいしよう
)
したり、
037
又
(
また
)
その
密意
(
みつい
)
を
極
(
きは
)
め
得
(
う
)
るの
便宜
(
べんぎ
)
があるから、
038
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
に
入
(
い
)
るものは、
039
富者
(
ふうしや
)
であることは
当然
(
たうぜん
)
の
帰結
(
きけつ
)
ではないか』
040
乙
(
おつ
)
『ソウ
言
(
い
)
へばさうだが
041
人間
(
にんげん
)
と
言
(
い
)
ふものは
吾々
(
われわれ
)
の
考
(
かんが
)
へ
通
(
どほ
)
りにゆくものではない。
042
得意
(
とくい
)
時代
(
じだい
)
の
人間
(
にんげん
)
は
到底
(
たうてい
)
そんな
殊勝
(
しゆしよう
)
な
考
(
かんが
)
への
浮
(
うか
)
ぶものでは
無
(
な
)
いよ。
043
「
家
(
いへ
)
貧
(
まづ
)
しうして
親
(
おや
)
を
思
(
おも
)
ふ」とか
謂
(
ゐ
)
つて、
044
吾々
(
われわれ
)
の
様
(
やう
)
なものこそ、
045
精神
(
せいしん
)
上
(
じやう
)
の
慰安
(
ゐあん
)
を
求
(
もと
)
め、
046
向上
(
かうじやう
)
もし
047
神
(
かみ
)
に
縋
(
すが
)
らむとするものだが、
048
容易
(
ようい
)
に
得意
(
とくい
)
時代
(
じだい
)
には
貧乏人
(
びんばふにん
)
の
吾々
(
われわれ
)
だとて、
049
そんな
好
(
よ
)
い
考
(
かんが
)
へは
起
(
おこ
)
るものではないよ。
050
勿論
(
もちろん
)
瑞
(
みづ
)
の
御魂
(
みたま
)
様
(
さま
)
だとて、
051
絶対
(
ぜつたい
)
的
(
てき
)
に
富
(
とみ
)
そのものを
無視
(
むし
)
された
訳
(
わけ
)
では
無
(
な
)
からうが、
052
斯
(
こ
)
んな
教訓
(
けうくん
)
を
与
(
あた
)
へなくては
成
(
な
)
らない
所以
(
ゆゑん
)
は、
053
人間
(
にんげん
)
の
弱点
(
じやくてん
)
といふものは
凡
(
すべ
)
て
物質
(
ぶつしつ
)
の
奴隷
(
どれい
)
となり
易
(
やす
)
いからだ。
054
同
(
おな
)
じ
富
(
とみ
)
を
求
(
もと
)
むるにしても、
055
我欲心
(
がよくしん
)
を
満足
(
まんぞく
)
さすために
求
(
もと
)
むるものと、
056
神
(
かみ
)
の
大道
(
だいだう
)
を
行
(
おこな
)
はむがために
行
(
おこな
)
ふものとは、
057
其
(
その
)
内容
(
ないよう
)
に
於
(
おい
)
ても
058
その
精神
(
せいしん
)
に
於
(
おい
)
ても、
059
天地
(
てんち
)
霄壤
(
せうじやう
)
の
相違
(
さうゐ
)
があるだらう。
060
苟
(
いやし
)
くも
人間
(
にんげん
)
としての
生活
(
せいくわつ
)
に、
061
物質
(
ぶつしつ
)
が
不必用
(
ふひつよう
)
なる
道理
(
だうり
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
にない。
062
何処
(
どこ
)
までも
経済
(
けいざい
)
観念
(
くわんねん
)
を
放擲
(
はうてき
)
することは
所詮
(
しよせん
)
不可能
(
ふかのう
)
だ。
063
然
(
しか
)
るに
凡
(
すべ
)
ての
神教
(
しんけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が、
064
口
(
くち
)
を
揃
(
そろ
)
へて
禁欲
(
きんよく
)
主義
(
しゆぎ
)
や
寡欲
(
くわよく
)
主義
(
しゆぎ
)
を
高潮
(
かうてう
)
して
居
(
を
)
る
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
ると、
065
其処
(
そこ
)
に
何
(
なん
)
等
(
ら
)
かの
深意
(
しんい
)
を
発見
(
はつけん
)
せなくてはなるまいと
思
(
おも
)
ふのだ』
066
甲
(
かふ
)
『
君
(
きみ
)
の
説
(
せつ
)
にも
一理
(
いちり
)
あるやうだ。
067
然
(
しか
)
し
吾々
(
われわれ
)
は
何
(
なん
)
とか
努力
(
どりよく
)
して
人並
(
ひとな
)
みの
生活
(
せいくわつ
)
だけは
為
(
せ
)
なくてはならないが、
068
「
倉廩
(
さうりん
)
充
(
み
)
ちて
礼節
(
れいせつ
)
を
知
(
し
)
り、
069
衣食
(
いしよく
)
足
(
た
)
りて
道
(
みち
)
を
歩
(
あゆ
)
む」とか
言
(
い
)
ふから、
070
肉的
(
にくてき
)
生活
(
せいくわつ
)
のみでは
071
肉体
(
にくたい
)
を
具
(
そな
)
へた
人間
(
にんげん
)
としては
実
(
じつ
)
に
腑甲斐
(
ふがひ
)
ない
話
(
はなし
)
だ。
072
吾
(
われ
)
に「
先
(
ま
)
づパンを
与
(
あた
)
へよ、
073
然
(
しか
)
して
後
(
のち
)
に
大道
(
だいだう
)
を
歩
(
あゆ
)
まむ」だからなア』
074
乙
(
おつ
)
『「
人
(
ひと
)
はパンのみにて
生
(
い
)
くるものではないと
共
(
とも
)
に
075
霊
(
れい
)
のみにて
生
(
い
)
くるものにあらず」と
吾々
(
われわれ
)
も
言
(
い
)
ひたくなつて
来
(
く
)
るのだ。
076
併
(
しか
)
しそこは
人間
(
にんげん
)
としての
自覚
(
じかく
)
が
必要
(
ひつえう
)
だ』
077
甲
(
かふ
)
『
自覚
(
じかく
)
も
必要
(
ひつえう
)
だが、
078
現代
(
げんだい
)
の
人間
(
にんげん
)
の
自覚
(
じかく
)
なるものは
079
果
(
はた
)
して
人並
(
ひとなみ
)
以上
(
いじやう
)
に
立脚
(
りつきやく
)
して
居
(
ゐ
)
るだらうか。
080
霊的
(
れいてき
)
自覚
(
じかく
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
るだらうか。
081
それが
僕
(
ぼく
)
には
杞憂
(
きいう
)
されて
成
(
な
)
らないのだ。
082
今日
(
こんにち
)
の
人間
(
にんげん
)
の
唱
(
とな
)
ふる
自覚
(
じかく
)
といふ
奴
(
やつ
)
は
083
月並式
(
つきなみしき
)
の
自覚
(
じかく
)
様
(
さま
)
だからなア』
084
乙
(
おつ
)
『
君
(
きみ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り
有名
(
いうめい
)
無実
(
むじつ
)
の
自覚
(
じかく
)
、
085
月並
(
つきなみ
)
の
自覚
(
じかく
)
だとすれば、
086
忽
(
たちま
)
ち
自覚
(
じかく
)
と
自覚
(
じかく
)
とが
互
(
たがひ
)
に
相
(
あひ
)
衝突
(
しようとつ
)
を
来
(
きた
)
して、
087
平和
(
へいわ
)
を
攪乱
(
かくらん
)
することになるだらう。
088
現代
(
げんだい
)
のやうに
各方面
(
かくはうめん
)
に
始終
(
しじう
)
闘争
(
とうさう
)
の
絶
(
た
)
え
間
(
ま
)
がないのは
089
自覚
(
じかく
)
の
不徹底
(
ふてつてい
)
といふことに
帰因
(
きいん
)
してゐるのだらう。
090
併
(
しか
)
し
凡
(
すべ
)
ての
物
(
もの
)
には
順序
(
じゆんじよ
)
があり
091
階段
(
かいだん
)
があるからして、
092
自覚
(
じかく
)
の
当初
(
たうしよ
)
は
何
(
いづ
)
れにしても
093
幾何
(
いくばく
)
かの
動揺
(
どうえう
)
と
闘争
(
とうさう
)
とは
免
(
まぬが
)
れないと
云
(
い
)
ふ
点
(
てん
)
もあるだらう』
094
甲
(
かふ
)
『さうだから
僕
(
ぼく
)
は
現代
(
げんだい
)
の
自覚
(
じかく
)
様
(
さま
)
には
物足
(
ものた
)
らなくて
拝跪
(
はいき
)
渇仰
(
かつがう
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないのだ。
095
人格
(
じんかく
)
の
平等
(
べうどう
)
だとか
個性
(
こせい
)
の
尊重
(
そんちよう
)
だとか
096
八釜敷
(
やかまし
)
く
騒
(
さわ
)
ぎ
廻
(
まは
)
る
割合
(
わりあひ
)
に、
097
事実
(
じじつ
)
としての
態度
(
たいど
)
が
実際
(
じつさい
)
に
醜
(
みにく
)
うて
鼻持
(
はなもち
)
がならないのだ。
098
然
(
しか
)
し
中
(
なか
)
には
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
位
(
ぐらゐ
)
は
099
立派
(
りつぱ
)
な
態度
(
たいど
)
の
人間
(
にんげん
)
もあるだらうが、
100
概括
(
がいくわつ
)
して
見
(
み
)
ると、
101
賛成
(
さんせい
)
の
出来
(
でき
)
ない
人間
(
にんげん
)
ばかりだからなア』
102
乙
(
おつ
)
『ウンそれもソウだねー。
103
現代人
(
げんだいじん
)
の
唱
(
とな
)
ふる
人格
(
じんかく
)
の
平等
(
べうどう
)
と
言
(
い
)
ふものは、
104
実
(
じつ
)
に
怪
(
あや
)
しいものだ。
105
僕
(
ぼく
)
もその
事
(
こと
)
は
克
(
よ
)
く
認
(
みと
)
めてゐる
一
(
いち
)
人
(
にん
)
だ。
106
人格
(
じんかく
)
の
平等
(
べうどう
)
と
言
(
い
)
へば
107
高位
(
かうゐ
)
の
人間
(
にんげん
)
を
低
(
ひく
)
い
所
(
ところ
)
へ
引
(
ひき
)
下
(
お
)
ろして、
108
「お
前
(
まへ
)
と
俺
(
おれ
)
とが
同格
(
どうかく
)
だ、
109
同
(
おな
)
じ
神
(
かみ
)
の
分霊
(
ぶんれい
)
だ
分身
(
ぶんしん
)
だ」と
言
(
い
)
つたり、
110
甚
(
はなは
)
だしいのは、
111
上流者
(
じやうりうしや
)
や
官吏
(
くわんり
)
の
前
(
まへ
)
に
尻
(
しり
)
を
捲
(
まく
)
つて、
112
威張
(
ゐば
)
ることだと
考
(
かんが
)
へたりする
奴
(
やつ
)
が
多
(
おほ
)
いのだ。
113
その
癖
(
くせ
)
に
自分
(
じぶん
)
より
下位
(
した
)
の
人間
(
にんげん
)
から
夫
(
そ
)
れと
同
(
おな
)
じ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
をしられると、
114
「
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にするな
115
侮辱
(
ぶじよく
)
を
加
(
くは
)
へた」と
言
(
い
)
つて
立腹
(
りつぷく
)
する
奴
(
やつ
)
ばかりだ。
116
自由
(
じいう
)
と
言
(
い
)
へば
厭
(
いや
)
な
夫
(
をつと
)
を
振
(
ふり
)
捨
(
す
)
てて
好
(
す
)
きな
男
(
をとこ
)
と
出奔
(
しゆつぽん
)
したり
117
法律
(
はふりつ
)
も
道徳
(
だうとく
)
も
義理
(
ぎり
)
も
人情
(
にんじやう
)
も
踏
(
ふみ
)
蹂
(
にじ
)
ることだと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
る
奴
(
やつ
)
ばかりだ。
118
而
(
しか
)
も
夫
(
そ
)
れほど
自由
(
じいう
)
を
要求
(
えうきう
)
したり
又
(
また
)
主張
(
しゆちやう
)
したりするのなら、
119
他人
(
たにん
)
に
対
(
たい
)
した
場合
(
ばあひ
)
でも
自由
(
じいう
)
を
与
(
あた
)
へるかと
言
(
い
)
ふと、
120
事実
(
じじつ
)
は
全然
(
ぜんぜん
)
その
反対
(
はんたい
)
のことを
行
(
や
)
るもの
許
(
ばか
)
りだ。
121
アナーキズムを
叫
(
さけ
)
ぶ
位
(
くらゐ
)
なら、
122
自分
(
じぶん
)
の
家
(
いへ
)
に
泥坊
(
どろばう
)
が
這入
(
はい
)
つても
歓待
(
くわんたい
)
して
行
(
や
)
りさうなものだのに、
123
真先
(
まつさき
)
に
警察署
(
けいさつしよ
)
に
訴
(
うつた
)
へに
行
(
ゆ
)
く
奴
(
やつ
)
許
(
ばか
)
りだ。
124
「
経済
(
けいざい
)
組織
(
そしき
)
は、
125
コンミュニズムに
為
(
せ
)
なくては
可
(
い
)
けない」と
言
(
い
)
つて、
126
八釜
(
やかま
)
しく
主張
(
しゆちやう
)
して
居
(
ゐ
)
るから、
127
「それなら
先
(
ま
)
づ
君
(
きみ
)
の
財産
(
ざいさん
)
から
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
せ」と
言
(
い
)
ふと、
128
『それは
真平
(
まつぴら
)
御免
(
ごめん
)
』と
言
(
い
)
ふやうな
面付
(
つらつ
)
きで
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をして、
129
他人
(
たにん
)
に
出
(
だ
)
させて
共産
(
きやうさん
)
にしようと
言
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
計
(
ばか
)
りだ。
130
ある
二人
(
ふたり
)
の
青年
(
せいねん
)
ソシアリズム
崇拝者
(
すうはいしや
)
が
131
鶏肉
(
けいにく
)
のすき
焼
(
やき
)
を
食
(
く
)
ひにいつて
其
(
その
)
割前
(
わりまへ
)
を
支払
(
しはら
)
ふ
時
(
とき
)
に
132
相手
(
あひて
)
の
一人
(
ひとり
)
が「
金
(
かね
)
が
足
(
た
)
りないから、
133
君
(
きみ
)
の
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
して
支払
(
しはら
)
つて
済
(
す
)
ませて
呉
(
く
)
れ」と
言
(
い
)
つたら、
134
「ソンナ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない」と
断
(
ことわ
)
つたので
相手
(
あひて
)
の
一人
(
ひとり
)
が、
135
「
夫
(
そ
)
れは
君
(
きみ
)
の
平素
(
へいそ
)
の
主張
(
しゆちやう
)
に
悖
(
もと
)
るでないか」と
突込
(
つつこ
)
むと、
136
「いや
夫
(
そ
)
れと
是
(
これ
)
とは
別問題
(
べつもんだい
)
だ」と
言
(
い
)
つて
逃
(
に
)
げて
仕舞
(
しま
)
つたといふ
話
(
はなし
)
だ。
137
兎角
(
とかく
)
人間
(
にんげん
)
といふ
奴
(
やつ
)
は
138
人
(
ひと
)
に
対
(
たい
)
しては
種々
(
いろいろ
)
の
要求
(
えうきう
)
を
起
(
おこ
)
すが、
139
その
要求
(
えうきう
)
を
自分
(
じぶん
)
にされたら
何
(
ど
)
うだらう。
140
果
(
はた
)
して
応
(
おう
)
ずるだけの
覚悟
(
かくご
)
を
以
(
もつ
)
て
居
(
ゐ
)
るだらうか。
141
自分
(
じぶん
)
の
立場
(
たちば
)
が
無産
(
むさん
)
階級
(
かいきふ
)
にあるからと
言
(
い
)
つて
共産
(
きやうさん
)
主義
(
しゆぎ
)
を
叫
(
さけ
)
ぶのでは
本当
(
ほんたう
)
のもので
無
(
な
)
い。
142
筆
(
ふで
)
や
舌
(
した
)
の
尖
(
さき
)
では
何
(
ど
)
んな
事
(
こと
)
でも
立派
(
りつぱ
)
に
言
(
い
)
はれるが、
143
事実
(
じじつ
)
その
事件
(
じけん
)
が
自分
(
じぶん
)
の
身
(
み
)
に
降
(
ふ
)
りかかつた
時
(
とき
)
に
実行
(
じつかう
)
することが
出来
(
でき
)
るだらうか。
144
十中
(
じつちう
)
の
十
(
じふ
)
まで
有言
(
いうげん
)
不実行
(
ふじつかう
)
で、
145
日頃
(
ひごろ
)
の
主張
(
しゆちやう
)
を
撤廃
(
てつぱい
)
せなくてはならぬやうになるのは、
146
可
(
か
)
なり
沢山
(
たくさん
)
な
事実
(
じじつ
)
だからなア』
147
甲
(
かふ
)
『
本当
(
ほんたう
)
に
虚偽
(
きよぎ
)
虚飾
(
きよしよく
)
の
人獣
(
にんじう
)
ばかりの
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
148
真
(
しん
)
の
人間
(
にんげん
)
らしいものは、
149
かう
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ると
一人
(
ひとり
)
も
世界
(
せかい
)
に
無
(
な
)
いと
言
(
い
)
つても
好
(
い
)
い
位
(
くらゐ
)
だ。
150
文壇
(
ぶんだん
)
の
名士
(
めいし
)
カットデルは、
151
世間
(
せけん
)
に
知
(
し
)
られた
自由
(
じいう
)
思想家
(
しさうか
)
だつたが、
152
自分
(
じぶん
)
がアーメニヤとかへ
旅行
(
りよかう
)
したその
不在中
(
ふざいちう
)
に、
153
女房
(
にようばう
)
のコール
夫人
(
ふじん
)
にウユルスと
言
(
い
)
ふ
若
(
わか
)
い
美
(
うつく
)
しい
愛人
(
あいじん
)
が
出来
(
でき
)
て、
154
頻
(
しき
)
りに
手紙
(
てがみ
)
を
往復
(
わうふく
)
して
居
(
ゐ
)
たのをカットデルが
見附
(
みつ
)
けて、
155
その
真相
(
しんさう
)
を
尋
(
たづ
)
ねた
所
(
ところ
)
、
156
コール
婦人
(
ふじん
)
は
平気
(
へいき
)
な
顔
(
かほ
)
で、
157
「あなたに
対
(
たい
)
する
愛
(
あい
)
が
無
(
な
)
くなつたから、
158
日頃
(
ひごろ
)
の
自由
(
じいう
)
思想
(
しさう
)
を
実践
(
じつせん
)
躬行
(
きうかう
)
して
愛人
(
あいじん
)
の
下
(
もと
)
へ
行
(
ゆ
)
く
心算
(
つもり
)
です」と、
159
ハツキリと
答
(
こた
)
へて
済
(
す
)
まし
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
たので、
160
カットデル
氏
(
し
)
も
色々
(
いろいろ
)
と
話
(
はなし
)
合
(
あ
)
つた
上
(
うへ
)
、
161
二人
(
ふたり
)
の
恋愛
(
れんあい
)
を
許
(
ゆる
)
してやつたが、
162
さて
愈
(
いよいよ
)
コール
婦人
(
ふじん
)
が
家内
(
かない
)
に
居
(
を
)
らなくなると、
163
子供
(
こども
)
のためや
其
(
その
)
他
(
た
)
の
事
(
こと
)
が
思
(
おも
)
はれて
164
到頭
(
たうとう
)
日頃
(
ひごろ
)
主義
(
しゆぎ
)
とする
自由
(
じいう
)
思想
(
しさう
)
を
捨
(
す
)
て、
165
人道
(
じんだう
)
的
(
てき
)
立場
(
たちば
)
から
愛妻
(
あいさい
)
コール
婦人
(
ふじん
)
に
反省
(
はんせい
)
を
求
(
もと
)
めて、
166
再
(
ふたた
)
び
戻
(
もど
)
つて
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
を
頼
(
たの
)
んだといふぢやないか。
167
人間
(
にんげん
)
位
(
ぐらゐ
)
、
168
勝手
(
かつて
)
な
奴
(
やつ
)
はあつたものぢや
無
(
な
)
い、
169
アハヽヽヽ』
170
乙
(
おつ
)
『オイ
君
(
きみ
)
、
171
向
(
むか
)
ふの
方
(
はう
)
から
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
たぢやないか。
172
一寸
(
ちよつと
)
聞
(
き
)
き
玉
(
たま
)
へ、
173
「
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立分
(
たてわ
)
ける」とか
何
(
なん
)
とか
言
(
い
)
つてゐるやうだ』
174
甲
(
かふ
)
『ウン
如何
(
いか
)
にも
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
だ。
175
併
(
しか
)
もあれは
三五教
(
あななひけう
)
の
歌
(
うた
)
だ。
176
吾々
(
われわれ
)
ウラル
教徒
(
けうと
)
も
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
聞
(
き
)
くと、
177
何
(
な
)
ンだか
心持
(
こころもち
)
が
好
(
い
)
い。
178
一
(
ひと
)
つここに
待
(
ま
)
ちうけて、
179
何
(
な
)
ンとか
人生
(
じんせい
)
問題
(
もんだい
)
に
就
(
つい
)
て
解決
(
かいけつ
)
を
与
(
あた
)
へて
貰
(
もら
)
はふぢやないか』
180
乙
(
おつ
)
『
何程
(
なにほど
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だつて
駄目
(
だめ
)
だらう。
181
無
(
な
)
い
袖
(
そで
)
は
振
(
ふ
)
る
訳
(
わけ
)
に
行
(
ゆ
)
かぬからなア。
182
夫
(
そ
)
れよりも
神力
(
しんりき
)
によつて、
183
スーラヤ
山
(
さん
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
にある
宝玉
(
はうぎよく
)
を、
184
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れる
様
(
やう
)
にせうではないか。
185
何程
(
なにほど
)
大蛇
(
をろち
)
が
沢山
(
たくさん
)
居
(
を
)
ると
言
(
い
)
つても、
186
神力
(
しんりき
)
には
叶
(
かな
)
ふまいからなア』
187
甲
(
かふ
)
『
別
(
べつ
)
に
三五教
(
あななひけう
)
に
頼
(
たの
)
まなくても
188
吾々
(
われわれ
)
が
平素
(
へいそ
)
信仰
(
しんかう
)
するウラル
彦
(
ひこ
)
の
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
にお
願
(
ねがひ
)
すれば
好
(
い
)
いだらう』
189
乙
(
おつ
)
『
朝夕
(
あさゆふ
)
ウラル
教
(
けう
)
の
大神
(
おほかみ
)
を
念
(
ねん
)
じて
見
(
み
)
たが、
190
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
のウラル
彦
(
ひこ
)
様
(
さま
)
は
貧乏
(
びんばふ
)
されたと
見
(
み
)
えて、
191
根
(
ね
)
ツから
福
(
ふく
)
を
与
(
あた
)
へて
呉
(
く
)
れない、
192
財産
(
ざいさん
)
を
沢山
(
たくさん
)
にウラル(
得
(
う
)
らる)
教
(
けう
)
だと
思
(
おも
)
つて
信仰
(
しんかう
)
したのに、
193
信仰
(
しんかう
)
以来
(
いらい
)
ウラねば
成
(
な
)
らぬウラメシ
教
(
けう
)
になつて
了
(
しま
)
つて
194
社会
(
しやくわい
)
の
地平線
(
ちへいせん
)
下
(
か
)
に
墜落
(
つゐらく
)
し
195
斯
(
か
)
う
杣人
(
そまびと
)
とまで
成
(
な
)
り
下
(
さが
)
つたのだから、
196
僕
(
ぼく
)
は
最早
(
もはや
)
ウラル
教
(
けう
)
は
止
(
や
)
めたのだ。
197
併
(
しか
)
しスーラヤ
山
(
さん
)
の
珍宝
(
ちんぽう
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れさして
呉
(
く
)
れたら
信仰
(
しんかう
)
を
続
(
つづ
)
けても
好
(
い
)
いのだ。
198
自分
(
じぶん
)
が
富者
(
ふうしや
)
の
位地
(
ゐち
)
に
立
(
た
)
つてからソロソロ コンミュニズムの
主張
(
しゆちやう
)
でもやつて、
199
人間並
(
にんげんなみ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
をやつて
見
(
み
)
たいのだ』
200
甲
(
かふ
)
『そんな
危険
(
きけん
)
なことは
止
(
や
)
めて、
201
マア
暫時
(
しばらく
)
今日
(
こんにち
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
に
安
(
やす
)
んじ
時節
(
じせつ
)
を
待
(
ま
)
つたら
何
(
ど
)
うだ。
202
何程
(
なにほど
)
珍宝
(
ちんぽう
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
つても
生命
(
いのち
)
が
無
(
な
)
くつちや
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
からうよ』
203
斯
(
か
)
く
談
(
はな
)
す
所
(
ところ
)
へ
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
が
宣伝歌
(
せんでんか
)
の
声
(
こゑ
)
に
足並
(
あしなみ
)
揃
(
そろ
)
へて
近
(
ちか
)
よつて
来
(
き
)
た。
204
玉国別
(
たまくにわけ
)
、
205
真純彦
(
ますみひこ
)
、
206
三千彦
(
みちひこ
)
、
207
デビス
姫
(
ひめ
)
、
208
伊太彦
(
いたひこ
)
、
209
治道
(
ちだう
)
居士
(
こじ
)
の
一行
(
いつかう
)
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
は
漸
(
やうや
)
くにして、
210
スダルマ
山
(
ざん
)
の
登
(
のぼ
)
り
口
(
ぐち
)
までさしかかつて
来
(
き
)
た。
211
例
(
れい
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
は
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つて
声
(
こゑ
)
も
高
(
たか
)
らかに
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
謡
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
212
山
(
やま
)
の
登
(
のぼ
)
り
口
(
くち
)
の
木陰
(
こかげ
)
に
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
が
腰
(
こし
)
打
(
う
)
ちかけて
何事
(
なにごと
)
か
囁
(
ささや
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
213
伊太彦
(
いたひこ
)
は
目敏
(
めざと
)
く
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
て、
214
後
(
あと
)
振
(
ふ
)
り
返
(
かへ
)
り、
215
伊太
(
いた
)
『
先生
(
せんせい
)
、
216
夜前
(
やぜん
)
は
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
でコソ
泥
(
どろ
)
に
出遇
(
であ
)
ひましたが、
217
あれ
御覧
(
ごらん
)
なさい。
218
彼処
(
あそこ
)
にも
亦
(
また
)
ざつと
二匹
(
にひき
)
、
219
コソ
泥
(
どろ
)
が
出現
(
しゆつげん
)
致
(
いた
)
しましたよ。
220
昨日
(
きのふ
)
の
奴
(
やつ
)
と
違
(
ちが
)
つて、
221
どこともなしに
気
(
き
)
の
利
(
き
)
いた
顔
(
かほ
)
をして
居
(
ゐ
)
ますわ』
222
玉国
(
たまくに
)
『ウン、
223
如何
(
いか
)
にも
立派
(
りつぱ
)
な
方
(
かた
)
が
二人
(
ふたり
)
休
(
やす
)
んで
居
(
を
)
られるやうだ。
224
あの
方
(
かた
)
は
決
(
けつ
)
して
泥坊
(
どろばう
)
ではあるまいよ』
225
伊太
(
いた
)
『
夫
(
それ
)
でもバラモン
教
(
けう
)
の
云
(
い
)
ひ
草
(
ぐさ
)
ぢやないが「
人
(
ひと
)
を
見
(
み
)
たら
泥坊
(
どろばう
)
だと
思
(
おも
)
へ」との
誡
(
いまし
)
めがあるぢやありませぬか』
226
玉国
(
たまくに
)
『
昨夜
(
さくや
)
の
泥坊
(
どろばう
)
に
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し、
227
精神
(
せいしん
)
錯乱
(
さくらん
)
して、
228
目
(
め
)
に
触
(
ふ
)
るるもの
一切
(
いつさい
)
が
泥坊
(
どろばう
)
と
見
(
み
)
えるのだらう。
229
滅多
(
めつた
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふものぢやない。
230
人
(
ひと
)
を
見
(
み
)
れば
皆
(
みな
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だと
思
(
おも
)
ふて
居
(
を
)
れば
好
(
よ
)
いのだ。
231
仮令
(
たとへ
)
万々一
(
まんまんいち
)
泥坊
(
どろばう
)
にした
所
(
ところ
)
で、
232
吾々
(
われわれ
)
の
身霊
(
みたま
)
を
研
(
みが
)
ひて
下
(
くだ
)
さるお
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
だと
善意
(
ぜんい
)
に
解
(
かい
)
するのだ』
233
伊太
(
いた
)
『
夫
(
そ
)
れだと
云
(
い
)
つて、
234
よく
見
(
み
)
て
御覧
(
ごらん
)
なさい。
235
ピカピカと
光
(
ひか
)
つた
凶器
(
きやうき
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか。
236
彼奴
(
あいつ
)
は
持凶器
(
ぢきようき
)
強盗
(
がうたう
)
かも
知
(
し
)
れませぬよ。
237
一
(
ひと
)
つ
勇気
(
ゆうき
)
を
出
(
だ
)
して
泥坊
(
どろばう
)
と
見当
(
けんたう
)
が
付
(
つ
)
けば
蹴散
(
けち
)
らして
進
(
すす
)
むのですな。
238
精神
(
せいしん
)
の
麻痺
(
まひ
)
した
人獣
(
にんじう
)
には
239
到底
(
たうてい
)
姑息
(
こそく
)
な
治療法
(
ちれうはふ
)
では
駄目
(
だめ
)
ですよ。
240
モルヒネ
注射
(
ちうしや
)
か
或
(
あるひ
)
は
大外科
(
だいげくわ
)
手術
(
しゆじゆつ
)
を
施
(
ほどこ
)
すに
限
(
かぎ
)
ります』
241
玉国
(
たまくに
)
『
伊太彦
(
いたひこ
)
、
242
あれをよく
見
(
み
)
よ。
243
お
前
(
まへ
)
の
凶器
(
きやうき
)
と
見
(
み
)
たのは
鉞
(
まさかり
)
ぢやないか、
244
あれは
屹度
(
きつと
)
杣人
(
そまびと
)
だ。
245
天下
(
てんか
)
の
良民
(
りやうみん
)
様
(
さま
)
だ』
246
伊太
(
いた
)
『
鉞
(
まさかり
)
、
247
否
(
いな
)
マサカさうでもありますまい。
248
杣人
(
そまびと
)
に
化
(
ば
)
けて
夜前
(
やぜん
)
の
泥的
(
どろてき
)
の
親分
(
おやぶん
)
が
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るに
違
(
ちが
)
ひありませぬわ』
249
玉国
(
たまくに
)
『どうも
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
は
俄
(
にはか
)
に
精神
(
せいしん
)
に
異状
(
いじやう
)
を
来
(
き
)
たしたと
見
(
み
)
える。
250
これや
困
(
こま
)
つた
事
(
こと
)
ぢやな。
251
伊太彦
(
いたひこ
)
、
252
まア
安心
(
あんしん
)
したがよいわ』
253
伊太
(
いた
)
『
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても
私
(
わたし
)
には
確信
(
かくしん
)
があります』
254
玉国
(
たまくに
)
『
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
をすると、
255
宣伝使
(
せんでんし
)
の
帳
(
ちやう
)
を
切
(
き
)
り、
256
根底
(
ねそこ
)
の
国
(
くに
)
へ
落
(
おと
)
して
仕舞
(
しま
)
ふが、
257
それでもお
前
(
まへ
)
は
構
(
かま
)
はぬ
気
(
き
)
か』
258
『エヽ
仕方
(
しかた
)
がありませぬ。
259
男子
(
だんし
)
が
一旦
(
いつたん
)
歯
(
は
)
から
外
(
そと
)
へ
出
(
だ
)
した
以上
(
いじやう
)
は
後
(
あと
)
へは
引
(
ひ
)
きませぬ。
260
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
261
あの
猛悪
(
まうあく
)
なタクシャカ
竜王
(
りうわう
)
を
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
した
伊太彦
(
いたひこ
)
司
(
つかさ
)
ですからなア。
262
孟子
(
まうし
)
の
言
(
げん
)
に「
下
(
しも
)
となつて
乱
(
みだ
)
るれば
刑
(
けい
)
せられ、
263
上
(
うへ
)
となつて
乱
(
みだ
)
るれば
免
(
まぬ
)
かる」と
云
(
い
)
ふ
身勝手
(
みがつて
)
な
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
ですから、
264
万々一
(
まんまんいち
)
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
によつて
根底
(
ねそこ
)
の
国
(
くに
)
へ
落
(
おと
)
されても
構
(
かま
)
ひませぬ。
265
私
(
わたし
)
はお
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
の
為
(
ため
)
に
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
になつた
所
(
ところ
)
で
得心
(
とくしん
)
です。
266
現在
(
げんざい
)
自分
(
じぶん
)
の
師匠
(
ししやう
)
に
危害
(
きがい
)
を
加
(
くは
)
へむとする
悪人
(
あくにん
)
に
対
(
たい
)
し
看過
(
かんくわ
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ませうか。
267
「
君
(
きみ
)
憂
(
うれ
)
ふれば
臣
(
しん
)
労
(
らう
)
し、
268
上
(
かみ
)
危
(
あやふ
)
ければ
下
(
しも
)
死
(
し
)
す」と
云
(
い
)
ふぢやありませぬか。
269
先生
(
せんせい
)
の
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
ふて
自分
(
じぶん
)
の
身
(
み
)
が
滅亡
(
めつぼう
)
しても
夫
(
それ
)
は
少
(
すこ
)
しも
恨
(
うら
)
みませぬ』
270
玉国
(
たまくに
)
『お
前
(
まへ
)
は
私
(
わし
)
を
疑
(
うたが
)
つて
居
(
ゐ
)
るのか、
271
玉国別
(
たまくにわけ
)
だつて
泥坊
(
どろばう
)
か
泥坊
(
どろばう
)
でないか
位
(
くらゐ
)
は
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
たら
分
(
わか
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだ。
272
聖人
(
せいじん
)
の
言葉
(
ことば
)
にも「
臣
(
しん
)
は
主
(
しゆ
)
に
逆
(
さか
)
らはず」と
云
(
い
)
ふぢやないか』
273
伊太
(
いた
)
『「
臣
(
しん
)
となりては
必
(
かなら
)
ず
臣
(
しん
)
たれ、
274
併
(
しか
)
し
君
(
きみ
)
となりては
必
(
かなら
)
ず
君
(
きみ
)
たれ」と
云
(
い
)
ひますから、
275
貴方
(
あなた
)
も
弟子
(
でし
)
の
私
(
わたし
)
が
赤心
(
まごころ
)
を、
276
師匠
(
ししやう
)
として
承認
(
しようにん
)
して
下
(
くだ
)
さりさうなものですな』
277
玉国
(
たまくに
)
『「
臣
(
しん
)
能
(
よ
)
く
主
(
しゆ
)
の
命
(
めい
)
を
承
(
うけたま
)
はるをもつて
信
(
しん
)
となす……」、
278
ちつとは
私
(
わし
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
も
聞
(
き
)
いたらどうだ』
279
伊太
(
いた
)
『
何
(
なん
)
だか
私
(
わたし
)
は
貴師
(
あなた
)
が
仰有
(
おつしや
)
る
事
(
こと
)
が
頼
(
たよ
)
りないやうな
気
(
き
)
がしてなりませぬわ。
280
どうぞ
暫
(
しばら
)
く
此方
(
こちら
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りにさして
下
(
くだ
)
さいませぬか』
281
三千
(
みち
)
『オイ
伊太彦
(
いたひこ
)
、
282
些
(
ちつ
)
とはお
師匠
(
ししやう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
も
聞
(
き
)
かねばなるまい。
283
折角
(
せつかく
)
の
功名
(
こうみやう
)
手柄
(
てがら
)
が
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
になつたら
惜
(
を
)
しいぢやないか』
284
伊太
(
いた
)
『ヘン、
285
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
は
有難
(
ありがた
)
う。
286
デビス
姫
(
ひめ
)
を
奥様
(
おくさま
)
に
貰
(
もら
)
ひ、
287
おまけに
先生
(
せんせい
)
に
御
(
ご
)
親任
(
しんにん
)
をうけて
真純彦
(
ますみひこ
)
と
二人
(
ふたり
)
が、
288
夜光
(
やくわう
)
の
玉
(
たま
)
や
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
を
懐
(
ふところ
)
に
捧持
(
ほうぢ
)
し、
289
得意
(
とくい
)
の
頂天
(
ちやうてん
)
に
達
(
たつ
)
した
君
(
きみ
)
達
(
たち
)
とはちつと
違
(
ちが
)
ふのだ。
290
俺
(
おれ
)
はこれから
人
(
ひと
)
を
虐
(
しひた
)
げる
悪人
(
あくにん
)
や、
291
驕慢
(
けうまん
)
な
奴
(
やつ
)
は、
292
片
(
かた
)
ツ
端
(
ぱし
)
から、
293
もう
言霊
(
ことたま
)
も
使
(
つか
)
ひ
飽
(
あ
)
いたから、
294
此
(
この
)
鉄腕
(
てつわん
)
を
揮
(
ふる
)
うて
打
(
う
)
ち
懲
(
こ
)
らしてやる
積
(
つも
)
りだ、
295
構
(
かま
)
つて
呉
(
く
)
れな』
296
と
云
(
い
)
ひながら、
297
五
(
ご
)
人
(
にん
)
を
後
(
あと
)
に
残
(
のこ
)
し
二人
(
ふたり
)
の
怪
(
あや
)
しい
男
(
をとこ
)
の
前
(
まへ
)
に
走
(
はし
)
り
寄
(
よ
)
り、
298
大喝
(
だいかつ
)
一声
(
いつせい
)
、
299
伊太
(
いた
)
『これや
泥坊
(
どろばう
)
、
300
吾輩
(
わがはい
)
を
誰様
(
どなた
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
ゐ
)
るか。
301
勿体
(
もつたい
)
なくも
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
302
神力
(
しんりき
)
無双
(
むそう
)
の
玉国別
(
たまくにわけ
)
の
御
(
ご
)
家来
(
けらい
)
の
伊太彦
(
いたひこ
)
さまだ。
303
こんな
所
(
ところ
)
に
出
(
で
)
しやばつて、
304
夜前
(
やぜん
)
の
蒸
(
む
)
し
返
(
かへ
)
しをせうと
思
(
おも
)
つても
駄目
(
だめ
)
だ。
305
この
腕
(
うで
)
を
見
(
み
)
い。
306
此
(
こ
)
の
腕
(
うで
)
には
特別
(
とくべつ
)
上等
(
じやうとう
)
の
骨
(
ほね
)
があるぞよ』
307
と
威猛高
(
ゐたけだか
)
になつて
睨
(
ね
)
めつけた。
308
二人
(
ふたり
)
はこの
権幕
(
けんまく
)
に
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し、
309
中
(
なか
)
の
一人
(
ひとり
)
が、
310
甲
(
かふ
)
『
私
(
わたし
)
等
(
たち
)
は、
311
此
(
この
)
近辺
(
きんぺん
)
に
居住
(
きよぢう
)
して
居
(
ゐ
)
る
杣人
(
そまびと
)
でカークス、
312
ベースと
云
(
い
)
ふ
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
います。
313
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
迄
(
まで
)
木樵
(
きこり
)
が
商売
(
しやうばい
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
314
あまり
体
(
からだ
)
が
疲
(
つか
)
れたので、
315
この
広
(
ひろ
)
い
木蔭
(
こかげ
)
で
息
(
いき
)
をやすめて
世間話
(
せけんばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つて
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
です。
316
泥坊
(
どろばう
)
でも
何
(
なん
)
でもありませぬ。
317
貴方
(
あなた
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
家来
(
けらい
)
だとか
弟子
(
でし
)
だとか
仰有
(
おつしや
)
いましたが、
318
どうか
私
(
わたし
)
の
人格
(
じんかく
)
を
調
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
さい。
319
無暗
(
むやみ
)
に
人間
(
にんげん
)
を
捉
(
つか
)
まへて
泥坊
(
どろばう
)
呼
(
よば
)
はりをなさるのは、
320
ちつと
貴方
(
あなた
)
のお
職掌
(
しよくしやう
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬぢやありませぬか』
321
伊太
(
いた
)
『ウン、
322
エ、
323
成程
(
なるほど
)
、
324
これは
誠
(
まこと
)
に
相
(
あひ
)
済
(
す
)
まなかつた。
325
歩
(
ある
)
きもつて
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たものだから、
326
つい
考
(
かんが
)
へ
違
(
ちが
)
ひを
致
(
いた
)
しました。
327
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
魂
(
たましひ
)
が
脱
(
ぬ
)
けたと
見
(
み
)
えますわい。
328
余
(
あま
)
り
玉
(
たま
)
が
欲
(
ほ
)
しいと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たものだから、
329
タマ
タマこんな
失敗
(
しつぱい
)
をやらかしたのですよ』
330
カークス『
貴方
(
あなた
)
も
矢張
(
やつぱ
)
り
玉
(
たま
)
が
欲
(
ほ
)
しいのですか。
331
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
私
(
わたし
)
もその
玉
(
たま
)
が
欲
(
ほ
)
しいので
相談
(
さうだん
)
して
居
(
ゐ
)
たのです。
332
そこへ
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
たものですから
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
を
貸
(
か
)
して
頂
(
いただ
)
いて、
333
これからスーラヤ
山
(
さん
)
の
珍宝
(
ちんぽう
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れ、
334
せめて
人並
(
ひとなみ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
を
支度
(
した
)
いものだと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
です。
335
どうか
一
(
ひと
)
つ
其
(
その
)
玉
(
たま
)
が
手
(
て
)
に
入
(
い
)
るやうに
336
貴方
(
あなた
)
のお
師匠
(
ししやう
)
さまに
御
(
ご
)
神力
(
しんりき
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さるやうに
頼
(
たの
)
んで
下
(
くだ
)
さらぬか』
337
伊太
(
いた
)
『ヤア
其奴
(
そいつ
)
は
面白
(
おもしろ
)
い。
338
俺
(
おれ
)
の
先生
(
せんせい
)
は、
339
ソレ
今
(
いま
)
彼方
(
あそこ
)
に
見
(
み
)
えるが、
340
玉国別
(
たまくにわけ
)
と
云
(
い
)
ふのだから、
341
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
る
事
(
こと
)
にかけ、
342
少
(
すこ
)
しもクニせずワケなく
取
(
と
)
らして
下
(
くだ
)
さるだろう。
343
現
(
げん
)
に
俺
(
おれ
)
の
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
た
玉
(
たま
)
を
取
(
と
)
り、
344
否
(
いな
)
取違
(
とりちが
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばした……のでも
何
(
なん
)
でもない。
345
屹度
(
きつと
)
聞
(
き
)
いて
下
(
くだ
)
さるだらうよ。
346
マア
安心
(
あんしん
)
せい』
347
ベース『ヤ
有難
(
ありがた
)
う、
348
これで
安心
(
あんしん
)
しました。
349
のうカークス、
350
もう
斯
(
か
)
うなる
以上
(
いじやう
)
はカークスには
及
(
およ
)
ばぬ、
351
スーラヤ
山
(
さん
)
の
珍宝
(
ちんぽう
)
の
所在
(
ありか
)
を
申
(
まをし
)
上
(
あ
)
げて、
352
せめて
一
(
ひと
)
つ
宛
(
づつ
)
吾々
(
われわれ
)
の
手
(
て
)
に
入
(
はい
)
るやうにして
貰
(
もら
)
はふぢやないか』
353
カークス『どうかさう
願
(
ねが
)
ひたいものだなア』
354
伊太
(
いた
)
『
其
(
その
)
スーラヤ
山
(
さん
)
と
云
(
い
)
ふのは
何処
(
どこ
)
にあるのだ』
355
カークス『
此
(
こ
)
のスダルマ
山
(
さん
)
を
向
(
むか
)
ふへ
渡
(
わた
)
りますと、
356
スーラヤの
湖
(
みづうみ
)
といつて、
357
可
(
か
)
なり
広
(
ひろ
)
い
水鏡
(
みづかがみ
)
が
照
(
て
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
358
其
(
その
)
中
(
なか
)
に
漂
(
ただよ
)
ふて
居
(
ゐ
)
る
岩山
(
いはやま
)
がスーラヤ
山
(
さん
)
と
云
(
い
)
ひます。
359
其
(
その
)
山
(
やま
)
には
岩窟
(
がんくつ
)
があつて、
360
ウバナンダと
云
(
い
)
ふナーガラシャー(
竜王
(
りうわう
)
)が
沢山
(
たくさん
)
の
玉
(
たま
)
を
蓄
(
たくは
)
へ
361
夜
(
よる
)
になると
玉
(
たま
)
の
光
(
ひかり
)
で
全山
(
やまぢう
)
が
昼
(
ひる
)
の
如
(
ごと
)
く
輝
(
かがや
)
いて
居
(
ゐ
)
ます。
362
其
(
その
)
玉
(
たま
)
を
一
(
ひと
)
つ
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れさへすれば、
363
人間
(
にんげん
)
の
一代
(
いちだい
)
二代
(
にだい
)
は
結構
(
けつこう
)
に
暮
(
くら
)
されると
云
(
い
)
ふ
高価
(
かうか
)
なものですが、
364
多勢
(
おほぜい
)
の
人間
(
にんげん
)
が
其
(
その
)
玉
(
たま
)
を
得
(
え
)
むとして、
365
行
(
い
)
つては
竜王
(
りうわう
)
に
喰
(
く
)
はれて
仕舞
(
しま
)
ふのです。
366
だから
余程
(
よほど
)
神力
(
しんりき
)
が
無
(
な
)
いと
其
(
その
)
玉
(
たま
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬからなア』
367
伊太
(
いた
)
『アハヽヽヽ。
368
お
安
(
やす
)
い
事
(
こと
)
だ。
369
此
(
この
)
伊太彦
(
いたひこ
)
はアヅモス
山
(
さん
)
に
於
(
おい
)
て
370
八大
(
はちだい
)
竜王
(
りうわう
)
の
中
(
なか
)
でも
最
(
もつと
)
も
凶悪
(
きようあく
)
なる、
3701
大身視毒
(
タクシャカ
)
竜王
(
りうわう
)
と
云
(
い
)
ふ
豪
(
えら
)
い
奴
(
やつ
)
を
往生
(
わうじやう
)
させ、
371
玉
(
たま
)
をボツ
奪
(
たく
)
つたと
云
(
い
)
ふ
勇者
(
ゆうしや
)
だから、
372
ウバナンダ
竜王
(
りうわう
)
位
(
ぐらゐ
)
を
言向和
(
ことむけやは
)
すは、
373
朝飯前
(
あさめしまへ
)
の
仕事
(
しごと
)
だ。
374
エヘヽヽヽ』
375
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
になつて
玉取
(
たまとり
)
の
話
(
はなし
)
に
霊
(
たま
)
を
抜
(
ぬ
)
かれて
居
(
ゐ
)
る。
376
早
(
はや
)
くも
玉国別
(
たまくにわけ
)
一行
(
いつかう
)
は
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
に
近
(
ちか
)
づき
来
(
きた
)
り、
377
此
(
この
)
話
(
はなし
)
を
残
(
のこ
)
らず
聞
(
き
)
いて
仕舞
(
しま
)
つた。
378
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
伊太彦
(
いたひこ
)
の
背
(
せな
)
をポンポンと
叩
(
たた
)
いた。
379
伊太
(
いた
)
『アヽ
玉
(
たま
)
さま
380
否
(
いな
)
玉国別
(
たまくにわけ
)
様
(
さま
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
381
どうぞ
今度
(
こんど
)
計
(
ばか
)
りは
改心
(
かいしん
)
を
致
(
いた
)
しますから、
382
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
の
御
(
ご
)
無礼
(
ぶれい
)
をお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいまして、
383
ウバナンダ・ナーガラシャーの
玉
(
たま
)
を
占領
(
せんりやう
)
さして
下
(
くだ
)
さい。
384
さうすれば
私
(
わたし
)
が
捧持
(
ほうぢ
)
してエルサレムに
参
(
まゐ
)
る
荷物
(
にもつ
)
が
出来
(
でき
)
ますからな』
385
玉国別
(
たまくにわけ
)
は
道端
(
みちばた
)
の
草
(
くさ
)
の
上
(
うへ
)
にどつかと
腰
(
こし
)
を
卸
(
おろ
)
し
386
無言
(
むごん
)
の
儘
(
まま
)
考
(
かんが
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
387
(
大正一二・五・一八
旧四・三
於教主殿
加藤明子
録)
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飯塚弘明著『
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』発刊!
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霊界物語ネットに出口王仁三郎の
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