霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 五託宣(ごたくせん)〔一六一九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第63巻 山河草木 寅の巻 篇:第3篇 幽迷怪道 よみ(新仮名遣い):ゆうめいかいどう
章:第12章 五託宣 よみ(新仮名遣い):ごたくせん 通し章番号:1619
口述日:1923(大正12)年05月24日(旧04月9日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年2月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
カークスとベースは不審の念を抱いて、近づいてくる宣伝歌に耳をすませた。歌の主は伊太彦であった。
伊太彦はアスマガルダ、ブラヷーダを連れて、竜王の岩窟の向こうにこれほど広い原野があることを不思議に思いながら歌を歌いながらやってきた。
カークスとベースは伊太彦に出会えたことを喜び、先ほどの怪しい婆の話をした。伊太彦は岩窟だから妖怪が出たのだろうと答え、ウバナンダ竜王に会うために先に進もうと一同を促した。
一同が進んでいくと、はげ山の麓に草ぶき屋根の小屋が一軒建っていた。小屋から出てきたのは高姫であった。高姫は一行を呼び止め、けっこうなウラナイ教の話を聞かせてやろうと引き留めた。
しかしカークスとベースは、高姫の居丈高な物言いに不快の念をあらわにし、無視して先に進もうと伊太彦にもちかけた。高姫は怒り、二人は身魂が悪いから自分の館に入ることはならないと言い渡した。
高姫は伊太彦、アスマガルダ、ブラヷーダの三人を引き入れようとするが、ブラヷーダはここまで生死を共にしてきたのだから、カークスとベースが入れない家にやっかいになるのは止めようと言い出した。
伊太彦とアスマガルダも同調したので、高姫は仕方なく五人とも招き入れようとするが、その物言いがまた居丈高なので、カークスとベースは家に入るのを拒否した。
高姫は門口でウラナイ教の説法をすることにした。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-06-06 18:17:50 OBC :rm6312
愛善世界社版:164頁 八幡書店版:第11輯 321頁 修補版: 校定版:168頁 普及版:64頁 初版: ページ備考:
001 カークス、002ベース両人(りやうにん)不審(ふしん)(むね)(いだ)(なが)ら、003路傍(ろばう)直立(ちよくりつ)せる立岩(たちいは)(そば)(たたず)んで、004宣伝歌(せんでんか)(こゑ)近寄(ちかよ)るのを(みみ)をすませて()いて()る。
005伊太彦(いたひこ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
006(われ)伊太彦(いたひこ)(つかさ)なり
007玉国別(たまくにわけ)(したが)ひて
008スダルマ(さん)(ふもと)(まで)
009(すす)(きた)れる(をり)もあれ
010木蔭(こかげ)(やす)両人(りやうにん)
011不図(ふと)出会(でつくは)してスーラヤの
012(やま)夜光(やくわう)(たま)ありと
013()くより(こころ)(いさ)()
014(わが)()(きみ)(ゆる)されて
015カークス、ベース両人(りやうにん)
016(したが)間道(かんだう)(くぐ)()
017スーラヤ湖辺(こへん)のテルの(さと)
018ルーブヤ(やかた)(たち)()りて
019(かみ)仕組(しぐみ)のブラヷーダ
020(ひめ)(みこと)赤縄(えにし)をば
021(むす)(をは)りて(あに)とます
022アスマガルダの(ふね)()
023(なみ)(ただよ)(やうや)くに
024スーラヤ(さん)()ぎつけて
025一夜(いちや)()かす(をり)もあれ
026得体(えたい)()れぬ怪物(くわいぶつ)
027(たちま)ちここに(あら)はれて
028いろはにほへとちりぬるを
029わかよたれそつねならむ
030うゐのおくやまけふこえて
031あさきゆめみしゑひもせす
032京味(きやうみ)(ふか)問答(もんだふ)
033()けず(おと)らず開始(かいし)して
034火花(ひばな)()らせば怪物(くわいぶつ)
035(けぶり)となりて()()せぬ
036()(やうや)くに()(はな)
037一行(いつかう)()(にん)はスーラヤの
038(あやふ)死線(しせん)突破(とつぱ)して
039(あし)(いた)めつ頂上(ちやうじやう)
040(のぼ)(おう)せてウバナンダ
041ナーガラシャーの(ひそ)みたる
042(しこ)岩窟(いはや)(たち)(むか)
043(やま)()()(しげ)()
044藤蔓(ふぢつる)()りて縄梯子(なははしご)
045やつと(こしら)()()ろし
046()(にん)一度(いちど)にスルスルと
047(くだ)りて()れば(おも)ひきや
048()てしも()らぬ(ひろ)(あな)
049際限(さいげん)もなく展開(てんかい)
050山河(さんか)草木(さうもく)(たち)(なら)
051(ひろ)原野(げんや)となりにけり
052あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
053(かみ)仕組(しぐみ)玉糸(たまいと)
054()かれて(きた)吾々(われわれ)
055何処(いづこ)をあてと白雲(しらくも)
056()ける(とこ)(まで)(すす)まむと
057ここ(まで)(きた)(いき)(やす)
058(あと)()(かへ)(なが)むれば
059如何(いか)になしけむカークスや
060ベースの二人(ふたり)落伍(らくご)して
061姿(すがた)()えずなりにけり
062あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
063御霊(みたま)(さち)はひましまして
064(いち)()(はや)両人(りやうにん)
065(われ)()(あと)(おつ)かけて
066(たがひ)無事(ぶじ)(しゆく)()
067(よろこ)(あた)(たま)へかし
068(しこ)岩窟(いはや)入口(いりぐち)
069いとも(せま)けく(おぼ)ゆれど
070(この)岩窟(がんくつ)広々(ひろびろ)
071展開(てんかい)したる不思議(ふしぎ)さよ
072(そら)岩窟(いはや)(つつ)まれて
073月日(つきひ)(かげ)()えねども
074(なん)とはなしに心地(ここち)よし
075あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
076(かみ)のまにまに(すす)()く』
077()ひつつ両人(りやうにん)(そば)近寄(ちかよ)つて()た。078カークスは(さん)(にん)姿(すがた)()るより()()つやうに(よろこ)んで、
079カークス『あゝ先生(せんせい)(ござ)りましたか。080ブラヷーダさまに、081アスマガルダさま、082どれだけ(たづ)ねて()つた(こと)()れませぬよ。083どうして()られましたか』
084伊太(いた)『いや有難(ありがた)う。085(じつ)(ところ)はお(まへ)(たち)二人(ふたり)姿(すがた)()えぬので086(また)(あし)(いた)めて(おく)れて()るのではあるまいかと、087幾度(いくど)幾度(いくど)路傍(ろばう)(たたず)見合(みあは)見合(みあは)せやつて()たものだから、088()(おく)れて(しま)つたのだ。089随分(ずいぶん)()たしただらうな』
090カークス『随分(ずいぶん)()ちましたよ。091(しか)しここは(めう)(ところ)ですな。092只今(たつたいま)濁流(だくりう)(みなぎ)大川(おほかは)(よこた)はり、093(きたな)(ばば)(あら)はれて色々(いろいろ)雑多(ざつた)(おど)文句(もんく)(なら)べやがるものだから、094ベースと二人(ふたり)一生(いつしやう)懸命(けんめい)掛合(かけあ)つてゐましたが095(その)(ばば)(いは)()けて(しま)ひ、096(かは)薄原(すすきはら)となりました。097一体(いつたい)ここは冥途(めいど)ぢやありますまいかな』
098伊太(いた)()んだ(おぼ)えもないのに、099どうして冥途(めいど)()るものか。100ここはスーラヤ(さん)岩窟(がんくつ)から(この)(とほ)展開(てんかい)してゐる(おほ)きな広場(ひろば)だ。101あまり(ひろ)(あな)だから102(この)(とほ)()(とど)かぬ(ほど)草原(さうげん)展開(てんかい)してゐるのだ。103(なん)不思議(ふしぎ)(こと)ぢやないか』
104カークス『いや、105それ()いて安心(あんしん)しました。106(わたし)(また)ベースと両人(りやうにん)冥途(めいど)(たび)ぢやないかと、107どれだけ()()んだか()れませぬよ。108なア、109ベース、110随分(ずいぶん)いやらしかつたな』
111ベース『(ばば)()(とき)本当(ほんたう)(きも)(つぶ)しましたよ。112そして(ばば)113貴方(あなた)(がた)(さん)(にん)(この)(かは)(わた)つて(むか)ふへ()つたと(うそ)ばかり()きやがるものだから、114(はや)追付(おつつ)かうと(おも)つて、115どれ()()をもんだか()れませぬわ』
116伊太(いた)『ア、1161さうだつたか、117ここは岩窟内(がんくつない)(こと)だから四辺(あたり)光景(くわうけい)(ちが)ふて()るなり、118(いづ)妖怪(えうくわい)()るだらうよ。119さア(これ)から(おく)()かう。120屹度(きつと)ウバナンダ竜王(りうわう)(たま)(かざ)して()つて()るだらう』
121カークス『そんならお(とも)(いた)しませう。122おいベース、123どうやら此方(こつち)のものらしいぞ。124まア(よろこ)んだり(よろこ)んだり。125(ひと)宣伝歌(せんでんか)でも(うた)つて(いさぎよ)()きませう』
126カークス『不思議(ふしぎ)(こと)があるものだ
127スーラヤ(さん)岩窟(がんくつ)
128(ふぢ)(つく)つた縄梯子(なははしご)
129()らしてスルスルスルと()
130()れば四辺(あたり)(おも)うたより
131(ひろ)山川(さんせん)草木(そうもく)
132縦横(じうわう)無尽(むじん)展開(てんかい)
133岩窟(いはや)(なか)とは(おも)へない
134(こころ)(まよ)ひか()らねども
135三途(せうづ)(かは)(わた)()
136(いは)幽霊(いうれい)醜婆(しこばば)
137(かや)(なか)から(あら)はれて
138(すご)文句(もんく)(なら)()
139二人(ふたり)肝玉(きもだま)とり(ひし)
140(たちま)(いは)()けよつた
141いざ(これ)よりは伊太彦(いたひこ)
142(つかさ)(とも)にある(かぎ)
143如何(いか)なる(まが)(きた)るとも
144如何(いか)(おそ)れむ惟神(かむながら)
145(かみ)(ひかり)()らされて
146曲津(まがつ)(ひそ)岩窟(いはやど)
147(なん)()もなく(すす)()
148(わが)()(うへ)(たの)しけれ
149朝日(あさひ)(てら)(つき)はなく
150(かぜ)さへ(ろく)()かねども
151(すめ)大神(おほかみ)(おん)(ため)
152(すす)(わが)()有難(ありがた)
153八大(はちだい)竜王(りうわう)(その)(ひと)
154歓喜(くわんき)竜王(りうわう)(きこ)えたる
155ナーガラシャーの(たから)をば
156伊太彦(いたひこ)さまが()()れて
157(うづ)(みやこ)のエルサレム
158黄金山(わうごんざん)(たてまつ)
159五六七(みろく)神政(しんせい)完成(くわんせい)
160(はか)らせ(たま)神業(しんげふ)
161その一端(いつたん)(つか)ふるは
162神代(かみよ)()かぬ功績(いさをし)
163あゝ(いさ)ましや(いさ)ましや
164如何(いか)なる(まが)のさやるとも
165(かみ)(まか)せし(わが)身魂(みたま)
166(なに)(おそ)れむ敷島(しきしま)
167神国魂(みくにだましひ)()(おこ)
168地獄(ぢごく)(そこ)(まで)(すす)()
169あゝ面白(おもしろ)(いさ)ましや
170(かみ)(われ)()(とも)にあり
171(かみ)(まも)られ(すす)()
172如何(いか)なる(けは)しき山阪(やまさか)
173濁流(だくりう)(みなぎ)大川(おほかは)
174いと安々(やすやす)(すす)むべし
175(きた)れよ(きた)れいざ(きた)
176勝利(しようり)(みやこ)(ちか)づきぬ
177朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
178(つき)()つとも()くるとも
179仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
180(わが)()(いのち)(ほろ)ぶとも
181(この)神業(しんげふ)(はた)さねば
182(けつ)して(あと)には()きはせぬ
183(まも)らせ(たま)大御神(おほみかみ)
184御霊(みたま)恩頼(ふゆ)()(まつ)る』
185 ()(うた)ひつつ(すす)んで()くと186禿山(はげやま)(ふもと)草葺(くさふき)屋根(やね)一軒(いつけん)()つてゐる。187そして屋根(やね)所々(ところどころ)()188幾条(いくすぢ)幾条(いくすぢ)(たに)出来(でき)(あを)(くさ)()え、189下地(したぢ)(たけ)(ほね)()して()る。190「ハテ不思議(ふしぎ)(いへ)があるものだな」と一同(いちどう)(たたず)んで(くび)(かたむ)けて(かんが)へて()る。
191 そこへ一人(ひとり)(ばば)(やぶ)()を、192ガタつかせ(なが)らニユツと(あら)はれ(きた)り、193アトラスのやうな(まんだら)(かほ)をして、
194(ばば)『これこれ(たび)のお(かた)195一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい。196渋茶(しぶちや)でも(しん)()いから……随分(ずいぶん)(まへ)さまも草臥(くたびれ)ただらう。197(まへ)草鞋(わらぢ)には泥埃(どろぼこり)寄生虫(きせいちう)()いてるやうだ。198さぞ(あし)(おも)たい(こと)だらう』
199伊太(いた)『ハイ、200有難(ありがた)う。201(しか)(なが)()親切(しんせつ)()にするは(まこと)()みませぬが、202(すこ)()(たび)ですから(また)(かへ)りがけにお世話(せわ)(あづか)りませう』
203(ばば)『これこれ、204(まへ)心得(こころえ)(わる)いぞや。205(この)(ばば)親切(しんせつ)(ちや)(あた)へようと()ふのに、206(なに)辞退(じたい)をなさるのか。207()(たび)ぢやと()つても(いち)(にち)(ある)(わけ)にも()くまい。208此処(ここ)(やす)んで()かつしやい。209結構(けつこう)結構(けつこう)三五教(あななひけう)(はなし)()かして()げませうぞや』
210伊太(いた)貴女(あなた)三五教(あななひけう)のお(かた)ですか。211(じつ)(わたし)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(ござ)います』
212(ばば)『お(まへ)(なん)()(わる)(こと)だな。213(わし)相貌(そつぽ)()ても神司(かむづかさ)であるか、214神司(かむづかさ)でないか(わか)らなならぬ(はず)だ。215(じつ)(ところ)三五教(あななひけう)高姫(たかひめ)()変性(へんじやう)男子(なんし)系統(ひつぽう)216日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)だが、217言依別(ことよりわけ)東助(とうすけ)没分暁漢(わからずや)愛憎(あいそ)をつかし、218(また)(もと)のウラナイ(けう)(ひら)いて此処(ここ)でお(みち)()いて()るのだ。219まアまア()いて()かつしやい。220(けつ)して(わる)いことは()はぬぞや』
221伊太(いた)『あゝ貴女(あなた)(うはさ)(たか)高姫(たかひめ)さまで(ござ)いましたか。222いや(はじ)めてお()にかかります。223さうして(また)三五教(あななひけう)()てウラナイ(けう)へお這入(はい)りになるとは、224どう()ふお(かんが)へですか、225如何(いか)言依別(ことよりわけ)東助(とうすけ)さまと()意見(いけん)()はぬと()つても(かみ)(さま)(ふた)つはありますまい。226貴女(あなた)人間(にんげん)信用(しんよう)なさるから、227そんな間違(まちがひ)出来(でき)るのでせう』
228高姫(たかひめ)『まアまア道端(みちばた)()つて(はな)しても仕方(しかた)がない。229一厘(いちりん)仕組(しぐみ)(をし)へて()げますから、230とつととお這入(はい)りなさい。231まア綺麗(きれい)なお(ひめ)(さま)だこと、232三五教(あななひけう)夫婦(ふうふ)ありては御用(ごよう)出来(でき)ないと(かみ)(さま)仰有(おつしや)るのだが、233(いま)言依別(ことよりわけ)のド灰殻(はひから)東助(とうすけ)幹部(かんぶ)()めて()るものだから、234(なに)もかも規律(きりつ)(みだ)れて……アタ阿呆(あはう)らしい。235宣伝使(せんでんし)女房(にようばう)()れて……(なん)(こと)ぢやいな。236それだから三五教(あななひけう)駄目(だめ)だと()ふのだよ』
237伊太(いた)『まア()(かく)一服(いつぷく)さして(もら)はう。238なア ブラヷーダさま、239アスマガルダさま』
240ブラヷーダ『はい、241そんならお世話(せわ)になりませうかな』
242高姫(たかひめ)『サアサアお世話(せわ)になりなさい。243(なん)()ふても日出(ひのでの)(かみ)生宮(いきみや)だから、244三千(さんぜん)世界(せかい)(こと)(この)生宮(いきみや)()かねば(わか)りはせぬぞや』
245カークス『もし先生(せんせい)246こんな()(つよ)()アさまの(ところ)(やす)むのは(むね)(わる)いぢやありませぬか。247なア、248ベース、249(ひと)先生(せんせい)歎願(たんぐわん)してここへ這入(はい)るのは()めて(もら)はうぢやないか』
250ベース『ウン、251あまり(えら)さうに()ふぢやないか。252渋茶(しぶちや)()ますと()つて(うま)小便(せうべん)でも()ますか()れないぞ。253こりやうつかり這入(はい)れまい』
254高姫(たかひめ)『こりや瓢六玉(へうろくだま)255(なん)()(こと)()ふのだい。256(いや)なら這入(はい)らいでも()いわい。257(なん)だ、258泥坊(どろばう)(やう)(つら)して、259(そば)から(なに)横槍(よこやり)()れるのだ。260さアさア(さん)(にん)のお(かた)261貴方(あなた)はどうも利口(りこう)さうなお(かた)だ。262屹度(きつと)身魂(みたま)()いのでせう。263サア遠慮(ゑんりよ)()らぬ、264(はや)うお這入(はい)(くだ)さい』
265伊太(いた)『さアさア、266カークス、267ベースの両人(りやうにん)さま、268(まへ)もそんな理窟(りくつ)()はずに這入(はい)つたらどうだ』
269高姫(たかひめ)『これ伊太彦(いたひこ)さま、270あんな瓢六玉(へうろくだま)日出(ひのでの)(かみ)(やかた)()資格(しかく)はありませぬわい。271(また)這入(はい)つて(もら)ふと(いへ)(けが)れるから、272山門(さんもん)仁王(にわう)(やう)門番(もんばん)をさして()けば、273それで結構(けつこう)だ』
274ブラヷーダ『もし伊太彦(いたひこ)さま、275(わらは)()うして()(にん)生死(せいし)(とも)にして御用(ごよう)()たので(ござ)いますから、276カークス、277ベースさまが這入(はい)れぬ(うち)へはお世話(せわ)になる(こと)はやめませうか』
278伊太(いた)『ウン、279それもさうだ』
280高姫(たかひめ)(さて)(さて)(わか)らぬ(ひめ)(さま)だな。281(まへ)身魂(みたま)善悪(ぜんあく)正邪(せいじや)()らないから、282そんな小理窟(こりくつ)()ふのだよ。283(この)高姫(たかひめ)()一寸(ちよつと)(にら)んだら金輪(こんりん)奈落(ならく)284(ちが)ひはせぬぞや。285オツホヽヽヽ286何分(なにぶん)立派(りつぱ)(をとこ)(なか)(まじ)つて宣伝(せんでん)(ある)くと()ふやうな(あたら)しい(をんな)(こと)だから、287どうで(この)(ばば)()(こと)()()ひますまい。288(しか)し、289そこは(ひと)(むね)()()てて(かんが)へたが(よろ)しからうぞや』
290ブラヷーダ『お言葉(ことば)(ござ)いますが、291(わらは)はカークス、292ベースさまに同情(どうじやう)して一緒(いつしよ)立番(たちばん)(いた)しませう。293伊太彦(いたひこ)(さま)294兄様(あにさま)295どうぞ(なか)(はい)つて高姫(たかひめ)さまのお(はなし)()いて(くだ)さい』
296伊太(いた)『いやお(まへ)(そと)()るのに(わし)(なか)(はい)(こと)出来(でき)ない。297そんなら(わし)(ことわ)らうかな』
298アスマガルダ『そんなら(わし)(ことわ)らう。299高姫(たかひめ)さまとやら、300(おほ)きに有難(ありがた)う、301(また)御縁(ごえん)があつたらお()にかかりませう』
302高姫(たかひめ)『オホヽヽヽ流石(さすが)伊太彦(いたひこ)宣伝使(せんでんし)(をんな)()けたら(よわ)いものだな。303(よだれ)をくつたり(めじり)()げたり……そんな(こと)でお(みち)が、304どうして(ひら)けますか』
305伊太(いた)高姫(たかひめ)さま、306そんなら貴女(あなた)もドツと譲歩(じやうほ)して307()(にん)ともお世話(せわ)になる(わけ)には()きませぬか』
308高姫(たかひめ)『エー、309仕方(しかた)()い。310そんならお(まへ)さまに(めん)じて()れて()げませう。311(けつ)して座敷(ざしき)なぞへ(あが)つてはなりませぬぞ。312(には)(すみ)になつと蹲踞(ちやうつくば)つて()なさいや』
313カークス『それ(ほど)むつかしいお屋敷(やしき)へは這入(はい)りませぬわい。314なア、315ベース、316馬鹿(ばか)にしてるわ』
317ベース『ウン、318さうだ。319絶対(ぜつたい)(おれ)這入(はい)らぬ(つも)りだ。320それより高姫(たかひめ)(そと)()(もら)つて、321(ちや)はどうでもいいから結構(けつこう)なお(はなし)()かして(もら)はうかい』
322高姫(たかひめ)『オホヽヽヽ、323それはよい思案(しあん)だ。324さうすれば(わし)(うち)(けが)さんで都合(つがふ)()い。325(わし)此処(ここ)(すわ)つてお(はなし)するから326()(にん)(そと)蹲踞(ちやうつくば)つて()きなさい。327それが身魂(みたま)相応(さうおう)だらう。328どれ 329平易(やす)(ところ)から(はな)して()げようから、330よく(みみ)をすまして()きなさいや』
331伊太(いた)『アツハヽヽヽ』
332アスマガルダ『ウツフヽヽヽ』
333ブラヷーダ『オツホヽヽヽ』
334カークス『エツヘヽヽヽ』
335ベース『イツヒヽヽヽ』
336大正一二・五・二四 旧四・九 北村隆光録)
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