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第80巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 忍ケ丘
01 独り旅
〔2005〕
02 行倒
〔2006〕
03 復活
〔2007〕
04 姉妹婆
〔2008〕
05 三つ盃
〔2009〕
06 秋野の旅
〔2010〕
第2篇 秋夜の月
07 月見ケ丘
〔2011〕
08 月と闇
〔2012〕
09 露の路
〔2013〕
10 五乙女
〔2014〕
11 火炎山
〔2015〕
12 夜見還
〔2016〕
13 樹下の囁き
〔2017〕
14 報哭婆
〔2018〕
15 憤死
〔2019〕
第3篇 天地変遷
16 火の湖
〔2020〕
17 水火垣
〔2021〕
18 大挙出発
〔2022〕
19 笑譏怒泣
〔2023〕
20 復命
〔2024〕
21 青木ケ原
〔2025〕
22 迎への鳥船
〔2026〕
23 野火の壮観
〔2027〕
余白歌
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> 第1篇 忍ケ丘 > 第5章 三つ盃
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第五章
三
(
み
)
つ
盃
(
さかづき
)
〔二〇〇九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻
篇:
第1篇 忍ケ丘
よみ(新仮名遣い):
しのぶがおか
章:
第5章 三つ盃
よみ(新仮名遣い):
みつさかずき
通し章番号:
2009
口述日:
1934(昭和9)年07月26日(旧06月15日)
口述場所:
関東別院南風閣
筆録者:
森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
忍ケ丘から笑い婆が火の玉となって出て行ったのを見て、幽霊の里人たちは、頭の茄子という精霊を先頭に、婆の館に様子を見に来た。山、川、海の三人は、笑い婆が三人の客人のおかげで逃げ去ったことを報告した。
幽霊の里人たちは婆が逃げ去ったことを喜び、歓呼の声を上げて踊り祝った。茄子は、婆が帰ってくる前に根城を固めておこうと、冬男と山、熊公と川、虎公と海を見合わせ、幽界の結婚式を挙げさせた。
幽冥界は意思想念の世界であれば、くどくどしい式もいらず、挙式は極めて簡単に終わった。それぞれの夫婦はお互いに誓いの歌を歌いあった。
鬼婆が逃げ去り、村人の心は清新の空気が注がれた。また三組の結婚式が行われ、この丘の里は、霊界ながら平和な花園となり、安らかに治まったのである。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8005
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 314頁
修補版:
校定版:
86頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
の
館
(
やかた
)
の
辺
(
あた
)
りより、
002
怪
(
あや
)
しき
雲気
(
うんき
)
立昇
(
たちのぼ
)
ると
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
003
空中
(
くうちう
)
を
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アが「
笑
(
わら
)
ひ」を
背
(
せ
)
に
負
(
お
)
ひ、
004
二
(
ふた
)
つの
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
となつて、
005
遥
(
はる
)
か
南
(
みなみ
)
の
空
(
そら
)
に
消
(
き
)
えたるを
見
(
み
)
て、
006
里人
(
さとびと
)
等
(
たち
)
は
意地悪
(
いぢわる
)
き
婆
(
ばば
)
の
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りしならむ、
007
さるにても
囚
(
とら
)
はれ
居
(
ゐ
)
る
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
乙女
(
をとめ
)
は
如何
(
いか
)
にと
案
(
あん
)
じ
煩
(
わづら
)
ひつつ、
008
二人
(
ふたり
)
の
婆
(
ばば
)
の
次
(
つぎ
)
に
位
(
くらゐ
)
する
里人
(
さとびと
)
の
頭
(
かしら
)
なる
色
(
いろ
)
の
黒
(
くろ
)
き「
茄子
(
なすび
)
」と
言
(
い
)
ふ
精霊
(
せいれい
)
は
数多
(
あまた
)
の
精霊
(
せいれい
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ
来
(
きた
)
り、
009
男女
(
だんぢよ
)
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
精霊
(
せいれい
)
が
婆
(
ばば
)
が
抜
(
ぬ
)
け
殻
(
がら
)
の
館
(
やかた
)
に
黙然
(
もくねん
)
として
立
(
た
)
ち
居
(
ゐ
)
たるにぞ、
010
茄子
(
なすび
)
は
門口
(
かどぐち
)
より
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りの
声
(
こゑ
)
を
張上
(
はりあ
)
げて、
011
『この
宿
(
やど
)
の
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ば
)
さんは
如何
(
いかが
)
なりし
012
怪
(
あや
)
しき
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
り
行
(
ゆ
)
くを
見
(
み
)
し。
013
家
(
いへ
)
の
内
(
うち
)
に
人
(
ひと
)
の
気
(
け
)
するなり
何人
(
なんびと
)
か
014
名乗
(
なの
)
らせ
給
(
たま
)
へ
吾
(
われ
)
は
茄子
(
なすび
)
よ』
015
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
にハツと
気
(
き
)
がつき、
016
山
(
やま
)
、
017
川
(
かは
)
、
018
海
(
うみ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
門口
(
かどぐち
)
に
走
(
はし
)
り
出
(
い
)
で、
019
『
珍
(
めづら
)
しくよく
出
(
い
)
でますも
此
(
この
)
家
(
いへ
)
の
020
主
(
あるじ
)
は
雲
(
くも
)
に
乗
(
の
)
りて
逃
(
に
)
げたり。
021
里人
(
さとびと
)
を
虐
(
しひた
)
げ
艱
(
なや
)
めし
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
は
022
あと
白浪
(
しらなみ
)
と
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せにける。
023
山鳥
(
やまどり
)
の
尾
(
を
)
の
長々
(
ながなが
)
しき
年月
(
としつき
)
を
024
忍
(
しの
)
び
来
(
き
)
にけり
婆
(
ば
)
さんが
館
(
やかた
)
に』
025
茄子
(
なすび
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
026
『
此
(
この
)
里
(
さと
)
の
司
(
つかさ
)
ながらも
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
は
027
よきことをせぬ
魍魎
(
すだま
)
なりしよ。
028
今日
(
けふ
)
よりは
里人
(
さとびと
)
等
(
たち
)
も
喜
(
よろこ
)
びて
029
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
に
光
(
ひか
)
りて
住
(
す
)
むべし。
030
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
一人
(
ひとり
)
のみかは
譏
(
そし
)
りまで
031
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
を
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りしはや。
032
里人
(
さとびと
)
は
何
(
いづ
)
れも
笑
(
わら
)
ひに
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
033
生命
(
いのち
)
とられし
人
(
ひと
)
のみならずや』
034
山
(
やま
)
は
之
(
これ
)
に
答
(
こた
)
へて、
035
『
吾
(
われ
)
も
亦
(
また
)
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
アの
手
(
て
)
にかかり
036
生命
(
いのち
)
亡
(
う
)
せにしものなりにけり。
037
今日
(
けふ
)
よりは
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
里人
(
さとびと
)
は
038
歓
(
ゑら
)
ぎ
喜
(
よろこ
)
び
世
(
よ
)
を
寿
(
ことほ
)
がむ。
039
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
茄子
(
なすび
)
の
君
(
きみ
)
よ
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
040
進
(
すす
)
ませ
給
(
たま
)
へ
客人
(
まらうど
)
いませば』
041
茄子
(
なすび
)
といへる
精霊
(
せいれい
)
は、
042
『
何人
(
いづかた
)
の
客人
(
まらうど
)
なるか
知
(
し
)
らねども
043
吾
(
われ
)
は
一先
(
ひとま
)
づ
会
(
あ
)
ひて
語
(
かた
)
らむ。
044
今日
(
けふ
)
よりは
醜
(
しこ
)
の
雲霧
(
くもきり
)
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ひ
045
月日
(
つきひ
)
並
(
なら
)
びて
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
らむ。
046
此
(
この
)
里
(
さと
)
の
雲
(
くも
)
は
晴
(
は
)
れたり
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
047
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アの
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りしより』
048
と
歌
(
うた
)
ひつつ
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
049
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
男子
(
だんし
)
に
向
(
むか
)
ひ
目礼
(
もくれい
)
しながら、
050
『
此
(
この
)
館
(
たち
)
におはす
三人
(
みたり
)
の
客人
(
まらうど
)
は
051
何
(
いづ
)
れの
精霊
(
みたま
)
か
聞
(
き
)
かまほしけれ。
052
吾
(
われ
)
こそは
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
に
永遠
(
とは
)
に
住
(
す
)
む
053
茄子
(
なすび
)
と
申
(
まう
)
す
精霊
(
せいれい
)
なりけり』
054
冬男
(
ふゆを
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
055
『
吾
(
われ
)
こそは
水上
(
みなかみ
)
の
山
(
やま
)
に
輝
(
かがや
)
ける
056
巌根
(
いはね
)
が
末
(
すゑ
)
の
御子
(
みこ
)
なりにける。
057
これに
立
(
た
)
つ
二人
(
ふたり
)
は
家臣
(
いへのこ
)
熊
(
くま
)
、
虎
(
とら
)
と
058
世
(
よ
)
にひびきたる
大丈夫
(
ますらを
)
なるよ。
059
御樋代
(
みひしろ
)
の
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
060
旅
(
たび
)
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
を
謀
(
はか
)
らはれける。
061
鬼婆
(
おにばば
)
の
毒牙
(
どくが
)
にかかり
水奔草
(
すゐほんさう
)
の
062
茶
(
ちや
)
を
飲
(
の
)
まされて
鬼
(
おに
)
となりし
吾
(
われ
)
。
063
三柱
(
みはしら
)
の
男
(
を
)
の
子
(
こ
)
は
何
(
いづ
)
れも
精霊
(
せいれい
)
の
064
世界
(
せかい
)
にありて
婆
(
ばば
)
をきためし』
065
川
(
かは
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
066
『
三柱
(
みはしら
)
の
大丈夫
(
ますらを
)
の
君
(
きみ
)
の
力
(
ちから
)
にて
067
二人
(
ふたり
)
の
婆
(
ばば
)
は
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せにけり。
068
斯
(
か
)
くならば
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
里人
(
さとびと
)
は
069
世
(
よ
)
を
楽
(
たの
)
しみて
送
(
おく
)
るなるらむ。
070
吾
(
われ
)
とても
心
(
こころ
)
明
(
あか
)
るくなりにけり
071
醜
(
しこ
)
の
黒雲
(
くろくも
)
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
りしより』
072
茄子
(
なすび
)
は
之
(
これ
)
に
答
(
こた
)
えて、
073
『ありがたき
御世
(
みよ
)
となりけり
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
074
里
(
さと
)
は
忽
(
たちま
)
ち
楽園
(
みその
)
となりぬ』
075
海
(
うみ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
076
『
終日
(
ひねもす
)
を
婆
(
ばば
)
の
眼
(
まなこ
)
に
射
(
い
)
られつつ
077
心
(
こころ
)
ならずも
忍
(
しの
)
び
来
(
き
)
にける。
078
水奔鬼
(
すゐほんき
)
となりて
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
079
婆
(
ばば
)
の
館
(
やかた
)
に
過
(
す
)
ぎにけらしな。
080
斯
(
か
)
くならば
恐
(
おそ
)
るるものは
更
(
さら
)
になし
081
茄子
(
なすび
)
の
君
(
きみ
)
よ
喜
(
よろこ
)
びたまへ』
082
里人
(
さとびと
)
は
庭
(
には
)
一面
(
いちめん
)
に
群
(
むら
)
がり
来
(
きた
)
り、
083
二人
(
ふたり
)
の
婆
(
ばば
)
アの
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りしと
聞
(
き
)
くより
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
084
歓呼
(
くわんこ
)
の
声
(
こゑ
)
は
天地
(
てんち
)
を
揺
(
ゆる
)
がすばかりなりける。
085
群衆
(
ぐんしう
)
の
中
(
なか
)
より「
水菜
(
みづな
)
」と
言
(
い
)
へる
女身
(
によしん
)
は
長袖
(
ながそで
)
を
纏
(
まと
)
ひながら、
086
広庭
(
ひろには
)
の
中央
(
ちうあう
)
に
立
(
た
)
ち、
087
身振
(
みぶ
)
り
品
(
しな
)
よく
踊
(
をど
)
り
舞
(
ま
)
ふ。
088
群衆
(
ぐんしう
)
は
之
(
これ
)
に
和
(
わ
)
して
手拍子
(
てびやうし
)
足拍子
(
あしびやうし
)
を
揃
(
そろ
)
へ、
089
満面
(
まんめん
)
喜
(
よろこ
)
びに
充
(
み
)
ちながら、
090
月
(
つき
)
の
輪
(
わ
)
を
作
(
つく
)
り
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ひけり。
091
『アア
有難
(
ありがた
)
し
有難
(
ありがた
)
し
092
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
を
包
(
つつ
)
みたる
093
醜
(
しこ
)
の
黒雲
(
くろくも
)
晴
(
は
)
れ
行
(
ゆ
)
きぬ
094
科戸
(
しなど
)
の
風
(
かぜ
)
の
幸
(
さち
)
はひに
095
醜神
(
しこがみ
)
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ば
)
アさんも
096
妹
(
いもと
)
の
譏
(
そし
)
り
婆
(
ば
)
アさんも
097
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
きて
098
今
(
いま
)
は
清
(
すが
)
しき
神
(
かみ
)
の
苑
(
その
)
099
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
里人
(
さとびと
)
ことごとく
100
惜
(
を
)
しき
生命
(
いのち
)
を
奪
(
うば
)
はれて
101
世
(
よ
)
に
愧
(
はづ
)
かしき
水奔鬼
(
すゐほんき
)
102
精霊
(
せいれい
)
の
身
(
み
)
となり
果
(
は
)
てて
103
恨
(
うら
)
みを
返
(
かへ
)
す
術
(
すべ
)
もなく
104
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ば
)
さんの
意
(
い
)
の
儘
(
まま
)
に
105
頤
(
あご
)
の
先
(
さき
)
にて
使
(
つか
)
はれつ
106
艱
(
なや
)
み
苦
(
くる
)
しみ
今日
(
けふ
)
が
日
(
ひ
)
まで
107
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
暮
(
く
)
れにけり
108
水上
(
みなかみ
)
の
山
(
やま
)
にあれませる
109
冬男
(
ふゆを
)
主従
(
しゆじう
)
現
(
あ
)
れまして
110
里
(
さと
)
の
悪魔
(
あくま
)
を
退
(
しりぞ
)
けまし
111
天地
(
あめつち
)
晴
(
は
)
れたる
今日
(
けふ
)
の
日
(
ひ
)
を
112
里人
(
さとびと
)
此処
(
ここ
)
に
集
(
あつ
)
まりて
113
心
(
こころ
)
限
(
かぎ
)
りに
歓
(
ゑら
)
ぐなり
114
ああたのもしや、たのもしや
115
不老
(
ふらう
)
不死
(
ふし
)
なる
精霊
(
せいれい
)
の
116
此
(
この
)
国人
(
くにびと
)
は
今日
(
けふ
)
よりは
117
常世
(
とこよ
)
の
春
(
はる
)
を
楽
(
たの
)
しまむ
1171
常世
(
とこよ
)
の
春
(
はる
)
を
楽
(
たの
)
しまむ
118
冬男
(
ふゆを
)
の
神
(
かみ
)
よ
供神
(
ともがみ
)
よ
119
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
に
鎮
(
しづ
)
まりて
120
此
(
この
)
里人
(
さとびと
)
を
治
(
をさ
)
めまし
121
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る
122
偏
(
ひとへ
)
に
願
(
ねが
)
ひ
奉
(
たてまつ
)
る』
123
と
水菜
(
みづな
)
は
音吐
(
おんと
)
朗々
(
らうらう
)
として
精霊
(
せいれい
)
の
気分
(
きぶん
)
も
何処
(
どこ
)
へやら、
124
愉快気
(
ゆくわいげ
)
に
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
る。
125
斯
(
か
)
くして
歓喜
(
くわんき
)
の
中
(
うち
)
に
其
(
その
)
夜
(
よ
)
は
明
(
あ
)
け
放
(
はな
)
れたれば、
126
各自
(
おのもおのも
)
巌窟
(
いはや
)
の
住家
(
すみか
)
へ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
127
茲
(
ここ
)
に
茄子
(
なすび
)
は
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
128
又
(
また
)
もや
婆
(
ばば
)
の
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
るやも
計
(
はか
)
られざれば、
129
今
(
いま
)
の
間
(
うち
)
に
根城
(
ねじろ
)
を
堅
(
かた
)
め
置
(
お
)
かむと、
130
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
に
幽界
(
いうかい
)
の
結婚式
(
けつこんしき
)
を
挙
(
あ
)
げむ
事
(
こと
)
を
勧誘
(
くわんいう
)
しければ、
131
冬男
(
ふゆを
)
は
乙女
(
をとめ
)
の
山
(
やま
)
を、
132
熊公
(
くまこう
)
は
乙女
(
をとめ
)
の
川
(
かは
)
を、
133
虎公
(
とらこう
)
は
乙女
(
をとめ
)
の
海
(
うみ
)
を
妻
(
つま
)
と
定
(
さだ
)
め、
134
盛大
(
せいだい
)
なる
幽界
(
いうかい
)
の
結婚式
(
けつこんしき
)
を
挙
(
あ
)
ぐることとはなりぬ。
135
茲
(
ここ
)
に
婆
(
ばば
)
の
館
(
やかた
)
を
利用
(
りよう
)
して、
136
三夫婦
(
みふうふ
)
の
結婚式
(
けつこんしき
)
は
目出度
(
めでた
)
く
挙
(
あ
)
げられたり。
137
媒酌役
(
ばいしやくやく
)
は
茄子
(
なすび
)
の
司
(
つかさ
)
にして
茄子
(
なすび
)
は
祝歌
(
しゆくか
)
を
歌
(
うた
)
ふ。
138
『
幽界
(
いうかい
)
に
例
(
ためし
)
もあらぬ
三
(
み
)
つ
組
(
ぐみ
)
の
139
嫁
(
とつ
)
ぎの
盃
(
さかづき
)
かはす
目出度
(
めでた
)
さ。
140
今日
(
けふ
)
よりは
冬男
(
ふゆを
)
の
神
(
かみ
)
のましませば
141
此
(
この
)
里人
(
さとびと
)
は
安
(
やす
)
けかるべし。
142
三柱
(
みはしら
)
の
乙女
(
をとめ
)
は
何
(
いづ
)
れも
夫
(
つま
)
もちて
143
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
に
栄
(
さか
)
えましませ。
144
里人
(
さとびと
)
も
今日
(
けふ
)
の
喜
(
よろこ
)
び
寿
(
ことほ
)
ぎて
145
常世
(
とこよ
)
の
春
(
はる
)
を
楽
(
たの
)
しむなるらむ。
146
吾
(
われ
)
も
亦
(
また
)
これの
嫁
(
とつ
)
ぎの
媒酌人
(
なかうど
)
と
147
なりたる
今日
(
けふ
)
を
嬉
(
うれ
)
しく
思
(
おも
)
へり。
148
里人
(
さとびと
)
にかはりて
今日
(
けふ
)
の
喜
(
よろこ
)
びを
149
恭
(
うやうや
)
しくも
寿
(
ことほ
)
ぎ
奉
(
まつ
)
らむ。
150
常世
(
とこよ
)
行
(
ゆ
)
く
闇
(
やみ
)
につつまる
此
(
この
)
丘
(
をか
)
も
151
君
(
きみ
)
の
天降
(
あも
)
りに
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
りけり。
152
此
(
この
)
里
(
さと
)
にさやりし
二人
(
ふたり
)
の
鬼婆
(
おにばば
)
は
153
行方知
(
ゆくへし
)
れずとなりにけらしな。
154
鬼婆
(
おにばば
)
の
再
(
ふたた
)
び
帰
(
かへ
)
り
来
(
きた
)
るとも
155
里人
(
さとびと
)
力
(
ちから
)
を
協
(
あは
)
せてこばまむ。
156
八十日
(
やそか
)
日
(
ひ
)
はあれども
今日
(
けふ
)
の
吉
(
よ
)
き
日
(
ひ
)
こそ
157
生
(
い
)
く
日
(
ひ
)
足
(
た
)
る
日
(
ひ
)
と
祝
(
いは
)
ひこそすれ』
158
茲
(
ここ
)
に
幽冥界
(
いうめいかい
)
の
結婚
(
けつこん
)
は
行
(
おこな
)
はれたれど、
159
意志
(
いし
)
想念
(
さうねん
)
の
世界
(
せかい
)
なれば、
160
現界
(
げんかい
)
の
如
(
ごと
)
く
諄々
(
くどくど
)
しき
式
(
しき
)
もいらず
極
(
きは
)
めて
簡単
(
かんたん
)
に
挙式
(
きよしき
)
は
終
(
をは
)
れり。
161
冬男
(
ふゆを
)
は
妻
(
つま
)
の
山
(
やま
)
に
向
(
むか
)
ひ
歌
(
うた
)
ふ。
162
『
木枯
(
こがらし
)
の
吹
(
ふ
)
きて
冷
(
つめ
)
たき
此
(
この
)
冬
(
ふゆ
)
を
163
凌
(
しの
)
ぎて
吾
(
われ
)
は
春
(
はる
)
に
逢
(
あ
)
ひぬる。
164
ときじくに
花
(
はな
)
の
香
(
かを
)
りを
保
(
たも
)
てかし
165
山
(
やま
)
なる
乙女
(
をとめ
)
の
紅
(
あか
)
き
心
(
こころ
)
に。
166
思
(
おも
)
ひきや
精霊
(
せいれい
)
の
身
(
み
)
を
持
(
も
)
ちながら
167
斯
(
か
)
かる
乙女
(
をとめ
)
に
見合
(
みあ
)
ひせむとは。
168
年月
(
としつき
)
を
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
雲
(
くも
)
晴
(
は
)
れて
169
乙女
(
をとめ
)
の
胸
(
むね
)
に
月日
(
つきひ
)
照
(
て
)
るなり。
170
此
(
この
)
丘
(
をか
)
の
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
アに
謀
(
はか
)
られて
171
今日
(
けふ
)
は
嬉
(
うれ
)
しき
吉
(
よ
)
き
日
(
ひ
)
に
逢
(
あ
)
ひぬ』
172
山
(
やま
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
173
『
水上山
(
みなかみやま
)
の
麓
(
ふもと
)
に
住
(
す
)
みし
吾
(
われ
)
にして
174
冬男
(
ふゆを
)
の
君
(
きみ
)
にまみゆる
嬉
(
うれ
)
しさ。
175
精霊
(
せいれい
)
となりて
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
辺
(
べ
)
に
176
妹背
(
いもせ
)
を
契
(
ちぎ
)
ると
思
(
おも
)
へば
嬉
(
うれ
)
し。
177
今日
(
けふ
)
よりは
冬男
(
ふゆを
)
の
君
(
きみ
)
を
夫
(
つま
)
として
178
此
(
この
)
里人
(
さとびと
)
を
安
(
やす
)
く
治
(
をさ
)
めむ』
179
熊公
(
くまこう
)
は
妻
(
つま
)
の
川
(
かは
)
に
対
(
たい
)
して
歌
(
うた
)
ふ。
180
『
精霊
(
せいれい
)
となりて
久
(
ひさ
)
しくひそみたる
181
清水
(
しみづ
)
ケ
丘
(
をか
)
を
出
(
い
)
でし
吾
(
われ
)
なり。
182
鬼婆
(
おにばば
)
の
腕
(
うで
)
をむしりて
吾
(
われ
)
此処
(
ここ
)
に
183
来
(
きた
)
りて
姫
(
ひめ
)
に
見合
(
みあ
)
ひぬるかな。
184
苦
(
くる
)
しかるうきめ
忍
(
しの
)
びて
喜
(
よろこ
)
びの
185
丘
(
をか
)
に
盃
(
さかづき
)
とりかはしける。
186
眉目形
(
みめかたち
)
たぐひ
稀
(
まれ
)
なる
乙女
(
をとめ
)
川
(
かは
)
と
187
結
(
むす
)
びし
夢
(
ゆめ
)
は
常世
(
とこよ
)
にもがも。
188
長
(
なが
)
かれと
千代
(
ちよ
)
の
契
(
ちぎ
)
りを
結
(
むす
)
び
昆布
(
こぶ
)
189
ほどけずあれや
互
(
たが
)
ひの
心
(
こころ
)
に』
190
妻
(
つま
)
の
川
(
かは
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
191
『
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
と
定
(
さだ
)
まりにける
熊公
(
くまこう
)
の
192
雄々
(
をを
)
しき
姿
(
すがた
)
に
心
(
こころ
)
足
(
た
)
らへり。
193
大丈夫
(
ますらを
)
の
君
(
きみ
)
にしあれば
鬼婆
(
おにばば
)
の
194
強
(
つよ
)
きもただにくじき
給
(
たま
)
ひし。
195
鬼婆
(
おにばば
)
の
笑
(
わら
)
ひ、
譏
(
そし
)
りを
追
(
お
)
ひ
退
(
の
)
けし
196
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
は
猛者
(
つはもの
)
なりけり。
197
今日
(
けふ
)
よりは
恐
(
おそ
)
るる
事
(
こと
)
は
世
(
よ
)
になけむ
198
二人
(
ふたり
)
の
婆
(
ばば
)
のかげはかくれて』
199
虎公
(
とらこう
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
200
『
幾年
(
いくとせ
)
の
艱
(
なや
)
みを
忍
(
しのぶ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
辺
(
べ
)
に
201
妹背
(
いもせ
)
の
契
(
ちぎ
)
り
結
(
むす
)
びけるはや。
202
幽世
(
かくりよ
)
といへども
地上
(
ちじやう
)
に
生
(
お
)
ふるもの
203
皆
(
みな
)
現世
(
うつしよ
)
とかはりなきかな。
204
男女
(
をのこをみな
)
妹背
(
いもせ
)
の
道
(
みち
)
も
現世
(
うつしよ
)
の
205
心
(
こころ
)
と
更
(
さら
)
にかはりなきかな。
206
鬼婆
(
おにばば
)
の
逃
(
に
)
げたる
跡
(
あと
)
の
広庭
(
ひろには
)
に
207
国
(
くに
)
を
造
(
つく
)
ると
嫁
(
とつ
)
ぎけるかも』
208
海
(
うみ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
209
『
醜草
(
しこぐさ
)
のまばらなりける
此
(
この
)
丘
(
をか
)
に
210
身
(
み
)
も
安
(
やす
)
らけく
見合
(
みあ
)
ひせしかな。
211
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
生命
(
いのち
)
永
(
なが
)
くも
保
(
たも
)
てかし
212
吾
(
わが
)
背
(
せ
)
の
君
(
きみ
)
と
世
(
よ
)
を
楽
(
たの
)
しまむ。
213
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
貴
(
うづ
)
の
守
(
まも
)
りの
深
(
ふか
)
くして
214
千代
(
ちよ
)
万代
(
よろづよ
)
の
喜
(
よろこ
)
びに
逢
(
あ
)
ふも』
215
茲
(
ここ
)
に
鬼婆
(
おにばば
)
の
二人
(
ふたり
)
まで
此
(
この
)
里
(
さと
)
を
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
り、
216
村人
(
むらびと
)
の
心
(
こころ
)
に
清新
(
せいしん
)
の
空気
(
くうき
)
を
注入
(
ちうにふ
)
したる
上
(
うへ
)
、
217
三組
(
みくみ
)
の
結婚式
(
けつこんしき
)
を
挙
(
あ
)
げられ、
218
霊界
(
れいかい
)
ながら
此
(
この
)
丘
(
をか
)
の
里
(
さと
)
は
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
の
花園
(
はなぞの
)
と
変
(
かは
)
り、
219
一人
(
ひとり
)
の
不平
(
ふへい
)
をいふものもなく、
220
世
(
よ
)
は
安
(
やす
)
らけく
治
(
をさ
)
まりにける。
221
(
昭和九・七・二六
旧六・一五
於関東別院南風閣
森良仁
謹録)
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飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
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【霊界物語ネット】
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第六歌集『霧の海』
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