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第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
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第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
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天祥地瑞
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第75巻(寅の巻)
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第80巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 忍ケ丘
01 独り旅
〔2005〕
02 行倒
〔2006〕
03 復活
〔2007〕
04 姉妹婆
〔2008〕
05 三つ盃
〔2009〕
06 秋野の旅
〔2010〕
第2篇 秋夜の月
07 月見ケ丘
〔2011〕
08 月と闇
〔2012〕
09 露の路
〔2013〕
10 五乙女
〔2014〕
11 火炎山
〔2015〕
12 夜見還
〔2016〕
13 樹下の囁き
〔2017〕
14 報哭婆
〔2018〕
15 憤死
〔2019〕
第3篇 天地変遷
16 火の湖
〔2020〕
17 水火垣
〔2021〕
18 大挙出発
〔2022〕
19 笑譏怒泣
〔2023〕
20 復命
〔2024〕
21 青木ケ原
〔2025〕
22 迎への鳥船
〔2026〕
23 野火の壮観
〔2027〕
余白歌
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第80巻
> 第2篇 秋夜の月 > 第8章 月と闇
<<< 月見ケ丘
(B)
(N)
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第八章
月
(
つき
)
と
闇
(
やみ
)
〔二〇一二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻
篇:
第2篇 秋夜の月
よみ(新仮名遣い):
しゅうやのつき
章:
第8章 月と闇
よみ(新仮名遣い):
つきとやみ
通し章番号:
2012
口述日:
1934(昭和9)年07月27日(旧06月16日)
口述場所:
関東別院南風閣
筆録者:
白石恵子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
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:
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8008
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 330頁
修補版:
校定版:
147頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
以南
(
いなん
)
は、
002
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
の
水奔鬼
(
すゐほんき
)
が
縄張
(
なはばり
)
とも
称
(
しよう
)
すべき
魔
(
ま
)
の
原野
(
げんや
)
なり。
003
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
は
此
(
この
)
入口
(
いりぐち
)
に
現
(
あら
)
はれ、
004
一行
(
いつかう
)
の
出発
(
しゆつぱつ
)
を
妨
(
さまた
)
げむとして、
005
小手調
(
こてしら
)
べの
為
(
ため
)
全力
(
ぜんりよく
)
を
尽
(
つく
)
し、
006
黒雲
(
くろくも
)
を
起
(
おこ
)
し、
007
天心
(
てんしん
)
の
月
(
つき
)
を
包
(
つつ
)
みて
闇
(
やみ
)
となし、
008
且
(
かつ
)
一行
(
いつかう
)
の
心胆
(
しんたん
)
を
奪
(
うば
)
はむと
極力
(
きよくりよく
)
譏
(
そし
)
り
散
(
ち
)
らしけるが、
009
秋男
(
あきを
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
に
打
(
う
)
ちまくられ、
010
旗
(
はた
)
を
巻
(
ま
)
き
鉾
(
ほこ
)
を
納
(
をさ
)
めて
退却
(
たいきやく
)
したりける。
011
再
(
ふたた
)
び
大空
(
おほぞら
)
の
雲
(
くも
)
は、
012
科戸
(
しなど
)
の
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
きまくられ、
013
以前
(
いぜん
)
の
如
(
ごと
)
き
明鏡
(
めいきやう
)
の
月
(
つき
)
皎々
(
かうかう
)
と
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
りて、
014
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
清地
(
せいち
)
は、
015
蟻
(
あり
)
の
這
(
は
)
ふさへ
見
(
み
)
ゆるまで
明
(
あか
)
くなりける。
016
秋男
(
あきを
)
は
勇
(
いさ
)
みたち
歌
(
うた
)
ふ。
017
『
面白
(
おもしろ
)
や
醜
(
しこ
)
の
司
(
つかさ
)
の
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
は
018
わが
言霊
(
ことたま
)
に
雲
(
くも
)
と
消
(
き
)
えたり。
019
魔力
(
まぢから
)
の
限
(
かぎ
)
りつくして
大空
(
おほぞら
)
に
020
黒雲
(
くろくも
)
起
(
おこ
)
せし
婆
(
ばば
)
もしれ
者
(
もの
)
よ。
021
全力
(
ぜんりよく
)
を
尽
(
つく
)
せし
婆
(
ばば
)
の
計略
(
たくらみ
)
も
022
生言霊
(
いくことたま
)
に
脆
(
もろ
)
く
消
(
き
)
えたり。
023
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
虫
(
むし
)
の
影
(
かげ
)
さへ
見
(
み
)
ゆるまで
024
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
りたる
今宵
(
こよひ
)
めでたし。
025
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
の
言葉
(
ことば
)
によれば
弟
(
おとうと
)
は
026
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
アに
殺
(
ころ
)
されしとや。
027
さりながら
悪魔
(
あくま
)
の
言葉
(
ことば
)
は
当
(
あて
)
にならじ
028
われを
謀
(
はか
)
るの
手段
(
てだて
)
なるらむ。
029
悪神
(
あくがみ
)
の
力
(
ちから
)
の
底
(
そこ
)
も
見
(
み
)
えにけり
030
わが
魂
(
たましひ
)
はいよいよかがよふ。
031
大空
(
おほぞら
)
の
月
(
つき
)
の
鏡
(
かがみ
)
に
照
(
て
)
らされて
032
悪魔
(
あくま
)
は
霧
(
きり
)
と
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せにけむ。
033
女郎花
(
をみなへし
)
匂
(
にほ
)
へる
丘
(
をか
)
に
休
(
やす
)
らひて
034
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アの
荒
(
すさ
)
び
見
(
み
)
しかな。
035
影
(
かげ
)
かくし
声
(
こゑ
)
のみかくる
婆
(
ばば
)
なれば
036
その
魔力
(
まぢから
)
の
底
(
そこ
)
も
見
(
み
)
ゆめり。
037
いやらしき
声
(
こゑ
)
を
張
(
は
)
りあげ
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
をば
038
嚇
(
おど
)
す
婆
(
ばば
)
アの
浅
(
あさ
)
はかなるも。
039
これよりは
二人
(
ふたり
)
の
婆
(
ばば
)
を
相手
(
あひて
)
とし
040
いむかひ
行
(
ゆ
)
かむ
高光
(
たかみつ
)
の
山
(
やま
)
へ。
041
面白
(
おもしろ
)
き
夢
(
ゆめ
)
の
世
(
よ
)
なるよ
月
(
つき
)
を
見
(
み
)
る
042
丘
(
をか
)
に
曲津
(
まがつ
)
は
闇
(
やみ
)
の
幕
(
まく
)
張
(
は
)
る。
043
闇
(
やみ
)
の
幕
(
まく
)
はもろく
破
(
やぶ
)
れて
鬼婆
(
おにばば
)
は
044
生命
(
いのち
)
からがら
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せにける。
045
萩
(
はぎ
)
桔梗
(
ききやう
)
女郎花
(
をみなへし
)
咲
(
さ
)
く
丘
(
をか
)
の
上
(
へ
)
に
046
うつろふ
月
(
つき
)
は
鏡
(
かがみ
)
なるかも。
047
萩
(
はぎ
)
の
露
(
つゆ
)
むすびて
喉
(
のど
)
を
潤
(
うる
)
ほさむ
048
川水
(
かはみづ
)
ことごと
毒
(
どく
)
の
混
(
まじ
)
れば。
049
水奔草
(
すゐほんさう
)
の
葉末
(
はずゑ
)
の
露
(
つゆ
)
のしたたりて
050
川
(
かは
)
となりぬる
水
(
みづ
)
は
恐
(
おそ
)
ろし。
051
葭原
(
よしはら
)
のよし
草
(
ぐさ
)
の
間
(
ま
)
に
生
(
お
)
ひ
茂
(
しげ
)
る
052
水奔草
(
すゐほんさう
)
はいまはしき
草
(
くさ
)
よ。
053
草
(
くさ
)
の
間
(
ま
)
に
忍
(
しの
)
び
棲
(
す
)
まへる
毒竜
(
どくりう
)
や
054
イヂチに
心
(
こころ
)
注
(
そそ
)
ぎて
進
(
すす
)
まむ。
055
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
天地
(
あめつち
)
一度
(
いちど
)
に
晴
(
は
)
れし
夜
(
よ
)
の
056
月
(
つき
)
の
鏡
(
かがみ
)
を
力
(
ちから
)
に
進
(
すす
)
まむ。
057
秋
(
あき
)
さりて
野辺
(
のべ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
は
涼
(
すず
)
しけれど
058
心
(
こころ
)
せよかし
毒
(
どく
)
の
混
(
まじ
)
れば。
059
果敢
(
はか
)
なくも
鉾
(
ほこ
)
を
納
(
をさ
)
めて
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りし
060
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アの
卑怯
(
ひけふ
)
なるかな』
061
松
(
まつ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
062
『
松
(
まつ
)
に
澄
(
す
)
む
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
はさゆらげり
063
野辺
(
のべ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
のすがたなるらむ。
064
風
(
かぜ
)
の
道
(
みち
)
夜目
(
よめ
)
にも
見
(
み
)
えて
丘
(
をか
)
の
上
(
へ
)
の
065
茂樹
(
しげき
)
の
梢
(
こずゑ
)
波
(
なみ
)
うちにけり。
066
面白
(
おもしろ
)
き
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アのわざをぎを
067
暗闇
(
くらやみ
)
の
幕
(
まく
)
透
(
とほ
)
して
聞
(
き
)
きぬ。
068
一時
(
ひととき
)
はわが
魂
(
たましひ
)
も
戦
(
をのの
)
きぬ
069
二十重
(
はたへ
)
の
闇
(
やみ
)
に
包
(
つつ
)
まれしより。
070
闇
(
やみ
)
の
幕
(
まく
)
われを
包
(
つつ
)
みしたまゆらに
071
魂
(
たま
)
はをののき
消
(
き
)
えむとせしも』
072
竹
(
たけ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
073
『
心
(
こころ
)
弱
(
よわ
)
き
松
(
まつ
)
の
君
(
きみ
)
かなわれはただ
074
空
(
そら
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
とうそぶきて
居
(
ゐ
)
し。
075
闇
(
やみ
)
の
声
(
こゑ
)
目当
(
めあて
)
に
突
(
つ
)
かむと
竹槍
(
たけやり
)
の
076
穂
(
ほ
)
を
磨
(
みが
)
きつつわれは
待
(
ま
)
ち
居
(
ゐ
)
し。
077
上下
(
うへした
)
に
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る
078
婆
(
ばば
)
の
在処
(
ありか
)
を
分
(
わ
)
けがてに
居
(
ゐ
)
し。
079
わが
君
(
きみ
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
にうち
出
(
だ
)
され
080
脆
(
もろ
)
くも
鬼
(
おに
)
は
破
(
やぶ
)
れけるかな。
081
魔力
(
まぢから
)
のあらむ
限
(
かぎ
)
りのはたらきは
082
かくやと
思
(
おも
)
ひわれは
勇
(
いさ
)
むも。
083
肝
(
きも
)
むかふ
心
(
こころ
)
かためて
進
(
すす
)
むべし
084
水奔草
(
すゐほんさう
)
のしげれる
野辺
(
のべ
)
を。
085
月光
(
つきかげ
)
はさやかなれども
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
くるを
086
待
(
ま
)
ちて
進
(
すす
)
まむ
醜
(
しこ
)
の
草原
(
くさはら
)
』
087
梅
(
うめ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
088
『
面白
(
おもしろ
)
き
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アが
現
(
あら
)
はれて
089
泥
(
どろ
)
を
吐
(
は
)
きつつ
逃
(
に
)
げ
帰
(
かへ
)
りけり。
090
暗闇
(
くらやみ
)
の
中
(
なか
)
にまぎれて
譏
(
そし
)
り
言
(
ごと
)
091
ぬかす
婆
(
ばば
)
アの
卑怯
(
ひけふ
)
なるかな。
092
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
、
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アと
面白
(
おもしろ
)
き
093
鬼
(
おに
)
の
棲
(
す
)
むなる
醜
(
しこ
)
の
葭原
(
よしはら
)
よ。
094
葭原
(
よしはら
)
の
広
(
ひろ
)
きに
曲津
(
まが
)
は
潜
(
ひそ
)
むとも
095
われは
飽
(
あ
)
くまで
征討
(
きた
)
めでおくべき。
096
吾
(
わが
)
君
(
きみ
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
に
怖
(
お
)
ぢ
恐
(
おそ
)
れ
097
さすがの
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アも
消
(
き
)
えたり。
098
一度
(
ひとたび
)
は
姿
(
すがた
)
消
(
き
)
ゆれど
何時
(
いつ
)
か
亦
(
また
)
099
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アは
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
らむ。
100
われも
亦
(
また
)
譏
(
そし
)
り
散
(
ち
)
らして
鬼婆
(
おにばば
)
の
101
度肝
(
どぎも
)
を
抜
(
ぬ
)
いてくれむとぞ
思
(
おも
)
ふ。
102
譏
(
そし
)
る
事
(
こと
)
ならばひるまじ
何処
(
どこ
)
までも
103
人
(
ひと
)
の
悪口
(
わるくち
)
好
(
す
)
きな
吾
(
われ
)
なり。
104
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
いくらなりとも
譏
(
そし
)
れかし
105
悪
(
あく
)
たれ
婆
(
ばば
)
アの
寝言
(
ねごと
)
と
聞
(
き
)
かむ。
106
ざまを
見
(
み
)
ろ
生言霊
(
いくことたま
)
にやらはれて
107
影
(
かげ
)
も
形
(
かたち
)
もなきつつ
逃
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く。
108
どこまでも
婆
(
ばば
)
アの
後
(
あと
)
を
追跡
(
ついせき
)
し
109
譏
(
そし
)
り
殺
(
ころ
)
してやらねば
置
(
お
)
かぬ。
110
籠
(
こも
)
り
木
(
ぎ
)
の
梢
(
こずゑ
)
に
婆
(
ばば
)
は
小
(
ち
)
さくなりて
111
わが
言霊
(
ことたま
)
を
震
(
ふる
)
ひ
聞
(
き
)
くらむ。
112
彼
(
かれ
)
も
亦
(
また
)
しれものなれば
其
(
その
)
姿
(
すがた
)
113
虫
(
むし
)
と
変
(
へん
)
じて
忍
(
しの
)
び
居
(
ゐ
)
るらむ。
114
面白
(
おもしろ
)
き
婆
(
ばば
)
アの
荒
(
すさ
)
びを
見
(
み
)
たりけり
115
姿
(
すがた
)
なけれどくだけたる
声
(
こゑ
)
』
116
桜
(
さくら
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
117
『わが
君
(
きみ
)
の
生言霊
(
いくことたま
)
に
大空
(
おほぞら
)
の
118
黒雲
(
くろくも
)
晴
(
は
)
れて
月
(
つき
)
は
覗
(
のぞ
)
けり。
119
望
(
もち
)
の
夜
(
よ
)
の
月
(
つき
)
を
頭
(
かしら
)
に
浴
(
あ
)
びながら
120
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
に
雄猛
(
をたけ
)
びするかな。
121
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
も
俄
(
には
)
かに
高
(
たか
)
く
冴
(
さ
)
えにけり
122
月
(
つき
)
のしたびに
露
(
つゆ
)
をなめつつ。
123
瑠璃光
(
るりくわう
)
のひかり
照
(
てら
)
して
草
(
くさ
)
の
葉
(
は
)
の
124
露
(
つゆ
)
はあちこち
輝
(
かがや
)
きそめたり。
125
此
(
この
)
清
(
きよ
)
き
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
におほけなくも
126
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アは
現
(
あら
)
はれにけり。
127
さりながら
姿
(
すがた
)
かくせる
鬼婆
(
おにばば
)
の
128
その
卑怯
(
ひけふ
)
さにあきれかへりぬ。
129
ギヤハハハハとさもいやらしき
声
(
こゑ
)
絞
(
しぼ
)
り
130
われ
等
(
ら
)
が
肝
(
きも
)
を
冷
(
ひや
)
さむとせし。
131
曲鬼
(
まがおに
)
の
言葉
(
ことば
)
は
弱
(
よわ
)
く
力
(
ちから
)
なし
132
如何
(
いか
)
でひるまむ
大丈夫
(
ますらを
)
われは。
133
鬼婆
(
おにばば
)
の
力
(
ちから
)
の
底
(
そこ
)
は
見
(
み
)
えにけり
134
いざや
進
(
すす
)
まむ
亡
(
ほろ
)
び
失
(
う
)
すまで。
135
萩
(
はぎ
)
桔梗
(
ききやう
)
女郎花
(
をみなへし
)
咲
(
さ
)
く
此
(
この
)
丘
(
をか
)
に
136
一夜
(
いちや
)
の
露
(
つゆ
)
の
宿
(
やど
)
りたのむも。
137
はろばろと
醜
(
しこ
)
の
大野
(
おほの
)
を
渉
(
わた
)
り
来
(
き
)
て
138
鏡
(
かがみ
)
と
冴
(
さ
)
ゆる
月
(
つき
)
に
親
(
した
)
しむ。
139
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
今宵
(
こよひ
)
は
眠
(
ねむ
)
らず
暁
(
あかつき
)
を
140
待
(
ま
)
ちて
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
に
進
(
すす
)
まむ。
141
音
(
おと
)
に
聞
(
き
)
く
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
は
鬼婆
(
おにばば
)
の
142
手下
(
てした
)
集
(
あつ
)
むる
元津
(
もとつ
)
棲処
(
すみか
)
と』
143
秋男
(
あきを
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
144
『
月明
(
げつめい
)
の
夜
(
よ
)
なれば
秋
(
あき
)
の
百草
(
ももくさ
)
の
145
花
(
はな
)
の
色香
(
いろか
)
もさやに
見
(
み
)
えけり。
146
明
(
あ
)
くるまで
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
此処
(
ここ
)
に
休
(
やす
)
らひて
147
花
(
はな
)
と
月
(
つき
)
とを
賞
(
ほ
)
めて
待
(
ま
)
つべし。
148
丘
(
をか
)
の
上
(
へ
)
に
風
(
かぜ
)
に
靡
(
なび
)
ける
穂薄
(
ほすすき
)
の
149
露
(
つゆ
)
にかがよふ
月
(
つき
)
のさやけさ。
150
花薄
(
はなすすき
)
風
(
かぜ
)
にゆれつつ
打
(
う
)
ち
靡
(
なび
)
く
151
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
夜
(
よる
)
は
静
(
しづ
)
けし。
152
これといふ
人
(
ひと
)
もなき
夜
(
よ
)
に
穂薄
(
ほすすき
)
の
153
誰
(
たれ
)
を
招
(
まね
)
くか
聞
(
き
)
かまほしけれ。
154
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
きのままなる
穂薄
(
ほすすき
)
の
155
姿
(
すがた
)
は
弱
(
よわ
)
き
人
(
ひと
)
に
似
(
に
)
しかも。
156
露
(
つゆ
)
しげく
保
(
たも
)
つ
尾花
(
をばな
)
の
頭
(
かしら
)
重
(
おも
)
み
157
地
(
ち
)
にうつぶして
涙
(
なみだ
)
垂
(
た
)
らせり。
158
かくの
如
(
ごと
)
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アもいづれかの
159
野辺
(
のべ
)
にうち
伏
(
ふ
)
し
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
しにけむ。
160
穂薄
(
ほすすき
)
の
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
にさゆれつつ
161
涙
(
なみだ
)
の
露
(
つゆ
)
を
散
(
ち
)
らす
夜半
(
よは
)
なり。
162
穂薄
(
ほすすき
)
は
此
(
この
)
丘
(
をか
)
のみか
道
(
みち
)
の
辺
(
べ
)
に
163
露
(
つゆ
)
を
浴
(
あ
)
びつつ
招
(
まね
)
き
居
(
ゐ
)
るらむ。
164
心地
(
ここち
)
よき
此
(
この
)
秋空
(
あきぞら
)
を
穂薄
(
ほすすき
)
の
165
風
(
かぜ
)
に
靡
(
なび
)
きて
暮
(
く
)
れ
行
(
ゆ
)
く
惜
(
を
)
しさよ。
166
小夜
(
さよ
)
更
(
ふ
)
けてわびしき
丘
(
をか
)
に
穂薄
(
ほすすき
)
は
167
いと
淋
(
さび
)
しげに
吾
(
われ
)
を
招
(
まね
)
けり。
168
花薄
(
はなすすき
)
風
(
かぜ
)
になびける
優姿
(
やさすがた
)
を
169
見
(
み
)
つつ
思
(
おも
)
ふも
家
(
いへ
)
なるつまを。
170
虫
(
むし
)
の
声
(
こゑ
)
いとも
冴
(
さ
)
えたる
丘
(
をか
)
の
上
(
へ
)
に
171
花波
(
はななみ
)
寄
(
よ
)
する
夜半
(
よは
)
の
穂
(
ほ
)
すすき。
172
夜半
(
よは
)
の
風
(
かぜ
)
松
(
まつ
)
をそよがす
度毎
(
たびごと
)
に
173
丘
(
をか
)
の
尾花
(
をばな
)
は
袖
(
そで
)
かへすなり。
174
吹
(
ふ
)
き
払
(
はら
)
ふ
風
(
かぜ
)
に
袂
(
たもと
)
を
靡
(
なび
)
かせつ
175
なほ
露
(
つゆ
)
しげき
穂
(
ほ
)
すすきの
花
(
はな
)
』
176
松
(
まつ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
177
『
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
小草
(
をぐさ
)
の
花
(
はな
)
に
置
(
お
)
く
露
(
つゆ
)
も
178
今宵
(
こよひ
)
は
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
にかがよふ。
179
八千草
(
やちぐさ
)
の
茂
(
しげ
)
みにすだく
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
は
180
いよいよ
高
(
たか
)
く
月
(
つき
)
も
聞
(
き
)
くらむ。
181
夜
(
よ
)
の
露
(
つゆ
)
にぬるる
袂
(
たもと
)
を
絞
(
しぼ
)
りながら
182
尾花
(
をばな
)
を
分
(
わ
)
けてのぼり
来
(
こ
)
しはや。
183
夕
(
ゆふ
)
さりて
秋風
(
あきかぜ
)
そよぐ
此
(
この
)
丘
(
をか
)
に
184
のぼれば
松
(
まつ
)
に
月
(
つき
)
はさゆるる。
185
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
につくづく
秋
(
あき
)
を
知
(
し
)
る
186
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
露
(
つゆ
)
のやどりに。
187
淡
(
うす
)
く
濃
(
こ
)
く
染
(
そ
)
め
出
(
いだ
)
したる
紅葉
(
もみぢば
)
の
188
かげ
一色
(
ひといろ
)
に
見
(
み
)
ゆる
月
(
つき
)
の
夜
(
よ
)
。
189
黒雲
(
くろくも
)
に
包
(
つつ
)
まれたれどしら
百合
(
ゆり
)
の
190
花
(
はな
)
は
真白
(
ましろ
)
く
見
(
み
)
えにけらしな。
191
鬼婆
(
おにばば
)
も
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
の
風光
(
ふうくわう
)
に
192
憧
(
こが
)
れて
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
な
来
(
きた
)
り
見
(
み
)
るらむ』
193
竹
(
たけ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
194
『
吹
(
ふ
)
き
荒
(
すさ
)
ぶ
風
(
かぜ
)
に
葉末
(
はずゑ
)
の
露
(
つゆ
)
ちりて
195
わが
裳裾
(
もすそ
)
まで
湿
(
しめ
)
らひにける。
196
鬼婆
(
おにばば
)
の
涙
(
なみだ
)
の
露
(
つゆ
)
か
知
(
し
)
らねども
197
わが
衣手
(
ころもで
)
は
重
(
おも
)
くなりぬる。
198
はかなきは
露
(
つゆ
)
の
生命
(
いのち
)
か
風
(
かぜ
)
吹
(
ふ
)
かば
199
ただに
散
(
ち
)
りゆく
鬼婆
(
おにばば
)
の
影
(
かげ
)
。
200
此
(
この
)
丘
(
をか
)
の
月
(
つき
)
のしたびに
輝
(
かがや
)
ける
201
露
(
つゆ
)
の
白玉
(
しらたま
)
見
(
み
)
るもさやけし。
202
鬼婆
(
おにばば
)
に
唆
(
そそのか
)
されて
是非
(
ぜひ
)
もなく
203
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
に
夜
(
よ
)
を
明
(
あか
)
しける』
204
梅
(
うめ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
205
『
葭原
(
よしはら
)
の
葭
(
よし
)
の
葉末
(
はずゑ
)
を
吹
(
ふ
)
きて
来
(
こ
)
し
206
風
(
かぜ
)
の
響
(
ひび
)
きは
濁
(
にご
)
らへるかも。
207
丘
(
をか
)
の
上
(
へ
)
に
一本
(
ひともと
)
老松
(
おいまつ
)
くつきりと
208
月下
(
げつか
)
にたちて
葉
(
は
)
の
色
(
いろ
)
黒
(
くろ
)
めり。
209
丘
(
をか
)
の
上
(
へ
)
の
赤土
(
あかつち
)
の
上
(
へ
)
に
松
(
まつ
)
の
影
(
かげ
)
210
描
(
ゑが
)
きて
月
(
つき
)
は
西
(
にし
)
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
く。
211
明日
(
あす
)
の
日
(
ひ
)
は
醜
(
しこ
)
の
大野
(
おほの
)
をのり
越
(
こ
)
えて
212
岩
(
いは
)
の
根
(
ね
)
木
(
き
)
の
根
(
ね
)
踏
(
ふ
)
みさくみ
行
(
ゆ
)
かむ。
213
葭草
(
よしぐさ
)
の
生
(
お
)
ひ
茂
(
しげ
)
りたる
低所
(
ひくどころ
)
214
さけて
通
(
とほ
)
らむ
薄
(
すすき
)
生
(
お
)
ふる
野
(
の
)
を。
215
高
(
たか
)
き
地
(
ち
)
は
穂薄
(
ほすすき
)
なびき
低
(
ひく
)
き
地
(
ち
)
は
216
しめりて
葭草
(
よしぐさ
)
茂
(
しげ
)
らへるかも』
217
桜
(
さくら
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
218
『ほのぼのと
東
(
あづま
)
の
空
(
そら
)
は
白
(
しら
)
みけり
219
西
(
にし
)
行
(
ゆ
)
く
月
(
つき
)
のかげうすらぎて。
220
やがて
今
(
いま
)
豊栄
(
とよさか
)
のぼる
日
(
ひ
)
の
光
(
かげ
)
を
221
力
(
ちから
)
とたのみ
南
(
みなみ
)
に
進
(
すす
)
まむ。
222
南
(
みむなみ
)
の
空
(
そら
)
に
聳
(
そび
)
ゆる
火炎山
(
くわえんざん
)
は
223
ほのかに
見
(
み
)
えて
霞
(
かすみ
)
棚引
(
たなび
)
く。
224
火炎山
(
くわえんざん
)
かすみの
帯
(
おび
)
をしめながら
225
曲鬼
(
まがおに
)
数多
(
あまた
)
かかへ
居
(
ゐ
)
るらし。
226
東
(
ひむがし
)
の
御空
(
みそら
)
つぎつぎ
明
(
あか
)
らみて
227
数多
(
あまた
)
の
星
(
ほし
)
はかくろひにけり』
228
これより
一行
(
いつかう
)
は、
229
火炎山
(
くわえんざん
)
方面
(
はうめん
)
さして、
230
やや
高
(
たか
)
き
原野
(
げんや
)
を
伝
(
つた
)
ひながら、
231
宣伝歌
(
せんでんか
)
をうたひ
南進
(
なんしん
)
する
事
(
こと
)
となりぬ。
232
(
昭和九・七・二七
旧六・一六
於関東別院南風閣
白石恵子
謹録)
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