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第80巻(未の巻)
序文
総説
第1篇 忍ケ丘
01 独り旅
〔2005〕
02 行倒
〔2006〕
03 復活
〔2007〕
04 姉妹婆
〔2008〕
05 三つ盃
〔2009〕
06 秋野の旅
〔2010〕
第2篇 秋夜の月
07 月見ケ丘
〔2011〕
08 月と闇
〔2012〕
09 露の路
〔2013〕
10 五乙女
〔2014〕
11 火炎山
〔2015〕
12 夜見還
〔2016〕
13 樹下の囁き
〔2017〕
14 報哭婆
〔2018〕
15 憤死
〔2019〕
第3篇 天地変遷
16 火の湖
〔2020〕
17 水火垣
〔2021〕
18 大挙出発
〔2022〕
19 笑譏怒泣
〔2023〕
20 復命
〔2024〕
21 青木ケ原
〔2025〕
22 迎への鳥船
〔2026〕
23 野火の壮観
〔2027〕
余白歌
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第一五章
憤死
(
ふんし
)
〔二〇一九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第80巻 天祥地瑞 未の巻
篇:
第2篇 秋夜の月
よみ(新仮名遣い):
しゅうやのつき
章:
第15章 憤死
よみ(新仮名遣い):
ふんし
通し章番号:
2019
口述日:
1934(昭和9)年07月28日(旧06月17日)
口述場所:
関東別院南風閣
筆録者:
森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1934(昭和9)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
秋男は木蔭に立って再び生言霊の祝詞を奏上し、葭原国を開くため、水上山の第三子が言霊によって悪魔を打ち負かし、言向け和すと宣り上げた。すると、心地よい風が吹き通り、山腹の女郎花をゆるがせ、めでたい鳥の声がすがすがしく、虫の声もうるわしく聞こえてきた。
一同は言霊の威力に力を得て、壁立つ山肌を山頂に向かって登り始めた。山頂も間近になったころ、一同は腰をおろして体を休め、下界を眺めながらそれぞれここまでの述懐と、最後の決戦の決意を歌っていた。
すると突然、山頂から大岩石の雨が降り落ちてきた。五人は危険の中を省みずに岩の雨をくぐって山頂に達した。すると、猛獣毒蛇の悪魔たちがいっせいに五人に襲い掛かってきた。
五人は火種を奪おうと火口に殺到したが、猛獣毒蛇の群れは必死で襲い掛かった。そして五人をくわえると、次々に火口に投げ下ろしてしまった。
五人の勇者は火口の火に焼かれ、白骨となって天高く舞い上がり、地上に落ちて果てた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm8015
愛善世界社版:
八幡書店版:
第14輯 367頁
修補版:
校定版:
286頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
秋男
(
あきを
)
は
以前
(
いぜん
)
の
樹蔭
(
こかげ
)
に
立
(
た
)
ちて
此処
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と
生言霊
(
いくことたま
)
を
宣
(
の
)
る。
002
『
高天原
(
たかあまはら
)
に
現
(
あ
)
れませる
003
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
神言
(
みこと
)
もて
004
ア
声
(
ごゑ
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
生
(
あ
)
れませる
005
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
神柱
(
かむばしら
)
006
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
国々
(
くにぐに
)
を
007
経巡
(
へめぐ
)
り
給
(
たま
)
ひて
言霊
(
ことたま
)
の
008
水火
(
いき
)
を
凝
(
こ
)
らして
神
(
かみ
)
を
生
(
う
)
み
009
国土
(
くに
)
を
生
(
う
)
ませる
功績
(
いさをし
)
に
010
大海原
(
おほうなばら
)
も
国土
(
くにつち
)
も
011
𪫧怜
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
生
(
な
)
りましぬ
012
中
(
なか
)
にも
広
(
ひろ
)
き
万里
(
まで
)
の
海
(
うみ
)
013
其
(
その
)
真中
(
まんなか
)
に
浮
(
うか
)
びたる
014
島々
(
しまじま
)
数多
(
あまた
)
ある
中
(
なか
)
に
015
別
(
わ
)
けて
広
(
ひろ
)
けき
葭
(
よし
)
の
島
(
しま
)
016
葭原国
(
よしはらぐに
)
は
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
017
貴
(
うづ
)
の
御水火
(
みいき
)
に
生
(
な
)
るものぞ
018
山河
(
やまかは
)
草木
(
くさき
)
も
人草
(
ひとぐさ
)
も
019
鳥
(
とり
)
獣
(
けだもの
)
のはしまでも
020
皆
(
みな
)
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
水火
(
いき
)
に
021
生
(
な
)
り
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
ひし
御賜物
(
みたまもの
)
022
この
食国
(
をすくに
)
に
安々
(
やすやす
)
と
023
生
(
せい
)
を
享
(
う
)
けたる
現世
(
うつしよ
)
の
024
人
(
ひと
)
のみならず
幽世
(
かくりよ
)
の
025
身魂
(
みたま
)
ことごと
御恵
(
みめぐ
)
みを
026
被
(
かかぶ
)
らぬもの
無
(
な
)
かるべし
027
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
遣
(
つか
)
はせし
028
朝霧
(
あさぎり
)
比女
(
ひめ
)
の
神言
(
みこと
)
もちて
029
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
父
(
ちち
)
の
巌
(
いは
)
ケ
根
(
ね
)
は
030
水上山
(
みなかみやま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
に
031
貴
(
うづ
)
の
館
(
やかた
)
を
構
(
かま
)
へまし
032
予讃
(
よさ
)
の
国原
(
くにはら
)
悉
(
ことごと
)
く
033
治
(
しろ
)
し
食
(
め
)
すべき
司
(
つかさ
)
なり
034
吾
(
われ
)
は
巌
(
いは
)
ケ
根
(
ね
)
第三子
(
だいさんし
)
035
秋男
(
あきを
)
と
名
(
な
)
づくる
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
よ
036
尾
(
を
)
の
上
(
へ
)
に
潜
(
ひそ
)
む
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
も
037
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
も
毒蛇
(
どくへび
)
も
038
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
アも
悉
(
ことごと
)
く
039
父
(
ちち
)
の
命
(
みこと
)
の
配下
(
はいか
)
ぞや
040
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
にもしやもし
041
敵対
(
てきた
)
ひ
来
(
きた
)
る
事
(
こと
)
あらば
042
此
(
この
)
世
(
よ
)
は
愚
(
おろ
)
か
幽世
(
かくりよ
)
の
043
何処
(
いづく
)
の
果
(
はて
)
にも
棲処
(
すみか
)
をば
044
絶対
(
ぜつたい
)
的
(
てき
)
に
許
(
ゆる
)
すまじ
045
汝
(
なんぢ
)
曲津見
(
まがつみ
)
曲鬼
(
まがおに
)
よ
046
吾
(
わが
)
打出
(
うちいだ
)
す
言霊
(
ことたま
)
に
047
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
け
目
(
め
)
を
開
(
ひら
)
き
048
心
(
こころ
)
の
雲霧
(
くもきり
)
打
(
う
)
ち
払
(
はら
)
ひ
049
誠
(
まこと
)
の
心
(
こころ
)
に
立帰
(
たちかへ
)
り
050
神
(
かみ
)
に
従
(
したが
)
ひ
奉
(
まつ
)
るべし
051
ああ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
052
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
053
大御心
(
おほみこころ
)
を
心
(
こころ
)
とし
054
茲
(
ここ
)
に
秋男
(
あきを
)
は
慎
(
つつし
)
みて
055
汝
(
なれ
)
等
(
ら
)
が
為
(
ため
)
に
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
ふ
056
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
五
(
いつ
)
六
(
むゆ
)
七
(
なな
)
八
(
や
)
九
(
ここの
)
十
(
たり
)
057
百
(
もも
)
千
(
ち
)
万
(
よろづ
)
八千万
(
やちよろづ
)
の
神
(
かみ
)
058
守
(
まも
)
り
給
(
たま
)
へ
幸
(
さちは
)
へ
給
(
たま
)
へ
059
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
力
(
ちから
)
あれ
060
吾
(
わが
)
言霊
(
ことたま
)
に
光
(
ひかり
)
あれ』
061
と
声
(
こゑ
)
も
爽
(
さわや
)
かに
歌
(
うた
)
ふ。
062
曲神
(
まがかみ
)
もこの
言霊
(
ことたま
)
に
心
(
こころ
)
和
(
やは
)
らぎたるか、
063
山腹
(
さんぷく
)
の
女郎花
(
をみなへし
)
を
揺
(
ゆる
)
がせて
香
(
かん
)
ばしき
風
(
かぜ
)
心地
(
ここち
)
よく
吹
(
ふ
)
き
通
(
とほ
)
り、
064
梢
(
こずゑ
)
に
囀
(
さへづ
)
る
迦陵
(
かりよう
)
頻伽
(
びんが
)
の
声
(
こゑ
)
一入
(
ひとしほ
)
清
(
すが
)
しく、
065
小草
(
をぐさ
)
にすだく
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
もいと
美
(
うる
)
はしく
啼
(
な
)
きにける。
066
松
(
まつ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
067
『ありがたし
秋男
(
あきを
)
の
君
(
きみ
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
068
天地
(
あめつち
)
開
(
ひら
)
く
心地
(
ここち
)
するなり。
069
掛巻
(
かけまく
)
も
畏
(
かしこ
)
し
厳
(
いづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
070
吾
(
わが
)
魂
(
たましひ
)
もいきり
立
(
た
)
つなり。
071
栄
(
さか
)
えある
君
(
きみ
)
の
言霊
(
ことたま
)
清
(
すが
)
しけれ
072
曲津
(
まが
)
も
必
(
かなら
)
ず
服従
(
まつろ
)
ひ
来
(
きた
)
らむ』
073
竹
(
たけ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
074
『
大空
(
おほぞら
)
を
包
(
つつ
)
みし
黒雲
(
くろくも
)
散
(
ち
)
り
失
(
う
)
せて
075
月日
(
つきひ
)
は
空
(
そら
)
に
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
りけり。
076
吾
(
わが
)
君
(
きみ
)
の
宣
(
の
)
らす
言霊
(
ことたま
)
幸
(
さち
)
はひて
077
葭原
(
よしはら
)
を
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
は
凪
(
な
)
ぎたり。
078
何
(
なん
)
となく
心
(
こころ
)
清
(
すが
)
しくなりにきて
079
吾
(
わが
)
行先
(
ゆくさき
)
の
幸
(
さち
)
を
思
(
おも
)
ふも。
080
音
(
おと
)
に
聞
(
き
)
く
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
は
峻
(
さか
)
しけれど
081
言霊
(
ことたま
)
宣
(
の
)
れば
安
(
やす
)
く
登
(
のぼ
)
れむ。
082
頂
(
いただき
)
に
猛
(
たけ
)
き
獣
(
けもの
)
が
屯
(
たむろ
)
して
083
火種
(
ひだね
)
を
守
(
まも
)
ると
吾
(
われ
)
は
聞
(
き
)
きけり。
084
笑
(
わら
)
ひ
婆
(
ばば
)
、
譏
(
そし
)
り
婆
(
ばば
)
アのいたづらも
085
野辺
(
のべ
)
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
となりにけるかな。
086
先
(
さき
)
の
夜
(
よ
)
に
月見
(
つきみ
)
ケ
丘
(
をか
)
に
荒
(
すさ
)
みたる
087
婆
(
ばば
)
アはあはれ
影
(
かげ
)
隠
(
かく
)
しける』
088
梅
(
うめ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
089
『
高
(
たか
)
らかに
宣
(
の
)
らせる
厳
(
いづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
090
天地
(
あめつち
)
四方
(
よも
)
の
雲霧
(
くもきり
)
晴
(
は
)
れ
行
(
ゆ
)
く。
091
千早振
(
ちはやぶ
)
る
神
(
かみ
)
の
伊吹
(
いぶき
)
の
言霊
(
ことたま
)
は
092
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
洗
(
あら
)
ふ
力
(
ちから
)
なりけり。
093
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
生言霊
(
いくことたま
)
をおいて
外
(
ほか
)
に
094
尊
(
たふと
)
きものはあらじと
思
(
おも
)
ふ。
095
山
(
やま
)
に
野
(
の
)
に
平和
(
へいわ
)
の
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
き
起
(
おこ
)
り
096
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
実
(
みの
)
るも
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さち
)
。
097
斯
(
か
)
くまでも
尊
(
たふと
)
き
君
(
きみ
)
と
知
(
し
)
らざりき
098
秋男
(
あきを
)
の
神
(
かみ
)
の
生
(
い
)
ける
言霊
(
ことたま
)
よ』
099
桜
(
さくら
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
100
『
種々
(
くさぐさ
)
の
艱
(
なや
)
みに
遇
(
あ
)
ひて
吾々
(
われわれ
)
は
101
生言霊
(
いくことたま
)
の
力
(
ちから
)
覚
(
さと
)
りぬ。
102
幾万
(
いくまん
)
の
敵
(
てき
)
現
(
あら
)
はるも
恐
(
おそ
)
れざらむ
103
君
(
きみ
)
が
言霊
(
ことたま
)
清
(
きよ
)
く
響
(
ひび
)
けば。
104
アオウエイ
五大
(
ごだい
)
父音
(
ふおん
)
の
功績
(
いさをし
)
に
105
此
(
この
)
天地
(
あめつち
)
は
生
(
な
)
り
出
(
い
)
でしと
聞
(
き
)
く。
106
今
(
いま
)
となりて
神
(
かみ
)
の
力
(
ちから
)
の
尊
(
たふと
)
さを
107
覚
(
さと
)
りけるかな
愚
(
おろか
)
なる
吾
(
われ
)
は。
108
草枕
(
くさまくら
)
旅
(
たび
)
を
重
(
かさ
)
ねて
山裾
(
やますそ
)
の
109
茂樹
(
しげき
)
の
蔭
(
かげ
)
に
道
(
みち
)
を
覚
(
さと
)
りぬ。
110
水奔鬼
(
すゐほんき
)
如何
(
いか
)
にたくむも
何
(
なに
)
かあらむ
111
言霊剣
(
ことたまつるぎ
)
帯
(
お
)
ぶる
吾
(
わが
)
身
(
み
)
は。
112
吾
(
わが
)
帯
(
お
)
ぶる
言霊剣
(
ことたまつるぎ
)
は
錆
(
さ
)
びぬれど
113
君
(
きみ
)
は
鋭
(
するど
)
き
力
(
ちから
)
持
(
も
)
たせり』
114
茲
(
ここ
)
に
秋男
(
あきを
)
は
意
(
い
)
を
決
(
けつ
)
し、
115
生言霊
(
いくことたま
)
の
功
(
いさを
)
の
尊
(
たふと
)
さに
力
(
ちから
)
を
得
(
え
)
、
116
自
(
みづか
)
ら
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
ちて、
117
壁立
(
かべた
)
つ
山肌
(
やまはだ
)
を
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
伝
(
つた
)
ひながら
歌
(
うた
)
ひつつ
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
118
『
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
は
峻
(
さか
)
しとも
119
百草
(
ももくさ
)
千草
(
ちぐさ
)
吾
(
わが
)
行
(
ゆ
)
く
手
(
て
)
120
うづめ
塞
(
ふさ
)
ぎて
妨
(
さまた
)
ぐる
121
此
(
この
)
山路
(
やまみち
)
も
何
(
なに
)
かあらむ
122
生言霊
(
いくことたま
)
の
剣
(
つるぎ
)
もて
123
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
斬
(
き
)
りなびけ
124
行
(
ゆ
)
く
手
(
て
)
を
清
(
きよ
)
めて
登
(
のぼ
)
るべし
125
此
(
こ
)
の
頂
(
いただき
)
の
火口
(
くわこう
)
には
126
獅子王
(
ししわう
)
、
熊王
(
くまわう
)
、
虎王
(
とらわう
)
や
127
狼
(
おほかみ
)
、
大蛇
(
をろち
)
集
(
あつ
)
まりて
128
昼夜
(
ちうや
)
に
守
(
まも
)
り
居
(
ゐ
)
ると
聞
(
き
)
く
129
如何
(
いか
)
なる
猛
(
たけ
)
き
獣
(
けだもの
)
も
130
神
(
かみ
)
の
賜
(
たま
)
ひし
言霊
(
ことたま
)
の
131
剣
(
つるぎ
)
にかけて
服従
(
まつろ
)
はし
132
神
(
かみ
)
の
経綸
(
しぐみ
)
の
火
(
ひ
)
の
種
(
たね
)
を
133
奪
(
うば
)
ひ
帰
(
かへ
)
らで
置
(
お
)
くべきや
134
此
(
この
)
山路
(
やまみち
)
は
峻
(
さか
)
しくて
135
行
(
ゆ
)
き
艱
(
なや
)
めども
真心
(
まごころ
)
の
136
限
(
かぎ
)
りを
尽
(
つく
)
し
身
(
み
)
を
尽
(
つく
)
し
137
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
為
(
た
)
め
世
(
よ
)
の
為
(
た
)
めに
138
進
(
すす
)
む
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
にさやるべき
139
如何
(
いか
)
なる
曲津
(
まが
)
もあるべきや
140
松
(
まつ
)
、
竹
(
たけ
)
、
梅
(
うめ
)
よ
桜
(
さくら
)
ども
141
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
みて
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
れ
142
一度
(
いちど
)
は
不覚
(
ふかく
)
はとりつれど
143
生言霊
(
いくことたま
)
の
力
(
ちから
)
をば
144
覚
(
さと
)
り
切
(
き
)
りたる
吾
(
わが
)
身魂
(
みたま
)
145
最早
(
もはや
)
恐
(
おそ
)
るる
事
(
こと
)
もなし
146
ああ
勇
(
いさ
)
ましや
面白
(
おもしろ
)
や
147
魔神
(
まがみ
)
の
集
(
つど
)
ふ
巣窟
(
さうくつ
)
に
148
言霊剣
(
ことたまつるぎ
)
抜
(
ぬ
)
きつれて
149
吾
(
われ
)
はすくすく
進
(
すす
)
むなり。
150
岩根
(
いはね
)
木根
(
きね
)
踏
(
ふ
)
みさくみつつ
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く
151
火炎
(
くわえん
)
の
山
(
やま
)
は
清
(
すが
)
しくもあるかな。
152
見下
(
みおろ
)
せば
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
に
白雲
(
しらくも
)
は
153
豊
(
ゆた
)
かに
遊
(
あそ
)
びて
風
(
かぜ
)
にゆるげり。
154
白雲
(
しらくも
)
の
空
(
そら
)
に
聳
(
そび
)
えし
此
(
この
)
山
(
やま
)
に
155
登
(
のぼ
)
りて
四方
(
よも
)
の
国形
(
くにがた
)
見
(
み
)
むかな。
156
久方
(
ひさかた
)
の
春
(
はる
)
の
御空
(
みそら
)
にぼんやりと
157
霞
(
かす
)
むは
高光山
(
たかみつやま
)
の
姿
(
すがた
)
か。
158
高光
(
たかみつ
)
の
山
(
やま
)
は
尊
(
たふと
)
し
御樋代
(
みひしろ
)
の
159
神
(
かみ
)
の
坐
(
ま
)
します
聖場
(
せいぢやう
)
なりせば。
160
朝霧
(
あさぎり
)
比女
(
ひめ
)
永遠
(
とは
)
に
坐
(
ま
)
します
高光
(
たかみつ
)
の
161
山
(
やま
)
の
姿
(
すがた
)
のおごそかなるかも。
162
今
(
いま
)
暫
(
しば
)
し
進
(
すす
)
めば
頂上
(
いただき
)
に
達
(
たつ
)
すべし
163
暫
(
しば
)
しを
此処
(
ここ
)
に
息
(
いき
)
休
(
やす
)
まさむ』
164
と
歌
(
うた
)
ひつつ
路
(
みち
)
の
辺
(
べ
)
の
萱草
(
かやくさ
)
を
打敷
(
うちし
)
き、
165
どつかと
臀
(
しり
)
を
下
(
おろ
)
し、
166
松
(
まつ
)
、
167
竹
(
たけ
)
、
168
梅
(
うめ
)
、
169
桜
(
さくら
)
も、
170
ともに
眼下
(
がんか
)
の
四方
(
よも
)
を
見渡
(
みわた
)
しながら
各自
(
おのもおのも
)
に
歌
(
うた
)
ふ。
171
松
(
まつ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
172
『
麓辺
(
ふもとべ
)
は
百樹
(
ももき
)
茂
(
しげ
)
らひこの
辺
(
あた
)
り
173
萱草
(
かやくさ
)
ばかり
生
(
お
)
ひにけるかな。
174
雲
(
くも
)
を
抜
(
ぬ
)
くこの
高山
(
たかやま
)
に
登
(
のぼ
)
り
見
(
み
)
れば
175
吾
(
わが
)
息
(
いき
)
さへも
苦
(
くる
)
しかりけり。
176
葭原
(
よしはら
)
の
国原
(
くにはら
)
ことごと
白雲
(
しらくも
)
に
177
包
(
つつ
)
まれさながら
海原
(
うなばら
)
の
如
(
ごと
)
し。
178
ぼんやりと
彼方
(
かなた
)
の
空
(
そら
)
に
峙
(
そばだ
)
てる
179
高光山
(
たかみつやま
)
を
見
(
み
)
れば
尊
(
たふと
)
し。
180
自
(
おのづか
)
ら
尊
(
たふと
)
さの
湧
(
わ
)
く
山
(
やま
)
なれや
181
御樋代
(
みひしろ
)
神
(
がみ
)
の
御舎
(
みあらか
)
として』
182
竹
(
たけ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
183
『
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
もいと
冷
(
ひ
)
え
冷
(
び
)
えと
身
(
み
)
にしみて
184
身
(
み
)
は
軽々
(
かろがろ
)
となりし
心地
(
ここち
)
す。
185
若君
(
わかぎみ
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
登
(
のぼ
)
り
見
(
み
)
れば
186
早
(
はや
)
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
も
聞
(
きこ
)
えずなりぬ。
187
火炎山
(
くわえんざん
)
の
此処
(
ここ
)
は
漸
(
やうや
)
く
七合目
(
しちがふめ
)
よ
188
されど
鳥
(
とり
)
の
音
(
ね
)
虫
(
むし
)
の
音
(
ね
)
もなし。
189
尾花
(
をばな
)
野
(
の
)
に
風
(
かぜ
)
に
靡
(
なび
)
きて
其
(
その
)
他
(
ほか
)
の
190
草木
(
くさき
)
なければ
花
(
はな
)
の
香
(
か
)
もなし』
191
梅
(
うめ
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
192
『
曲神
(
まがかみ
)
の
集
(
つど
)
ふ
山
(
やま
)
とは
見
(
み
)
えぬまで
193
眺
(
なが
)
めよろしき
聖所
(
すがど
)
なりけり。
194
曲神
(
まがかみ
)
は
白雲
(
しらくも
)
の
線
(
せん
)
を
限
(
かぎ
)
りにて
195
麓
(
ふもと
)
に
群
(
むら
)
がり
棲
(
す
)
めるなるらむ。
196
見
(
み
)
の
限
(
かぎ
)
り
葭草
(
よしぐさ
)
茂
(
しげ
)
る
原野
(
はらの
)
なり
197
水上
(
みなかみ
)
の
山
(
やま
)
は
雲
(
くも
)
の
上
(
へ
)
に
浮
(
う
)
く。
198
みはるかす
水上山
(
みなかみやま
)
の
頂
(
いただき
)
に
199
います
巌ケ根
(
いはがね
)
司
(
つかさ
)
恋
(
こひ
)
しき。
200
種々
(
くさぐさ
)
の
曲
(
まが
)
の
艱
(
なや
)
みに
遇
(
あ
)
ひながら
201
漸
(
やうや
)
く
此処
(
ここ
)
に
登
(
のぼ
)
り
来
(
き
)
つるも。
202
山風
(
やまかぜ
)
は
足
(
あし
)
の
下
(
した
)
より
吹
(
ふ
)
き
来
(
きた
)
る
203
思
(
おも
)
へば
高
(
たか
)
き
山
(
やま
)
にもあるかな。
204
獅子
(
しし
)
熊
(
くま
)
や
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
や
大蛇
(
をろち
)
まで
205
棲
(
す
)
む
此
(
こ
)
の
山
(
やま
)
は
火炎
(
くわえん
)
吐
(
は
)
くなり。
206
夜
(
よる
)
されば
焔
(
ほのほ
)
の
光
(
ひかり
)
百里余
(
ひやくりよ
)
の
207
野辺
(
のべ
)
を
照
(
て
)
らすと
聞
(
き
)
くも
凄
(
すさ
)
まじ。
208
若君
(
わかぎみ
)
に
従
(
したが
)
ひ
奉
(
まつ
)
り
国
(
くに
)
の
為
(
ため
)
に
209
火種
(
ひだね
)
を
取
(
と
)
りて
山
(
やま
)
降
(
くだ
)
らばや』
210
桜
(
さくら
)
は
歌
(
うた
)
ふ。
211
『
言霊
(
ことたま
)
の
剣
(
つるぎ
)
あれども
心
(
こころ
)
せよ
212
曲津
(
まがつ
)
の
備
(
そな
)
へ
厳
(
きび
)
しくありせば。
213
曲津見
(
まがつみ
)
は
最後
(
さいご
)
の
備
(
そな
)
へを
構
(
かま
)
へつつ
214
吾
(
われ
)
きためむと
待
(
ま
)
てるなるべし。
215
魂
(
たましひ
)
に
力
(
ちから
)
をこめて
登
(
のぼ
)
るべし
216
曲津
(
まがつ
)
の
棲処
(
すみか
)
早
(
はや
)
近
(
ちか
)
ければ』
217
斯
(
か
)
く
歌
(
うた
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
218
山上
(
さんじやう
)
より
忽
(
たちま
)
ち
大岩石
(
だいがんせき
)
の
雨
(
あめ
)
、
219
百雷
(
ひやくらい
)
の
落
(
お
)
ち
来
(
きた
)
る
如
(
ごと
)
き
音響
(
おんきやう
)
を
立
(
た
)
てて、
220
五
(
ご
)
人
(
にん
)
が
身辺
(
しんぺん
)
に
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
る
其
(
その
)
危険
(
きけん
)
さ、
221
譬
(
たと
)
ふるものなし。
222
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
此処
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と
岩
(
いは
)
の
雨
(
あめ
)
を
潜
(
くぐ
)
り、
223
辛
(
から
)
うじて
頂上
(
ちやうじやう
)
に
達
(
たつ
)
しければ、
224
猛獣
(
まうじう
)
毒蛇
(
どくじや
)
は
強敵
(
きやうてき
)
こそ
御座
(
ござ
)
むなれと、
225
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らせ
牙
(
きば
)
をとぎ、
226
大口
(
おほぐち
)
開
(
あ
)
けて
咆哮
(
ほうこう
)
怒号
(
どごう
)
しながら、
227
五
(
ご
)
人
(
にん
)
に
向
(
むか
)
つて
噛
(
か
)
みつき
来
(
きた
)
る。
228
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
勇者
(
ゆうしや
)
は、
229
何
(
なに
)
猪口才
(
ちよこざい
)
な、
230
如何
(
いか
)
なる
曲津
(
まがつ
)
の
妨
(
さまた
)
ぐるとも、
231
火種
(
ひだね
)
を
取
(
と
)
らねば
置
(
お
)
くべきかと、
232
驀地
(
まつしぐら
)
に
燃
(
も
)
ゆる
火
(
ひ
)
の
傍
(
そば
)
に
近寄
(
ちかよ
)
りたるを
見
(
み
)
すましたる
猛獣
(
まうじう
)
毒蛇
(
どくじや
)
の
群
(
むれ
)
は、
233
生命
(
いのち
)
限
(
かぎ
)
りに
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
き
)
たり、
234
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
勇者
(
ゆうしや
)
を
口
(
くち
)
にくはへて
各自
(
おのもおのも
)
に
振
(
ふ
)
り
廻
(
まは
)
し、
235
忽
(
たちま
)
ち
火口
(
くわこう
)
に
投
(
とう
)
じ、
236
凱歌
(
がいか
)
を
挙
(
あ
)
げて
唸
(
うな
)
り
嘯
(
うそぶ
)
く
声
(
こゑ
)
は、
237
百雷
(
ひやくらい
)
の
一
(
ひと
)
つになりて
轟
(
とどろ
)
くが
如
(
ごと
)
し。
238
斯
(
か
)
くしてあはれ
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
勇者
(
ゆうしや
)
は、
239
猛烈
(
まうれつ
)
なる
火
(
ひ
)
に
焼
(
や
)
かれ、
240
白骨
(
はくこつ
)
となりて
火焔
(
くわえん
)
の
息
(
いき
)
に
翻弄
(
ほんろう
)
され、
241
高
(
たか
)
く
天
(
てん
)
に
舞
(
ま
)
ひ
上
(
あが
)
り
再
(
ふたた
)
び
地上
(
ちじやう
)
に
落
(
お
)
ち
来
(
きた
)
りけり。
242
(
昭和九・七・二八
旧六・一七
於関東別院南風閣
森良仁
謹録)
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