秋男一行が猛獣の悪魔たちに噴火口に投げ入れられて命を落とした後、半時ほどして火炎山はたちまち大鳴動を始め、前後左右上下に振動すると大爆発を起こした。
高い山影は跡形もなくなり、代わりに大きな湖水が出現し、中央の小さな小島が残るのみであった。猛獣毒蛇、水奔鬼たちは大部分が全滅し、中央の小島には、秋男たちの精霊と、朝霧ら国津神の娘たちの水奔鬼が残り、秋男の精霊は島の主となった。
秋男たちは、未だに残る少数の猛獣毒蛇を滅ぼして、ここに精霊の安全地帯を作ろうと苦心していたが、身体を失った精霊の身では猛獣毒蛇に対抗する力がなく、天地の神に祈願して救いを待つのみであった。
高光山の朝霧比女の神一行は、火炎山が大爆発を起こしたことを知り、協議の結果、朝空男の神、国生男の神二柱が、天の鳥船を作って予讃の国に向かい、様子をうかがってくることとなった。
朝空男の神、国生男の神は述懐の歌を歌いながら鳥船を操り、予讃の国の雲をかき分けて地上に降り、かつて笑い婆の棲家であった忍ケ丘の平地に降り立った。
火炎山は大きな湖になってしまったが、その湖水が忍ケ丘の一里ほど近くまで展開していた。二柱の神々が丘の上で感謝の歌を捧げていると、かつて笑い婆に命を奪われて、精霊となって忍ケ丘を守っていた冬男たちが現れ来て、両神にこれまでの経緯と、降臨への感謝を歌った。
神々は、冬男たちが精霊の身で水奔鬼の鬼婆を追い出したと聞いて、その魂の強さに感心した。両神は、精霊たちを安堵させると、その夜は忍ケ丘の冬男の館に休息を取った。