霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
目 次
設 定
閉じる
×
霊界物語
三鏡
大本神諭
伊都能売神諭
出口王仁三郎全集
出口王仁三郎著作集
王仁文庫
惟神の道
幼ながたり
開祖伝
聖師伝
霧の海(第六歌集)
大本七十年史
大本史料集成
神霊界
新聞記事
新月の光
その他
王仁文献考証
検索は「
王仁DB
」で
←
戻る
霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
第19巻(午の巻)
第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
第24巻(亥の巻)
海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
第32巻(未の巻)
第33巻(申の巻)
第34巻(酉の巻)
第35巻(戌の巻)
第36巻(亥の巻)
舎身活躍
第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
第39巻(寅の巻)
第40巻(卯の巻)
第41巻(辰の巻)
第42巻(巳の巻)
第43巻(午の巻)
第44巻(未の巻)
第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
第56巻(未の巻)
第57巻(申の巻)
第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
第60巻(亥の巻)
山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
第81巻(申の巻)
←
戻る
第37巻(子の巻)
序
総説
第1篇 安閑喜楽
01 富士山
〔1013〕
02 葱節
〔1014〕
03 破軍星
〔1015〕
04 素破抜
〔1016〕
05 松の下
〔1017〕
06 手料理
〔1018〕
第2篇 青垣山内
07 五万円
〔1019〕
08 梟の宵企
〔1020〕
09 牛の糞
〔1021〕
10 矢田の滝
〔1022〕
11 松の嵐
〔1023〕
12 邪神憑
〔1024〕
第3篇 阪丹珍聞
13 煙の都
〔1025〕
14 夜の山路
〔1026〕
15 盲目鳥
〔1027〕
16 四郎狸
〔1028〕
17 狐の尾
〔1029〕
18 奥野操
〔1030〕
19 逆襲
〔1031〕
20 仁志東
〔1032〕
第4篇 山青水清
21 参綾
〔1033〕
22 大僧坊
〔1034〕
23 海老坂
〔1035〕
24 神助
〔1036〕
25 妖魅来
〔1037〕
霊の礎(九)
余白歌
このサイトは『霊界物語』を始めとする出口王仁三郎等の著書を無料で公開しています。
(注・出口王仁三郎の全ての著述を収録しているわけではありません。未収録のものも沢山あります)
閉じる
×
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
その他の設定項目を表示する
ここから下を閉じる
文字サイズ
S
【標準】
M
L
フォント
フォント1
【標準】
フォント2
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
古いブラウザでうまく表示されない時はこの設定を試してみて下さい
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側にだけ表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注
[?]
[※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
全ての脚注を開く
全ての脚注を閉じる(マーク表示)
【標準】
脚注マークを表示しない
文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色
[?]
底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。
[×閉じる]
外字1の色
[?]
この設定は現在使われておりません。
[×閉じる]
外字2の色
[?]
文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。
[×閉じる]
→
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
10月30~31日に旧サイトから新サイトへの移行作業を行う予定です。
実験用サイト
|
サブスク
霊界物語
>
第37巻
> 第1篇 安閑喜楽 > 第4章 素破抜
<<< 破軍星
(B)
(N)
松の下 >>>
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。
【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034 アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。
第四章
素破抜
(
すつぱぬき
)
〔一〇一六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻
篇:
第1篇 安閑喜楽
よみ(新仮名遣い):
あんかんきらく
章:
第4章 素破抜
よみ(新仮名遣い):
すっぱぬき
通し章番号:
1016
口述日:
1922(大正11)年10月08日(旧08月18日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
勘吉が手打ちの宴会場に指定した呉服町の正月屋には、お愛という勘吉なじみの芸者がいた。勘吉は、次郎松の一件では喜楽が往生して詫びを入れにくるのだ、とふかしていた。
喜楽は次郎松と、嘘勝の弟・長吉と三人で正月屋にやってきて、勘吉と盃を交わして宴会が始まった。宴会の最中に長吉は正月屋の階下へ下りて行き、お愛に本当の事の次第や今日の宴会の予算をしゃべってしまった。
お愛から文句を言われた勘吉は、長吉に対して怒りだした。自分はそれをなだめ、明日は朝早い用事があるからと次郎松と長吉の二人を連れて、正月屋を抜け出した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-17 16:07:06
OBC :
rm3704
愛善世界社版:
44頁
八幡書店版:
第7輯 46頁
修補版:
校定版:
46頁
普及版:
20頁
初版:
ページ備考:
001
『
広
(
ひろ
)
い
亀岡
(
かめをか
)
の
十三町
(
じふさんまち
)
に
002
後
(
あと
)
を
見返
(
みかへ
)
す
女郎
(
ぢよろ
)
はない』
003
と
俗謡
(
ぞくえう
)
に
唄
(
うた
)
はれて
居
(
ゐ
)
る
亀岡
(
かめをか
)
の
町
(
まち
)
には、
004
芸者
(
げいしや
)
仲居
(
なかゐ
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
、
005
皆
(
みな
)
京都
(
きやうと
)
の
田舎下
(
いなかくだ
)
し、
006
パチ
者
(
もの
)
の
仕入
(
しい
)
れ
者
(
もの
)
ばかりで、
007
三味線
(
さみせん
)
を
引
(
ひ
)
くと
云
(
い
)
つたら、
008
たすきの
紐
(
ひも
)
でもくくりつけて、
009
座敷中
(
ざしきぢう
)
引
(
ひき
)
まはす
位
(
くらゐ
)
が
関
(
せき
)
の
山
(
やま
)
の
不見転
(
みずてん
)
ばかりである。
010
股
(
また
)
で
挟
(
はさ
)
んで
金
(
かね
)
をとる
釘抜
(
くぎぬき
)
女
(
をんな
)
がザツと
三打
(
さんダース
)
計
(
ばか
)
り、
011
あちらこちらの
料亭
(
れうてい
)
にうろついて
居
(
を
)
つた。
012
勘公
(
かんこう
)
のお
宿坊
(
しゆくばう
)
にして
居
(
ゐ
)
る
呉服町
(
ごふくまち
)
の
正月屋
(
しやうぐわつや
)
には、
013
鄙
(
ひな
)
には
稀
(
まれ
)
な
渋皮
(
しぶかは
)
の
剥
(
む
)
けた、
014
一寸
(
ちよつと
)
小意気
(
こいき
)
な、
015
三味
(
さみ
)
を
能
(
よ
)
う
引
(
ひ
)
かぬデモ
芸者
(
げいしや
)
が
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
抱
(
かか
)
へてあつた。
016
何
(
いづ
)
れも
春
(
はる
)
を
売
(
う
)
るのが
目的
(
もくてき
)
である。
017
其
(
その
)
中
(
なか
)
に
年
(
とし
)
は
二十
(
はたち
)
位
(
くらゐ
)
で、
018
お
愛
(
あい
)
といふ
女
(
をんな
)
が
始終
(
しじう
)
河内屋
(
かはちや
)
に
馴染
(
なじみ
)
を
重
(
かさ
)
ねて、
019
機嫌
(
きげん
)
克
(
よ
)
く
年期
(
ねんき
)
を
務
(
つと
)
めたら、
020
夫婦
(
ふうふ
)
にならうとまで、
021
約束
(
やくそく
)
をして
居
(
ゐ
)
たのである。
022
勘公
(
かんこう
)
は
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
乾児
(
こぶん
)
を
総揚
(
そうあ
)
げして、
023
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として、
024
正月屋
(
しやうぐわつや
)
に
乗込
(
のりこ
)
み、
025
裏
(
うら
)
の
六畳
(
ろくでふ
)
二間
(
ふたま
)
の
古腐
(
ふるくさ
)
つた
座敷
(
ざしき
)
に、
026
真黒
(
まつくろ
)
けに
垢
(
あか
)
で
光
(
ひか
)
つた
柱
(
はしら
)
を
背中
(
せなか
)
に、
027
自慢話
(
じまんばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
028
そこへお
愛
(
あい
)
が
茶
(
ちや
)
を
酌
(
く
)
んで
来
(
き
)
て、
029
お
愛
(
あい
)
『
哥兄
(
にい
)
サン イヤ
親方
(
おやかた
)
サン、
030
あの
次郎松
(
じろまつ
)
事件
(
じけん
)
は
如何
(
どう
)
なりました。
031
きまま
とか
喜楽
(
きらく
)
とか
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
032
割
(
わり
)
とは
度
(
ど
)
し
太
(
ぶと
)
い
奴
(
やつ
)
だと
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
も
言
(
い
)
はれましたが、
033
何
(
なん
)
とか
巧
(
うま
)
く
片
(
かた
)
はつきましたかえ』
034
勘吉
(
かんきち
)
『サア
俺
(
おれ
)
の
威勢
(
ゐせい
)
に
恐
(
おそ
)
れて、
035
流石
(
さすが
)
の
喜楽
(
きらく
)
も、
036
とうとう
泣
(
な
)
きを
入
(
い
)
れよつて、
037
今日
(
けふ
)
はあやまりに
来
(
く
)
るんだ。
038
今晩
(
こんばん
)
の
七
(
しち
)
時
(
じ
)
頃
(
ごろ
)
には
喜楽
(
きらく
)
、
039
次郎松
(
じろまつ
)
、
040
長吉
(
ちやうきち
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
がここへ
謝罪
(
あやまり
)
に
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
だ』
041
お
愛
(
あい
)
『そりや
心地
(
ここち
)
よい
事
(
こと
)
ですなア。
042
一遍
(
いつぺん
)
喜楽
(
きらく
)
が
親方
(
おやかた
)
にあやまる
所
(
ところ
)
を
見
(
み
)
せて
欲
(
ほ
)
しいもんですな』
043
勘吉
(
かんきち
)
(河内屋)
『アハヽヽヽ、
044
侠客
(
けふかく
)
は
侠客
(
けふかく
)
としてそれ
相当
(
さうたう
)
の
礼式
(
れいしき
)
があるのだ。
045
女
(
をんな
)
なぞの
見
(
み
)
に
来
(
く
)
る
所
(
ところ
)
ぢやない。
046
どうぞ
二階
(
にかい
)
に
席
(
せき
)
を
拵
(
こしら
)
へて、
047
誰
(
たれ
)
も
来
(
こ
)
ない
様
(
やう
)
にしておいてくれ。
048
其
(
その
)
式
(
しき
)
さへ
済
(
す
)
めば
手
(
て
)
を
叩
(
たた
)
いてやるから、
049
其
(
その
)
時
(
とき
)
にあがつて
来
(
き
)
て
酌
(
しやく
)
をするんだ』
050
お
愛
(
あい
)
『
一番
(
いちばん
)
に
喜
(
き
)
まま
サンとか
喜楽
(
きらく
)
サンとかに、
051
お
酒
(
さけ
)
を
注
(
つ
)
ぐんですか』
052
とそんな
事
(
こと
)
は
云
(
い
)
うたか
云
(
い
)
はぬか、
053
喜楽
(
きらく
)
は
丁度
(
ちやうど
)
其
(
その
)
時分
(
じぶん
)
に
穴太
(
あなを
)
を
出立
(
しゆつたつ
)
しかけてゐる
位
(
くらゐ
)
だから、
054
何程
(
なにほど
)
エライ
天耳通
(
てんじつう
)
でも、
055
聞取
(
ききと
)
ることは
出来
(
でき
)
なかつた。
056
午後
(
ごご
)
七
(
しち
)
時
(
じ
)
頃
(
ごろ
)
、
057
一寸
(
ちよつと
)
腰
(
こし
)
の
具合
(
ぐあひ
)
の
悪
(
わる
)
いヨボヨボした
次郎松
(
じろまつ
)
サンと、
058
小男
(
こをとこ
)
の
長吉
(
ちやうきち
)
とを
伴
(
つ
)
れて、
059
正月屋
(
しやうぐわつや
)
の
門口
(
かどぐち
)
を
潜
(
くぐ
)
つた。
060
例
(
れい
)
のお
愛
(
あい
)
は
顔
(
かほ
)
に
冷笑
(
れいせう
)
を
泛
(
うか
)
べて、
061
此方
(
こちら
)
が
御免
(
ごめん
)
なさいと
言
(
い
)
へば、
062
厭相
(
いやさう
)
に『へー』と
答
(
こた
)
へて
背中
(
せなか
)
を
向
(
む
)
けた。
063
喜楽
(
きらく
)
は……
此
(
この
)
スベタ
奴
(
め
)
、
064
大事
(
だいじ
)
のお
客
(
きやく
)
さまを
捉
(
とら
)
へて
馬鹿
(
ばか
)
にしやがる、
065
そんなことで
商売
(
しやうばい
)
が
繁昌
(
はんじやう
)
するか……と
云
(
い
)
ひたくなつた。
066
されど
何
(
なん
)
とはなしに
一方
(
いつぱう
)
は
無頼漢
(
ぶらいかん
)
を
相手
(
あひて
)
のこととて、
067
稍
(
やや
)
不安
(
ふあん
)
の
雲
(
くも
)
が
心
(
こころ
)
に
往復
(
わうふく
)
してゐたので、
068
ワザと
笑顔
(
ゑがほ
)
を
作
(
つく
)
り、
069
喜楽
(
きらく
)
『
河内屋
(
かはちや
)
サンは
来
(
き
)
て
居
(
を
)
られますか?』
070
と
問
(
と
)
ひかけた、
071
お
愛
(
あい
)
は、
072
お
愛
(
あい
)
『へー
親分
(
おやぶん
)
ですか。
073
昼
(
ひる
)
頃
(
ごろ
)
から
乾児
(
こぶん
)
をつれて
遊
(
あそ
)
びに
来
(
き
)
てゐられます。
074
お
前
(
まへ
)
サンは
喜楽
(
きらく
)
サンですか。
075
とうとう
河内屋
(
かはちや
)
ハンに
負
(
ま
)
けなはつたのですやろ』
076
と
冷
(
ひや
)
やかに
笑
(
わら
)
ふ。
077
其
(
その
)
態度
(
たいど
)
に
又
(
また
)
むかついた。
078
喜楽
(
きらく
)
『オイ
長吉
(
ちやうきち
)
、
079
次郎松
(
じろまつ
)
サン、
080
こんな
所
(
ところ
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
を
)
つても
仕方
(
しかた
)
がないぢやないか。
081
女中
(
ぢよちう
)
サンに
案内
(
あんない
)
して
貰
(
もら
)
つて
奥
(
おく
)
へ
通
(
とほ
)
らうかい』
082
と
稍
(
やや
)
甲張
(
かんば
)
つた
声
(
こゑ
)
で
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てた。
083
庭
(
には
)
の
上
(
うへ
)
に
八畳
(
はちじやう
)
ばかり
二階
(
にかい
)
座敷
(
ざしき
)
がある。
084
そこの
段階子
(
だんばしご
)
をトントンと
下
(
お
)
りて
来
(
き
)
たのは
与三公
(
よさこう
)
であつた。
085
与三
(
よさ
)
『あゝ
喜楽
(
きらく
)
サン、
086
早
(
はや
)
く
上
(
あが
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
087
親方
(
おやかた
)
が
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ます。
088
約束
(
やくそく
)
の
時間
(
じかん
)
が
遅
(
おく
)
れたと
云
(
い
)
うて、
089
大変
(
たいへん
)
に
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
ですよ。
090
サアサア
早
(
はや
)
く』
091
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
段階子
(
だんばしご
)
をあがる。
092
三
(
さん
)
人
(
にん
)
も
後
(
あと
)
に
跟
(
つ
)
いて
二階
(
にかい
)
へ
上
(
あが
)
つて
見
(
み
)
た。
093
チヤンと
足
(
あし
)
のない
膳
(
ぜん
)
に、
094
五
(
いつ
)
つ
六
(
む
)
つの
菓子碗
(
くわしわん
)
や
皿
(
さら
)
が
並
(
なら
)
べられ、
095
盃洗
(
はいせん
)
までがランプの
影
(
かげ
)
を
映
(
うつ
)
して、
096
三
(
さん
)
人
(
にん
)
ののぼつた
響
(
ひびき
)
に、
097
ランプの
月
(
つき
)
を
盃洗
(
はいせん
)
の
海
(
うみ
)
がゆらつかしてゐる。
098
勘公
(
かんこう
)
『
喜楽
(
きらく
)
サン、
099
遠方
(
ゑんぱう
)
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
でした。
100
ズイ
分
(
ぶん
)
お
前
(
まへ
)
サンも
世話好
(
せわずき
)
ですなア。
101
余
(
あま
)
り
人
(
ひと
)
の
事
(
こと
)
を
構
(
かま
)
うもんぢやありませんぜ。
102
今
(
いま
)
の
人間
(
にんげん
)
は
叶
(
かな
)
はぬ
時
(
とき
)
は
神仏
(
しんぶつ
)
のやうに
言
(
い
)
うて
頼
(
たの
)
み、
103
チンコハイコするものだが、
104
やがて
難
(
なん
)
が
去
(
さ
)
ると、
105
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をするもんだ。
106
人
(
ひと
)
の
世話
(
せわ
)
もよい
加減
(
かげん
)
になさるが
宜
(
よろ
)
しかろ』
107
と
何
(
なん
)
だか
意味
(
いみ
)
ありげな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふ。
108
喜楽
(
きらく
)
『
河内屋
(
かはちや
)
サン、
109
これも
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ずだ。
110
乗
(
の
)
りかけた
舟
(
ふね
)
で、
111
後
(
あと
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
す
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
112
親類
(
しんるゐ
)
のことでもあり、
113
君
(
きみ
)
の
商売
(
しやうばい
)
の
邪魔
(
じやま
)
をしては
済
(
す
)
まんのだけれど、
114
今度
(
こんど
)
の
事件
(
じけん
)
ばかりは
例外
(
れいぐわい
)
だと
思
(
おも
)
つて
貰
(
もら
)
はねばならん』
115
勘公
(
かんこう
)
『さうでせう、
116
何分
(
なにぶん
)
次郎松
(
じろまつ
)
サンに
金
(
かね
)
を
借
(
か
)
つたり、
117
いろいろと
世話
(
せわ
)
になつてゐられるさうだから、
118
こちらも
推量
(
すゐりやう
)
はしてゐるのだ。
119
かう
見
(
み
)
えても
河内屋
(
かはちや
)
は
血
(
ち
)
もあれば
涙
(
なみだ
)
もある
男
(
をとこ
)
ですよ。
120
チツとは
可愛
(
かあい
)
がつてやつて
下
(
くだ
)
せえ』
121
と
半分
(
はんぶん
)
ばかり
侠客
(
けふかく
)
言葉
(
ことば
)
を
使
(
つか
)
うてゐる。
122
元
(
もと
)
が
土百姓
(
どびやくしやう
)
あがりの
侠客
(
けふかく
)
だから、
123
箱根
(
はこね
)
越
(
こ
)
えずの
江戸
(
えど
)
つ
児
(
こ
)
を
使
(
つか
)
はうとするので、
124
其
(
その
)
言霊
(
ことたま
)
にどこともなく
拍子抜
(
ひやうしぬ
)
けがして、
125
余
(
あま
)
り
怖
(
こは
)
相
(
さう
)
にもなく
又
(
また
)
権威
(
けんゐ
)
もない。
126
何
(
なん
)
だかダラけた
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
がする。
127
勘公
(
かんこう
)
『
次郎
(
じろ
)
ヨモさんイヤ
松
(
まつ
)
さん、
128
ズイ
分
(
ぶん
)
お
玉
(
たま
)
が
可愛
(
かあい
)
がつて
頂
(
いただ
)
いた
相
(
さう
)
です。
129
此
(
この
)
後
(
ご
)
もお
見捨
(
みすて
)
なく
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
をしてやつて
下
(
くだ
)
さい、
130
私
(
わたくし
)
も
男
(
をとこ
)
一匹
(
いつぴき
)
だ。
131
一旦
(
いつたん
)
男
(
をとこ
)
に
汚
(
けが
)
された
女
(
をんな
)
を
再
(
ふたた
)
び
連
(
つ
)
れようとは
思
(
おも
)
ひませぬから、
132
アハヽヽヽ』
133
とワザと
豪傑
(
がうけつ
)
笑
(
わら
)
ひをして
肩
(
かた
)
をゆすつてゐる。
134
次郎松
(
じろまつ
)
『イヤもう
年
(
とし
)
を
老
(
と
)
つて、
135
思
(
おも
)
はぬホテテンゴを
致
(
いた
)
しまして、
136
皆
(
みな
)
サンに
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけ
年甲斐
(
としがひ
)
もないことで
御座
(
ござ
)
いますワイ。
137
ハーイ』
138
勘公
(
かんこう
)
『オイ
長吉
(
ちやうきち
)
、
139
貴様
(
きさま
)
もお
玉
(
たま
)
に
少々
(
せうせう
)
おかげを
蒙
(
かうむ
)
つたといふ
事
(
こと
)
だが、
140
有態
(
ありてい
)
に
白状
(
はくじやう
)
せい!
返答
(
へんたふ
)
によつては
此方
(
こちら
)
にも
考
(
かんが
)
へがあるぞ』
141
と
長吉
(
ちやうきち
)
に
対
(
たい
)
してはガラリと
態度
(
たいど
)
をかへ、
142
強圧
(
きやうあつ
)
的
(
てき
)
に
嚇
(
おど
)
しつけた。
143
長吉
(
ちやうきち
)
『ハイ、
144
あの
次郎松
(
じろまつ
)
サンが
何
(
なん
)
で、
145
ヘエそしてヤツパリ
松
(
まつ
)
サンがお
玉
(
たま
)
サンの
何
(
なん
)
です』
146
とモヂモヂし
乍
(
なが
)
ら、
147
ソロソロ
震
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
した。
148
勘公
(
かんこう
)
『コラ
長吉
(
ちやうきち
)
、
149
貴様
(
きさま
)
故
(
ゆゑ
)
にこんなザマの
悪
(
わる
)
い
事件
(
じけん
)
が
起
(
おこ
)
つたのだ。
150
此
(
この
)
責任
(
せきにん
)
は
残
(
のこ
)
らず
貴様
(
きさま
)
にあるのだ。
151
何
(
なん
)
だウソ
勝
(
かつ
)
の
哥兄
(
あに
)
を
持
(
も
)
つたと
思
(
おも
)
うて、
152
ウソ
勝
(
かつ
)
の
親分
(
おやぶん
)
はイロハ
孝太郎
(
かうたらう
)
だと
云
(
い
)
つて
威張
(
ゐば
)
つてゐやがるが、
153
俺
(
おれ
)
は
貴様
(
きさま
)
も
知
(
し
)
つてる
通
(
とほ
)
り、
154
島原
(
しまばら
)
のカンテラ
親分
(
おやぶん
)
の
兄弟分
(
きやうだいぶん
)
だ。
155
事
(
こと
)
と
品
(
しな
)
によつたら、
156
貴様
(
きさま
)
の
為
(
ため
)
に
親分
(
おやぶん
)
同士
(
どうし
)
の
一悶錯
(
ひともんさく
)
が
起
(
おこ
)
らうも
知
(
し
)
れぬぞ』
157
長吉
(
ちやうきち
)
『オヽオウ
河内屋
(
かはちや
)
、
158
そんなこと
云
(
い
)
うたて、
159
シシ
知
(
し
)
らぬワイ。
160
さう
喧
(
やかま
)
し
言
(
い
)
はずに、
161
今日
(
けふ
)
は
仲直
(
なかなほ
)
りに
来
(
き
)
たんだから、
162
ゆつくりと
酒
(
さけ
)
でも
呑
(
の
)
んで
別
(
わか
)
れよぢやないか』
163
勘公
(
かんこう
)
『コリヤ
侠客
(
けふかく
)
の
儀式
(
ぎしき
)
を
知
(
し
)
つてるか、
164
俺
(
おれ
)
の
盃
(
さかづき
)
を
頂
(
いただ
)
かうと
思
(
おも
)
うたら、
165
それ
丈
(
だけ
)
の
方法
(
はうはふ
)
を
知
(
し
)
らなくては
今日
(
けふ
)
の
役
(
やく
)
は
勤
(
つと
)
まらぬぞ。
166
モシも
仕損
(
しそん
)
じをしよつたら、
167
それこそ
承知
(
しようち
)
せぬから、
168
さう
思
(
おも
)
へ』
169
と
喜楽
(
きらく
)
、
170
次郎松
(
じろまつ
)
に
対
(
たい
)
する
不平
(
ふへい
)
を、
171
弱
(
よわ
)
い
男
(
をとこ
)
の
長吉
(
ちやうきち
)
一人
(
ひとり
)
に
集中
(
しふちう
)
してゐる
其
(
その
)
可笑
(
をか
)
しさ。
172
喜楽
(
きらく
)
『
君
(
きみ
)
、
173
僕
(
ぼく
)
は
素人
(
しろうと
)
だ。
174
君
(
きみ
)
は
押
(
お
)
しも
押
(
お
)
されもせぬ
立派
(
りつぱ
)
な
侠客
(
けふかく
)
サンだ。
175
侠客
(
けふかく
)
同士
(
どうし
)
ならば、
176
どんな
六
(
むつ
)
かしい
儀式
(
ぎしき
)
もあらうかも
知
(
し
)
れぬが、
177
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
は
素人
(
しろうと
)
だから、
178
前
(
まへ
)
以
(
もつ
)
て
断
(
ことわ
)
つておく。
179
侠客
(
けふかく
)
の
作法
(
さはふ
)
に
叶
(
かな
)
はないと
云
(
い
)
つて、
180
因縁
(
いんねん
)
をつけるのなら、
181
もう
盃
(
さかづき
)
は
貰
(
もら
)
はぬワ』
182
次郎松
(
じろまつ
)
『
私
(
わし
)
も
喜楽
(
きらく
)
サンのいふ
通
(
とほ
)
り
六
(
むつ
)
かしいことは
知
(
し
)
らぬのだから、
183
こちらの
流儀
(
りうぎ
)
にして
貰
(
もら
)
ひたい、
184
なア
河内屋
(
かはちや
)
サン』
185
勘公
(
かんこう
)
『あゝさういへばさうだ、
186
そんなら
随意
(
ずゐい
)
に、
187
仲直
(
なかなほ
)
りの
酒
(
さけ
)
を
汲
(
く
)
みかはすことにしませう。
188
オイ
与三
(
よさ
)
、
189
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
喜楽
(
きらく
)
サンに
注
(
つ
)
いで、
190
それから
俺
(
おれ
)
に
注
(
つ
)
ぐのだ、
191
俺
(
おれ
)
の
盃
(
さかづき
)
を
松
(
まつ
)
サンに
注
(
さ
)
すのだ、
192
それから
後
(
あと
)
は
勝手
(
かつて
)
に
注
(
つ
)
いで
呑
(
の
)
んだがよい』
193
与三
(
よさ
)
『へー』
194
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
195
燗徳利
(
かんどくり
)
の
握
(
にぎ
)
れぬやうなあつい
奴
(
やつ
)
から、
196
朝顔
(
あさがほ
)
の
花
(
はな
)
の
形
(
かたち
)
したうす
平
(
ひら
)
たい
盃
(
さかづき
)
にドブドブドブと
注
(
つ
)
ぐ。
197
喜楽
(
きらく
)
は
一口
(
ひとくち
)
にグイと
呑
(
の
)
んで、
198
喜楽
(
きらく
)
『
失敬
(
しつけい
)
!』
199
といひ
乍
(
なが
)
ら
勘公
(
かんこう
)
に
渡
(
わた
)
した。
200
勘公
(
かんこう
)
は
巻舌
(
まきじた
)
まぜりのドス
声
(
ごゑ
)
で、
201
勘公
(
かんこう
)
『ハーイ
宜
(
よろ
)
しい』
202
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
受取
(
うけと
)
り、
203
与三公
(
よさこう
)
に
注
(
つ
)
がせた。
204
与三公
(
よさこう
)
が
注
(
つ
)
がうとするやつを
無理
(
むり
)
に
盃
(
さかづき
)
を
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
へ
上
(
あ
)
げて
一滴
(
いつてき
)
も
入
(
い
)
れさせず、
205
呑
(
の
)
んだふりをして……ヘン
貴様
(
きさま
)
の
盃
(
さかづき
)
を
表面
(
へうめん
)
は
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
、
206
実際
(
じつさい
)
誰
(
たれ
)
が
呑
(
の
)
むものか……といふやうな
面付
(
つらつき
)
をしてゐる。
207
河内屋
(
かはちや
)
は
盃
(
さかづき
)
を
次郎松
(
じろまつ
)
の
前
(
まへ
)
に
猿臂
(
ゑんぴ
)
を
伸
(
の
)
ばしてグツと
差出
(
さしだ
)
し、
208
勘公
(
かんこう
)
『サア
色男
(
いろをとこ
)
の
松
(
まつ
)
サン、
209
ワツちの
盃
(
さかづき
)
はお
気
(
き
)
に
入
(
い
)
りますまいが、
210
今日
(
けふ
)
は
仲直
(
なかなほ
)
りの
式
(
しき
)
だから、
211
ドツサリと
受
(
う
)
けて
下
(
くだ
)
さい。
212
イヤ
十分
(
じふぶん
)
打
(
うち
)
とけて
酔
(
よ
)
うて
貰
(
もら
)
はねば、
213
仲直
(
なかなほ
)
りの
精神
(
せいしん
)
が
貫徹
(
くわんてつ
)
しません』
214
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
215
与三
(
よさ
)
の
徳利
(
とくり
)
をグイと
引
(
ひき
)
たくり、
216
ドブドブドブと
松
(
まつ
)
サンの
持
(
も
)
つてゐる
盃
(
さかづき
)
へ
注
(
つ
)
いだ。
217
松
(
まつ
)
サンは、
218
次郎松
(
じろまつ
)
『エヽモウ
結構
(
けつこう
)
結構
(
けつこう
)
、
219
ちります ちります、
220
こぼれます』
221
と
言
(
い
)
つてゐるのを
構
(
かま
)
はず、
222
燗徳利
(
かんどくり
)
をグイと
向
(
むか
)
うへつきつけ、
223
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
に
一杯
(
いつぱい
)
の
酒
(
さけ
)
をダブダブとこぼして
了
(
しま
)
つた。
224
次郎松
(
じろまつ
)
『あゝ
勿体
(
もつたい
)
ない、
225
此
(
この
)
結構
(
けつこう
)
な
酒
(
さけ
)
を』
226
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
227
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
や
畳
(
たたみ
)
の
上
(
うへ
)
にこぼれた
酒
(
さけ
)
を
平手
(
ひらで
)
にすはしてはチウーチウーと
吸
(
す
)
うてゐる。
228
勘公
(
かんこう
)
『コレ
松
(
まつ
)
サン、
229
わつちの
盃
(
さかづき
)
が
気
(
き
)
に
入
(
い
)
らぬのか、
230
皆
(
みな
)
づち
あけて
了
(
しま
)
うとは、
231
余
(
あま
)
り
馬鹿
(
ばか
)
にした
仕打
(
しうち
)
ぢやねいか』
232
と
無理
(
むり
)
難題
(
なんだい
)
を
吹
(
ふ
)
つかけて、
233
引
(
ひ
)
つかからうとしてゐる。
234
喜楽
(
きらく
)
『オイ
君
(
きみ
)
、
235
そんな
冗談
(
ぜうだん
)
を
言
(
い
)
ふもんだないよ。
236
君
(
きみ
)
の
親切
(
しんせつ
)
があふれて
出
(
で
)
たのだから、
237
松
(
まつ
)
サンも
感謝
(
かんしや
)
してゐるんだろ。
238
僕
(
ぼく
)
も
感謝
(
かんしや
)
してゐる。
239
何分
(
なにぶん
)
燗酒
(
かんしゆ
)
だからな、
240
アハヽヽヽ』
241
と
笑
(
わら
)
ひに
紛
(
まぎ
)
らす。
242
主客
(
しゆきやく
)
双方
(
さうはう
)
九
(
く
)
人
(
にん
)
は
表面
(
へうめん
)
仲直
(
なかなほ
)
りといひ
乍
(
なが
)
ら、
243
非常
(
ひじやう
)
に
深
(
ふか
)
い
溝渠
(
こうきよ
)
を
中
(
なか
)
において、
244
危
(
あぶな
)
い
丸木橋
(
まるきばし
)
を
渡
(
わた
)
る
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
で、
245
仲直
(
なかなほ
)
りの
盃
(
さかづき
)
を
汲
(
く
)
みかはしてゐた。
246
ソロソロ
勘公
(
かんこう
)
は
当
(
あ
)
てこすりだらけの
都々逸
(
どどいつ
)
を
唄
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
247
其
(
その
)
間
(
ま
)
に
長吉
(
ちやうきち
)
は
少
(
すこ
)
しく
酒
(
さけ
)
がまはり、
248
階段
(
かいだん
)
を
無断
(
むだん
)
で
下
(
くだ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
249
下座敷
(
したざしき
)
には
勘公
(
かんこう
)
の
思
(
おも
)
ひ
者
(
もの
)
お
愛
(
あい
)
を
始
(
はじ
)
め、
250
二人
(
ふたり
)
の
不見転
(
みずてん
)
芸者
(
げいしや
)
が
長火鉢
(
ながひばち
)
を
囲
(
かこ
)
んで
河内屋
(
かはちや
)
話
(
ばなし
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐた。
251
長吉
(
ちやうきち
)
はヒヨロヒヨロし
乍
(
なが
)
ら
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
にドツカと
坐
(
すわ
)
つた。
252
お
愛
(
あい
)
『コレ
長吉
(
ちやうきち
)
ヤン、
253
とうとう
喜楽
(
きらく
)
安閑坊
(
あんかんばう
)
も
始
(
はじ
)
めは
偉
(
えら
)
い
男
(
をとこ
)
だつたが、
254
尻尾
(
しつぽ
)
を
出
(
だ
)
しよつたぢやおへんか。
255
そんなことなら、
256
体
(
てい
)
よく
始
(
はじ
)
めからあやまつておくといいのに、
257
何程
(
なにほど
)
力
(
ちから
)
があると
云
(
い
)
つても、
258
河内屋
(
かはちや
)
の
旦那
(
だんな
)
にかけたら、
259
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
なことはきまつて
居
(
ゐ
)
るのに、
260
本当
(
ほんたう
)
に
喜楽
(
きらく
)
といふ
男
(
をとこ
)
は
安閑坊
(
あんかんばう
)
だなア』
261
長吉
(
ちやうきち
)
『
何
(
なに
)
、
262
尾
(
を
)
をまいたんでも
何
(
なん
)
でもない。
263
此
(
この
)
前
(
まへ
)
にも
河内屋
(
かはちや
)
と
下河原
(
しもかはら
)
で
喧嘩
(
けんくわ
)
をした
時
(
とき
)
に、
264
河内屋
(
かはちや
)
の
方
(
はう
)
は
子分
(
こぶん
)
や
野次馬
(
やじうま
)
で
三十
(
さんじふ
)
人
(
にん
)
ばかりで、
265
一人
(
ひとり
)
の
喜楽
(
きらく
)
を
取
(
とり
)
まいたが、
266
それでも
喜楽
(
きらく
)
は
五六
(
ごろく
)
人
(
にん
)
なぐりたふして
甘
(
うま
)
く
逃
(
に
)
げよつた
位
(
くらゐ
)
だから、
267
今度
(
こんど
)
だつて
負
(
まけ
)
たんぢやない。
268
マアマア
五分
(
ごぶ
)
々々
(
ごぶ
)
にしとかうかい』
269
お
愛
(
あい
)
『
何
(
なん
)
と
卑怯
(
ひけふ
)
な
喜楽
(
きらく
)
サンだなア。
270
何十
(
なんじふ
)
人
(
にん
)
相手
(
あひて
)
にしても、
271
叶
(
かな
)
はんやうになつたら
逃
(
に
)
げるのなら、
272
あたいだつて、
273
そんな
易
(
やす
)
い
喧嘩
(
けんくわ
)
は
出来
(
でき
)
ますワ。
274
次郎松
(
じろまつ
)
に、
275
何
(
なん
)
でも
喜楽
(
きらく
)
サンは
金
(
かね
)
を
貰
(
もら
)
つたとか、
276
借
(
か
)
つたとか
云
(
い
)
ふことだから、
277
それであれ
丈
(
だけ
)
、
278
義理
(
ぎり
)
にでも
骨
(
ほね
)
を
折
(
お
)
らんならんのだと、
279
与三
(
よさ
)
ハンが
云
(
い
)
うてゐましたよ。
280
事情
(
じじやう
)
を
聞
(
き
)
けば、
281
喜楽
(
きらく
)
ハンも
本当
(
ほんたう
)
に
可哀相
(
かはいさう
)
なとこがあるなア』
282
長吉
(
ちやうきち
)
『ナアニそんな
事
(
こと
)
あるものか。
283
河内屋
(
かはちや
)
奴
(
め
)
が
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
乾児
(
こぶん
)
を
伴
(
つ
)
れて、
284
あんな
痳病
(
りんびやう
)
やみの
次郎松
(
じろまつ
)
サンとこへ
押
(
おし
)
よせて
来
(
き
)
たもんだから、
285
今
(
いま
)
まで
何回
(
なんくわい
)
も
喜楽
(
きらく
)
サンが
掛合
(
かけあ
)
つて
居
(
を
)
つたのだけれど、
286
今度
(
こんど
)
はたまりかねて
応援
(
おうゑん
)
に
往
(
い
)
つたのだ。
287
河内屋
(
かはちや
)
も
抜
(
ぬ
)
いた
刀
(
かたな
)
が
鞘
(
さや
)
に
納
(
をさ
)
まりかねて
困
(
こま
)
つて
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
、
288
わしの
兄
(
あに
)
の
勝
(
かつ
)
ちやんが
仲裁
(
ちうさい
)
に
這入
(
はい
)
つて、
289
ソレから
又
(
また
)
喜楽
(
きらく
)
が
談判
(
だんぱん
)
をして、
290
次郎松
(
じろまつ
)
から
十五
(
じふご
)
円
(
ゑん
)
、
291
河内屋
(
かはちや
)
から
十五
(
じふご
)
円
(
ゑん
)
、
292
勝負
(
かちまけ
)
なしに、
293
仲直
(
なかなほ
)
りといふ
相談
(
さうだん
)
が
出来
(
でき
)
たのだ。
294
一方
(
いつぱう
)
は
侠客
(
けふかく
)
の
親分
(
おやぶん
)
、
295
一方
(
いつぱう
)
は
安閑坊
(
あんかんばう
)
の
喜楽
(
きらく
)
、
296
そんな
者
(
もの
)
と
喧嘩
(
けんくわ
)
をして、
297
五分
(
ごぶ
)
々々
(
ごぶ
)
の
別
(
わか
)
れと
云
(
い
)
ふのだから、
298
つまり
河内屋
(
かはちや
)
が
負
(
まけ
)
なのだ。
299
そこを
喜楽
(
きらく
)
が
折角
(
せつかく
)
売
(
う
)
り
出
(
だ
)
した
河内屋
(
かはちや
)
の
顔
(
かほ
)
を
潰
(
つぶ
)
しては
可哀相
(
かあいさう
)
だと
思
(
おも
)
うて、
300
ズツと
譲歩
(
じやうほ
)
して
五分
(
ごぶ
)
々々
(
ごぶ
)
と
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
で
体
(
てい
)
能
(
よ
)
うキリをつけたのだよ。
301
今夜
(
こんや
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
は
三十
(
さんじふ
)
円
(
ゑん
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
だのに、
302
なぜ
又
(
また
)
これ
程
(
ほど
)
高
(
たか
)
いのだ。
303
吉川
(
よしかは
)
の
桑酒屋
(
くはざけや
)
へ
行
(
い
)
つて
五
(
ご
)
円
(
ゑん
)
出
(
だ
)
しや、
304
これ
位
(
くらゐ
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
はしてくれるが、
305
お
前
(
まへ
)
とこもチト
勉強
(
べんきやう
)
せぬと、
306
商売
(
しやうばい
)
が
流行
(
はや
)
らぬやうになるかも
知
(
し
)
れぬぞ』
307
お
愛
(
あい
)
『ソラ
又
(
また
)
本当
(
ほんたう
)
ですか?』
308
長吉
(
ちやうきち
)
『
俺
(
おれ
)
はウソ
勝
(
かつ
)
の
弟
(
おとうと
)
だけれど、
309
生
(
うま
)
れてから
嘘
(
うそ
)
と
坊主
(
ばうず
)
の
頭
(
あたま
)
とはいうたことがないのぢや』
310
お
愛
(
あい
)
は
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へて
二階
(
にかい
)
へトントンとあがり、
311
お
愛
(
あい
)
『モシ
河内屋
(
かはちや
)
の
旦那
(
だんな
)
一寸
(
ちよつと
)
……』
312
と
目配
(
めくば
)
せした。
313
河内屋
(
かはちや
)
は『ウン』と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
314
お
愛
(
あい
)
のあとについて
階段
(
かいだん
)
を
降
(
を
)
り、
315
十
(
じつ
)
分間
(
ぷんかん
)
計
(
ばか
)
り
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
した。
316
長吉
(
ちやうきち
)
は
酔眼
(
すゐがん
)
朦朧
(
もうろう
)
として
階段
(
かいだん
)
を
四
(
よ
)
つ
這
(
ばひ
)
になつて
二階
(
にかい
)
へ
上
(
あが
)
つて
来
(
き
)
た。
317
そこへ
勘公
(
かんこう
)
が
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へて
上
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
り、
318
勘公
(
かんこう
)
『コリヤ
長吉
(
ちやうきち
)
、
319
今度
(
こんど
)
の
事件
(
じけん
)
は
貴様
(
きさま
)
が
起
(
おこ
)
したやうなものだ。
320
俺
(
おれ
)
たちや、
321
喜楽
(
きらく
)
サンや、
322
松
(
まつ
)
サンがまだここに
坐
(
すわ
)
つてゐるのに、
323
貴様
(
きさま
)
勝手
(
かつて
)
に
席
(
せき
)
を
外
(
はづ
)
すといふ
事
(
こと
)
があるものか。
324
仲直
(
なかなほ
)
りの
儀式
(
ぎしき
)
を
破
(
やぶ
)
り、
325
侠客
(
けふかく
)
の
顔
(
かほ
)
へ
泥
(
どろ
)
をぬりやがつた。
326
オイ
与三
(
よさ
)
、
327
徳
(
とく
)
、
328
長吉
(
ちやうきち
)
を
引括
(
ひきくく
)
つて、
329
井戸端
(
ゐどばた
)
へつれて
行
(
ゆ
)
き、
330
ドタマから
水
(
みづ
)
を
百杯
(
ひやつぱい
)
ほどかけてやれ!』
331
と
口汚
(
くちぎたな
)
なく
罵
(
ののし
)
り
乍
(
なが
)
ら、
332
酔
(
よ
)
ひつぶれてる
長吉
(
ちやうきち
)
の
頭
(
あたま
)
や
腰
(
こし
)
を
荒男
(
あらをとこ
)
が
力
(
ちから
)
に
任
(
まか
)
して、
333
踏
(
ふ
)
んだり
蹴
(
け
)
つたりし
始
(
はじ
)
めた。
334
喜楽
(
きらく
)
『オイ
河内屋
(
かはちや
)
、
335
仲直
(
なかなほ
)
りの
盃
(
さかづき
)
がすんだ
以上
(
いじやう
)
は、
336
長吉
(
ちやうきち
)
がどこへ
行
(
ゆ
)
かうと
構
(
かま
)
はぬぢやないか。
337
長吉
(
ちやうきち
)
に
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
があるのなら、
338
後
(
あと
)
で
何
(
なん
)
なつとしたがよかろ。
339
明日
(
あす
)
の
朝
(
あさ
)
までは
俺
(
おれ
)
は
長吉
(
ちやうきち
)
の
親
(
おや
)
兄弟
(
きやうだい
)
から、
340
身柄
(
みがら
)
を
預
(
あづか
)
つてきたのだから、
341
指一本
(
ゆびいつぽん
)
触
(
さ
)
へさすこたア
出来
(
でき
)
ぬのだ』
342
勘公
(
かんこう
)
『
許
(
ゆる
)
し
難
(
がた
)
い
奴
(
やつ
)
だけど、
343
喜楽
(
きらく
)
サンや
次郎松
(
じろまつ
)
サンに
免
(
めん
)
じて、
344
今晩
(
こんばん
)
は
許
(
ゆる
)
しておく。
345
明日
(
あす
)
夜
(
よ
)
があけたら、
346
俺
(
おれ
)
の
宅
(
たく
)
までキツと
出
(
で
)
て
来
(
こ
)
い』
347
長吉
(
ちやうきち
)
『
済
(
す
)
まなんだ、
348
どうぞ
勘忍
(
かんにん
)
してくれ。
349
わしや
別
(
べつ
)
にお
前
(
まへ
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
うたのぢやない。
350
下
(
した
)
の
女中
(
ぢよちう
)
が
今晩
(
こんばん
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
は
五
(
ご
)
円
(
ゑん
)
がポチで
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
の
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
だと
云
(
い
)
うたから、
351
そんな
筈
(
はず
)
がない、
352
三十
(
さんじふ
)
円
(
ゑん
)
だと
言
(
い
)
うたのぢやから、
353
気
(
き
)
を
悪
(
わる
)
うせんとこらへてくれ』
354
勘公
(
かんこう
)
『
喧
(
やかま
)
しいワイ、
355
仲直
(
なかなほ
)
りが
済
(
す
)
んでからゴテゴテ
吐
(
ぬか
)
すと、
356
又
(
また
)
一
(
ひと
)
つ
物言
(
ものい
)
ひがつくぞ。
357
サア
早
(
はや
)
く
貴様
(
きさま
)
帰
(
かへ
)
れ……
喜楽
(
きらく
)
サン、
358
松
(
まつ
)
サン、
359
どうぞゆつくり
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
して
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
ける
迄
(
まで
)
呑
(
の
)
んで
下
(
くだ
)
さい。
360
これから
女
(
をんな
)
を
上
(
あ
)
げますから、
361
前席
(
ぜんせき
)
が
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
、
362
二次会
(
にじくわい
)
が
二十
(
にじふ
)
円
(
ゑん
)
といふ
段取
(
だんどり
)
にしてあるのだのに、
363
訳
(
わけ
)
もきかずに
長吉
(
ちやうきち
)
がそんな
事
(
こと
)
言
(
い
)
ひやがつて、
364
本当
(
ほんたう
)
に
仕方
(
しかた
)
のない
奴
(
やつ
)
だ……オイお
愛
(
あい
)
、
365
貴様
(
きさま
)
もよいかげんに
喋
(
しやべ
)
つておけ、
366
これから
第二次
(
だいにじ
)
会
(
くわい
)
の
注文
(
ちうもん
)
をする
所
(
ところ
)
だ。
367
仕様
(
しやう
)
もない
事
(
こと
)
いふもんだから、
368
喜楽
(
きらく
)
サンにも
痛
(
いた
)
くない
腹
(
はら
)
を
探
(
さぐ
)
られ、
369
男
(
をとこ
)
の
面目玉
(
めんぼくだま
)
をつぶしよつた』
370
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
371
最愛
(
さいあい
)
のお
愛
(
あい
)
の
横面
(
よこづら
)
をピシヤピシヤとなぐりつけた。
372
お
愛
(
あい
)
は『キヤツ』と
悲鳴
(
ひめい
)
をあげて
段階子
(
だんばしご
)
をころげおち、
373
庭
(
には
)
に
白
(
しろ
)
い
尻
(
しり
)
をあらはしたまま
平太
(
へた
)
つてゐる。
374
二人
(
ふたり
)
の
女中
(
ぢよちう
)
はあわてて
抱
(
だ
)
き
起
(
おこ
)
し、
375
裏
(
うら
)
の
別建
(
べつたて
)
の
家
(
いへ
)
へ
連
(
つ
)
れていつたやうである。
376
喜楽
(
きらく
)
『
君
(
きみ
)
、
377
僕
(
ぼく
)
は
明日
(
あす
)
早
(
はや
)
く
行
(
ゆ
)
かねばならぬ
所
(
ところ
)
があるから、
378
二次会
(
にじくわい
)
に
列
(
れつ
)
したいのだが、
379
これで
失礼
(
しつれい
)
する。
380
どうぞ
君
(
きみ
)
たち、
381
僕
(
ぼく
)
の
代
(
かは
)
りに
二人前
(
ににんまへ
)
飲
(
の
)
んで
十分
(
じふぶん
)
騒
(
さわ
)
いでくれ。
382
松
(
まつ
)
サンも
長吉
(
ちやうきち
)
も
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
るから……』
383
勘公
(
かんこう
)
『
御用
(
ごよう
)
があらば
仕方
(
しかた
)
がない。
384
そんならあと
二十
(
にじふ
)
円
(
ゑん
)
がとこ、
385
君
(
きみ
)
の
代
(
かは
)
りに
散財
(
さんざい
)
をする。
386
オイ
与三
(
よさ
)
、
387
徳
(
とく
)
、
388
兼
(
かね
)
、
389
下
(
した
)
へおりて
注文
(
ちうもん
)
して
来
(
こ
)
い』
390
勘公
(
かんこう
)
の
意中
(
いちう
)
を
知
(
し
)
らぬ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はあわてて
下
(
した
)
に
飛
(
と
)
びおり、
391
此
(
この
)
家
(
いへ
)
の
主婦
(
しゆふ
)
をつかまへて
第二次
(
だいにじ
)
会
(
くわい
)
の
注文
(
ちうもん
)
をして
居
(
ゐ
)
る。
392
喜楽
(
きらく
)
外
(
ほか
)
二人
(
ふたり
)
は
此処
(
ここ
)
を
立出
(
たちい
)
で、
393
穴太
(
あなを
)
さして
夜
(
よる
)
の
道
(
みち
)
を
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
394
何時
(
なんどき
)
勘公
(
かんこう
)
の
手下
(
てした
)
の
奴
(
やつ
)
が
先
(
さき
)
まはりをして、
395
どんな
事
(
こと
)
をするか
知
(
し
)
れないと
云
(
い
)
ふ
気
(
き
)
が
起
(
おこ
)
り、
396
急
(
いそ
)
いで
帰
(
かへ
)
らうとすれ
共
(
ども
)
、
397
痳病
(
りんびやう
)
やみのヒヨロヒヨロ
男
(
をとこ
)
が
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひ、
398
又
(
また
)
長吉
(
ちやうきち
)
がヘベレケに
酔
(
よ
)
うてゐるので、
399
同
(
おな
)
じ
所
(
ところ
)
許
(
ばか
)
り
蟹
(
かに
)
の
様
(
やう
)
に
歩
(
ある
)
いて
居
(
を
)
つて、
400
根
(
ね
)
つから
道
(
みち
)
がはか
取
(
ど
)
らず、
401
十
(
じふ
)
時
(
じ
)
頃
(
ごろ
)
に
正月屋
(
しやうぐわつや
)
を
立出
(
たちい
)
で、
402
わづか
十二三
(
じふにさん
)
町
(
ちやう
)
の
松
(
まつ
)
の
下
(
した
)
まで
二
(
に
)
時間
(
じかん
)
計
(
ばか
)
り
費
(
つひ
)
やして
了
(
しま
)
つた。
403
(
大正一一・一〇・八
旧八・一八
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 破軍星
(B)
(N)
松の下 >>>
霊界物語
>
第37巻
> 第1篇 安閑喜楽 > 第4章 素破抜
Tweet
絶賛発売中『超訳霊界物語2/出口王仁三郎の「身魂磨き」実践書/一人旅するスサノオの宣伝使たち』
オニド関連サイト
最新更新情報
10/22
【霊界物語ネット】
『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
』をテキスト化しました。
9/18
【
飯塚弘明.com
】
飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
【霊界物語ネット】
霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【04 素破抜|第37巻(子の巻)|霊界物語/rm3704】
合言葉「みろく」を入力して下さい→