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第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
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第13巻(子の巻)
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第61巻(子の巻)
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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
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第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第37巻(子の巻)
序
総説
第1篇 安閑喜楽
01 富士山
〔1013〕
02 葱節
〔1014〕
03 破軍星
〔1015〕
04 素破抜
〔1016〕
05 松の下
〔1017〕
06 手料理
〔1018〕
第2篇 青垣山内
07 五万円
〔1019〕
08 梟の宵企
〔1020〕
09 牛の糞
〔1021〕
10 矢田の滝
〔1022〕
11 松の嵐
〔1023〕
12 邪神憑
〔1024〕
第3篇 阪丹珍聞
13 煙の都
〔1025〕
14 夜の山路
〔1026〕
15 盲目鳥
〔1027〕
16 四郎狸
〔1028〕
17 狐の尾
〔1029〕
18 奥野操
〔1030〕
19 逆襲
〔1031〕
20 仁志東
〔1032〕
第4篇 山青水清
21 参綾
〔1033〕
22 大僧坊
〔1034〕
23 海老坂
〔1035〕
24 神助
〔1036〕
25 妖魅来
〔1037〕
霊の礎(九)
余白歌
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> 第4篇 山青水清 > 第22章 大僧坊
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(B)
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第二二章
大僧坊
(
だいそうばう
)
〔一〇三四〕
インフォメーション
著者:
巻:
篇:
よみ(新仮名遣い):
章:
よみ(新仮名遣い):
通し章番号:
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
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主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm3722
愛善世界社版:
八幡書店版:
修補版:
校定版:
普及版:
初版:
ページ備考:
001
喜楽
(
きらく
)
の
入綾
(
にふれう
)
に
先立
(
さきだ
)
ち
茲
(
ここ
)
に
一
(
ひと
)
つの
珍話
(
ちんわ
)
がある。
002
明治
(
めいぢ
)
三十一
(
さんじふいち
)
年
(
ねん
)
の
八
(
はち
)
月
(
ぐわつ
)
、
003
八木
(
やぎ
)
の
福島
(
ふくしま
)
氏
(
し
)
に
二三回
(
にさんくわい
)
頼
(
たの
)
まれて、
004
園部
(
そのべ
)
黒田
(
くろだ
)
の
会合所
(
くわいがふしよ
)
から、
005
はるばると
山坂
(
やまさか
)
を
越
(
こ
)
え、
006
参綾
(
さんれう
)
して
教祖
(
けうそ
)
に
面会
(
めんくわい
)
し、
007
四方
(
しかた
)
すみ
子
(
こ
)
、
008
黒田
(
くろだ
)
きよ
子
(
こ
)
、
009
四方
(
しかた
)
与平
(
よへい
)
氏
(
し
)
などの
大賛成
(
だいさんせい
)
を
得
(
え
)
、
010
出口
(
でぐち
)
教祖
(
けうそ
)
と
共
(
とも
)
に、
011
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
を
広
(
ひろ
)
めようとした
時
(
とき
)
、
012
足立氏
(
あだちし
)
や
中村氏
(
なかむらし
)
の
猛烈
(
まうれつ
)
なる
反対
(
はんたい
)
に
遭
(
あ
)
ひ、
013
教祖
(
けうそ
)
より……
時機
(
じき
)
尚
(
なほ
)
早
(
はや
)
し、
014
何
(
いづ
)
れ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
だから、
015
時節
(
じせつ
)
を
待
(
ま
)
つて
御
(
お
)
世話
(
せわ
)
になりますから、
016
一先
(
ひとま
)
づ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい……と
云
(
い
)
はれて、
017
是非
(
ぜひ
)
なく
園部
(
そのべ
)
黒田
(
くろだ
)
の
会合所
(
くわいがふしよ
)
へ
帰
(
かへ
)
り、
018
それよりあちら
此方
(
こちら
)
と
宣伝
(
せんでん
)
に
従事
(
じうじ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
019
黒田
(
くろだ
)
を
発
(
た
)
つて
北桑田
(
きたくはだ
)
の
方面
(
はうめん
)
へ
布教
(
ふけう
)
を
試
(
こころ
)
みようと
思
(
おも
)
ひ、
020
五箇庄
(
ごかしやう
)
村
(
むら
)
の
四谷
(
よつや
)
の
少
(
すこ
)
し
手前
(
てまへ
)
の、
021
二十軒
(
にじつけん
)
ばかりの
村
(
むら
)
に
差
(
さし
)
かかつた。
022
日
(
ひ
)
もソロソロ
黄昏時
(
たそがれどき
)
、
023
どこかに
適当
(
てきたう
)
の
宿
(
やど
)
を
求
(
もと
)
めようかと
懐中
(
くわいちゆう
)
を
探
(
さぐ
)
つて
見
(
み
)
れば、
024
懐
(
ふところ
)
にはたつた
二十銭
(
にじつせん
)
しかない。
025
……ママよ、
026
困
(
こま
)
つたら
野宿
(
のじゆく
)
をしてやらう……と
腹
(
はら
)
をきめて
疲
(
つか
)
れた
足
(
あし
)
を
引
(
ひき
)
ずつて
行
(
ゆ
)
くと、
027
山
(
やま
)
から
粗朶
(
そだ
)
をかついで
帰
(
かへ
)
りて
来
(
く
)
る
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
村人
(
むらびと
)
と
途伴
(
みちづ
)
れになつた。
028
ゆくゆく
下
(
くだ
)
らぬ
話
(
はなし
)
をしてゐる
内
(
うち
)
にも、
029
話
(
はなし
)
は
自然
(
しぜん
)
病人
(
びやうにん
)
のことや
憑者
(
つきもの
)
のことに
移
(
うつ
)
つて
行
(
い
)
つた。
030
さうすると
其
(
その
)
中
(
なか
)
の
一人
(
ひとり
)
が、
031
村人
『あなたは
憑者
(
つきもの
)
をおとす
御
(
お
)
方
(
かた
)
ですか、
032
随分
(
ずゐぶん
)
誓願寺
(
せいぐわんじ
)
の
祈祷
(
きたう
)
坊主
(
ばうず
)
や
稲荷下
(
いなりさ
)
げが
来
(
き
)
ますけれど、
033
中々
(
なかなか
)
おちぬものです。
034
此
(
この
)
村
(
むら
)
にも
不思議
(
ふしぎ
)
な
憑者
(
つきもの
)
で
困
(
こま
)
つて
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
があります』
035
と
朴訥
(
ぼくとつ
)
な
村人
(
むらびと
)
は、
036
行手
(
ゆくて
)
に
見
(
み
)
える
道
(
みち
)
の
左側
(
ひだりがは
)
の
可成
(
かな
)
り
大
(
おほ
)
きな
一棟
(
ひとむね
)
の
家
(
いへ
)
を
指
(
さ
)
し
乍
(
なが
)
ら、
037
村人
『あすこの
爺
(
おやぢ
)
は
小林
(
こばやし
)
貞蔵
(
ていざう
)
といひますが、
038
どういふ
訳
(
わけ
)
か、
039
十五六
(
じふごろく
)
年前
(
ねんぜん
)
から、
040
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
が
出
(
で
)
る
病気
(
びやうき
)
で、
041
本人
(
ほんにん
)
の
知
(
し
)
らぬことをズンズンと
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てます。
042
貞蔵
(
ていざう
)
サンは
何
(
なん
)
とかして
声
(
こゑ
)
の
出
(
で
)
ない
様
(
やう
)
にと
骨
(
ほね
)
を
折
(
お
)
るのだが、
043
何
(
ど
)
うしても
止
(
とま
)
らぬのが
不思議
(
ふしぎ
)
ですよ。
044
最初
(
さいしよ
)
の
間
(
あひだ
)
は
自分
(
じぶん
)
から
大変
(
たいへん
)
に
警戒
(
けいかい
)
をしてゐましたが
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
の
憑者
(
つきもの
)
は……おれは
立派
(
りつぱ
)
な
神
(
かみ
)
さまだ……と
名
(
な
)
のるのを、
045
いつのまにやら
信
(
しん
)
じて
了
(
しま
)
ひ、
046
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
の
指
(
さ
)
し
図
(
づ
)
通
(
どほ
)
りに
相場
(
さうば
)
をしましたが
失敗
(
しつぱい
)
の
基
(
もと
)
で、
047
田舎
(
いなか
)
では
可
(
か
)
なりの
財産
(
ざいさん
)
を
大方
(
おほかた
)
なくして
了
(
しま
)
ひました。
048
只今
(
ただいま
)
では
駄菓子
(
だぐわし
)
の
小売
(
こうり
)
をしたり、
049
ボロ
材木屋
(
ざいもくや
)
をして
暮
(
くら
)
してゐますが、
050
腹
(
はら
)
の
声
(
こゑ
)
はまだ
止
(
や
)
まず、
051
いろいろ
雑多
(
ざつた
)
とつまらぬことを
喋
(
しやべ
)
るので、
052
貞蔵
(
ていざう
)
サンもこれには
持
(
も
)
て
余
(
あま
)
してゐます』
053
と
何気
(
なにげ
)
なく
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てる。
054
喜楽
(
きらく
)
は
心
(
こころ
)
の
中
(
うち
)
で、
055
……
今夜
(
こんや
)
のおれの
御
(
ご
)
宿坊
(
しゆくばう
)
はここだなア……と
自分
(
じぶん
)
ぎめにきめて
了
(
しま
)
ひ、
056
何
(
なに
)
食
(
く
)
はぬ
顔
(
かほ
)
して
其
(
その
)
家
(
いへ
)
の
店先
(
みせさき
)
へ
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ると、
057
一文
(
いちもん
)
菓子
(
ぐわし
)
が
少
(
すこ
)
し
計
(
ばか
)
り
並
(
なら
)
べてあり、
058
店先
(
みせさき
)
には
五十
(
ごじふ
)
計
(
ばか
)
りの
額口
(
ひたひぐち
)
のバカに
光
(
ひか
)
つた、
059
鼻
(
はな
)
の
高
(
たか
)
い
丸顔爺
(
まるがほおやぢ
)
が、
060
厭
(
いや
)
らしい
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へてすわつてゐた。
061
喜楽
(
きらく
)
は、
062
喜楽
(
きらく
)
『
一寸
(
ちよつと
)
休
(
やす
)
ませて
下
(
くだ
)
さい』
063
と
縁側
(
えんがは
)
に
腰
(
こし
)
を
卸
(
おろ
)
して、
064
ムシヤムシヤと
駄菓子
(
だぐわし
)
をつまんで
食
(
く
)
ひ
出
(
だ
)
した。
065
五銭
(
ごせん
)
十銭
(
じつせん
)
十五銭
(
じふごせん
)
と
菓子
(
くわし
)
を
平
(
たひら
)
げ、
066
貧弱
(
ひんじやく
)
な
菓子箱
(
くわしばこ
)
はモウそれでおしまひになつて
了
(
しま
)
つた。
067
爺
(
おやぢ
)
は
呆
(
あき
)
れて
喜楽
(
きらく
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
つめて
居
(
ゐ
)
た。
068
喜楽
(
きらく
)
は、
069
喜楽
(
きらく
)
『お
菓子
(
くわし
)
はこれで
品切
(
しなぎ
)
れですか、
070
せめてモウ
一
(
いち
)
円
(
ゑん
)
計
(
ばか
)
り
食
(
く
)
ひたいものだ』
071
といつた。
072
爺
(
おやぢ
)
はますます
呆
(
あき
)
れ、
073
丸
(
まる
)
い
目
(
め
)
を
剥
(
む
)
き
出
(
だ
)
し、
074
爺
(
おやぢ
)
『お
前
(
まへ
)
サン、
075
何
(
なん
)
とマアお
菓子
(
くわし
)
の
好
(
す
)
きな
方
(
かた
)
ですな。
076
何
(
ど
)
うしてそないに
沢山
(
たくさん
)
あがられますか、
077
お
腹
(
なか
)
が
悪
(
わる
)
うなりますで……』
078
と
注意顔
(
ちういがほ
)
に
云
(
い
)
ふ。
079
喜楽
(
きらく
)
『わしが
食
(
た
)
べるのぢやない、
080
わしは
元来
(
ぐわんらい
)
菓子
(
くわし
)
は
嫌
(
いや
)
だが、
081
皆
(
みな
)
私
(
わたし
)
に
憑
(
つ
)
いてゐる
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
食
(
た
)
べるのぢや。
082
サアお
金
(
かね
)
を
取
(
と
)
つて
下
(
くだ
)
さい!』
083
と
後生
(
ごしやう
)
大事
(
だいじ
)
に
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
た
身上
(
しんじやう
)
ありぎりの
二十銭
(
にじつせん
)
銀貨
(
ぎんくわ
)
をポンと
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
した。
084
爺
『ヘー』
085
と
爺
(
おやぢ
)
は
益
(
ますま
)
す
目玉
(
めだま
)
をまん
丸
(
まる
)
うして、
086
爺
(
おやぢ
)
『あんたにもヤツパリ
憑者
(
つきもの
)
がゐますか、
087
ふしぎな
事
(
こと
)
もあるものぢやなア。
088
私
(
わたし
)
もドテライ
憑者
(
つきもの
)
が
居
(
を
)
つて、
089
困
(
こま
)
りますのぢや』
090
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
091
自分
(
じぶん
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
打
(
うち
)
あけて、
092
果
(
は
)
ては、
093
爺
(
おやぢ
)
『どうぞ
此
(
この
)
憑者
(
つきもの
)
を
退
(
の
)
かして
頂
(
いただ
)
く
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きますまいか』
094
と
憑霊
(
つきもの
)
退散
(
たいさん
)
の
相談
(
さうだん
)
を
持
(
も
)
ちかけて
来
(
き
)
た。
095
喜楽
(
きらく
)
はヤツと
安心
(
あんしん
)
して
爺
(
ぢい
)
の
勧
(
すす
)
むる
儘
(
まま
)
に、
096
家
(
いへ
)
に
上
(
あが
)
りこんで、
097
夕飯
(
ゆふはん
)
を
頂
(
いただ
)
き、
098
そしてソロソロ
鎮魂
(
ちんこん
)
帰神
(
きしん
)
の
法
(
はふ
)
を
実施
(
じつし
)
する
段取
(
だんどり
)
となつた。
099
喜楽
(
きらく
)
は
審神者
(
さには
)
となり
爺
(
おやぢ
)
は
神主
(
かむぬし
)
となり、
100
主客
(
しゆきやく
)
相対坐
(
あひたいざ
)
して
奥座敷
(
おくざしき
)
にすわり、
101
懐
(
ふところ
)
から
神笛
(
しんてき
)
を
出
(
だ
)
して、
102
ヒユーヒユーヒユーと
吹
(
ふ
)
き
立
(
た
)
て、
103
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
二回
(
にくわい
)
唱
(
とな
)
へ
上
(
あ
)
げ、
104
『ウン!』と
力
(
ちから
)
をこめるや
否
(
いな
)
や、
105
元来
(
ぐわんらい
)
ういてゐた
霊
(
れい
)
の
事
(
こと
)
だから、
106
ワケもなく
大発動
(
だいはつどう
)
を
始
(
はじ
)
めた。
107
其
(
その
)
発動
(
はつどう
)
状態
(
じやうたい
)
が
頗
(
すこぶ
)
る
奇抜
(
きばつ
)
なもので、
108
青
(
あを
)
い
鼻汁
(
はな
)
が
盛
(
さかん
)
に
出
(
で
)
る。
109
ズルズルズル ポトポトと
際限
(
さいげん
)
なく
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
に
落
(
お
)
ちる。
110
爺
(
おぢい
)
サンはしきりにそれを
気
(
き
)
にして、
111
組
(
く
)
んで
居
(
ゐ
)
た
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
して、
112
懐
(
ふところ
)
から
紙
(
かみ
)
を
出
(
だ
)
して、
113
チヨイ チヨイと
拭
(
ふ
)
きにかかる、
114
又
(
また
)
手
(
て
)
を
組
(
く
)
む、
115
ズルズルと
鼻汁
(
はなじる
)
が
出
(
で
)
る、
116
爺
(
おぢい
)
は
手
(
て
)
をはなして、
117
爺
(
おやぢ
)
『
一寸
(
ちよつと
)
先生
(
せんせい
)
失礼
(
しつれい
)
』
118
といひ
乍
(
なが
)
ら、
119
懐
(
ふところ
)
から
紙
(
かみ
)
を
出
(
だ
)
してツンとかむ、
120
そして
又
(
また
)
手
(
て
)
を
組
(
く
)
む、
121
鼻汁
(
はな
)
がツルツルと
出
(
で
)
る、
122
又
(
また
)
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
し、
123
懐
(
ふところ
)
の
紙
(
かみ
)
を
出
(
だ
)
してハナを
拭
(
ふ
)
く。
124
そして
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で、
125
爺
『ヴエー』
126
と
唸
(
うな
)
り、
127
うなつた
拍子
(
へうし
)
に、
128
口
(
くち
)
が
細
(
ほそ
)
く
長
(
なが
)
くへの
字
(
じ
)
になる。
129
五六
(
ごろく
)
回
(
くわい
)
もこんな
事
(
こと
)
を
繰返
(
くりかへ
)
すのを、
130
黙
(
だま
)
つて
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
たが、
131
霹靂
(
へきれき
)
一声
(
いつせい
)
、
132
喜楽
『コラツ!』
133
と
喜楽
(
きらく
)
は
大喝
(
たいかつ
)
してみた。
134
爺
(
おやぢ
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
いて、
135
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
許
(
ばか
)
り
手
(
て
)
を
組
(
く
)
んだ
儘
(
まま
)
飛上
(
とびあが
)
つた。
136
喜楽
(
きらく
)
『モウ
鼻汁
(
はな
)
をふく
事
(
こと
)
は
相
(
あひ
)
成
(
な
)
らぬ。
137
何神
(
なにがみ
)
か
名
(
な
)
を
名乗
(
なの
)
れ!』
138
と
問
(
と
)
ひ
詰
(
つ
)
めた。
139
爺
(
ぢい
)
サンの
鼻汁
(
はな
)
は
依然
(
いぜん
)
として、
140
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
もなくツルツルと
流
(
なが
)
れおつる。
141
拭
(
ふ
)
く
事
(
こと
)
を
禁
(
きん
)
ぜられたので、
142
鼻汁
(
はな
)
が
連絡
(
れんらく
)
して
了
(
しま
)
ひ、
143
鼻
(
はな
)
の
穴
(
あな
)
から
膝
(
ひざ
)
まで、
144
つららのやうに
垂
(
た
)
れさがる。
145
喜楽
(
きらく
)
は
委細
(
ゐさい
)
かまはず、
146
たたみかけて、
147
喜楽
(
きらく
)
『
早
(
はや
)
く
名
(
な
)
を
言
(
い
)
へ、
148
早
(
はや
)
く
早
(
はや
)
く』
149
とせき
立
(
た
)
つれば、
150
爺
(
おやぢ
)
の
憑霊
(
ひようれい
)
は
肘
(
ひぢ
)
をはり、
151
口
(
くち
)
をへの
字
(
じ
)
に
結
(
むす
)
び、
152
しかつめらしく、
153
爺
(
おやぢ
)
『オーオ、
154
俺
(
おれ
)
は、
155
俺
(
おれ
)
は……のう』
156
と
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
から
途方
(
とはう
)
途轍
(
とてつ
)
もない
高
(
たか
)
い
声
(
こゑ
)
が
湧
(
わ
)
いて
来
(
く
)
る。
157
そして
又
(
また
)
、
158
爺
(
おやぢ
)
『おれはおーれはのう、
159
おれはのう』
160
と
連続
(
れんぞく
)
的
(
てき
)
に『
俺
(
おれ
)
は』を
続
(
つづ
)
けてゐる。
161
喜楽
(
きらく
)
『なんぢや
辛気
(
しんき
)
くさい、
162
其
(
その
)
先
(
さき
)
を
言
(
い
)
へ』
163
爺
(
おやぢ
)
『
俺
(
おれ
)
はのう、
164
ウツフン、
165
アツハヽヽヽ』
166
喜楽
(
きらく
)
『
早
(
はや
)
く
名乗
(
なの
)
らぬか、
167
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
り、
168
何
(
なん
)
べんも
何
(
なん
)
べんも、
169
くり
返
(
かへ
)
しよつて、
170
辛気
(
しんき
)
くさいワイ』
171
爺
(
おやぢ
)
『オヽヽ
俺
(
おれ
)
はのう、
172
俺
(
おれ
)
はのう、
173
クヽヽヽ
鞍馬山
(
くらまやま
)
のダヽヽヽヽヽ
大僧坊
(
だいそうばう
)
だワイ』
174
と
芝居
(
しばゐ
)
がかりの
大音声
(
だいおんぜう
)
、
175
喜楽
(
きらく
)
『フヽン、
176
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すのだ。
177
鞍馬山
(
くらまやま
)
には
大僧正
(
だいそうじやう
)
なら
居
(
ゐ
)
るが、
178
大僧坊
(
だいそうばう
)
などと
言
(
い
)
ふ
天狗
(
てんぐ
)
がゐるものか、
179
有
(
あり
)
のままに
白状
(
はくじやう
)
せい。
180
果
(
はた
)
して
鞍馬山
(
くらまやま
)
の
天狗
(
てんぐ
)
なれば、
181
鞍馬山
(
くらまやま
)
の
地理
(
ちり
)
位
(
ぐらゐ
)
は
知
(
し
)
つてゐるだろ。
182
鞍馬山
(
くらまやま
)
は
何
(
なん
)
といふ
国
(
くに
)
の
山
(
やま
)
だ』
183
爺
(
おやぢ
)
『アツハヽヽヽア、
184
バカバカバカ、
185
馬鹿者
(
ばかもの
)
奴
(
め
)
!
鞍馬山
(
くらまやま
)
の
所在
(
ありか
)
が
知
(
し
)
れぬ
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
で、
186
審神者
(
さには
)
を
致
(
いた
)
すなぞとは
片腹痛
(
かたはらいた
)
いワイ。
187
知
(
し
)
らな、
188
云
(
い
)
つて
聞
(
き
)
かさうか、
189
山城
(
やましろ
)
の
国
(
くに
)
の
乙訓郡
(
おとくにぐん
)
であるぞよ』
190
喜楽
(
きらく
)
『
鞍馬山
(
くらまやま
)
は
乙訓郡
(
おとくにぐん
)
ではないぞ
[
※
乙訓郡ではなく、愛宕郡(おたぎぐん)にある
]
。
191
自分
(
じぶん
)
の
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
さへ
分
(
わか
)
らぬ
様
(
やう
)
な
者
(
もの
)
が、
192
鞍馬山
(
くらまやま
)
の
大僧坊
(
だいそうばう
)
とは
駄法螺
(
だぼら
)
を
吹
(
ふ
)
くにも
程
(
ほど
)
がある。
193
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
擬
(
まが
)
ふ
方
(
かた
)
なき
野天狗
(
のてんぐ
)
であらうがなア』
194
爺
(
おやぢ
)
『
見破
(
みやぶ
)
られたか、
195
残念
(
ざんねん
)
やな、
196
クヽヽ
口惜
(
くちをし
)
やなア』
197
と
鼻汁
(
はな
)
天狗
(
てんぐ
)
は
飽
(
あ
)
くまで
芝居
(
しばゐ
)
気取
(
きど
)
りで、
198
切
(
き
)
り
口上
(
こうじやう
)
で
呶鳴
(
どな
)
つてゐる。
199
喜楽
(
きらく
)
『
畏
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つたか、
200
貴様
(
きさま
)
はヤツパリ
野天狗
(
のてんぐ
)
であらうがなア』
201
爺
(
おやぢ
)
『オヽオウ、
202
俺
(
おれ
)
は
俺
(
おれ
)
は、
203
ヤツパリ
野天狗
(
のてんぐ
)
であつたワエ』
204
言
(
い
)
ひも
終
(
をは
)
らず、
205
爺
(
おやぢ
)
の
体
(
からだ
)
は
宙
(
ちう
)
に
浮
(
う
)
かんで、
206
静坐
(
せいざ
)
せる
審神者
(
さには
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
を、
207
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
縦横
(
じうわう
)
自在
(
じざい
)
にかけり
出
(
だ
)
した。
208
そして
隙
(
すき
)
をねらつて、
209
目玉
(
めだま
)
のあたりを
足
(
あし
)
げにせうとの
魂胆
(
こんたん
)
、
210
実
(
じつ
)
に
険呑
(
けんのん
)
至極
(
しごく
)
であつた。
211
乍併
(
しかしながら
)
これしきの
事
(
こと
)
にビクツク
様
(
やう
)
では
審神者
(
さには
)
の
役
(
やく
)
はつとまらないと、
212
咄嗟
(
とつさ
)
に
組
(
く
)
んだ
手
(
て
)
をといて
右
(
みぎ
)
の
人差指
(
ひとさしゆび
)
に
霊
(
れい
)
をかけ、
213
爺
(
おやぢ
)
の
体
(
からだ
)
に
向
(
む
)
けて、
214
喜楽
(
きらく
)
は
指先
(
ゆびさき
)
を
右
(
みぎ
)
に
一回転
(
いつくわいてん
)
した。
215
それに
従
(
したが
)
つてクルリと
爺
(
おやぢ
)
の
体
(
からだ
)
は
宙
(
ちう
)
に
浮
(
う
)
かんだまま、
216
鼻汁
(
はな
)
迄
(
まで
)
が
円
(
ゑん
)
を
描
(
ゑが
)
いて、
217
右
(
みぎ
)
に
一回転
(
いつくわいてん
)
する。
218
続
(
つづ
)
いて
指
(
ゆび
)
を
左
(
ひだり
)
にまはせば、
219
爺
(
おやぢ
)
の
体
(
からだ
)
はそれにつれて
左
(
ひだり
)
に
一回転
(
いつくわいてん
)
する。
220
指
(
ゆび
)
をクルクルクルと
間断
(
かんだん
)
なくまはせば、
221
爺
(
おやぢ
)
の
体
(
からだ
)
もクルクルクルとまるで
風車
(
かざぐるま
)
其
(
その
)
ままであつた。
222
此
(
この
)
荒料理
(
あられうり
)
には
流石
(
さすが
)
の
野天狗
(
のてんぐ
)
も
往生
(
わうじやう
)
したと
見
(
み
)
え、
223
全身
(
ぜんしん
)
綿
(
わた
)
の
如
(
ごと
)
く
疲
(
つか
)
れ
切
(
き
)
つてヘトヘトになり、
224
とうとう
畳
(
たたみ
)
に
平太
(
へた
)
ばつて
了
(
しま
)
つた。
225
そして
切
(
しき
)
りに
首
(
くび
)
をふり
乍
(
なが
)
ら、
226
顔
(
かほ
)
を
畳
(
たたみ
)
にひつつけた
儘
(
まま
)
、
227
爺
(
おやぢ
)
『
一切
(
いつさい
)
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
します、
228
御免
(
ごめん
)
下
(
くだ
)
さいませ。
229
モウ
斯
(
か
)
うなれば
隠
(
かく
)
しても
駄目
(
だめ
)
だから……』
230
と
以前
(
いぜん
)
の
権幕
(
けんまく
)
はどこへやら、
231
猫
(
ねこ
)
に
追
(
お
)
はれた
鼠
(
ねずみ
)
のやうにちぢこまつた。
232
喜楽
(
きらく
)
の
質問
(
しつもん
)
につれ
逐一
(
ちくいち
)
自白
(
じはく
)
したが、
233
それはザツと
左
(
さ
)
の
通
(
とほ
)
りであつた。
234
爺
『
此
(
この
)
爺
(
おやぢ
)
の
叔父
(
をぢ
)
に
一人
(
ひとり
)
の
財産家
(
ざいさんか
)
があつた。
235
それを
此
(
この
)
爺
(
おやぢ
)
が
十四五
(
じふしご
)
年前
(
ねんぜん
)
、
236
悪辣
(
あくらつ
)
なる
手段
(
しゆだん
)
でたらしこみ、
237
財産
(
ざいさん
)
全部
(
ぜんぶ
)
を
横領
(
わうりやう
)
して
了
(
しま
)
つた。
238
叔父
(
をぢ
)
は
憤怒
(
ふんど
)
と
煩悶
(
はんもん
)
の
余
(
あま
)
り、
239
精神
(
せいしん
)
に
虚隙
(
すき
)
が
出来
(
でき
)
、
240
其
(
その
)
結果
(
けつくわ
)
野天狗
(
のてんぐ
)
につかれ、
241
とうとう
山奥
(
やまおく
)
にいつて
首
(
くび
)
を
縊
(
くく
)
つて
往生
(
わうじやう
)
して
了
(
しま
)
つた。
242
死骸
(
しがい
)
は
永
(
なが
)
らく
見
(
み
)
つからず、
243
二三
(
にさん
)
年
(
ねん
)
してから
白骨
(
はくこつ
)
となつて、
244
山
(
やま
)
の
奥
(
おく
)
にころがつてゐた。
245
余
(
あま
)
りの
悔
(
くや
)
しさ
残念
(
ざんねん
)
さに、
246
叔父
(
をぢ
)
の
亡霊
(
ばうれい
)
は
此
(
この
)
爺
(
おやぢ
)
が
酒
(
さけ
)
にくらひ
酔
(
よ
)
うて、
247
道傍
(
みちばた
)
に
倒
(
たふ
)
れてる
隙
(
すき
)
を
考
(
かんが
)
へ、
248
野天狗
(
のてんぐ
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
憑依
(
ひようい
)
し、
249
そして
鞍馬山
(
くらまやま
)
の
大僧坊
(
だいそうばう
)
と
偽
(
いつは
)
り、
250
米
(
こめ
)
が
非常
(
ひじやう
)
に
下
(
さ
)
がるから
早
(
はや
)
く
相場
(
さうば
)
をして
売
(
うり
)
にかかれ、
251
大変
(
たいへん
)
な
金
(
かね
)
を
儲
(
まう
)
けさしてやると
云
(
い
)
ふので、
252
売方
(
うりかた
)
になると
米
(
こめ
)
が
段々
(
だんだん
)
と
上
(
あ
)
がつて
来
(
く
)
る。
253
今度
(
こんど
)
は
又
(
また
)
米
(
こめ
)
があがるから
買方
(
かひかた
)
になれと
云
(
い
)
ふので、
254
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りやつて
見
(
み
)
ると、
255
大変
(
たいへん
)
な
大下
(
おほさ
)
がりを
喰
(
くら
)
ひ、
256
何回
(
なんくわい
)
となくたばかられて、
257
大損害
(
だいそんがい
)
を
重
(
かさ
)
ね、
258
折角
(
せつかく
)
叔父
(
をぢ
)
から
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れた
山林
(
さんりん
)
田畠
(
でんばた
)
も
残
(
のこ
)
らず
売
(
う
)
りとばして
了
(
しま
)
ひ、
259
駄菓子
(
だぐわし
)
屋
(
や
)
とヘボ
材木屋
(
ざいもくや
)
とまで
零落
(
れいらく
)
させて
了
(
しま
)
つたのである、
260
尚
(
なほ
)
最後
(
さいご
)
には
何
(
なん
)
とかして
命
(
いのち
)
まで
取
(
と
)
る
積
(
つもり
)
で
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
、
261
今日
(
けふ
)
計
(
はか
)
らずも、
262
霊術
(
れいじゆつ
)
非凡
(
ひぼん
)
な
審神者
(
さには
)
に
看破
(
かんぱ
)
されたので
厶
(
ござ
)
います』
263
と
大体
(
だいたい
)
の
自白
(
じはく
)
をした。
264
そして
鼻汁
(
はな
)
が
盛
(
さか
)
んに
出
(
で
)
るのはつまり
首
(
くび
)
をくくつた
時
(
とき
)
、
265
鼻汁
(
はな
)
を
垂
(
た
)
れた
其
(
その
)
亡霊
(
ばうれい
)
の
所為
(
しよゐ
)
である。
266
白骨
(
はくこつ
)
の
主
(
ぬし
)
を
手
(
て
)
あつく
葬
(
はうむ
)
る
事
(
こと
)
を
爺
(
おやぢ
)
が
約束
(
やくそく
)
したので、
267
亡霊
(
ばうれい
)
はヤツとのことで、
268
爺
(
おやぢ
)
の
体
(
からだ
)
から
退散
(
たいさん
)
した。
269
乍併
(
しかしながら
)
退散
(
たいさん
)
したといふのは
表向
(
おもてむき
)
で、
270
ヤツパリ
此
(
この
)
爺
(
おやぢ
)
の
体
(
からだ
)
に
潜
(
ひそ
)
み、
271
時々
(
ときどき
)
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
をやらすのである。
272
此
(
この
)
爺
(
おやぢ
)
さんは
明治
(
めいぢ
)
四十五
(
しじふご
)
年
(
ねん
)
頃
(
ごろ
)
大本
(
おほもと
)
へ
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
たことがある。
273
今
(
いま
)
は
家
(
いへ
)
も
何
(
なに
)
もかも
売
(
う
)
つて
了
(
しま
)
ひ、
274
大阪
(
おほさか
)
方面
(
はうめん
)
へ
出稼
(
でかせ
)
ぎに
行
(
い
)
つたといふことである。
275
(
大正一一・一〇・一二
旧八・二二
松村真澄
録)
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