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第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
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第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
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第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
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第13巻(子の巻)
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第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
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第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第37巻(子の巻)
序
総説
第1篇 安閑喜楽
01 富士山
〔1013〕
02 葱節
〔1014〕
03 破軍星
〔1015〕
04 素破抜
〔1016〕
05 松の下
〔1017〕
06 手料理
〔1018〕
第2篇 青垣山内
07 五万円
〔1019〕
08 梟の宵企
〔1020〕
09 牛の糞
〔1021〕
10 矢田の滝
〔1022〕
11 松の嵐
〔1023〕
12 邪神憑
〔1024〕
第3篇 阪丹珍聞
13 煙の都
〔1025〕
14 夜の山路
〔1026〕
15 盲目鳥
〔1027〕
16 四郎狸
〔1028〕
17 狐の尾
〔1029〕
18 奥野操
〔1030〕
19 逆襲
〔1031〕
20 仁志東
〔1032〕
第4篇 山青水清
21 参綾
〔1033〕
22 大僧坊
〔1034〕
23 海老坂
〔1035〕
24 神助
〔1036〕
25 妖魅来
〔1037〕
霊の礎(九)
余白歌
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> 第3篇 阪丹珍聞 > 第18章 奥野操
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第一八章
奥野
(
おくの
)
操
(
みさを
)
〔一〇三〇〕
インフォメーション
著者:
巻:
篇:
よみ(新仮名遣い):
章:
よみ(新仮名遣い):
通し章番号:
口述日:
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
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主な登場人物
[?]
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm3718
愛善世界社版:
八幡書店版:
修補版:
校定版:
普及版:
初版:
ページ備考:
001
一旦
(
いつたん
)
斎藤
(
さいとう
)
宇一
(
ういち
)
の
座敷
(
ざしき
)
から、
002
退却
(
たいきやく
)
を
命
(
めい
)
ぜられた
修業場
(
しうげふば
)
は、
003
又
(
また
)
もや
爺
(
おやぢ
)
の
機嫌
(
きげん
)
が
直
(
なほ
)
つて、
004
再
(
ふたたび
)
修行場
(
しうぎやうば
)
に、
005
二間
(
ふたま
)
続
(
つづ
)
きの
奥座敷
(
おくざしき
)
を
給与
(
きふよ
)
された。
006
其
(
その
)
時
(
とき
)
は
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
、
007
石田
(
いしだ
)
小末
(
こすゑ
)
、
008
上田
(
うへだ
)
幸吉
(
かうきち
)
などが
最
(
もつと
)
も
面白
(
おもしろ
)
き
神懸
(
かむがか
)
りであり、
009
いろいろの
珍
(
めづら
)
しき
神術
(
かむわざ
)
をして
見
(
み
)
せた。
010
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
が
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み
審神者
(
さには
)
となり、
011
石田
(
いしだ
)
小末
(
こすゑ
)
が
神主
(
かむぬし
)
となり、
012
小末
『サア
地震
(
ぢしん
)
だ』
013
といへば、
014
俄
(
にはか
)
に
家
(
いへ
)
がガタガタとふるひ
出
(
だ
)
し、
015
ゴーゴーと
唸
(
うな
)
り
声
(
ごゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
016
けれ
共
(
ども
)
地震
(
ぢしん
)
は
此
(
この
)
家
(
いへ
)
限
(
かぎ
)
りで、
017
門口
(
かどぐち
)
を
出
(
で
)
ると
最早
(
もはや
)
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
もなかつた、
018
大勢
(
おほぜい
)
の
者
(
もの
)
は
其
(
その
)
不可思議
(
ふかしぎ
)
な
神力
(
しんりき
)
に
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し、
019
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
いてゐた。
020
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
が、
021
多田
(
ただ
)
『われは
巴御前
(
ともゑごぜん
)
だ、
022
オイ
家来
(
けらい
)
の
者
(
もの
)
、
023
皆
(
みな
)
サンにお
茶
(
ちや
)
を
注
(
つ
)
げ』
024
と
命
(
めい
)
ずると、
025
戸棚
(
とだな
)
からガチヤガチヤと
音
(
おと
)
がして
茶碗
(
ちやわん
)
が
人
(
ひと
)
の
数
(
かず
)
丈
(
だけ
)
宙
(
ちう
)
をたつて、
026
二人
(
ふたり
)
の
前
(
まへ
)
に
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る。
027
多田
(
ただ
)
は、
028
多田
(
ただ
)
『
皆
(
みな
)
サンの
前
(
まへ
)
へ、
029
一
(
ひと
)
つづつ
配
(
くば
)
れ』
030
と
厳命
(
げんめい
)
すると、
031
何
(
なに
)
も
居
(
を
)
らぬのに、
032
茶碗
(
ちやわん
)
が
畳
(
たたみ
)
の
上
(
うへ
)
五六寸
(
ごろくすん
)
の
所
(
ところ
)
を
通
(
とほ
)
つて、
033
各自
(
かくじ
)
の
膝
(
ひざ
)
の
前
(
まへ
)
にチヤンと
据
(
す
)
はる、
034
据
(
す
)
はつた
時
(
とき
)
どれもこれも
茶碗
(
ちやわん
)
が
二三遍
(
にさんべん
)
キリキリと
舞
(
ま
)
うてゐるのが
不思議
(
ふしぎ
)
である。
035
多田
(
ただ
)
『サアお
茶
(
ちや
)
をつげ』
036
と
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
が
命令
(
めいれい
)
すると、
037
石田
(
いしだ
)
小末
(
こすゑ
)
は
手
(
て
)
で
土瓶
(
どびん
)
を
持
(
も
)
つて、
038
茶
(
ちや
)
を
注
(
つ
)
ぐ
真似
(
まね
)
をする。
039
さうすると、
040
火鉢
(
ひばち
)
にかかつてゐた
土瓶
(
どびん
)
が
勝手
(
かつて
)
に、
041
宙
(
ちう
)
をブラブラやつて
来
(
き
)
て、
042
誰
(
たれ
)
かが
持
(
も
)
つて
茶
(
ちや
)
を
注
(
つ
)
ぐ
様
(
やう
)
に、
043
八分
(
はちぶ
)
許
(
ばか
)
り、
044
各
(
かく
)
次
(
つ
)
ぎ
次
(
つ
)
ぎに
注
(
そそ
)
いでまはる。
045
始
(
はじ
)
めの
中
(
うち
)
は
喜楽
(
きらく
)
の
霊学
(
れいがく
)
は
偉
(
えら
)
い
者
(
もの
)
だとほめて
居
(
ゐ
)
たが、
046
ソロソロ
魔法使
(
まはふつかい
)
、
047
飯綱使
(
いづなつかい
)
と
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
罵
(
ののし
)
り
出
(
だ
)
した。
048
それにも
構
(
かま
)
はず
霊
(
れい
)
をかけて
火鉢
(
ひばち
)
を
動
(
うご
)
かしたり、
049
机
(
つくゑ
)
を
二三尺
(
にさんじやく
)
許
(
ばか
)
りも
宙
(
ちう
)
に
上
(
あ
)
げたり、
050
土瓶
(
どびん
)
を
廻
(
まは
)
らしたりして、
051
日夜
(
にちや
)
研究
(
けんきう
)
に
没頭
(
ぼつとう
)
してゐた。
052
此
(
この
)
時
(
とき
)
位
(
くらゐ
)
面白
(
おもしろ
)
くて
得意
(
とくい
)
な
事
(
こと
)
はなかつた。
053
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
に
憑
(
うつ
)
つた
巴御前
(
ともえごぜん
)
と
自称
(
じしよう
)
する
霊
(
れい
)
は
喜楽
(
きらく
)
に
向
(
むか
)
つて
曰
(
い
)
ふ。
054
多田
(
ただ
)
『
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
色々
(
いろいろ
)
の
霊術
(
れいじゆつ
)
を、
055
神
(
かみ
)
が
守護
(
しゆご
)
致
(
いた
)
してさしてやるのだから、
056
これから
一座
(
いちざ
)
を
組
(
く
)
んで、
057
京
(
きやう
)
大阪
(
おほさか
)
へ
飛出
(
とびだ
)
し、
058
奇術師
(
きじゆつし
)
となつて、
059
ドツサリ
金
(
かね
)
を
儲
(
まう
)
け、
060
それを
資本
(
しほん
)
として
大
(
おほ
)
きな
神殿
(
しんでん
)
を
造
(
つく
)
り
本部
(
ほんぶ
)
を
建
(
た
)
てようだないか』
061
と
勧
(
すす
)
めるのであつた。
062
喜楽
(
きらく
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
道
(
みち
)
に、
063
そんな
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
をしては
却
(
かへつ
)
て
神
(
かみ
)
の
道
(
みち
)
を
汚
(
けが
)
すだらうと
思
(
おも
)
つて、
064
躊躇
(
ちうちよ
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
065
石田
(
いしだ
)
小末
(
こすゑ
)
の
憑霊
(
ひようれい
)
が
又
(
また
)
もや
発動
(
はつどう
)
して、
066
小末
(
こすゑ
)
『サア
是
(
これ
)
から
宙
(
ちう
)
を
歩
(
ある
)
いて
見
(
み
)
せる、
067
何
(
な
)
ンでもかンでも
御
(
お
)
望
(
のぞ
)
み
次第
(
しだい
)
ぢや、
068
こんな
結構
(
けつこう
)
な
神術
(
かむわざ
)
があるのに、
069
丹波
(
たんば
)
の
山奥
(
やまおく
)
に
隠
(
かく
)
しておくのは
勿体
(
もつたい
)
ない、
070
京
(
きやう
)
大阪
(
おほさか
)
へ
出
(
で
)
て、
071
天晴
(
あつぱ
)
れ
神術
(
かむわざ
)
をして
見
(
み
)
せたら、
072
それこそ
一遍
(
いつぺん
)
に
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
が
分
(
わか
)
つて、
073
お
道
(
みち
)
が
開
(
ひら
)
けるだらう。
074
サア
早
(
はや
)
く
決心
(
けつしん
)
なされ』
075
と
多田
(
ただ
)
と
小末
(
こすゑ
)
の
二人
(
ふたり
)
の
神懸
(
かむがかり
)
が
両方
(
りやうはう
)
からつめかける。
076
山子
(
やまこ
)
好
(
ず
)
きの
元市
(
もといち
)
親子
(
おやこ
)
は
喉
(
のど
)
をならして
喜
(
よろこ
)
び、
077
元市親子
『サアこれが
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
だ。
078
天眼通
(
てんがんつう
)
から
天耳通
(
てんじつう
)
、
079
天言通
(
てんげんつう
)
、
080
それにこんな
神術
(
かむわざ
)
、
081
これを
見
(
み
)
せたら、
082
いかな
理屈
(
りくつ
)
の
強
(
つよ
)
い
男
(
をとこ
)
でも、
083
往生
(
わうじやう
)
せずには
居
(
を
)
られまい。
084
金儲
(
かねまう
)
けをしもつて、
085
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
が
広
(
ひろ
)
まるのだ、
086
エヘヽヽヽ、
087
こんな
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
が
世
(
よ
)
にあらうか』
088
と
乗気
(
のりき
)
になつて
居
(
ゐ
)
る。
089
岩森
(
いはもり
)
とく、
090
斎藤
(
さいとう
)
高子
(
たかこ
)
までが
色々
(
いろいろ
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
な
神術
(
かむわざ
)
を
習得
(
しふとく
)
して
同意
(
どうい
)
し
出
(
だ
)
した。
091
喜楽
(
きらく
)
の
心
(
こころ
)
では、
092
……そんな
所
(
ところ
)
へ
出
(
で
)
て、
093
芸
(
げい
)
をして
見
(
み
)
せるのは、
094
何
(
なん
)
だか
恥
(
はづか
)
しくて
堪
(
たま
)
らない、
095
乍併
(
しかしながら
)
それで
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
道
(
みち
)
が
開
(
ひら
)
けるのならば、
096
強
(
あなが
)
ち
止
(
と
)
める
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
くまい。
097
何事
(
なにごと
)
も
神懸
(
かむがかり
)
に
任
(
まか
)
して、
098
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
つて
京
(
きやう
)
大阪
(
おほさか
)
へ
一興行
(
ひとこうぎやう
)
やりに
行
(
ゆ
)
かうか……と
決心
(
けつしん
)
し、
099
産土
(
うぶすな
)
神社
(
じんじや
)
へ
参
(
まゐ
)
つて、
100
伺
(
うかが
)
つてみた。
101
さうすると
又
(
また
)
もや
自分
(
じぶん
)
の
腹
(
はら
)
から
塊
(
かたまり
)
が
二
(
ふた
)
つ
三
(
みつ
)
つゴロゴロと
喉
(
のど
)
のあたりまで
舞
(
ま
)
ひ
上
(
あが
)
り、
102
『バカ バカ バカツ』
103
と
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
104
喜楽
(
きらく
)
は
止
(
や
)
めるのが
馬鹿
(
ばか
)
か、
105
興行
(
こうぎやう
)
に
出
(
で
)
るのが
馬鹿
(
ばか
)
か、
106
どちらで
御座
(
ござ
)
ります………と
問
(
と
)
ひ
返
(
かへ
)
して
見
(
み
)
ると、
107
又
(
また
)
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から、
108
『
其
(
その
)
判断
(
はんだん
)
がつかぬ
奴
(
やつ
)
は
尚
(
なほ
)
馬鹿
(
ばか
)
だ』
109
と
呶鳴
(
どな
)
られた。
110
喜楽
(
きらく
)
は、
111
喜楽
『そんなら
多数決
(
たすうけつ
)
に
依
(
よ
)
つて、
112
神懸
(
かむがかり
)
や
元市
(
もといち
)
サンの
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りに
致
(
いた
)
します』
113
と
言
(
い
)
つてみれば、
114
又
(
また
)
もや
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から、
115
『やるならやれ、
116
兇党界
(
きよたうかい
)
に
落
(
おと
)
してやるぞよ』
117
と
呶鳴
(
どな
)
りつけられ、
118
とうとう
霊学
(
れいがく
)
興行
(
こうぎやう
)
は
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
る
事
(
こと
)
にして
了
(
しま
)
つた。
119
例
(
れい
)
の
如
(
ごと
)
く
修業場
(
しうげふば
)
で
幽斎
(
いうさい
)
を
始
(
はじ
)
めて
居
(
ゐ
)
ると、
120
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
の
容貌
(
ようばう
)
が
俄
(
にはか
)
に
獰悪
(
どうあく
)
となつて
来
(
き
)
た。
121
そしてはじけわれるやうな
声
(
こゑ
)
で、
122
多田琴
『アラ アラ アラ』
123
と
呶鳴
(
どな
)
り
出
(
だ
)
し、
124
撃剣家
(
げきけんか
)
が
竹刀
(
しない
)
をふり
上
(
あ
)
げて
立合
(
たちあ
)
ふ
様
(
やう
)
な
素振
(
そぶ
)
りをして
居
(
ゐ
)
る。
125
審神者
(
さには
)
の
喜楽
(
きらく
)
は、
126
喜楽
『
鎮
(
しづ
)
まれ!』
127
と
一言
(
ひとこと
)
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
した。
128
多田
(
ただ
)
は
其
(
その
)
一言
(
いちごん
)
に
元
(
もと
)
の
座
(
ざ
)
に
行儀
(
ぎやうぎ
)
よく
坐
(
すわ
)
り、
129
組
(
く
)
んだ
手
(
て
)
を
離
(
はな
)
して、
130
昔
(
むかし
)
の
武士
(
ぶし
)
が、
131
腰
(
こし
)
の
刀
(
かたな
)
を
抜
(
ぬ
)
く
様
(
やう
)
な
素振
(
そぶり
)
をなし、
132
多田琴
『
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
よ』
133
と
審神者
(
さには
)
の
前
(
まへ
)
に
手
(
て
)
をつき
出
(
だ
)
す、
134
審神者
(
さには
)
は
目
(
め
)
をつぶつた
儘
(
まま
)
、
135
之
(
これ
)
を
見
(
み
)
れば
短刀
(
たんたう
)
の
根元
(
ねもと
)
に、
136
白紙
(
しらかみ
)
が
巻
(
ま
)
いてあるのをつき
出
(
だ
)
してるやうに
見
(
み
)
える。
137
そして
此
(
この
)
短刀
(
たんたう
)
を
持
(
も
)
つた
男
(
をとこ
)
は、
138
年
(
とし
)
は
四十
(
しじふ
)
前後
(
ぜんご
)
の
稍
(
やや
)
赤
(
あか
)
みがかつた
細
(
ほそ
)
だちの
品
(
ひん
)
のよい
男
(
をとこ
)
である。
139
多田
(
ただ
)
は
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
つて
云
(
い
)
ふ、
140
多田
(
ただ
)
『
某
(
それがし
)
は
園部
(
そのべ
)
の
藩主
(
はんしゆ
)
小出公
(
こいでこう
)
の
指南番
(
しなんばん
)
奥野
(
おくの
)
操
(
みさを
)
といふ
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
つたが、
141
同役
(
どうやく
)
のそねみに
依
(
よ
)
つて、
142
讒言
(
ざんげん
)
をせられ、
143
園部
(
そのべ
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
され、
144
亀山
(
かめやま
)
に
参
(
まゐ
)
り、
145
松平公
(
まつだひらこう
)
の
指南番
(
しなんばん
)
となり、
146
勤
(
つと
)
めてゐた
所
(
ところ
)
、
147
十八
(
じふはち
)
歳
(
さい
)
の
殿
(
との
)
様
(
さま
)
の
妹娘
(
いもうとむすめ
)
に
惚
(
ほ
)
れられて、
148
遂
(
つひ
)
に
同役
(
どうやく
)
より
又
(
また
)
もや
讒言
(
ざんげん
)
をせられ、
149
無念
(
むねん
)
の
涙
(
なみだ
)
を
呑
(
の
)
んで、
150
丁度
(
ちやうど
)
八十
(
はちじふ
)
年
(
ねん
)
以前
(
いぜん
)
の
今晩
(
こんばん
)
、
151
切腹
(
せつぷく
)
を
致
(
いた
)
して
相果
(
あひは
)
てた
武士
(
ぶし
)
で
厶
(
ござ
)
る。
152
此
(
この
)
短刀
(
たんたう
)
を
見
(
み
)
られよ、
153
血汐
(
ちしほ
)
が
附
(
つ
)
いてをらうがなア』
154
と
呶鳴
(
どな
)
り
立
(
た
)
てた。
155
喜楽
(
きらく
)
『ここは
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
憑
(
うつ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
為
(
ため
)
の
修行場
(
しうぎやうば
)
であれば、
156
人霊
(
じんれい
)
などの
来
(
く
)
るべき
所
(
ところ
)
ではない。
157
早
(
はや
)
く
立去
(
たちさ
)
つたがよからう』
158
ときめつけた。
159
憑霊
(
ひようれい
)
は
首
(
くび
)
を
左右
(
さいう
)
に
振
(
ふ
)
り、
160
多田琴
『
苟
(
いやし
)
くも
天下
(
てんか
)
の
豪傑
(
がうけつ
)
、
161
武道
(
ぶだう
)
の
指南番
(
しなんばん
)
に
向
(
むか
)
つて、
162
無礼
(
ぶれい
)
千万
(
せんばん
)
な
其
(
その
)
言
(
い
)
ひ
条
(
でう
)
了見
(
れうけん
)
致
(
いた
)
さぬぞ』
163
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
164
ツと
立上
(
たちあが
)
り、
165
多田琴
『ヤア ヤア』
166
と
声
(
こゑ
)
をかけ、
167
喜楽
(
きらく
)
の
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
を
前後
(
ぜんご
)
左右
(
さいう
)
に
飛
(
と
)
び
廻
(
まは
)
り、
168
時々
(
ときどき
)
頭
(
あたま
)
を
蹴
(
け
)
つて、
169
騒
(
さわ
)
ぎまはり、
170
何程
(
なにほど
)
鎮魂
(
ちんこん
)
をしても、
171
荒
(
あら
)
くなる
計
(
ばか
)
りで、
172
少
(
すこ
)
しも
鎮
(
しづ
)
まらない。
173
喜楽
(
きらく
)
も
殆
(
ほとん
)
ど
持
(
も
)
てあまし、
174
此
(
この
)
場
(
ば
)
をぬけ
出
(
だ
)
し、
175
再
(
ふたたび
)
産土
(
うぶすな
)
の
社
(
やしろ
)
へかけつけて、
176
祈願
(
きぐわん
)
をこらして
居
(
ゐ
)
た。
177
そこへ
石田
(
いしだ
)
小末
(
こすゑ
)
が
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
て、
178
小末
(
こすゑ
)
『モシ
先生
(
せんせい
)
、
179
鎮
(
しづ
)
まりました。
180
操
(
みさを
)
と
云
(
い
)
ふ
武士
(
ぶし
)
が
先生
(
せんせい
)
に
一
(
ひと
)
つ
御
(
お
)
頼
(
たの
)
みがあるから、
181
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
欲
(
ほ
)
しいと
頼
(
たの
)
んで
居
(
を
)
ります。
182
どうぞ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さいませ』
183
と
叮嚀
(
ていねい
)
に
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げて
頼
(
たの
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
184
喜楽
(
きらく
)
は、
185
喜楽
(
きらく
)
『ヤアもう
鎮
(
しづ
)
まつたか、
186
そりや
有難
(
ありがた
)
い、
187
産土
(
うぶすな
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
蔭
(
かげ
)
だ』
188
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
189
社前
(
しやぜん
)
に
感謝
(
かんしや
)
し、
190
直
(
ただち
)
に
元市
(
もといち
)
の
宅
(
たく
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
191
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
れば
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
は
厳然
(
げんぜん
)
として
坐
(
すわ
)
りこみ、
192
多田
(
ただ
)
『アイヤ
上田氏
(
うへだうぢ
)
、
193
某
(
それがし
)
は
最前
(
さいぜん
)
申
(
まを
)
せし
如
(
ごと
)
く、
194
亀山公
(
かめやまこう
)
の
指南番
(
しなんばん
)
奥野
(
おくの
)
操
(
みさを
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
で
厶
(
ござ
)
る。
195
女房
(
にようばう
)
もなければ
子
(
こ
)
もなし、
196
又
(
また
)
身内
(
みうち
)
もなき
故
(
ゆゑ
)
に
後
(
あと
)
弔
(
とむら
)
ひくれるものもなく、
197
宙
(
ちう
)
に
迷
(
まよ
)
うて
居
(
を
)
りまする。
198
就
(
つ
)
いては
自分
(
じぶん
)
の
家
(
うち
)
に
出入
(
でいり
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
つた
家来
(
けらい
)
の
子孫
(
しそん
)
が
内丸町
(
うちまるちやう
)
に
紙屑屋
(
かみくづや
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
る。
199
これは
西尾
(
にしを
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
なれば、
200
よく
査
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
され、
201
戒名
(
かいみやう
)
は
何々
(
なになに
)
と
記
(
しる
)
し
西尾
(
にしを
)
の
宅
(
たく
)
と
西町
(
にしまち
)
の
某寺
(
ぼうじ
)
に
祀
(
まつ
)
つてある。
202
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
虚実
(
きよじつ
)
を
調
(
しら
)
べた
上
(
うへ
)
、
203
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
霊
(
みたま
)
を
御
(
お
)
祀
(
まつ
)
り
下
(
くだ
)
さらば、
204
某
(
それがし
)
は
神
(
かみ
)
の
座
(
ざ
)
に
直
(
なほ
)
り、
205
其
(
その
)
方
(
はう
)
が
神業
(
しんげふ
)
を
保護
(
ほご
)
いたし、
206
日本
(
にほん
)
国中
(
こくぢう
)
は
申
(
まを
)
すに
及
(
およ
)
ばず、
207
世界
(
せかい
)
の
隅々
(
すみずみ
)
に
致
(
いた
)
るまで
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
ならずして
名
(
な
)
を
轟
(
とどろ
)
かして
見
(
み
)
せるで
厶
(
ござ
)
らう。
208
猶
(
なほ
)
も
疑
(
うたが
)
はしくば、
209
亀岡
(
かめをか
)
古世裏
(
こせうら
)
の
墓地
(
ぼち
)
へ
往
(
い
)
つて
調
(
しら
)
べて
下
(
くだ
)
され。
210
入口
(
いりぐち
)
から
右
(
みぎ
)
に
当
(
あた
)
つて
三
(
みつ
)
つ
目
(
め
)
の
石塔
(
せきたふ
)
が、
211
拙者
(
せつしや
)
の
石塔
(
せきたふ
)
で
厶
(
ござ
)
る。
212
性念
(
しやうねん
)
のある
印
(
しるし
)
には、
213
上田氏
(
うへだし
)
が
石塔
(
せきたふ
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
たれたならば
自然
(
しぜん
)
に
動
(
うご
)
くに
依
(
よ
)
つて、
214
それを
証拠
(
しようこ
)
に
御
(
お
)
祀
(
まつ
)
り
下
(
くだ
)
され。
215
武士
(
ぶし
)
が
百姓
(
ひやくしやう
)
の
伜
(
せがれ
)
に
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げてお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
す』
216
と
威丈高
(
ゐたけだか
)
になつて
構
(
かま
)
へてゐる。
217
これより
喜楽
(
きらく
)
は
宇一
(
ういち
)
其
(
その
)
他
(
た
)
二三
(
にさん
)
の
修業者
(
しうげふしや
)
を
引
(
ひき
)
つれ
西町
(
にしまち
)
の
某寺
(
ぼうじ
)
を
調
(
しら
)
べ、
218
紙屑屋
(
かみくづや
)
の
西尾
(
にしを
)
の
宅
(
たく
)
へ
行
(
い
)
つて
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
たが、
219
操
(
みさを
)
と
云
(
い
)
ふ
名
(
な
)
はハツキリ
分
(
わか
)
らぬが、
220
某々
(
ぼうぼう
)
院殿
(
ゐんでん
)
某々
(
ぼうぼう
)
居士
(
こじ
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
丈
(
だけ
)
は
的中
(
てきちう
)
して
居
(
ゐ
)
た。
221
全
(
まつた
)
く
操
(
みさを
)
の
霊
(
れい
)
に
間違
(
まちがひ
)
ないと、
222
勇
(
いさ
)
んで
古世裏
(
こせうら
)
の
墓地
(
ぼち
)
へ
往
(
い
)
つて
見
(
み
)
た。
223
所
(
ところ
)
が
墓地
(
ぼち
)
全体
(
ぜんたい
)
の
様子
(
やうす
)
が
亡霊
(
ばうれい
)
のいつた
通
(
とほ
)
り
寸分
(
すんぶん
)
の
間違
(
まちがひ
)
もなく、
224
右
(
みぎ
)
の
三
(
みつ
)
つ
目
(
め
)
の
石碑
(
せきひ
)
には
苔
(
こけ
)
がたまつて、
225
ハツキリとは
分
(
わか
)
らぬが、
226
どうも
似
(
に
)
た
字
(
じ
)
が
現
(
あら
)
はれてゐる。
227
石塔
(
せきたふ
)
がモウ
動
(
うご
)
くかモウ
動
(
うご
)
くかと
待
(
ま
)
つ
事
(
こと
)
殆
(
ほとん
)
ど
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
許
(
ばか
)
り、
228
されど
依然
(
いぜん
)
としてビクとも
動
(
うご
)
かない。
229
ハテ
不思議
(
ふしぎ
)
と、
230
不思議
(
ふしぎ
)
でもない
事
(
こと
)
を、
231
不思議
(
ふしぎ
)
がつて
瞑目
(
めいもく
)
し、
232
霊眼
(
れいがん
)
で
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ると、
233
石塔
(
せきたふ
)
の
裏
(
うら
)
に
大
(
おほ
)
きな
古狸
(
ふるたぬき
)
が
目
(
め
)
をむいてゐるのが
目
(
め
)
についた。
234
(喜楽)
『おのれド
狸
(
たぬき
)
奴
(
め
)
が、
235
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしやがつた、
236
これから
帰
(
かへ
)
つて
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
の
審神
(
さには
)
を
厳重
(
げんぢう
)
にしてやらう』
237
と
思
(
おも
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
238
スタスタと
穴太
(
あなを
)
の
修業場
(
しうげふば
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
239
其
(
その
)
時
(
とき
)
既
(
すで
)
に
日
(
ひ
)
は
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
た、
240
修業場
(
しうげふば
)
には
薄暗
(
うすぐら
)
いランプが
一
(
ひと
)
つ、
241
点
(
とも
)
つて
其
(
その
)
向
(
むか
)
ふに
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
と
石田
(
いしだ
)
が
四角張
(
しかくば
)
つて、
242
厳然
(
げんぜん
)
と
控
(
ひかへ
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
243
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るより、
244
多田琴、石田小末
『ヤア
上田
(
うへだ
)
殿
(
どの
)
、
245
大儀
(
たいぎ
)
々々
(
たいぎ
)
よくこそお
調
(
しら
)
べ
下
(
くだ
)
さつた。
246
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
に
間違
(
まちがひ
)
は
厶
(
ござ
)
らうまいがなア、
247
早
(
はや
)
く
某
(
それがし
)
の
霊
(
れい
)
をお
祀
(
まつ
)
り
下
(
くだ
)
され。
248
ヤア
元市
(
もといち
)
どの、
249
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
面々
(
めんめん
)
、
250
いかい
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
厶
(
ござ
)
つた、
251
アツハヽヽヽ』
252
と
豪傑
(
がうけつ
)
笑
(
わら
)
ひをなし、
253
肩
(
かた
)
を
二人
(
ふたり
)
一時
(
いつとき
)
に
揺
(
ゆ
)
すつてゐる。
254
喜楽
(
きらく
)
『コリヤ
多田
(
ただ
)
に
憑
(
うつ
)
つてゐる
古狸
(
ふるたぬき
)
奴
(
め
)
、
255
小末
(
こすゑ
)
にうつつてる
狸
(
たぬき
)
の
子分
(
こぶん
)
奴
(
め
)
、
256
此
(
この
)
審神者
(
さには
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしやがつたな、
257
サアもう
了見
(
れうけん
)
ならぬ。
258
これから
霊縛
(
れいばく
)
をかけて
縛
(
いまし
)
めてやるから
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ』
259
多田
(
ただ
)
の
憑神
(
ひようしん
)
は
一層
(
いつそう
)
大
(
おほ
)
きく
肩
(
かた
)
をゆすりて
大口
(
おほぐち
)
をあけ、
260
多田琴
『アハヽヽヽ、
261
イヒヽヽヽ』
262
と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
横
(
よこ
)
にゴロンとこけて
了
(
しま
)
つた。
263
喜楽
(
きらく
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
264
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
にウンウンと
霊縛
(
れいばく
)
をかけた。
265
石田
(
いしだ
)
はウンの
声
(
こゑ
)
と
共
(
とも
)
にゴロリと
倒
(
たふ
)
れた。
266
それと
引替
(
ひきか
)
へに
多田
(
ただ
)
の
肉体
(
にくたい
)
はムクリと
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
267
ドンドンドンと
餅
(
もち
)
つく
様
(
やう
)
に
二十貫
(
にじふくわん
)
の
体
(
からだ
)
を
二
(
に
)
尺
(
しやく
)
許
(
ばか
)
り
上
(
あ
)
げ
下
(
さ
)
げして、
268
座敷中
(
ざしきちう
)
を
飛
(
と
)
び
廻
(
まは
)
る。
269
喜楽
(
きらく
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
になつて、
270
喜楽
(
きらく
)
『どうぞお
静
(
しづ
)
まりを
願
(
ねが
)
ひます』
271
と
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げて
優
(
やさ
)
しく
出
(
で
)
た。
272
憑神
(
ひようしん
)
は
大口
(
おほぐち
)
あけて、
273
多田琴
『アハヽヽヽおれは
小松林
(
こまつばやし
)
様
(
さま
)
に
頼
(
たの
)
まれて、
274
貴様
(
きさま
)
達
(
たち
)
に
審神者
(
さには
)
の
修業
(
しうげふ
)
をさせてやつたのだ。
275
実
(
じつ
)
の
所
(
ところ
)
は
松岡
(
まつをか
)
だ。
276
能
(
よ
)
うだまされたのう、
277
石塔
(
せきたふ
)
の
裏
(
うら
)
で
狸
(
たぬき
)
を
見
(
み
)
た
時
(
とき
)
は、
278
随分
(
ずゐぶん
)
妙
(
めう
)
な
顔
(
かほ
)
だつたのう。
279
ホツホヽヽヽ、
280
アハヽヽヽ』
281
と
又
(
また
)
腹
(
はら
)
を
抱
(
かか
)
へて
笑
(
わら
)
ひこける。
282
俄
(
にはか
)
に
室内
(
しつない
)
が
死人
(
しにん
)
臭
(
くさ
)
くなつて
来
(
き
)
た。
283
……あゝ
臭
(
くさ
)
い
臭
(
くさ
)
いと
各自
(
かくじ
)
に
鼻
(
はな
)
をつまんでゐると、
284
どこともなしに
坊主
(
ばうず
)
のお
経
(
きやう
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
るかと
思
(
おも
)
へば
厭
(
いや
)
らしい
声
(
こゑ
)
で
巡礼歌
(
じゆんれいうた
)
が
聞
(
きこ
)
える、
285
チンドン、
286
ジヤブリンと
云
(
い
)
ふ
葬礼
(
さうれん
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
が
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
る。
287
此奴
(
こいつ
)
ア
怪
(
あや
)
しいと
手
(
て
)
を
組
(
く
)
み
目
(
め
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ、
288
霊眼
(
れいがん
)
をてらせば、
289
幾十
(
いくじふ
)
とも
知
(
し
)
れぬ
亡者
(
もうじや
)
が
各自
(
てんで
)
に
笠
(
かさ
)
と
杖
(
つゑ
)
を
手
(
て
)
に
持
(
も
)
ち、
290
乞食
(
こじき
)
坊主
(
ばうず
)
の
後
(
あと
)
について、
291
障子
(
しやうじ
)
の
細
(
ほそ
)
い
穴
(
あな
)
からくぐつて
這入
(
はい
)
つて
来
(
く
)
るのが
目
(
め
)
についた。
292
そして
一番先
(
いちばんさき
)
に
出
(
で
)
て
来
(
く
)
る
亡者
(
もうじや
)
の
顔
(
かほ
)
が、
293
隣
(
となり
)
のお
紋
(
もん
)
と
云
(
い
)
ふ
娘
(
むすめ
)
の
顔
(
かほ
)
にソツクリである。
294
喜楽
(
きらく
)
は
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず、
295
喜楽
(
きらく
)
『ヤアお
紋
(
もん
)
サン』
296
と
叫
(
さけ
)
んだ。
297
されど
何
(
なん
)
の
答
(
こたへ
)
もなしに
座敷
(
ざしき
)
へドカドカと
亡者
(
もうじや
)
が
重
(
かさ
)
なり
来
(
きた
)
り、
298
遂
(
つひ
)
には
何百
(
なんびやく
)
とも
知
(
し
)
れず
重
(
かさ
)
なり
合
(
あ
)
うて、
299
こちらを
向
(
む
)
いて
睨
(
にら
)
んでゐる。
300
斎藤
(
さいとう
)
高子
(
たかこ
)
、
301
岩森
(
いはもり
)
徳子
(
とくこ
)
の
二人
(
ふたり
)
の
神憑
(
かむがかり
)
はコワイコワイと
叫
(
さけ
)
び
乍
(
なが
)
ら、
302
喜楽
(
きらく
)
の
体
(
からだ
)
に
喰
(
くら
)
ひついて
震
(
ふる
)
ひ
泣
(
な
)
いてゐる。
303
何
(
なん
)
とも
知
(
し
)
れぬ
不快
(
ふくわい
)
の
臭
(
にほひ
)
が
室内
(
しつない
)
に
充
(
み
)
ち、
304
ランプの
光
(
ひかり
)
は
自然
(
しぜん
)
に
細
(
ほそ
)
つてそこら
中
(
ぢう
)
が
薄暗
(
うすぐら
)
くなつて
来
(
き
)
た。
305
それから
蝋燭
(
らふそく
)
を
四五本
(
しごほん
)
も
灯
(
とも
)
してみたが、
306
どれもこれも
火
(
ひ
)
が
小
(
ちひ
)
さくなつて
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
ふ。
307
仕方
(
しかた
)
がないから、
308
東側
(
ひがしがは
)
の
細溝
(
ほそみぞ
)
の
清水
(
せいすい
)
で
体
(
からだ
)
を
清
(
きよ
)
め、
309
胴
(
どう
)
を
据
(
す
)
えて、
310
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
奏上
(
そうじやう
)
しかけた。
311
怪
(
あや
)
しき
亡者
(
もうじや
)
の
影
(
かげ
)
は
一人
(
ひとり
)
減
(
へ
)
り
二人
(
ふたり
)
減
(
へ
)
り、
312
とうとう
又
(
また
)
元
(
もと
)
の
障子
(
しやうじ
)
の
細
(
ほそ
)
い
破
(
やぶ
)
れ
穴
(
あな
)
から
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
313
かかる
所
(
ところ
)
へお
紋
(
もん
)
の
母親
(
ははおや
)
お
初
(
はつ
)
といふ
婆
(
ば
)
アサンが、
314
慌
(
あは
)
ただしくやつて
来
(
き
)
て、
315
お
初
(
はつ
)
『モシモシ
喜楽
(
きらく
)
サン、
316
最前
(
さいぜん
)
から
俄
(
にはか
)
にお
紋
(
もん
)
が
病気
(
びやうき
)
になつて
囈言
(
うはごと
)
許
(
ばか
)
りいつてゐます、
317
そして
喜楽
(
きらく
)
サンどうぞこらへて
下
(
くだ
)
さいと、
318
幾度
(
いくど
)
となく
繰返
(
くりかへ
)
して
居
(
を
)
りますから、
319
どうぞ、
320
どんな
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
をしたか
知
(
し
)
らぬが、
321
まだ
年
(
とし
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
子供
(
こども
)
の
事
(
こと
)
だから、
322
カニーしてやつて
下
(
くだ
)
され。
323
大変
(
たいへん
)
な
熱
(
ねつ
)
で、
324
臭
(
くさ
)
うて
側
(
そば
)
へもよりつけませぬ』
325
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
326
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
327
喜楽
(
きらく
)
はこれを
聞
(
き
)
くより
隣
(
となり
)
のお
紋
(
もん
)
サンの
家
(
うち
)
に
行
(
ゆ
)
き
見
(
み
)
れば、
328
お
初
(
はつ
)
婆
(
ば
)
アサンの
云
(
い
)
つた
通
(
とほ
)
り、
329
熱臭
(
ねつくさ
)
く
不快
(
ふくわい
)
な
臭
(
にほひ
)
が
漂
(
ただよ
)
ひ
娘
(
むすめ
)
はウンウンと
唸
(
うな
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
330
丁度
(
ちやうど
)
元市
(
もといち
)
の
修業場
(
しうげふば
)
で
嗅
(
か
)
いだ
臭
(
にほひ
)
とソツクリであつた。
331
そこで
又
(
また
)
もや
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
声
(
こゑ
)
高
(
たか
)
らかに
奏上
(
そうじやう
)
し、
332
鎮魂
(
ちんこん
)
を
施
(
ほどこ
)
せば、
333
お
紋
(
もん
)
サンは
夢中
(
むちう
)
になつて、
334
『のきます のきます』
335
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
336
寝所
(
ねどこ
)
から
立上
(
たちあが
)
り、
337
二足
(
ふたあし
)
三足
(
みあし
)
門口
(
かどぐち
)
の
方
(
はう
)
へ
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
し、
338
バタリと
其
(
その
)
場
(
ば
)
に
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
339
それと
同時
(
どうじ
)
に
病気
(
びやうき
)
はスツカリ
治
(
なほ
)
つて
了
(
しま
)
つたのである。
340
此
(
この
)
事
(
こと
)
があつてから、
341
次郎松
(
じろまつ
)
は、
342
いよいよ
喜楽
(
きらく
)
は
飯綱使
(
いづなつかひ
)
だと
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
罵
(
ののし
)
り、
343
曽我部
(
そがべ
)
の
村中
(
むらぢう
)
を、
344
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
にも
仕事
(
しごと
)
を
休
(
やす
)
んでまでふれて
歩
(
ある
)
いた
奇篤
(
きとく
)
な
人間
(
にんげん
)
である。
345
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
346
(
大正一一・一〇・一〇
旧八・二〇
松村真澄
録)
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