霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二一章 参綾(さんれう)〔一〇三三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第4篇 山青水清 よみ(新仮名遣い):やまあおくみずきよし
章:第21章 参綾 よみ(新仮名遣い):さんりょう 通し章番号:1033
口述日:1922(大正11)年10月12日(旧08月22日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
旧歴六月の暑い盛りに、祖母や修行者たちに別れを告げて穴太をはなれ、一人北へと進んで行った。
南桑田船井郡の境界に、虎天関という大井川の清流を引いた有名な水路がある。この傍らに茶店が建っていた。
喜楽が茶店に立ち寄って休息していると、茶店の女主人が喜楽の異様な風体を見て声をかけてきた。女主人の母親は綾部で金光教を信仰していたが、艮の金神様が懸り、神様の身上を見分けてくれる人は東から来る、とお告げがあったという。
茶店の夫婦は、そのために東から来る人を探してここに店を開いていたのだという。
喜楽は綾部の金神様の書いたという筆先を見せてもらい、その内容が高熊山修行で霊眼にて見聞したことと符合していたことに驚き、近いうちに綾部に参上することを茶店の女主人に約束した。
旧八月二十三日に初めて綾部の裏町の教祖宅を訪問し、二三日滞在していたが、金光教の教会教師ら幹部に反対運動をされ、教祖に別れを告げて園部に戻り、宣伝を行っていた。園部では熱心な信者がたくさん集まり、立派な布教所を建てる話がまとまりつつあった。
そんなときに、綾部の出口教祖のお使いとして、四方平蔵氏が訪ねてきた。四方氏によると、幹部たちには内密で、教祖たっての相談で四方氏が派遣されてきたのだという。
そこで喜楽は、敵の中に飛び込む覚悟で綾部に行くことを承諾した。その夜、往復八里の道を穴太に帰って祖母や母に綾部行の報告をなし、産土の大神に祈願をこらして夜が明ける前に園部に帰ってきた。
四方氏と綾部への途上の旅で宿泊した宿にて、天気の予報や四方氏の実家の透視を行って見せた。四方氏にも霊学を理解してもらうために、天眼通を授けた。道々、病気伺いなど霊学の実地を見せると、四方氏はその効験に感心し、教祖の神様を見分けてくれる立派な先生を迎えることができる、と喜んだ。
教祖宅を訪ねると、すでに教祖の熱心な信者が詰めていて歓迎された。金光教の足立氏らは妨害を加えたが、教祖や四方氏らの勢いが猛烈なので、我を折って教祖の命に服従することになった。
艮の金神の金の字をとり、日と月の大神様の名を合わせて、金明会という団体を組織した。四方氏は天眼通を振り回して非常な人気となった。また、四方氏がたったの一回霊学を教わっただけであれだけの神徳をいただいたのだからと、修行者の志願が二十人あまりも出てきた。
金光教の足立氏はあくまでも金光教に拠って反対運動をしていたが、一人も信者が行かなくなり、窮地に陥って金明会に白旗を振って入会を申し出てきた。金明会の役員たちは反対したが、喜楽は足立氏の立場を慮り、役員たちに頼んで副会長として迎え入れた。
金光教と金明会の問題も、和合のうちに解決し、神様の御用に尽くすことを得たのであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-10-26 11:54:15 OBC :rm3721
愛善世界社版:251頁 八幡書店版:第7輯 125頁 修補版: 校定版:261頁 普及版:125頁 初版: ページ備考:
001 (きう)(ろく)(ぐわつ)(あつ)最中(さいちう)であつた。002老祖母(らうそぼ)修業者(しうげふしや)無理(むり)(わか)れを()げて、003(ただ)一人(ひとり)穴太(あなを)(はな)(きた)(きた)へと(すす)()く。004道程(みちのり)(ほとん)()()ばかり()(ところ)に、005南桑田(みなみくはだ)006船井郡(ふなゐぐん)境界(きやうかい)(へう)()つて()る。007其処(そこ)には大井川(おほゐがは)清流(せいりう)をひいた、008有名(いうめい)なる虎天関(とらてんいね)()ふのがある。009虎天関(とらてんいね)(かたはら)枝振(えだぶ)りよき並木(なみき)(なが)めて(ちひ)さき茶店(ちやみせ)()つて()た。010喜楽(きらく)何気(なにげ)なく(その)茶店(ちやみせ)立寄(たちよ)つて休息(きうそく)をして()た。
011 三十(さんじふ)あまりのボツテリと()えた妻君(さいくん)(あら)はれて渋茶(しぶちや)()んで()れた。012さうして喜楽(きらく)異様(いやう)姿(すがた)(なが)めて、
013(をんな)貴方(あなた)(かみ)(さま)御用(ごよう)をなさる(かた)ぢや御座(ござ)いませぬか』
014()ふ。015喜楽(きらく)即座(そくざ)に、
016喜楽(きらく)(わたし)(かみ)(さま)審神(さには)をする(もの)御座(ござ)います。017随分(ずゐぶん)其処(そこ)(ぢう)教会(けうくわい)調(しら)べて()ましたが、018(きつね)(たぬき)のお(だい)サンばつかりでした。019アハヽヽヽ』
020()もなく(わら)つて()る。021(この)(をんな)(たた)みかけた(やう)に、
022(をんな)『モシ先生(せんせい)023(わたし)(ひと)(たの)()(こと)があります。024(わたし)(はは)(いま)綾部(あやべ)()りますが、025(もと)金光(こんくわう)(さま)信神(しんじん)して()ましたが、026(にはか)(うしとら)金神(こんじん)さまがお(うつ)りなさつて沢山(たくさん)(ひと)()神徳(かげ)(いただ)き、027金光(こんくわう)教会(けうくわい)先生(せんせい)世話(せわ)をして()られますが、028(はは)(うつ)つた(かみ)(さま)仰有(おつしや)るには、029(わたし)身上(みじやう)()けて()れる(もの)(ひがし)から()()る。030(その)()(かた)さへ()えたならば出口(でぐち)(なほ)身上(みじやう)(わか)つてくると仰有(おつしや)いましたので、031(わたし)()夫婦(ふうふ)(わざ)(この)道端(みちばた)茶店(ちやみせ)(ひら)いて往来(ゆきき)(ひと)さまに(やす)んで(もら)ひ、032(はは)()つたお(かた)(さが)して()りました。033大方(おほかた)貴方(あなた)(こと)かと(おも)はれてなりませぬ。034何卒(どうぞ)一度(いちど)(はは)身上(みじやう)調(しら)べてやつて(くだ)さらぬか。035これが(はは)(かみ)(さま)がお(かき)になつたお筆先(ふでさき)御座(ござ)います』
036()して()たのが、037バラバラの一枚書(いちまいが)きの筆先(ふでさき)であつた。
038 喜楽(きらく)(この)筆先(ふでさき)()て、039高熊山(たかくまやま)修業(しうげふ)(うち)(おい)霊眼(れいがん)にて見聞(けんぶん)したる(こと)(ある)部分(ぶぶん)符合(ふがふ)せるに(おどろ)き、040婦人(ふじん)依頼(いらい)()けて近々(きんきん)上綾(じやうれう)する(こと)(やく)し、041園部(そのべ)広田屋(ひろたや)()旅館(りよくわん)落着(おちつ)き、042あちらこちらと知己(ちき)訪問(はうもん)して霊学(れいがく)宣伝(せんでん)従事(じゆうじ)しつつあつた。
043 (きう)(はち)(ぐわつ)二十三(にじふさん)(にち)明治31年(1898年)旧8月23日は新10月8日044(はじ)めて綾部(あやべ)裏町(うらまち)教祖(けうそ)(たく)訪問(はうもん)し、045二三(にさん)(にち)滞在(たいざい)して()た。046(しか)るに金光教(こんくわうけう)教会(けうくわい)受持(うけもち)教師(けうし)なる足立(あだち)正信(まさのぶ)(はじ)め、047世話係(せわがかり)中村(なかむら)竹造(たけざう)霊界物語における中村竹造の名前に「竹造」と表記している場合と「竹蔵」と表記している場合があるが、霊界物語ネットでは「竹造」に統一した。詳しくはオニペディアの「霊界物語第37巻の諸本相違点」を見よ048村上(むらかみ)清次郎(せいじらう)049西村(にしむら)文右衛門(ぶんうゑもん)()に、050極力(きよくりよく)反対(はんたい)運動(うんどう)をされ、051時機(じき)(いま)(いた)らずとして教祖(けうそ)(いとま)()げ、052綾部(あやべ)()()つて園部村(そのべむら)(あざ)黒田(くろだ)053西田(にしだ)卯之助(うのすけ)座敷(ざしき)()つて(かみ)(みち)宣伝(せんでん)しつつあつた。054種々(しゆじゆ)神憑(かむがか)りに(くわん)する面白(おもしろ)(はなし)(この)地方(ちはう)(おい)ても沢山(たくさん)目撃(もくげき)したり遭遇(さうぐう)したる(こと)あれども、055岐路(わきみち)()(おそれ)ある(ゆゑ)此処(ここ)には省略(しやうりやく)して()く。056園部(そのべ)上本町(かみほんまち)奥村(おくむら)徳次郎(とくじらう)()熱心(ねつしん)信者(しんじや)があつた。057あまり沢山(たくさん)信者(しんじや)喜楽(きらく)(たづ)ねて()るので、058園部町(そのべまち)有志(いうし)信仰(しんかう)()(かく)土地(とち)繁栄(はんゑい)一策(いつさく)として園部(そのべ)公園内(こうえんない)立派(りつぱ)なる布教所(ふけうしよ)建設(けんせつ)し、059喜楽(きらく)を、060此処(ここ)永住(えいぢう)せしめむと、061土地(とち)有志(いうし)東西(とうざい)奔走(ほんそう)し、062(はなし)大方(おほかた)(まと)まつて()(ところ)へ、063綾部(あやべ)から出口(でぐち)教祖(けうそ)のお使(つかひ)として、064四方(しかた)平蔵(へいざう)()遥々(はるばる)(たづ)ねて()た。
065 (その)(とき)喜楽(きらく)園部川(そのべがは)大橋(おほはし)下流(かりう)漁遊(すなどりあそ)びをして()た。066其処(そこ)平蔵(へいざう)()がやつて()て、067(かは)(つつみ)から、
068平蔵(へいざう)『モシモシ、069上田(うへだ)さまは(この)(へん)()られませぬか、070只今(ただいま)黒田(くろだ)のお(たく)(まゐ)りましたら、071園部(そのべ)河原(かはら)魚取(うをと)りに()かれたとの(はなし)(ゆゑ)072(この)川縁(かはふち)(つた)うて此処迄(ここまで)()ました』
073()つて()る。074喜楽(きらく)(かは)(なか)から、
075喜楽(きらく)『ハイ、076上田(うへだ)(わたし)です。077貴方(あなた)先頃(さきごろ)手紙(てがみ)()れた綾部(あやべ)四方(しかた)サンですか。078綾部(あやべ)はもう懲々(こりこり)しましたから()くのは()めますわ。079(いま)面白(おもしろ)最中(さいちう)だから、080モチツと(うを)をとつて(かへ)りますから、081()(くれ)()(くだ)さい』
082()へば四方(しかた)()(つつみ)(うへ)から、
083平蔵(へいざう)『そんなら仕方(しかた)がありませぬ。084(わたし)園部(そのべ)扇屋(あふぎや)今晩(こんばん)(とま)りますから、085(また)(たづ)(いた)します』
086()(なが)ら、087四方(しかた)()大橋(おほはし)(わた)つて扇屋(あふぎや)をさして()つて(しま)つた。088喜楽(きらく)(すなどり)(をは)り、089黒田(くろだ)(たく)(かへ)着物(きもの)着換(きか)へ、090園部(そのべ)扇屋(あふぎや)四方(しかた)()(たづ)ねて()た。091さうして今度(こんど)足立(あだち)092中村(なかむら)(その)()役員(やくゐん)には(ごく)内々(ないない)で、093教祖(けうそ)自分(じぶん)とが相談(さうだん)(うへ)094喜楽(きらく)(むか)へに()(こと)(わか)つた。095()うなると自分(じぶん)(てき)(なか)飛込(とびこ)(やう)なものである。096余程(よほど)覚悟(かくご)をせなくてはならぬと(おも)(なが)ら、097早速(さつそく)綾部(あやべ)()(こと)承諾(しようだく)し、098往復(わうふく)(はち)()(よる)(みち)穴太(あなを)(かへ)り、099老祖母(らうそぼ)(はは)(いよいよ)綾部(あやべ)()(こと)()ひ、100産土(うぶすな)大神(おほかみ)祈願(きぐわん)をこらし、101()()くる(まへ)(やうや)園部(そのべ)扇屋(あふぎや)(かへ)つて()た。102されど四方(しかた)()喜楽(きらく)穴太(あなを)(かへ)つて()(こと)はチツとも(わか)らなかつた。
103 それより四方(しかた)()(とも)黒田(くろだ)(たく)(かへ)り、104種々(しゆじゆ)支度(したく)をなし、105()()(ごろ)から黒田(くろだ)()()で、106(やうや)くにして檜山(ひのきやま)(まで)()いた。107()はズツポリと()れて()た。108(すこ)()(わる)四方(しかた)()最早(もはや)(ある)(こと)出来(でき)なくなつて()た。109()むを()樽屋(たるや)()宿屋(やどや)投宿(とうしゆく)した。110(たちま)大雨(おほあめ)()(きた)り、111雷鳴(らいめい)さへも(とどろ)いて(じつ)物凄(ものすご)天地(てんち)となつて()た。112樽屋(たるや)(うら)離座敷(はなれざしき)(あた)へられ、113喜楽(きらく)四方(しかた)()四方山(よもやま)(はなし)(ふけ)(なが)ら、114(よる)(いち)()(ごろ)になつて(やうや)(しん)()いた。115(あさ)()()(ごろ)四方(しかた)()()()まし(はや)くも天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)して()た。116喜楽(きらく)(その)(こゑ)()()まし、117(あわて)()()()れば、118相変(あひかは)らず車軸(しやぢく)(なが)(やう)大雨(おほあめ)である。119四方(しかた)()は、
120四方(しかた)先生(せんせい)121目覚(めざ)めですか。122(はや)うから八釜(やかま)しく(まを)しましてお()()まして()みませぬ。123昨夜(さくや)(なん)とはなしに()欣々(いそいそ)しまして一睡(いつすゐ)出来(でき)ませなんだ。124(かみ)(さま)大変(たいへん)にお(いさ)みだと()えます。125(しか)(なが)昨夜(さくや)から()(つづ)いて(えら)大雨(おほあめ)です。126これでも()みませうかな』
127心配(しんぱい)(さう)(たづ)ねる。128喜楽(きらく)一寸(ちよつと)()(ふさ)(うかが)つて()て、
129喜楽(きらく)()()になればカラリと()れます。130それまで、131マアゆつくり(はなし)(うけたまは)りませう。132貴方(あなた)綾部(あやべ)から()たといはれましたが、133(うち)大変(たいへん)山家(やまが)(やう)(おも)ひますが(ちが)ひますか。134(いへ)(うら)綺麗(きれい)(みづ)()いた溜池(ためいけ)があり、135(まへ)(いつ)(しやく)ばかりまはつた枝振(えだぶ)りの面白(おもしろ)(まつ)()がある。136さうして(すこ)右前(みぎまへ)(はう)街道(かいだう)沿()うて小屋(こや)(やう)なものがあり、137其処(そこ)菓子(くわし)なんかの(みせ)()してあり、138六十(ろくじふ)(くらゐ)のお()アサンが()えますが(ちが)ひますか』
139(たづ)ねて()た。140四方(しかた)()吃驚(びつくり)して、
141四方(しかた)『ハイ、142(その)(とほ)りです。143そんな(こと)までよく()えますか。144あんたは、145さうすると稲荷(いなり)でも使(つか)ふて()られるのですか』
146不思議(ふしぎ)(さう)(かほ)(のぞ)く。147喜楽(きらく)(くび)()り、
148喜楽(きらく)『イエイエ、149そんな(こと)はありませぬ。150霊学(れいがく)一部(いちぶ)151天眼通(てんがんつう)()たのです。152(たれ)でも真心(まごころ)にさへなれば、153天眼通(てんがんつう)(くらゐ)(すぐ)(わか)(やう)になりますよ』
154四方(しかた)『アヽそれで安心(あんしん)しました。155(わたし)金光教(こんくわうけう)(ふる)信者(しんじや)御座(ござ)いましたが、156こんな(ところ)から()()(ろく)()もある(ところ)()える(やう)なものは、157(きつね)(たぬき)だと金光教(こんくわうけう)先生(せんせい)()ひました。158モシ先生(せんせい)綾部(あやべ)()つて、159そんな(こと)でもなさらうものならサツパリ狐使(きつねつか)ひだと()つて、160ボツ(かへ)されて(しま)ひますから、161綾部(あやべ)()いでになつたら、162(その)魔法(まはふ)だけは(しばら)くやらぬ(やう)にして(くだ)さい。163(うたがひ)()けては貴方(あなた)()迷惑(めいわく)ですからなア』
164喜楽(きらく)『そんな(わか)らぬ(やつ)ばかり()(ところ)なら、165もう(わたし)御免(ごめん)(かうむ)つてこれから(かへ)りますワ』
166四方(しかた)『そんな短気(たんき)()さずに()(かく)教祖(けうそ)(さま)()内命(ないめい)()たのですから、167一度(いちど)綾部(あやべ)()ると(おも)ふて()(くだ)さい。168(この)(ごろ)和知川(わちがは)(あゆ)沢山(たくさん)にとれますから、169(あゆ)()ひに()くと(おも)うて、170マアマア()(かく)一遍(いつぺん)()(くだ)さい。171(わたし)(いま)此処(ここ)先生(せんせい)(かへ)られては教祖(けうそ)(さま)(たい)申訳(まをしわけ)御座(ござ)いませぬ』
172喜楽(きらく)第一(だいいち)貴方(あなた)霊学(れいがく)諒解(りやうかい)して(もら)ふておかなくてはなりませぬから、173(きつね)使(つか)ふか、174使(つか)はぬかと()(こと)一遍(いつぺん)此処(ここ)実地(じつち)()せませう。175さうして貴方(あなた)承知(しようち)()つたら()(こと)にしませう。176そんな(ところ)まで(あゆ)()ひに()かなくても園部(そのべ)沢山(たくさん)ですから……』
177四方(しかた)(わたし)(やう)素人(しろうと)にでも、178そんな天眼通(てんがんつう)(おこな)へますだらうか』
179喜楽(きらく)『マア其処(そこ)(すわ)つて()(ふさ)ぎ、180両手(りやうて)()んで()なさい』
181四方(しかた)『そんなら(たの)みます』
182四方(しかた)()素直(すなほ)座敷(ざしき)真中(まんなか)正座(せいざ)し、183()()()(ふさ)いだ。184喜楽(きらく)は、
185喜楽(きらく)『サアこれから四方(しかた)サン、186天眼通(てんがんつう)(さづ)けます。187(いま)(わたし)が……ソレ()い……と()つたが最後(さいご)188(なに)かの姿(すがた)(うつ)りますから、189それを(はな)して御覧(ごらん)……』
190四方(しかた)『ハイ……』
191()(なが)ら、192一生(いつしやう)懸命(けんめい)()(ふさ)(はや)くも霊感者(れいかんしや)になつて、193(すこ)鼻息(はないき)(あら)くし(からだ)をピリピリと(ふる)はせて()る。194喜楽(きらく)は、
195『それ()い!』
196大喝(だいかつ)一声(いつせい)した。
197四方(しかた)『ハイ、198()えました。199(ちひ)さい(ふる)藁葺(わらぶき)(いへ)一軒(いつけん)200前横(まへよこ)(はう)(また)(ひと)(きたな)(いへ)があつて、201其処(そこ)(うつく)しい(みづ)()いた(いけ)があります。202さうして(うら)(はう)には(かや)()や、203(むく)大木(たいぼく)()えます。204(ほそ)綺麗(きれい)(かは)(みち)(した)(なが)れて()ます』
205喜楽(きらく)『アヽそれで(いよいよ)天眼通(てんがんつう)(ひら)けました。206それは(わたし)(うま)れた(うち)ですよ。207もう(よろ)しい』
208()へば、209四方(しかた)()()んだ()(はな)()(ひら)き、
210四方(しかた)(なん)とマア、211結構(けつこう)(かみ)(さま)ですな。212イヤもう感心(かんしん)(いた)しました。213流石(さすが)教祖(けうそ)(さま)(えら)いわい。214多勢(おほぜい)役員(やくゐん)信者(しんじや)(かく)れてお(むか)へして()いと仰有(おつしや)つた()けの価値(ねうち)があります。215こんな(こと)(わか)れば、216三千(さんぜん)世界(せかい)一度(いちど)()()くと仰有(おつしや)(かみ)(さま)御用(ごよう)充分(じゆうぶん)(つと)まりませう』
217無性(むしやう)矢鱈(やたら)(よろこ)んで()る。218それから病気(びやうき)(うかが)ひや天眼通(てんがんつう)試験(しけん)色々(いろいろ)として、219四方(しかた)()()霊学(れいがく)(たふと)(こと)(さと)つて(もら)ひ、220朝飯(あさめし)()(いよいよ)これから出立(しゆつたつ)しようとする(とき)221さしもの大雨(おほあめ)もピタリと()まり、222ガンガンと日本晴(にほんば)れの(そら)太陽(たいやう)()(かがや)()した。223四方(しかた)()は、
224四方(しかた)『ヤア、225仰有(おつしや)つた(とほ)()()になつたらカラリと()れました。226ほんに霊学(れいがく)()ふものは結構(けつこう)なものですな。227これから綾部(あやべ)(かへ)りましたら、228金光教(こんくわうけう)先生(せんせい)役員(やくゐん)どもが愚図(ぐづ)々々(ぐづ)()ふと面倒(めんだう)御座(ござ)いますから、229ソツと裏町(うらまち)教祖(けうそ)さまの(たく)(まゐ)りませう』
230()(なが)(ろく)()山坂(やまさか)()えて(その)()午後(ごご)()()(ごろ)231(やうや)くにして裏町(うらまち)教祖(けうそ)(たく)安着(あんちやく)した。
232 (たれ)(しやべ)つたのか(はや)くも信者(しんじや)四方(しかた)与平(よへい)233黒田(くろだ)清子(きよこ)234四方(しかた)すみ()235塩見(しほみ)じゆん()(はじ)七八(しちはち)(にん)信者(しんじや)(あつ)まつて()て、
236平蔵(へいざう)サン、237結構(けつこう)()神徳(かげ)(いただ)きなさつた。238よい先生(せんせい)(むか)へて()(くだ)さいました』
239などと(よろこ)(いさ)み、240金光教(こんくわうけう)旧信者(きうしんじや)通知(つうち)各自(めいめい)(まは)つて(しま)つた。241(この)(いきほひ)足立(あだち)正信(まさのぶ)()吃驚(びつくり)して中村(なかむら)竹造(たけざう)裏町(うらまち)(つか)はし、242色々(いろいろ)(みづ)をさし妨害(ばうがい)(くは)へた。243されど出口(でぐち)教祖(けうそ)(はじ)め、244四方(しかた)平蔵(へいざう)()(いきほひ)があんまり猛烈(まうれつ)なので、245到頭(たうとう)中村(なかむら)竹造(たけざう)()()教祖(けうそ)(めい)服従(ふくじゆう)して(しま)つた。
246 四方(しかた)源之助(げんのすけ)247西岡(にしをか)弥吉(やきち)248西村(にしむら)文右衛門(ぶんうゑもん)249村上(むらかみ)清次郎(せいじらう)250西村(にしむら)庄太郎(しやうたらう)251四方(しかた)伊左衛門(いざゑもん)(など)()世話係(せわがかり)裏町(うらまち)(たく)(あつ)まり()たり、252平蔵(へいざう)()教祖(けうそ)説明(せつめい)によつて非常(ひじやう)共鳴(きようめい)し、253(うしとらの)金神(こんじん)(さま)(きん)()をとり、254()大神(おほかみ)(さま)255(つき)大神(おほかみ)(さま)月日(つきひ)(あは)せて金明会(きんめいくわい)()団体(だんたい)組織(そしき)し、256信者(しんじや)()()遠近(ゑんきん)より(あつ)まり(きた)り、257裏町(うらまち)(せま)(くら)(なか)では身動(みうご)きもならぬやうになつたので、258本町(ほんまち)中村(なかむら)竹造(たけざう)本宅(ほんたく)金明会(きんめいくわい)(うつ)して(しま)つた。259四方(しかた)()得意(とくい)天眼通(てんがんつう)()りまはし神占(しんせん)をしたり、260病気(びやうき)平癒(へいゆ)(いの)つたりして非常(ひじやう)人気(にんき)である。261(ただ)一回(いつくわい)(くらゐ)262霊学(れいがく)(をし)へて(もら)ふて、263四方(しかた)平蔵(へいざう)サンはあれ()()神徳(かげ)(もら)ふたのだから、264修行(しうぎやう)さへしたら(たれ)でも神徳(しんとく)(いただ)けるだらうと、265幽斎(いうさい)修行(しうぎやう)希望者(きばうしや)(またた)(うち)二十(にじふ)(にん)あまりも出来(でき)()た。266喜楽(きらく)向側(むかうがは)西村(にしむら)庄兵衛(しやうべゑ)()信者(しんじや)(うら)離家(はなれや)()つて其処(そこ)寝泊(ねとま)りをしたり、267世話方(せわかた)色々(いろいろ)(かみ)(はなし)()かして()た。268金光(こんくわう)教会(けうくわい)足立(あだち)正信(まさのぶ)()最早(もはや)(さく)(ほどこ)すべき(ところ)なく、269村上(むらかみ)清次郎(せいじろう)270中村(なかむら)竹造(たけざう)271四方(しかた)すみ、272塩見(しほみ)じゆん、273黒田(くろだ)(きよ)などの(たく)訪問(はうもん)して、274いろいろの反対(はんたい)運動(うんどう)(こころ)みたけれども、275到底(たうてい)(かう)(そう)する(こと)出来(でき)なくなつて()た。
276 教祖(けうそ)足立(あだち)()境遇(きやうぐう)()(どく)(おも)ひ、277小遣銭(こづかいせん)(こめ)(など)(おく)つて金光教(こんくわうけう)脱退(だつたい)し、278教祖(けうそ)(をしへ)(したが)へと信者(しんじや)(かは)(がは)(つか)はして(すす)められた。279けれども足立(あだち)()頑固(ぐわんこ)として(おう)ぜず、280(いん)(やう)反対(はんたい)気勢(きせい)()げ、
281足立(あだち)上田(うへだ)()狐使(きつねつか)ひをこんな(ところ)引張(ひつぱ)つて()て、282山子(やまこ)(はじ)()したから(だま)されない(やう)にせよ』
283中村(なかむら)竹造(たけざう)村上(むらかみ)房之助(ふさのすけ)(など)遠近(ゑんきん)信者(しんじや)(たく)(つか)はし、284色々(いろいろ)非難(ひなん)攻撃(こうげき)(はじ)めた。285中村(なかむら)自分(じぶん)(うち)金明会(きんめいくわい)()しておき(なが)ら、286足立(あだち)命令(めいれい)(したが)つて反対(はんたい)運動(うんどう)昼夜(ちうや)区別(くべつ)なくやつて()た。287(しか)(なが)(とき)(いきほひ)には(かう)すべくもあらず、288一人(ひとり)信者(しんじや)()かなくなり、289()(あし)もまはらぬ破目(はめ)足立(あだち)()(おちい)つて(しま)つた。290そこで()むを()足立(あだち)()()()つて、
291足立(あだち)何卒(どうぞ)改心(かいしん)するから金明会(きんめいくわい)使(つか)つて(くだ)さい』
292(たの)みに()た。293金明会(きんめいくわい)役員(やくゐん)(れん)(すみやか)協議会(けふぎくわい)(ひら)いた結果(けつくわ)
294足立(あだち)正信(まさのぶ)()信者(しんじや)()けも(わる)し、295○○や○○と醜関係(しうくわんけい)をつけ、296(かみ)()(けが)して()るから、297(この)(さい)絶対(ぜつたい)金明会(きんめいくわい)這入(はい)(こと)謝絶(しやぜつ)するがよい』
298()(こと)協議(けふぎ)(まと)まつて(しま)つた。299足立(あだち)()()()つて()たのは、300(こころ)(うち)から金明会(きんめいくわい)心従(しんじゆう)して()るのではない。301老母(らうぼ)子供(こども)(たちま)糊口(ここう)(きう)する(ところ)から、302(いち)()窮策(きうさく)として表面(へうめん)心従(しんじう)したと()せかけ時機(じき)()金明会(きんめいくわい)転覆(てんぷく)させ、303喜楽(きらく)先生(せんせい)()()計略(けいりやく)なる(こと)は、304今迄(いままで)足立(あだち)()行動(かうどう)(ちよう)して明白(めいはく)だから、305今度(こんど)()機会(きくわい)(さいは)ひに一切(いつさい)関係(くわんけい)()(はう)上分別(じやうふんべつ)だと、306(いま)まで同氏(どうし)熱心(ねつしん)教養(けうやう)をうけたものさへ、307極力(きよくりよく)排斥(はいせき)主張(しゆちやう)する(やう)になつて()た。308喜楽(きらく)足立(あだち)()境遇(きやうぐう)(あは)れみ、309(かつ)(また)今迄(いままで)金光教(こんくわうけう)(しん)じて()役員(やくゐん)信者(しんじや)人情(にんじやう)浮薄(ふはく)冷酷(れいこく)なるに(あき)()て、
310今日(けふ)(ひと)()(うへ)311明日(あす)()()(うへ)()(こと)がある。312こんな薄情(はくじやう)人間(にんげん)(ところ)()つては到底(たうてい)駄目(だめ)だ。313自分(じぶん)さへ此処(ここ)()()つたならば足立(あだち)()親子(おやこ)困難(こんなん)(のぞ)かれるだらう。314世人(よびと)困難(こんなん)(すく)ふべき(かみ)取次(とりつぎ)(ひと)(こま)らせてはならない』
315(おも)つたから、316四方(しかた)()(はじ)(おも)なる役員(やくゐん)(むか)ひ、
317上田(うへだ)(わたし)此処(ここ)()たために、318足立(あだち)()親子(おやこ)困難(こんなん)(きた)すべき結果(けつくわ)(しやう)じたのだから、319(わたし)同氏(どうし)(たい)して()まないから今日(けふ)から(かへ)ります。320何卒(どうぞ)足立(あだち)()仲良(なかよ)うして(かみ)(さま)御用(ごよう)をして(くだ)さい』
321(まを)()んだ。322そこで数多(あまた)役員(やくゐん)(おほい)狼狽(らうばい)し、323鳩首(きうしゆ)謀議(ぼうぎ)結果(けつくわ)
324役員たち足立(あだち)()処置(しよち)()いては上田(うへだ)先生(せんせい)一任(いちにん)しますから、325是非(ぜひ)とも教祖(けうそ)(さま)(そば)()て、326大本(おほもと)宣伝(せんでん)(ちから)(つく)して(くだ)され』
327異口(いく)同音(どうおん)(たの)()む。
328 そこで喜楽(きらく)足立(あだち)()金明会(きんめいくわい)副会長(ふくくわいちやう)(にん)じ、329金明会(きんめいくわい)()(もと)仲良(なかよ)神務(しんむ)奉仕(ほうし)する(こと)となつた。330出口(でぐち)教祖(けうそ)足立(あだち)()()(うへ)につき(こころ)(ひそ)かに非常(ひじやう)心痛(しんつう)をして()られたが、331喜楽(きらく)同情(どうじやう)ある処置(しよち)(たい)し、332非常(ひじやう)安心(あんしん)をしたと()つて感謝(かんしや)せられた。333足立(あだち)()大変(たいへん)(よろこ)び、334役員(やくゐん)信者(しんじや)喜楽(きらく)赤誠(せきせい)(かん)じ、335(ただち)今迄(いままで)態度(たいど)(あらた)め、336教祖(けうそ)()いで喜楽(きらく)師匠(ししやう)尊敬(そんけい)()した。337(いち)()大争乱(だいそうらん)勃発(ぼつぱつ)しさうの模様(もやう)のあつた金光教(こんくわうけう)(たい)金明会(きんめいくわい)も、338(ここ)円満(ゑんまん)解決(かいけつ)出来(でき)て、339双方(さうはう)とも心持(こころもち)()(いさ)んで和合(わがふ)(うち)(かみ)(さま)御用(ごよう)(つく)(こと)()たのである。
340大正一一・一〇・一二 旧八・二二 北村隆光録)
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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
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