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霊界物語
霊主体従
第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
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第20巻(未の巻)
第21巻(申の巻)
第22巻(酉の巻)
第23巻(戌の巻)
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海洋万里
第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
第27巻(寅の巻)
第28巻(卯の巻)
第29巻(辰の巻)
第30巻(巳の巻)
第31巻(午の巻)
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第34巻(酉の巻)
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第37巻(子の巻)
第38巻(丑の巻)
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第41巻(辰の巻)
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第45巻(申の巻)
第46巻(酉の巻)
第47巻(戌の巻)
第48巻(亥の巻)
真善美愛
第49巻(子の巻)
第50巻(丑の巻)
第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
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第58巻(酉の巻)
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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第37巻(子の巻)
序
総説
第1篇 安閑喜楽
01 富士山
〔1013〕
02 葱節
〔1014〕
03 破軍星
〔1015〕
04 素破抜
〔1016〕
05 松の下
〔1017〕
06 手料理
〔1018〕
第2篇 青垣山内
07 五万円
〔1019〕
08 梟の宵企
〔1020〕
09 牛の糞
〔1021〕
10 矢田の滝
〔1022〕
11 松の嵐
〔1023〕
12 邪神憑
〔1024〕
第3篇 阪丹珍聞
13 煙の都
〔1025〕
14 夜の山路
〔1026〕
15 盲目鳥
〔1027〕
16 四郎狸
〔1028〕
17 狐の尾
〔1029〕
18 奥野操
〔1030〕
19 逆襲
〔1031〕
20 仁志東
〔1032〕
第4篇 山青水清
21 参綾
〔1033〕
22 大僧坊
〔1034〕
23 海老坂
〔1035〕
24 神助
〔1036〕
25 妖魅来
〔1037〕
霊の礎(九)
余白歌
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> 第3篇 阪丹珍聞 > 第19章 逆襲
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第一九章
逆襲
(
ぎやくしふ
)
〔一〇三一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻
篇:
第3篇 阪丹珍聞
よみ(新仮名遣い):
はんたんちんぶん
章:
第19章 逆襲
よみ(新仮名遣い):
ぎゃくしゅう
通し章番号:
1031
口述日:
1922(大正11)年10月10日(旧08月20日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
ふと新聞の広告を見ると、壮士俳優募集と出ていた。自分はそれを見つめていると、多田琴が神がかりになって、霊術を応用して役者になれば名優にしてやろうと強制的に問いかけた。
自分は役者になってみたいものだと思っていたから、一も二もなく喜んで承諾した。しかし入会料として十円を取られた後、臀部に大きな腫物ができてうずいてたまらず、芝居どころではない。
腹の中から松岡神が出てきて、役者になりたそうにしていたから改心のために戒めたのだ、と笑う。丹波に帰ろうとすると腫物は嘘のように治ってしまい、それ以来俳優になってみたいという心はすっかり消え失せ、一心不乱に神界の御用に尽くすことになった。
穴太の斎藤某という口やかましい家の息子を直してやったらい、村の者も気が付いて信仰するだろうと思い、訪ねてみた。しかし追い返されてとぼとぼ帰ってきたところ、今度は次郎松が一人娘の阿栗(おぐ)が狐つきになってしまったと泣きついてきた。
行ってみると、次郎松も次郎松の老母も、彼らが喜楽に敵対して悪口を触れ回るものだから、腹いせのために娘に狐をつけたのだと思い込んでいる。喜楽は口を極めて二人に霊学の説明をしたが、まったく聞いてくれない。
仕方なく娘についていた狐を祓うと、またしても次郎松は、よくも大事な娘に狐をつけてくれたとあべこべに罵詈雑言をなす始末であった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-10-25 14:19:30
OBC :
rm3719
愛善世界社版:
226頁
八幡書店版:
第7輯 116頁
修補版:
校定版:
236頁
普及版:
112頁
初版:
ページ備考:
001
不図
(
ふと
)
配達
(
はいたつ
)
して
来
(
き
)
た
日出
(
ひので
)
新聞
(
しんぶん
)
の
広告欄
(
くわうこくらん
)
を
見
(
み
)
ると、
002
壮士
(
さうし
)
俳優
(
はいいう
)
募集
(
ぼしふ
)
と
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
広告
(
くわうこく
)
が
出
(
で
)
て
居
(
ゐ
)
た。
003
自分
(
じぶん
)
は
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
其
(
その
)
広告
(
くわうこく
)
を
見詰
(
みつ
)
めて
居
(
を
)
ると、
004
多田
(
ただ
)
琴
(
こと
)
がポンと
飛
(
と
)
び
上
(
あが
)
り
神憑
(
かむがか
)
り
[
※
初版・愛世版では「神憑り」、校定版では「神懸り」。
]
になつて、
005
多田
(
ただ
)
『
俺
(
わし
)
は
男山
(
をとこやま
)
の
眷族
(
けんぞく
)
小松林
(
こまつばやしの
)
命
(
みこと
)
であるぞ。
006
今
(
いま
)
其
(
その
)
広告
(
くわうこく
)
にある
通
(
とほ
)
り、
007
神界
(
しんかい
)
の
仕組
(
しぐみ
)
で
正義団
(
せいぎだん
)
と
云
(
い
)
ふ
壮士
(
さうし
)
芝居
(
しばゐ
)
の
団体
(
だんたい
)
が
募集
(
ぼしふ
)
されて
居
(
ゐ
)
るのだ。
008
お
前
(
まへ
)
はこれから、
009
今迄
(
いままで
)
苦労
(
くらう
)
して
覚
(
おぼ
)
えた
霊術
(
れいじゆつ
)
を
応用
(
おうよう
)
して
芝居
(
しばゐ
)
の
役者
(
やくしや
)
になれ。
010
神
(
かみ
)
が
守護
(
しゆご
)
して
如何
(
どん
)
な
不思議
(
ふしぎ
)
な
事
(
こと
)
でもさしてやるから、
011
川上
(
かはかみ
)
音次郎
(
おとじらう
)
以上
(
いじやう
)
の
名優
(
めいいう
)
にしてやらう。
012
如何
(
どう
)
ぢや、
013
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
を
承諾
(
しようだく
)
するか、
014
但
(
ただし
)
は
否
(
いや
)
と
申
(
まを
)
すか、
015
直
(
すぐ
)
に
返答
(
へんたふ
)
をして
呉
(
く
)
れ』
016
とニコニコ
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
強制
(
きやうせい
)
的
(
てき
)
に
問
(
と
)
ひかける。
017
喜楽
(
きらく
)
は
此
(
この
)
広告
(
くわうこく
)
を
見
(
み
)
て、
018
『
俺
(
おれ
)
も
一度
(
いちど
)
壮士
(
さうし
)
役者
(
やくしや
)
になつて
見
(
み
)
たいものだ』
019
と
思
(
おも
)
ひつめて
居
(
ゐ
)
た
際
(
さい
)
であるから、
020
一
(
いち
)
も
二
(
に
)
もなく
喜
(
よろこ
)
んで、
021
喜楽
(
きらく
)
『ハイ、
022
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
さへお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
されば
壮士
(
さうし
)
役者
(
やくしや
)
になります』
023
と
速座
(
そくざ
)
に
答
(
こた
)
へた。
024
さうすると
小松林
(
こまつばやし
)
と
名乗
(
なの
)
る
憑霊
(
ひようれい
)
は、
025
嬉
(
うれ
)
しさうな
顔
(
かほ
)
して
言葉
(
ことば
)
まで
柔
(
やさ
)
しく、
026
小松林
『
流石
(
さすが
)
はよく
先
(
さき
)
の
見
(
み
)
える、
027
先
(
さき
)
の
分
(
わか
)
つた
審神者
(
さには
)
だ。
028
サア
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
してると
応募者
(
おうぼしや
)
がつまれば
駄目
(
だめ
)
だから、
029
今夜
(
こんや
)
直様
(
すぐさま
)
立
(
た
)
つて
行
(
ゆ
)
け。
030
さうして
金
(
かね
)
を
十五六
(
じふごろく
)
円
(
ゑん
)
ばかり
積
(
つも
)
りをして
行
(
ゆ
)
け』
031
と
云
(
い
)
ひ
渡
(
わた
)
す。
032
ありもせぬ
金
(
かね
)
を
寄
(
よ
)
せ
集
(
あつ
)
めてヤツと
十五
(
じふご
)
円
(
ゑん
)
拵
(
こしら
)
へ、
033
保津
(
ほづ
)
の
浜
(
はま
)
から、
034
舟
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
つて
谷間
(
たにあひ
)
を
下
(
くだ
)
り
嵯峨
(
さが
)
に
着
(
つ
)
き、
035
それから
竹屋町
(
たけやちやう
)
富小路
(
とみこうぢ
)
の
宿屋
(
やどや
)
に
尋
(
たづ
)
ねて
行
(
い
)
つた。
036
正義団
(
せいぎだん
)
長
(
ちやう
)
と
称
(
しよう
)
する
男
(
をとこ
)
、
037
名
(
な
)
は
忘
(
わす
)
れたが
直様
(
すぐさま
)
二階
(
にかい
)
へ
案内
(
あんない
)
して
呉
(
く
)
れ、
038
入会料
(
にふくわいれう
)
として
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
を
請求
(
せいきう
)
する。
039
直様
(
すぐさま
)
十
(
じふ
)
円
(
ゑん
)
を
放
(
はう
)
り
出
(
だ
)
し
種々
(
いろいろ
)
と
手続
(
てつづ
)
きを
済
(
す
)
まして、
040
それから
安
(
やす
)
い
宿
(
やど
)
を
探
(
さが
)
し、
041
日々
(
にちにち
)
柔術
(
じうじゆつ
)
の
型
(
かた
)
を
稽古
(
けいこ
)
したり、
042
科白
(
せりふ
)
を
覚
(
おぼ
)
えたり、
043
十二三
(
じふにさん
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
がやつて
居
(
ゐ
)
た。
044
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
を
)
ると
五
(
ご
)
円
(
ゑん
)
の
金
(
かね
)
が
無
(
な
)
くなつて
了
(
しま
)
ふ。
045
さうして
臀部
(
でんぶ
)
に
大
(
おほ
)
きな
瘍
(
ちやう
)
が
出来
(
でき
)
てビクとも
出来
(
でき
)
ず、
046
うづいて
堪
(
たま
)
らない。
047
(喜楽)
『こんな
事
(
こと
)
では
芝居
(
しばゐ
)
どころの
騒
(
さわ
)
ぎぢやない。
048
何
(
なん
)
とかして
吾
(
わが
)
家
(
や
)
へ
帰
(
かへ
)
りたいものだが
歩
(
ある
)
いて
去
(
い
)
ぬ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ず、
049
俥賃
(
くるまちん
)
はなし、
050
一層
(
いつそう
)
の
事
(
こと
)
、
051
枳殻邸
(
きこくてい
)
の
附近
(
ふきん
)
に
弟
(
おとうと
)
の
政一
(
まさいち
)
が
子
(
こ
)
に
行
(
い
)
つて
居
(
を
)
るから、
052
其処迄
(
そこまで
)
俥
(
くるま
)
で
運
(
はこ
)
んで
貰
(
もら
)
ひ
世話
(
せわ
)
にならうかなア』
053
と
考
(
かんが
)
へ
込
(
こ
)
んで
居
(
を
)
ると
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から
又
(
また
)
もや
玉
(
たま
)
ごろが
喉元
(
のどもと
)
へつめ
上
(
あが
)
つて
来
(
き
)
た。
054
さうして、
055
『アハヽヽヽ』
056
と
可笑
(
おか
)
しさうに
笑
(
わら
)
ひ
出
(
だ
)
す。
057
喜楽
『
足
(
あし
)
の
腫物
(
はれもの
)
が
痛
(
いた
)
くて
何
(
なに
)
どこでもないのに、
058
可笑
(
おか
)
しさうに
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
から
笑
(
わら
)
ふ
奴
(
やつ
)
は
何
(
なに
)
枉津
(
まがつ
)
ぢやい』
059
と
呶鳴
(
どな
)
つて
見
(
み
)
た。
060
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
からさも
可笑
(
おか
)
しさうに
小気味
(
こぎみ
)
良
(
よ
)
さ
相
(
さう
)
の
声
(
こゑ
)
で、
061
『イヒヽヽヽ』
062
と
連続
(
れんぞく
)
的
(
てき
)
に
十
(
じつ
)
分間
(
ぷんかん
)
程
(
ほど
)
笑
(
わら
)
ひつづける。
063
さうして、
064
松岡
『
俺
(
おれ
)
は
松岡
(
まつをか
)
ぢや、
065
貴様
(
きさま
)
が
新聞
(
しんぶん
)
の
広告
(
くわうこく
)
を
見
(
み
)
て、
066
役者
(
やくしや
)
になり
度
(
た
)
相
(
さう
)
にして
居
(
を
)
るから、
067
一寸
(
ちよつと
)
改心
(
かいしん
)
の
為
(
ため
)
に
嬲
(
なぶ
)
つて
見
(
み
)
たのだ。
068
本当
(
ほんたう
)
に
日本一
(
につぽんいち
)
の
大馬鹿
(
おほばか
)
だのう、
069
オホヽヽヽ』
070
と
笑
(
わら
)
ひ
出
(
だ
)
す。
071
進退
(
しんたい
)
維谷
(
これきは
)
まつた
喜楽
(
きらく
)
は
如何
(
どう
)
する
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ず、
072
宿賃
(
やどちん
)
を
三日分
(
みつかぶん
)
三
(
さん
)
円
(
ゑん
)
六十銭
(
ろくじつせん
)
払
(
はら
)
ひ、
073
丹波
(
たんば
)
へ
帰
(
かへ
)
らうとして
宿
(
やど
)
の
門口
(
かどぐち
)
を
立
(
た
)
つて
出
(
で
)
た。
074
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に
臀部
(
でんぶ
)
の
大
(
おほ
)
きな
腫物
(
はれもの
)
は
嘘
(
うそ
)
をついた
様
(
やう
)
に
治
(
なほ
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
075
それきり
壮士
(
さうし
)
俳優
(
はいいう
)
になつて
見度
(
みた
)
いと
云
(
い
)
ふ
心
(
こころ
)
は、
076
スツカリ
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せ、
077
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
に
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
に
尽
(
つく
)
すと
云
(
い
)
ふ
心
(
こころ
)
になつたのである。
078
同
(
おな
)
じ
穴太
(
あなを
)
の
斎藤
(
さいとう
)
某
(
ぼう
)
と
云
(
い
)
ふ
紋屋
(
もんや
)
の
息子
(
むすこ
)
が、
079
肺病
(
はいびやう
)
で
苦
(
くる
)
しみ
医薬
(
いやく
)
の
効
(
かう
)
もなく
困
(
こま
)
つて
居
(
を
)
るから、
080
其処
(
そこ
)
へ
助
(
たす
)
けに
行
(
い
)
つたら
如何
(
どう
)
だ……と お
いよ
と
云
(
い
)
ふ
婆
(
ばあ
)
サンが
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
081
頻
(
しき
)
りに
勧
(
すす
)
めるので、
082
喜楽
(
きらく
)
も、
083
『
彼処
(
あそこ
)
の
息子
(
むすこ
)
の
計
(
けい
)
サンの
病
(
やまひ
)
を
癒
(
なほ
)
してやつたら、
084
チツと
村
(
むら
)
の
者
(
もの
)
も
気
(
き
)
がつくだらう。
085
信仰
(
しんかう
)
をするだらう』
086
と
思
(
おも
)
ふたので、
087
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
くから
其
(
その
)
家
(
うち
)
に
羽織
(
はおり
)
袴
(
はかま
)
で
訪問
(
はうもん
)
して、
088
喜楽
(
きらく
)
『
計
(
けい
)
サンの
病気
(
びやうき
)
平癒
(
へいゆ
)
をさしてやりませうか』
089
と
掛合
(
かけあ
)
ふて
見
(
み
)
た。
090
此処
(
ここ
)
の
奥
(
おく
)
サンはお
悦
(
えつ
)
と
云
(
い
)
ひ、
091
随分
(
ずゐぶん
)
口
(
くち
)
の
八釜
(
やかま
)
しい
女
(
をんな
)
で、
092
村
(
むら
)
の
人
(
ひと
)
から
雲雀
(
ひばり
)
のお
悦
(
えつ
)
サンと
仇名
(
あだな
)
をとつて
居
(
ゐ
)
た。
093
お
悦
(
えつ
)
サンは
喜楽
(
きらく
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
て
目
(
め
)
を
円
(
まる
)
うし、
094
お
悦
(
えつ
)
『これこれ、
095
飯綱使
(
いづなつか
)
ひの
喜三
(
きさ
)
ヤン、
096
何
(
なん
)
ぞ
用
(
よう
)
かい、
097
大方
(
おほかた
)
お
前
(
まへ
)
は、
098
家
(
うち
)
の
計
(
けい
)
の
病気
(
びやうき
)
を
拝
(
をが
)
んでやらうと
云
(
い
)
つて
来
(
き
)
たのだらう。
099
アヽいや いや いや、
100
神
(
かみ
)
さまの
か
の
字
(
じ
)
を
聞
(
き
)
いても
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つ、
101
家
(
うち
)
の
親類
(
しんるゐ
)
は
天理
(
てんり
)
サンに
呆
(
ほう
)
けて
家
(
いへ
)
も
倉
(
くら
)
もサツパリとられて
了
(
しま
)
つた。
102
近
(
ちか
)
はんは
稲荷下
(
いなりさ
)
げに
呆
(
ほう
)
けて
相場
(
さうば
)
して、
103
家
(
いへ
)
も
屋敷
(
やしき
)
も
田地
(
でんち
)
迄
(
まで
)
売
(
う
)
つて
了
(
しま
)
つた。
104
此
(
この
)
時節
(
じせつ
)
に
神々
(
かみかみ
)
吐
(
ぬか
)
す
奴
(
やつ
)
に
碌
(
ろく
)
な
者
(
もの
)
はない。
105
お
前
(
まへ
)
サンも
人
(
ひと
)
の
処
(
とこ
)
を
一杯
(
いつぱい
)
かけようと
思
(
おも
)
ふて
来
(
き
)
たのんだらう。
106
サア
何卒
(
どうぞ
)
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
107
然
(
しか
)
し
喜楽
(
きらく
)
サン、
108
俺
(
わし
)
が
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふとお
前
(
まへ
)
は
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
てて、
109
あたん
に
飯綱
(
いひづな
)
をつけて
帰
(
かへ
)
るかも
知
(
し
)
れぬが、
110
憑
(
つ
)
けるなら
憑
(
つ
)
けなされ。
111
俺
(
わし
)
ん
所
(
ところ
)
は
黒住
(
くろずみ
)
さまを
祀
(
まつ
)
つてあるから、
112
飯綱
(
いひづな
)
位
(
くらゐ
)
に
仇
(
あだ
)
はしられませぬから
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
ぢや。
113
黒住
(
くろずみ
)
さまは
天照皇
(
てんせうくわう
)
大神宮
(
だいじんぐう
)
さまぢや、
114
天狗
(
てんぐ
)
サンや
四足
(
よつあし
)
とは
てん
からお
顔
(
かほ
)
の
段
(
だん
)
が
違
(
ちが
)
ひますぞえ。
115
サア
早
(
はや
)
う
去
(
い
)
んで
下
(
くだ
)
され。
116
其処
(
そこ
)
等
(
ら
)
がウサウサして
来
(
き
)
た。
117
又
(
また
)
計
(
けい
)
の
病気
(
びやうき
)
が
重
(
おも
)
うなると
困
(
こま
)
るから……サア
去
(
い
)
んでと
云
(
い
)
ふたら
去
(
い
)
んでおくれ。
118
エー
尻太
(
しぶと
)
い
人
(
ひと
)
ぢやなア、
119
蛙切
(
かわづき
)
りの
子
(
こ
)
は
蛙切
(
かわづき
)
りさへして
居
(
を
)
れば
宜
(
よ
)
いのに、
120
どてらい
山子
(
やまこ
)
を
起
(
おこ
)
して
金
(
かね
)
も
無
(
な
)
い
癖
(
くせ
)
に、
121
人
(
ひと
)
の
金
(
かね
)
で
乳屋
(
ちちや
)
をしたり、
122
其
(
その
)
乳屋
(
ちちや
)
が
又
(
また
)
面白
(
おもしろ
)
くない
様
(
やう
)
になつたので、
123
そろそろ
商売替
(
しやうばいが
)
へをして
飯綱使
(
いひづなづか
)
ひをするなんて、
124
お
前
(
まへ
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬ
事
(
こと
)
をするぢやないか。
125
昨日
(
きのふ
)
も
次郎松
(
じろまつ
)
サンが
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
云
(
い
)
ふてをりましたぞえ。
126
薩張
(
さつぱ
)
り
化
(
ば
)
けの
皮
(
かは
)
が
剥
(
む
)
けて
居
(
を
)
るぢやないか。
127
亀岡
(
かめをか
)
の
紙屑屋
(
かみくづや
)
へは
如何
(
どう
)
でしたな』
128
と
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
罵詈
(
ばり
)
嘲弄
(
てうろう
)
する。
129
喜楽
(
きらく
)
はむかついて
堪
(
たま
)
らぬけれど、
130
『
此処
(
ここ
)
が
一
(
ひと
)
つ
辛抱
(
しんばう
)
だ。
131
こんな
八釜
(
やかま
)
しい
女
(
をんな
)
の
誤解
(
ごかい
)
をといておかねば
将来
(
しやうらい
)
の
為
(
た
)
め
面白
(
おもしろ
)
くない』
132
と
思
(
おも
)
ふたので、
133
色々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
と
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
道
(
みち
)
を
説
(
と
)
いて
聞
(
き
)
かせたが、
134
てんで
耳
(
みみ
)
をふさいで
聞
(
き
)
かうとせぬ。
135
お
悦
(
えつ
)
サンは
半泣声
(
はんなきごゑ
)
を
出
(
だ
)
して、
136
お
悦
(
えつ
)
『エーエー
煩
(
うる
)
さい。
137
何程
(
なにほど
)
落語家
(
はなしか
)
の
喜楽
(
きらく
)
サンが
甘
(
うま
)
い
事
(
こと
)
云
(
い
)
つても、
138
論
(
ろん
)
より
証拠
(
しようこ
)
、
139
現在
(
げんざい
)
身内
(
みうち
)
の
次郎松
(
じろまつ
)
サンが
証拠人
(
しようこにん
)
だから……エー
穢
(
けがら
)
はしい、
140
早
(
はや
)
く
去
(
い
)
んで
下
(
くだ
)
さい。
141
これお
留
(
とめ
)
、
142
塩
(
しほ
)
もつておいで……』
143
と
下女
(
げぢよ
)
の
名
(
な
)
迄
(
まで
)
呼
(
よ
)
びたてて
人
(
ひと
)
を
塩
(
しほ
)
でもかけてぶつ
帰
(
かへ
)
さうとして
居
(
ゐ
)
る。
144
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
いのでトボトボと
吾
(
わが
)
家
(
や
)
を
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
145
小幡橋
(
をばたばし
)
の
袂
(
たもと
)
まで
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
ると、
146
次郎松
(
じろまつ
)
サンが
真青
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
して
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るのに
出会
(
であ
)
つた。
147
次郎松
(
じろまつ
)
は
つい
にない
優
(
やさ
)
しい
顔
(
かほ
)
をして、
148
次郎松
『もしもし
上田
(
うへだ
)
先生
(
せんせい
)
、
149
一寸
(
ちよつと
)
頼
(
たの
)
まれて
下
(
くだ
)
され。
150
二三
(
にさん
)
日前
(
にちまへ
)
から
家
(
うち
)
の
阿栗
(
おぐ
)
(
一人娘
(
ひとりむすめ
)
の
名
(
な
)
)に
狐
(
きつね
)
が
憑
(
つ
)
いて
囈言
(
うさごと
)
を
云
(
い
)
ふたり、
151
雪隠
(
せつちん
)
へ
行
(
い
)
つて
尻
(
しり
)
から
出
(
で
)
るものを
手
(
て
)
に
掬
(
すく
)
ひ、
152
コロコロ
団子
(
だんご
)
を
拵
(
こしら
)
へて
仏壇
(
ぶつだん
)
に
供
(
そな
)
へたり、
153
妙
(
めう
)
な
手付
(
てつき
)
で
躍
(
をど
)
つたり、
154
跳
(
は
)
ねたりした
挙句
(
あげく
)
は、
155
布団
(
ふとん
)
をグツスリ
被
(
かぶ
)
つて
寝通
(
ねとほ
)
しぢや。
156
モウこれからお
前
(
まへ
)
には
敵対
(
てきた
)
はぬから
何卒
(
どうぞ
)
堪忍
(
かんにん
)
して
呉
(
く
)
れ。
157
あんまり
俺
(
おれ
)
が
反対
(
はんたい
)
するのでお
前
(
まへ
)
が
怒
(
おこ
)
つて、
158
それ……あの……
何々
(
なになに
)
を
憑
(
つ
)
けたのぢやらう。
159
もうこれから
屹度
(
きつと
)
お
前
(
まへ
)
の
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
りにするから、
160
何々
(
なになに
)
を
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
され。
161
ナア
喜楽
(
きらく
)
先生
(
せんせい
)
、
162
何卒
(
どうぞ
)
頼
(
たの
)
みますわ』
163
と
橋
(
はし
)
の
上
(
うへ
)
で
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
云
(
い
)
ふ。
164
人
(
ひと
)
に
聞
(
きこ
)
えては
態
(
ざま
)
が
悪
(
わる
)
いと
思
(
おも
)
ふては、
165
キヨロキヨロ
其処
(
そこ
)
等
(
ら
)
を
見廻
(
みまは
)
して
居
(
を
)
ると、
166
松
(
まつ
)
サンは
頓着
(
とんちやく
)
なしに
娘
(
むすめ
)
の
病気
(
びやうき
)
の
事
(
こと
)
を
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てる。
167
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
いので
喜楽
(
きらく
)
は、
168
喜楽
(
きらく
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ませう』
169
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
次郎松
(
じろまつ
)
の
家
(
うち
)
へ
行
(
い
)
つた。
170
おこの
婆
(
ばあ
)
サンは
喜楽
(
きらく
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て、
171
いきなり、
172
おこの『これ
喜楽
(
きらく
)
サン、
173
お
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つたぢやらうが
何卒
(
どうぞ
)
怺
(
こら
)
へてお
呉
(
く
)
れ。
174
昨夜
(
ゆうべ
)
から
阿栗
(
おぐ
)
が
喜楽
(
きらく
)
サン
喜楽
(
きらく
)
サンと
八釜
(
やかま
)
しう
云
(
い
)
ふて
仕様
(
しやう
)
がない。
175
あまり
宅
(
うち
)
の
松
(
まつ
)
が
神
(
かみ
)
さまの
悪口
(
わるくち
)
を
云
(
い
)
ふもんだから、
176
お
前
(
まへ
)
が
怒
(
おこ
)
つて
一寸
(
ちよつと
)
……したのだらう。
177
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふても
隠居
(
いんきよ
)
母家
(
おもや
)
の
間柄
(
あひだがら
)
、
178
宅
(
うち
)
の
難儀
(
なんぎ
)
はお
前
(
まへ
)
の
処
(
ところ
)
の
難儀
(
なんぎ
)
だ、
179
又
(
また
)
お
前
(
まへ
)
の
処
(
ところ
)
の
難儀
(
なんぎ
)
は
矢張
(
やつぱり
)
俺
(
おれ
)
の
宅
(
うち
)
の
難儀
(
なんぎ
)
だ。
180
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
せずに、
181
早
(
はや
)
う
飯綱
(
いひづな
)
を
連
(
つ
)
れて
去
(
い
)
んでくれ。
182
年寄
(
としより
)
の
頼
(
たの
)
みぢやから……たつた
一人
(
ひとり
)
の
孫
(
まご
)
があんな
態
(
ざま
)
になつてるのを
見
(
み
)
て
居
(
を
)
る
俺
(
わし
)
の
心
(
こころ
)
はいぢらしいわいなア、
183
アンアンアン』
184
と
泣
(
な
)
き
出
(
だ
)
す。
185
喜楽
(
きらく
)
はムツとして、
186
喜楽
(
きらく
)
『これ、
187
おこのサン、
188
そんな
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
云
(
い
)
ひなさんな、
189
殺生
(
せつしやう
)
ぢやないか。
190
誰
(
たれ
)
がそんな
物
(
もの
)
を
使
(
つか
)
ふものか、
191
自分
(
じぶん
)
の
宅
(
うち
)
に
置
(
お
)
いた
奉公人
(
ほうこうにん
)
でさへも
仲々
(
なかなか
)
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かぬぢやないか。
192
仮令
(
たとへ
)
そんな
狐
(
きつね
)
があるにした
処
(
ところ
)
で
人間
(
にんげん
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
きさうな
筈
(
はず
)
がない。
193
あんまり
見違
(
みちが
)
ひをしておくれな、
194
わしは
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つ。
195
村中
(
むらぢう
)
の
者
(
もの
)
に
飯綱使
(
いひづなづか
)
ひぢやと
悪
(
わる
)
く
云
(
い
)
はれるのも、
196
皆
(
みな
)
松
(
まつ
)
サンが
仕様
(
しやう
)
もない
事
(
こと
)
を
触
(
ふ
)
れて
歩
(
ある
)
くから
俺
(
おれ
)
が
迷惑
(
めいわく
)
をしてるのぢや。
197
結構
(
けつこう
)
な
神
(
かみ
)
さまの
名
(
な
)
まで
悪
(
わる
)
くして
堪
(
たま
)
らぬぢやないか』
198
おこの『その
腹立
(
はらだ
)
ちは
尤
(
もつと
)
もぢやが、
199
外
(
ほか
)
ぢやないから
何卒
(
どうぞ
)
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
して
阿栗
(
おぐ
)
の
病気
(
びやうき
)
を
助
(
たす
)
けてやつてくれ。
200
これ
松
(
まつ
)
、
201
お
前
(
まへ
)
もチツと
喜楽
(
きらく
)
サンに
頼
(
たの
)
まぬかいな』
202
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
で
阿栗
(
おぐ
)
と
云
(
い
)
ふ
娘
(
むすめ
)
は、
203
ケラケラケラと
他愛
(
たわ
)
いもなく
狐
(
きつね
)
が
憑
(
つ
)
いて
笑
(
わら
)
ふて
居
(
ゐ
)
る。
204
助
(
たす
)
けてやつても
悪
(
わる
)
く
云
(
い
)
はれる、
205
助
(
たす
)
けてやらねば
尚
(
なほ
)
悪
(
わる
)
く
云
(
い
)
はれる、
206
こんな
男
(
をとこ
)
にかかつたら
如何
(
どう
)
する
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ぬ。
207
エー
仕方
(
しかた
)
がないと
病人
(
びやうにん
)
の
前
(
まへ
)
へ
端坐
(
たんざ
)
して
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
208
神言
(
かみごと
)
を
静
(
しづか
)
に
唱
(
とな
)
へて
一
(
ひと
)
二
(
ふた
)
三
(
み
)
四
(
よ
)
……と
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
四五回
(
しごくわい
)
繰返
(
くりかへ
)
した。
209
病人
(
びやうにん
)
はムクムクムクと
立
(
た
)
ち
上
(
あ
)
がり、
210
矢庭
(
やには
)
に
跣足
(
はだし
)
のまま
庭
(
には
)
に
下
(
お
)
り、
211
門口
(
かどぐち
)
の
戸
(
と
)
に
頭
(
あたま
)
を
打
(
う
)
つて『キヤツ』と
云
(
い
)
つたまま
仰向
(
あふむ
)
けに
倒
(
たふ
)
れた。
212
此
(
この
)
時
(
とき
)
高畑
(
たかはた
)
の
狐
(
きつね
)
が
退
(
の
)
いたのである。
213
それから
娘
(
むすめ
)
の
病気
(
びやうき
)
はスツカリ
癒
(
なほ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
214
松
(
まつ
)
サンは
口
(
くち
)
を
尖
(
とが
)
らして、
215
次郎松
(
じろまつ
)
『これ、
216
喜楽
(
きらく
)
サン、
217
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
悪戯
(
いたづら
)
をする
男
(
をとこ
)
だ。
218
人
(
ひと
)
の
処
(
とこ
)
の
娘
(
むすめ
)
へ
狐
(
きつね
)
を
憑
(
つ
)
けて
長
(
なが
)
い
事
(
こと
)
苦
(
くる
)
しめ、
219
知
(
し
)
らぬかと
思
(
おも
)
ふて
居
(
を
)
つたが、
220
宅
(
うち
)
の
母者人
(
ははじやひと
)
[
※
「母者人」とは母親を親しみを込めていう言葉。
]
や、
221
此
(
この
)
松
(
まつ
)
サンの
黒
(
くろ
)
い
目
(
め
)
でサツパリ
看破
(
みやぶ
)
られ、
222
しやう
事
(
こと
)
なしに
憑
(
つ
)
けた
狐
(
きつね
)
をおひ
出
(
だ
)
したのだらう。
223
今度
(
こんど
)
はこれで
怺
(
こら
)
へてやるが、
224
一人娘
(
ひとりむすめ
)
を
又
(
また
)
こんな
目
(
め
)
に
遭
(
あ
)
はすと
警察
(
けいさつ
)
へつき
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
ふぞ。
225
サア
飯綱使
(
いひづなづか
)
ひ、
226
早
(
はや
)
う
去
(
い
)
ね、
227
何程
(
なんぼ
)
仇
(
あたん
)
をしようと
思
(
おも
)
ふても、
228
宅
(
うち
)
には
金比羅
(
こんぴら
)
さまのお
札
(
ふだ
)
が
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
沢山
(
たくさん
)
にあるから、
229
これから
金比羅
(
こんぴら
)
さまを
祈
(
いの
)
つてお
前
(
まへ
)
の
魔術
(
まじゆつ
)
が
利
(
き
)
かぬ
様
(
やう
)
にしてやる。
230
お
前
(
まへ
)
も、
231
もういい
加減
(
かげん
)
に
改心
(
かいしん
)
をして
元
(
もと
)
の
乳屋
(
ちちや
)
になり、
232
年寄
(
としより
)
やお
米
(
よね
)
はんに
安心
(
あんしん
)
をさしたら
如何
(
どう
)
ぢや。
233
お
前
(
まへ
)
処
(
とこ
)
が
難儀
(
なんぎ
)
をすると
矢張
(
やつぱり
)
黙
(
だま
)
つて
見捨
(
みす
)
てておく
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かぬから、
234
親切
(
しんせつ
)
に
気
(
き
)
をつけるのだから
悪
(
わる
)
う
思
(
おも
)
ふ
事
(
こと
)
はならぬぞ』
235
と
娘
(
むすめ
)
を
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
うてお
礼
(
れい
)
を
云
(
い
)
ふ
処
(
どころ
)
か、
236
アベコベに
不足
(
ふそく
)
のタラダラを
並
(
なら
)
べ
罵詈
(
ばり
)
を
逞
(
たくま
)
しうし、
237
お
為
(
た
)
めごかしの
御
(
ご
)
意見
(
いけん
)
を
諄々
(
じゆんじゆん
)
と
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れた。
238
松
(
まつ
)
サンは
其
(
その
)
翌日
(
あくるひ
)
から
益々
(
ますます
)
猛烈
(
まうれつ
)
に
反対
(
はんたい
)
をしだし、
239
次郎松
(
じろまつ
)
『
宅
(
うち
)
の
娘
(
むすめ
)
に
喜楽
(
きらく
)
がド
狐
(
ぎつね
)
を
憑
(
つ
)
けて
苦
(
くる
)
しめよつた。
240
到頭
(
たうとう
)
化
(
ば
)
けが
現
(
あら
)
はれて
俺
(
おれ
)
に
責
(
せ
)
め
付
(
つ
)
けられ、
241
仕様事
(
しやうこと
)
なしに
骨折
(
ほねお
)
つて
憑
(
つ
)
けた
狐
(
きつね
)
をおひ
出
(
だ
)
して
連
(
つ
)
れて
去
(
い
)
によつた。
242
俺
(
おれ
)
は
親類
(
しんるゐ
)
で
居
(
を
)
つて
云
(
い
)
ふのだから
嘘
(
うそ
)
ぢやない。
243
みな
用心
(
ようじん
)
しなされや』
244
と
其処等
(
そこら
)
中
(
ぢう
)
を
触
(
ふ
)
れ
歩
(
ある
)
いた。
245
喜楽
(
きらく
)
こそ
宜
(
よ
)
い
面
(
つら
)
の
皮
(
かは
)
である。
246
(
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