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霊界物語
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第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
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第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
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第29巻(辰の巻)
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第51巻(寅の巻)
第52巻(卯の巻)
第53巻(辰の巻)
第54巻(巳の巻)
第55巻(午の巻)
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第58巻(酉の巻)
第59巻(戌の巻)
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山河草木
第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
第63巻(寅の巻)
第64巻(卯の巻)上
第64巻(卯の巻)下
第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
第79巻(午の巻)
第80巻(未の巻)
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第42巻(巳の巻)
序文に代へて
総説に代へて
第1篇 波瀾重畳
01 北光照暗
〔1126〕
02 馬上歌
〔1127〕
03 山嵐
〔1128〕
04 下り坂
〔1129〕
第2篇 恋海慕湖
05 恋の罠
〔1130〕
06 野人の夢
〔1131〕
07 女武者
〔1132〕
08 乱舌
〔1133〕
09 狐狸窟
〔1134〕
第3篇 意変心外
10 墓場の怪
〔1135〕
11 河底の怪
〔1136〕
12 心の色々
〔1137〕
13 揶揄
〔1138〕
14 吃驚
〔1139〕
第4篇 怨月恨霜
15 帰城
〔1140〕
16 失恋会議
〔1141〕
17 酒月
〔1142〕
18 酊苑
〔1143〕
19 野襲
〔1144〕
第5篇 出風陣雅
20 入那立
〔1145〕
21 応酬歌
〔1146〕
22 別離の歌
〔1147〕
23 竜山別
〔1148〕
24 出陣歌
〔1149〕
25 惜別歌
〔1150〕
26 宣直歌
〔1151〕
余白歌
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第七章
女
(
をんな
)
武者
(
むしや
)
〔一一三二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻
篇:
第2篇 恋海慕湖
よみ(新仮名遣い):
れんかいぼこ
章:
第7章 女武者
よみ(新仮名遣い):
おんなむしゃ
通し章番号:
1132
口述日:
1922(大正11)年11月14日(旧09月26日)
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年7月1日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
カールチンはテーナ姫と王位に就く願望成就の前祝の酒を酌み交わしていた。カールチンは、自分の王位簒奪が争いをせずに成就したので、反乱討伐で多忙の大黒主に援軍を出そうとテーナ姫に提案した。
カールチンはテーナ姫をおだてて、大黒主への援軍の大将に任命してしまった。テーナ姫は軍を引き連れて遠征の途に上ることになった。
テーナ姫を遠征に出したカールチンは、出勤日だから登城するとサモア姫に留守を預け、共も連れずに一人で城内に進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-22 14:51:11
OBC :
rm4207
愛善世界社版:
94頁
八幡書店版:
第7輯 676頁
修補版:
校定版:
98頁
普及版:
36頁
初版:
ページ備考:
001
秋
(
あき
)
も
漸
(
やうや
)
く
深
(
ふか
)
くして
002
澄
(
す
)
み
渡
(
わた
)
りたる
朝日影
(
あさひかげ
)
003
東
(
ひがし
)
の
窓
(
まど
)
をおしあけて
004
今日
(
けふ
)
は
心
(
こころ
)
もカールチン
005
テーナの
姫
(
ひめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
006
目出度
(
めでた
)
い
目出度
(
めでた
)
い、お
目出度
(
めでた
)
い
007
鯛
(
たひ
)
や
鰹
(
かつを
)
の
生魚
(
なまざかな
)
008
夫婦
(
ふうふ
)
はここにさし
向
(
むか
)
ひ
009
水
(
みづ
)
も
漏
(
も
)
らさぬ
親
(
した
)
しみの
010
色
(
いろ
)
を
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はして
011
酒
(
さけ
)
汲
(
く
)
み
交
(
かは
)
す
右守司
(
うもりつかさ
)
012
ホロ
酔
(
よひ
)
機嫌
(
きげん
)
の
高笑
(
たかわら
)
ひ
013
盃
(
さかづき
)
重
(
かさ
)
ねてフナフナと
014
腰
(
こし
)
のあたりも
怪
(
あや
)
しげに
015
恋
(
こひ
)
(鯉)に
迷
(
まよ
)
うた
目
(
め
)
の
光
(
ひか
)
り
016
どことはなしにキラキラと
017
月
(
つき
)
(盃)にさし
込
(
こ
)
む
朝日子
(
あさひこ
)
の
018
眩
(
まばゆ
)
きばかりヤスダラ
女
(
によ
)
019
女房
(
にようばう
)
となつてほしの
空
(
そら
)
020
天
(
あま
)
の
河原
(
かはら
)
を
中
(
なか
)
にして
021
年
(
ねん
)
に
一度
(
いちど
)
は
七夕
(
たなばた
)
の
022
逢
(
あ
)
ふ
瀬
(
せ
)
も
清
(
きよ
)
き
恋
(
こひ
)
の
川
(
かは
)
023
そしらぬ
顔
(
かほ
)
に
盃
(
さかづき
)
を
024
女房
(
にようばう
)
にさせばテーナ
姫
(
ひめ
)
025
さも
嬉
(
うれ
)
しげに
頂
(
いただ
)
いて
026
これが
別
(
わか
)
れの
盃
(
さかづき
)
と
027
知
(
し
)
らぬが
仏
(
ほとけ
)
神心
(
かみごころ
)
028
胸
(
むね
)
に
一物
(
いちもつ
)
たたみたる
029
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
布袋顔
(
ほていがほ
)
030
やうやう
右守
(
うもり
)
は
顔
(
かほ
)
をあげ
031
カールチン
『テーナの
姫
(
ひめ
)
よ、
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
よ
032
いよいよ
願望
(
ぐわんまう
)
成就
(
じやうじゆ
)
の
033
時
(
とき
)
こそ
迫
(
せま
)
り
来
(
きた
)
りけり
034
吾
(
われ
)
はイルナの
刹帝利
(
せつていり
)
035
汝
(
なれ
)
は
妃
(
きさき
)
の
貴
(
たか
)
き
身
(
み
)
よ
036
陰
(
いん
)
と
陽
(
やう
)
との
息
(
いき
)
合
(
あ
)
はせ
037
イルナの
国
(
くに
)
を
永久
(
とこしへ
)
に
038
守
(
まも
)
るも
嬉
(
うれ
)
し
松
(
まつ
)
の
御代
(
みよ
)
039
待
(
ま
)
つ
甲斐
(
かひ
)
あつて
妹
(
いも
)
と
背
(
せ
)
の
040
夫婦
(
ふうふ
)
の
喜
(
よろこ
)
び
千代
(
ちよ
)
の
縁
(
えん
)
041
勇
(
いさ
)
み
喜
(
よろこ
)
び
舞
(
ま
)
ひ
歌
(
うた
)
へ
042
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
043
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
御恵
(
みめぐ
)
みは
044
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
も
只
(
ただ
)
ならず
045
大海原
(
おほうなばら
)
のいと
広
(
ひろ
)
く
046
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
を
遠近
(
をちこち
)
の
047
青人草
(
あをひとぐさ
)
に
垂
(
た
)
れ
給
(
たま
)
ふ
048
蒼生
(
あをひとぐさ
)
は
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
049
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
珍
(
うづ
)
の
宮
(
みや
)
050
御子
(
みこ
)
と
宮
(
みや
)
とを
預
(
あづ
)
かりて
051
イルナの
国
(
くに
)
に
君臨
(
くんりん
)
し
052
堅磐
(
かきは
)
常磐
(
ときは
)
に
世
(
よ
)
を
守
(
まも
)
る
053
吾
(
わが
)
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
ぞ
楽
(
たの
)
しけれ
054
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
055
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はへましませよ
056
朝日
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
るとも
曇
(
くも
)
るとも
057
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つとも
虧
(
か
)
くるとも
058
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
059
汝
(
なれ
)
と
吾
(
われ
)
とは
永久
(
とこしへ
)
に
060
夫婦
(
ふうふ
)
の
仲
(
なか
)
も
睦
(
むつま
)
じく
061
八千代
(
やちよ
)
の
椿
(
つばき
)
優曇華
(
うどんげ
)
の
062
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
春
(
はる
)
を
楽
(
たの
)
しみて
063
神
(
かみ
)
の
大道
(
おほぢ
)
に
仕
(
つか
)
ふべし
064
梵天
(
ぼんてん
)
帝釈
(
たいしやく
)
自在天
(
じざいてん
)
065
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
真心
(
まごころ
)
を
066
誓
(
ちか
)
ひて
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る』
067
と
一杯
(
いつぱい
)
機嫌
(
きげん
)
で、
068
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
は
妻
(
つま
)
のテーナ
姫
(
ひめ
)
と
共
(
とも
)
に
酒
(
さけ
)
酌
(
く
)
み
交
(
かは
)
しながら
歌
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
069
テーナ
姫
(
ひめ
)
は
気
(
き
)
もさえざえしく
笑
(
ゑみ
)
を
満面
(
まんめん
)
に
湛
(
たた
)
へて、
070
夫
(
をつと
)
に
盃
(
さかづき
)
をさしながら
節
(
ふし
)
面白
(
おもしろ
)
く
歌
(
うた
)
ひ
始
(
はじ
)
めた。
071
テーナ姫
『
大梵天王
(
だいぼんてんわう
)
自在天
(
じざいてん
)
072
大国彦
(
おほくにひこ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
073
恩頼
(
みたまのふゆ
)
は
目
(
ま
)
のあたり
074
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り
吾
(
わが
)
夫
(
つま
)
は
075
イルナの
国
(
くに
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
076
四民
(
しみん
)
の
親
(
おや
)
と
仰
(
あふ
)
がれて
077
時
(
とき
)
めき
給
(
たま
)
ふ
時
(
とき
)
は
来
(
き
)
ぬ
078
妾
(
わらは
)
も
同
(
おな
)
じ
妻司
(
つまがみ
)
の
079
麻
(
あさ
)
に
連
(
つ
)
れ
添
(
そ
)
ふ
蓬
(
よもぎ
)
ぞよ
080
君
(
きみ
)
が
高
(
たか
)
きにのぼりなば
081
妾
(
わらは
)
も
高
(
たか
)
き
位
(
くらゐ
)
につき
082
月日
(
つきひ
)
並
(
なら
)
べて
永久
(
とこしへ
)
に
083
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
の
星
(
ほし
)
のごと
084
群集
(
うごな
)
はり
居
(
を
)
る
蒼生
(
たみぐさ
)
を
085
いと
平
(
たひら
)
けく
安
(
やす
)
らけく
086
神
(
かみ
)
のまにまに
治
(
をさ
)
めゆき
087
イルナの
国
(
くに
)
の
生神
(
いきがみ
)
と
088
名
(
な
)
を
万世
(
よろづよ
)
に
轟
(
とどろ
)
かし
089
尊
(
たふと
)
き
神
(
かみ
)
の
御柱
(
みはしら
)
と
090
なるぞ
嬉
(
うれ
)
しき
夫婦仲
(
ふうふなか
)
091
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
092
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はへましまして
093
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
片時
(
かたとき
)
も
094
此
(
この
)
目的
(
もくてき
)
を
委曲
(
まつぶさ
)
に
095
立
(
た
)
てさせ
給
(
たま
)
へと
願
(
ね
)
ぎまつる
096
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
先
(
さき
)
の
世
(
よ
)
で
097
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
夫婦
(
ふうふ
)
は
天地
(
あめつち
)
の
098
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
身
(
み
)
を
尽
(
つく
)
し
099
誠
(
まこと
)
を
尽
(
つく
)
せしものならむ
100
忽
(
たちま
)
ち
入
(
い
)
り
来
(
く
)
る
福
(
ふく
)
の
神
(
かみ
)
101
大黒主
(
おほくろぬし
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
102
右守
(
うもり
)
の
司
(
かみ
)
の
恵比須
(
ゑびす
)
顔
(
がほ
)
103
小事
(
せうじ
)
を
苦
(
く
)
にせぬ
布袋
(
ほて
)
つ
腹
(
ばら
)
104
命
(
いのち
)
も
長
(
なが
)
く
福禄寿
(
げほ
)
頭
(
あたま
)
105
弁財天
(
べんざいてん
)
の
御
(
ご
)
利益
(
りやく
)
で
106
珍
(
うづ
)
の
宝
(
たから
)
を
積
(
つ
)
み
重
(
かさ
)
ね
107
毘舎門天
(
びしやもんてん
)
の
武勇
(
ぶゆう
)
をば
108
四方
(
よも
)
の
国々
(
くにぐに
)
果
(
は
)
てしなく
109
発揮
(
はつき
)
しまつり
天国
(
てんごく
)
の
110
目出度
(
めでた
)
き
様
(
さま
)
を
地
(
ち
)
の
上
(
うへ
)
に
111
築
(
きづ
)
き
上
(
あ
)
ぐるも
目
(
ま
)
のあたり
112
あゝ
頼
(
たの
)
もしや
頼
(
たの
)
もしや
113
神
(
かみ
)
は
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
守
(
まも
)
りまし
114
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
を
敬
(
うやま
)
ひつ
115
神人
(
しんじん
)
和合
(
わがふ
)
し
敬愛
(
けいあい
)
し
116
名位
(
めいゐ
)
寿富
(
じゆふう
)
の
大徳
(
だいとく
)
を
117
千代
(
ちよ
)
万代
(
よろづよ
)
に
永久
(
とこしへ
)
に
118
授
(
さづ
)
け
給
(
たま
)
へよ
自在天
(
じざいてん
)
119
元津
(
もとつ
)
御祖
(
みおや
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
120
御前
(
みまへ
)
に
畏
(
かしこ
)
み
願
(
ね
)
ぎまつる
121
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
122
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はへましませよ』
123
カールチン
『テーナ
姫
(
ひめ
)
、
124
日頃
(
ひごろ
)
の
大望
(
たいまう
)
もどうやら
成功
(
せいこう
)
の
機運
(
きうん
)
に
向
(
むか
)
つたやうだなア。
125
今日
(
けふ
)
は
一入
(
ひとしほ
)
酒
(
さけ
)
の
味
(
あぢ
)
もよいぢやないか。
126
お
前
(
まへ
)
も
前祝
(
まへいは
)
ひに
今日
(
けふ
)
は
十分
(
じふぶん
)
飲
(
の
)
んだらよからう。
127
エーン』
128
テーナ姫
『
左様
(
さやう
)
で
厶
(
ござ
)
いますなア、
129
これと
云
(
い
)
ふのも
日頃
(
ひごろ
)
信
(
しん
)
ずる
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
利益
(
りやく
)
で
厶
(
ござ
)
いませう。
130
何卒
(
どうぞ
)
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
131
貴方
(
あなた
)
は
御
(
ご
)
出世
(
しゆつせ
)
なさつても
私
(
わたし
)
を
捨
(
す
)
てない
様
(
やう
)
にして
下
(
くだ
)
さいませや。
132
出世
(
しゆつせ
)
をなさればなさる
程
(
ほど
)
気
(
き
)
の
揉
(
も
)
めるは
女
(
をんな
)
の
常
(
つね
)
です。
133
お
見捨
(
みす
)
てない
様
(
やう
)
に
呉
(
く
)
れ
呉
(
ぐ
)
れもお
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
して
置
(
お
)
きますよ』
134
カールチン
『アハヽヽヽまたしてもまたしても、
135
取越
(
とりこ
)
し
苦労
(
くらう
)
をする
女
(
をんな
)
だなア。
136
仮令
(
たとへ
)
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れるとも、
137
お
前
(
まへ
)
と
別
(
わか
)
れて
暮
(
くら
)
すのなら、
138
何
(
なん
)
の
楽
(
たの
)
しみもないぢやないか。
139
お
前
(
まへ
)
は
二十
(
にじふ
)
年
(
ねん
)
以上
(
いじやう
)
も
添
(
そ
)
うて
置
(
お
)
いて、
140
まだ
私
(
わし
)
の
心
(
こころ
)
が
分
(
わか
)
らぬのぢやなあ。
141
エーン』
142
テーナ姫
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
が
其
(
その
)
お
心
(
こころ
)
ならば
私
(
わたし
)
は
嬉
(
うれ
)
しう
厶
(
ござ
)
います。
143
その
代
(
かは
)
りどんな
事
(
こと
)
を
仰有
(
おつしや
)
つても、
144
決
(
けつ
)
して
背
(
そむ
)
きは
致
(
いた
)
しませぬわ。
145
こんな
親切
(
しんせつ
)
な
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
に
背
(
そむ
)
くやうな
事
(
こと
)
があつては、
146
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
冥罰
(
めいばつ
)
が
恐
(
おそ
)
ろしう
厶
(
ござ
)
いますからなア』
147
カールチン
『イヤ
好
(
よ
)
く
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れた。
148
それでこそ
俺
(
おれ
)
の
女房
(
にようばう
)
だ。
149
併
(
しか
)
しお
前
(
まへ
)
に
一
(
ひと
)
つ
相談
(
さうだん
)
があるが、
150
キツト
聞
(
き
)
いて
呉
(
く
)
れるだらうなア』
151
テーナ姫
『オホヽヽヽ、
152
聞
(
き
)
いて
呉
(
く
)
れえなんて、
153
そりや
又
(
また
)
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
います。
154
夫
(
をつと
)
が
女房
(
にようばう
)
に
頼
(
たの
)
むお
人
(
ひと
)
が
何処
(
どこ
)
の
世界
(
せかい
)
に
厶
(
ござ
)
いませうか。
155
貴方
(
あなた
)
のお
望
(
のぞ
)
みとは
何事
(
なにごと
)
で
厶
(
ござ
)
いますか。
156
何卒
(
なにとぞ
)
手取
(
てつと
)
り
早
(
ばや
)
く
仰有
(
おつしや
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
157
貴方
(
あなた
)
のお
頼
(
たの
)
みが
一刻
(
いつこく
)
も
早
(
はや
)
く
聞
(
き
)
きたう
厶
(
ござ
)
います』
158
カールチン
『アハヽヽヽ、
159
実
(
じつ
)
の
処
(
ところ
)
は
是
(
これ
)
からお
前
(
まへ
)
にハルナの
都
(
みやこ
)
まで
出陣
(
しゆつぢん
)
して
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いのだ。
160
夫
(
をつと
)
の
言葉
(
ことば
)
をよもや
背
(
そむ
)
きは
致
(
いた
)
すまいなア。
161
エーン』
162
テーナ姫
『ハテ
心得
(
こころえ
)
ぬ
其
(
その
)
お
言葉
(
ことば
)
、
163
今
(
いま
)
や
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
から
五百騎
(
ごひやくき
)
の
兵士
(
つはもの
)
をお
送
(
おく
)
り
下
(
くだ
)
さる
筈
(
はず
)
になつて
居
(
を
)
るぢやありませぬか。
164
それに
又
(
また
)
反対
(
はんたい
)
に
此方
(
こちら
)
から
軍隊
(
ぐんたい
)
を
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
くとは、
165
どういふお
考
(
かんが
)
へでございますか』
166
カールチン
『もはやセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
決心
(
けつしん
)
遊
(
あそ
)
ばしたなり、
167
軍隊
(
ぐんたい
)
の
必要
(
ひつえう
)
は
些
(
すこ
)
しもないのぢや。
168
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
は
近国
(
きんごく
)
に
騒動
(
さうだう
)
が
起
(
おこ
)
り、
169
沢山
(
たくさん
)
の
兵
(
へい
)
を
御
(
ご
)
派遣
(
はけん
)
になり、
170
ハルナの
城
(
しろ
)
は
守備
(
しゆび
)
全
(
まつた
)
く
薄弱
(
はくじやく
)
となつて
居
(
ゐ
)
る。
171
一方
(
いつぱう
)
は
三五教
(
あななひけう
)
征伐
(
せいばつ
)
に
鬼春別
(
おにはるわけ
)
を
出
(
だ
)
し、
172
一方
(
いつぱう
)
はウラル
教
(
けう
)
征伐
(
せいばつ
)
に
大足別
(
おほだるわけ
)
が
出陣
(
しゆつぢん
)
して
居
(
ゐ
)
る。
173
云
(
い
)
はば
国家
(
こくか
)
多事
(
たじ
)
の
時
(
とき
)
だ。
174
こんな
時
(
とき
)
に
戦争
(
いくさ
)
もないのに
援軍
(
ゑんぐん
)
を
乞
(
こ
)
ふとは
全
(
まつた
)
く
済
(
す
)
まないぢやないか。
175
さうしてカールチンは
神力
(
しんりき
)
が
足
(
た
)
らないものだから、
176
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
から
軍隊
(
ぐんたい
)
をかりて、
177
非望
(
ひばう
)
を
遂
(
と
)
げたなど
云
(
い
)
はれては
末代
(
まつだい
)
の
恥
(
はぢ
)
だ。
178
それよりも
此方
(
こなた
)
より
軍隊
(
ぐんたい
)
をさしむけ
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
のお
手伝
(
てつだ
)
ひをしようものなら、
179
吾々
(
われわれ
)
の
武勇
(
ぶゆう
)
は
天下
(
てんか
)
に
轟
(
とどろ
)
き、
180
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
覚
(
おぼ
)
えも
目出度
(
めでた
)
う、
181
吾々
(
われわれ
)
の
守護
(
しゆご
)
する
社稷
(
しやしよく
)
は
金剛
(
こんがう
)
不壊
(
ふゑ
)
の
如意
(
によい
)
宝珠
(
ほつしゆ
)
の
玉
(
たま
)
のやうなものだ。
182
エーン、
183
テーナ、
184
合点
(
がてん
)
が
行
(
い
)
つたか』
185
テーナ姫
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
のお
言葉
(
ことば
)
に
背
(
そむ
)
く
訳
(
わけ
)
ぢや
厶
(
ござ
)
いませぬが、
186
さう
楽観
(
らくくわん
)
も
出来
(
でき
)
ますまい。
187
寸善
(
すんぜん
)
尺魔
(
しやくま
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
、
188
何時
(
なんどき
)
どんな
事
(
こと
)
が
突発
(
とつぱつ
)
するか
分
(
わか
)
つたものぢや
厶
(
ござ
)
いませぬ。
189
こればかりは
篤
(
とつく
)
り
御
(
ご
)
思案
(
しあん
)
を
願
(
ねが
)
ひたいものです』
190
カールチン
『
英雄
(
えいゆう
)
の
胸中
(
きようちう
)
が
女童
(
をんなわらべ
)
に
分
(
わか
)
つて
耐
(
たま
)
らうか。
191
オイ、
192
テーナ、
193
其
(
その
)
方
(
はう
)
は
夫
(
をつと
)
の
命令
(
めいれい
)
に
反抗
(
はんかう
)
する
積
(
つも
)
りか。
194
ヨシ、
195
ヨーシ、
196
それならそれで
此
(
この
)
方
(
はう
)
にも
了簡
(
れうけん
)
がある。
197
今日
(
こんにち
)
限
(
かぎ
)
り
夫
(
をつと
)
でないぞ、
198
女房
(
にようばう
)
でないぞ、
199
サア
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
館
(
やかた
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
り
召
(
め
)
され。
200
エーン』
201
と
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らし
語気
(
ごき
)
を
強
(
つよ
)
めて
叱
(
しか
)
りつけた。
202
テーナ姫
『それは
余
(
あま
)
り
非道
(
ひだう
)
なお
言葉
(
ことば
)
、
203
あまりと
云
(
い
)
へば
余
(
あま
)
り
水臭
(
みづくさ
)
いぢやございませぬか』
204
カールチン
『
決
(
けつ
)
して
俺
(
おれ
)
は
水臭
(
みづくさ
)
い
事
(
こと
)
はない、
205
其
(
その
)
方
(
はう
)
こそ
夫
(
をつと
)
の
言葉
(
ことば
)
に
背
(
そむ
)
く
冷淡
(
れいたん
)
至極
(
しごく
)
の
女
(
をんな
)
だ。
206
俺
(
おれ
)
だつて
長
(
なが
)
らく
添
(
そ
)
うて
来
(
き
)
た
女房
(
にようばう
)
を
放
(
はふ
)
り
出
(
だ
)
すやうな
約
(
つま
)
らぬ
事
(
こと
)
は
致
(
いた
)
し
度
(
た
)
くないのだ。
207
お
前
(
まへ
)
が
余
(
あま
)
り
頑固
(
ぐわんこ
)
だから
腹
(
はら
)
が
立
(
た
)
つたのだ。
208
エーン』
209
テーナ姫
『
貴方
(
あなた
)
は
実際
(
じつさい
)
私
(
わたし
)
を
愛
(
あい
)
して
呉
(
く
)
れては
居
(
ゐ
)
ませぬなア。
210
どうも
此
(
この
)
ごろの
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
がちつと
怪
(
あや
)
しいぢや
厶
(
ござ
)
いませぬか』
211
カールチン
『
嫌
(
いや
)
ぢや、
212
嫌
(
いや
)
ぢやで
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
暮
(
く
)
れた、
213
到底
(
とても
)
々々
(
とても
)
で
添
(
そ
)
ひ
遂
(
と
)
げた、
214
と
云
(
い
)
ふ
世間
(
せけん
)
の
噂
(
うはさ
)
もあるぢやないか、
215
さう
気
(
き
)
に
入
(
い
)
つた
女房
(
にようばう
)
ばかりあるものぢやない。
216
併
(
しか
)
し
俺
(
おれ
)
はお
前
(
まへ
)
に
対
(
たい
)
して
一度
(
いちど
)
も
嫌
(
いや
)
なイの
字
(
じ
)
も
思
(
おも
)
うた
事
(
こと
)
はない。
217
お
前
(
まへ
)
のやうなよい
女房
(
にようばう
)
がどこにあらうかと
実
(
じつ
)
は
感謝
(
かんしや
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
218
余
(
あま
)
り
可愛
(
かあい
)
いものだから、
219
つひこんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うたのだ。
220
これテーナ
姫
(
ひめ
)
、
221
堪忍
(
こら
)
へて
呉
(
く
)
れ、
222
この
通
(
とほ
)
りだから』
223
と
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
して
拝
(
をが
)
んで
見
(
み
)
せる。
224
テーナ
姫
(
ひめ
)
は
俄
(
にはか
)
に
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
し、
225
いそいそとして
肩
(
かた
)
を
揺
(
ゆす
)
ぶりながら、
226
テーナ姫
『ホヽヽヽ、
227
あのまア
男
(
をとこ
)
らしいお
顔
(
かほ
)
だち、
228
今更
(
いまさら
)
のやうに
新枕
(
にひまくら
)
の
昔
(
むかし
)
が
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
されて
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
が
零
(
こぼ
)
れます。
229
それなら
吾
(
わが
)
夫様
(
つまさま
)
、
230
仰
(
あふ
)
せに
従
(
したが
)
ひハルナの
都
(
みやこ
)
に
参
(
まゐ
)
りませう』
231
カールチンは
仕済
(
しすま
)
したりと
私
(
ひそ
)
かに
打
(
う
)
ち
喜
(
よろこ
)
び、
232
態
(
わざ
)
と
厳
(
おごそ
)
かな
口調
(
くてう
)
で、
233
カールチン
『ヤア
天晴
(
あつぱ
)
れ
天晴
(
あつぱ
)
れ、
234
サアこれより
汝
(
なんぢ
)
はハルナの
国
(
くに
)
に
立
(
た
)
ち
向
(
むか
)
ひ、
235
五百騎
(
ごひやくき
)
の
応援軍
(
おうゑんぐん
)
を
元
(
もと
)
へ
帰
(
かへ
)
し、
236
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
加勢
(
かせい
)
に
出陣
(
しゆつぢん
)
致
(
いた
)
せ。
237
吾
(
われ
)
は
都
(
みやこ
)
に
留
(
とど
)
まり、
238
汝
(
なんぢ
)
が
凱旋
(
がいせん
)
の
日
(
ひ
)
を
指折
(
ゆびを
)
り
数
(
かぞ
)
へて
待
(
ま
)
ち
暮
(
く
)
らさむ。
239
サア
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く』
240
とせき
立
(
た
)
てる。
241
テーナ
姫
(
ひめ
)
は
部下
(
ぶか
)
の
士卒
(
しそつ
)
を
残
(
のこ
)
らず
集
(
あつ
)
め、
242
茲
(
ここ
)
に
三百
(
さんびやく
)
余
(
よ
)
騎
(
き
)
を
引
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れ、
243
イルナの
都
(
みやこ
)
を
後
(
あと
)
にハルナの
都
(
みやこ
)
をさして
遠征
(
ゑんせい
)
の
途
(
と
)
に
上
(
のぼ
)
る
事
(
こと
)
となつた。
244
後
(
あと
)
にカールチンは、
245
やれ、
246
股
(
また
)
の
腫物
(
できもの
)
が
うん
で
潰
(
つぶ
)
れたと
云
(
い
)
ふやうな
心持
(
こころもち
)
で、
247
一人
(
ひとり
)
笑壺
(
ゑつぼ
)
に
入
(
い
)
り、
248
カールチン
『エヘヽヽヽ、
249
遉
(
さすが
)
は
右守
(
うもり
)
さまだ。
250
吾々
(
われわれ
)
の
神謀
(
しんぼう
)
奇策
(
きさく
)
には
疑
(
うたが
)
ひ
深
(
ぶか
)
い
女房
(
にようばう
)
も、
251
とうとう
納得
(
なつとく
)
して
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
きやがつた。
252
エヘヽヽヽ、
253
三寸
(
さんずん
)
の
舌鋒
(
ぜつほう
)
をもつて
五百
(
ごひやく
)
の
応援軍
(
おうゑんぐん
)
を
喰
(
く
)
ひとめ、
254
女房
(
にようばう
)
を
動
(
うご
)
かして、
255
又
(
また
)
もや
三百
(
さんびやく
)
の
兵士
(
へいし
)
を
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
に
差
(
さ
)
し
向
(
む
)
けた
俺
(
おれ
)
の
力
(
ちから
)
には、
256
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
だつて
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
き
給
(
たま
)
ふだらう。
257
あゝしてテーナ
姫
(
ひめ
)
を
陣頭
(
ぢんとう
)
に
立
(
た
)
たせた
以上
(
いじやう
)
は、
258
討死
(
うちじに
)
するは
当然
(
たうぜん
)
だ。
259
ウフヽヽヽ、
260
イヤもう、
261
とんともう
根
(
ね
)
つから
葉
(
は
)
つから
面白
(
おもしろ
)
くなつて
来
(
き
)
たワイ。
262
サアこれから
弁財天
(
べんざいてん
)
のやうな、
263
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
のお
顔
(
かほ
)
を
拝見
(
はいけん
)
して
来
(
こ
)
うかなア』
264
と
思
(
おも
)
はず
知
(
し
)
らず
大声
(
おほごゑ
)
を
出
(
だ
)
した。
265
隣室
(
りんしつ
)
に
居
(
ゐ
)
たサモア
姫
(
ひめ
)
は、
266
すつかりカールチンの
独言
(
ひとりごと
)
を
聞
(
き
)
いて
了
(
しま
)
ひ、
267
目
(
め
)
を
丸
(
まる
)
くし
舌
(
した
)
を
巻
(
ま
)
いて
呆
(
あき
)
れかへつて
居
(
ゐ
)
た。
268
併
(
しか
)
し
何喰
(
なにく
)
はぬ
顔
(
かほ
)
をして
足
(
あし
)
の
運
(
はこ
)
びも
淑
(
しと
)
やかにカールチンの
傍
(
そば
)
に
進
(
すす
)
み、
269
サモア姫
『
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
、
270
お
奥様
(
おくさま
)
が
御
(
ご
)
出陣
(
しゆつぢん
)
遊
(
あそ
)
ばし、
271
嘸
(
さぞ
)
お
淋
(
さび
)
しい
事
(
こと
)
で
厶
(
ござ
)
いませうなア。
272
私
(
わたくし
)
も
女
(
をんな
)
で
厶
(
ござ
)
いますが、
273
まさか
奥様
(
おくさま
)
の
代理
(
だいり
)
を
勤
(
つと
)
めると
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
にも
参
(
まゐ
)
らず、
274
御
(
ご
)
心中
(
しんちう
)
お
察
(
さつ
)
し
申上
(
まをしあ
)
げます。
275
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
276
旦那
(
だんな
)
様
(
さま
)
は
本当
(
ほんたう
)
に
偉
(
えら
)
い
方
(
かた
)
ですなア。
277
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
がお
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ねでせうから、
278
一度
(
いちど
)
お
顔
(
かほ
)
を
拝
(
をが
)
ましてお
上
(
あ
)
げなされましたらどうでせうか』
279
カールチン
『これこれサモア、
280
滅多
(
めつた
)
なことを
云
(
い
)
ふではないぞ。
281
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
如
(
ごと
)
きにこの
方
(
はう
)
は
用事
(
ようじ
)
はないわ』
282
サモア姫
『ホヽヽヽヽ、
283
さうでせうとも、
284
御
(
ご
)
用事
(
ようじ
)
はありさうな
筈
(
はず
)
はありませぬわねえ』
285
カールチン
『これサモア
姫
(
ひめ
)
、
286
今日
(
けふ
)
は
俺
(
おれ
)
の
出勤日
(
しゆつきんび
)
だから
登城
(
とじやう
)
して
来
(
く
)
る、
287
留守
(
るす
)
を
頼
(
たの
)
むぞ。
288
さうして
下僕
(
しもべ
)
共
(
ども
)
の
行動
(
かうどう
)
を
監督
(
かんとく
)
して
呉
(
く
)
れ』
289
サモア姫
『ハイ
畏
(
かしこ
)
まりました。
290
急
(
いそ
)
いで
又
(
また
)
転
(
ころ
)
げないやうになさいませや。
291
ホヽヽヽヽ』
292
カールチン
『エー、
293
いらぬ
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふな』
294
とゆるゆる
叱
(
しか
)
りつけ、
295
供
(
とも
)
をも
連
(
つ
)
れず
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
296
裏門
(
うらもん
)
より
城内
(
じやうない
)
さして
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
297
(
大正一一・一一・一四
旧九・二六
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