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第13巻(子の巻)
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第71巻(戌の巻)
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天祥地瑞
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第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
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第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第42巻(巳の巻)
序文に代へて
総説に代へて
第1篇 波瀾重畳
01 北光照暗
〔1126〕
02 馬上歌
〔1127〕
03 山嵐
〔1128〕
04 下り坂
〔1129〕
第2篇 恋海慕湖
05 恋の罠
〔1130〕
06 野人の夢
〔1131〕
07 女武者
〔1132〕
08 乱舌
〔1133〕
09 狐狸窟
〔1134〕
第3篇 意変心外
10 墓場の怪
〔1135〕
11 河底の怪
〔1136〕
12 心の色々
〔1137〕
13 揶揄
〔1138〕
14 吃驚
〔1139〕
第4篇 怨月恨霜
15 帰城
〔1140〕
16 失恋会議
〔1141〕
17 酒月
〔1142〕
18 酊苑
〔1143〕
19 野襲
〔1144〕
第5篇 出風陣雅
20 入那立
〔1145〕
21 応酬歌
〔1146〕
22 別離の歌
〔1147〕
23 竜山別
〔1148〕
24 出陣歌
〔1149〕
25 惜別歌
〔1150〕
26 宣直歌
〔1151〕
余白歌
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> 第3篇 意変心外 > 第14章 吃驚
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第一四章
吃驚
(
びつくり
)
〔一一三九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻
篇:
第3篇 意変心外
よみ(新仮名遣い):
いへんしんがい
章:
第14章 吃驚
よみ(新仮名遣い):
びっくり
通し章番号:
1139
口述日:
1922(大正11)年11月16日(旧09月28日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年7月1日
概要:
舞台:
イルナ城(入那城、セーラン王の館)
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
カールチンは意気揚々と奥の間に入ってきた。セーリス姫は白狐につままれたカールチンをひとしきりからかうと、座に就くようにと招き入れた。
ヤスダラ姫に化けた清照姫は、わざとにつれない態度を取ってカールチンをじらす。セーリス姫は座を立って二人を部屋に残した。
あからさまに自分の女房になるようにと迫るカールチンに対し、清照姫はやんわり拒絶する。カールチンが心変わりをなじると、隣の王の間から黄金姫が王の声色で咳払いをなした。
清照姫は、隣の部屋には王が控えているのだから、発言を慎むようにとカールチンに注意した。カールチンは王がいるからわざとヤスダラ姫は自分につれないことを言ったのだと合点し、機嫌を直した。
すると城の受付が、今セーラン王とヤスダラ姫が城に戻ってきたと注進に来た。カールチンは不審に思い、その場にあぐらをかいて思案に沈んだ。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-25 14:43:34
OBC :
rm4214
愛善世界社版:
173頁
八幡書店版:
第7輯 704頁
修補版:
校定版:
177頁
普及版:
73頁
初版:
ページ備考:
001
右守司
(
うもりのかみ
)
のカールチンは
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
002
セーリス
姫
(
ひめ
)
の
話
(
はな
)
してゐる
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
へ
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
003
カールチン
『あゝヤスダラ
姫
(
ひめ
)
殿
(
どの
)
、
004
セーリス
姫
(
ひめ
)
殿
(
どの
)
、
005
えらい
御
(
ご
)
無沙汰
(
ぶさた
)
を
致
(
いた
)
しました。
006
昨日
(
きのふ
)
はお
目
(
め
)
にかかる
積
(
つも
)
りで
居
(
を
)
りましたが、
007
少
(
すこ
)
しく
差支
(
さしつかへ
)
が
出来
(
でき
)
まして
到頭
(
とうとう
)
失礼
(
しつれい
)
を
致
(
いた
)
しました』
008
セーリス姫
『それはお
忙
(
いそが
)
しいことで
厶
(
ござ
)
りましたな。
009
道中
(
だうちう
)
で
頭
(
あたま
)
の
鉢合
(
はちあは
)
せをしたり、
010
親切
(
しんせつ
)
にお
墓
(
はか
)
参
(
まゐ
)
りをなされたり、
011
狸
(
たぬき
)
に
騙
(
だま
)
されたり、
012
河
(
かは
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んだり、
013
大変
(
たいへん
)
な
御
(
ご
)
活動
(
くわつどう
)
で
厶
(
ござ
)
りましたさうですな。
014
流石
(
さすが
)
は
右守
(
うもり
)
さまだと
云
(
い
)
つて、
015
姉
(
ねえ
)
さまも
感心
(
かんしん
)
して
居
(
ゐ
)
やはりました。
016
さう
立
(
た
)
ちはだかつて
居
(
を
)
らずに、
017
マアここにお
坐
(
すわ
)
りなさいませ。
018
昨日
(
きのふ
)
の
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
一
(
ひと
)
つ
聞
(
き
)
かして
頂
(
いただ
)
きたいもので
厶
(
ござ
)
ります』
019
カールチンは
頭
(
あたま
)
を
掻
(
か
)
きながら、
020
カールチン
『ヘー、
021
別
(
べつ
)
に
活動
(
くわつどう
)
したと……
云
(
い
)
ふ
訳
(
わけ
)
でもありませぬ。
022
時
(
とき
)
の
勢
(
いきほひ
)
やむを
得
(
え
)
ず、
023
惟神
(
かむながら
)
的
(
てき
)
にさされたのですよ。
024
誰
(
たれ
)
が
又
(
また
)
そんな
事
(
こと
)
を
御
(
ご
)
報告
(
はうこく
)
に
参
(
まゐ
)
りましたかな』
025
セーリス姫
『
私
(
わたし
)
の
天眼通
(
てんがんつう
)
で
一寸
(
ちよつと
)
此処
(
ここ
)
から
透視
(
とうし
)
して
居
(
を
)
りましたよ。
026
まづまづお
怪我
(
けが
)
がなくて
結構
(
けつこう
)
でしたな。
027
時
(
とき
)
にユーフテスさまは
如何
(
どう
)
してゐられますかな。
028
昨日
(
きのふ
)
から
待
(
ま
)
つてゐますが、
029
お
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
せなさらぬので
大変
(
たいへん
)
に
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
んで
居
(
を
)
ります』
030
カールチン
『エ、
031
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
います。
032
ユーフテスは
昨日
(
きのふ
)
来
(
き
)
たぢやありませぬか。
033
大変
(
たいへん
)
に
頬辺
(
ほほべた
)
を
抓
(
つめ
)
られて
顔
(
かほ
)
を
腫
(
は
)
らして
居
(
ゐ
)
ましたよ。
034
大変
(
たいへん
)
苛
(
いぢ
)
めなさつたと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
ですが、
035
さう
悪戯
(
いたづら
)
をするものぢやありませぬぞ。
036
女
(
をんな
)
はヤツパリ
女
(
をんな
)
らしう
為
(
な
)
さる
方
(
はう
)
が
床
(
ゆか
)
しいですな』
037
セーリス姫
『この
間
(
あひだ
)
からユーフテス
様
(
さま
)
のお
顔
(
かほ
)
を
拝
(
をが
)
んだ
事
(
こと
)
はありませぬ。
038
そりや
何
(
なに
)
かのお
考
(
かんが
)
へ
違
(
ちが
)
ひでせう。
039
大方
(
おほかた
)
私
(
わたし
)
だと
思
(
おも
)
つて
仇志野
(
あだしの
)
の
古狐
(
ふるぎつね
)
にでも
弄
(
もてあそ
)
ばれて
居
(
ゐ
)
らつしやつたのでせう。
040
何
(
なん
)
とまア
困
(
こま
)
つた
人
(
ひと
)
だなア』
041
カールチン
『
何分
(
なにぶん
)
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
悪魔
(
あくま
)
横行
(
わうかう
)
しまして、
042
彼方
(
あつち
)
にも
此方
(
こつち
)
にも
古狸
(
ふるだぬき
)
や
狐
(
きつね
)
が
出現
(
しゆつげん
)
し、
043
男
(
をとこ
)
を
悩
(
なや
)
ますと
見
(
み
)
えますわい。
044
ワハヽヽヽ』
045
セーリス姫
『もしもし
姉
(
ねえ
)
さま、
046
何
(
なに
)
恥
(
はづ
)
かしさうに
俯向
(
うつむ
)
いて
居
(
を
)
られますの。
047
あれほど
八釜
(
やかま
)
しく
焦
(
こが
)
れて
居
(
ゐ
)
ながら
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い、
048
何
(
なん
)
です、
049
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
をなさいませぬか』
050
清照姫
(
きよてるひめ
)
、
051
細
(
ほそ
)
い
声
(
こゑ
)
で
恥
(
はづ
)
かしさうに、
052
清照姫
『ハイ』
053
と
云
(
い
)
つたきり
益々
(
ますます
)
俯向
(
うつむ
)
く。
054
カールチン
『アハヽヽヽ、
055
余程
(
よほど
)
恥
(
はづ
)
かしくなつて
来
(
き
)
たと
見
(
み
)
えるな。
056
流石
(
さすが
)
はお
嬢
(
ぢやう
)
さまだ。
057
いやさうなくては
女
(
をんな
)
の
価値
(
ねうち
)
がない。
058
今時
(
いまどき
)
の
女
(
をんな
)
は
男
(
をとこ
)
を
三文
(
さんもん
)
とも
思
(
おも
)
つてゐないから
困
(
こま
)
るのだ。
059
いやズンと
気
(
き
)
に
入
(
い
)
つた。
060
海棠
(
かいだう
)
の
花
(
はな
)
でも
雨
(
あめ
)
に
湿
(
しめ
)
つてチツとばかり
俯向
(
うつむ
)
いて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
に、
061
得
(
え
)
もいはれぬ
風情
(
ふぜい
)
のあるものだ。
062
エヘヽヽヽ』
063
セーリス姫
『もし
右守
(
うもり
)
さま、
064
口
(
くち
)
から
何
(
なん
)
だか
長
(
なが
)
い
紐
(
ひも
)
が
下
(
さ
)
がつて
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか。
065
早
(
はや
)
うお
手繰
(
たぐ
)
り
遊
(
あそ
)
ばせ。
066
姉
(
ねえ
)
さまが
御覧
(
ごらん
)
になつたら、
067
あまり
見
(
み
)
つともよくありませぬよ。
068
ホヽヽヽヽ、
069
あのまア
細
(
ほそ
)
い
目
(
め
)
わいのう。
070
本当
(
ほんたう
)
に
右守
(
うもり
)
さまも、
071
姉
(
ねえ
)
さまにスウヰートハートして
居
(
を
)
られると
見
(
み
)
えますな。
072
お
目出度
(
めでた
)
いお
目出度
(
めでた
)
い。
073
これ
姉
(
ねえ
)
さま、
074
お
顔
(
かほ
)
を
上
(
あ
)
げなさらぬか。
075
何
(
なん
)
ですか
十二
(
じふに
)
か
十三
(
じふさん
)
の
娘
(
むすめ
)
の
様
(
やう
)
に、
076
そんな
気
(
き
)
の
弱
(
よわ
)
い
事
(
こと
)
で
如何
(
どう
)
して
恋
(
こひ
)
が
成功
(
せいこう
)
しますか。
077
私
(
わたし
)
、
078
側
(
そば
)
に
見
(
み
)
てゐても
本当
(
ほんたう
)
にジレツたいわ』
079
カールチン
『どうやら
恥
(
はづ
)
かしいと
見
(
み
)
えるわい。
080
いやセーリス
姫
(
ひめ
)
さま、
081
姉妹
(
きやうだい
)
の
貴女
(
あなた
)
がここに
居
(
ゐ
)
らつしやると、
082
姫
(
ひめ
)
も
気
(
き
)
がひけて
思
(
おも
)
ふ
事
(
こと
)
も
云
(
い
)
へないと
見
(
み
)
えます。
083
何卒
(
どうぞ
)
少
(
すこ
)
し
席
(
せき
)
を
外
(
はづ
)
して
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ますまいかな』
084
セーリス姫
『ホヽヽヽヽ、
085
それはお
易
(
やす
)
い
御用
(
ごよう
)
で
厶
(
ござ
)
います。
086
それなら
邪魔者
(
じやまもの
)
は
暫
(
しばら
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しますから、
087
何卒
(
どうぞ
)
シツポリと
御
(
ご
)
両人
(
りやうにん
)
様
(
さま
)
お
楽
(
たの
)
しみ』
088
と
態
(
わざ
)
とにプリンとして
見
(
み
)
せ、
089
畳
(
たたみ
)
を
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つボンボンと
蹶
(
け
)
つて
早々
(
さうさう
)
に
自分
(
じぶん
)
の
居間
(
ゐま
)
へ
走
(
はし
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
090
カールチン
『オホヽヽヽ、
091
何
(
なん
)
と
面白
(
おもしろ
)
いものだなア。
092
然
(
しか
)
し、
093
あこに
云
(
い
)
ふに
云
(
い
)
はれぬ
妙味
(
めうみ
)
があるのだ。
094
チツとセーリス
姫
(
ひめ
)
は
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
のローマンスを
妬
(
や
)
いてゐると
見
(
み
)
えるわい。
095
いやヤスダラ
姫
(
ひめ
)
殿
(
どの
)
、
096
セーちやまは
帰
(
かへ
)
りました。
097
サアもう
誰
(
たれ
)
に
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
入
(
い
)
りませぬ。
098
お
顔
(
かほ
)
をあげなさい。
099
さうしてトツクリと
将来
(
しやうらい
)
の
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
を
遂
(
と
)
げておかうぢやありませぬか』
100
清照姫
『オホヽヽヽ、
101
好
(
す
)
かぬたらしい
男
(
をとこ
)
だこと、
102
貴方
(
あなた
)
は
立派
(
りつぱ
)
なイルナ
城
(
じやう
)
の
右守
(
うもり
)
様
(
さま
)
、
103
さうして、
104
テーナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
立派
(
りつぱ
)
な
牡丹餅
(
ぼたもち
)
のやうなお
顔
(
かほ
)
の
奥
(
おく
)
さまがあるぢやありませぬか。
105
私
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
な
出戻
(
でもど
)
りの
女
(
をんな
)
を
捉
(
とら
)
へて、
106
そんな
事
(
こと
)
仰有
(
おつしや
)
いますと、
107
貴方
(
あなた
)
の
名誉
(
めいよ
)
に
関
(
かか
)
はるぢやありませぬか。
108
宜
(
い
)
い
加減
(
かげん
)
におやめなさいませ』
109
カールチン
『これはしたり、
110
案
(
あん
)
に
相違
(
さうゐ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
、
111
そんな
筈
(
はず
)
ではなかつたに。
112
何
(
なん
)
とした
変
(
かは
)
りやうだらう』
113
清照姫
『
妾
(
わたし
)
は
些
(
ちつと
)
も
変
(
かは
)
つては
居
(
ゐ
)
ないのよ。
114
変
(
かは
)
つたのは
貴方
(
あなた
)
のお
心
(
こころ
)
ですわ』
115
カールチン
『イヤ
吾々
(
われわれ
)
は
些
(
ちつと
)
も
変
(
かは
)
つてゐない。
116
姫
(
ひめ
)
の
心
(
こころ
)
がスツカリ
変
(
かは
)
つてるぢやないか』
117
清照姫
『さうですかな。
118
貴方
(
あなた
)
が
好
(
す
)
きで
好
(
す
)
きで
仕方
(
しかた
)
がなかつたのだが、
119
今日
(
けふ
)
は
又
(
また
)
何
(
なん
)
だか
知
(
し
)
らぬが、
120
ぞぞ
毛
(
け
)
が
立
(
た
)
つ
程
(
ほど
)
嫌
(
いや
)
になりました。
121
好
(
す
)
きな
貴方
(
あなた
)
が
嫌
(
きら
)
ひな
貴方
(
あなた
)
と
変
(
かは
)
つてゐるのですから、
122
ヤツパリ
本人
(
ほんにん
)
は
貴方
(
あなた
)
でせう。
123
本人
(
ほんにん
)
が
変
(
かは
)
ればこそ、
124
相手
(
あひて
)
方
(
がた
)
の
妾
(
わたし
)
の
目
(
め
)
から
変
(
かは
)
つて
見
(
み
)
えるのですわ』
125
カールチン
『そんなこたア
如何
(
どう
)
でも
宜
(
い
)
い。
126
サア
愈
(
いよいよ
)
今日
(
けふ
)
は
情約
(
じやうやく
)
締結
(
ていけつ
)
を
致
(
いた
)
しませう。
127
私
(
わたし
)
が
当城
(
たうじやう
)
の
主人
(
しゆじん
)
刹帝利
(
せつていり
)
と
今
(
いま
)
になりますから、
128
貴女
(
あなた
)
は
私
(
わたし
)
の
正妃
(
せいひ
)
、
129
よもやお
不足
(
ふそく
)
はありますまい』
130
清照姫
『
妾
(
わたし
)
は
貴方
(
あなた
)
の
様
(
やう
)
な
水臭
(
みづくさ
)
いお
方
(
かた
)
は
末
(
すゑ
)
の
見込
(
みこみ
)
が
厶
(
ござ
)
りませぬから、
131
嫌
(
きら
)
ひで
厶
(
ござ
)
ります。
132
昔
(
むかし
)
からいろいろと
艱難
(
かんなん
)
辛苦
(
しんく
)
をして、
133
ヤツと
此処
(
ここ
)
まで
夫婦
(
ふうふ
)
が
位置
(
ゐち
)
を
築
(
きづ
)
き
上
(
あ
)
げ、
134
今
(
いま
)
や
進
(
すす
)
んで
刹帝利
(
せつていり
)
におなりなさると
云
(
い
)
ふ
所
(
ところ
)
で
慢心
(
まんしん
)
を
遊
(
あそ
)
ばし、
135
不人情
(
ふにんじやう
)
にも
女房
(
にようばう
)
を
殺
(
ころ
)
しにやつた
後
(
あと
)
で、
136
妾
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
な
何
(
なん
)
にも
経験
(
けいけん
)
のない、
137
つまらぬ
女
(
をんな
)
を
女房
(
にようばう
)
にしようと
思
(
おも
)
ふ
様
(
やう
)
なお
方
(
かた
)
は、
138
私
(
わたし
)
絶対
(
ぜつたい
)
に
嫌
(
きら
)
ひで
厶
(
ござ
)
ります。
139
又
(
また
)
外
(
ほか
)
に
綺麗
(
きれい
)
な
方
(
かた
)
が
見付
(
みつ
)
かつたら、
140
私
(
わたし
)
は
第二
(
だいに
)
のテーナ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
にしられて
了
(
しま
)
ひ、
141
生命
(
いのち
)
をとられるやらも
図
(
はか
)
られませぬから、
142
まアそんな
剣呑
(
けんのん
)
な
方
(
かた
)
にお
相手
(
あひて
)
になるのは
止
(
や
)
めておきませうかい』
143
カールチン
『
今更
(
いまさら
)
そんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
つちや
困
(
こま
)
るぢやありませぬか。
144
大黒主
(
おほくろぬし
)
様
(
さま
)
から
吾々
(
われわれ
)
の
目的
(
もくてき
)
を
達成
(
たつせい
)
する
為
(
た
)
めに、
145
五百騎
(
ごひやくき
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
を
応援
(
おうゑん
)
の
為
(
た
)
め
御
(
ご
)
派遣
(
はけん
)
下
(
くだ
)
さるのをば、
146
貴女
(
あなた
)
の
希望
(
きばう
)
によりお
断
(
ことわ
)
り
申上
(
まをしあ
)
げ、
147
其
(
その
)
上
(
うへ
)
また
味方
(
みかた
)
を
残
(
のこ
)
らず
呼
(
よ
)
び
集
(
あつ
)
め、
148
ハルナの
国
(
くに
)
へ
遠征
(
ゑんせい
)
の
旅
(
たび
)
に
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
ひ、
149
最早
(
もはや
)
守
(
まも
)
り
少
(
すく
)
なくなつた
此
(
この
)
際
(
さい
)
、
150
お
前
(
まへ
)
さまに
尻
(
いど
)
を
振
(
ふ
)
り
向
(
む
)
けられて、
151
如何
(
どう
)
して
此
(
この
)
右守司
(
うもりのかみ
)
が
立
(
た
)
ち
行
(
ゆ
)
きますか。
152
チツとは
推量
(
すゐりやう
)
して
貰
(
もら
)
ひませうかい。
153
エーン』
154
清照姫
『ホヽヽヽヽ、
155
お
前
(
まへ
)
さまはそんな
頓馬
(
とんま
)
だから
妾
(
わたし
)
が
嫌
(
きら
)
ふのだよ。
156
女
(
をんな
)
にかけたら
目
(
め
)
も
鼻
(
はな
)
もないのだから、
157
本当
(
ほんたう
)
に
困
(
こま
)
つた
唐変木
(
たうへんぼく
)
だな。
158
ウフヽヽヽ』
159
カールチン
『これ、
160
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
さま、
161
腹
(
はら
)
の
黒
(
くろ
)
い。
162
いゝ
加減
(
かげん
)
に
いちや
つかして
於
(
おい
)
て
下
(
くだ
)
され。
163
男冥加
(
をとこみやうが
)
につきますぞや』
164
隣
(
となり
)
の
室
(
しつ
)
にはオホンオホンと、
165
男
(
をとこ
)
の
咳払
(
せきばら
)
ひが
聞
(
きこ
)
えて
来
(
き
)
た。
166
これは
黄金姫
(
わうごんひめ
)
が
二人
(
ふたり
)
の
掛合
(
かけあひ
)
を
面白
(
おもしろ
)
可笑
(
をか
)
しく
立聞
(
たちぎ
)
きし、
167
わざとセーラン
王
(
わう
)
の
声色
(
こわいろ
)
で
咳払
(
せきばら
)
ひをして
見
(
み
)
せたのであつた。
168
清照姫
(
きよてるひめ
)
は
小声
(
こごゑ
)
になり、
169
清照姫
『あの
通
(
とほ
)
り、
170
襖
(
ふすま
)
一
(
いち
)
枚
(
まい
)
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
に
王
(
わう
)
様
(
さま
)
が
控
(
ひか
)
へて
厶
(
ござ
)
るのですから、
171
貴方
(
あなた
)
の
様
(
やう
)
にさうヅケヅケと
何
(
なに
)
もかも
云
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
つちや
困
(
こま
)
るぢやありませぬか。
172
チと
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けて
下
(
くだ
)
さいな』
173
カールチンは
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
首
(
くび
)
を
縦
(
たて
)
に
振
(
ふ
)
りながら
小声
(
こごゑ
)
になり、
174
カールチン
『ウン、
175
よしよし、
176
あ! それで
分
(
わか
)
つた。
177
何
(
なん
)
だか
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ふと
思
(
おも
)
つたが、
178
王
(
わう
)
が
隣室
(
りんしつ
)
に
居
(
を
)
られるので、
179
あんな
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
つたのだなア。
180
よし
分
(
わか
)
つた。
181
もう
俺
(
おれ
)
も
諒解
(
りやうかい
)
したから
心配
(
しんぱい
)
して
呉
(
く
)
れな』
182
清照姫
『ホヽヽヽ
何
(
なに
)
が
諒解
(
りやうかい
)
ですか。
183
妾
(
わたし
)
の
様
(
やう
)
な
女
(
をんな
)
を
相手
(
あひて
)
にせずに、
184
もつと
立派
(
りつぱ
)
なお
方
(
かた
)
にお
掛合
(
かけあひ
)
遊
(
あそ
)
ばせ』
185
斯
(
か
)
く
云
(
い
)
ふ
折
(
をり
)
しも、
186
ミルは
慌
(
あわただ
)
しく
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
187
ミル
『もし
右守
(
うもり
)
さま、
188
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
、
189
今
(
いま
)
王
(
わう
)
様
(
さま
)
とヤスダラ
姫
(
ひめ
)
と
云
(
い
)
ふ
貴女
(
あなた
)
にソツクリのお
方
(
かた
)
が
帰
(
かへ
)
られました』
190
カールチンは、
191
カールチン
『
何
(
なに
)
、
192
ヤスダラ
姫
(
ひめ
)
が
帰
(
かへ
)
つた。
193
王
(
わう
)
様
(
さま
)
がお
帰
(
かへ
)
り、
194
ハテ、
195
如何
(
どう
)
したものかな』
196
と
腕
(
うで
)
を
組
(
く
)
み
胡坐
(
あぐら
)
をかいて、
197
暫
(
しば
)
し
思案
(
しあん
)
に
沈
(
しづ
)
みつつあつた。
198
(
大正一一・一一・一六
旧九・二八
北村隆光
録)
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