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第42巻(巳の巻)
序文に代へて
総説に代へて
第1篇 波瀾重畳
01 北光照暗
〔1126〕
02 馬上歌
〔1127〕
03 山嵐
〔1128〕
04 下り坂
〔1129〕
第2篇 恋海慕湖
05 恋の罠
〔1130〕
06 野人の夢
〔1131〕
07 女武者
〔1132〕
08 乱舌
〔1133〕
09 狐狸窟
〔1134〕
第3篇 意変心外
10 墓場の怪
〔1135〕
11 河底の怪
〔1136〕
12 心の色々
〔1137〕
13 揶揄
〔1138〕
14 吃驚
〔1139〕
第4篇 怨月恨霜
15 帰城
〔1140〕
16 失恋会議
〔1141〕
17 酒月
〔1142〕
18 酊苑
〔1143〕
19 野襲
〔1144〕
第5篇 出風陣雅
20 入那立
〔1145〕
21 応酬歌
〔1146〕
22 別離の歌
〔1147〕
23 竜山別
〔1148〕
24 出陣歌
〔1149〕
25 惜別歌
〔1150〕
26 宣直歌
〔1151〕
余白歌
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> 第4篇 怨月恨霜 > 第17章 酒月
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第一七章
酒月
(
さかづき
)
〔一一四二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第42巻 舎身活躍 巳の巻
篇:
第4篇 怨月恨霜
よみ(新仮名遣い):
えんげつこんそう
章:
第17章 酒月
よみ(新仮名遣い):
さかづき
通し章番号:
1142
口述日:
1922(大正11)年11月24日(旧10月6日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年7月1日
概要:
舞台:
イルナ城(入那城、セーラン王の館)
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
冬のはじめ、イルナ城の門番のミルとボルチーは、日没後の無沙汰に酒を飲んで天下について議論をなし、いつしか脱線話になっていった。
ミルは酔いつぶれてしまい、ボルチーは門を開けて月下に涼んでいた。そこへカールチンが、黒装束の武装した部下十数人を連れてやってきた。マンモスは、ボルチーに開門を命じた。
ボルチーがすでに門は開いていると答えると、黒装束の一行は城内に進んで行った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-12-27 14:48:13
OBC :
rm4217
愛善世界社版:
202頁
八幡書店版:
第7輯 715頁
修補版:
校定版:
207頁
普及版:
86頁
初版:
ページ備考:
001
頃
(
ころ
)
しも
冬
(
ふゆ
)
の
初
(
はじ
)
め、
002
木枯
(
こがらし
)
の
樹々
(
きぎ
)
を
渡
(
わた
)
る
声
(
こゑ
)
は
猛獣
(
まうじう
)
の
吼
(
ほ
)
え
猛
(
たけ
)
るが
如
(
ごと
)
く
烈
(
はげ
)
しき
夕間暮
(
ゆふまぐれ
)
、
003
イルナ
城
(
じやう
)
の
表門
(
おもてもん
)
を
警固
(
けいご
)
してゐたミル、
004
ボルチーの
両人
(
りやうにん
)
は、
005
門番
(
もんばん
)
の
常
(
つね
)
として
無聊
(
むれう
)
を
慰
(
なぐさ
)
むる
為
(
た
)
め、
006
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
碁
(
ご
)
を
打
(
う
)
つ、
007
将棋
(
しやうぎ
)
をさす、
008
日没後
(
にちぼつご
)
は
最早
(
もはや
)
門
(
もん
)
の
開閉
(
かいへい
)
を
要
(
えう
)
しないので、
009
強
(
きつ
)
い
酒
(
さけ
)
に
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
ち、
010
下宿
(
げしゆく
)
の
二階
(
にかい
)
で
天下
(
てんか
)
を
論
(
ろん
)
ずる
書生
(
しよせい
)
気分
(
きぶん
)
になり、
011
性
(
しやう
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬ
議論
(
ぎろん
)
に
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
してゐた。
012
ミル
『オイ、
013
ボルチー、
014
今日
(
けふ
)
は
久
(
ひさ
)
しぶりでセーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
が
沢山
(
たくさん
)
な
御
(
ご
)
家来
(
けらい
)
をつれてお
帰
(
かへ
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたので、
015
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
も
何
(
なん
)
とはなしに、
016
其処
(
そこ
)
等
(
ら
)
中
(
ぢう
)
が
暖
(
あたた
)
かい
気分
(
きぶん
)
になつて
来
(
き
)
たよ。
017
肝腎
(
かんじん
)
な
主人
(
しゆじん
)
が
不在
(
ふざい
)
だと、
018
何処
(
どこ
)
ともなしに
冷
(
つめ
)
たい
淋
(
さび
)
しいものだ。
019
一
(
ひと
)
つ
今日
(
けふ
)
は
祝
(
いはひ
)
に、
020
トロツピキ
酔
(
よ
)
ふ
事
(
こと
)
にしようかい』
021
ボルチー
『
何
(
なん
)
だか
俺
(
おれ
)
も
酒
(
さけ
)
の
加減
(
かげん
)
で、
022
冷
(
つめ
)
たい
体
(
からだ
)
が
暖
(
あたた
)
かうなつて
来
(
き
)
たよ。
023
併
(
しか
)
しながら
貴様
(
きさま
)
、
024
聞
(
き
)
いてるだらうが、
025
あのカールチンにお
位
(
くらゐ
)
を
譲
(
ゆづ
)
らるると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だが、
026
実際
(
じつさい
)
だらうかな。
027
何
(
なん
)
で
又
(
また
)
物好
(
ものず
)
きな、
028
王位
(
わうゐ
)
を
捨
(
す
)
てて、
029
あんな
受
(
うけ
)
のよくないカールチンに
位
(
くらゐ
)
を
譲
(
ゆづ
)
つたりなさるのだらう。
030
余
(
あんま
)
り
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
物騒
(
ぶつそう
)
なので、
031
政治
(
せいぢ
)
にお
飽
(
あ
)
き
遊
(
あそ
)
ばして、
032
吾々
(
われわれ
)
臣下
(
しんか
)
や
国民
(
こくみん
)
を
捨
(
す
)
て、
033
山林
(
さんりん
)
に
隠遁
(
いんとん
)
して
光風
(
くわうふう
)
霽月
(
せいげつ
)
を
友
(
とも
)
とすると
云
(
い
)
ふ
風流
(
ふうりう
)
な
生活
(
せいくわつ
)
を
送
(
おく
)
られる
考
(
かんが
)
へだらうかな』
034
ミル
『
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても、
035
時節
(
じせつ
)
の
力
(
ちから
)
には
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
でも
叶
(
かな
)
はぬのだから
仕方
(
しかた
)
がないさ。
036
禅譲
(
ぜんじやう
)
放伐
(
はうばつ
)
と
云
(
い
)
つて、
037
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も
世
(
よ
)
は
持
(
も
)
ちきりと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
はない。
038
あひさに
[
※
「あひさに」は「時々」「たまに」の意か? 京都弁や兵庫弁で「あいさに」は「時々」「たまに」の意味である。
]
頭
(
あたま
)
が
代
(
かは
)
るのも
亦
(
また
)
人気
(
にんき
)
が
新
(
あたら
)
しくなつて
宜
(
よ
)
いかも
知
(
し
)
れないよ。
039
カールチンさまも、
040
矢張
(
やつぱり
)
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
都合
(
つがふ
)
で
刹帝利
(
せつていり
)
にお
成
(
な
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
時節
(
じせつ
)
が
来
(
き
)
たのだらう』
041
ボルチー
『
左守司
(
さもりのかみ
)
様
(
さま
)
を
差措
(
さしお
)
いて
一段下
(
いちだんした
)
な
右守司
(
うもりのかみ
)
様
(
さま
)
に
位
(
くらゐ
)
を
譲
(
ゆづ
)
られるとは、
042
チツと
順序
(
じゆんじよ
)
が
違
(
ちが
)
ふぢやないか』
043
ミル
『
漢朝
(
かんてう
)
に
帝尭
(
ていげう
)
と
云
(
い
)
ふ
天子
(
てんし
)
があつた。
044
在位
(
ざいゐ
)
七十
(
しちじふ
)
年
(
ねん
)
、
045
年
(
とし
)
既
(
すで
)
に
老
(
お
)
いたれば、
046
何人
(
なにぴと
)
に
天下
(
てんか
)
を
譲
(
ゆづ
)
るべきかと
大臣
(
だいじん
)
等
(
ら
)
に
御
(
お
)
尋
(
たづ
)
ねになつた。
047
大臣
(
だいじん
)
は
皆
(
みな
)
諂
(
へつら
)
つて、
048
幸
(
さいはひ
)
に
皇太子
(
くわうたいし
)
様
(
さま
)
御
(
お
)
在
(
は
)
しまさば、
049
丹朱
(
たんしゆ
)
にこそ
御
(
お
)
譲
(
ゆづ
)
りなさいませと
申上
(
まをしあ
)
げた。
050
さうすると
帝尭
(
ていげう
)
といふ
天子
(
てんし
)
の
言
(
げん
)
に、
051
天下
(
てんか
)
は
是
(
これ
)
一
(
いち
)
人
(
にん
)
の
天下
(
てんか
)
ではない、
052
何
(
なに
)
を
以
(
もつ
)
てか
吾
(
わが
)
太子
(
たいし
)
なればとて、
053
徳
(
とく
)
足
(
た
)
らず
政
(
まつりごと
)
の
真義
(
しんぎ
)
を
知
(
し
)
らないものに
位
(
くらゐ
)
を
譲
(
ゆづ
)
り、
054
四海
(
しかい
)
の
民
(
たみ
)
を
苦
(
くる
)
しむべきやと
仰
(
あふ
)
せられ、
055
皇太子
(
くわうたいし
)
たる
丹朱
(
たんしゆ
)
に
譲
(
ゆづ
)
り
給
(
たま
)
はず、
056
何処
(
いづこ
)
の
野
(
や
)
に
賢人
(
けんじん
)
あらむと、
057
隠遁
(
いんとん
)
の
者
(
もの
)
までも
尋
(
たづ
)
ね
給
(
たま
)
ひ、
058
遂
(
つひ
)
に
箕山
(
きざん
)
といふ
所
(
ところ
)
に、
059
許由
(
きよいう
)
といふ
賢人
(
けんじん
)
が
世
(
よ
)
を
捨
(
す
)
て
光
(
ひかり
)
を
韜
(
つつ
)
み、
060
唯
(
ただ
)
苔
(
こけ
)
深
(
ふか
)
く
松
(
まつ
)
痩
(
や
)
せたる
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
に
一瓢
(
いつぺう
)
を
掛
(
か
)
け、
061
瀝々
(
れきれき
)
たる
風
(
かぜ
)
の
音
(
おと
)
に
人間
(
にんげん
)
迷情
(
めいじやう
)
の
夢
(
ゆめ
)
を
覚
(
さま
)
して
居
(
ゐ
)
た。
062
帝尭
(
ていげう
)
之
(
これ
)
を
聞
(
きこ
)
しめして
勅使
(
ちよくし
)
を
立
(
た
)
て、
063
御位
(
みくらゐ
)
を
譲
(
ゆづ
)
るべき
由
(
よし
)
を
仰
(
あふ
)
せ
出
(
いだ
)
されたが、
064
許由
(
きよいう
)
は
遂
(
つひ
)
に
勅
(
みことのり
)
に
答
(
こた
)
へず、
065
剰
(
あま
)
つさへ、
066
松風
(
しようふう
)
渓水
(
けいすゐ
)
の
清
(
きよ
)
き
音
(
おと
)
を
聞
(
き
)
きて
折角
(
せつかく
)
爽
(
さはや
)
かになつた
耳
(
みみ
)
が、
067
富貴
(
ふうき
)
栄華
(
えいぐわ
)
の
賤
(
いや
)
しき
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かされて、
068
心
(
こころ
)
までが
汚
(
けが
)
れたやうだ、
069
と
云
(
い
)
つて
穎川
(
えいせん
)
の
水
(
みづ
)
に
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
070
同
(
おな
)
じ
山中
(
さんちう
)
に
身
(
み
)
を
捨
(
す
)
て
隠居
(
いんきよ
)
して
居
(
ゐ
)
た
巣父
(
さうふ
)
といふ
賢人
(
けんじん
)
が
牛
(
うし
)
を
曳
(
ひ
)
いて
来
(
きた
)
り、
071
水
(
みづ
)
を
呑
(
の
)
まさむとして、
072
許由
(
きよいう
)
が
頻
(
しき
)
りに
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
つて
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
て、
073
何故
(
なにゆゑ
)
に
汝
(
なんぢ
)
は
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
つて
居
(
を
)
らるるか、
074
と
不思議
(
ふしぎ
)
さうに
尋
(
たづ
)
ねた。
075
そこで
許由
(
きよいう
)
は、
076
帝尭
(
ていげう
)
吾
(
われ
)
に
天下
(
てんか
)
を
譲
(
ゆづ
)
らむと
仰
(
あふ
)
せられたのを
聞
(
き
)
いて、
077
耳
(
みみ
)
が
汚
(
けが
)
れたやうな
心地
(
ここち
)
がしてならないから、
078
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだと
答
(
こた
)
へた。
079
巣父
(
さうふ
)
もまた
首
(
くび
)
を
振
(
ふ
)
つて、
080
如何
(
いか
)
にもそれでこの
水流
(
すゐりう
)
が
常
(
つね
)
より
濁
(
にご
)
つて
見
(
み
)
えたのだなア、
081
左様
(
さやう
)
な
汚
(
けが
)
れた
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
つた
水
(
みづ
)
を
牛
(
うし
)
に
飲
(
の
)
ますと
大事
(
だいじ
)
の
牛
(
うし
)
が
汚
(
けが
)
れると
云
(
い
)
つて、
082
牛
(
うし
)
を
曳
(
ひ
)
き
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
083
そこで
帝尭
(
ていげう
)
様
(
さま
)
が、
084
ハテ
困
(
こま
)
つたことだ、
085
この
天下
(
てんか
)
を
誰
(
たれ
)
に
譲
(
ゆづ
)
つたが
宜
(
よ
)
からうかと、
086
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
隈
(
くま
)
なく
尋
(
たづ
)
ね
求
(
もと
)
め
給
(
たま
)
うた
結果
(
けつくわ
)
は、
087
冀州
(
きしう
)
に
虞舜
(
ぐしゆん
)
といふ
賤
(
いや
)
しい
人
(
ひと
)
があつた。
088
その
人
(
ひと
)
の
父
(
ちち
)
は
盲目者
(
めくら
)
なり、
089
母
(
はは
)
は
精神
(
せいしん
)
ねぢけて
忠信
(
ちうしん
)
の
言
(
げん
)
を
道
(
まも
)
らず、
090
徳義
(
とくぎ
)
の
経
(
けい
)
に
則
(
のつと
)
らずといふ
女
(
をんな
)
なり、
091
その
弟
(
おとうと
)
は
象
(
しやう
)
といふ
驕慢
(
けふまん
)
悖戻
(
はいれい
)
の
曲者
(
くせもの
)
であつた。
092
独
(
ひと
)
り
虞舜
(
ぐしゆん
)
のみは
孝行
(
かうかう
)
の
心
(
こころ
)
深
(
ふか
)
くして、
093
父母
(
ふぼ
)
を
養
(
やしな
)
はむが
為
(
ため
)
に
歴山
(
れきざん
)
に
行
(
い
)
つて
耕
(
たがや
)
すに、
094
其
(
その
)
他
(
た
)
の
人々
(
ひとびと
)
はその
徳
(
とく
)
に
感動
(
かんどう
)
して
畔
(
くろ
)
を
譲
(
ゆづ
)
り、
095
雷沢
(
らいたく
)
に
下
(
くだ
)
つて
漁
(
すなど
)
る
時
(
とき
)
は
其
(
その
)
浦
(
うら
)
の
人々
(
ひとびと
)
居
(
きよ
)
を
譲
(
ゆづ
)
り、
096
河浜
(
かひん
)
に
陶
(
すえもの
)
するに
器皆
(
うつはみな
)
苦窪
(
ゆがみいじま
)
からず、
097
舜
(
しゆん
)
の
往
(
ゆ
)
きて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
に
二
(
に
)
年
(
ねん
)
在
(
あ
)
れば
邑
(
いふ
)
をなし、
098
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
あれば
都
(
と
)
を
成
(
な
)
すといふ
調子
(
てうし
)
で、
099
万
(
まん
)
人
(
にん
)
が
其
(
その
)
徳
(
とく
)
を
慕
(
した
)
つて
来
(
き
)
たといふ
立派
(
りつぱ
)
な
人
(
ひと
)
である。
100
年
(
とし
)
二十
(
はたち
)
の
時
(
とき
)
には
孝行
(
かうかう
)
の
誉
(
ほまれ
)
天下
(
てんか
)
に
聞
(
きこ
)
えたので、
101
帝尭
(
ていげう
)
様
(
さま
)
は
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
に
天下
(
てんか
)
を
譲
(
ゆづ
)
らむと
思召
(
おぼしめ
)
して、
102
先
(
ま
)
づ
内外
(
ないぐわい
)
に
付
(
つ
)
いて、
103
其
(
その
)
行
(
おこな
)
ひを
観
(
み
)
むと
欲
(
ほつ
)
し、
104
娥皇女
(
がくわうぢよ
)
、
105
英
(
えい
)
といふ
姫宮
(
ひめみや
)
を
二人
(
ふたり
)
まで
舜
(
しゆん
)
に
妻
(
めあは
)
せられた。
106
そして
其
(
その
)
御子
(
みこ
)
九
(
く
)
人
(
にん
)
を
舜
(
しゆん
)
の
臣下
(
しんか
)
として
其
(
その
)
左右
(
さいう
)
に
慎
(
つつし
)
み
随
(
したが
)
はせられた
事
(
こと
)
が、
107
三十万
(
さんじふまん
)
年
(
ねん
)
未来
(
みらい
)
の
支那国
(
しなこく
)
にあつた。
108
カールチン
様
(
さま
)
も
矢張
(
やつぱり
)
神徳
(
しんとく
)
に
由
(
よ
)
つて
王
(
わう
)
様
(
さま
)
から
位
(
くらゐ
)
を
譲
(
ゆづ
)
られ
給
(
たま
)
ふのだから、
109
大
(
たい
)
したものだなア、
110
ゲーウツプーガラガラガラ、
111
又
(
また
)
しても
酒
(
さけ
)
の
奴
(
やつ
)
、
112
天気
(
てんき
)
が
悪
(
わる
)
いので
逆流
(
ぎやくりう
)
して
来
(
き
)
よつた。
113
アーン』
114
ボルチー
『
妙
(
めう
)
な
処
(
ところ
)
へ
話
(
はなし
)
を
持
(
も
)
つて
行
(
ゆ
)
くぢやないか。
115
然
(
しか
)
しながら
漢朝
(
かんてう
)
の
帝尭
(
ていげう
)
といふ
王
(
わう
)
様
(
さま
)
は
変
(
かは
)
つたものだな。
116
一点
(
いつてん
)
の
私利
(
しり
)
私欲
(
しよく
)
もなく、
117
子孫
(
しそん
)
の
為
(
た
)
めに
美田
(
びでん
)
を
買
(
か
)
ふと
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
利己
(
りこ
)
主義
(
しゆぎ
)
は
微塵
(
みじん
)
もなく、
118
聖人
(
せいじん
)
賢人
(
けんじん
)
に
世
(
よ
)
を
譲
(
ゆづ
)
つて
世界
(
せかい
)
万民
(
ばんみん
)
を
安堵
(
あんど
)
させようと
遊
(
あそ
)
ばす
其
(
その
)
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
は、
119
人主
(
じんしゆ
)
たるものの
模範
(
もはん
)
とすべきものではないか。
120
吾
(
わが
)
セーラン
王
(
わう
)
様
(
さま
)
も、
121
さうするとヤツパリ
帝尭
(
ていげう
)
様
(
さま
)
の
様
(
やう
)
な
名君
(
めいくん
)
だと
見
(
み
)
えるな。
122
然
(
しか
)
しながら
俺
(
おれ
)
の
考
(
かんが
)
へでは
右守司
(
うもりのかみ
)
のカールチンは、
123
それ
程
(
ほど
)
聖人
(
せいじん
)
賢人
(
けんじん
)
ぢやと
思
(
おも
)
ふ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないわ。
124
只
(
ただ
)
サマリー
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
のお
父
(
とう
)
さまだと
云
(
い
)
ふ
点
(
てん
)
が、
125
ひつかかりで、
126
刹帝利
(
せつていり
)
を
譲
(
ゆづ
)
られるのかも
知
(
し
)
れぬ。
127
それだつたら
吾々
(
われわれ
)
初
(
はじ
)
め
国民
(
こくみん
)
は
大変
(
たいへん
)
な
迷惑
(
めいわく
)
をせなくてはなるまいぞ』
128
ミル
『そんな
事
(
こと
)
が
吾々
(
われわれ
)
門番
(
もんばん
)
に
分
(
わか
)
つて
堪
(
たま
)
らうかい。
129
善悪
(
ぜんあく
)
正邪
(
せいじや
)
は
神
(
かみ
)
でなければ
分
(
わか
)
るものぢやないよ。
130
卑
(
いや
)
しき
臣下
(
しんか
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として、
131
そんな
事
(
こと
)
を
非難
(
ひなん
)
してみた
所
(
ところ
)
で
屁
(
へ
)
の
突張
(
つつぱ
)
りにもなりやせぬわ。
132
それよりも
機嫌
(
きげん
)
よく
磐若湯
(
はんにやたう
)
を
召
(
め
)
し
上
(
あが
)
つたら
如何
(
どう
)
だい』
133
ボルチー
『
其
(
その
)
許由
(
きよいう
)
と
云
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
、
134
賢人
(
けんじん
)
か
知
(
し
)
らぬが、
135
俺
(
おれ
)
から
見
(
み
)
ると
余程
(
よつぽど
)
いゝ
馬鹿
(
ばか
)
だなア。
136
普天
(
ふてん
)
の
下
(
した
)
、
137
率土
(
そつと
)
の
浜
(
ひん
)
、
138
皆
(
みな
)
王臣
(
わうしん
)
王土
(
わうど
)
に
非
(
あら
)
ざるなしと
云
(
い
)
ふぢやないか。
139
その
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
遊
(
あそ
)
ばす
山林
(
さんりん
)
にもせよ、
140
国土
(
こくど
)
に
住
(
す
)
みながら
王
(
わう
)
の
勅命
(
ちよくめい
)
を
拝受
(
はいじゆ
)
せず、
141
一箪
(
いつたん
)
の
食
(
しい
)
、
142
一瓢
(
いつぺう
)
の
飲
(
いん
)
、
143
光風
(
くわうふう
)
霽月
(
せいげつ
)
を
楽
(
たの
)
しむと
云
(
い
)
ふ、
144
利己主義
(
われよし
)
の
仙人
(
せんにん
)
気取
(
きど
)
りになつて、
145
国家
(
こくか
)
を
忘却
(
ばうきやく
)
すると
云
(
い
)
ふ
馬鹿者
(
ばかもの
)
が
何処
(
どこ
)
にあるか。
146
今
(
いま
)
の
奴
(
やつ
)
はさう
云
(
い
)
ふ
拗者
(
すねもの
)
を
指
(
さ
)
して
聖人
(
せいじん
)
賢人
(
けんじん
)
と
持
(
も
)
てはやしてゐる
奴
(
やつ
)
が
多
(
おほ
)
いからサツパリ
呆
(
あき
)
れて
了
(
しま
)
ふわ。
147
巣父
(
さうふ
)
も
巣父
(
さうふ
)
で、
148
担
(
にな
)
うたら
棒
(
ぼう
)
の
折
(
を
)
れる
様
(
やう
)
な
馬鹿者
(
ばかもの
)
だ。
149
余程
(
よつぽど
)
貧乏相
(
びんぼふさう
)
と
見
(
み
)
えるわい。
150
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
うた
川水
(
かはみづ
)
を
牛
(
うし
)
に
呑
(
の
)
ますと
牛
(
うし
)
が
汚
(
けが
)
れるなんて、
151
何処
(
どこ
)
まで
馬鹿
(
ばか
)
だか
見当
(
けんたう
)
がつかぬぢやないか。
152
そこになると
虞舜
(
ぐしゆん
)
は
偉
(
えら
)
いわい。
153
王
(
わう
)
様
(
さま
)
の
姫君
(
ひめぎみ
)
を
二人
(
ふたり
)
まで
女房
(
にようばう
)
に
貰
(
もら
)
ひ、
154
到頭
(
たうとう
)
天下
(
てんか
)
をゾロリと
頂戴
(
ちやうだい
)
したのだから、
155
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
から
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
ると
余程
(
よほど
)
理想
(
りさう
)
的
(
てき
)
の
人物
(
じんぶつ
)
だ。
156
末代
(
まつだい
)
迄
(
まで
)
も
尭舜
(
げうしゆん
)
の
世
(
よ
)
と
云
(
い
)
つて、
157
かけかまへのない
後世
(
こうせい
)
の
人間
(
にんげん
)
にまで
持囃
(
もてはや
)
される
様
(
やう
)
になつたのも、
158
ヤツパリ
虞舜
(
ぐしゆん
)
が
円転
(
ゑんてん
)
滑脱
(
くわつだつ
)
、
159
自由
(
じいう
)
自在
(
じざい
)
の
身魂
(
みたま
)
の
働
(
はたら
)
きをやつたからだ。
160
許由
(
きよいう
)
、
161
巣父
(
さうふ
)
なんて、
162
舜
(
しゆん
)
に
比
(
くら
)
ぶればお
話
(
はなし
)
にならぬぢやないか』
163
ミル
『そらさうだ。
164
俺
(
おれ
)
でも
許由
(
きよいう
)
だつたら、
165
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
ふ
処
(
どころ
)
か
二
(
ふた
)
つ
返事
(
へんじ
)
で、
166
猫
(
ねこ
)
が
鰹節
(
かつをぶし
)
に
飛
(
と
)
びついた
様
(
やう
)
にニヤンのカンのなしにチユウチユウチユウと
吸
(
す
)
ひつくのだけどな。
167
然
(
しか
)
しカールチン
様
(
さま
)
もヤツパリ
虞舜流
(
ぐしゆんりゆう
)
だ。
168
一
(
いち
)
も
二
(
に
)
もなく
刹帝利
(
せつていり
)
を
受
(
う
)
けるのだからヤツパリ
偉
(
えら
)
いわい。
169
三百
(
さんびやく
)
余
(
よ
)
騎
(
き
)
の
士
(
し
)
を
抱
(
かか
)
へ、
170
うまく
大黒主
(
おほくろぬし
)
の
喉元
(
のどもと
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み
睾丸
(
きんたま
)
を
握
(
にぎ
)
つてゐるのだから、
171
今日
(
こんにち
)
の
運
(
うん
)
が
向
(
む
)
いて
来
(
き
)
たのだ。
172
左守
(
さもり
)
さまの
様
(
やう
)
に
兵
(
へい
)
は
凶器
(
きやうき
)
也
(
なり
)
、
173
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
を
以
(
もつ
)
て
民
(
たみ
)
を
治
(
をさ
)
むるに
軍人
(
ぐんじん
)
等
(
など
)
が
要
(
い
)
るものかと
云
(
い
)
つて、
174
王
(
わう
)
様
(
さま
)
始
(
はじ
)
め
自分
(
じぶん
)
迄
(
まで
)
が
軍人
(
ぐんじん
)
らしきものをお
抱
(
かか
)
へ
遊
(
あそ
)
ばさぬのだから、
175
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
時
(
とき
)
の
勢
(
いきほひ
)
抗
(
かう
)
すべからずと
云
(
い
)
ふ
塩梅
(
あんばい
)
で
譲位
(
じやうゐ
)
さるる
事
(
こと
)
になつたのだらうよ。
176
これを
思
(
おも
)
へばヤツパリ
人間
(
にんげん
)
は
勢力
(
せいりよく
)
が
肝腎
(
かんじん
)
だ。
177
交際術
(
かうさいじゆつ
)
に
長
(
ちやう
)
じ、
178
権門
(
けんもん
)
勢家
(
せいか
)
に
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
り、
179
頭
(
かしら
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
180
敏捷
(
すばしこ
)
くまはるのが
社会
(
しやくわい
)
の
勝利者
(
しようりしや
)
だ』
181
ボルチー
『オイ、
182
ミル、
183
貴様
(
きさま
)
はカールチンさまが
刹帝利
(
せつていり
)
になられても、
184
ヤツパリ
神妙
(
しんめう
)
に
門番
(
もんばん
)
を
勤
(
つと
)
める
考
(
かんが
)
へか。
185
よもや、
186
そんな
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
はしよまいね。
187
忠臣
(
ちうしん
)
二君
(
にくん
)
に
仕
(
つか
)
へずと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるからな』
188
ミル
『そんなことは
今
(
いま
)
発表
(
はつぺう
)
する
限
(
かぎ
)
りでないわい。
189
俺
(
おれ
)
は
俺
(
おれ
)
としての
一
(
ひとつ
)
の
見識
(
けんしき
)
を
持
(
も
)
つてゐるのだから……
夜
(
よ
)
も
大分
(
だいぶ
)
に
更
(
ふ
)
けて
来
(
き
)
た
様
(
やう
)
だ。
190
ドレ、
191
モウ
寝
(
やす
)
まうぢやないか』
192
と
云
(
い
)
ふかと
思
(
おも
)
へば、
193
其
(
その
)
儘
(
まま
)
ゴロンと
酔
(
よ
)
ひ
倒
(
たふ
)
れ、
194
白河
(
しらかは
)
夜船
(
よぶね
)
を
漕
(
こ
)
いで
忽
(
たちま
)
ち
華胥
(
くわしよ
)
の
国
(
くに
)
へ
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
195
ボルチーはミルの
高鼾
(
たかいびき
)
に
寝就
(
ねつ
)
かれず、
196
微酔
(
ほろよひ
)
機嫌
(
きげん
)
で
潜
(
くぐ
)
り
門
(
もん
)
をガラリと
開
(
あ
)
け、
197
ほてつた
顔
(
かほ
)
を
夜風
(
よかぜ
)
にさらし
酔
(
よひ
)
を
覚
(
さ
)
まさむと、
198
ブラリブラリと
門前
(
もんぜん
)
を
迂路
(
うろ
)
つき
始
(
はじ
)
めた。
199
折柄
(
をりから
)
雲
(
くも
)
を
排
(
はい
)
して
現
(
あら
)
はれた
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
は
容赦
(
ようしや
)
なくボルチーの
頭
(
かしら
)
を
照
(
て
)
らした。
200
ボルチー
『あゝあ、
201
いゝ
気分
(
きぶん
)
だ。
202
秋
(
あき
)
の
月
(
つき
)
も
気分
(
きぶん
)
が
宜
(
よ
)
いが、
203
冬
(
ふゆ
)
の
夜
(
よ
)
の
空
(
そら
)
にかかる
月
(
つき
)
は、
204
何処
(
どこ
)
ともなしに
凄味
(
すごみ
)
があつて
之
(
これ
)
も
亦
(
また
)
一種
(
いつしゆ
)
の
風流
(
ふうりう
)
だ。
205
月
(
つき
)
と
云
(
い
)
ふ
餓鬼
(
がき
)
や、
206
いつ
見
(
み
)
ても、
207
あまり
気分
(
きぶん
)
の
悪
(
わる
)
くないものだ。
208
其
(
その
)
代
(
かは
)
りに
日天
(
につてん
)
様
(
さま
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
気
(
き
)
の
利
(
き
)
かぬこたア
夥
(
おびただ
)
しい。
209
豆明月
(
まめめいげつ
)
だとか、
210
薯明月
(
いもめいげつ
)
だとか、
211
月見
(
つきみ
)
の
宴
(
えん
)
だとか、
212
何
(
なん
)
だとか
云
(
い
)
つて、
213
人間
(
にんげん
)
さまの
翫弄
(
おもちや
)
にしられて
平気
(
へいき
)
の
平座
(
へいざ
)
で
空
(
そら
)
に
控
(
ひか
)
へてゐるのだからなア。
214
ゲー、
215
ガラガラガラ、
216
あゝあ
苦
(
くる
)
しい
苦
(
くる
)
しい、
217
あまり
月
(
つき
)
の
叱言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
つたので、
218
嘔吐
(
へど
)
を
つき
さうだ。
219
サツパリ
嘔吐
(
へど
)
つき
、
220
間誤
(
まご
)
つき
、
221
きよろ
つき
さがして、
222
寝
(
ね
)
つき
が
悪
(
わる
)
くて、
223
こんな
処
(
ところ
)
まで
つき
出
(
だ
)
されて
来
(
き
)
たのだな。
224
日天
(
につてん
)
様
(
さま
)
と
云
(
い
)
ふお
方
(
かた
)
は
神威
(
しんゐ
)
赫々
(
くわくくわく
)
として
犯
(
をか
)
すべからず、
225
ど
日中
(
ひなか
)
に
月
(
つき
)
さまの
様
(
やう
)
に
酒肴
(
さけさかな
)
を
拵
(
こしら
)
へて、
226
日輪見
(
にちりんみ
)
をしようと
云
(
い
)
つてお
顔
(
かほ
)
を
拝
(
をが
)
まうものなら、
227
忽
(
たちま
)
ち
目
(
め
)
は
晦
(
くら
)
くなり、
228
頭
(
あたま
)
はガンガンする、
229
神罰
(
しんばつ
)
は
覿面
(
てきめん
)
に
当
(
あた
)
る。
230
大自在天
(
だいじざいてん
)
様
(
さま
)
は
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
だ。
231
三五教
(
あななひけう
)
は
月天
(
みろく
)
様
(
さま
)
だと
云
(
い
)
つてゐるが、
232
大自在天
(
だいじざいてん
)
と
弥勒
(
みろく
)
さまとは、
233
これだけ
神力
(
しんりき
)
が
違
(
ちが
)
ふのだから、
234
ヤツパリ
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
の
奉
(
ほう
)
ずるバラモン
教
(
けう
)
は
天下
(
てんか
)
一品
(
いつぴん
)
の
教
(
をしへ
)
だ』
235
と
管
(
くだ
)
を
巻
(
ま
)
き
一人
(
ひとり
)
囀
(
さへづ
)
つてゐる。
236
そこへ
慌
(
あわただ
)
しく
十数
(
じふすう
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
引率
(
ひきつ
)
れやつて
来
(
き
)
たのは、
237
失恋組
(
しつれんぐみ
)
の
大将
(
たいしやう
)
カールチンを
初
(
はじ
)
め、
238
ユーフテス、
239
マンモスの
面々
(
めんめん
)
であつた。
240
ボルチーは
先頭
(
せんとう
)
に
立
(
た
)
つたマンモスにドンと
突当
(
つきあた
)
り、
241
ヒヨロ ヒヨロ ヒヨロと
五歩
(
いつあし
)
六歩
(
むあし
)
後
(
あと
)
しざりしながら、
242
路傍
(
ろばう
)
の
枯草
(
かれくさ
)
の
上
(
うへ
)
にドスンと
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
した。
243
草
(
くさ
)
の
上
(
うへ
)
には
霜
(
しも
)
の
剣
(
つるぎ
)
が
月
(
つき
)
に
照
(
て
)
らされて
閃
(
きら
)
めいてゐる。
244
ボルチー
『あいたゝゝ、
245
誰
(
たれ
)
ぢやい、
246
人
(
ひと
)
に
衝突
(
しようとつ
)
しやがつて、
247
御免
(
ごめん
)
なさいと
吐
(
ぬか
)
さぬかい、
248
アーン。
249
礼儀
(
れいぎ
)
を
知
(
し
)
らぬも
程
(
ほど
)
があるわい。
250
一体
(
いつたい
)
きゝゝ
貴様
(
きさま
)
はいゝゝ
一体
(
いつたい
)
何処
(
どこ
)
の
馬骨
(
ばこつ
)
だ。
251
俺
(
おれ
)
を
何様
(
どなた
)
と
心得
(
こころえ
)
てゐる。
252
勿体
(
もつたい
)
なくもイルナ
城
(
じやう
)
の
門番
(
もんばん
)
のボルチーさまだぞ』
253
マンモス『ヤア、
254
よい
処
(
ところ
)
で
会
(
あ
)
うた。
255
貴様
(
きさま
)
、
256
これから
俺
(
おれ
)
等
(
たち
)
の
先頭
(
せんとう
)
をして
表門
(
おもてもん
)
を
開
(
ひら
)
くのだ。
257
サア
立
(
た
)
てい』
258
ボルチー
『
俺
(
おれ
)
はチツとばかり
酩酊
(
めいてい
)
してゐるから、
259
暫
(
しばら
)
く
此処
(
ここ
)
で
月
(
つき
)
を
眺
(
なが
)
め
酔
(
よひ
)
を
醒
(
さ
)
ますから、
260
先
(
さき
)
へ
行
(
い
)
つてくれ。
261
潜
(
くぐ
)
り
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
いておいたから……ヤア
何
(
なん
)
と
沢山
(
たくさん
)
の
黒頭巾
(
くろづきん
)
だなア』
262
マンモス『
近
(
ちか
)
き
未来
(
みらい
)
の
刹帝利
(
せつていり
)
カールチン
様
(
さま
)
のお
通
(
とほ
)
りだ』
263
と
肩肱
(
かたひじ
)
怒
(
いか
)
らし、
264
一行
(
いつかう
)
と
共
(
とも
)
に
城内
(
じやうない
)
さして
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
265
(
大正一一・一一・二四
旧一〇・六
北村隆光
録)
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