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第15巻(寅の巻)
序
凡例
総説歌
第1篇 正邪奮戦
01 破羅門
〔568〕
02 途上の変
〔569〕
03 十六花
〔570〕
04 神の栄光
〔571〕
05 五天狗
〔572〕
06 北山川
〔573〕
07 釣瓶攻
〔574〕
08 ウラナイ教
〔575〕
09 薯蕷汁
〔576〕
10 神楽舞
〔577〕
第2篇 古事記言霊解
11 大蛇退治の段
〔578〕
第3篇 神山霊水
12 一人旅
〔579〕
13 神女出現
〔580〕
14 奇の岩窟
〔581〕
15 山の神
〔582〕
16 水上の影
〔583〕
17 窟の酒宴
〔584〕
18 婆々勇
〔585〕
第4篇 神行霊歩
19 第一天国
〔586〕
20 五十世紀
〔587〕
21 帰顕
〔588〕
22 和と戦
〔589〕
23 八日の月
〔590〕
跋文
余白歌
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第一五章
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
〔五八二〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第15巻 如意宝珠 寅の巻
篇:
第3篇 神山霊水
よみ(新仮名遣い):
しんざんれいすい
章:
第15章 山の神
よみ(新仮名遣い):
やまのかみ
通し章番号:
582
口述日:
口述場所:
筆録者:
加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年12月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高国別は岩窟で不思議な女神を追いかけるうち、落とし穴にはまって命を落としてしまう。天国をさまよううちに、宣伝使亀彦、梅彦ら一行と出会い、活津彦根神と呼ばれる。亀彦と梅彦はそれぞれ、神素盞嗚大神の娘である菊子姫、幾代姫と夫婦となっていた。
そして高国別は神素盞嗚大神の長女である愛子姫と契りを結ぶが、木花姫神が現れて、まだ現界に役割が残っているとして生き返る。
目を覚ました高国別は、深い井戸の底に落ち込んでいることに気がついた。そこへ天国で見たとおりに亀彦、梅彦、菊子姫、幾代姫、愛子姫が現れる。
井戸の底から石段を上ってきた高国別は、一同と合流する。夢で見たとおり、愛子姫は高国別を夫として迎え、六人で岩屋の探検に進んで行くことになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-01-16 18:38:24
OBC :
rm1515
愛善世界社版:
184頁
八幡書店版:
第3輯 348頁
修補版:
校定版:
183頁
普及版:
83頁
初版:
ページ備考:
001
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
澄
(
すま
)
す
素盞嗚
(
すさのを
)
の
002
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
に
従
(
したが
)
ひて
003
御稜威
(
みいづ
)
も
高
(
たか
)
き
高国別
(
たかくにわけ
)
は
004
奇
(
くし
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
陥
(
おちい
)
りし
005
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
生命
(
せいめい
)
を
006
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
さず
助
(
たす
)
けむと
007
地底
(
ちてい
)
の
洞
(
ほら
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
みて
008
神
(
かみ
)
に
願
(
ねがひ
)
をかけまくも
009
雄々
(
をを
)
しき
姿
(
すがた
)
すたすたと
010
声
(
こゑ
)
する
方
(
はう
)
を
辿
(
たど
)
りつつ
011
往
(
ゆ
)
き
当
(
あた
)
りたる
岩
(
いは
)
の
戸
(
と
)
に
012
又
(
また
)
もや
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
みながら
013
進退
(
しんたい
)
茲
(
ここ
)
に
谷
(
きは
)
まりて
014
暫
(
しば
)
し
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れ
居
(
ゐ
)
たる。
015
時
(
とき
)
しもあれや
何処
(
いづこ
)
よりか、
016
閃光
(
せんくわう
)
輝
(
かがや
)
き
高国別
(
たかくにわけ
)
が
前
(
まへ
)
に
火玉
(
ひだま
)
となりて
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
るものあり。
017
高国別
(
たかくにわけ
)
は
剣
(
つるぎ
)
の
把
(
つか
)
に
手
(
て
)
をかけて、
018
寄
(
よ
)
らば
斬
(
き
)
らむと
身構
(
みがま
)
へす。
019
巨大
(
きよだい
)
なる
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
は、
020
高国別
(
たかくにわけ
)
が
四五間
(
しごけん
)
前
(
まへ
)
に
万雷
(
ばんらい
)
の
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
落
(
お
)
つるが
如
(
ごと
)
き
音響
(
おんきやう
)
と
共
(
とも
)
に
落下
(
らくか
)
し、
021
白煙
(
はくえん
)
となつて
四辺
(
あたり
)
を
包
(
つつ
)
み
咫尺
(
しせき
)
を
弁
(
べん
)
ぜざる
靄
(
もや
)
の
中
(
なか
)
、
022
高国別
(
たかくにわけ
)
は
きつ
と
腹
(
はら
)
を
据
(
す
)
ゑ
臍下
(
さいか
)
丹田
(
たんでん
)
に
息
(
いき
)
を
詰
(
つ
)
め、
023
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
しければ、
024
今迄
(
いままで
)
咫尺
(
しせき
)
を
弁
(
べん
)
ぜざりし
猛煙
(
まうえん
)
は
拭
(
ぬぐ
)
ふがごとく
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて、
025
優美
(
いうび
)
なる
一人
(
ひとり
)
の
女神
(
めがみ
)
、
026
莞爾
(
くわんじ
)
として
佇立
(
ちよりつ
)
して
居
(
ゐ
)
たまふ。
027
高国別
(
たかくにわけ
)
は、
028
高国別
『ヤア
汝
(
なんぢ
)
は
何者
(
なにもの
)
なるぞ、
029
察
(
さつ
)
する
所
(
ところ
)
此
(
この
)
岩窟
(
がんくつ
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
の
眷属
(
けんぞく
)
ならむ、
030
吾
(
あ
)
が
両刃
(
もろは
)
の
長剣
(
ちやうけん
)
に
斬
(
き
)
り
捨
(
す
)
てむ』
031
と
云
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く
剣光
(
けんくわう
)
閃
(
ひらめ
)
く
電
(
いなづま
)
の
早業
(
はやわざ
)
、
032
斬
(
き
)
つてかかれば
女神
(
めがみ
)
は
中空
(
ちうくう
)
に
舞
(
ま
)
ひ
上
(
あが
)
り、
033
飛鳥
(
ひてう
)
の
如
(
ごと
)
く
右
(
みぎ
)
に
左
(
ひだり
)
に
上
(
うへ
)
に
下
(
した
)
に
体
(
たい
)
を
躱
(
かは
)
し、
034
遂
(
つひ
)
には
又
(
また
)
もや
以前
(
いぜん
)
の
火弾
(
くわだん
)
と
化
(
くわ
)
し、
035
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
てて
岩窟
(
いはや
)
の
内
(
うち
)
を
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
る
如
(
ごと
)
く
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りにける。
036
油断
(
ゆだん
)
はならじと
高国別
(
たかくにわけ
)
は
附近
(
あたり
)
キヨロキヨロ
見廻
(
みまは
)
す
折
(
をり
)
しも、
037
身
(
み
)
の
丈
(
たけ
)
一丈
(
いちぢやう
)
五六
(
ごろく
)
尺
(
しやく
)
もあらむと
思
(
おも
)
はる
大男
(
おほをとこ
)
、
038
異様
(
いやう
)
の
獣
(
けもの
)
を
引
(
ひ
)
きつれながら
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
039
高国別
(
たかくにわけ
)
に
一寸
(
ちよつと
)
会釈
(
ゑしやく
)
したり。
040
高国別
(
たかくにわけ
)
は
又
(
また
)
もや
魔神
(
まがみ
)
の
襲来
(
しふらい
)
ならむと
眼
(
め
)
を
配
(
くば
)
り
身構
(
みがま
)
へする。
041
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
は
大口
(
おほぐち
)
開
(
あ
)
けて
高笑
(
たかわら
)
ひ、
042
男
『アハヽヽヽヽ、
043
汝
(
なんぢ
)
は
高天原
(
たかあまはら
)
より
下
(
くだ
)
り
来
(
きた
)
れる
俄造
(
にはかづく
)
りの
似非
(
えせ
)
審神者
(
さには
)
、
044
吾
(
わが
)
正体
(
しやうたい
)
を
見届
(
みとど
)
けよ』
045
と
鏡
(
かがみ
)
の
如
(
ごと
)
き
眼
(
め
)
を
見開
(
みひら
)
き、
046
かつ
と
睨
(
ね
)
めつけたり。
047
高国別
(
たかくにわけ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み、
048
鎮魂
(
ちんこん
)
の
姿勢
(
しせい
)
を
取
(
と
)
り、
049
ウンと
一声
(
ひとこゑ
)
言霊
(
ことたま
)
を
発射
(
はつしや
)
したるに、
050
大
(
だい
)
の
男
(
をとこ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
体
(
たい
)
を
変
(
へん
)
じ
優美
(
いうび
)
なる
女神
(
めがみ
)
となりぬ。
051
高国別
(
たかくにわけ
)
は、
052
高国別
『
千変
(
せんぺん
)
万化
(
ばんくわ
)
の
悪神
(
あくがみ
)
の
悪戯
(
いたづら
)
、
053
今
(
いま
)
に
正体
(
しやうたい
)
を
現
(
あら
)
はして
呉
(
く
)
れむ』
054
と
両刃
(
もろは
)
の
長剣
(
ちやうけん
)
を
閃
(
ひらめ
)
かし、
055
女神
(
めがみ
)
に
向
(
むか
)
つて
骨
(
ほね
)
も
通
(
とほ
)
れとばかり
突
(
つ
)
きかかる。
056
女神
(
めがみ
)
は
手早
(
てばや
)
く
体
(
たい
)
をヒラリと
躱
(
かは
)
した
途端
(
とたん
)
、
057
勢
(
いきほひ
)
余
(
あま
)
つて
高国別
(
たかくにわけ
)
は
岩窟
(
がんくつ
)
の
中
(
なか
)
の
隧道
(
すゐだう
)
を、
058
トントントン、
059
と
七八間
(
しちはちけん
)
許
(
ばか
)
り
行
(
ゆ
)
き
過
(
すご
)
し、
060
底
(
そこ
)
ひも
知
(
し
)
れぬ
陥穽
(
おとしあな
)
に
真逆
(
まつさか
)
さまに
転落
(
てんらく
)
し、
061
高国別
(
たかくにわけ
)
は
其
(
その
)
儘
(
まま
)
息
(
いき
)
絶
(
た
)
え、
062
最早
(
もはや
)
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
にはあらざりけり。
063
高国別
(
たかくにわけ
)
は
唯一人
(
ただひとり
)
、
064
天
(
てん
)
青
(
あを
)
く
山
(
やま
)
清
(
きよ
)
く
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
たる
原野
(
げんや
)
を
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
しながら
何処
(
どこ
)
を
当
(
あて
)
ともなく、
065
足
(
あし
)
の
動
(
うご
)
くままに
身
(
み
)
を
任
(
まか
)
せ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
066
前方
(
ぜんぱう
)
に
屹立
(
きつりつ
)
する
雲
(
くも
)
の
衣
(
ころも
)
を
半
(
なかば
)
被
(
かぶ
)
りたる
高山
(
かうざん
)
が
見
(
み
)
えて
来
(
き
)
た。
067
高国別
(
たかくにわけ
)
は
山
(
やま
)
に
引
(
ひつ
)
つけらるる
如
(
ごと
)
き
心地
(
ここち
)
して、
068
足
(
あし
)
に
任
(
まか
)
せて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
069
パタリと
行
(
ゆ
)
き
当
(
あた
)
つた
峻坂
(
しゆんぱん
)
、
070
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
れば
鮮花色
(
せんくわしよく
)
の
男女
(
だんぢよ
)
の
群
(
むれ
)
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
、
071
何事
(
なにごと
)
か
面白
(
おもしろ
)
可笑
(
おか
)
しく
囁
(
ささや
)
きながら、
072
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
悠々
(
いういう
)
と
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る。
073
高国別
(
たかくにわけ
)
は
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
んで
独言
(
ひとりごと
)
、
074
高国別
『アヽ
吾
(
われ
)
は
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
お
)
伴
(
とも
)
仕
(
つか
)
へまつり、
075
カナンが
一家
(
いつか
)
に
休息
(
きうそく
)
し
給
(
たま
)
ふ
尊
(
みこと
)
の
命
(
めい
)
によつて
諸人
(
しよにん
)
の
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
ひ、
076
不思議
(
ふしぎ
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
りしと
思
(
おも
)
ひきや、
077
天空
(
てんくう
)
快濶
(
くわいくわつ
)
一点
(
いつてん
)
の
雲霧
(
うんむ
)
風塵
(
ふうぢん
)
もなき
大原野
(
だいげんや
)
を
渡
(
わた
)
り、
078
今
(
いま
)
又
(
また
)
此
(
この
)
山口
(
やまぐち
)
に
来
(
きた
)
るこそ
合点
(
がてん
)
がゆかぬことである
哩
(
わい
)
』
079
と
後
(
あと
)
振返
(
ふりかへ
)
り
四方
(
しはう
)
の
光景
(
くわうけい
)
を
眺
(
なが
)
めて
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
080
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
男女
(
だんぢよ
)
は
此処
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれて
一斉
(
いつせい
)
に
恭
(
うやうや
)
しく
目礼
(
もくれい
)
しながら、
081
五人
『
貴下
(
きか
)
は
高国別
(
たかくにわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
082
活津
(
いくつ
)
彦根
(
ひこねの
)
神
(
かみ
)
に
在
(
おは
)
さずや、
083
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かむ
)
伊邪諾
(
いざなぎの
)
大神
(
おほかみ
)
の
使者
(
ししや
)
として
貴下
(
きか
)
を
迎
(
むか
)
への
為
(
ため
)
に
罷越
(
まかりこし
)
たり、
084
イザイザ
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
申
(
まを
)
さむ』
085
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
086
高国別
(
たかくにわけ
)
は
何心
(
なにごころ
)
なく、
087
いそいそと
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
急坂
(
きふはん
)
を
登
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
088
漸
(
やうや
)
う
坂
(
さか
)
の
絶頂
(
ぜつちやう
)
に
達
(
たつ
)
した。
089
二男
(
になん
)
三女
(
さんぢよ
)
の
神人
(
しんじん
)
は
口
(
くち
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
090
五人
『これはこれは
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
、
091
お
疲
(
つか
)
れで
御座
(
ござ
)
いませう。
092
此処
(
ここ
)
は
珍
(
うづ
)
の
峠
(
たうげ
)
の
絶頂
(
ぜつちやう
)
、
093
先
(
ま
)
づ
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
下
(
くだ
)
さいませ』
094
高国別
(
たかくにわけ
)
は、
095
高国別
『アヽ
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
一人旅
(
ひとりたび
)
、
096
何
(
なん
)
となく
此
(
この
)
麗
(
うるは
)
しき
山野
(
さんや
)
を
跋渉
(
ばつせふ
)
するにも
話相手
(
はなしあひて
)
もなく
稍
(
やや
)
寂寥
(
せきれう
)
を
感
(
かん
)
じて
居
(
ゐ
)
ました。
097
然
(
しか
)
るに
此
(
この
)
坂
(
さか
)
の
下
(
した
)
より
麗
(
うるは
)
しき
貴方
(
あなた
)
等
(
ら
)
の
御
(
お
)
迎
(
むか
)
へ、
098
一
(
いち
)
円
(
ゑん
)
合点
(
がてん
)
が
参
(
まゐ
)
り
申
(
まを
)
さず、
099
珍
(
うづ
)
の
峠
(
たうげ
)
とは
何国
(
なにくに
)
の
山
(
やま
)
で
御座
(
ござ
)
るか』
100
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は、
101
五人
『ハイ』
102
と
云
(
い
)
つたまま、
103
ニコニコと
笑
(
わら
)
つて
答
(
こた
)
へぬ。
104
折
(
をり
)
しも
得
(
え
)
も
云
(
い
)
はれぬ
涼
(
すず
)
しき
風
(
かぜ
)
徐
(
おもむろ
)
に
吹
(
ふ
)
き
来
(
きた
)
り、
105
高国別
(
たかくにわけ
)
の
顔
(
かほ
)
を
撫
(
な
)
で
颯々
(
さつさつ
)
たる
声
(
こゑ
)
を
立
(
た
)
て、
106
幅広
(
はばひろ
)
の
木葉
(
このは
)
を
翻
(
ひるがへ
)
しながら
過
(
す
)
ぎて
行
(
ゆ
)
く。
107
高国別
『オー
恰
(
まる
)
で
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
のやうな
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
す、
108
百鳥
(
ももどり
)
は
空
(
そら
)
に
謡
(
うた
)
ひ
百花
(
ひやくくわ
)
爛漫
(
らんまん
)
として
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れ、
109
風
(
かぜ
)
は
清
(
きよ
)
く
香
(
かん
)
ばしく、
110
幽
(
かす
)
かに
聞
(
きこ
)
ゆる
微妙
(
びめう
)
の
音楽
(
おんがく
)
、
111
曇
(
くも
)
り
果
(
は
)
てたる
葦原
(
あしはら
)
の
国
(
くに
)
にもかかる
麗
(
うるは
)
しき
郷土
(
きやうど
)
のあるか、
112
アヽ
心持
(
こころもち
)
よや』
113
と
芝生
(
しばふ
)
の
上
(
うへ
)
にどつかと
坐
(
ざ
)
し、
114
言葉
(
ことば
)
涼
(
すず
)
しく
一同
(
いちどう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
115
高国別
『
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
今日
(
けふ
)
の
旅行
(
りよかう
)
、
116
貴方
(
あなた
)
等
(
ら
)
は
何
(
いづ
)
れの
神
(
かみ
)
に
坐
(
ま
)
し
在
(
ま
)
すか、
117
名乗
(
なの
)
らせたまへ』
118
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
は
恭
(
うやうや
)
しく、
119
男
『
私
(
わたくし
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
たりし
亀彦
(
かめひこ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
120
これなる
女
(
をんな
)
は
菊子姫
(
きくこひめ
)
と
申
(
まを
)
し、
121
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
第六
(
だいろく
)
の
御
(
おん
)
娘
(
むすめ
)
、
122
今
(
いま
)
は
大神
(
おほかみ
)
の
御心
(
みこころ
)
により
千代
(
ちよ
)
も
変
(
かは
)
らぬ
宿
(
やど
)
の
妻
(
つま
)
、
123
此処
(
ここ
)
は
地底
(
ちてい
)
の
国
(
くに
)
の
天国
(
てんごく
)
、
124
珍
(
うづ
)
の
峠
(
たうげ
)
で
御座
(
ござ
)
います』
125
高国別
『アヽ、
126
貴方
(
あなた
)
は
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
い
亀彦
(
かめひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
127
貴方
(
あなた
)
は
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
娘
(
むすめ
)
菊子姫
(
きくこひめ
)
様
(
さま
)
か、
128
思
(
おも
)
はぬ
処
(
ところ
)
でお
目
(
め
)
に
懸
(
かか
)
りました。
129
してして
父
(
ちち
)
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
は
今
(
いま
)
何処
(
いづ
)
くに
在
(
おはしま
)
すか、
130
聞
(
き
)
かま
欲
(
ほ
)
しう
存
(
ぞん
)
じます』
131
菊子姫
(
きくこひめ
)
は
涙
(
なみだ
)
をはらはらと
払
(
はら
)
ひながら、
132
菊子姫
『
申
(
まを
)
すも
詮
(
せん
)
なき
事
(
こと
)
ながら、
133
父
(
ちち
)
大神
(
おほかみ
)
は
天地
(
てんち
)
諸神人
(
しよしんじん
)
のために、
134
千座
(
ちくら
)
の
置戸
(
おきど
)
を
負
(
お
)
はせたまひ
今
(
いま
)
は
味気
(
あぢき
)
なき
漂泊
(
さすらひ
)
の
一人旅
(
ひとりたび
)
、
135
何処
(
いづく
)
の
果
(
はた
)
に
在
(
おは
)
すらむ、
136
せめては
其
(
その
)
御
(
ご
)
消息
(
せうそく
)
なりとも
聞
(
き
)
かま
欲
(
ほ
)
し』
137
と
涙
(
なみだ
)
ぐみ
芝生
(
しばふ
)
の
上
(
うへ
)
に
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
しにけり。
138
梅彦
(
うめひこ
)
は、
139
梅彦
『これはこれは
菊子姫
(
きくこひめ
)
殿
(
どの
)
、
140
此処
(
ここ
)
は
地底
(
ちてい
)
の
天国
(
てんごく
)
で
御座
(
ござ
)
る。
141
天国
(
てんごく
)
に
涙
(
なみだ
)
は
禁物
(
きんもつ
)
、
142
歓喜
(
くわんき
)
の
花
(
はな
)
の
開
(
ひら
)
くパラダイスで
御座
(
ござ
)
るぞ。
143
いや
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
、
144
吾々
(
われわれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
たりし
梅彦
(
うめひこ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
145
これなる
妻
(
つま
)
は
菊子姫
(
きくこひめ
)
の
姉
(
あね
)
幾代姫
(
いくよひめ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
146
大神
(
おほかみ
)
の
内命
(
ないめい
)
に
依
(
よ
)
つて
夫婦
(
ふうふ
)
の
約
(
やく
)
を
結
(
むす
)
びました。
147
此
(
この
)
後
(
ご
)
宜敷
(
よろし
)
くお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します』
148
高国別
『アヽ
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
つたか、
149
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
不思議
(
ふしぎ
)
の
対面
(
たいめん
)
、
150
全
(
まつた
)
く
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
のお
引
(
ひ
)
き
合
(
あは
)
せ、
151
アヽ
有難
(
ありがた
)
し。
152
斯
(
か
)
くも
麗
(
うるは
)
しき
山上
(
さんじやう
)
にて
大神
(
おほかみ
)
の
姫御子
(
ひめみこ
)
に
御
(
お
)
目
(
め
)
に
掛
(
かか
)
る
事
(
こと
)
望外
(
ばうぐわい
)
の
仕合
(
しあは
)
せで
御座
(
ござ
)
る』
153
梅彦
『
貴神
(
あなた
)
はペテロの
都
(
みやこ
)
に
於
(
おい
)
て
驍名
(
げうめい
)
隠
(
かく
)
れなき
御
(
おん
)
神様
(
かみさま
)
、
154
幾度
(
いくたび
)
か
生死
(
せいし
)
を
往来
(
ゆきき
)
遊
(
あそ
)
ばされ、
155
此処
(
ここ
)
に
活津
(
いくつ
)
彦根
(
ひこねの
)
神
(
かみ
)
と
現
(
あら
)
はれ
給
(
たま
)
ひし
天下
(
てんか
)
無双
(
むさう
)
の
忠勇
(
ちうゆう
)
義烈
(
ぎれつ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
と
承
(
うけたま
)
はる。
156
天
(
あめ
)
の
太玉
(
ふとたまの
)
命
(
みこと
)
の
仲介
(
なかだち
)
により、
157
素盞嗚
(
すさのを
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
お
)
許
(
ゆる
)
しを
得
(
え
)
て
第一
(
だいいち
)
の
御子
(
みこ
)
たる、
158
此
(
この
)
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
を
貴下
(
きか
)
の
妻
(
つま
)
と
神定
(
かむさだ
)
めさせ
給
(
たま
)
へば、
159
今
(
いま
)
より
愛子姫
(
あいこひめ
)
様
(
さま
)
を
妻
(
つま
)
となし、
160
神国
(
しんこく
)
のためにお
尽
(
つく
)
し
下
(
くだ
)
されば
有難
(
ありがた
)
う
存
(
ぞん
)
じます。
161
貴方
(
あなた
)
にお
渡
(
わた
)
し
申
(
まを
)
す
迄
(
まで
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
日夜
(
にちや
)
の
気懸
(
きがか
)
り、
162
之
(
これ
)
にて
吾
(
わが
)
願望
(
ぐわんばう
)
も
成就
(
じやうじゆ
)
致
(
いた
)
しました』
163
と
梅彦
(
うめひこ
)
は
心
(
こころ
)
落
(
お
)
ち
付
(
つ
)
きし
様子
(
やうす
)
なり。
164
愛子姫
『これはこれは、
165
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
き
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
、
166
夫
(
をつと
)
となり
妻
(
つま
)
となるも
神
(
かみ
)
の
結
(
むす
)
びたまひし
身魂
(
みたま
)
の
因縁
(
いんねん
)
、
167
千代
(
ちよ
)
も
八千代
(
やちよ
)
も
妾
(
わらは
)
と
共
(
とも
)
に、
168
手
(
て
)
を
携
(
たづさ
)
へて
神業
(
しんげふ
)
に
尽
(
つく
)
させたまへ』
169
と
顔
(
かほ
)
に
紅葉
(
もみぢ
)
を
散
(
ち
)
らしつつ
優
(
やさ
)
しき
手
(
て
)
を
膝
(
ひざ
)
にあて
語
(
かた
)
り
出
(
いづ
)
るは
愛子姫
(
あいこひめ
)
なり。
170
高国別
(
たかくにわけ
)
は、
171
夢
(
ゆめ
)
か
現
(
うつつ
)
か
幻
(
まぼろし
)
か
合点
(
がてん
)
行
(
ゆ
)
かぬと、
172
暫
(
しば
)
し
茫然
(
ばうぜん
)
として
大空
(
おほぞら
)
打
(
う
)
ち
仰
(
あふ
)
ぎ
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れ
居
(
ゐ
)
たり。
173
梅彦
(
うめひこ
)
はモドかしがり、
174
梅彦
『
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
、
175
何
(
なに
)
を
御
(
ご
)
思案
(
しあん
)
なさいます、
176
何事
(
なにごと
)
も
結
(
むす
)
びの
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
定
(
さだ
)
め、
177
直
(
ただち
)
に
御
(
ご
)
承諾
(
しようだく
)
なさいませ』
178
高国別
『アヽ、
179
有難
(
ありがた
)
し
有難
(
ありがた
)
し、
180
思
(
おも
)
ひも
寄
(
よ
)
らぬ
山上
(
さんじやう
)
の
見合
(
みあ
)
ひ、
181
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
お
)
仲介
(
なかだち
)
、
182
草
(
くさ
)
の
筵
(
むしろ
)
に
雲
(
くも
)
の
天井
(
てんじやう
)
、
183
風
(
かぜ
)
の
音楽
(
おんがく
)
に
木々
(
きぎ
)
の
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
の
舞
(
ま
)
ひ
踊
(
をど
)
り、
184
イヤもう
有難
(
ありがた
)
う
承知
(
しようち
)
仕
(
つかまつ
)
りました』
185
と
高国別
(
たかくにわけ
)
は
笑顔
(
ゑがほ
)
をもつて
迎
(
むか
)
へゐる。
186
これより
世俗
(
せぞく
)
は
妻
(
つま
)
を
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
と
云
(
い
)
ふのである。
187
愛子姫
(
あいこひめ
)
は
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り、
188
高国別
(
たかくにわけ
)
に
向
(
むか
)
つて、
189
南方
(
なんぱう
)
の
諸山
(
しよざん
)
を
圧
(
あつ
)
してそそり
立
(
た
)
てる
高山
(
たかやま
)
を
指
(
ゆび
)
さし、
190
愛子姫
『
雲
(
くも
)
の
彼方
(
かなた
)
の
黄金
(
こがね
)
の
山
(
やま
)
は
我
(
われ
)
等
(
ら
)
が
永久
(
とこしへ
)
の
故郷
(
ふるさと
)
、
191
いざいざ
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
進
(
すす
)
みませう』
192
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
急坂
(
きふはん
)
を
南
(
みなみ
)
に
下
(
くだ
)
る。
193
一同
(
いちどう
)
は
一歩
(
いつぽ
)
一歩
(
いつぽ
)
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れながらアブト
式
(
しき
)
流
(
りう
)
に
坂
(
さか
)
を
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
194
雲表
(
うんぺう
)
に
屹立
(
きつりつ
)
せる
彼方
(
かなた
)
の
遠
(
とほ
)
き
高山
(
たかやま
)
の
山頂
(
さんちやう
)
に
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にやら
達
(
たつ
)
してゐた。
195
三夫婦
(
みふうふ
)
は
山頂
(
さんちやう
)
に
衝立
(
つつた
)
ち
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
するや、
196
山
(
やま
)
を
包
(
つつ
)
みし
五色
(
ごしき
)
の
雲
(
くも
)
は
扉
(
とびら
)
を
開
(
ひら
)
きし
如
(
ごと
)
く、
197
颯
(
さつ
)
と
左右
(
さいう
)
に
開
(
ひら
)
けた。
198
目
(
め
)
の
届
(
とど
)
かぬ
許
(
ばか
)
りの
青野原
(
あをのはら
)
、
199
白
(
しろ
)
き、
200
赤
(
あか
)
き、
201
青
(
あを
)
き、
202
黄色
(
きいろ
)
き、
203
紫色
(
むらさきいろ
)
の
三重
(
みへ
)
五重
(
いつへ
)
十重
(
とへ
)
二十重
(
はたへ
)
の
塔
(
たふ
)
は、
204
眼下
(
がんか
)
の
青野
(
あをの
)
が
原
(
はら
)
の
部落
(
ぶらく
)
の
中
(
なか
)
に
幾百
(
いくひやく
)
ともなく
屹立
(
きつりつ
)
し、
205
其
(
その
)
絶景
(
ぜつけい
)
譬
(
たと
)
ふるに
物
(
もの
)
なく、
206
遠
(
とほ
)
く
目
(
め
)
を
放
(
はな
)
てば
紺碧
(
こんぺき
)
の
波
(
なみ
)
を
湛
(
たた
)
へたる
大海原
(
おほうなばら
)
、
207
浪
(
なみ
)
静
(
しづか
)
に
純白
(
じゆんぱく
)
の
真帆
(
まほ
)
片帆
(
かたほ
)
、
208
右往
(
うわう
)
左往
(
さわう
)
に
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
くさま、
209
画伯
(
ぐわはく
)
の
手
(
て
)
に
成
(
な
)
れる
一幅
(
いつぷく
)
の
大画帳
(
だいぐわちやう
)
の
如
(
ごと
)
く、
210
時
(
とき
)
の
移
(
うつ
)
るも
忘
(
わす
)
れて
一同
(
いちどう
)
は
絶景
(
ぜつけい
)
を
見守
(
みまも
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
211
此
(
この
)
時
(
とき
)
山頂
(
さんちやう
)
の
麗
(
うるは
)
しき
祠
(
ほこら
)
の
中
(
なか
)
より、
212
黄金
(
わうごん
)
の
扉
(
とびら
)
を
開
(
ひら
)
き
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
一柱
(
ひとはしら
)
の
女神
(
めがみ
)
、
213
二人
(
ふたり
)
の
侍女
(
じぢよ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
悠々
(
いういう
)
と
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
が
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれて、
214
女神
『
妾
(
わらは
)
は
木花姫
(
このはなひめ
)
なり、
215
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
忠勇
(
ちうゆう
)
義烈
(
ぎれつ
)
至仁
(
しじん
)
至愛
(
しあい
)
の
神人
(
かみ
)
なれば、
216
汝
(
なんぢ
)
が
永久
(
とこしへ
)
に
住
(
す
)
むべき
国
(
くに
)
は
此
(
この
)
聖域
(
せいゐき
)
なり。
217
併
(
しか
)
しながら
未
(
ま
)
だ
現界
(
げんかい
)
に
於
(
おい
)
て
勤
(
つと
)
むべき
事
(
こと
)
あれば、
218
再
(
ふたた
)
び
現界
(
げんかい
)
に
引
(
ひ
)
き
返
(
かへ
)
されよ。
219
今後
(
こんご
)
は
心
(
こころ
)
を
緩
(
ゆる
)
ませ
玉
(
たま
)
ふな。
220
体主
(
たいしゆ
)
霊従
(
れいじう
)
の
魔風
(
まかぜ
)
に
誘
(
さそ
)
はれなば、
221
再
(
ふたた
)
び
此処
(
ここ
)
に
来
(
きた
)
る
事
(
こと
)
能
(
あた
)
はざるべし、
222
今
(
いま
)
より
速
(
すみや
)
かに
現界
(
げんかい
)
に
帰
(
かへ
)
り
給
(
たま
)
へ』
223
と
優美
(
いうび
)
にして
荘重
(
さうちよう
)
なる
言葉
(
ことば
)
を
残
(
のこ
)
し、
224
黄金
(
わうごん
)
の
扉
(
とびら
)
を
閉
(
と
)
ぢて、
225
侍女
(
じぢよ
)
と
共
(
とも
)
に
又
(
また
)
もや
祠
(
ほこら
)
の
中
(
うち
)
に
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したまうた。
226
忽
(
たちま
)
ち
四辺
(
しへん
)
暗黒
(
あんこく
)
となり、
227
身体
(
しんたい
)
に
寒冷
(
かんれい
)
を
覚
(
おぼ
)
ゆると
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に
甦
(
よみがへ
)
り
見
(
み
)
れば、
228
高国別
(
たかくにわけ
)
は
岩窟内
(
がんくつない
)
の
深
(
ふか
)
き
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
に
倒
(
たふ
)
れ
居
(
ゐ
)
たるなり。
229
高国別
『アヽ
夢
(
ゆめ
)
であつたか、
230
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
吾
(
われ
)
を
活津彦根
(
いくつひこね
)
と
仰
(
あふ
)
せられしは
不審
(
ふしん
)
の
一
(
ひと
)
つ、
231
吾身
(
わがみ
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
を
知
(
し
)
らずして
憖
(
なまじひ
)
に
審神
(
さには
)
を
行
(
おこな
)
ひしため、
232
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
ご
)
仁慈
(
じんじ
)
によつて
教
(
をし
)
へたまひしか、
233
アヽ
有難
(
ありがた
)
し
有難
(
ありがた
)
し』
234
と、
235
合掌
(
がつしやう
)
し
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
したりける。
236
フト
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
れば
窟
(
あな
)
の
周囲
(
まわり
)
に
麗
(
うるは
)
しき
二男
(
になん
)
三女
(
さんぢよ
)
の
夢
(
ゆめ
)
に
見
(
み
)
し
神人
(
しんじん
)
が
立
(
た
)
ち
現
(
あら
)
はれ、
237
井底
(
せいてい
)
を
覗
(
のぞ
)
きて
何事
(
なにごと
)
か
囁
(
ささや
)
き
居
(
ゐ
)
るあり。
238
高国別
(
たかくにわけ
)
は
夢
(
ゆめ
)
に
夢見
(
ゆめみ
)
る
心地
(
ここち
)
して、
239
又
(
また
)
もや
両手
(
りやうて
)
を
組
(
く
)
み
心
(
こころ
)
の
縺
(
もつ
)
れを
手繰
(
たぐ
)
り
居
(
を
)
る。
240
稍
(
やや
)
ありて
高国別
(
たかくにわけ
)
は
井底
(
せいてい
)
より
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
ぎながら、
241
高国別
『もしもし
亀彦
(
かめひこ
)
様
(
さま
)
、
242
梅彦
(
うめひこ
)
様
(
さま
)
、
243
その
他
(
た
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女性
(
めがみ
)
様
(
さま
)
、
244
私
(
わたくし
)
は
高国別
(
たかくにわけ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
245
人
(
ひと
)
の
命
(
いのち
)
を
救
(
すく
)
はむために、
246
地中
(
ちちう
)
の
岩窟
(
いはや
)
に
忍
(
しの
)
び
入
(
い
)
り、
247
過
(
あやま
)
つてかかる
古井戸
(
ふるゐど
)
の
底
(
そこ
)
に
陥
(
お
)
ちました。
248
何
(
なん
)
とかして
私
(
わたくし
)
をお
救
(
すく
)
ひ
下
(
くだ
)
さいますまいか』
249
亀彦
『ヤア
噂
(
うはさ
)
に
聞
(
き
)
き
及
(
およ
)
ぶ
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
か、
250
それは
嘸
(
さぞ
)
お
困
(
こま
)
りでせう、
251
何
(
なん
)
とか
一
(
ひと
)
つ
工夫
(
くふう
)
をしてお
救
(
すく
)
ひ
申
(
まを
)
さねばなりませぬ。
252
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
斯
(
かか
)
る
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
にある
古井戸
(
ふるゐど
)
には
階段
(
かいだん
)
があるものです。
253
この
亀彦
(
かめひこ
)
も
一度
(
いちど
)
フサの
国
(
くに
)
の
醜
(
しこ
)
の
岩窟
(
いはや
)
の
古井戸
(
ふるゐど
)
に
陥
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んだ
時
(
とき
)
、
254
如何
(
いかが
)
はせむかと
心
(
こころ
)
を
痛
(
いた
)
めましたが、
255
フト
傍
(
かたはら
)
を
見
(
み
)
れば
階段
(
かいだん
)
が
刻
(
きざ
)
まれてありました。
256
よくよく
調
(
しら
)
べなさいませ』
257
高国別
『
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います、
258
少
(
すこ
)
しの
手
(
て
)
がかりも
足
(
あし
)
がかりも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
259
恰度
(
ちやうど
)
竹筒
(
たけづつ
)
の
中
(
なか
)
に
落
(
お
)
ちたやうなものです』
260
梅彦
(
うめひこ
)
は、
261
梅彦
『アヽ、
262
困
(
こま
)
つたな、
263
吾々
(
われわれ
)
も
一度
(
いちど
)
古井戸
(
ふるゐど
)
に
陥
(
お
)
ちた
経験
(
けいけん
)
があるが、
264
階段
(
かいだん
)
がないとは
意外
(
いぐわい
)
だ、
265
何
(
なん
)
とか
工夫
(
くふう
)
をせねばなりますまい。
266
亀彦
(
かめひこ
)
サン、
267
貴方
(
あなた
)
の
褌
(
まはし
)
と
帯
(
おび
)
を
外
(
はづ
)
して
下
(
くだ
)
さい、
268
吾々
(
われわれ
)
も
帯
(
おび
)
と
褌
(
まはし
)
とを
解
(
と
)
きます。
269
これを
繋
(
つな
)
いで
井底
(
せいてい
)
に
釣
(
つ
)
り
下
(
くだ
)
しませう』
270
と
云
(
い
)
ひつつ、
271
くるくると
帯
(
おび
)
を
解
(
と
)
き、
272
褌
(
まはし
)
を
外
(
はづ
)
し
手早
(
てばや
)
く
繋
(
つな
)
いだ。
273
亀彦
(
かめひこ
)
も
同
(
おな
)
じく
帯
(
おび
)
と
褌
(
まはし
)
を
取
(
と
)
り
外
(
はづ
)
し、
274
手早
(
てばや
)
く
繋
(
つな
)
ぎ
合
(
あは
)
せ
井戸
(
ゐど
)
に
下
(
さ
)
げ
降
(
おろ
)
して
見
(
み
)
た。
275
梅彦
(
うめひこ
)
は、
276
梅彦
『モシモシ、
277
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
、
278
この
帯
(
おび
)
にお
掴
(
つか
)
まり
下
(
くだ
)
さい』
279
高国別
『イヤ、
280
有難
(
ありがた
)
う、
281
折角
(
せつかく
)
の
思召
(
おぼしめし
)
ながらどうも
届
(
とど
)
きませぬ。
282
加
(
くは
)
ふるに
怪
(
あや
)
しき
臭気
(
しうき
)
が
致
(
いた
)
します』
283
梅彦
(
うめひこ
)
は、
284
梅彦
『アヽ、
285
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
ふ
まわし
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
だらう。
286
エヽ
仕方
(
しかた
)
がない、
287
三
(
さん
)
人
(
にん
)
のお
女中
(
ぢよちう
)
、
288
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
の
帯
(
おび
)
を
解
(
ほど
)
いて
下
(
くだ
)
さいませ』
289
愛子姫
(
あいこひめ
)
『ハイ、
290
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しませう。
291
菊子
(
きくこ
)
さま、
292
幾代
(
いくよ
)
さま』
293
二女
(
にじよ
)
『さうですなア、
294
吾
(
わたし
)
裸体
(
はだか
)
になるのは
恥
(
はづ
)
かしいワ』
295
梅彦
(
うめひこ
)
『
恥
(
はづ
)
かしいの
何
(
なん
)
のと
云
(
い
)
つてゐる
所
(
どころ
)
か、
296
人命
(
じんめい
)
に
係
(
かか
)
はる
大事
(
だいじ
)
だ。
297
サアサアコンナ
時
(
とき
)
には
恥
(
はぢ
)
も
糞
(
くそ
)
もあつたものでない、
298
帯
(
おび
)
をお
解
(
と
)
きなさい』
299
愛子姫
(
あいこひめ
)
『それでも
余
(
あま
)
り
残酷
(
ざんこく
)
ですワ』
300
亀彦
(
かめひこ
)
『これこれ
愛子姫
(
あいこひめ
)
さま、
301
何
(
なに
)
を
仰有
(
おつしや
)
るのだ、
302
貴女
(
あなた
)
こそ
残酷
(
ざんこく
)
だ。
303
高国別
(
たかくにわけ
)
様
(
さま
)
が
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
、
304
サアサア、
305
キリキリとお
解
(
と
)
きなさい。
306
もしもし
高国別
(
たかくにわけ
)
さま、
307
何
(
ど
)
うも
仕方
(
しかた
)
がありませぬ、
308
吾々
(
われわれ
)
が
帯
(
おび
)
を
解
(
と
)
き
褌
(
まはし
)
を
解
(
と
)
き、
309
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女神
(
めがみ
)
の
帯
(
おび
)
を
繋
(
つな
)
ぎ
合
(
あは
)
して、
310
今
(
いま
)
垂下
(
すゐか
)
致
(
いた
)
しますからね、
311
少々
(
せうせう
)
臭
(
くさ
)
くても
御
(
ご
)
辛抱
(
しんばう
)
下
(
くだ
)
さいませ、
312
女
(
をんな
)
の
匂
(
にほ
)
ひと
云
(
い
)
ふものは
却
(
かへ
)
つて
床
(
ゆか
)
しいものですよ、
313
アハヽヽヽ』
314
高国別
(
たかくにわけ
)
『
夫
(
それ
)
計
(
ばか
)
りは
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
り
度
(
た
)
い、
315
ヤア
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
宿
(
やど
)
り
給
(
たま
)
ふ
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
で、
316
ソンナ
物
(
もの
)
をべらべらさして
貰
(
もら
)
つては
有難
(
ありがた
)
迷惑
(
めいわく
)
だ。
317
どうぞ
早
(
はや
)
く
手繰
(
たぐ
)
り
上
(
あ
)
げて
下
(
くだ
)
さい』
318
亀彦
(
かめひこ
)
『エヽ、
319
無理
(
むり
)
計
(
ばか
)
り
云
(
い
)
ふ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
だな、
320
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
及
(
およ
)
んでどうも
仕方
(
しかた
)
がありませぬワ。
321
些
(
ちつ
)
とは
鼻
(
はな
)
を
摘
(
つま
)
んで
御
(
ご
)
辛抱
(
しんばう
)
なさいませ。
322
異性
(
いせい
)
の
匂
(
にほ
)
ひは
却
(
かへ
)
つてよいものですよ』
323
高国別
(
たかくにわけ
)
『アハヽヽヽ、
324
ヤア
皆
(
みな
)
さま、
325
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけました。
326
何
(
ど
)
うやら
梯子
(
はしご
)
が
刻
(
きざ
)
まれてあるやうに
思
(
おも
)
ひます』
327
亀彦
(
かめひこ
)
『アハヽヽヽ、
328
矢張
(
やつぱ
)
り
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
洒落
(
しやれ
)
が
上手
(
じやうず
)
だなア、
329
此処迄
(
ここまで
)
洒落
(
しやれ
)
ると、
330
洒落
(
しやれ
)
も
徹底
(
てつてい
)
して
面白
(
おもしろ
)
い。
331
もしもし
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
姫御前
(
ひめごぜん
)
、
332
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ、
333
帯
(
おび
)
を
解
(
と
)
くのだけは
赦
(
ゆる
)
して
上
(
あ
)
げませう』
334
三女
(
さんぢよ
)
『ホヽヽヽ、
335
誰
(
たれ
)
が
帯
(
おび
)
ども
解
(
ほど
)
きますものか、
336
帯
(
おび
)
を
解
(
と
)
く
時間
(
じかん
)
にはも
些
(
ちつ
)
と
早
(
はや
)
いぢやありませぬか、
337
ホヽヽヽヽ』
338
亀彦
(
かめひこ
)
『また
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
も
洒落
(
しやれ
)
るのか、
339
モシモシ
高国別
(
たかくにわけ
)
さま、
340
早
(
はや
)
くお
上
(
あが
)
りなさらぬか』
341
高国別
(
たかくにわけ
)
『アヽ
矢張
(
やつぱ
)
り
間違
(
まちが
)
ひだつた、
342
些
(
ちつ
)
とも
手係
(
てがか
)
りがありませぬワ。
343
誠
(
まこと
)
に
済
(
す
)
みませぬが
私
(
わたくし
)
の
一命
(
いちめい
)
を
助
(
たす
)
けると
思召
(
おぼしめ
)
し、
344
どうぞお
慈悲
(
じひ
)
に
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女性
(
めがみ
)
様
(
さま
)
の
帯
(
おび
)
を
解
(
と
)
いて、
345
繋
(
つな
)
ぎ
合
(
あは
)
して
助
(
たす
)
けて
下
(
くだ
)
さい、
346
お
願
(
ねが
)
ひぢやお
願
(
ねが
)
ひぢや』
347
亀彦
(
かめひこ
)
『エヽ、
348
何
(
なん
)
だ
矢張
(
やつぱ
)
り
虚言
(
うそ
)
だつたか、
349
これは
仕方
(
しかた
)
がない。
350
サアサア
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
女性
(
めがみ
)
様
(
さま
)
、
351
ちつと
時間
(
じかん
)
は
早
(
はや
)
いが
夫
(
をつと
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ、
352
女房
(
にようばう
)
が
聞
(
き
)
かぬと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか、
353
早
(
はや
)
く
解
(
と
)
いたり、
354
解
(
と
)
いたり。
355
エヽ
何
(
なに
)
、
356
恥
(
はづ
)
かしいと。
357
何
(
なに
)
が
恥
(
はづ
)
かしい、
358
水
(
みづ
)
も
漏
(
も
)
らさぬ
夫婦仲
(
めをとなか
)
ぢやないか』
359
菊子姫
(
きくこひめ
)
『それでも
姉
(
ねえ
)
さまに
恥
(
はづ
)
かしいワ』
360
亀彦
(
かめひこ
)
『
何
(
なに
)
、
361
姉
(
ねえ
)
さまのお
婿
(
むこ
)
さまを
助
(
たす
)
けるのだ。
362
ソンナ
遠慮
(
ゑんりよ
)
が
要
(
い
)
るものか』
363
愛子姫
(
あいこひめ
)
『ホヽヽヽヽ、
364
エヽ
仕方
(
しかた
)
がありませぬ、
365
妾
(
わたし
)
が
率先
(
そつせん
)
して
模範
(
もはん
)
を
示
(
しめ
)
しませう』
366
と
帯
(
おび
)
を
解
(
と
)
きかける。
367
井戸
(
ゐど
)
の
底
(
そこ
)
より
陽気
(
やうき
)
な
声
(
こゑ
)
で、
368
鼻歌
(
はなうた
)
を
謡
(
うた
)
ひながら、
369
トン、
370
トンと
上
(
あが
)
つて
来
(
く
)
る。
371
高国別
(
たかくにわけ
)
『ヤア
皆様
(
みなさま
)
、
372
種々
(
いろいろ
)
と
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をかけました。
373
お
蔭
(
かげ
)
で
梯子段
(
はしごだん
)
が
俄
(
にはか
)
に
出来
(
でき
)
ました。
374
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
咄嗟
(
とつさ
)
の
場合
(
ばあひ
)
急造
(
きふざう
)
したものですから、
375
実
(
じつ
)
に
やにこい
ものです。
376
アハヽヽヽ』
377
梅
(
うめ
)
、
378
亀
(
かめ
)
『
何
(
なん
)
だ、
379
裸体
(
はだか
)
になり
損
(
そん
)
をしたワイ』
380
高国別
(
たかくにわけ
)
『
人間
(
にんげん
)
は
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
にならねば
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
は
頂
(
いただ
)
けませぬよ、
381
赤子
(
あかご
)
の
時
(
とき
)
には
裸体
(
はだか
)
で
生
(
うま
)
れたのだもの、
382
アハヽヽヽ』
383
高国別
(
たかくにわけ
)
は
拍手
(
かしはで
)
を
打
(
う
)
ち
合掌
(
がつしやう
)
しながら
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
始
(
はじ
)
めた。
384
一同
(
いちどう
)
は
声
(
こゑ
)
を
揃
(
そろ
)
へて
合唱
(
がつしやう
)
する、
385
其
(
その
)
声音
(
せいおん
)
朗々
(
らうらう
)
としてさしもに
広
(
ひろ
)
き
岩窟
(
いはや
)
に
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
り、
386
天地
(
てんち
)
開明
(
かいめい
)
の
気分
(
きぶん
)
漂
(
ただよ
)
ふ。
387
愛子姫
(
あいこひめ
)
『
貴方
(
あなた
)
は
父
(
ちち
)
の
許
(
ゆる
)
せし
吾
(
わが
)
夫
(
をつと
)
、
388
活津彦根
(
いくつひこね
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
389
ようマア
無事
(
ぶじ
)
で
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さいました』
390
高国別
(
たかくにわけ
)
『ヤア
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
事
(
こと
)
もあればあるものだなア、
391
お
前
(
まへ
)
が
珍
(
うづ
)
の
峠
(
たうげ
)
でお
目
(
め
)
にかかつた
山
(
やま
)
の
神
(
かみ
)
さまだなア。
392
ヤア
有難
(
ありがた
)
い
有難
(
ありがた
)
い、
393
三夫婦
(
みふうふ
)
揃
(
そろ
)
うた
瑞霊
(
みづのみたま
)
の
夫婦
(
ふうふ
)
連
(
づ
)
れ、
394
二三
(
にさん
)
が
六
(
ろく
)
人
(
にん
)
手
(
て
)
を
携
(
たづさ
)
へて
睦
(
むつ
)
まじく、
395
此処
(
ここ
)
で
結婚
(
けつこん
)
の
式
(
しき
)
を
挙
(
あ
)
げませうか』
396
亀彦
(
かめひこ
)
『
結婚
(
けつこん
)
の
式
(
しき
)
を
挙
(
あ
)
げやうと
云
(
い
)
つた
所
(
ところ
)
が、
397
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
岩窟
(
いはや
)
の
中
(
なか
)
、
398
何
(
ど
)
うする
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ないぢやありませぬか』
399
高国別
(
たかくにわけ
)
『イヤ、
400
御霊
(
みたま
)
と
御霊
(
みたま
)
の
結婚
(
けつこん
)
、
401
心
(
こころ
)
の
盃
(
さかづき
)
の
取
(
と
)
り
替
(
か
)
はし、
402
千代
(
ちよ
)
も
八千代
(
やちよ
)
も
末長
(
すゑなが
)
く、
403
睦
(
むつ
)
びて
進
(
すす
)
む
六人
(
むたり
)
連
(
づれ
)
、
404
栄
(
さかえ
)
の
花
(
はな
)
を
三夫婦
(
みふうふ
)
が、
405
天地人
(
てんちじん
)
揃
(
そろ
)
うて
岩窟
(
いはや
)
の
探険
(
たんけん
)
、
406
三
(
み
)
つの
御霊
(
みたま
)
の
父
(
ちち
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
お
)
引合
(
ひきあは
)
せ、
407
アヽ
有難
(
ありがた
)
し
有難
(
ありがた
)
し、
408
目出度
(
めでた
)
し
目出度
(
めでた
)
し、
409
一度
(
いちど
)
に
開
(
ひら
)
く
梅彦
(
うめひこ
)
さま、
410
万代
(
よろづよ
)
祝
(
いは
)
ふ
亀彦
(
かめひこ
)
さま、
411
嬉
(
うれ
)
しき
便
(
たよ
)
りを
菊子姫
(
きくこひめ
)
、
412
幾代
(
いくよ
)
変
(
かは
)
らぬ
幾代姫
(
いくよひめ
)
、
413
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
愛子姫
(
あいこひめ
)
、
414
睦
(
むつ
)
び
合
(
あ
)
うたる
三夫婦
(
みふうふ
)
が、
415
身魂
(
みたま
)
の
行末
(
ゆくすゑ
)
こそは
楽
(
たの
)
しけれ』
416
といそいそ
神歌
(
しんか
)
を
謡
(
うた
)
ひながら、
417
又
(
また
)
もや
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
418
(
大正一一・四・三
旧三・七
加藤明子
録)
419
(昭和一〇・三・二三 於花蓮港分院 王仁校正)
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