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霊界物語
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第1巻(子の巻)
第2巻(丑の巻)
第3巻(寅の巻)
第4巻(卯の巻)
第5巻(辰の巻)
第6巻(巳の巻)
第7巻(午の巻)
第8巻(未の巻)
第9巻(申の巻)
第10巻(酉の巻)
第11巻(戌の巻)
第12巻(亥の巻)
如意宝珠
第13巻(子の巻)
第14巻(丑の巻)
第15巻(寅の巻)
第16巻(卯の巻)
第17巻(辰の巻)
第18巻(巳の巻)
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第21巻(申の巻)
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第25巻(子の巻)
第26巻(丑の巻)
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第31巻(午の巻)
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第48巻(亥の巻)
真善美愛
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第51巻(寅の巻)
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第61巻(子の巻)
第62巻(丑の巻)
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第65巻(辰の巻)
第66巻(巳の巻)
第67巻(午の巻)
第68巻(未の巻)
第69巻(申の巻)
第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
第74巻(丑の巻)
第75巻(寅の巻)
第76巻(卯の巻)
第77巻(辰の巻)
第78巻(巳の巻)
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第33巻(申の巻)
序歌
瑞祥
第1篇 誠心誠意
01 高論濁拙
〔916〕
02 灰猫婆
〔917〕
03 言霊停止
〔918〕
04 楽茶苦
〔919〕
第2篇 鶴亀躍動
05 神寿言
〔920〕
06 皮肉歌
〔921〕
07 心の色
〔922〕
08 春駒
〔923〕
09 言霊結
〔924〕
10 神歌
〔925〕
11 波静
〔926〕
12 袂別
〔927〕
第3篇 時節到来
13 帰途
〔928〕
14 魂の洗濯
〔929〕
15 婆論議
〔930〕
16 暗夜の歌
〔931〕
17 感謝の涙
〔932〕
18 神風清
〔933〕
第4篇 理智と愛情
19 報告祭
〔934〕
20 昔語
〔935〕
21 峯の雲
〔936〕
22 高宮姫
〔937〕
23 鉄鎚
〔938〕
24 春秋
〔939〕
25 琉の玉
〔940〕
26 若の浦
〔941〕
伊豆温泉旅行につき訪問者人名詠込歌
附記 湯ケ島所感
余白歌
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第33巻
> 第4篇 理智と愛情 > 第24章 春秋
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(B)
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第二四章
春秋
(
しゆんじう
)
〔九三九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第33巻 海洋万里 申の巻
篇:
第4篇 理智と愛情
よみ(新仮名遣い):
りちとあいじょう
章:
第24章 春秋
よみ(新仮名遣い):
しゅんじゅう
通し章番号:
939
口述日:
1922(大正11)年09月19日(旧07月28日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年11月10日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
東助は英子姫と紫姫に呼ばれて教主館に向かった。英子姫は、玉照彦と玉照姫を通じて神素盞嗚大神の御用の命が下り、すぐに秋彦を連れてフサの斎苑の館に急行するようにと用向きを伝えた。
一同は玉照彦と玉照姫に面会した。二神は手づから東助に旅の無事を祈って声をかけた。一同は互いに歌を取り交わした。東助は早速旅装を整えて共を連れ、出立した。
これは英子姫のはからいによってフサの都に東助を遣わしたのであった。神素盞嗚大神は喜んで東助を片腕となし給うた。また斎苑の館に詣でてくる建国別に面会せしむるためでもあった。
東助が聖地を去った後は、竜国別が総務となって聖地を守ることになった。一方高姫は、生田の森の館を国玉別(若彦)・玉能姫夫婦に代わって治めるよう、佐田彦とともに出立することを命じられた。同時に東助が聖地を去って斎苑の館に旅だったことも聞かされた。
高姫は東助がフサの国へ去ったと聞いて、未練の念からせめて一目会い言葉をかわしたいと、あわてて旅装を整えて生田の森へ出立した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-09-08 14:14:24
OBC :
rm3324
愛善世界社版:
266頁
八幡書店版:
第6輯 347頁
修補版:
校定版:
279頁
普及版:
105頁
初版:
ページ備考:
001
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
の
偏
(
かた
)
辺
(
ほと
)
り
総務館
(
そうむやかた
)
の
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に、
002
東助
(
とうすけ
)
は
佐田彦
(
さだひこ
)
に
茶
(
ちや
)
を
汲
(
く
)
ませ
乍
(
なが
)
ら
脇息
(
けふそく
)
に
凭
(
も
)
たれ、
003
深
(
ふか
)
き
思案
(
しあん
)
に
沈
(
しづ
)
むものの
如
(
ごと
)
くであつた。
004
此
(
この
)
時
(
とき
)
表戸
(
おもてど
)
をガラリと
引
(
ひ
)
き
開
(
あ
)
け
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たのは
秋彦
(
あきひこ
)
である。
005
秋彦
(
あきひこ
)
『モシモシ
総務
(
そうむ
)
様
(
さま
)
、
006
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
が
一寸
(
ちよつと
)
お
目
(
め
)
にかかり
度
(
た
)
いと
仰
(
あふ
)
せになりますから
何卒
(
どうぞ
)
お
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ。
007
紫姫
(
むらさきひめ
)
様
(
さま
)
とお
二人
(
ふたり
)
が
待
(
ま
)
つて
居
(
を
)
られます』
008
東助
(
とうすけ
)
『ヤアお
前
(
まへ
)
は
秋彦
(
あきひこ
)
、
009
それは
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だつたナア。
010
それなら
直
(
すぐ
)
に
参
(
まゐ
)
りませう……
佐田彦
(
さだひこ
)
後
(
あと
)
を
頼
(
たの
)
むぞ』
011
と
云
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
て
秋彦
(
あきひこ
)
と
共
(
とも
)
に
教主館
(
けうしゆやかた
)
に
礼服
(
れいふく
)
を
整
(
ととの
)
へ
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
012
英子姫
(
ひでこひめ
)
、
013
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
東助
(
とうすけ
)
の
来
(
きた
)
るを
今
(
いま
)
や
遅
(
おそ
)
しと
待
(
ま
)
ちつつあつた。
014
東助
(
とうすけ
)
『
英子姫
(
ひでこひめ
)
様
(
さま
)
、
015
お
使
(
つかひ
)
を
下
(
くだ
)
さいまして
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
016
東助
(
とうすけ
)
只今
(
ただいま
)
参
(
まゐ
)
りまして
御座
(
ござ
)
います』
017
紫姫
(
むらさきひめ
)
は
欣々
(
いそいそ
)
として
出
(
い
)
で
迎
(
むか
)
へ、
018
紫姫
(
むらさきひめ
)
『
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いました。
019
何卒
(
どうぞ
)
奥
(
おく
)
へお
通
(
とほ
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
020
と
慇懃
(
いんぎん
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
し
乍
(
なが
)
ら
奥
(
おく
)
へ
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
く。
021
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
総務
(
そうむ
)
さま、
022
よく
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
023
只今
(
ただいま
)
玉照彦
(
たまてるひこ
)
様
(
さま
)
、
024
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
が
下
(
くだ
)
りましたので、
025
貴方
(
あなた
)
にお
伝
(
つた
)
へ
致
(
いた
)
さねばならぬ
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ました。
026
早速
(
さつそく
)
お
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいまして
満足
(
まんぞく
)
に
思
(
おも
)
ひます』
027
東助
(
とうすけ
)
はスボツコ
[
※
スボッコ…京都地方の方言で「無愛想」の意。
]
な
口調
(
くてう
)
で、
028
東助
『
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
、
029
何
(
なに
)
か
急用
(
きふよう
)
でも
起
(
おこ
)
りましたか』
030
英子姫
(
ひでこひめ
)
『はい、
031
別
(
べつ
)
に
大
(
たい
)
した
急用
(
きふよう
)
でも
御座
(
ござ
)
いませぬが
二柱
(
ふたはしら
)
の
神司
(
かむつかさ
)
のお
言葉
(
ことば
)
には、
032
貴方
(
あなた
)
はこれより
秋彦
(
あきひこ
)
を
従
(
したが
)
へ、
033
フサの
国
(
くに
)
の
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
急行
(
きふかう
)
して
頂
(
いただ
)
かねばなりませぬ。
034
御用
(
ごよう
)
の
趣
(
おもむき
)
は
今日
(
けふ
)
の
処
(
ところ
)
では
分
(
わか
)
りませぬが、
035
何
(
なん
)
でも
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
様
(
さま
)
が
貴方
(
あなた
)
に
対
(
たい
)
し
強
(
た
)
つての
御用
(
ごよう
)
があるさうで
御座
(
ござ
)
いますから、
036
何卒
(
どうぞ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
出立
(
しゆつたつ
)
を
願
(
ねが
)
ひます。
037
就
(
つ
)
いては
東助
(
とうすけ
)
様
(
さま
)
、
038
貴方
(
あなた
)
の
御
(
お
)
子
(
こ
)
様
(
さま
)
の
所在
(
ありか
)
が
分
(
わか
)
つたさうで
御座
(
ござ
)
いますナ、
039
そして
高
(
たか
)
……』
040
と
云
(
い
)
ひかけて
俄
(
にはか
)
に
口
(
くち
)
を
噤
(
つぐ
)
み、
041
英子姫
『
高砂島
(
たかさごじま
)
とやら
筑紫島
(
つくしじま
)
にお
在
(
い
)
でで
御座
(
ござ
)
いますとの
事
(
こと
)
を
承
(
うけたま
)
はりましたが、
042
実
(
じつ
)
にお
目出度
(
めでた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
043
然
(
しか
)
るに
貴方
(
あなた
)
は
総務
(
そうむ
)
の
役目
(
やくめ
)
を
重
(
おも
)
んじ
遊
(
あそ
)
ばし
三十五
(
さんじふご
)
年前
(
ねんぜん
)
の
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
にも
会
(
あ
)
はないとか
仰
(
あふ
)
せられたとかで、
044
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
045
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
は
大変
(
たいへん
)
に
感心
(
かんしん
)
をして
居
(
を
)
られました。
046
人
(
ひと
)
は
云
(
い
)
ふも
更
(
さら
)
なり、
047
禽獣
(
きんじう
)
の
端
(
はし
)
に
至
(
いた
)
るまで
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
を
恋
(
こひ
)
しく
思
(
おも
)
はないものは
御座
(
ござ
)
いますまい。
048
お
見上
(
みあ
)
げ
申
(
まを
)
したお
心
(
こころ
)
と
云
(
い
)
つて、
049
二柱
(
ふたはしら
)
様
(
さま
)
が
非常
(
ひじやう
)
に
褒
(
ほ
)
めて
居
(
を
)
られましたぞえ』
050
東助
(
とうすけ
)
『いやもうお
恥
(
はづ
)
かしい
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
います。
051
合
(
あ
)
はす
顔
(
かほ
)
も
御座
(
ござ
)
いませぬ。
052
今
(
いま
)
迄
(
まで
)
雪隠
(
せんち
)
で
饅頭
(
まんぢう
)
を
喰
(
く
)
た
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
して
居
(
を
)
りましたが、
053
斯
(
こ
)
んな
事
(
こと
)
がパツとしました
以上
(
いじやう
)
、
054
最早
(
もはや
)
総務
(
そうむ
)
の
席
(
せき
)
に
留
(
とど
)
まつて
居
(
を
)
る
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
りませぬ。
055
何
(
なん
)
とかして
総務
(
そうむ
)
を
御
(
ご
)
辞退
(
じたい
)
申
(
まを
)
し
度
(
た
)
いと
今日
(
けふ
)
も
今日
(
けふ
)
とて
思案
(
しあん
)
に
暮
(
く
)
れて
居
(
を
)
りました
処
(
ところ
)
へ、
056
秋彦
(
あきひこ
)
さまのお
使
(
つかひ
)
、
057
取
(
と
)
るものも
取敢
(
とりあへ
)
ずお
伺
(
うかが
)
ひ
致
(
いた
)
しました
次第
(
しだい
)
で
御座
(
ござ
)
います。
058
就
(
つい
)
ては
仰
(
あふ
)
せに
従
(
したが
)
ひ
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
聖地
(
せいち
)
をさり、
059
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
のお
指図
(
さしづ
)
に
従
(
したが
)
ひ、
060
フサの
国
(
くに
)
の
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
に
急
(
いそ
)
ぎませう』
061
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
早速
(
さつそく
)
の
御
(
ご
)
承知
(
しようち
)
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
062
二柱
(
ふたはしら
)
の
神司
(
かむつかさ
)
様
(
さま
)
も
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
に
思召
(
おぼしめ
)
すで
御座
(
ござ
)
いませう。
063
然
(
しか
)
らば
道中
(
だうちう
)
お
仕合
(
しあは
)
せよく……
遠方
(
ゑんぱう
)
ですから
何卒
(
どうぞ
)
お
気
(
き
)
をつけてお
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいませ……これ
秋彦
(
あきひこ
)
、
064
お
前
(
まへ
)
も
御
(
お
)
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ですが
総務
(
そうむ
)
さまのお
伴
(
とも
)
をしてフサの
国
(
くに
)
へ
行
(
い
)
て
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいや』
065
秋彦
(
あきひこ
)
『
願
(
ねが
)
うてもなき
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
、
066
こんな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
は
御座
(
ござ
)
いませぬ。
067
又
(
また
)
もや
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
に
親
(
した
)
しく
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
が
叶
(
かな
)
ふかと
思
(
おも
)
へば、
068
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
心持
(
こころもち
)
で
御座
(
ござ
)
います。
069
能
(
よ
)
うマア
沢山
(
たくさん
)
の
幹部
(
かんぶ
)
が
御座
(
ござ
)
いますのに、
070
私
(
わたくし
)
如
(
ごと
)
きを
選
(
えら
)
んで
下
(
くだ
)
さいました。
071
これと
云
(
い
)
ふも
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
のお
引立
(
ひきたて
)
、
072
厚
(
あつ
)
く
御
(
おん
)
礼
(
れい
)
を
申上
(
まをしあ
)
げます』
073
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
左様
(
さやう
)
なれば
機嫌
(
きげん
)
よう
行
(
い
)
て
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいませ』
074
東助
(
とうすけ
)
『
然
(
しか
)
らば
玉照彦
(
たまてるひこ
)
様
(
さま
)
、
075
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
にお
暇
(
いとま
)
を
申上
(
まをしあ
)
げて
参
(
まゐ
)
りませう』
076
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
今
(
いま
)
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
の
八尋殿
(
やひろどの
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
されば、
077
お
二柱
(
ふたはしら
)
は
先
(
さき
)
に
神前
(
しんぜん
)
にてお
待受
(
まちう
)
けで
御座
(
ござ
)
いますから
私
(
わたくし
)
と
直
(
すぐ
)
に
八尋殿
(
やひろどの
)
に
参
(
まゐ
)
りませう』
078
東助
(
とうすけ
)
『
左様
(
さやう
)
なればお
供
(
とも
)
をさして
頂
(
いただ
)
きませう』
079
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
080
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
081
秋彦
(
あきひこ
)
諸共
(
もろとも
)
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
八尋殿
(
やひろどの
)
に
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
082
八尋殿
(
やひろどの
)
正面
(
しやうめん
)
の
高座
(
かうざ
)
には
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
083
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
二柱
(
ふたはしら
)
莞爾
(
くわんじ
)
として
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
来
(
きた
)
るを
待
(
ま
)
たせ
給
(
たま
)
ひつつあつた。
084
これより
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
085
玉照姫
(
たまてるひめ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
を
初
(
はじ
)
め
英子姫
(
ひでこひめ
)
、
086
紫姫
(
むらさきひめ
)
、
087
東助
(
とうすけ
)
、
088
秋彦
(
あきひこ
)
は
神前
(
しんぜん
)
近
(
ちか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
089
大神
(
おほかみ
)
に
祈願
(
きぐわん
)
を
凝
(
こ
)
らし
長途
(
ちやうと
)
の
無事
(
ぶじ
)
を
祈
(
いの
)
りたる
上
(
うへ
)
、
090
二柱
(
ふたはしら
)
の
神司
(
かむつかさ
)
は
手
(
て
)
づから
東助
(
とうすけ
)
、
091
秋彦
(
あきひこ
)
に
神酒
(
みき
)
を
賜
(
たま
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
092
玉照彦
(
たまてるひこ
)
『
東助殿
(
とうすけどの
)
、
093
何卒
(
どうぞ
)
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
で……』
094
玉照姫
(
たまてるひめ
)
『
御
(
ご
)
神業
(
しんげふ
)
に
御
(
ご
)
奉仕
(
ほうし
)
なさるやう……』
095
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
神
(
かみ
)
かけて
祈
(
いの
)
ります』
096
紫姫
(
むらさきひめ
)
『
何卒
(
どうぞ
)
早
(
はや
)
く
御用
(
ごよう
)
を
済
(
す
)
ませ、
097
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
にお
帰
(
かへ
)
り
遊
(
あそ
)
ばす
日
(
ひ
)
をお
待
(
ま
)
ち
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
ります』
098
東助
(
とうすけ
)
は
神前
(
しんぜん
)
にて
歌
(
うた
)
ふ。
099
東助
『
二柱
(
ふたはしら
)
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
御言
(
みこと
)
もて
100
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
に
行
(
ゆ
)
くぞ
嬉
(
うれ
)
しき
101
素盞嗚
(
すさのをの
)
神
(
かみの
)
尊
(
みこと
)
の
神館
(
かむやかた
)
102
指
(
さ
)
して
行
(
ゆ
)
く
身
(
み
)
ぞ
楽
(
たの
)
しかりけり
103
いざさらば
錦
(
にしき
)
の
宮
(
みや
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
104
大海原
(
おほうなばら
)
を
越
(
こ
)
えて
進
(
すす
)
まむ
105
諸々
(
もろもろ
)
の
教司
(
をしへつかさ
)
や
信徒
(
まめひと
)
に
106
別
(
わか
)
れて
吾
(
われ
)
は
遠
(
とほ
)
く
行
(
ゆ
)
くなり』
107
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
鳥
(
とり
)
が
鳴
(
な
)
く
東野別
(
あづまのわけ
)
の
神司
(
かむつかさ
)
108
幸
(
さち
)
あれかしと
吾
(
われ
)
は
祈
(
いの
)
らむ』
109
東助
(
とうすけ
)
『
古
(
いにしへ
)
の
吾
(
わが
)
名
(
な
)
を
如何
(
いか
)
に
知
(
し
)
らすらむ
110
実
(
げ
)
に
恥
(
はづ
)
かしき
罪
(
つみ
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
』
111
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
のしるべ
無
(
な
)
しとも
大神
(
おほかみ
)
に
112
由緒
(
ゆかり
)
ある
人
(
ひと
)
雄々
(
をを
)
しかりけり』
113
紫姫
(
むらさきひめ
)
『
東別神
(
あづまわけかみの
)
命
(
みこと
)
の
草枕
(
くさまくら
)
114
旅
(
たび
)
を
思
(
おも
)
ひて
吾
(
われ
)
は
嬉
(
うれ
)
しき
115
秋彦
(
あきひこ
)
の
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
よ
何処
(
どこ
)
までも
116
心
(
こころ
)
注
(
そそ
)
ぎて
御供
(
みとも
)
に
仕
(
つか
)
へよ』
117
秋彦
(
あきひこ
)
『いざさらば
吾
(
われ
)
は
聖地
(
せいち
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
118
東野別
(
あづまのわけ
)
の
供
(
とも
)
に
仕
(
つか
)
へむ』
119
玉照彦
(
たまてるひこ
)
『
千早振
(
ちはやぶ
)
る
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
の
深
(
ふか
)
ければ
120
大海原
(
おほうなばら
)
もつつむ
事
(
こと
)
なし』
121
玉照姫
(
たまてるひめ
)
『
霊
(
たま
)
幸
(
ち
)
はふ
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐみ
)
にやすやすと
122
大海原
(
おほうなばら
)
を
渡
(
わた
)
り
行
(
ゆ
)
け
君
(
きみ
)
』
123
東助
(
とうすけ
)
『
有難
(
ありがた
)
し
神
(
かみ
)
の
御言
(
みこと
)
を
蒙
(
かかぶ
)
りて
124
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
かなむ
神
(
かみ
)
の
御許
(
みもと
)
へ』
125
と
互
(
たがひ
)
に
歌
(
うた
)
を
取
(
と
)
り
交
(
かは
)
し
乍
(
なが
)
ら、
126
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
旅装
(
りよさう
)
を
整
(
ととの
)
へ、
127
此
(
この
)
度
(
たび
)
は
路
(
みち
)
を
南
(
みなみ
)
にとり、
128
明石
(
あかし
)
の
港
(
みなと
)
より
淡路島
(
あはぢしま
)
の
吾
(
わが
)
館
(
やかた
)
に
立
(
た
)
ちより、
129
お
百合
(
ゆり
)
の
方
(
かた
)
に
暫
(
しば
)
し
暇
(
いとま
)
を
告
(
つ
)
げ、
130
秋彦
(
あきひこ
)
外
(
ほか
)
吾
(
わが
)
家
(
や
)
の
家
(
いへ
)
の
子
(
こ
)
二三
(
にさん
)
を
伴
(
ともな
)
ひ
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
を
辷
(
すべ
)
つて
月日
(
つきひ
)
を
重
(
かさ
)
ね、
131
フサの
国
(
くに
)
のタルの
港
(
みなと
)
に
上陸
(
じやうりく
)
し、
132
ウブスナ
山
(
やま
)
の
斎苑
(
いそ
)
館
(
やかた
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
となつた。
133
これは
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
慈悲心
(
じひしん
)
によつて
東助
(
とうすけ
)
の
立場
(
たちば
)
を
慮
(
おもんばか
)
り、
134
フサの
都
(
みやこ
)
に
急用
(
きふよう
)
ありとて
差
(
さ
)
し
遣
(
つか
)
はしなば、
135
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
は
喜
(
よろこ
)
び
給
(
たま
)
ひて
片腕
(
かたうで
)
となし
給
(
たま
)
ひ、
136
且
(
か
)
つ
斎苑
(
いそ
)
の
館
(
やかた
)
へ
参詣
(
まゐまう
)
で
来
(
く
)
る
建日館
(
たけひやかた
)
の
建国別
(
たけくにわけ
)
、
137
建能姫
(
たけのひめ
)
に
期
(
き
)
せずして
面会
(
めんくわい
)
せしめむとの
計
(
はか
)
らひであつた。
138
さうして
東助
(
とうすけ
)
の
聖地
(
せいち
)
をさりし
後
(
あと
)
は
竜国別
(
たつくにわけ
)
総務
(
そうむ
)
となりて
聖地
(
せいち
)
を
守
(
まも
)
る
事
(
こと
)
となりにける。
139
○
140
東助
(
とうすけ
)
の
聖地
(
せいち
)
を
去
(
さ
)
りし
事
(
こと
)
を
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らぬ
高姫
(
たかひめ
)
は、
141
夏彦
(
なつひこ
)
の
使
(
つかひ
)
によつて
教主
(
けうしゆ
)
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
館
(
やかた
)
に
出頭
(
しゆつとう
)
した。
142
高姫
(
たかひめ
)
『お
早
(
はや
)
う
御座
(
ござ
)
います。
143
今朝
(
けさ
)
は
夏彦
(
なつひこ
)
さまを
以
(
もつ
)
てお
招
(
まね
)
き
下
(
くだ
)
さいまして
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
144
何
(
なに
)
か
変
(
かは
)
つた
御用
(
ごよう
)
でも
出来
(
でき
)
たので
御座
(
ござ
)
いますかな』
145
英子姫
(
ひでこひめ
)
『それは
能
(
よ
)
くこそ
御
(
お
)
入出
(
いで
)
下
(
くだ
)
さいました。
146
玉照彦
(
たまてるひこ
)
、
147
玉照姫
(
たまてるひめ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
148
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
は
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
乍
(
なが
)
ら、
149
これから
暫
(
しばら
)
く
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
へ
行
(
い
)
つて
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
を
願
(
ねが
)
はねばなりませぬ。
150
さうして
東助
(
とうすけ
)
様
(
さま
)
は
今
(
いま
)
はフサの
国
(
くに
)
へお
使
(
つか
)
ひにお
出
(
い
)
でになりましたから、
151
淡路島
(
あはぢしま
)
の
方面
(
はうめん
)
も
守
(
まも
)
つて
頂
(
いただ
)
かねばなりませぬ』
152
高姫
(
たかひめ
)
『ハイ、
153
畏
(
かしこ
)
まりまして
御座
(
ござ
)
います。
154
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
とあれば
何処
(
どこ
)
へなりとも
参
(
まゐ
)
ります。
155
さうして
総務
(
そうむ
)
様
(
さま
)
はフサの
国
(
くに
)
へ
何時
(
いつ
)
お
出
(
いで
)
になりましたか』
156
英子姫
(
ひでこひめ
)
『ハイ、
157
昨日
(
きのふ
)
の
夕方
(
ゆふがた
)
此処
(
ここ
)
を
立
(
た
)
たれました』
158
高姫
(
たかひめ
)
はサツと
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
を
変
(
か
)
へた。
159
されど
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をよそほひ、
160
高姫
『アヽ
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いましたか。
161
遠方
(
ゑんぱう
)
へ
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
で
御座
(
ござ
)
いますな』
162
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
此
(
この
)
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
は
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
にお
任
(
まか
)
せするより
仕方
(
しかた
)
はありませぬ。
163
何程
(
なにほど
)
人間
(
にんげん
)
があせつても
成
(
な
)
る
様
(
やう
)
にほか
成
(
な
)
りませぬからな』
164
高姫
(
たかひめ
)
『
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
には
玉能姫
(
たまのひめ
)
、
165
国玉別
(
くにたまわけ
)
、
166
駒彦
(
こまひこ
)
が
居
(
を
)
られるぢやございませぬか』
167
英子姫
(
ひでこひめ
)
『ハイ、
168
彼処
(
あこ
)
には
琉
(
りう
)
と
球
(
きう
)
との
宝玉
(
ほうぎよく
)
が
納
(
をさ
)
まり、
169
国玉別
(
くにたまわけ
)
夫婦
(
ふうふ
)
が
守
(
まも
)
つて
居
(
を
)
りますが、
170
神界
(
しんかい
)
の
都合
(
つがふ
)
に
依
(
よ
)
つて
球
(
きう
)
の
玉
(
たま
)
を
紀
(
き
)
の
国
(
くに
)
の
離
(
はな
)
れ
島
(
じま
)
へ
納
(
をさ
)
めに
行
(
ゆ
)
かねばなりませぬ。
171
就
(
つい
)
ては
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
に
琉
(
りう
)
の
宝玉
(
ほうぎよく
)
を
祭
(
まつ
)
り、
172
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
を
致
(
いた
)
さねばならないので
御座
(
ござ
)
います。
173
此
(
この
)
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
は
高姫
(
たかひめ
)
様
(
さま
)
にお
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
さねばならないのですから、
174
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
乍
(
なが
)
ら
佐田彦
(
さだひこ
)
と
共
(
とも
)
に
御
(
ご
)
出張
(
しゆつちやう
)
を
願
(
ねが
)
ひます。
175
貴女
(
あなた
)
がお
出
(
いで
)
になれば
国玉別
(
くにたまわけ
)
、
176
玉能姫
(
たまのひめ
)
は
待
(
ま
)
ち
受
(
う
)
けて
居
(
を
)
る
事
(
こと
)
になつて
居
(
ゐ
)
ますから……』
177
高姫
(
たかひめ
)
『
願
(
ねが
)
うてもなき
有難
(
ありがた
)
き
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
、
178
謹
(
つつし
)
んでお
受
(
う
)
けを
致
(
いた
)
します』
179
と
俄
(
にはか
)
に
欣々
(
いそいそ
)
とし
袖
(
そで
)
を
羽
(
は
)
ばたきし
乍
(
なが
)
ら
立上
(
たちあが
)
り、
180
高姫
(
たかひめ
)
『サア、
181
佐田彦
(
さだひこ
)
、
182
お
前
(
まへ
)
も
結構
(
けつこう
)
だよ、
183
早
(
はや
)
く
準備
(
こしらへ
)
なさいませ。
184
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
して
居
(
ゐ
)
ると
東助
(
とうすけ
)
さまが……
否々
(
いやいや
)
国玉別
(
くにたまわけ
)
さまがお
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ねですから……』
185
と
慌
(
あわ
)
てて
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でむとする。
186
英子姫
(
ひでこひめ
)
『
一寸
(
ちよつと
)
お
待
(
ま
)
ち
下
(
くだ
)
さいませ。
187
御
(
ご
)
神前
(
しんぜん
)
にて
道中
(
だうちう
)
の
御
(
ご
)
無事
(
ぶじ
)
を
祈
(
いの
)
りし
上
(
うへ
)
御
(
お
)
神酒
(
みき
)
を
頂
(
いただ
)
いて
御
(
お
)
出
(
いで
)
下
(
くだ
)
さいませ。
188
東助
(
とうすけ
)
様
(
さま
)
も
御
(
お
)
神酒
(
みき
)
を
頂
(
いただ
)
き
秋彦
(
あきひこ
)
を
連
(
つ
)
れて
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
をさして
行
(
ゆ
)
かれました』
189
高姫
(
たかひめ
)
『ハイ、
190
有難
(
ありがた
)
う。
191
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても
内地
(
ないち
)
の
事
(
こと
)
で
御座
(
ござ
)
いますから、
192
神界
(
しんかい
)
の
御用
(
ごよう
)
一刻
(
いつこく
)
の
猶予
(
いうよ
)
も
出来
(
でき
)
ませぬ。
193
何卒
(
どうぞ
)
貴女
(
あなた
)
代
(
かは
)
つて
御
(
ご
)
祈願
(
きぐわん
)
して
下
(
くだ
)
さい……コレ
佐田彦
(
さだひこ
)
、
194
早
(
はや
)
く
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
りなさらぬか』
195
と
英子姫
(
ひでこひめ
)
の
言葉
(
ことば
)
も
碌々
(
ろくろく
)
耳
(
みみ
)
にも
入
(
い
)
れず
慌
(
あわ
)
てふためき
内心
(
ないしん
)
は……
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
に
東助
(
とうすけ
)
が
泊
(
とま
)
つて
居
(
ゐ
)
るだらうから
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
してはフサの
国
(
くに
)
へ
行
(
ゆ
)
かれた
後
(
あと
)
の
祭
(
まつ
)
り、
196
今
(
いま
)
一言
(
ひとこと
)
云
(
い
)
つても
見
(
み
)
たい、
197
会
(
あ
)
うても
見度
(
みた
)
い……と
云
(
い
)
ふ
心
(
こころ
)
がムラムラと
起
(
おこ
)
りし
為
(
ため
)
、
198
気
(
き
)
が
気
(
き
)
でなく
慌
(
あわ
)
て
出
(
だ
)
して、
199
時
(
とき
)
を
移
(
うつ
)
さず
旅装
(
りよさう
)
を
整
(
ととの
)
へ、
200
須知山
(
しゆちやま
)
峠
(
たうげ
)
を
踏
(
ふ
)
み
越
(
こ
)
え、
201
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めて
生田
(
いくた
)
の
森
(
もり
)
へと
急
(
いそ
)
ぎ
行
(
ゆ
)
く。
202
(
大正一一・九・一九
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